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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B08B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B08B
管理番号 1328393
審判番号 不服2016-2434  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-17 
確定日 2017-06-12 
事件の表示 特願2011-124714号「ロール及び洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日出願公開、特開2012-250177号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月3日の出願であって、平成27年11月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年2月17日に拒絶査定不服審判請求が請求され、同時に手続補正がされ、当審において同年11月15日付けで拒絶理由を通知し、平成29年1月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、当審において同年1月25日付けで再度、拒絶理由を通知し、同年3月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願の特許請求の範囲
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年3月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
鋼板の被洗浄面、非鉄金属板の被洗浄面、樹脂板の被洗浄面、又はフィルム状の被洗浄面に付着した油分を除去、搾取、洗浄の少なくともいずれか一つを行う為のロールにおいて、前記ロールは、ロール部及び台座を有し、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数枚のロール片が前記台座の外周に、該台座の長手方向に沿って積層されて形成されてあり、前記不織布は複数本の繊維と、該複数本の繊維を結合する結合剤からなり、前記繊維と前記結合剤の重量配合比率は、90:10?30:70の範囲内であって、前記結合剤は、高分子弾性体を有すると共に、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤のうち少なくとも1種類以上の界面活性剤と、他の材料とからなり、前記ロール部の表面粗度Ra(平均粗さ)が6.0μm以上9.5μm以下であり、前記少なくとも1種類以上の界面活性剤は、前記結合剤の中で、3%以上6%以下の重量配合比率であって、HLB値は0?16の範囲内にあることを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、界面活性剤は、炭化水素系界面活性剤を必須とすると共に、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤のいずれか1つ、或いは、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤の両方からなることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段を少なくとも有する洗浄装置。」

第3 原査定の理由について
原査定の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
「●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-3
・引用文献等 1-3
先に通知した文献1には、第1の方法として、ニードルパンチングにより原糸繊維を立体的に絡合し、架橋剤を配合した高分子弾性体9と液体浸透剤15を用いることが記載されている。そして、液体浸透剤15は、炭化水素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を用いている([0025]-[0031])。また、極細長繊維10と高分子弾性体9の重量配合比率を、95:5?30:70とすることが記載されている([0029])。
先に通知した文献2の、ロールの駆動手段を参照(請求項7、[0067]、図8)。
先に通知した文献3の、粗度が4.5-5.5であり、4.5以上で、グリップ力を高め、蛇行防止を行い、5.5以上では、繊維が脱落しやすくなる点を参照([0007])。

文献1のものにおいて、ダム機能が考慮され([0029])、粗すぎないことが前提となっており、また、ロールの粗さは、洗浄対象物の表面粗さや、回転数、接触圧などの要因にも依存して決定されるものであり、更に、蛇行防止を行うことは、ロール使用の洗浄機であれば当然考慮されるべき事項であり、粗度が4.5以上としてグリップ力を高めるという文献3記載の技術事項を参酌し、例えば、表面粗さを6-9.5μm程度とすることは、文献1の技術思想の範囲内における設計的事項であるというべきであって、そのような数値の表面粗さとすることに格別の困難性はない。
また、文献1のものは、ロール1の弾力性や、油分の除去から、重量配合比率を、95:5?30:70としており、少量となる架橋剤や液体浸透剤15の重量をも考慮して、例えば、本願請求項1で規定する重合配合比率とすることは、設計的事項であるというべきであって、そのような数値の重合配合比率とすることに格別の困難性はない。

よって、請求項1-3に係る発明は、文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2008-002521号公報
2.特開2010-276058号公報
3.特開平06-079328号公報」

第4 原査定の理由の判断
1 引用文献1の記載事項
引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある。
1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部はロール片が前記台座の外周面に形成されてあると共に、前記ロール片は高分子弾性体を有する極細長繊維からなる不織布にて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、前記不織布を構成する極細長繊維と高分子弾性体の重量配合比率が、95:5から30:70であることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるロールにおいて、前記不織布を構成する高分子弾性体の分子間に架橋構造が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるロールにおいて、前記不織布を構成する極細長繊維にたいして液体浸透剤が含浸されてあることを特徴とするロール。」

2)「【0019】
第4の発明は、特に、第1から第3の発明のロールにおいて、前記不織布を構成する極細長繊維にたいして液体浸透剤が含浸されてあるもので、被洗浄面に付着している液体とロール部が接触した際、極細長繊維と液体の境界面における界面張力が低下し、極細長繊維と液体との湿潤性が増して、液体は極細長繊維に浸透しやすくなる為、極細長繊維による液体の吸い上げ性能が向上する。その為、液体の除去、搾取、洗浄機能が飛躍的に向上する。特に、ラインスピードの速い洗浄工程においては、ロール部と被洗浄面との接触時間が短くなるので、迅速、且つ確実に被洗浄面に付着している液体を除去、搾取して、被洗浄面を洗浄することができる。なお、界面張力とは、固体と液体が接している境界面において、接触面積を小さくする方向に働く張力のことをいう。従って、界面張力が低下するということは、固体と液体との接触面積が大きくなることであり、極細長繊維と液体との接触面積が大きくなり、液体は極細長繊維に濡れやすくなるので、湿潤性が増し、極細長繊維に浸透しやすくなる。」

3)「【0022】
図1において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4から形成されてあるロール部2より構成されてある。台座3は、鉄等の金属材料からなる略円柱形状、あるいは略円筒形状であり、外周面にロール部2が形成されてある。また、ロール部2は、複数のロール片4が重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて装着されてある。止め金具5には、スナップリングが使用されてある。なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4より形成されてある。
【0023】
図2において、ロール片4は、概円盤状の平板形状に形成された不織布7であり、中心部には穴部13が形成され、外周部には端部14が形成されてある。また、不織布7を形成する集合体8は、図3(A)、及び図3(B)の如く、液体浸透剤15が含浸された極細長繊維10の外面に高分子弾性体9が付着した弾性極細長繊維8が、隙間部11を介して6本集束した概楔形状にて形成されてある。
【0024】
次に、ロール1の製作方法について説明する。最初に、ロール片4を概円盤状の平板形状に打ち抜く。次いで、概円盤状の平板形状に打ち抜かれたロール片4を複数重ね合わせて、穴部13を台座3にたいして貫通させる。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具5、及びプレート6にて挟み付けて固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4の内部応力を均一化させ、端部14を切削加工及び研磨加工し、台座3の外周面上にロール部2を形成して、製作される。
【0025】
次に、ロール片4を構成する不織布7の製造方法について、いくつか述べる。
第1の方法は、合成樹脂を溶融紡糸して、概丸形断面を有する原糸長繊維を得る。得られた原糸長繊維に、特殊な針を突き刺して、原糸長繊維を立体的に絡合する。前記の如く、立体的に絡合させる製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれており、立体的に絡合された原糸長繊維はウエッブと呼ばれている。次いで、前記ウエッブにたいして、100kg?150kg程度の高圧水流を当て、原糸長繊維を結合させると共に、前記原糸長繊維は、高圧水流が当たることにより、図3(A)、及び図3(B)の如く、外周面の長手方向に沿って、切り込み部12が発生して細分割され、隙間部11を介して極細長繊維10が形成される。次に、架橋剤を配合した高分子弾性体9と、液体浸透剤15をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて極細長繊維10に付着、含浸させ、弾性極細長繊維8が集束した集合体16からなる平板形状の不織布7を形成する。前記の如くの製造方法は、一般的に水流絡合法と呼ばれている。」

4)「【0029】
上記極細長繊維10、20と、高分子弾性体9、19の重量配合比率は、95:5から30:70にて形成される。高分子弾性体の重量比が5%未満の場合、ロール1は弾力性が発現しにくく、効果的なダム機能、及び吸排機能を発揮することができない。また、極細長繊維10、20の重量比が30%未満の場合、鋼板の油分を吸い上げる極細長繊維10、20の量が少ないので、油分を完全に除去することができず、鋼板に油分が残ることになる。なお、より効果的にダム機能、及び吸排機能をロール1に発現させ、鋼板に付着している油分の量や粘度等に対応して、効率よく確実に油分を除去するには、極細長繊維10、20と、高分子弾性体9、19の重量配合比率を、80:20から55:45にて設定し、極細長繊維10、20の比率を、高分子弾性体9、19の比率より高く設定することが好ましい。」

5)「【0031】
また、液体浸透剤15、25には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等の炭化水素系の非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等の炭化水素系の陰イオン性界面活性剤が単独使用、あるいは併用される。なお、非イオン性界面活性剤とは、水溶液中で電荷を帯びない界面活性剤のことであり、陰イオン性界面活性剤とは、水溶液中で負の電荷を帯びる界面活性剤のことである。前記液体浸透剤15、25は、極細長繊維10、20の100重量部にたいして、0.3?3重量部配合されるのが望ましい。0.3重量部未満の場合には、極細長繊維10、20は十分な油分の浸透力を得ることができず、3重量部より多い場合には、著しい界面張力の低下が期待できず、却ってコスト高となる。また、前記炭化水素系界面活性剤の他、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を単独使用、あるいは併用しても何ら差し支えない。」

6)引用発明
上記1)ないし5)の記載事項より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部は不織布を概円盤状の平板形状に打ち抜かれたロール片を複数重ね合わせて前記台座の外周面に形成され、前記不織布は、架橋剤を配合した高分子弾性体と、炭化水素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を単独使用、あるいは併用される液体浸透剤をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて極細長繊維に付着、含浸させ、弾性極細長繊維が集束した集合体からなる平板形状を形成し、極細長繊維と高分子弾性体の重量配合比率は、95:5から30:70にて形成され、液体浸透剤は、極細長繊維の100重量部にたいして、0.3?3重量部配合されたロール。」

2 引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面とともに、以下の記載がある。
「【0067】
ロール71a、71bは、洗浄装置70に上下一対で設置され、上部に位置するロール71aの台座73の両端部、すなわち継ぎ手部A75、及び継ぎ手部B76に一定の圧力が加えられ、駆動手段74により矢印の方向に回転駆動し、上部のロール71aと下部のロール71bの間を、両面に水分(図示せず)が付着した長尺状のアルミ板80が白抜き矢印の方向に送出されている。また、継ぎ手部A75の端部にはロータリージョイント79が挿入されると共に、配管78を介して真空ポンプ77に連接されている。上部に位置するロール71aはアルミ板80の表面から水分を除去し、下部に位置するロール71bはアルミ板80の裏面から水分を除去する。水分が付着したアルミ板80は、ロール部72と接触し、ロール部72を構成する不織布の有する繊維の毛細管現象により、水分がロール部72に吸い上げられると共に、ロール部72の空隙に放出される。なお、ロール71a、71bは、上記に示した実施例3のロール51と同一である。」

上記事項より、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。
「ロールを駆動装置により回転駆動することにより、アルミ板を洗浄する洗浄装置。」

3 引用文献3の記載事項
引用文献3には、図面とともに、以下の記載がある。
1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロール外表面にリング状の高分子重合体不織布をロール軸方向に圧粉積層し、該不織布の外径の表面硬度(ASTM(D))を75±2、表面粗度(Ra)を5±0.5に成形加工してなることを特徴とする高速通板用ロール。」

2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速通板用ロールに関し、さらに詳しくは、90°以上の巻付角を有し、1000mpm以上のライン速度でストリップを搬送するデフレクタロールに関する。」

3)「【0005】
【作用】本発明のロールを図1に示す。本発明によれば、ロール1の表面の被覆材料をミクロ的にポーラスで耐熱性のある高分子重合体不織布2とし、リング状の不織布をロール軸方向に積層した層を有し、この不織布を押え板3でロール軸方向両側から挟み込み固定し、表面硬度や粗度が一定の仕様になるように成形加工したものである。
【0006】高分子重合体不織布2は内部発熱がゴムに比べて低く、かつ耐熱性が優れているため、すぐれた剥離防止能力がある。ライン速度が1000mpm以上のクリーニングセクションにおいては、液中抵抗によりストリップの張力が15kgf/mm^(2) 以上となる場合がある。ストリップがロール面を押圧する押付力が大きくなった場合に、硬度(ASTM(D))が73未満であると、不織布が圧縮変形を起こすので、73以上とする必要がある。一方、77を越えて硬度(ASTM(D))を上げるのは加工が容易でないこと、さらに不織布のミクロ的なポーラス付が失われるのでこれを上限とする。
【0007】不織布はミクロ的にポーラスであるためハイドロプレーニング現象が起こりにくく、蛇行防止能力が得られる。さらに粗度(Ra)を4.5以上としたので、ハイドロプレーニング現象により形成される流体膜厚みより常に粗度の山の部分が高く維持されるため、グリップ力を長時間確保することができ、蛇行防止能力が得られる。粗度(Ra)が5.5を越えると、不織布であるが故に使用中に繊維が脱落しやすくなるので、5.5以下とした。」

4)上記1)ないし3)の記載事項より、引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。
「高速通板用ロールにおいて、ハイドロプレーニング現象の防止と不織布の繊維脱落防止のために、表面粗度(Ra)を5±0.5に成形加工してなること。」

4 本願請求項1に係る発明と引用発明との対比
引用発明における「極細長繊維」、「高分子弾性体」及び「液体浸透剤」は、その機能より、それぞれ本願請求項1に係る発明における「繊維」、「結合剤」及び「界面活性剤」に相当する。
そうすると、本願請求項1に係る発明と引用発明とは、少なくとも次の点で相違する。
相違点
本願請求項1に係る発明は、「ロール部の表面粗度Ra(平均粗さ)が6.0μm以上9.5μm以下」であるのに対して、引用発明は、ロール部の表面粗度の値が明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

5 判断
前記相違点について検討すると、原査定の拒絶理由で引用された引用文献3には、ロールの粗度が記載されているものの、その粗度は、相違点に係る粗度と異なり、また、引用発明のロールは、「被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄」を行うためのロールであるのに対して、引用文献3記載のロールは、「高速通板用」のロールであり、その用途は引用発明と異なっている。
そして、本願請求項1に係る発明は、ロールが優れたグリップ力を有し、被洗浄面の蛇行を防止することができると共に、初期段階から効果的にダム機能が発現し、油分の除去性能が飛躍的に向上させるという課題を、「ロール部の表面粗度Ra(平均粗さ)が6.0μm以上9.5μm以下」とすることで解決しており、「ロール部の表面粗度Ra(平均粗さ)が6.0μm以上9.5μm以下」としたことは、単なる設計事項であるともいえない。
よって、前記課題に対応する相違点に係る構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

6 小括
したがって,本願請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2、3記載の上記技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

7 請求項2及び3に係る発明について
本願の請求項2及び3に係る発明は,本願請求項1に係る発明特定事項をすべて含みさらに別の発明特定事項を付加したものに相当するから、本願請求項1に係る発明が前記5のとおり、引用文献1ないし3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、請求項2及び3に係る発明も同様の理由で、引用文献1ないし3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

8 まとめ
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第5 当審拒絶理由について
1 平成29年1月25日付けで通知した拒絶理由の概要
平成29年1月25日付けで通知した拒絶理由(特許法第36条第6項第2号違反)の概要は、以下のとおりである。

「請求項1について
請求項1は、結合剤について『前記結合剤は、高分子弾性体を有すると共に、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤のうち少なくとも1種類以上の界面活性剤と、他の材料とを含有し、』と特定している。
しかしながら、明細書には『また、界面活性剤は、結合剤の中で3?6%程度配合されるのが望ましい。』(段落0012)及び「結合剤13は高分子弾性体、界面活性剤を有する。高分子弾性体と界面活性剤の重量配合比率は、97:3?94:6にて設定される。」(段落0039)との記載があり、これらの記載からすると、結合剤において、高分子弾性体と界面活性剤以外の材料を含有しているとは考えにくく、『他の材料』がどのような材料を意図しているのか不明確である。

第6 当審拒絶理由の判断
1 明細書の記載
請求項1には、「前記繊維と前記結合剤の重量配合比率は、90:10?30:70の範囲内」である旨の記載があり、請求項1の技術的範囲を定めるためには、ロールを構成する結合剤の材料を特定する必要があるところ、明細書における結合剤の材料に関する記載は、以下のとおりである。
1)「【0012】
本発明においては、油分の除去性能を向上させることを目的にしている為、界面活性剤のHLB値は0?16の範囲内にて設定される。また、界面活性剤は、結合剤の中で3?6%程度配合されるのが望ましい。3%未満の場合、界面張力の低下が不十分である。6%を超える場合、著しい界面張力の低下が期待できなくなると共に、コストの上昇につながる。」

2)「【0039】
結合剤13は高分子弾性体、界面活性剤を有する。高分子弾性体と界面活性剤の重量配合比率は、97:3?94:6にて設定される。界面活性剤の重量比率が3%未満の場合、界面張力の低下が不十分である。6%を超える場合、著しい界面張力の低下が期待できなくなると共に、コストの上昇につながる。」、
3)「【0041】
ロール1の弾力性、及び耐摩耗性の向上を目的に、高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成してもよい。結合剤13に架橋剤を加え、100?150℃程度に加熱して高分子弾性体と反応させることにより、高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成することができる。(後略)」

4)「【0047】
(前略)結合剤13には、必要に応じて架橋剤、架橋助剤等を配合することができる。前記の製造方法は、一般的にケミカルボンド法と呼ばれている。」

2 審判請求人の主張
審判請求人は、平成29年3月27日付けの意見書において「上記補正における、『他の材料とからなり』の根拠を示す一例として、出願当初の明細書の段落0041に、『架橋剤と架橋助剤』が記載されております。」と意見を述べるとともに、文献を2件提示し「(1)特開平7-102462号公報において、段落0019には、『なお、このような結合剤以外に、帯電防止剤、柔軟剤、染料や顔料などの着色剤などを、結合剤の分散液中に添加して、様々な用途に適応させることができる。』との記載があり、これにより、結合剤には高分子弾性体と界面活性剤の他に、他の材料が含まれることが技術常識である旨が示されています。
(2)特開平3-64563号公報において、4頁の右下の段落(14頁)には、『本発明で用いられる高分子化合物又はその塩(I)には目的や必要に応じて、更にポリイソシアネート化合物、尿素樹脂、アルキロール化されていてもよいメラミン樹脂、アルキロール化されていてもよいベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂等の架橋剤、塩化アンモニウム、パラトルエンスルホン酸アンモニウム等の架橋用触媒、界面活性剤、着色剤、防腐剤、難燃剤、撥水撥油剤、柔軟剤並びに蛍光染料等の公知慣用の添加剤を併用することもできる。』との記載があり、これにより、結合剤には高分子弾性体と界面活性剤の他に、他の材料が含まれることが技術常識である旨が示されています。」と意見を述べている。

3 判断
請求項1には、「不織布は複数本の繊維と、該複数本の繊維を結合する結合剤からなり」との記載があるから、本願請求項1に係る発明の「結合剤」は、不織布から繊維を除いた材料であると把握できる。そして、平成29年3月27日付けの意見書で提示された文献によると、不織布において繊維材料、高分子弾性体及び界面活性剤以外の材料を結合剤とともに添加することは、技術常識であるといえる。また、上記、「第6」「1」「4)」の「結合剤13には、必要に応じて架橋剤、架橋助剤等を配合することができる。」との記載からも、結合剤には、必要に応じて架橋剤、架橋助剤やそれ以外の材料を配合することが示唆されているといえる。
そうしてみると、結合剤は、高分子弾性体を有すると共に、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤のうち少なくとも1種類以上の界面活性剤と、必要に応じて選択される他の材料を有しているといえるから、平成29年3月27日付けの意見書を踏まえると、請求項1に係る発明は明確である。

4 小括
以上のとおり、特許請求の範囲の記載は、明確である。
そうすると、当審拒絶理由(特許法第36条第6項第2号)によって本願を拒絶することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-31 
出願番号 特願2011-124714(P2011-124714)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B08B)
P 1 8・ 121- WY (B08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山内 康明  
特許庁審判長 中村 則夫
特許庁審判官 窪田 治彦
莊司 英史
発明の名称 ロール及び洗浄装置  
代理人 中村 繁元  
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