• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1328215
審判番号 不服2016-5695  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2014- 92905「デジタルカメラ、画像記録方法、及び画像記録プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日出願公開、特開2014-158295〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成22年 3月24日に出願した特願2010-68813号の一部を平成26年 4月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由 :平成27年 2月24日(起案日)
手続補正 :平成27年 6月 1日
拒絶理由(最後) :平成27年 9月28日(起案日)
手続補正 :平成27年12月21日
平成27年12月21日付けの手続補正の却下:
平成28年 2月10日(起案日)
拒絶査定 :平成28年 2月10日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年 4月18日
手続補正 :平成28年 4月18日


第2.平成28年 4月18日付けの手続補正の却下の決定
[結論]
平成28年 4月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
本件補正は、本件補正前の平成27年 6月 1日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「被写体を撮影し、画像を生成するカメラ部と、
電子メールを受信する電子メール受信部と、
受信した前記電子メールを蓄積する電子メール記録部と、
前記撮影に関する第1撮影情報に基づいて、撮影情報と前記電子メールと、を関連付けて格納するデータベースから、前記第1撮影情報に関連付けられた第1キーワードを取得し、前記第1撮影情報と、前記第1キーワードと、前記画像とを含む画像ファイルを生成する情報処理部と、を具備する
デジタルカメラ。」

という発明を、平成28年 4月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「被写体を撮影し、画像を生成するカメラ部と、
電子メールを受信する電子メール受信部と、
受信した前記電子メールを蓄積する電子メール記録部と、
前記撮影に関する第1撮影情報に基づいて、撮影情報と前記電子メールと、を関連付けて格納するデータベースから、前記第1撮影情報に関連付けられた第1キーワードを取得し、前記第1撮影情報と、前記第1キーワードと、前記画像とを含む画像ファイルを生成する情報処理部と、を具備し、
前記データベースは、少なくとも前記撮影情報に含まれる過去に撮影された画像の第1の撮影日時の情報と、前記電子メールの送受信が行われたメール処理日時の情報と、が紐付けられており、
前記情報処理部は、前記第1撮影情報に含まれる第2の撮影日時の情報と、前記第1の撮影日時の情報と、に基づいて、前記第1の撮影情報に関連する電子メールを選択し、該電子メールの文書に含まれる単語より前記第1キーワードを取得する、
デジタルカメラ。」

という発明に補正することを含むものである。
なお、下線は審判請求人が付加した。

2.補正の適否
(1)補正の範囲
まず、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、データベース及び電子メールに関する記載が、明細書の段落0019、段落0021及び0038にある。

「【0019】
(中略)情報処理部40は撮影情報(1次情報)に基づいて、(中略)データベース2にアクセスし、2次情報を取得する。」
「【0021】
情報処理部40は、位置情報を含む撮影に関する撮影情報に基づいて、複数の撮影情報と複数のキーワードとをそれぞれ関連付けて格納するデータベース2から、当該撮影情報に関連付けられたキーワードを取得し、当該撮影情報と、取得したキーワードと、画像とを含む画像ファイルを生成する。(後略)」
「【0038】
(中略)カメラ機能付き携帯電話機などでは、電子メールや電話帳、あるいは写真への命名情報など、様々な情報を持っていることから、これらを1次情報、あるいは1次情報をキーとして2次情報を引き出すデータベースとして、さらには2次情報そのものとして、利用する様な構成も可能である。」

これらの記載によれば、本件出願の当初明細書等には、電子メールを撮影情報(1次情報)をキーとしてキーワード(2次情報)を引き出すデータベースとして利用すること、及び、情報処理部が、撮影情報(1次情報)に基づいてデータベースよりキーワード(2次情報)を取得することという技術思想が開示されている。

しかし、本件出願の当初明細書等には、電子メールを利用したデータベースの具体的な構造は開示されておらず、本件補正に係る、「前記データベースは、少なくとも前記撮影情報に含まれる過去に撮影された画像の第1の撮影日時の情報と、前記電子メールの送受信が行われたメール処理日時の情報と、が紐付けられて」いることに関する記載はない。
そして、このようなデータベースの具体的構造が、電子メールをデータベースとして利用する際の自明の構造であるともいえない。

また、本件出願の当初明細書等には、情報処理部が撮影情報と電子メールとを用いてキーワードを取得する際の具体的な動作は開示されておらず、本件補正に係る、「前記情報処理部は、前記第1撮影情報に含まれる第2の撮影日時の情報と、前記第1の撮影日時の情報と、に基づいて、前記第1の撮影情報に関連する電子メールを選択し、該電子メールの文書に含まれる単語より前記第1キーワードを取得する」ことに関する記載はない。
そして、情報処理部が撮影情報と電子メールとを用いてキーワードを取得する際に、撮影情報に基づいて電子メールを選択し、電子メールに含まれる単語よりキーワードを取得するようにすることが自明であるともいえない。

また、当初明細書等のうち、段落0019、段落0021及び段落0038以外の箇所についても、上記のことに関する記載はないことから、本件補正は、本件出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内に基づくものとすることはできない。
さらに、本件補正は当業者にとって自明でもない。

(2)まとめ
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内にしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。


第3.本件出願の特許請求の範囲の記載
(1)本件出願の特許請求の範囲の請求項1の記載について
上記のように、平成28年 4月18日付けの手続補正は、却下すべきものであるので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1は、平成27年 6月 1日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下の通りのものと認める。

「被写体を撮影し、画像を生成するカメラ部と、
電子メールを受信する電子メール受信部と、
受信した前記電子メールを蓄積する電子メール記録部と、
前記撮影に関する第1撮影情報に基づいて、撮影情報と前記電子メールと、を関連付けて格納するデータベースから、前記第1撮影情報に関連付けられた第1キーワードを取得し、前記第1撮影情報と、前記第1キーワードと、前記画像とを含む画像ファイルを生成する情報処理部と、を具備する
デジタルカメラ。」

(2)原査定の理由について
本件出願の拒絶査定の理由1の概要は、以下のとおりである。

理由1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



●理由1(明確性)について

・請求項1-9
請求項1及び5には、撮影情報と電子メールを関連付けて格納するデータベースから、第1撮影情報に関連付けられた第1キーワードを取得すること、が記載されているが、この動作をいかにして実現するのか不明である。

すなわち、明細書の[0038]には「加えて、カメラ機能付き携帯電話機などでは、電子メールや電話帳、あるいは写真への命名情報など、様々な情報を持っていることから、これらを1次情報、あるいは1次情報をキーとして2次情報を引き出すデータベースとして、さらには2次情報そのものとして、利用する様な構成も可能である」と記載されているものの、撮影情報(1次情報)とキーワード(2次情報)と電子メールがどのように関連付けられているのか(例えば、電子メールの本文が撮影情報やキーワードを含むのか)が記載も示唆もされていないので、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、電子メールを用いて第1撮影情報から第1キーワードを引き出す方法を理解することができない。

請求項1及び5を引用する請求項2-4、6-9についても同様である。

よって、請求項1-9に係る発明は明確でない。

(3)当審の判断
まず、本件出願の明細書及び図面における、データベース及び電子メールに関する記載が、明細書の段落0019、段落0021及び段落0038にある。

「【0019】
(中略)情報処理部40は撮影情報(1次情報)に基づいて、(中略)データベース2にアクセスし、2次情報を取得する。」
「【0021】
情報処理部40は、位置情報を含む撮影に関する撮影情報に基づいて、複数の撮影情報と複数のキーワードとをそれぞれ関連付けて格納するデータベース2から、当該撮影情報に関連付けられたキーワードを取得し、当該撮影情報と、取得したキーワードと、画像とを含む画像ファイルを生成する。(後略)」
「【0038】
(中略)カメラ機能付き携帯電話機などでは、電子メールや電話帳、あるいは写真への命名情報など、様々な情報を持っていることから、これらを1次情報、あるいは1次情報をキーとして2次情報を引き出すデータベースとして、さらには2次情報そのものとして、利用する様な構成も可能である。」

これらの記載によれば、本件出願の明細書及び図面には、電子メールを撮影情報(1次情報)をキーとしてキーワード(2次情報)を引き出すデータベースとして利用すること、及び、情報処理部が、撮影情報(1次情報)に基づいてデータベースよりキーワード(2次情報)を取得することという技術思想が開示されている。
しかし、本件出願の特許請求の範囲の請求項1における「撮影情報と前記電子メールと、を関連付けて格納するデータベースから、前記第1撮影情報に関連付けられた第1キーワードを取得」するという発明特定事項に関する記載はないことから、この動作をいかにして実現するのかが不明であるため、上記発明特定事項を理解することができない。

また、本件出願の明細書及び図面のうち、段落0019、段落0021及び段落0038以外の箇所の記載をみても、上記発明特定事項を理解することができない。
さらに、出願時の技術常識を考慮しても、上記発明特定事項が理解できない。

(4)審判請求人の主張について
上記拒絶査定の理由1に対し、審判請求人は、以下の内容を審判請求書において主張している。

出願当初明細書の段落【0038】の「加えて、カメラ機能付き携帯電話機などでは、電子メールや電話帳、あるいは写真への命名情報など、様々な情報を持っていることから、これらを1次情報、あるいは1次情報をキーとして2次情報を引き出すデータベースとして、さらには2次情報そのものとして、利用する様な構成も可能である。」という記載より、電子メールよりキーワードを取得できる旨が記載されている。また、キーワードがデータベースから取得される旨は出願当初明細書の段落【0021】の「複数の撮影情報と複数のキーワードとをそれぞれ関連付けて格納するデータベース2から、当該撮影情報に関連付けられたキーワードを取得し、」の記載より明白である。つまり、電子メールのデータそのものを、キーワードを取得するデータベースとして扱うことが可能であると読み取れる。また、撮影情報には、例えば撮影した日時の情報、画像の容量の情報、および撮影条件に関する情報などがメタファイルとして格納されていることは公知であると言える。このような情報の中から電子メールを関連付けることが可能な情報は日時の情報であると言える。その理由は電子メールデータにおいてもメール送受信を実行した時の日時の情報が存在するからである。つまり、出願当初明細書より、撮影情報から電子メールを関連付けることが可能な情報は日時の情報であると判断できる。また、キーワードとは単語であるため、電子メールからキーワードを取得することを考えると、必然として電子メールの文書に記載されている単語をキーワードとして取得すると考えることが自然である。以上より、特許法第36条第6項第2号違反の「撮影情報と電子メールを関連付けて格納するデータベースから撮影された画像に関連したキーワードを取得する動作を如何にして実現するのかが不明である」という指摘は、上記説明より明確になったと判断できる。また請求項1を引き継ぐ請求項2以下の発明においても同様である。

上記の審判請求人の主張は、電子メールを撮影情報とキーワードを関連付けて格納するデータベースとして用いること及び撮影情報と日時情報で関連付けられた電子メールの文書からキーワードを取得することに関するものであるが、上記審判請求人の主張は、上記発明特定事項である、「撮影情報と電子メールと、を関連付けて格納するデータベース」について説明するものでなく、また、このようなデータベースからキーワードを取得することのついて説明するものでもない。
したがって、上記の審判請求人の主張によっても、上記発明特定事項について、この動作をいかにして実現するのか不明であるため、上記発明特定事項が理解できない。

(5)まとめ
したがって、上記発明特定事項である、「撮影情報と前記電子メールと、を関連付けて格納するデータベースから、前記第1撮影情報に関連付けられた第1キーワードを取得」するという発明特定事項については、本件出願の明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識並びに審判請求人の主張を考慮しても、この動作をいかにして実現するのかを理解することができないため、上記発明特定事項を含む本件出願の特許請求の範囲の請求項1は、特許を受けようとする発明が明確であるように記載されていない。


第4.むすび
以上のとおり、本件出願の特許請求の範囲の請求項1は、特許を受けようとする発明が明確であるように記載されていないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-09 
結審通知日 2016-12-13 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2014-92905(P2014-92905)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松元 伸次赤穂 州一郎  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 冨田 高史
清水 正一
発明の名称 デジタルカメラ、画像記録方法、及び画像記録プログラム  
代理人 丸山 隆夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ