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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1328453
審判番号 不服2016-5190  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-08 
確定日 2017-06-05 
事件の表示 特願2014-155645「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 8301、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年8月1日に出願した特願2011-168125号の一部を新たに特許出願したものであって、手続の概要は以下のとおりであ
る。

平成26年 7月31日 特許出願
平成26年 8月20日 手続補正書
平成27年 5月13日 拒絶理由通知
平成27年 7月17日 意見書、手続補正書
平成27年12月 9日 拒絶査定
平成28年 4月 8日 審判請求、手続補正書
平成28年 6月 6日 前置報告
平成29年 1月17日 拒絶理由通知
平成29年 2月22日 手続補正書

第2.特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、平成29年2月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
撮像部を備えた筐体と、前記筐体を部分的に覆い且つ前記撮像部の撮像方向に対し直交する方向を回転軸として回動可能になるように前記筐体に結合されるフレーム状部材と、を有する電子機器であって、
前記フレーム状部材は、前記回動により前記筐体が当該フレーム状部材の枠形状の外に出た状態となり、この状態で前記撮像部を動作させて撮像する場合には、当該枠形状をグリップとして保持可能な形状であり、外部からの操作を検出して前記撮像部を制御する制御信号を前記筐体内部の回路部へ送るための操作部を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記フレーム状部材の内部に、前記回路部を有する回路基板に導通可能な回路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記フレーム状部材は、内部の回路が、前記筐体と回転可能な結合箇所を経由して前記回路基板に電気的接続され、
前記筐体は、前記回転可能な結合箇所の内部に、前記回路基板と前記フ
レーム状部材の前記回路とを電気的に導通させるための導通部材が設けられていることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記筐体は前記撮像部を備えるブロックと表示部を備えるブロックとを含むとともに、これらのブロックは前記筐体の前記フレーム状部材に対する回転方向と前記撮像部の撮像方向とに直交する方向を回転する方向として結合されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の電子機器。」

第3.当審の拒絶理由
平成29年1月17日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。
上記「第2.特許請求の範囲の記載」に記載したように、本願の特許請求の範囲の記載は、補正によって明確なものとなり、当審の拒絶理由は解消した。

第4.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、下記1及び2のとおりである。

1.この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内におい
て、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



登録実用新案第3109073号公報(以下、「引用例」という。)

第5.当審の判断
1.引用発明
引用例には、図面とともに、以下の記載がなされている。

(1)「【請求項1】
レンズ、シャッター、複数の制御ボタン、内部に設置される制御回路とが含有され、適当な位置に収納空間があり、両端面には当該収納空間が貫通し、当該収納空間の両側壁には、夫々、接合部がある、カメラ本体と、
可動的に上記の収納空間の中に設置され、両側には、夫々、上記の接合部と可動的に接合するための連接部がある、表示ユニットと、が含有され
る、ことを特徴とする、回転スクリーン。」

(2)「【考案を実施するための最良の形態】
【0007】
図1、2、3、4は、それぞれ本考案の立体外観概念図、本考案の立体分解概念図、本考案の実施例概念図及び本考案の他の実施例概念図である。図に示すように、本考案は、カメラ本体1と、表示ユニット2とからなる回転スクリーンであり、当該カメラ本体がより軽薄短小になり、また、より容易に携帯や収納できる効果が実現される。
【0008】
上記のカメラ本体1は、レンズ11、シャッター12、複数の制御ボタン13及び当該カメラ本体1の内部に設置される制御回路14が含有され、当該カメラ本体1の適当な位置には収納空間15があり、当該カメラ本体1の両端面には当該収納空間15が貫通し、当該収納空間15の両側壁には、夫
々、接合部16があり、当該接合部16は軸桿161(図3参照のこと)であるか、貫通穴162(図4参照のこと)である。
【0009】
当該表示ユニット2は、TFT-LEDやOLED、LED、LCD或いはタッチスクリーン
であり、当該表示ユニット2は、可動的に、上記の収納空間15の中に設置され、当該表示ユニット2は、リード17を介して、当該カメラ本体1内の制御回路14と接続され、また、当該表示ユニット2の両側には、夫々、上記の接合部16と可動的に接合するための連接部21があり、当該連接部21は、当該接合部16に合せて、貫通穴211(図3参照のこと)であってもいいし、軸桿212(図4参照のこと)でもよく、当該収納空間15と当該表示ユニット2の間には、夫々、位置付け部18、22が設置され、当該位置付け部18、22は、夫々、当該接合部16と当該連接部21との近くの位置(図3参照のこと)に設置されるか、夫々、当該収納空間15と当該表示ユニット2の両側縁上(図4参照のこと)に設置される。上記の構造により、新しい回転スクリーンが構成される。
【0010】
図5、6は、本考案の使用状態概念図である。図示のように、ユーザーが本考案を使用して撮影する時、実際状況に応じて(例えば、自身の撮影や団体の撮影)、当該表示ユニット2を回転(回転は、必要に応じて、360°の回
転ができる)することにより、元に、当該レンズ11と異なる面にある当該表示ユニット2上の表示区23は当該レンズ11と同一面になり、そして、当該収納空間15と当該表示ユニット2との間にある位置付け部18、22により、位置付けされ、当該表示ユニット2は必要とする位置や角度に固定され、当該レンズ11に面するユーザーは、当該表示ユニット2上の表示区23を介して、周囲の環境をはっきり把握でき、そして、必要とする映像がレンズ11に捕捉されるかを確認できる。」

また、引用例の図1等の記載から、「レンズ11」の向きと、「表示ユ
ニット2」が回転する回転軸の方向とが、直交していることが理解できる。

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

レンズ、シャッター、複数の制御ボタン、内部に設置される制御回路とが含有され、適当な位置に収納空間があり、両端面には当該収納空間が貫通
し、当該収納空間の両側壁には、夫々、接合部がある、カメラ本体と、
回転可動的に上記の収納空間の中に設置され、両側には、夫々、上記の接合部と回転可動的に接合するための連接部がある、タッチスクリーンであ
り、前記制御回路と接続される表示ユニットと、が含有され、
前記レンズの向きと、前記表示ユニットが回転する回転軸の方向とが、直交している、ことを特徴とする、回転スクリーン。

2.対比
本願の特許請求の範囲の請求項の記載は、上記「第3.当審の拒絶理由」のとおり、明確なものであるから、本願の請求項1-4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その記載は上記「第2.特許請求の範囲の記載」のとおりである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「カメラ本体」は、「レンズ」等を含有するので、本願発明と同様に「撮像部を備えた筐体」といえる。
引用発明の「表示ユニット」は、回転可動的に「カメラ本体」の「収納空間」の中に設置されるので、本願発明の「フレーム状部材」とは、回動可能になるように筐体に結合される部材である点で共通し、引用発明は「前記レンズの向きと、前記表示ユニットが回転する回転軸の方向とが、直交している」ので、本願発明の「フレーム状部材」が「前記撮像部の撮像方向に対し直交する方向を回転軸として回動可能になるように」とする点でも共通す
る。
さらに、引用発明の「表示ユニット」は、タッチスクリーンであるから外部からの操作を検出する操作部の機能を有し、「前記制御回路と接続され
る」とするので、本願発明の「フレーム状部材」とは、制御信号を筐体内部の回路部へ送るための操作部を備えた点で共通するといえる。
引用発明は、本願発明と同様に「電子機器」といえるものである。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。

一致点
撮像部を備えた筐体と、前記撮像部の撮像方向に対し直交する方向を回転軸として回動可能になるように前記筐体に結合される部材と、を有する電子機器であって、
前記部材は、外部からの操作を検出して制御信号を前記筐体内部の回路部へ送るための操作部を備えたことを特徴とする電子機器。

相違点1
本願発明は、部材が「前記筐体を部分的に覆い且つ前記撮像部の撮像方向に対し直交する方向を回転軸として回動可能になるように前記筐体に結合されるフレーム状部材」であり、「前記フレーム状部材は、前記回動により前記筐体が当該フレーム状部材の枠形状の外に出た状態となり、この状態で前記撮像部を動作させて撮像する場合には、当該枠形状をグリップとして保持可能な形状であり」とするものであるのに対して、引用発明のものは「表示ユニット」であり、「前記筐体を部分的に覆い」とする「フレーム状部材」といえる特定はなく、「前記フレーム状部材は、前記回動により前記筐体が当該フレーム状部材の枠形状の外に出た状態となり、この状態で前記撮像部を動作させて撮像する場合には、当該枠形状をグリップとして保持可能な形状であり」とする特定もない点。

相違点2
本願発明は、制御信号が「前記撮像部を制御する制御信号」であるのに対して、引用発明のものは、どのような制御信号であるのか特定されていない点。

3.判断
(1)新規性
本願発明と引用発明とは、上記相違点1及び2で異なるから、本願発明
は、引用例に記載された発明ではない。

(2)進歩性
上記相違点1について検討する。
引用発明の部材は「カメラ本体」の収納空間の中に設置された「表示ユ
ニット」であるから、これを「カメラ本体」を部分的に覆う枠形状のものとすることは、当業者であっても困難なことである。
また、「表示ユニット」は、「カメラ本体」の収納空間の中に設置されたものであるから、それがどのように回動したとしても、グリップとして保持可能とはならず、「表示ユニット」をグリップとして保持可能な形状とすることは、当業者であっても困難なことである。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
請求項2-4は請求項1を引用するものであるから、それらの請求項に係る発明についても本願発明と同様である。

なお、前置報告書で引用された特開2005-311895号公報(以
下、「引用例2」という。)には、引用例の図8に従来のディジタルカメラとして示されたものと、同様の撮像装置が記載されている。
引用例2には、「被写体を撮影するカメラ部3と、このカメラ部3から供給される被写体画像を表示する液晶ディスプレイ11を有し、且つ、カメラ部を回動自在に支持する装置本体2と、を備えた撮像装置」(要約)が記載されており、「装置本体2」が保持可能な形状といえるとしても、枠形状のフレーム状のものでないことは一見して明らかである。
そのため、本願発明は、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明ではなく、また本願の請求項1-4に係る発明は、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-04-24 
出願番号 特願2014-155645(P2014-155645)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎飯星 潤耶  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
吉田 隆之
発明の名称 電子機器  

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