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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09C |
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管理番号 | 1328201 |
審判番号 | 不服2016-1771 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-05 |
確定日 | 2017-05-10 |
事件の表示 | 特願2013-240893「顔料混合物ならびに化粧品および食品および医薬品分野におけるその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 1日出願公開、特開2014- 77137〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年5月9日(パリ条約に基づく優先権主張 2006年5月9日 ドイツ(DE))に国際出願した特願2009-508248号の一部を、平成25年11月21日に新たな特許出願(分割出願)としたものであって、同年12月17日に上申書が提出されるとともに手続補正がなされた後、平成26年9月25日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年3月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月29日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年10月6日)、これに対して、平成28年2月5日に審判請求がなされ、それと同時に手続補正がなされた後、同年3月31日に審判請求書についての手続補正(方式)がなされ、さらに、同年6月17日付けで前置報告がなされたものである。 第2 平成28年2月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年2月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。) 「【請求項1】 少なくとも2つの成分AおよびBからなる顔料混合物であって、 成分Aが、 (A)モル比が1:0.5?1:2.0のTiO_(2)とFe_(2)O_(3)の混合物、ならびに場合により、層(A)を基準として<20重量%の量の1以上の金属酸化物からなる高屈折率コーティングと、 (B)n<1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (C)n>1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (D)n>1.8の屈折率を有する吸収性コーティングと、場合により、 (E)外側保護層と を含む層配列を有する多層コートのフレーク状基材に基づく金色効果顔料を含み、 該金色効果顔料が、以下の層構造、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+SiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2) 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、または 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3) を有し、 成分Bが、無機顔料、着色性天然果実、および/または植物抽出物の群から選択される着色剤、および/またはフレーク状、針状、球状、もしくは不規則形状の粒子からなる添加剤を含むことを特徴とする顔料混合物。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前である、平成27年3月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 少なくとも2つの成分AおよびBからなる顔料混合物であって、 成分Aが、 (A)モル比が1:0.5?1:2.0のTiO_(2)とFe_(2)O_(3)の混合物、ならびに場合により、層(A)を基準として<20重量%の量の1以上の金属酸化物からなる高屈折率コーティングと、 (B)n<1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (C)n>1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (D)n>1.8の屈折率を有する吸収性コーティングと、場合により、 (E)外側保護層と を含む層配列を有する多層コートのフレーク状基材に基づく効果顔料を含み、 該効果顔料が、以下の層構造、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+SiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2) 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、または 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3) を有し、 成分Bが、無機顔料、着色性天然果実、および/または植物抽出物の群から選択される着色剤、および/またはフレーク状、針状、球状、もしくは不規則形状の粒子からなる添加剤を含むことを特徴とする顔料混合物。」 2.補正の適否 本件補正は、請求項1について、「効果顔料」を「金色効果顔料」とする補正を含むものであり、これは補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要である「効果顔料」を、当初明細書の段落【0004】及び【0032】に基づいて、「金色効果顔料」に限定するものである。 そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(1)に記載されたとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2003-513140号公報(平成15年4月8日公表。以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。 (a)「【請求項1】 (A)TiO_(2)とFe_(2)O_(3)との比率1:0.1?1:5の混合物からなり、任意に一種または二種以上の金属酸化物を層(A)を基準に20重量%以下含んでなる高屈折率被覆、 (B)屈折率nが1.8以下である無色被覆、 (C)屈折率nが1.8を超える無色被覆、 (D)屈折率nが1.8を超える吸収性被覆、 および任意に (E)外側保護層 を含む少なくとも一つの層配列を含んでなる多層被覆薄片状基材に基づく強力着色干渉顔料。」 (b)「【請求項13】 一種または二種以上のバインダー、任意に一種または二種以上の添加剤、および一種または二種以上の請求項1に記載の干渉顔料を含んでなる顔料製剤。」 (c)「【0009】 (発明の開示) 本発明の目的は、その有利な適用特性が優れており、同時に簡単な方法で調製することができる、高い着色強度および高い隠蔽力を有する金色およびオレンジ-赤色の干渉顔料を提供することである。」 (d)「【0011】 本発明による強力着色干渉顔料は、その極めて高い彩度C(「着色強度」)、非常に高い隠蔽力、および光輝効果のある非常に強い光沢において優れている。例えばEU0 211 351 B1に開示されているような金色真珠光沢顔料に比べて、本発明の金色着色干渉顔料は、非常に高い着色強度および高い隠蔽力を示す。本発明の金色顔料は、既知の金属青銅と等価であり、光沢および着色力において優れており、特に織物上のグラビア印刷において優れている。」 (e)「【0025】 高屈折率の層(A)は、屈折率が好ましくは1.8以上、特に2.0以上であって、TiO_(2)とFe_(2)O_(3)の混合物であり、混同比率は1:0.1?1:5、特に1:1?1:2.5である。層(A)は、好ましくは強度に着色された擬板チタン石である。層(A)の厚さは、10?300nm、好ましくは15?250nm、特に20?200nmである。」 (f)「【0026】 層(A)の着色力の増すために、一種または二種以上の金属酸化物、例えば、Al_(2)O_(3)、Ce_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、ZrO_(2)またはSnO_(2)をTiO_(2)/Fe_(2)O_(3)混合物と混合することが望ましい。層(A)中のTiO_(2)/Fe_(2)O_(3)混合物に加えたさらなる金属酸化物の重量%での割合は、20重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。」 (g)「【0027】 層(D)が同様にTiO_(2)/Fe_(2)O_(3)混合物を含む層である場合、層(D)に基づいて20重量%以下で例えばAl_(2)O_(3)、Ce_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、ZrO_(2)またはSnO_(2)のような金属酸化物の一種または二種以上を添加することは、同様に着色力を増すために望ましい。」 (h)「【0028】 被覆(B)に適した無色の低屈折率材料は、好ましくは、金属酸化物または対応する酸化物水和物、例えば、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、AlO(OH)、B_(2)O_(3)、MgF_(2)、MgSiO_(3)または、前記金属酸化物の混合物である。層(B)の厚さは10?600nm、好ましくは20?500nm、特に20?400nmである。」 (i)「【0029】 高屈折率擬板チタン石層、低屈折率層(B)、高屈折率層(C)および吸収性層(D)で基材を被覆すると、色、光沢および隠蔽力が広い制限範囲内で変化し得る干渉顔料が形成される。」 (j)「【0030】 特に好ましい着色顔料は、以下の層配列を有する。 【0031】 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+Fe_(2)O_(3)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+TiFe_(2)O_(5)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+SiO_(2)(B*)+TiFe_(2)O_(5)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+SiO_(2)(B*)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)(D) 本発明の顔料は、微粉砕された薄片状基材の上に、正確に定められた厚さおよび平滑な表面を有する複数の高および低屈折率干渉層を形成することにより容易に調製することができる。」 (k)「【0037】 本発明による顔料は、多数の色系、好ましくは塗料、被覆および印刷インクの領域からの色系に適している。印刷インクの製造の場合、多くのバインダー、特に水溶性級のバインダーが適しており、例えばBASF、Marabu、Proll、Sericol、Hartmann、Gebr.Schmidt、Sicpa、Aarberg、Siegberg、GSB-Wahl、Follmann、RucoまたはCoates Screen INKS GmbHから販売されている。印刷インクは水系または溶媒系である。顔料は、さらに紙およびプラスチックのレーザーマーキング、農業分野、例えば、温室シートへの適用、および、例えばテント天幕の着色にも適している。 【0038】 すなわち、本発明は塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、表面被覆、プラスチック、セラミック材料、ガラスおよび化粧製造のような製剤中での顔料の使用にも関する。」 (l)「【0039】 言うまでもなく、種々の用途において、多層被覆顔料を、有機染料、有機顔料または他の顔料、例えば、高い隠蔽力を有する透明な白色、着色および黒色顔料との混合物、および薄片状酸化鉄、有機顔料、ホログラフ顔料、LCP(液晶ポリマー)および従来の、金属酸化物被覆雲母およびSiO_(2)薄片等に基づく透明、着色および黒色光沢顔料との混合物として有利に用いることもできる。多層顔料は、市販の顔料および充填剤と任意の比率で混合することができる。」 (m)「【0040】 本発明の顔料は、さらに、流動性顔料製剤および乾燥製剤、特に、一種または二種以上の本発明の顔料、バインダーおよび任意に一種または二種以上の添加剤を含む印刷インクの製造に適している。」 (n)「【0042】 実施例1 粒径10?60μmの雲母100gを、脱塩水2L中で75℃に加熱する。この温度に達すると、脱塩水84.3g中にFeCl_(3)×6H_(2)O 130.5g、TiCl_(4) 46.5gおよびAlCl_(3)×6H_(2)O 11.6gを含む溶液を、激しい撹拌下にゆっくり計量添加する。32%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを2.6の一定値に維持する。この溶液の添加後、混合物をさらに約15分間攪拌する。続いて、32%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.5まで上げ、ナトリウム水ガラス溶液(SiO_(2)13.5%)431gをこのpHでゆっくりと計量添加する。次に、10%塩酸を用いてpHを2.0に下げ、混合物をさらに15分間撹拌し、TiCl_(4)溶液393g(370gのTiCl_(4)/L)を計量添加する。この添加中、32%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを一定値に維持する。続いて、32%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを2.6まで上げ、FeCl_(3)×6H_(2)O 34gおよび脱塩水49gからなる溶液をゆっくりと計量添加する。32%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを2.6の一定値に維持する。この溶液の添加後、混合物をさらに約15分間攪拌する。続いて、32%水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを5.0まで上げ、混合物をさらに15分間攪拌する。 【0043】 顔料を濾過除去し、脱塩水で洗い、110℃で16時間乾燥する。最後に、顔料を850℃で30分間加熱し、強度の色、高い隠蔽力および強力な光沢を有する金色顔料を得る。」 (3)引用例に記載された発明(引用発明) 上記(a)、(b)の記載、すなわち、 「【請求項1】 (A)TiO_(2)とFe_(2)O_(3)との比率1:0.1?1:5の混合物からなり、任意に一種または二種以上の金属酸化物を層(A)を基準に20重量%以下含んでなる高屈折率被覆、 (B)屈折率nが1.8以下である無色被覆、 (C)屈折率nが1.8を超える無色被覆、 (D)屈折率nが1.8を超える吸収性被覆、 および任意に (E)外側保護層 を含む少なくとも一つの層配列を含んでなる多層被覆薄片状基材に基づく強力着色干渉顔料。」との記載と、 「【請求項13】 一種または二種以上のバインダー、任意に一種または二種以上の添加剤、および一種または二種以上の請求項1に記載の干渉顔料を含んでなる顔料製剤。」との記載によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「(A)TiO_(2)とFe_(2)O_(3)との比率1:0.1?1:5の混合物からなり、任意に一種または二種以上の金属酸化物を層(A)を基準に20重量%以下含んでなる高屈折率被覆、 (B)屈折率nが1.8以下である無色被覆、 (C)屈折率nが1.8を超える無色被覆、 (D)屈折率nが1.8を超える吸収性被覆、 および任意に (E)外側保護層 を含む少なくとも一つの層配列を含んでなる多層被覆薄片状基材に基づく強力着色干渉顔料を一種または二種以上と、一種または二種以上のバインダーと、任意に一種または二種以上の添加剤とを含んでなる顔料製剤。」 (4)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明における「比率」、「任意に」、「一種または二種以上の」、「被覆」は、本件補正発明の「モル比」、「場合により」、「1以上の」、「コーティング」に相当するから、引用発明における「(A)TiO_(2)とFe_(2)O_(3)との比率1:0.1?1:5の混合物からなり、任意に一種または二種以上の金属酸化物を層(A)を基準に20重量%以下含んでなる高屈折率被覆」は、モル比及び1以上の金属酸化物を含む割合の範囲が一部重複する点で、本件補正発明における「(A)モル比が1:0.5?1:2.0のTiO_(2)とFe_(2)O_(3)の混合物、ならびに場合により、層(A)を基準として<20重量%の量の1以上の金属酸化物からなる高屈折率コーティング」に相当する。 (イ)引用発明における「(B)屈折率nが1.8以下である無色被覆、 (C)屈折率nが1.8を超える無色被覆、 (D)屈折率nが1.8を超える吸収性被覆、 および任意に (E)外側保護層 を含む少なくとも一つの層配列」は、屈折率及び層配列数の範囲が重複または一部重複する点で、本件補正発明における「(B)n<1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (C)n>1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (D)n>1.8の屈折率を有する吸収性コーティングと、場合により、 (E)外側保護層と を含む層配列」に相当する。 (ウ)引用発明における「多層被覆」、「薄片状」、「干渉顔料」が、本件補正発明の「多層コート」、「フレーク状」、「効果顔料」に相当することは当業者に自明であり、また、引用発明における「着色」と本件補正発明における「金色」とは、「着色」の点で一致するから、引用発明における「多層被覆薄片状基材に基づく強力着色干渉顔料」と、本件補正発明における「多層コートのフレーク状基材に基づく金色効果顔料」とは、「多層コートのフレーク状基材に基づく着色効果顔料」である点で一致する。 (エ)引用発明における「顔料製剤」が、「任意に一種または二種以上の添加剤とを含んでなる」のであるから、引用発明の「顔料製剤」は、一種または二種以上の添加剤を含む態様と一種または二種以上の添加剤を含まない態様を有しているといえ、ここで、引用発明における「顔料製剤」のうち、上記一種または二種以上の添加剤を含む態様とするのであれば、引用発明における「顔料製剤」は、上記強力着色干渉顔料(着色効果顔料)、及び、上記添加剤を含むこととなり、それぞれ、本件補正発明における「成分A」及び「成分B」と一部重複する点で、本件補正発明における「少なくとも2つの成分AおよびBからなる顔料混合物」または単に「顔料混合物」に相当する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「少なくとも2つの成分AおよびBからなる顔料混合物であって、 成分Aが、 (A)モル比が1:0.5?1:2.0のTiO_(2)とFe_(2)O_(3)の混合物、ならびに場合により、層(A)を基準として<20重量%の量の1以上の金属酸化物からなる高屈折率コーティングと、 (B)n<1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (C)n>1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (D)n>1.8の屈折率を有する吸収性コーティングと、場合により、 (E)外側保護層と を含む層配列を有する多層コートのフレーク状基材に基づく着色効果顔料を含み、 成分Bが、添加剤を含む顔料混合物。」 【相違点】 ・成分Aの着色効果顔料の着色について、本件補正発明が「金色」と特定しているのに対して、引用発明は特定していない点。(以下「相違点1」という。) ・成分Aの顔料について、本件補正発明は、「顔料が、以下の層構造、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+SiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2) 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、または 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)」 と特定しているのに対して、引用発明は、特定していない点。(以下「相違点2」という。) ・成分Bの添加剤について、本願発明が「無機顔料、着色性天然果実、および/または植物抽出物の群から選択される着色剤、および/またはフレーク状、針状、球状、もしくは不規則形状の粒子からなる添加剤」と特定しているのに対して、引用発明は特定していない点。(以下「相違点3」という。) (5)判断 (ア)相違点1について検討する。 引用例の上記(c)の「本発明の目的は、その有利な適用特性が優れており、同時に簡単な方法で調製することができる、高い着色強度および高い隠蔽力を有する金色およびオレンジ-赤色の干渉顔料を提供することである。」(当審注:下線は当審において付記したものである。以下同じ。)との記載によれば、引用発明の顔料の着色として、金色を例示しているといえる。 そして、引用例の上記(n)によれば、引用発明の顔料の実施例として「金色顔料」が記載されており、「着色」が「金色」であるといえる。 したがって、相違点1は実質的なものではないか、仮にそうでないとしても、引用発明における着色干渉顔料を金色に特定することは、引用例の記載事項に基づけば、当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点2について検討する。 引用例の上記(j)の【0030】によれば、「特に好ましい着色顔料は、以下の層配列を有する。」と記載され、具体的層配列としては、同じく【0031】によれば、 「基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+Fe_(2)O_(3)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+TiFe_(2)O_(5)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+SiO_(2)(B^(*))+TiFe_(2)O_(5)(D) 基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+SiO_(2)(B^(*))+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)(D)」と記載されている。 ここで、引用例の上記(e)で「高屈折率の層(A)は、屈折率が好ましくは1.8以上、特に2.0以上であって、TiO_(2)とFe_(2)O_(3)の混合物であり、・・・(以下略)」と、同じく上記(f)で「層(A)の着色力の増すために、一種または二種以上の金属酸化物、例えば、Al_(2)O_(3)、Ce_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、ZrO_(2)またはSnO_(2)をTiO_(2)/Fe_(2)O_(3)混合物と混合することが望ましい。層(A)中のTiO_(2)/Fe_(2)O_(3)混合物に加えた・・・(以下略)」と、同じく上記(g)で「層(D)が同様にTiO_(2)/Fe_(2)O_(3)混合物を含む層である場合、・・・(以下略)」と記載されていることから、引用例の上記「TiFe_(2)O_(5)(A)」及び「TiFe_(2)O_(5)(D)」は、「TiO_(2)/Fe_(2)O_(3)(A)」及び「TiO_(2)/Fe_(2)O_(3)(D)」と置き換えることができるといえる。 してみると、上記具体的層配列の内、 引用例の「基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)(D)」、「基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+TiFe_(2)O_(5)(D)」、「基材+TiFe_(2)O_(5)(A)+SiO_(2)(B)+TiO_(2)(C)+SiO_(2)(B^(*))+TiFe_(2)O_(5)(D)」は、本件補正発明の「基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、」、「基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)」、「基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+SiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)」と一致することから、上記相違点2は実質的なものではないか、仮にそうでないとしても、引用例の記載事項を考慮するならば、当業者が適宜なし得たことである。 (ウ)相違点3について検討する。 本件補正発明の成分Bである「無機顔料、着色性天然果実、および/または植物抽出物の群から選択される着色剤、および/またはフレーク状、針状、球状、もしくは不規則形状の粒子からなる添加剤」に関して、本件明細書の【0006】によれば、「有機もしくは無機の添加剤」と記載されていることから、上記記載には、例えば、成分Bとして、無機顔料からなる添加剤の態様を含んでいることが解る。 一方、引用例の上記(l)には、顔料(「成分A」に相当)と他の材料を混合させることについて、「言うまでもなく、種々の用途において、多層被覆顔料を、有機染料、有機顔料または他の顔料、例えば、高い隠蔽力を有する透明な白色、着色および黒色顔料との混合物、および薄片状酸化鉄、有機顔料、ホログラフ顔料、LCP(液晶ポリマー)および従来の、金属酸化物被覆雲母およびSiO_(2)薄片等に基づく透明、着色および黒色光沢顔料との混合物として有利に用いることもできる。多層顔料は、市販の顔料および充填剤と任意の比率で混合することができる。」と記載されており、「他の顔料」として、「薄片状酸化鉄」、「金属酸化物被覆雲母およびSiO_(2)薄片等に基づく透明、着色および黒色光沢顔料」が例示されており、ここで、「酸化鉄」、「金属酸化物被覆雲母」、「Si_(2)O」が無機の材料であることは当業者に自明であることから、これらの顔料は「無機顔料」であるといえる。 したがって、該相違点3は、実質的なものでないか、そうでないとしても、引用例の記載事項に基づいて、当業者が適宜なし得たものである。 (エ)したがって、(ア)?(ウ)における検討からすると、本件補正発明と、引用発明との間に相違はなく、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号における刊行物に記載された発明に該当し、あるいは、本件補正発明は、引用例の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反しているから、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (オ)本件請求人の主張について なお、本件請求人は、平成28年3月31日付け手続補正書により補正された審判請求書の第3頁の「d)請求項1に係る発明と引用文献1の発明との対比」の欄で、『引用文献1は、本出願人による先行出願に係るもので、本願明細書中でも説明しているように、本願発明で用いるのと同様な4層構造を有する顔料を開示する。 しかし、この文献は、この顔料に関し、一般的な混合使用として、 「言うまでもなく、種々の用途において、多層被覆顔料を有機染料、有機顔料または他の顔料、例えば高い隠蔽力を有する透明な白色、着色および黒色顔料との混合物、および薄片状酸化鉄、有機顔料、ホログラフ顔料、LCP(液晶ポリマー)および従来の、金属酸化物被覆雲母およびSiO2薄片等に基づく透明、着色および黒色光沢顔料との混合物として有利に用いることもできる。多層顔料は、市販の顔料および充填剤と任意の割合で混合することができる。」(段落0046)と記載するだけである。 すなわち、この顔料を、特定された他の着色剤および/または添加剤と組み合わせた形態で使用することについては開示していない点で相違する。特にこの混合物を化粧品配合物または食品若しくは医薬製品における着色剤として使用することについては開示していない。したがって、引用文献1は、本願発明の顔料混合物を開示するものではない。』と主張する。 当該主張について検討するに、上記(4)の(エ)においても触れたように、本件補正発明と引用発明とは、「顔料混合物」である点で一致していると認められる。 そして、上記下線部分については、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているだけであって、本願請求項1の記載に基づくものでないことから、上記本件審判請求人の主張は採用できない。 仮に、引用例には、「顔料」の発明が記載されているだけであって、「顔料混合物」の発明が実質的に記載されていないとしても、引用例の上記(l)の記載によれば、一般に、多層被覆顔料は、例えば、黒色顔料等の着色剤、薄片状酸化鉄(フレーク状酸化鉄)等の顔料、あるいは、充填剤などとの混合物として、種々の用途において用いることができるといえる。また、同じく、上記(l)には、「市販の顔料および充填剤と任意の比率で混合することができる。」とも記載され、引用例の上記(k)には、「本発明は塗料、印刷インク、有価証券印刷インク、表面被覆、プラスチック、セラミック材料、ガラスおよび化粧製造のような製剤中での顔料の使用にも関する。」と記載されていることから、少なくとも化粧製造のような製剤(化粧品配合物)における顔料(着色剤)として使用できることが開示されており、その他、種々の技術分野において、多層被覆顔料に市販の顔料等を任意に混合することは、周知の技術である。(この周知技術については、例えば、特表2003-508575号公報の請求項1、特表2000-515928号公報の請求項9、特開2000-1628号公報の請求項11、特開2003-55575号公報の請求項10、特開2000-191939号公報の請求項1等にも記載されている。) 他方、本件補正発明における成分Bは、「無機顔料、着色性天然果実、および/または植物抽出物の群から選択される着色剤、および/またはフレーク状、針状、球状、もしくは不規則形状の粒子からなる添加剤を含む」ことから、例えば、成分Bとしては、無機顔料からなる添加剤(着色剤)や、フレーク状粒子からなる添加剤(「添加剤」とは、着色剤、顔料、充填剤等、その機能をなんら限定することがなく、単に、添加される剤であると解される。)が包含されている。 また、本件補正発明における効果、すなわち、特定の多層被覆顔料(成分A)に成分Bを混合し、顔料混合物とすることで得られる効果は、本件明細書をみても【0004】段落に「驚くことに、さらなる着色料および/または添加剤と組み合わせた多層コートのフレーク状基材に基づくエフェクト顔料、好ましくは金色顔料を含む顔料混合物は、非常に柔らかい肌感触を与え、光安定性であり、流出/移動せず、非毒性であり、高い隠蔽力を有することが今や見出されている。」と記載されているのみで、「肌感触」や「隠蔽力」がどの程度向上しているのかについては、実施例等には一切記載されていない。 したがって、多層被覆顔料に、例えば、無機顔料からなる添加剤(着色剤)や、フレーク状粒子からなる添加剤を混合し、顔料混合物とすることは、当業者が容易になし得たことであり、当業者の予測の範囲を超える効果を奏するものともいえない。 よって、引用例に「顔料混合物」の発明が記載されていないとしても、引用例の記載事項に基づけば、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記本件審判請求人の主張は採用できない。 (カ)小括 上記(ア)?(エ)において本件補正発明と引用発明とを比較して検討したように、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。そして、上記(オ)において検討したように、仮に、引用例には顔料混合物が記載されていないとしても、同様に、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (6)本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成28年2月5日になされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成27年3月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載されたとおりのものである。再掲すれば、次のとおり。 「【請求項1】 少なくとも2つの成分AおよびBからなる顔料混合物であって、 成分Aが、 (A)モル比が1:0.5?1:2.0のTiO_(2)とFe_(2)O_(3)の混合物、ならびに場合により、層(A)を基準として<20重量%の量の1以上の金属酸化物からなる高屈折率コーティングと、 (B)n<1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (C)n>1.8の屈折率を有する無色コーティングと、 (D)n>1.8の屈折率を有する吸収性コーティングと、場合により、 (E)外側保護層と を含む層配列を有する多層コートのフレーク状基材に基づく効果顔料を含み、 該効果顔料が、以下の層構造、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO2、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)、 基材+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+SiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2) 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)、または 基材+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3)/TiO_(2)+SiO_(2)+TiO_(2)+Fe_(2)O_(3) を有し、 成分Bが、無機顔料、着色性天然果実、および/または植物抽出物の群から選択される着色剤、および/またはフレーク状、針状、球状、もしくは不規則形状の粒子からなる添加剤を含むことを特徴とする顔料混合物。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明の「金色効果顔料」において、「金色」との限定事項を削除し、単に「効果顔料」としたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに「効果顔料」を「金色」と限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2.(5)に記載したとおり、刊行物に記載された発明であるか、当該刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、同条第2項に違反するものであるから、特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項2?15に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-11-29 |
結審通知日 | 2016-12-06 |
審決日 | 2016-12-21 |
出願番号 | 特願2013-240893(P2013-240893) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C09C)
P 1 8・ 121- Z (C09C) P 1 8・ 113- Z (C09C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁科 努 |
特許庁審判長 |
國島 明弘 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 井上 能宏 |
発明の名称 | 顔料混合物ならびに化粧品および食品および医薬品分野におけるその使用 |
代理人 | 緒方 雅昭 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |