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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1328293
審判番号 不服2016-803  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-18 
確定日 2017-05-11 
事件の表示 特願2015-160068「支柱の成形方法並びに成形金型」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月16日出願公開、特開2017- 35861〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月14日を出願日とする出願であって、拒絶理由に応答して意見書が提出されたが、同年10月30日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成28年1月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、特許請求の範囲を対象とする手続補正書、及び、明細書を対象とする手続補正書が提出され、その後、同年3月24日に審査官により前置報告書が作成された。

第2 平成28年1月18日提出の特許請求の範囲を対象とする手続補正書による手続補正についての、補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年1月18日提出の特許請求の範囲を対象とする手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲は、
補正前(本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲参照)の
「【請求項1】
一対の成形型内に芯材をインサートし、当該成形型間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を供給することで芯材の周囲に外周部を所望形状に被覆成形する支柱の成形方法において、
成形型(20,21)に複数の凸部(22)を設け、当該凸部(22)で芯材(10)の軸心と外周部(40)の軸心が一致する位置に芯材(10)を支持するようにした支柱の成形方法。
【請求項2】
芯材をインサートして、当該芯材の外周囲に熱可塑性樹脂を成形するためのインサート成形用金型であって、
成形型(20,21)に複数の凸部(22)を設け、当該凸部(22)で芯材(10)の軸心と外周部(40)の軸心が一致する位置に芯材(10)を支持するようにしたインサート成形用金型。」から、
補正後の
「【請求項1】
一対の成形型内に芯材をインサートし、当該成形型間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を供給することで芯材の周囲に外周部を所望形状に被覆成形する支柱の成形方法において、
成形型(20,21)に複数の凸部(22)を設け、当該凸部(22)で芯材(10)の軸心と外周部(40)の軸心が一致する位置に芯材(10)を外周面から支持するようにした支柱の成形方法。
【請求項2】
芯材をインサートして、当該芯材の外周囲に熱可塑性樹脂を成形するためのインサート成形用金型であって、
成形型(20,21)に複数の凸部(22)を設け、当該凸部(22)で芯材(10)の軸心と外周部(40)の軸心が一致する位置に芯材(10)を外周面から支持するようにしたインサート成形用金型。」
と補正された。(なお、下線は、補正された部分であり、原文のとおりである。)

2.補正の適否
補正前後の発明特定事項を対比すると、本件補正(上記下線部)が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、特許法第17条の2第3項の規定を満足することは、該明細書の【0013】及び図3から明らかであるし、本件補正は、請求項1及び2において、「芯材(10)を・・・支持する」ための、「成形型(20,21)」に設けられた「複数の凸部(22)」について、「芯材(10)を外周面から支持するようにした」との限定(下線部が限定部分)を付すものであって、補正前後の請求項1及び2に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の請求項1に記載の以下のとおりのものである。
「一対の成形型内に芯材をインサートし、当該成形型間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を供給することで芯材の周囲に外周部を所望形状に被覆成形する支柱の成形方法において、
成形型(20,21)に複数の凸部(22)を設け、当該凸部(22)で芯材(10)の軸心と外周部(40)の軸心が一致する位置に芯材(10)を外周面から支持するようにした支柱の成形方法。」

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-158445号公報(原審における引用文献1。以下、「引用例1」という。)、には、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付した。以下、この審決中において同様である。

(a)【0009】
「先ず、図6?図8に示した棒状支柱を説明する。棒状支柱1は内部中心に補強用芯材2がインサート成形されたポリエチレン等の合成樹脂製のもので、肉厚を均一にするために表面全体に格子状凹凸が形成されている。3は該棒状支柱1の下部に形成されたフランジ部、4はネジ軸部である。該補強用芯材2は多数本の長いガラス繊維を束としてこれに不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させ、その外周に耐候性樹脂をコーティングして樹脂被覆を形成してなるものである。棒状支柱1を成形するに際し、該補強用芯材2を成形型内に予め配置して合成樹脂を該成形型内に射出することによりインサート成形される。なお、成形型内において該補強用芯材2を常に中心に位置させるために型内面に位置決部材がセットされるが、5は該位置決部材をセットしたことによって該棒状支柱1に適宜間隔で形成された横孔を示す。・・・」

(b)図7




また、同様に原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-031438号公報(原審における引用文献2。以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(c)【0001】
「本発明は、金属材料等のインサート部品を樹脂内部に配置してなる合成樹脂複合成型品の製造方法、及び、合成樹脂複合成型品に関する。」

(d)【00015】?【0024】
「【0015】
本発明は、成型品の軸心と棒状材の軸心とを正確に一致させることができ、成型品における「重心の偏り」という問題を回避することができる「合成樹脂複合成型品の製造方法」として実施することができる・・・。以下、本発明に係る合成樹脂複合成型品の製造方法及び合成樹脂複合成型品の好適な実施例について、それぞれ詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1?3は、本発明の実施例1「合成樹脂複合成型品の製造方法」の説明図である。これらの図において符号2は、樹脂内部に補強材として配置される金属棒(金属製の棒状材・・・丸棒)であり、符号3?8は、金型内において金属棒2を支持するサポートピン・・・である。また、図1の符号9(一点鎖線で示す領域)は、合成樹脂材料が射出される金型内の空間の輪郭を示している。尚、これらの図においては、「金型」そのものの表示は省略されている。
【0017】
サポートピン3?8はいずれも、上下に分割される金型の内側にそれぞれ配置されている。
【0018】
サポートピン3?8のうち、金属棒2の中間部2cを支持するサポートピン5の下端部、及び、サポートピン6の上端部には、図2(1)に示すように、金属棒2の外周面の形状に対応した湾曲凹状部5a,6aがそれぞれ形成されている。
【0019】
また、金属棒2の一方の端部2bを支持するサポートピン7の下端部、及び、サポートピン8の上端部には、図3(1)に示すように、金属棒2の外周面の形状に対応した湾曲凹状部7a,8a、及び、金属棒2の端部2bの端面に当接して金属棒2の軸線方向への移動を規制するストッパ7b,8bがそれぞれ形成されている。更に、金属棒2のもう一方の端部2a(図1参照)を支持するサポートピン3の下端部、及び、サポートピン4の上端部にも、金属棒2の外周面の形状に対応した湾曲凹状部3a,4a、及び、金属棒2の端部2aの端面に当接して金属棒2の軸線方向への移動を規制するストッパ3b,4bがそれぞれ形成されている。
【0020】
ここで、本実施例における合成樹脂複合成型品の製造方法の詳細について説明する。まず、図1(1)に示すように、下側のサポートピン4,6,8が配置されている下方の金型を、所定の位置にセットする。
【0021】
次に、図1(2)に示すように、下側のサポートピン4,6,8の上に金属棒2を載置し、その上に、上側のサポートピン3,5,7が配置されている上方の金型をセットし、図1(3)に示すように、金属棒2の両端部2a,2b、及び、中間部2cを、上下方向(金属棒2の軸線方向と直交する、対向する二方向)からサポートピン3?8によって挟持させ、金属棒2を金型内において支持する。尚、サポートピン3?8は、金属棒2を支持した際に、その軸心が成型品の軸心と正確に一致するように寸法設定されている。
【0022】
このように、上下の金型をセットすると、金属棒2の両端部2a,2b、及び、中間部2cは、上下方向への移動が規制されるほか、サポートピン3?8の湾曲凹状部3a?8a内に嵌り込んで、側方(左右方向)への移動も規制されることになり、更に、サポートピン3,4,7,8のストッパ3b,4b,7b,8bによって金属棒2の両端部2a,2bの各端面が押さえ込まれて、金属棒2の軸線方向への移動も規制されることになる(図2(2)、及び、図3(2)参照)。
【0023】
そして、この状態で金型内空間9へ合成樹脂材料を射出する。その後、所定時間を置いて合成樹脂材料を硬化させ、金型を開いて、成型された合成樹脂複合成型品を脱型する。このような方法により、金属棒2の両端部2a,2bがともに樹脂内部に配置されてなる合成樹脂複合成型品を製造することができる。
【0024】
尚、本実施例においては、樹脂内部に補強材として配置される金属棒2として断面が円形の丸棒が用いられているため、これを金型内で支持するサポートピン3?8には、金属棒2の外周面の形状に対応した湾曲凹状部3a?8aが形成されている・・・。」

(e)図1-3
「【図1】


【図2】

【図3】



(3)引用発明及び本件補正発明との対比
上記記載事項(a)によれば、引用例1には、
「補強用芯材を成形型内に予め配置して合成樹脂を該成形型内に射出することにより、内部中心に補強用芯材がインサート成形された合成樹脂製の棒状支柱を成形する方法であって、成形型内において補強用芯材を常に中心に位置させるために、型内面に位置決部材がセットされる方法」が記載されているといえる。
そして、記載事項(b)及び記載事項(a)の「5は該位置決部材をセットしたことによって該棒状支柱1に適宜間隔で形成された横孔を示す」なる記載によれば、成形型内にセットされる位置決部材により、横孔が形成されるのであるから、位置決部材は、横孔の形状に対応する凸部が形成されるように成形型内にセットされ、成形時に当該凸部の周りに合成樹脂が注入され、凸部内に合成樹脂が注入されないことで、棒状支柱に横孔が形成されることが理解できる。
すなわち、位置決部材は、補強用芯材を外周部から支持し、成形型の内面に(棒状支柱の横孔を形成する)凸部を形成するように成形型内にセットされるものと認められる。
そうすると、引用例1には、以下の発明が記載されているといえる。
「補強用芯材を成形型内に予め配置して合成樹脂を該成形型内に射出することにより、内部中心に補強用芯材がインサート成形された合成樹脂製の棒状支柱を成形する方法であって、成形型内において補強用芯材を常に中心に位置させるために、位置決部材が、補強用芯材を外周部から支持する凸部を形成するように成形型の内面に適宜間隔でセットされる方法。」(以下、「引用発明」という。)

ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「補強用芯材」、「合成樹脂」及び「棒状支柱」は、それぞれ、本件補正発明における「芯材」、「樹脂」及び「支柱」に相当するし、引用発明の「合成樹脂を・・・射出する」「成形型内」は、本件補正発明の「成形型間で形成されるキャビティ」と同義といえる。
また、引用発明の様に「合成樹脂を該成形型内に射出することにより、内部中心に補強用芯材がインサート成形」されれば、本件補正発明のように、「芯材の周囲に外周部」が、「所望形状に被覆成形」されることになる。
そうすると、引用発明の、「補強用芯材を成形型内に予め配置して合成樹脂を該成形型内に射出することにより、内部中心に補強用芯材がインサート成形された合成樹脂製の棒状支柱を成形する方法」は、本件補正発明の「成形型内に芯材をインサートし、当該成形型間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を供給することで芯材の周囲に外周部を所望形状に被覆成形する支柱の成形方法」に相当する。
また、本件補正発明においては、「成形型(20,21)に複数の凸部(22)を設け」と特定されており、「凸部」を設ける手段についての特段の特定はなされていないから、本件補正発明の「凸部(22)を設け」は、引用発明の様に、「位置決部材が・・・成形型の内面に・・・セットされ」て設けられた「凸部」であってもよいものと認められる。
さらに、本願の図1からみて、本件補正発明の凸部(22)は、適宜間隔で設けられてよいと認められる。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
成形型内に芯材をインサートし、当該成形型間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を供給することで芯材の周囲に外周部を所望形状に被覆成形する支柱の成形方法において、
成形型に凸部を設け、当該凸部で芯材を外周部から支持するようにした支柱の成形方法。

<相違点>
・成形型内に芯材をインサートして成形する支柱の成形方法に用いられる成形型について、本件補正発明では、「一対」と特定されているのに対し、引用発明では、このような特定はされていない点。(以下、「相違点1」という。)
・成形型に設けられる凸部について、本件補正発明では、凸部が「複数」と特定され、また、凸部による芯材の外周部からの支持について、「芯材の軸心と外周部の軸心が一致する位置」に「外周面から」支持すると特定されているのに対し、引用発明では、凸部が「複数」であることは特定されていないし、凸部による芯材の外周部からの支持について、「成形型内において補強用芯材を常に中心に位置させる」ために、「外周部から」すると特定されている点。(以下、「相違点2」という。)

(なお、本件補正発明において発明特定事項として記載されている括弧書きの数字は、発明の理解を容易にするために図面の記載に対応させるために便宜的に記載されているものであり、本件補正発明を技術的に限定するものではないことは明らかと認められるので、一致点・相違点の認定においては記載を省略した。)

(4)検討
(i)相違点についての検討
・相違点1について
引用発明において、内部中心に補強用芯材がインサート成形された合成樹脂製の棒状支柱を成形する方法に用いられる成形型を「一対」からなるものとする点について検討すると、インサート成形に用いられる成形型として、「一対」からなるものは本願の出願前から周知であるし、引用例1と同様、棒状の補強用芯材が成形品の内部に位置された構造の合成樹脂インサート成型品を製造する技術に関する引用例2(上記記載事項(c)の【0001】)には、成型(「成形」と同義)を、樹脂内部に補強材として配置される金属棒(棒状材)を支持するサポートピンを配置した、「上下一対」の金型を使用して行うことが記載されている(同(d)、特に、【0016】及び【0017】)。
してみると、引用発明における棒状支柱の成形方法において、使用される成形型を「一対」からなるものとすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

・相違点2について
まず、引用発明において、成形型の内面に位置決部材をセットすることで設けられる凸部を「複数」とし、芯材の支持を「外周面から」するようにする点については、引用発明において、凸部を構成する、成形型内面にセットされる位置決部材は、「成形型内において補強用芯材を常に中心に位置させるため」のものなのであるから、引用発明においても、当然に位置決部材は複数セットされて、凸部が複数設けられている蓋然性が高いし、また、位置決めを目的とするのであるから、芯材の外周部からの支持は、「外周面から」されている蓋然性が高く、この点は実質的な相違点とは認められない。
次に、凸部による芯材の支持を、「芯材の軸心と外周部の軸心が一致する位置」になるようにする点についても、引用発明の成形方法は、「内部中心に補強用芯材がインサート成形された合成樹脂製の棒状支柱」の成形方法であって、補強用芯材は成形された棒状支柱が成形型内において「常に中心」に位置せしめられた状態で成形されるのであり、「成形型内において補強用芯材を・・・中心に位置させるため」に、補強用芯材が「外周部から支持する位置決部材」によって支持されるものなのであるから、引用発明においても、芯材の支持は、「芯材の軸心と外周部の軸心が一致する位置」になるようにされている蓋然性が高く、この点も実質的な相違点とは認められない。

仮に、凸部を「複数」とし、芯材を「外周面」から、「芯材の軸心と外周部の軸心が一致する位置」に支持するようにする点が、実質的な相違点である場合であっても、次のとおり、引用発明を本件補正発明の上記構成を備えたものとすることは当業者が容易になし得ることである。
すなわち、部材の支持を、複数の支持部材で行ったり、支持対象の部材の外周面にあった形状の支持部材により行うことが一般に知られていることからすると、引用発明において、芯材をより精度良く中心に位置決めするために、芯材を支持する位置決部材を、芯材を「外周面」から支持する形状としたり、「複数」セットしたりすることは、当業者が自然に着想し得ることと認められるし、「芯材の軸心と外周部の軸心が一致する位置」に芯材を支持するように位置決部材をセットすることも、芯材を内部の「中心」に位置させるとの目的からすれば、当業者が自然に着想し得ることと認められる。
さらに、前述した引用例2には、補強用芯材が成形品の内部に位置された構造の合成樹脂インサート成型品を製造する際の補強用芯材の支持を、補強用芯材である金属棒の外周面の形状に対応した湾曲凹状部を有する、型の上下に(複数)配置されたサポートピンにより行った例が記載されているし(同(d)の【0018】、【0019】及び【0024】及び(e)の図2)、また、サポートピンが「金属棒2を支持した際に、その軸心が成型品の軸心と正確に一致するように寸法設定されている」(同(d)の【0021】)ことで、「成型品の軸心と棒状材の軸心とを正確に一致させることができ、成型品における「重心の偏り」という問題を回避することができる」(同(d)の【0015】)ことも記載されている。
そうすると、上記の点が実質的な相違点である場合であっても、引用発明を本件補正発明の上記相違点2にかかる構成を備えたものとすることは、一般的な知見や引用例2に記載の事項から当業者が容易になし得たことである。

(ii)本件補正発明の効果についての検討
本件補正発明の効果に関し、本願明細書の【0014】には、「本発明によれば成形型に設けた凸部で芯材と外周部の軸心が一致する位置関係の下インサート成形することで、芯材をその中心部に位置せしめて補強した樹脂製支柱を提供することが可能となる」と記載されている。
しかしながら、引用発明自体が「内部中心に補強用芯材がインサート成形された合成樹脂製の棒状支柱を成形する方法」に関するものであるから、引用発明も補強用芯材を中心部に位置せしめて補強した樹脂製支柱を提供することが可能となるものであるといえるし、(i)で述べたとおり、引用発明においても、「芯材の軸心と外周部の軸心が一致する位置に芯材を・・・支持するようにした」インサート成形方法である蓋然性が高いし、仮にそうとはいえない場合であっても、そのような成形方法とすることが引用例2の記載から示唆されるのであるから、本件補正発明の効果は、引用例1の記載或いはこれと引用例2に記載の事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎないと認められる。

(iii)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の(4)において、以下の点をあげて、本願補正発明は進歩性を有する旨主張する。
「本願発明においては、凸部で芯材を外周面のみから支持するようにしているという引用文献2とは異なる特徴がある。この特徴の奏する効果を、以下詳述する。
インサート部材を樹脂で被覆する際には、成形樹脂の射出圧力によるインサート部材の位置ずれ及び射出圧力による金型の撓みが発生することがある。この位置ずれを抑制するために、例えば引用文献2に記載の発明では、芯材の外周面のみならず外側面からも支持するサポートピンを金型に備える構造となっている(特に請求項1における「当該棒状材の端部の端面に当接して当該棒状材の軸線方向への移動を規制するストッパ」という記載、図1)。
しかし、かかる構造では成形樹脂による二方向の射出圧力、すなわち芯材の長手方向と平行の圧力と、長手方向と直行する圧力がサポートピンを通じて金型にかかることになる。
すなわち、金型に撓みが発生する恐れが大きくなるという難点を有するものである。
これに対し本願発明は、芯材10の外周面のみを凸部22で支持するものである。かように外周面からのみ支持し、外側面からは支持しないことから、成形樹脂の射出圧力を、芯材10の長手方向と平行の圧力あるいは長手方向と直行する圧力のうちの、どちらか一方からしか受けないことになる。つまりは金型の撓みを抑制することが可能となるものである。
かように金型の撓みを抑制可能であることの結果、芯材の周りに精度高く同じ厚みで樹脂を被覆することが可能となるのである。つまりは成型品たる支柱の強度がどの方向でも均一となり、支柱を地面に立設する際の破損が可及的に抑制されるものである。」

そこで、検討する。
請求人は、「本願発明においては、凸部で芯材を外周面のみから支持するようにしているという引用文献2とは異なる特徴がある。」と主張するが、引用発明の「成形型内において補強用芯材を常に中心に位置させるために・・・補強用芯材を外周部から支持する凸部を形成するように成形型の内面にセットされる位置決部材」は、引用例1の図7(上記記載事項(b))から明らかなとおり、補強用芯材の外周部のみで補強用芯材を支持するものであり、補強用芯材の外側面(つまり、端部)で支持するものではないから、引用発明において補強用芯材を支持する凸部の構造として、引用文献2(この審決における引用例2)におけるサポートピンの支持構造を採用する場合、引用文献2の図2(同(e))に記載のサポートピン構造(すなわち、「外周面のみから支持する」構造)を採用することになり、図3(同(e))で示される、芯材の端面に当接して芯材の軸線方向への移動を規制するストッパが形成されたサポートピン構造を採用することはありえない。
したがって、請求人の請求人の主張は失当である。
また、本願明細書には、芯材を外周面のみならず外側面からも支持するサポートピンを備えた金型では、成形樹脂による二方向の射出圧力がサポートピンを通じて金型にかかり、金型に撓みが発生する恐れが大きくなるという難点を有することも、「外周面のみ」から支持し、外側面からは支持しないことにより、成形樹脂の射出圧力を、芯材10の長手方向と平行の圧力あるいは長手方向と直行する圧力のうちの、どちらか一方からしか受けないことになり、金型の撓みを抑制することが可能となることも、全く記載されておらず、請求人が主張するこれらの効果は、本願明細書の記載に基づくものとはいえない点でも、請求人の主張は失当である。
よって、請求人の主張は採用できない。

なお、本件補正発明の「外周面から支持する」を文字どおり解釈すれば、引用文献2(引用例2)の発明のストッパが形成されたサポートピンも、【0024】及び図3の記載から明らかな通り、外周面の形状に対応した湾曲凹部が形成されており、(芯材である金属棒を)「外周面から支持する」ものである点で、本件補正発明と相違していないことを付記する。

(iv) 小括
よって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年1月18日に提出された特許請求の範囲を対象とする手続補正書による手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?2に係る発明は、本願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
一対の成形型内に芯材をインサートし、当該成形型間で形成されるキャビティ内に溶融樹脂を供給することで芯材の周囲に外周部を所望形状に被覆成形する支柱の成形方法において、
成形型(20,21)に複数の凸部(22)を設け、当該凸部(22)で芯材(10)の軸心と外周部(40)の軸心が一致する位置に芯材(10)を支持するようにした支柱の成形方法。」

2.引用例
拒絶査定の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。

3.対比、判断
本願発明は、上記第2の[理由]2.(1)に記載した本件補正発明において、芯材(10)を支持するための成形型(20,21)に設けられた複数の凸部(22)について、「芯材(10)を外周面から支持するようにした」(下線部が補正による限定部分。)との限定が付されていたところ、「外周面から」との発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記2の[理由]2.(3)?(5)に記載したとおり、引用例1及び2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-08 
結審通知日 2017-03-15 
審決日 2017-03-28 
出願番号 特願2015-160068(P2015-160068)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B29C)
P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 由美子  
特許庁審判長 原田 隆興
特許庁審判官 大島 祥吾
渕野 留香
発明の名称 支柱の成形方法並びに成形金型  
代理人 築山 正由  
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