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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B63H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B63H
管理番号 1328441
審判番号 不服2016-3508  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-07 
確定日 2017-05-18 
事件の表示 特願2012-121283号「船舶および船舶用推進装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 9日出願公開、特開2013-244913号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月28日の出願であって、平成24年6月6日に手続補正書及び上申書が提出され、平成27年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年8月6日に意見書が提出され、平成28年1月29日付けで拒絶査定がされ、同年3月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年3月7日になされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年3月7日になされた手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年3月7日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項4に記載された、
「【請求項4】
船体の機関室に設置される低速主機関と、
前記船体の船尾部に貫通して設置される船尾管軸受に対して支持されるプロペラ軸と前記低速主機関の出力軸との間に設置されて前記低速主機関の出力軸の回転速度を増速して前記プロペラ軸に伝達する増速機と、
を備えることを特徴とする船舶用推進装置。」
という発明を、補正後の特許請求の範囲の請求項3に記載された、
「【請求項3】
満載時の喫水線が5.0[m]?6.5[m]であり、プロペラが、直径4.0[m]?5.2[m]である船舶における船体の機関室に設置される低速主機関と、
前記船体の船尾部に貫通して設置される船尾管軸受に対して支持されるプロペラ軸と前記低速主機関の出力軸との間に設置されて前記低速主機関の出力軸の回転速度を増速して前記プロペラ軸に伝達する増速機と、
を備えることを特徴とする船舶用推進装置。」
という発明に補正することを含むものである(なお、下線部は補正箇所を示す。)。

2 補正の適否
(1)新規事項の追加の有無、シフト補正の有無、及び補正の目的の適否について
上記補正は、補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「船体」について、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項6及び明細書の段落【0028】等の記載を根拠に、「満載時の喫水線が5.0[m]?6.5[m]であり、プロペラが、直径4.0[m]?5.2[m]である船舶における船体」であることを限定するものであるから、発明特定事項を限定するものであって新規事項を追加するものではない。
また、上記補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び同第4項の規定に適合するものであり、また、その補正前の請求項4に記載された発明とその補正後の請求項3に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項3に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

(2)独立特許要件
ア 刊行物の記載事項等
(ア)刊行物1の記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された実公平2-43840号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「産業上の利用分野
この考案は、低速主機関用軸発増速機に関するものである。
低速デイーゼル機関を主機関とする船舶において、該主機関により推進軸系を介して艫側のプロペラを駆動すると共に、・・・」(1頁2欄13?18行)
(1b)「第1図に示す配置図において、1は低速デイーゼル主機関、2はプロペラ、3は主機関1側とプロペラ2側とを結合して推進軸系を構成する中間軸、4は中間軸3の図示の位置に直結した増速機、5は増速機4に結合した発電機である。
上記装置において、主機関1でプロペラ2のみを回転駆動し、増速機4を未使用とする軸発未使用モードIと、増速機4を使用して発電機5も主機関1で駆動する軸発使用モードIIと、主機関1の故障時や保守工事中に発電機5を電動機へ切換えてプロペラ2を低速駆動するバツクアツプモードIIIの機能をもたせている。」(2頁4欄41行?3頁5欄8行)
(1c)刊行物1には、以下の図が示されている。

以上によれば、刊行物1には、低速デイーゼル主機関1、プロペラ2、低速デイーゼル主機関1側とプロペラ2側とを結合して推進軸系を構成する中間軸3、中間軸3に直結した増速機、及び増速機4に結合した発電機5を備えた装置が記載されており(摘示(1b))、かかる装置は、船舶の推進機構をなすことが明らかである(摘示(1a)(1c))。

したがって、刊行物1には、
「低速デイーゼル主機関1、プロペラ2、低速デイーゼル主機関1側とプロペラ2側とを結合して推進軸系を構成する中間軸3、中間軸3に直結した増速機、及び増速機4に結合した発電機5を備えた、船舶の推進機構をなす装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として示された特開昭60-53496号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2a) 「(産業上の利用分野)
本発明はトランサムに対し起伏及び左右回動自在に取り付けたアウトドライブ装置と、アウトドライブ装置に連結された船内機関から成る船内外機の推進装置に関する。」(1頁左下欄12?16行)
(2b)「(発明の目的)
本発明は船内外機の大形化、高出力化への要望(ニーズ)に対応したデイーゼル出力で200PS級以上の大形船内外機を製造可能にすることを目的としている。高出力化の要求を満たすためには、プロペラ径を大きくするか、又はプロペラの回転数を速くするかの、2つの対策があるが、プロペラの径はアウトドライブ装置のロワユニツトの形状、大きさにより制限を受けるため、あまり大きくできない。即ち大きくすると、プロペラ軸の中心線が下がり、完全なチルトアツプができなくなる。又船内機関としてデイーゼルエンジンを使用する場合、例えば300PS級の現状のエンジンはいわゆる中速回転仕様であるため、高トルクは得られるがガソリンエンジン並の高速回転は得られない。本発明は例えば6気筒、300PS/2600rpm程度の中速デイーゼルエンジンを採用した場合にも、プロペラ径を必要以上に大きくすることなく、しかもプロペラの高回転によってエンジン出力を充分吸収できるようにすることを目的としている。」(1頁右下欄13行?2頁左上欄13行)
(2c)「第1図の主機関1を起動し、増速逆転機8の前後進切換弁47を前進側へ操作すると、主機関1の出力はフライホイール9からダンパーデイスク10を経て増速逆転機8の入力軸11に伝達され、そこから前進クラツチ46、前進増速歯車45、出力歯車48を経て出力軸12へ増速状態で伝わり、更にそこから連結軸3を経てアウトドライブ装置2へ伝わり、プロペラ37が正転し、船体は前進する。
・・・(中略)・・・
(発明の効果)
以上説明したように本発明においては、船内の主機関1とアウトドライブ装置2の間に増速逆転機8を介装したので、船内主機関1としていわゆる中速の大馬力デイーゼルエンジンを採用することができ、しかもプロペラ37の径を必要以上に大きくすることなく、プロペラ37の高回転によってエンジン出力を効果的に吸収することができ、推進効率が向上する。」(3頁右上欄13行?同頁右下欄1行)

(ウ)刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献3として示された特開2009-280067号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(3a)「 【0021】
また、流れの可視化を行うため、風速1.0m/sで煙法により実験を行った。
尚、実験対象となる自動車運搬船の実際の主要寸法は次の通りである。
全長:139.9m
水線長さ:135.0m
垂線間長:131.0m
船幅:22.4m
深さ:29.6m
喫水:6.5m
風洞実験において得られた風圧力は、船体水線面の中央を原点とした船体固定座標系における風圧力としてまとめた。」

(エ)刊行物4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献4として示された特開2011-162064号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(4a)「【0038】
本実施例に係る船舶の主要目は長さ約180メートル、幅26.5メートル以下、吃水約6.5メートル、合計出力約20,000PS、速力約20?25ノット(以下20ノット以上を高速、以下を中・低速と称する)、旅客及びコンテナ、車輌等を主な搭載貨物とした。」

(オ)刊行物5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献6として示された特開2009-29268号公報号公報(以下「刊行物5」という。)には、以下の事項が記載されている。
(5a)「【0024】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る舶用プロペラついて図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る舶用プロペラの概略構成を説明する模式図である。
本実施形態で説明する舶用プロペラ1は、種々の船舶の推進に用いられるプロペラであって、プロペラ翼を含む直径が約1mから約10mまでの範囲に適用されるものである。特に、直径が約4mから約5mの範囲で用いるのに好適なプロペラである。」

イ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「低速デイーゼル主機関1」は、「船舶の推進機構をなす装置」を構成するものであり、船舶における船体に設置されることは自明であるから、本願補正発明の「満載時の喫水線が5.0[m]?6.5[m]であり、プロペラが、直径4.0[m]?5.2[m]である船舶における船体の機関室に設置される低速主機関」とは、「船舶における船体に設置される低速主機関」の限度で共通するものといえる。
(イ)引用発明の「低速デイーゼル主機関1側とプロペラ2側とを結合して推進軸系を構成する中間軸3」は、船体に設置されることは自明であり、さらに、第1図(摘示(1c))に示されるとおりプロペラの軸をなすことも明らかであるから、本願補正発明の「前記船体の船尾部に貫通して設置される船尾管軸受に対して支持されるプロペラ軸」とは、「前記船体に設置されるプロペラ軸」の限度で共通するものといえる。
(ウ)引用発明の「船舶の推進機構をなす装置」は、本願補正発明の「船舶用推進装置」に相当する。

以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「船舶における船体に設置される低速主機関と、前記船体に設置されるプロペラ軸と、を備える船舶用推進装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
「低速主機関」の設置について、本願補正発明は、低速主機関が「満載時の喫水線が5.0[m]?6.5[m]であり、プロペラが、直径4.0[m]?5.2[m]である船舶における船体の機関室」に設置されるものとして特定されているのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「プロペラ軸」について、本願補正発明は、「前記船体の船尾部に貫通して設置される船尾管軸受に対して支持される」ものであるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本願補正発明は、「前記低速主機関の出力軸との間に設置されて前記低速主機関の出力軸の回転速度を増速して前記プロペラ軸に伝達する増速機」を具備するのに対し、引用発明は、そのような増速機を備えていない点。

ウ 判断
<相違点1> について
(ア)刊行物3には、「実験対象となる自動車運搬船の実際の主要寸法は次の通りである。・・・喫水:6.5m」と記載され(摘示(3a))、刊行物4には、「本実施例に係る船舶の主要目は・・・吃水約6.5メートル」と記載されているように(摘示(4a))、船舶の喫水を「6.5m」程度に設定することは、かかる技術分野で通常実施されている範囲のものであって周知技術といえる。
また、刊行物5には、「本実施形態で説明する舶用プロペラ1は、種々の船舶の推進に用いられるプロペラであって、・・・特に、直径が約4mから約5mの範囲で用いるのに好適なプロペラである。」と記載されているように(摘示(5a))、船舶用プロペラの直径を「4?5m」程度に設定することもかかる技術分野で通常実施されている範囲のものであって周知技術といえる。
(イ)そして、船舶の主要寸法(長さ、幅、深さ、喫水)、概略配置、主機および必要馬力、航海速度、推進性などの基本設計が、船主などの希望に沿って設定され得ることは、かかる技術分野の技術常識である(必要ならば、池田良穂監修「プロが教える船のすべてが分かる本」 株式会社ナツメ社 2009年2月9日発行 18頁左欄本文1?12行、山縣昌夫著「舶型学抵抗篇(審決注:「学」は旧字で記載)」 天然社 昭和28年1月10日発行 30頁2?4行、など参照)。
(ウ)以上を踏まえて検討すると、引用発明は、「船舶の推進機構をなす装置」として「低速デイーゼル主機関1」を具備するものであるところ、刊行物1には、上記「低速デイーゼル主機関1」を設置する船舶の喫水及びプロペラの寸法について記載されるものではないが、上記(ア)で述べたとおり、船舶の喫水を「6.5m」程度に設定することも、また、船舶用プロペラの直径を「4?5m」程度に設定することもかかる技術分野で通常実施されている範囲のものであって周知技術といえ、さらに、上記(イ)で述べたとおり、船舶を設計する場合に、船舶の主要寸法などの基本設計は、船主などの希望に沿って適宜設定される設計事項といえる。
してみると、引用発明において、「低速デイーゼル主機関1」を設置する船舶について、その喫水及びプロペラの寸法を、従来より実施されている範囲のものであって周知技術ともいうべき寸法に設定することは、当業者にとって格別困難なことではない。
そして、「低速デイーゼル主機関1」が「船体の機関室」に設置されることは自明であるから、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。

<相違点2> について
(ア)引用発明の「船舶の推進機構をなす装置」は、「低速デイーゼル主機関1」、「プロペラ2」及び「低速デイーゼル主機関1側とプロペラ2側とを結合して推進軸系を構成する中間軸3」を具備するものであるところ、当然のことながら、船舶を構成する場合には、上記「中間軸3」を船舶に設置する必要がある。
そして、上記「中間軸3」は「低速デイーゼル主機関1側とプロペラ2側とを結合して推進軸系を構成する」ものであるから、その構造に照らして、船体の船尾部に貫通して設置される軸受で支持されることは自明というべきであるから、上記相違点2は実質的な相違点とはいえない。
仮に実質的に相違するとしても、プロペラ軸を、船体の船尾部に貫通して設置される船尾管軸受で支持することは、かかる技術分野において、周知技術にして技術常識というべきものであるから(必要ならば、特開昭61-235295号公報:1頁左下欄末行?同頁右下欄11行など参照)、引用発明の「中間軸3」を、船体の船尾部に貫通して設置される船尾管軸受に対して支持されるように構成することは、当業者が容易に想到し得るものといえる。
したがって、上記相違点2は実質的な相違点とはいえないか、または実質的に相違するとしても、当業者が容易に想到し得るものといえる。

<相違点3> について
(ア)刊行物2には、「本発明は船内外機の大形化、高出力化への要望(ニーズ)に対応したデイーゼル出力で200PS級以上の大形船内外機を製造可能にすることを目的としている。高出力化の要求を満たすためには、プロペラ径を大きくするか、又はプロペラの回転数を速くするかの、2つの対策がある」(摘示(2a))と記載されているように、船舶の推進機構を高出力化するという技術課題は、船舶設計全般に共通する基本的な技術課題ということができ、さらに、上記「<相違点1> について」で述べたとおり、船舶の推進性などの基本設計は、船主などの希望に沿って設定され得るのであるから、引用発明においても、推進機構を高出力化する、という技術課題は内在するものといえる。
(イ)そして、刊行物2には、船内外機を高出力化するための課題解決手段として、主機関1の出力を増速逆転機8で増速するとともに、そのように増速された回転力をプロペラ37に伝達することで、プロペラ37を高回転なものとし、エンジン出力を効果的なものとすることが記載されているから(摘示(2c))、そのような技術事項を引用発明に適用する動機付けは十分存在するものといえる。
(ウ)ここで、請求人は、平成28年3月7日付けの審判請求書((4)(4-1))で、刊行物2記載の発明は、アウトドライブ装置に特化したものであり、本願発明と刊行物2記載の発明は、適用される船舶が異なるものであり、引用発明が本願発明と同程度の低速主機関(低速ディーゼル主機関)を有するものと認められるとするならば、この引用発明において刊行物2記載の発明の技術思想を勘案することはできない、旨主張する。
しかし、上記(ア)で述べたとおり、船舶の推進機構を高出力化するという技術課題は、船舶設計全般に共通する基本的な技術課題ということができるから、刊行物2に記載された技術事項が、アウトドライブ装置を備える船舶ばかりでなく、アウトドライブ装置を備えていない船舶においても有効であることは当業者には明らかである。
補足すれば、刊行物2に記載された「高出力化の要求を満たすためには、プロペラ径を大きくするか、又はプロペラの回転数を速くするかの、2つの対策がある・・・」(摘示(2b))との事項は、少なくとも主機関と推進用のプロペラとを備える船舶設計全般に共通する事項ということができるし、そもそも推進用のプロペラを、主機関により直接駆動することも、あるいは増速機を介して駆動することも、船舶設計全般において採用されている技術事項にすぎない(必要ならば、特開2010-65612号公報:段落【0030】など参照)。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(ウ)以上のとおりであるから、上記相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用発明、刊行物2に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、刊行物2に記載された技術事項、周知技術及び技術常識から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

エ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された技術事項、周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明は、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1」の【請求項4】に記載されたとおりのものである。

第4 引用刊行物とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項等は、上記「第2 2(2)ア」に記載したとおりでである。

第5 当審の判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 2(1)」で述べたとおりの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2(2)」で述べたとおり、引用発明、刊行物2に記載された技術事項、周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、刊行物2に記載された技術事項、周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された技術事項、周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-15 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-04-03 
出願番号 特願2012-121283(P2012-121283)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B63H)
P 1 8・ 575- Z (B63H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰二郎  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 尾崎 和寛
氏原 康宏
発明の名称 船舶および船舶用推進装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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