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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21L |
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管理番号 | 1328450 |
審判番号 | 不服2016-10123 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-05 |
確定日 | 2017-05-18 |
事件の表示 | 特願2012-267879号「棒状ライト」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 9日出願公開、特開2013-247108号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年5月29日に出願した特願2012-122301号(以下、「原出願」という。)の一部を平成24年12月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。 平成27年 4月 7日 手続補正書の提出 9月16日付け 拒絶理由通知 10月30日 意見書、手続補正書の提出 平成28年 1月25日付け 拒絶理由通知(最後) 3月10日 意見書、手続補正書の提出 3月29日付け 補正の却下の決定、拒絶査定 7月 5日 審判請求書及び手続補正書の提出 第2 平成28年7月5日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年7月5日の手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 平成28年7月5日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、補正前後の請求項1の記載は次のとおりである。 なお、下線部は補正箇所を示す。 ア 本件補正前の請求項1の記載 「【請求項1】 筒状の胴体部と、 前記胴体部の内部に位置し、発光する発光部であって、複数の発光ダイオードで構成される発光部と、 前記胴体部の前端に設けられるヘッド部と、 前記胴体部と連結し、側面に孔部を備える手でつかむための保持部と、 前記保持部の内部に設けられ、前記発光部に動力を供給する電源部と、 前記保持部の内部であって、前記孔部に隣り合うように設けられた、前記発光部が発する熱を散熱する散熱部とを有し、 前記胴体部は、前記保持部に差し込まれることで前記保持部に連結し、 前記発光部は、前記胴体部の、前記保持部に差し込まれた部分に位置する棒状ライト。」 イ 本件補正後の請求項1の記載 「【請求項1】 筒状の胴体部と、 前記胴体部の内部に位置し、発光する発光部と、 前記胴体部の前端に設けられるヘッド部と、 前記胴体部と連結し、側面に孔部を備える手でつかむための保持部と、 前記保持部の内部に設けられ、前記発光部に動力を供給する電源部と、 前記保持部の内部であって、前記孔部に隣り合うように設けられた、前記発光部が発する熱を散熱する散熱部とを有し、 前記胴体部は、前記保持部に差し込まれることで前記保持部に連結し、 前記発光部は、前記胴体部の、前記保持部に差し込まれた部分に位置し、各発光体が複数の発光色に発光し、白色光を発する発光ダイオードを用いており、当該各発光体が発光の照度を切り替え可能である棒状ライト。」 2.補正の適否 本件補正による請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に係る発明に「複数の発光ダイオードで構成される発光部」とあったものを、発光部は「各発光体が複数の発光色に発光し、白色光を発する発光ダイオードを用いており、当該各発光体が発光の照度を切り替え可能である」とするものである。 補正前の請求項1に係る発明は、発光部は複数の発光ダイオードで構成されると特定していたところ、補正後の請求項1に係る発明は、発光部が発光ダイオードである発光体を複数有し、各発光体は複数の発光色及び白色に発光するものであるとともに、その照度を切り替え可能であると限定するものである。 そして、本件補正による請求項1に係る補正は、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.イ」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。 (2)引用発明 原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の出願前に日本国内において販売されたルイファン・ジャパン製の「キングブレード・マックス(発光部サイズ:φ30mm×H:150mm、全長250mm)、JANコード:4562342920072」においては、次の発明(以下、「引用発明」という。)が実施されていると認められる。 〔引用発明〕 「筒状の胴体部と、 前記胴体部の内部に位置し、発光する発光部と、 前記胴体部の前端に設けられ、前記発光部が発する光を遮蔽するヘッド部と、 前記胴体部と連結し、側面に孔部を備える手でつかむための保持部と、 前記保持部の内部に設けられ、前記発光部に動力を供給する電源部と、 前記保持部の内部であって、前記孔部に隣り合うように設けられた、前記発光部が発する熱を散熱する散熱部とを有し、 前記胴体部は、前記保持部に差し込まれることで前記保持部に連結し、 前記発光部は、前記胴体部の、前記保持部に差し込まれた部分に位置し、 発光部の発光条件の切り替えを指示するスイッチが保持部の底部に設けられ、スイッチの押圧操作で種々の発光条件を異ならせて発光させている、 棒状ライト。」 なお、上記引用発明の認定は、平成27年(行ケ)第10069号の判決において、当該裁判事件の当事者間に争いのないとされた事項に基づくものであり、当該裁判事件は、本願の分割の元となる特許出願である原出願(特願2012-122301号)に係る特許(特許第5324681号)に関する無効審判事件(無効2014-800030号)の審決に対する審決取消訴訟である。そして、前記裁判事件の当事者の一方である原告は、本審判事件の請求人である。 (3)引用文献に記載の事項 原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-90702号公報(以下、「引用文献」という。)には、次のとおり記載されている。 なお、下線は当審で付したものである。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明はステックライトに関する。 【0002】 【従来の技術】コンサート会場や夜間の遊園地において、会場の雰囲気を盛り上げる道具としてステックライト(ペンライト若しくはチアライトともいう)がある。・・・ 【0003】 【発明が解決しようとする課題】かかる従来のステックライトでは、光源として1つの発光ダイオードしか用いられていない。従って、発光色変化が乏しく、いわゆる面白みに欠ける。そこでこの発明は、種々の発光態様を持つ新規な構成のステックライトを提供することを目的とする。」 イ 「【0012】この発明のスティックライトでは、色々な発光の態様を選択できる。スティックライトは通常暗い会場で使用されるため、選択のためのスイッチが見えない場合が多い。そこで、実施例では、上記7色(赤、黄、緑、青緑、青、紫、白)を予め定められた順序で関係付けておき、スイッチを操作したときこの順序で7色の色の内の1色が選択されるようにする。具体的には、スイッチを1度押すたびに、赤→黄→緑→青緑→青→紫→白(以下この繰り返し)の順で色が変化する。・・・ 【0013】 【実施例】以下、この発明の実施例について説明する。・・・外形上このスティックライト1は把持部10と棒状発光体50から構成される。把持部10は円筒形状であって、その正面の中央部分において切り欠かれている。その切り欠き部分に色切換えスイッチ(第1のスイッチ)11とモード切換えスイッチ(第2のスイッチ)13が備えられている。 【0014】・・・上側のキャップ15内には光源部30が備えられる。光源部30には赤色発光ダイオード30R、緑色発光ダイオード30G及び青色発光ダイオード30Bの3つの発光ダイオードが備えられている。これらの発光ダイオードは図4に示す制御装置41によって制御される。・・・尚、本実施例では、光源部30にランプタイプの各色発光ダイオード30R、30G、30Bを用いたが、チップタイプの発光ダイオードでも良い。又、各色のチップが1つのパッケージに入れられた1つのランプでも良い。 【0015】棒状発光体50(導光体)は中実の円柱形状であり、その先端部は球面となっている。一方、基端部は上側のキャップ15に挿入され、光源部30に対向している。・・・光源部30から放出された光は基端部より棒状発光体50内に導入される。導入された光は棒状発光体50内のシリカ微粉末により乱反射され、棒状発光体50の表面全体からほぼ均一な明るさで放出される。これにより、棒状発光体50の全体が光源部30の色に発光することとなる。 【0016】制御装置41はCPU42とメモリ44を備えている。メモリ44内に保存されている制御プログラムに基づいてCPU42は以下に説明する各種の制御を実行する。メモリ44内には、光源部30を全体として赤、黄、緑、青緑、青、紫、白のいずれかの色に発光させるために必要な各発光ダイオードのオン/オフの状態に関するデータが保存されている。また、制御装置41の図示しない第1のカウンタは7つの値をとり、当該7つの値は上記7つの色に対応している。この第1のカウンタは第7の値の次に第1の値をとる。色切換えスイッチ11が押圧されると、第1のカウンタの値が1つ加算され、そのカウンタの値に対応するデータがメモリ44から呼び出される。このデータに基づいてCPU42はドライバ45R、45G、45Bを制御する。例えば、スイッチ11により選択された色が赤であり、光源部30を赤に発光させるためのデータがメモリ44から読み出されたとき、CPU42は赤色発光ダイオード30Rのみが点灯するように各ドライバ45R、45G、45Bを制御する。また、スイッチ11により選択された色が黄であり、光源部30を黄に発光させるためのデータがメモリ44から読み出されたとき、CPU42は赤色発光ダイオード30R及び緑色発光ダイオード30Gが点灯し、青色発光ダイオード30Bが点灯しないように各ドライバ45R、45G、45Bを制御する。」 ウ 「【0022】各発光ダイオードの発光強度及びその点滅のタイミングは任意に調節できるものである。従って、実施例のスティックライトはそのメモリ44内の制御プログラムを変更することにより、上記説明以外の発光態様を奏することができることは言うまでもない。」 (4)対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 後者の「筒状の胴体部」は、前者の「筒状の胴体部」に相当する。 後者の「胴体部の内部に位置し、発光する発光部」は、前者の「胴体部の内部に位置し、発光する発光部」に相当する。 後者の「胴体部の前端に設けられ、発光部が発する光を遮蔽するヘッド部」は、前者の「胴体部の前端に設けられるヘッド部」に相当する。 後者の「胴体部と連結し、側面に孔部を備える手でつかむための保持部」は、前者の「胴体部と連結し、側面に孔部を備える手でつかむための保持部」に相当する。 後者の「保持部の内部に設けられ、発光部に動力を供給する電源部」は、前者の「保持部の内部に設けられ、発光部に動力を供給する電源部」に相当する。 後者の「保持部の内部であって、孔部に隣り合うように設けられた、発光部が発する熱を散熱する散熱部」は、前者の「保持部の内部であって、孔部に隣り合うように設けられた、発光部が発する熱を散熱する散熱部」に相当する。 後者の「胴体部は、保持部に差し込まれることで保持部に連結」することは、前者の「胴体部は、保持部に差し込まれることで保持部に連結」することに相当する。 後者の「発光部は、胴体部の、保持部に差し込まれた部分に位置する」ことは、前者の「発光部は、胴体部の、保持部に差し込まれた部分に位置」することに相当する。 後者の「発光部」は、「発光条件の切り替えを指示するスイッチが保持部の底部に設けられ、スイッチの押圧操作で種々の発光条件を異ならせて発光させている」ものであり、スイッチの押圧操作で発光条件を切り換えて発光させているといえるので、前者の、発光部は「各発光体が複数の発光色に発光し、白色光を発する発光ダイオードを用いており、当該各発光体が発光の照度を切り替え可能である」ことと、発光部は「発光条件を切り替え可能である」限りにおいて一致する。 後者の「棒状ライト」は、前者の「棒状ライト」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりといえる。 〔一致点〕 「筒状の胴体部と、 前記胴体部の内部に位置し、発光する発光部と、 前記胴体部の前端に設けられるヘッド部と、 前記胴体部と連結し、側面に孔部を備える手でつかむための保持部と、 前記保持部の内部に設けられ、前記発光部に動力を供給する電源部と、 前記保持部の内部であって、前記孔部に隣り合うように設けられた、前記発光部が発する熱を散熱する散熱部とを有し、 前記胴体部は、前記保持部に差し込まれることで前記保持部に連結し、 前記発光部は、前記胴体部の、前記保持部に差し込まれた部分に位置し、発光条件を切り替え可能である棒状ライト。」 〔相違点〕 本願補正発明は、発光部が「各発光体が複数の発光色に発光し、白色光を発する発光ダイオードを用いており、当該各発光体が発光の照度」を切り替え可能であるのに対して、引用発明は、発光の光源の種類が特定されておらず、発光条件が特定されていない点。 上記相違点について以下検討する。 上記(3)ア、イの記載によれば、引用文献には、スティックライト1において、光源部30を赤色発光ダイオード30R、緑色発光ダイオード30G及び青色発光ダイオード30Bの3つの発光ダイオードから構成するか、あるいは3色の発光ダイオードのチップが1つのパッケージに入れられて構成すること(段落【0014】)、光源部30は白色を含んで複数色に発光しうること(段落【0012】、【0016】)、色切換えスイッチ11が押圧される毎にカウンタの値を1つ加算し、カウンタの値に対応するデータをメモリ44から呼び出し、このデータに基づいてCPU42はドライバ45R、45G、45Bを制御し、各発光ダイオードの点灯を制御し、光源部30をカウンタの値に対応する発光色とすること(段落【0016】)、が記載されているといえる。 また、上記(3)ウの記載によれば、引用文献には、光源部30を構成する各発光ダイオードの発光強度を任意に調節できるものであり、メモリ44内の制御プログラムを変更することで色々な発光態様とできることも記載されており、各発光ダイオードの発光強度は光源部30全体の発光強度、すなわち照度に寄与するものであり、各発光ダイオードの発光強度を任意に調節できることは照度を調節できることといえ、前記の「カウンタの値に対応する発光色」は発光色のみならず照度を含んだ発光態様としうることが記載されているといえる。 ここで、本願補正発明と上記引用文献に記載された事項とを対比すると、後者の3色の発光ダイオードのチップが1つのパッケージに入れられて構成された「光源部30」は白色を含んで複数色に発光しうるものであるから、前者の「複数の発光色に発光し、白色光を発する発光ダイオード」である「発光体」に相当する。後者の「光源部30」を複数とし、前者の「各発光体」を用いた「発光部」とすることは、必要とする輝度に応じて当業者が適宜になし得る設計事項といえる。 また、後者のCPU42が、色切換えスイッチ11の押圧回数をカウントした値に対応して、各発光ダイオードの点灯を制御し、カウンタの値に対応する発光色及び照度を得ることは、前者の発光部の「各発光体が発光の照度を切り替え可能である」ことに相当する。 引用発明は、コンサート等のイベントで使用されるものと認められ、同様の用途のための引用文献に記載された事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。 そうすると、引用発明を、相違点に係る本願補正発明の構成のようにすることは、引用文献に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たといえる。 そして、本願補正発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び引用文献に記載された事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。 よって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成28年7月5日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成27年10月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1.ア」の【請求項1】に記載されたとおりのものである。 2.引用発明及び引用文献に記載の事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用発明は、前記「第2 2.(2)」に記載したとおりである。 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献に記載された事項は、前記「第2 2.(3)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2 3.」で検討した本願補正発明が、発光部は「各発光体が複数の発光色に発光し、白色光を発する発光ダイオードを用いており、当該各発光体が発光の照度を切り替え可能である」と限定していたものを、「複数の発光ダイオードで構成される発光部」としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、前記「第2 2.(4)」で検討したとおり、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び引用文献に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-14 |
結審通知日 | 2017-03-21 |
審決日 | 2017-04-03 |
出願番号 | 特願2012-267879(P2012-267879) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F21L)
P 1 8・ 121- Z (F21L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹中 辰利 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 和田 雄二 |
発明の名称 | 棒状ライト |
代理人 | 特許業務法人白坂 |
代理人 | 白坂 一 |