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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1328206
審判番号 不服2016-3694  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-09 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2011-137804「ナビゲーション可能な位相図」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日出願公開、特開2011-252909〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月3日(パリ条約による優先権主張2010年6月3日 アメリカ合衆国)に特許法第36条の2第1項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願であって、平成23年7月26日に日本語による翻訳文が提出され、平成27年1月19日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成27年5月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年11月2日付けで拒絶査定がされ、平成28年3月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成28年7月27日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年3月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年3月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
(1)本件補正の内容
平成28年3月9日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の(すなわち、平成27年5月26日提出の手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
場所に基づく情報を提供する方法であって、
場所関連情報のためのクエリをコンピュータ装置内に受け取るステップと、
正縮尺地図内の前記場所関連情報にアクセスするステップと、
前記場所関連情報に関するとともに位相図内の1又はそれ以上の地点に対応する前記正縮尺地図内の1又はそれ以上の地点を識別するステップと、
前記場所関連情報を前記位相図内の前記対応する1又はそれ以上の地点に対して、前記場所関連情報の近くの領域を示す正縮尺地図の部分を強調表示したものを重ね合わせて表示するステップと、
を含むことを特徴とする方法。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
場所に基づく情報を提供する方法であって、
場所関連情報のためのクエリをコンピュータ装置内に受け取るステップと、
正縮尺地図内の前記場所関連情報にアクセスするステップと、
前記場所関連情報に関するとともに位相図内の1又はそれ以上の地点に対応する前記正縮尺地図内の1又はそれ以上の地点を識別するステップであって、前記位相図は前記正縮尺地図から得られたものではないステップと、
前記場所関連情報を前記位相図内の前記対応する1又はそれ以上の地点に対して、前記場所関連情報の近くの領域を示す正縮尺地図の部分を強調表示したものを重ね合わせて表示するステップと、
を含むことを特徴とする方法。」
(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「前記場所関連情報に関するとともに位相図内の1又はそれ以上の地点に対応する前記正縮尺地図内の1又はそれ以上の地点を識別するステップ」について、「であって、前記位相図は前記正縮尺地図から得られたものではないステップ」という事項を付加して限定することにより、請求項1に記載された発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 独立特許要件についての判断
本件補正における特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2-1 引用文献
2-1-1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-177028号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「電子地図表示装置」に関し、図面とともに、次のような記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。

(ア)「【要約】
【課題】 探索された経路上の地図情報を容易に確認できる電子地図表示装置。
【解決手段】 経路を探索し、探索された経路を表示画面の上部分においてスクロールバー状に表示する。スクロールバー60は、経路の出発地と目的地を端点とし、経由地を含めてそれぞれの名称が対応する位置に表示される。スライダ61が利用者によって移動操作可能とされるとともに、スライダ位置にスライダ位置付近の交差点名称62が表示される。表示画面の下部分には、スライダ位置を中心とした地図が表示される。これによって、スクロールバー60で経路がどこを経由するかを認識できるとともに、スライダ位置に表示されている交差点名で、スライダの位置を認識することができる。スライダを移動すれば、移動先の地図が表示されるから、経路上で地点を指定、指定した地点だけの地図を表示させることができ、経路上の地図確認が容易になる。」(第1ページ【要約】)

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、経路を探索する機能を有する電子地図表示装置に関し、特に探索された経路を確認する際、経路上の地図情報を容易に得る電子地図表示装置に関する。」(段落【0001】)

(ウ)「【0002】
【従来の技術】電子地図表示装置において例えばナビゲーションシステムのように、出発地と目的地などの探索情報を入力し、その探索情報に基づいて目的地までの経路を探索し、探索された経路を地図画面上に表示して道案内をするものがある。このように探索された経路を確認する場合、例えばリモコンなどを操作し、表示画面をスクロールしながら確認することが行われている。しかし、この作業をしているとき、利用者が常に、地図表示の動きを注視して、移動操作することが必要なため、煩わしい。また、地図画面の移動は、経路に沿って行う必要があるから、経路が長く、目的地付近の地図情報を確認する場合は、時間がかかる。
【0003】これらの問題を解決すべく、例えば特開平11-218427号公報では、探索された経路上に、交差点または分岐点ごとあるいは一定の時間または一定距離ごとに所定点を設定し、経路に沿って、各所定点を中心とした地図情報を順次に表示することで、経路を確認するようにしている。この方法によれば、利用者がリモコンなどを操作することなく、経路を確認することができるとともに、確認に要する時間の短縮が可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、経路の確認に関して、経路の全区間でなく、特定区間、例えばいつも渋滞しやすい地点だけの道路状況を確認したいことが考えられる。こうした要求に対しては、上記何れの従来例でも、出発地から辿っていく必要があるから、不必要な地図情報が表示される。また後者の場合は、所定点だけの表示とはいえ、経路が長いと、依然として時間がかかり不便であるという問題があった。本発明は、上記従来の問題点に鑑み、探索された経路上において、地点を指定し、指定した地点だけの地図情報を表示させることが可能な電子地図表示装置を提供することを目的としている。」(段落【0002】ないし【0004】)

(エ)「【0005】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1記載の発明は、少なくとも経路計算用データと表示用地図データとを記憶するデータ記憶部と、経路を検索するための情報入力を行うユーザ入力装置と、前記記憶されている経路計算用データを用いて、前記ユーザ入力装置によって入力された経路探索情報に基づいて、経路を計算する経路計算部と、前記経路計算部によって求められた経路情報を記憶する経路記憶部と、前記経路記憶部に記憶されている経路情報を用いて、表示画面においてスクロールバー状に経路を表示するとともに、前記スクロールバー上のスライダ位置に相当する地点付近のランドマークの名称を表示するスクロールバー描画部と、前記スクロールバー上のスライダは利用者によって移動操作可能とされ、前記スクロールバー上の前記スライダ位置に基づいて、前記表示用地図データから所定範囲内の表示用地図データを抽出し、表示画面において地図表示を行う地図描画部とを有するものとした。
【0006】請求項2記載の発明は、前記スクロールバー描画部が、出発地からスライダ位置地点までの距離を表示するものとした。
【0007】請求項3、4記載の発明は、前記スクロールバー描画部が、出発地、および目的地、更には経由地の名称を前記スクロールバー上に表示するものとした。
【0008】請求項5記載の発明は、前記スクロールバー描画部が、スライダ位置地点以外の経路上のランドマークの名称をも前記スクロールバー上に表示するものとした。
【0009】請求項6記載の発明は、拡大表示操作手段が設けられ、該拡大表示操作手段が操作された場合には、前記スクロールバー描画部は、前記スクロールバーにおいて前記スライダ位置付近を拡大表示するものとした。」(段落【0005】ないし【0009】)

(オ)「【0010】
【発明の効果】請求項1記載の発明では、探索情報に基づいて経路を計算し、計算された経路をスクロールバーで表示するととに、スクロールバー上のスライダ位置を中心とした地図を表示する。スクロールバーには、スライダ位置に相当する地点付近のランドマークの名称が表示されている。このため、スライダ位置を変化させれば、経路上でのスクロールが可能になる。移動したスライダが経路上でどのランドマーク付近にあるかを確かめながら、必要な地点まで移動し、その地点だけの地図情報を表示させることができる。地図画面をスクロールまたは順次に表示する従来例より、短時間で所定地点の地図情報を確認することが可能になる。
【0011】請求項2記載の発明では、出発地からスライダ位置地点までの距離を表示するようにしたので、出発地からの距離の確認をしながら、スライダを移動することができる。
【0012】請求項3記載の発明では、スクロールバーにおいて、出発地、および目的地の各名称は、スクロールバー上のその地点の対応位置に表示されるので、スライダを移動する際の位置参考にもなる。更に請求項4のように経由地の名称を表示すると、スクロールバーだけでも、経路はどこを経由するかを確認することができる。
【0013】請求項5記載の発明では、スクロールバーにおいて、スライダ位置地点以外のランドマークの名称をも表示するようにしたので、ランドマークを参考にして、スライダを移動することができる。
【0014】請求項6記載の発明では、拡大表示操作手段を操作すれば、スクロールバーにおいてスライダ位置付近を拡大表示するようにしたので、必要に応じて、スライダ位置部分だけを拡大表示し、これまで表示できなかったランドマークなどを表示でき、細かな位置確認が可能なため、地点の指定がより正確になる。」(段落【0010】ないし【0014】)

(カ)「【0015】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施例により説明する。図1は、電子地図表示装置として自動車に利用されるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステムは、データ記憶部10と、ユーザ入力装置20、演算部30、現在位置検出部40およびディスプレイ50から構成される。データ記憶部10には、経路計算用データ記憶部101と、表示用地図データ記憶部102が設定され、それぞれに経路計算用データと、表示用地図データが記憶されている。これらのデータを記憶するメディアとしては、例えばCD-ROM、ICカード、光磁気ディスクなどを利用することができる。
【0016】経路計算用データは、道路形状などの情報を含まず、道路地図(都市間高速道路、都市高速道路、有料道路、国道、県道、主要地方道などを含む)上の道路接続や規制等の情報を中心としたノードデータである。ノードは、道路上の分岐点、交差点に設定される点で、各ノードを繋いだ線をリンクという。ノードデータは、各ノードの位置座標と、交差点名がある場合は交差点名称、そしてノードに連結するリンクの情報をもっている。リンク情報には、リンク番号、道路種別(都市間高速道路、都市高速道路、有料道路、国道、県道、主要地方道など)、規制速度などの情報が含まれている。
【0017】表示用地図データ記憶部102に記憶されている表示用地図データは、道路、地名、施設、鉄道、河川等の地図要素を持ち、住宅地図のような詳細な地図情報が含まれる地図データである。
【0018】ユーザ入力装置20は、タッチパネルおよびリモコンを利用し、出発地、目的地及び経由地を設定し、経路探索情報などの指定ができる経路探索用入力部201と、後述する経路計算で求められた経路上の地点を指定する経路表示入力部202を有している。
【0019】演算部30は、経路計算部301と、経路記憶部302と、経路表示管理部303と、スクロールバー描画部304および地図描画部305を有している。経路計算部301では、経路探索用入力部201から、利用者が設定した出発地、目的地および経由地情報を入力し、これらの地点を含む領域の経路計算用データを経路計算用データ記憶部101から読み込み、利用者が指定した探索条件に基づいて経路計算を行う。経路計算においては、ダイクストラ法等により出発地から目的地までの最小のリンクコストとなる経路を求める。ここでリンクコストを見積もるときに、走行距離、走行時間、高速道路の利用の有無、右左折回数、幹線道路の走行確率、事故多発地点の回避など利用者が設定した探索条件を考慮する。
【0020】経路記憶部302は、経路計算部301で求められた経路とその経路上にある交差点情報を保存する。スクロールバー描画部304は、経路記憶部302に保存されている経路情報を用いて、ディスプレイ50においてスクロールバー状に経路を表示する。スクロールバー上の、出発地、目的地および経由地の位置にそれぞれの名称が表示される。スクロールバーのスライダは、経路上の地点を示す。このスライダ位置に、出発地からスライダ位置に相当する地点(スライダ位置地点)までの距離と、スライダ位置地点付近のランドマークの名称が表示される。スライダが利用者によって移動可能とされ、スライダが移動した場合、距離および名称が変わる。
【0021】地図描画部305はスライダ位置地点を基準として、表示用データ記憶部から所定範囲の表示用地図データを入力し、ディスプレイ50において地図表示を行う。経路表示管理部303は、スクロールバー描画部304と地図描画部305における描画処理を管理する。現在位置検出部401は、GPS航法や車速パルスとジャイロを用いた自律航法、またはそれらを併用したハイブリッド方式を用いて現在位置を検出する。ここで検出した現在位置情報が経路管理部303に出力され、この現在位置情報を基に、スクロールバーには現在位置が表示される。」(段落【0015】ないし【0021】)

(キ)「【0022】図2は、上記構成の全体の処理の流れを示すフローチャートである。主な処理は、経路計算と経路表示に分かれる。そして、経路表示については経路表示の初期化と、経路表示中の描画更新がある。すなわち、まず、ステップ100において、利用者から経路探索要求があるか否かを判断し、探索要求があった場合には、ステップ101において、入力された探索条件を基に経路を計算する。経路計算が完了し、ステップ102において、利用者から経路表示要求があることを判断すると、ステップ103において、経路表示の初期化処理を行う。この初期化処理で、ディスプレイ50にスクロールバーとスクロールバー上のスライダ位置地点に対応した地図が表示される。
【0023】ステップ104において、利用者がスライダを移動したか否かを判断し、移動しなかった場合は、ステップ106において経路探索要求がある否かの判断を経て、ステップ104またはステップ101に戻る。スライダ位置を移動したと判断すると、利用者が経路の確認をしようとしているものとして、ステップ105において、描画の更新を行う。この描画更新によって、移動したスライダ位置地点に対応した地図が表示される。この後、ステップ106へ進む。上記の処理について、以下、コラボレーション図を用いてさらに詳細に説明する。
【0024】まず、ステップ101における経路計算処理について、図3のコラボレーション図を用いて説明する。まず、経路探索用入力部201によって、目的地、経由地など経路上で通りたい地点と探索情報を利用者が入力する。目的地や経由地は、住所、電話番号、施設名称による検索や地図表示などによって入力される。出発地については、利用者が指定してもよいし、現在位置検出部40が検出した現在位置を出発地としてもよい。また、探索条件については、一般道路/有料道路の優先、時間優先/距離優先等を指定することが可能である。
【0025】このように、経路探索入力部201で、経路計算に必要な出発地、目的地および経由地情報が入力された後、経路計算部301において経路計算を行う。経路計算部301は、経路計算用データ記憶部101から出発地、目的地を含む(経由地が設定された場合は経由地を含む)領域の経路計算用データを読み込んで経路計算を行い、経路計算結果をその経路上にある交差点情報とともに経路記憶部302に保存する。
【0026】次に、経路表示処理について説明する。経路上の特定地点を表示するために、図4に示すような出発地と目的地を端点、もしくは図5のように現在位置と目的地を端点とした路線図をスクロールバーを用いて表現する。図4において、スクロールバー60には出発地、目的地の他に、経由地も合わせて表示され、出発地と、目的地および経由地の位置には、それぞれの名称が表示されるとともに、出発地(図5の例では現在位置)からの距離が表示されている。経由地の指定がない場合は、経路上にある適当なランドマーク、例えば経路が高速道路を利用する場合には高速の入口インタチェンジ(IC)/出口インタチェンジ(IC)、高速を利用しない場合は経路上で右左折が生じる幹線道路の交差点等を経由地の代わりに用いる。
【0027】スライダ61の位置には、出発地(もしくは現在位置)からの距離に加えて、スライダ位置地点の最寄交差点が交差点名を有する場合には、交差点名称62が表示される。このスライダは、利用者が経路上でのスクロールをし、表示したい地図の地点を指定できる。また、端点が出発地の場合、スクロールバーには現在位置63も合わせて表示される。なお、上記表示画面には、例えば図6に示すように、画面の右下方に路線図拡大のボタン64を設け、スクロールバーにおいてスライダ位置付近を拡大表示することもできる。さらに図7のように、拡大した部分に、拡大する前に表示できなかった交差点などのランドマーク情報を表示してもよい。
【0028】スライダを移動する度に、付随情報としてスライダ位置に表示されている距離および交差点名称も更新する。スライダ位置に距離および交差点名称を表示させるのは、地図描画よりも交差点名称だけを描く方が、描画速度が速いためであり、仮に利用者がその付近の地名を知っている場合は、地図の描画が終る前に交差点名称を確かめるだけで次にスクロールすることできる。地図の更新はスライダ位置が移動する度にしてもよいし、利用者がスクロールを休止させた時点に行ってもよい。これ以降は、スライダ位置が移動する度に地図を更新する例について説明する。
【0029】まず、ステップ103における経路表示の初期化について説明する。図8は、経路表示の初期化処理を示すコラボレーション図である。利用者が経路表示入力部202において経路表示を要求すると、経路表示管理部303がスクロールバー描画部304と地図描画部305にそれぞれ先に述べたスクロールバー描画と地図描画を要求する。これによって、スクロールバー描画部304は、経路記憶部302に保存されている経路計算結果を基に、現在位置をスクロールバーのスライダ位置としてスクロールバーの表示を行う。地図描画部305は、表示用地図データ記憶部102から現在位置付近の地図データを読み込み、現在位置を基準とした地図表示を行う。これにより、スライダが現在位置を示して、現在位置を中心とした地図情報が表示されるので、車両の走行にしたがった地図表示が行われる。
【0030】次に、ステップ104、105におけるスライダ位置の移動判断および描画更新に関する処理について説明する。図9は、経路表示中の更新処理を示すコラボレーション図である。まず、利用者が経路表示入力部202を用いてスクロールバーのスライダ位置を移動するとこの処理が起動する。スライダを移動するには、例えば利用者がタッチパネルに触って操作してもよいし、または図10に示すようなリモコン200についたジョグダイヤル202Aを操作してもよい。
【0031】経路表示管理部303は、スライダ位置が変化する度に、スクロールバー描画部304に交差点名表示の更新、地図描画部305に地図表示の更新を指示する。つまり、利用者がスライダを移動操作したときのみ、スクロールバーと地図の更新を行い、操作を休止する場合には処理を行わない。スクロールバー描画部304は、経路記憶部302からスライダ位置の付近の交差点情報を読み込み、交差点名のある交差点であれば、その位置に交差点名称を表示するとともに、出発地からの距離を示す。地図描画部305は、表示用地図データ記憶部102から、スライダ位置地点を中心とした地図データを入力し、スライダ位置に対応した地図情報を表示する。」(段落【0022】ないし【0031】)

(ク)「【0032】次に、経路表示更新のうち、スライダ位置に表示されている交差点名称および距離表示の更新について、図11のフローチャートを用いて説明する。利用者がスクロールバーのスライダ位置を移動すると、経路表示管理部303は、まずスクロールバー描画部304に交差点名称と距離を更新するように指示する。これによって、ステップ1101において、スクロールバー描画部304は、まず現在表示されている交差点名称と距離の表示をクリアする。
【0033】次に、ステップ1102において、出発地からスライダ位置地点までの距離を求める。ステップ1103において、経路記憶部302に保存されている経路計算結果と交差点情報からスライダ位置に対応する地点に最も近い交差点を調べ、その交差点の交差点名称及び緯度経度をスクロールバー描画部304に知らせる。この情報をもとに、ステップ1104において、スクロールバー描画部304はスライダ位置に交差点名称を表示する。その後、その交差点が対応する緯度経度情報を経路表示管理部303に送信して終了する。
【0034】経路表示管理部303は、地図描画部305にスクロールバー表示部304が送信してきた緯度経度を基準として地図を描画するように地図描画部305に指示する。これによって、地図描画部305は、この緯度経路情報を基に、表示用地図データ記憶部102から地図情報を読み込み、地図表示を行う。地図表示では、経路表示管理部303から地図更新の指示がある度に、たとえ前回の地図描画が終了していなくても、その描画処理を中止して次の地図の描画を行うようになっている。このように描画処理を中止するのは、スライダの位置移動に対する地図描画の応答時間を短くするためである。これを実現するには、ダブルバッファで行う。
【0035】図12は、地図描画部305の処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、地図描画部305が地図描画をしていない、待ち状態から始まる場合について述べる。ステップ1201での待ち状態で地図描画要求が起きた場合は、バッファ1をクリアし、ステップ1202においてバッファ1に表示用地図データを読み込んで、地図の描画を行う。
【0036】ステップ1203において、バッファ1に地図を描画している間に新たな描画要求があるか否かを判断する。なかった場合は、ステップ1204で描画が完了したか否かを判断し、完了しなかったときに、ステップ1202に戻り、描画を続ける。ステップ1203で新たな描画要求があった場合には、バッファ1をクリアして、ステップ1202に戻り、新たな表示用地図データを読み込んで、地図を描画する。ステップ1204で、描画が完了したと判断したときには、ステップ1205においてバッファ1に描画した地図をバッファ2にコピーして、処理が完了する。バッファ2の地図がディスプレイ50に出力されて地図表示される。
【0037】本実施例は、以上のように構成され、探索された経路をスクロールバーで表示するとともに、スクロールバー上のスライダ位置に対応した地図表示をするようになっているので、スライダを移動して、特定の地点を指定し、その地点の地図を表示させることができるから、短時間でかつ容易に経路確認ができる。
【0038】また、スクロールバーのスライダ位置には、出発地からの距離および付近の交差点名称を表示するようになっているので、距離と交差点名称を参考しながら、スライダを移動することができる。また、スライダを移動する際に、新たなに地図情報が入力された場合に、前の地図の描画が継続中であっても中止するから、すべての地図描画が完了しなくても、スライダを移動することができるから、スライダ位置に表示されている交差点名などの位置がわかったときに、より早く次へ移動し、地図表示をしたい地点に早く辿りつけるという効果が得られる。
【0039】また、スクロールバーにおいて、出発地、目的地および経由地位置、さらにランドマーク位置に、それぞれの名称を表示するようになっているので、スクロールバーだけでも、経路はどこを経由するかを確認することができるとともに、それを参考にしてスライダを移動することもできる。」(段落【0032】ないし【0039】)

(2)引用文献1の記載から分かること
上記(1)及び図1ないし12の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていることが分かる。

(サ)上記(1)(ア)ないし(ク)及び図1ないし12の記載から、引用文献1には、探索情報に基づいて経路を計算し、計算された経路をスクロールバーで表示するととに、スクロールバー上のスライダ位置を中心とした地図を表示する電子地図表示装置及び地図情報表示方法が記載されていることが分かる。

(シ)上記(1)(ア)ないし(ク)及び図1ないし12の記載から、引用文献1に記載された地図情報表示方法において、表示画面の上部分には、経路の出発地と目的地を端点とし、経由地を含めてそれぞれの名称が対応する位置に表示され、スライダ61を有するスクロールバー60が表示され、表示画面の下部分には、スクロールバー上のスライダ位置を中心とした地図が表示されることが分かる。また、段落【0026】の記載から、スクロールバー60は、経路上の特定地点を表示するために、図4に示すように出発地と目的地を端点、もしくは図5のように現在位置と目的地を端点とした路線図をスクロールバーを用いて表現するものであることが分かる。

(ス)上記(1)(ア)ないし(ク)(特に段落【0015】ないし【0017】)及び図1ないし12の記載から、引用文献1に記載された地図情報表示方法において、ナビゲーションシステムは、データ記憶部10と、ユーザ入力装置20、演算部30、現在位置検出部40およびディスプレイ50から構成され、データ記憶部10には、経路計算用データ記憶部101と、表示用地図データ記憶部102が設定され、それぞれに経路計算用データと、表示用地図データが記憶されることが分かる。

(セ)上記(1)(ア)ないし(ク)(特に段落【0015】ないし【0017】)及び図1ないし12の記載から、引用文献1に記載された地図情報表示方法において、経路計算用データ記憶部101に記憶されている経路計算用データは、道路形状などの情報を含まず、道路地図(都市間高速道路、都市高速道路、有料道路、国道、県道、主要地方道などを含む)上の道路接続や規制等の情報を中心としたノードデータであり、一方、表示用地図データ記憶部102に記憶されている表示用地図データは、道路、地名、施設、鉄道、河川等の地図要素を持ち、住宅地図のような詳細な地図情報が含まれる地図データであることが分かる。したがって、経路計算用データに基づくスクロールバーと、表示用地図データに基づく地図とは、異なるデータに基づくものであり、スクロールバーは表示用地図データから得られたものではないことが分かる。

(ソ)上記(1)(ア)ないし(ク)(特に段落【0018】)及び図1ないし12の記載から、引用文献1に記載された地図情報表示方法において、ユーザ入力装置20は、タッチパネルおよびリモコンを利用し、出発地、目的地及び経由地を設定(情報入力)し、経路探索情報などの指定ができる経路探索用入力部201と、経路計算で求められた経路上の地点を指定する経路表示入力部202を有していることが分かる。

(タ)上記(1)(ア)ないし(ク)(特に段落【0021】)及び図1ないし12の記載から、引用文献1に記載された地図情報表示方法において、地図描画部305は(スライダ位置地点を基準として)、表示用地図データ記憶部102(段落【0021】に記載された「表示用データ記憶部」は、「表示用地図データ記憶部102」の誤記と認める。)から所定範囲の表示用地図データを入力し、ディスプレイ50において地図表示を行うことが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1ないし12の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「地図情報表示方法であって、
出発地、目的地及び経由地の情報のための情報入力を電子地図表示装置内に受け取るステップと、
表示用地図データ記憶部102に記憶されている表示用地図データ内の前記出発地、目的地及び経由地の情報を地図描画部305に入力するステップと、
前記出発地、目的地及び経由地の情報に関するとともにスクロールバー内の1又はそれ以上の地点に対応する前記表示用地図データ内のスライダ位置に相当する地点を指定するステップであって、前記スクロールバーは前記表示用地図データから得られたものではないステップと、
前記出発地、目的地及び経由地の情報を前記スクロールバー内の前記対応するスライダ位置に相当する地点に対して、前記目的地及び経由地の情報の近くの領域を示す表示用地図データを重ね合わせて表示するステップと、
を含む方法。」

2-1-2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-283236号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「デフォルメ地図作成装置及びデフォルメ地図作成方法」に関し、図面とともに、次のような記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付したものである。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、地図として機能するための地図情報を損なわない程度に、記載された移動経路や目標物をデフォルメ処理した地図を作成するデフォルメ地図作成装置およびデフォルメ地図作成方法に関するものである。」(段落【0001】)

(イ)「【0007】図17は従来のデフォルメ地図作成装置を用いて作成された2点間経路のデフォルメ地図の一例を示す図である。ここでは、JR線の猪名寺駅にいるデフォルメ地図の利用者が宝塚C郵便局まで移動しようとしている場合に作成されたデフォルメ地図を示している。
【0008】図17において、101は猪名寺駅(出発点)、102は宝塚C郵便局(目的点)、103は宝塚C郵便局102の周辺駅である宝塚駅(目標物)、104は猪名寺駅101と宝塚駅103とを結ぶJR線(鉄道移動経路)であり、鉄道(移動手段、公共交通機関)によって移動する。105?108は宝塚C郵便局102と宝塚駅103までの間のJR線104にそれぞれ存在する伊丹、北伊丹、川西、中山寺の各駅(目標物)、109は宝塚駅103から宝塚C郵便局102までの道路(徒歩移動経路)であり、徒歩(移動手段)によって移動する。110はA小学校(目標物)、111はBストア(目標物)、112は交番(目標物)である。なお、JR線104や道路109の周辺には、その他の目標物も実際には記載されているが、説明の都合上省略している。
【0009】「JR線104を運行する鉄道に猪名寺駅101から乗車して、伊丹、北伊丹、川西、中山寺の各駅105?108をJR線104で通過し、宝塚駅103で降車、北口方面の道路109をA小学校110、Bストア111、交番112を順次目印として歩いていくと、宝塚C郵便局102まで移動できる」ことが、図17のデフォルメ地図から読み取られる。」(段落【0007】ないし【0009】)

(ウ)「【0037】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態について説明する。
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1によるデフォルメ地図作成装置の構成を示す図である。図1において、1は入力部(入力手段)であり、デフォルメ処理する部分地図の表示範囲を指定する。表示範囲は、キーボードやマウス、タッチパネルなどを入力部1として用いて直接指定しても良いし、入力部1に通信機能を持たせて図示しない外部の通信装置から間接指定しても良い。
【0038】2は基本データベース(データベース手段)であり、デフォルメ処理する部分地図を抽出するための詳細地図(詳細地図情報)が記憶される。基本データベース2に記憶された詳細地図には、街区や移動経路、目標物に関する位置、形状、名称、識別子、属性などの各情報(詳細地図情報)が含まれている。
【0039】3は部分地図抽出部(部分地図抽出手段)であり、入力部1によって指定された表示範囲に相当する部分地図を基本データベース2の詳細地図から抽出する。4は目標物抽出部(目標物抽出手段)であり、部分地図抽出部3によって抽出された部分地図に存在する目標物を基本データベース2の詳細地図から抽出する。
【0040】6はデフォルメ処理部(デフォルメ処理手段)であり、抽出された部分地図に存在する移動経路および目標物に対するデフォルメ処理の判定、実行を行う。
【0041】7は表示タイプ選択部(表示データ生成手段)であり、デフォルメ処理された部分地図(デフォルメ地図)から表示データを生成するための表示タイプを選択する。8は表示データ生成部(表示データ生成手段)であり、表示タイプ選択部7によって選択された表示タイプに従って、デフォルメ処理された部分地図から表示データを生成する。
【0042】9は出力部(出力手段)であり、表示データ生成部8が生成した表示データを利用者に表示する。プリンタやモニタを出力部9として、利用者に表示データを直接表示しても良いし、出力部9に通信機能を持たせて図示しない外部の通信装置へ表示データをデータ転送して表示するようにしても良い。」(段落【0037】ないし【0042】)

(エ)「【0043】次に動作について説明する。図2はこの発明の実施の形態1によるデフォルメ地図作成装置の動作を示すフローチャートである。まず、ステップST1においてデフォルメ処理する部分地図の表示範囲が入力部1から指定されると、ステップST2では指定された表示範囲に相当する部分地図が部分地図抽出部3によって基本データベース2から抽出される。
【0044】ここで、入力部1による表示範囲の指定および部分地図抽出部3による部分地図の抽出には、複数の地点P(1),…,P(J)(Jは地点総数)を指定してP(1),…,P(J)を全て含む部分地図を抽出する方法と特定の地理的範囲を意味する地域の名称を指定して、この地域を含む部分地図を抽出する方法とがある。
【0045】例えば、P(1)=「大阪中央郵便局」、P(2)=「JR大阪駅」、P(3)=「扇町公園」のように3つの地点(J=3の場合)が入力部1によって名称指定された場合には、P(1),P(2),P(3)を含む部分地図を部分地図抽出部3が基本データベース2から抽出する。また、ある特定領域の地図を利用者にあらかじめ表示しておき、この特定領域の地図上の地点を利用者に指定させて表示領域を定めるようにしても良い。複数地点の指定方法は、住所や電話番号による指定でも良く、出発点S、目的点Gを指定できる方法であればどのような方法でもかまわない。
【0046】「大阪市中央区」のように、特定の地理的範囲を意味する地域が入力部1によって名称指定された場合には、「大阪市中央区」を含む部分地図を部分地図抽出部3が基本データベース2から抽出する。
【0047】ステップST2において表示範囲に相当する部分地図が抽出されると、ステップST3では抽出された部分地図に存在する目標物を目標物抽出部4が基本データベース2から抽出し、さらに部分地図をデフォルメ処理するための基準点となる基準目標物を抽出する。
【0048】この実施の形態1では、重要性の高い目標物を抽出する意味で、抽出された部分地図に存在する全ての目標物の中から、移動経路の交差点(交点)、移動経路の行き止まり(端点)、移動経路の方位角が変化する曲がり角(曲点)の各近傍にそれぞれ存在する目標物を重要性の高い目標物、すなわち基準目標物として抽出するようにする。移動経路は、各種の移動手段(鉄道、バス、航空機、船などの公共交通機関や徒歩)によって移動するものなので、移動経路の交差点は複数の道路が交差する箇所を単に意味するだけでなく、移動手段の異なる移動経路の交差・接触する地点(交点)や移動手段を変更できる地点(交点)も含む。
【0049】このように、最も重要性の高い目標物として、移動経路の交差点や行き止まり、曲がり角の各近傍にそれぞれ存在する基準目標物を部分地図に記載された目標物から選び、この近傍に存在する基準目標物を基にデフォルメ処理を行う。
【0050】複数の地点P(1),…,P(J)によって表示範囲が指定された場合には、P(1),…,P(J)も基準目標物として抽出する。
【0051】また、ある基準目標物と別の基準目標物とを結ぶ移動経路の中間(中間点)に存在する目標物も同様にして抽出するようにしても良い。この場合には、移動経路の途中にも基準目標物が存在するので、移動経路を移動している際の目印となる。
【0052】このように、ステップST3において表示範囲に存在する目標物および基準目標物が目標物抽出部4によって抽出されると、ステップST4では基準目標物を結ぶ移動経路の組み合わせをデフォルメ処理部6が全て抽出して集合T=(B,E,R)を生成する。ここで、集合Tの要素Bおよび要素Eは基準目標物を表しており、また要素Rは基準目標物Bと基準目標物Eとを結ぶ移動経路を意味している。集合Tは、各要素に関する位置、形状、名称、識別子、属性などの各情報を含んでいる。
【0053】ステップST5では、集合Tの各要素(B,E,R)を基にして、各要素に対するデフォルメ処理の判定を行う。移動経路Rに関するデフォルメ処理には、移動経路の直線化/曲線化(図3)、移動経路方位角の角度変形(図4)、移動経路の短縮伸長(図5)、移動経路幅の拡張(図6)、移動経路の省略化(図7)が挙げられ、これらの処理に関して移動経路に対するデフォルメ処理の判定が行われる。
【0054】図3?7の各処理に対する判定は、例えば各処理に対してそれぞれ用意された各閾値との比較によって行う。閾値の算出には、例えば入力部1によって指定された表示範囲の大きさと出力部9の表示能力(解像度など)とから決める方法などが考えられる。
【0055】移動経路Rのデフォルメ処理に関する判定が完了すると、基準目標物B,EおよびB,E以外の目標物の省略化処理に関する判定が行われる。これは、移動経路Rが結ぶ基準目標物B,E以外の目標物をどの程度まで省略化表示するかの判定である。例えば、デフォルメ処理した移動経路と基準目標物B,Eとを出力部9に表示した際の表示可能な残存領域と目標物の表示サイズとから決めるようにする。
【0056】以上の判定に基づいて、集合Tの各要素に対するデフォルメ処理に関する判定が全て完了すると、この判定の結果に従って、集合Tの各要素に対するデフォルメ処理がデフォルメ処理部6によって行われる。
【0057】つまり、図3に示す移動経路の直線化/曲線化処理(ステップST6,7)、図4に示す移動経路方位角の角度変形処理(ステップST8,9)、図5に示す移動経路長の短縮伸長処理(ステップST10,11)、図6に示す移動経路幅の拡張処理(ステップST12,13)、図7に示す移動経路の省略処理(ステップST14,15)および目標物の省略処理(ステップST14,15)がデフォルメ処理に関する判定の結果に基づいてそれぞれ実行され、各移動経路や目標物の接続関係・位置関係の整合性を保つようにする。これらのデフォルメ処理は順不同なものであり、並列的に処理することも可能である。
【0058】以上の各ステップにおいて部分地図に対するデフォルメ処理が完了すると、デフォルメ処理部6は表示データ生成部8へデフォルメ処理した部分地図(デフォルメ地図)を出力し、表示タイプ選択部7に選択された表示タイプに基づいて表示データを表示データ生成部8が生成する(ステップST16)。表示タイプとは、出力部9に表示するデフォルメ処理した部分地図の視覚的強調処理のことである。デフォルメ処理部6でデフォルメ処理された部分地図をそのまま出力する以外にも、例えば、集合Tの各要素B,E,Rや他の目標物の表示色を各要素の情報(例えば属性)毎に変化させて出力することもできる。
【0059】また、街灯、高架、高架下、堤防、河川、橋、舗装の変化、地下、市街地状況などの地図情報まで基本データベース2に記憶させることによって、これらの地図情報を表示させるようにしても良い。
【0060】出力部9が動画を表示できる場合には、集合Tの各要素B,E,Rや他の地図情報を点滅(動画表示)させたり、またはアニメーション表示(動画表示)するなど、時間的な表示変化を付けて視覚的に強調した表示効果をデフォルメ地図に付加することもできる。以上の表示タイプ選択部7で選択される表示タイプは、入力部1によって設定や変更することができる。
【0061】デフォルメ処理された部分地図の表示倍率を部分的に変更して表示することも可能である。つまり、デフォルメ処理された部分地図上のある領域を入力部1によって指定して表示倍率を与えると、この特定領域の表示倍率を表示データ生成部8が変更し、特定領域以外の箇所と合わせて表示する。」
【0062】このようにして生成された表示データは、表示データ生成部8から出力部9へ出力されて利用者に表示される(ステップST17)。
【0063】以上のように、この実施の形態1によれば、抽出した目標物の中から、重要性の高い目標物として、移動経路の交差点、移動経路の行き止まり、移動経路の方位角が変化する曲がり角の各近傍にそれぞれ存在する目標物を基準目標物として目標物抽出部4が抽出し、これらの基準目標物を結ぶ移動経路をデフォルメ処理部6がデフォルメ処理するようにしたので、デフォルメ処理された部分地図には地図情報の重要性が考慮されて目標物や移動経路が記載されるようになり、表示画面が有効に利用されたデフォルメ地図が生成され、地図情報の視認が容易になるという効果が得られる。
(中略)
【0070】さらに、この実施の形態1によれば、表示タイプ選択部7の指定に基づいて、デフォルメ処理された部分地図の目標物や移動経路の情報に応じて目標物や移動経路の表示色を変化する表示データを表示データ生成部8が生成するようにしたので、地図情報の視認が容易になるという効果が得られる。
【0071】さらに、この実施の形態1によれば、表示タイプ選択部7の指定に基づいて、デフォルメ処理された部分地図の目標物や移動経路を点滅させたりアニメーション表示する表示データを表示データ生成部8が生成するようにしたので、地図情報が強調されて視認が容易になるという効果が得られる。
【0072】さらに、この実施の形態1によれば、表示タイプ選択部7の指定に基づいて、、部分地図の一部を表示比率に応じて表示データ生成部8が拡大縮小するようにしたので、表示バランスの悪い領域の地図情報を認識しやすい表示バランスに変更することが出来るようになり、地図情報の視認が容易になるという効果が得られる。」(段落【0043】ないし【0072】)

(オ)「【0074】実施の形態2.この実施の形態2では、2点間を結ぶ移動経路のデフォルメ地図を作成する場合について説明する。
【0075】図8はこの発明の実施の形態2によるデフォルメ地図作成装置の構成を示す図である。図8において、11は入力部(入力手段)であり、作成しようとしているデフォルメ地図の出発点Sと目的点Gとを指定する。出発点Sと目的点Gとは、キーボードやマウス、タッチパネルなどを入力部11として用いて直接指定しても良いし、入力部11に通信機能を持たせて図示しない外部の通信装置から間接指定しても良い。
【0076】12Aは基本データベース(データベース手段)であり、デフォルメ地図を作成するための詳細地図(詳細地図情報)が記憶される。基本データベース12Aに記憶された詳細地図には、街区や移動経路、目標物に関する位置、形状、名称、識別子、属性の各情報(詳細地図情報)が含まれている。
【0077】12Bは付加データベース(データベース手段)であり、交差点などの座標情報およびその接続関係を表す道路ネットワーク情報(詳細地図情報)、詳細地図や道路ネットワーク情報とリンクした交通機関(バス路線や鉄道路線、航空機路線など)に関する情報を意味する公共交通機関ネットワーク情報(詳細地図情報)が記憶されている。
(中略)
【0101】デフォルメ処理方式選択部15が選択したデフォルメ処理方式が実施の形態1に示した処理方式の場合には、実施の形態1と同様に、集合T=(B,E,R)をデフォルメ処理部16がデフォルメ処理し、表示タイプ選択部17が選択した表示タイプにしたがって表示データ生成部18が表示データを生成し、出力部19によって利用者に表示される。
【0102】ここでデフォルメ処理方式選択部15について説明する。デフォルメ処理方式選択部15は、デフォルメ処理部16によって行われるデフォルメ地図自体の処理方式を選択するものである。デフォルメ地図の処理方式には、図11に示すように実施の形態1と同様の処理方式の他にも、図10に示すように各目標物の接続関係のみを表したフローチャート形式や、図10のフローチャート形式の地図と図11のデフォルメ地図とを組み合わせた図12のような方式もある。デフォルメ処理方式選択部15の方式は、入力部11によって設定、変更が可能である。」(段落【0074】ないし【0102】)

(2)引用文献2の記載から分かること
上記(1)及び図1ないし17の記載から、引用文献2には、次の事項が記載されていることが分かる。

(カ)上記(1)(特に段落【0102】)及び図1ないし17(特に図11、14及び図17)の記載から、引用文献2には、デフォルメ地図とデフォルメした路線図とを表示画面に重ねて表示する方法が記載されている。

(キ)上記(1)(特に段落【0102】)及び図12の記載から、引用文献2には、デフォルメ地図とフローチャート形式の地図(路線図)とを表示画面に重ねて表示する方法が記載されている。

(ク)上記(1)(特に段落【0058】ないし【0061】及び【0070】ないし【0072】)及び図11、12、14及び17の記載から、引用文献2には、部分地図と路線図とを表示画面に重ねて表示する方法において、部分地図の視覚的強調処理を行う技術が記載されている。

(ケ)上記(1)(特に段落【0058】ないし【0061】及び【0070】ないし【0072】)及び図11、12、14及び17の記載から、引用文献2の図11、12及び17には、部分地図上の「宝塚C郵便局」を強調持した例が、同じく図14には、部分地図上の「F家」を強調表示した例が記載されていることが分かる。すなわち、引用文献2には、部分地図と路線図とを表示画面に重ねて表示する方法において、部分地図の特定の部分を強調表示する技術が記載されている。

(3)引用文献2記載の技術
上記(1)及び(2)並びに図1ないし17の記載から、引用文献2には、次の技術が記載されているといえる。

「部分地図と路線図とを表示画面に重ねて表示する方法において、部分地図の特定の部分を強調表示する技術。」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)

2-2 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「地図情報表示方法」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願補正発明における「場所に基づく情報を提供する方法」に相当し、以下同様に、「出発地、目的地及び経由地の情報」は「場所関連情報」に、「情報入力」は「クエリ」に、「電子地図表示装置」は「コンピュータ装置」に、「(表示用地図データ記憶部102に記憶されている)表示用地図データ」は「正縮尺地図」に、「地図描画部305に入力する」は「アクセスする」に、「スクロールバー」は「位相図」に、「スライダ位置に相当する地点」は「1又はそれ以上の地点」に、「指定する」は「識別する」に、それぞれ、相当する。

以上から、本願補正発明と引用発明は、
「場所に基づく情報を提供する方法であって、
場所関連情報のためのクエリをコンピュータ装置内に受け取るステップと、
正縮尺地図内の前記場所関連情報にアクセスするステップと、
前記場所関連情報に関するとともに位相図内の1又はそれ以上の地点に対応する前記正縮尺地図内の1又はそれ以上の地点を識別するステップであって、前記位相図は前記正縮尺地図から得られたものではないステップと、
前記場所関連情報を前記位相図内の前記対応する1又はそれ以上の地点に対して、前記場所関連情報の近くの領域を示す正縮尺地図を重ね合わせて表示するステップと、
を含む方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明においては、(位相図内の地点に対して)「正縮尺地図の部分を強調表示したもの」を重ね合わせて表示するのに対して、引用発明においては、(スクロールバー上の地点に対して)「表示用地図データ」を重ね合わせて表示する点(以下、「相違点」という。)。

2-3 判断
本願補正発明における「正縮尺地図の部分を強調表示したもの」とは、平成23年6月3日付け意見書によれば、「正縮尺地図の特定の部分を強調表示したもの」という意味である。
それに対し、上記引用文献2には、「部分地図と路線図とを表示画面に重ねて表示する方法において、部分地図の特定の部分を強調表示する技術。」(上記「引用文献2記載の技術」)が記載されている。
そして、引用発明と、引用文献2記載の技術は、ともに、画面上に地図を表示するという共通の技術分野において、表示画面の上部分に路線図を表示し、表示画面の下部分に地図を表示することにより、地図情報の視認を容易にするという共通の課題を解決するものである。
そうすると、引用発明において、引用文献2記載の技術を適用して、路線図(本願補正発明における「位相図」に相当)内の対応する1又はそれ以上の地点に対して、表示用地図データ(本願補正発明における「正縮尺地図」に相当)の部分を強調表示したものを重ね合わせて表示することにより、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明は、全体として検討しても、引用発明及び引用文献2記載の技術から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできず、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
したがって、上記2において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、平成28年3月9日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成27年5月26日提出の手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)(ア)【請求項1】のとおりのものである。

2 引用文献及び引用発明
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-177028号公報)及び引用発明は、前記第2[理由]2-1-1に記載したとおりである。
また、本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2001-283236号公報)及び引用文献2記載の技術は、前記第2[理由]2-1-2に記載したとおりである。

3 対比・判断
前記第2[理由]1(2)で検討したとおり、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明、すなわち本願発明の発明特定事項をさらに限定するものであるから、本願発明は、実質的に本願補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2[理由]2-2に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-30 
結審通知日 2016-12-05 
審決日 2016-12-20 
出願番号 特願2011-137804(P2011-137804)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 剛史  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
槙原 進
発明の名称 ナビゲーション可能な位相図  
代理人 弟子丸 健  
代理人 西島 孝喜  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  

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