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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G21C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G21C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21C
管理番号 1328481
審判番号 不服2016-448  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-08 
確定日 2017-06-06 
事件の表示 特願2012-537858「進行波核分裂反応炉の操作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日国際公開、WO2011/093842、平成25年 3月21日国内公表、特表2013-510310、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)11月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年1月25日、米国、2009年11月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月29日付け(同年11月4日発送)で拒絶理由が通知され、平成27年2月4日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたが、同年8月31日付け(同年9月8日送達)で拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対して、平成28年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審より平成28年9月27日付け(同年10月4日発送)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)を通知したところ、同年12月22日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正(以下「補正1」という。)がなされ、当審より平成29年1月24日付け(同年同月31日発送)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)を通知したところ、同年4月18日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正(以下、「補正2」という。)がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成27年8月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
・(進歩性)
本願請求項1-25に係る発明は、以下の引用文献1?7に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1.国際公開第2008/097298号
引用文献2.特開2003-021692号公報
引用文献3.特開平4-299286号公報
引用文献4.特開平9-292481号公報
引用文献5.特開2009-145294号公報
引用文献6.特表平5-508927号公報
引用文献7.特開平2-170206号公報

第3 当審拒絶理由の概要
1.当審拒絶理由1の概要は次のとおりである。
(1)(明確性)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1について
(ア)「燃焼度に基づく上記第2方向に沿った核分裂進行波の燃焼波面形状を所望の形状に決定し」の「燃焼度に基づく」は、「燃焼波面形状」を修飾しているのか不明である。または、燃焼度に基づき燃焼波面形状を所望の形状に決定することを意味している(「基づき」が「決定する」を修飾する。)のか不明である。

(イ)上記(ア)で、「燃焼度に基づく」は、「燃焼波面形状」を修飾していると解釈した場合
燃焼度と燃焼波面形状との関係が不明であり、また、燃焼度に基づく燃焼波面形状と所望の形状との関係が不明である。
また、「所望の形状」とは、どの様にして決定されるものなのか不明である。

(ウ)上記(ア)で、燃焼度に基づき燃焼波面形状を所望の形状に決定することを意味していると解釈した場合
燃焼度とは、一般に、「核燃料単位質量当たりの核分裂エネルギー発生量を表し、通常核分裂エネルギーを熱エネルギーに換算し、MWD/t(メガワット日/トン)で表される」とされている。
ところで、燃焼波面近傍では、多くの中性子が存在し、反応度が高いことから、空間的な中性子の分布や反応度の分布から燃焼波面形状が求められることは、明らかであるが、燃焼度とは、「核燃料単位質量当たりの核分裂エネルギー発生量」を表すパラメータであって、空間的な分布を表すパラメータではなく、炉心や核分裂燃料サブアセンブリの形状、第1方向と第2方向の関係が特定されていない請求項1に係る発明において、どのようにして、燃焼度に基づき所望の燃焼波面形状が決定し得るのか不明である。

(エ)「第1燃焼度を有する第1位置」との記載があるが、燃焼度とは、「核燃料単位質量当たりの核分裂エネルギー発生量を表す」パラメータであり、直接的に位置と関連するパラメータではないから、「第1燃焼度を有する第1位置」の意味が不明である。「第2燃焼度を有する第2位置」についても同様に不明である。
(「第1燃焼度を有する核分裂燃料サブアセンブリが存在する第1位置」の意味か。)

(オ)第1位置から核分裂燃料サブアセンブリを移動させた後、第1位置には、核分裂燃料サブアセンブリが存在しないことになるが、存在しなくても決定された燃焼波面形状に対応するようになるのか不明である。また、移動前にも第2位置には、核分裂燃料サブアセンブリが存在すると考えられるが、核分裂燃料サブアセンブリを第1位置から第2位置へ向けて制御可能に移動させる際に、元々第2位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリはどうなるのか不明である。

したがって、請求項1に係る発明は、明確でない。

イ 請求項6、7について
第1方向が軸方向の場合、核分裂燃料サブアセンブリは軸方向に第1位置から第2位置へ移動することになるが、いずれの図面にも、核分裂燃料サブアセンブリ14は軸方向には一つのものしか記載されておらず、軸方向に複数の核分裂燃料サブアセンブリは存在しない。
よって、請求項6、7に係る発明は、どのような炉心や核分裂燃料サブアセンブリを想定した発明なのか不明である。

ウ 請求項2?23について
上記アのとおり、請求項1に係る発明は明確でないことから、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?23に係る発明も明確でない。

(2)(実施可能要件)
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

燃焼度とは、一般に、「核燃料単位質量当たりの核分裂エネルギー発生量を表し、通常核分裂エネルギーを熱エネルギーに換算し、MWD/t(メガワット日/トン)で表される」とされている。
ところで、燃焼波面近傍では、多くの中性子が存在し、反応度が高いことから、空間的な中性子の分布や反応度の分布から燃焼波面形状が求められることは、明らかであるが、燃焼度とは、「核燃料単位質量当たりの核分裂エネルギー発生量」を表すパラメータであって、空間的な分布を表すパラメータではなく、炉心や核分裂燃料サブアセンブリの形状、第1方向と第2方向の関係が特定されていない請求項1に係る発明において、どのようにして、燃焼度に基づき所望の燃焼波面形状が決定し得るのか、本願の発明の詳細な説明には、具体的に記載されていない。

したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
また、請求項2?23は、請求項1を直接又は間接的に引用しているから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2?23に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(3)(サポート要件)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1には、「第1燃焼度を有している第1位置から第2燃焼度を有している第2位置」と記載されているが、発明の詳細な説明には、「【0115】・・・ 第1燃焼度率を有している第1位置から第2燃焼度率を有している第2位置・・・」と記載されており、「燃焼度」と「燃焼度率」とが相違している。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
また、請求項2?23は、請求項1を直接又は間接的に引用しているから、請求項2?23に係る発明についても、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(なお、「燃焼度」は一般的な技術用語であるが、「燃焼度率」は一般的な技術用語とはいえないから、「燃焼度率」の用語を使用する場合には、その意味を定義されたい。)

(4)(進歩性)
本願請求項1-23に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び周知慣用の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1.国際公開第2008/097298号

2.当審拒絶理由2の概要は次のとおりである。
(サポート要件)(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び2号に規定する要件を満たしていない。

(1)
請求項1には、「・・・半径方向に沿って核分裂進行波の燃焼波面を伝搬することと、」との記載はあるが、「軸方向に沿って核分裂進行波の燃焼波面を伝搬すること」は記載されていない。そして、請求項1の「上記軸方向に沿った核分裂進行波の燃焼波面形状を所望の形状に、上記核分裂燃料サブアセンブリの燃焼度に基づき決定し、」との記載において、「軸方向に沿った核分裂進行波の燃焼波面形状」の波面は、軸方向に沿って伝搬するのか否か不明である。
また、「半径方向に沿っては、・・・燃焼波面を伝搬する」、「軸方向に沿った核分裂進行波の燃焼波面形状」との記載において、「方向に沿って(た)・・・燃焼波面」とは、「方向に沿って広がる燃焼波面」を意味しているのか、「方向に沿って移動(伝搬)する燃焼波面」を意味するのか不明である。
よって、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし19に係る発明は、明確でない。

(2)
発明の詳細な説明には、段落【0101】【0105】【0109】等に、「初期の形状」の燃焼波面が半径方向に沿って移動する旨が記載され、段落【0078】には、点火後、半径方向に進行し外表面に達すると、軸方向に沿って伝搬する旨が記載されている。
これらの記載から、燃焼波面が半径方向に沿って移動するのは、点火後の初期の段階とされている。しかしながら、請求項1を引用する請求項19には、「核分裂燃料サブアセンブリが、有用な耐用年限の終点に近づいた場合」について記載されており、点火後の初期の段階とは、明らかに矛盾する。
よって、請求項19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、また、明確でない。

第4 本願発明
本願請求項1-18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は、補正2により補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-18は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
進行波核分裂反応炉の炉心における複数の核分裂燃料サブアセンブリ内で進行波核分裂反応炉の核分裂燃料サブアセンブリの主軸に沿った軸方向に垂直な半径方向に沿って核分裂進行波の燃焼波面を伝搬することと、
上記核分裂進行波の燃焼波面の所望の形状を、上記核分裂燃料サブアセンブリの燃焼度に基づき上記軸方向に沿って決定し、決定された上記所望の形状に対応するように、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、第1位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリと上記第1位置から上記半径方向に位置する第2位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリとを入れ替えるように、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させることと、
を含む進行波核分裂反応炉の操作方法。
【請求項2】
上記複数の核分裂燃料サブアセンブリは、上記軸方向に沿って伸長している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記半径方向は、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリの長軸に略直交する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させることは、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたもののうち少なくとも1つを回転させることを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させることは、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたもののうち少なくとも1つを反転させることを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記燃焼度は、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたもののうち少なくとも1つに関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記核分裂進行波の燃焼波面形状は、略球形状、選択された連続的な曲面に適合した形状、上記軸方向に対し略回転対称である形状、および上記軸方向に対し略n重回転対称である形状から選択される形状を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記軸方向に沿って決定された上記核分裂進行波の燃焼波面形状は、非対称である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記核分裂進行波の燃焼波面形状は、上記軸方向に対し回転非対称である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、複数の核分裂進行波点火アセンブリによって核分裂進行波の燃焼波面を起こすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる前に、上記複数の核分裂進行波点火アセンブリのうち少なくとも1つを取り去る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる前に、複数の核分裂進行波点火アセンブリのうち少なくとも1つを取り去ることは、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる前に、上記第2位置から複数の核分裂進行波点火アセンブリのうち少なくとも1つを取り去ること、を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる前に、進行波核分裂反応炉を臨界未満にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
進行波核分裂反応炉を臨界未満にすることは、上記反応炉の炉心に中性子吸収体を投入することを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させた後に、臨界に回復させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
臨界に回復させることは、上記反応炉の炉心から少なくとも中性子吸収体部分を取り去ることを包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる前に、進行波核分裂反応炉を停止することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
さらに、上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させた後に、進行波核分裂反応炉を再稼働することを含む、請求項17に記載の方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定及び当審拒絶理由1に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものであり、引用した記載の後に、当審で作成した日本語訳を付記する。

「Exemplary embodiments provide automated nuclear fission reactors and methods for their operation. Exemplary embodiments and aspects include, without limitation, re-use of nuclear fission fuel, alternate fuels and fuel geometries, modular fuel cores, fast fluid cooling, variable burn- up, programmable nuclear thermostats, fast flux irradiation, temperature-driven neutron absorption, low coolant temperature cores, refueling, and the like.」(2頁8行?12行)
(例示的実施形態は、自動化された核分裂炉およびその運転方法を提供する。例示的実施形態および態様は、限定するわけではないが、核分裂性燃料(核燃料)の再使用、代替の燃料、および、代替の燃料幾何形状配置、モジュラー燃料核、高速流体冷却、可変的な燃焼度、プログラム可能な核のサーモスタット、高速流束放射、温度で制御される中性子吸収、低冷却材温度炉心、燃料補給などを含む。)

「In some embodiments of the nuclear fission reactor 10, all the nuclear fission fuel ever used in the reactor is installed during manufacture of the nuclear fission reactor core assembly 100, and no spent fuel is ever removed from the nuclear fission reactor core assembly 100, which is never accessed after nuclear fission ignition. However, in some other embodiments of the nuclear fission reactor 10, additional nuclear fission fuel is added to the nuclear fission reactor core assembly 100 after nuclear fission ignition. However, in some other embodiments of the nuclear fission reactor 10, spent fuel is removed from the reactor core assembly (and, in some embodiments, removal of spent fuel from the nuclear fission reactor core assembly 100 may be performed while the nuclear fission reactor 10 is operating at power). Regardless of whether or not spent fuel is removed, pre-expansion of the as-loaded fuel permits higher-density actinides to be replaced with lower-density fission products without any overall volume changes in fuel elements, as the nuclear fission deflagration wave sweeps over any given axial element of actinide 'fuel,' converting it into fission-product 'ash.'」(19頁14行?末行))
(いくつかの実施形態に係る原子炉10では、これまでに原子炉において使用された全ての核燃料は、核分裂炉炉心アセンブリ100の製造中に搭載され、使用済み燃料は核分裂炉炉心アセンブリ100から決して除去されず、核分裂点火後、核分裂炉炉心アセンブリ100は決してアクセスされない。しかし、いくつかの実施形態に係る原子炉10では、核分裂点火後に、さらなる核燃料が核分裂炉炉心アセンブリ100に追加される。しかし、いくつかの実施形態に係る原子炉10では、使用済み燃料が炉心アセンブリから除去される(また、いくつかの実施形態では、核分裂炉炉心アセンブリ100からの使用済み燃料の除去は、原子炉10が出力状態で運転している間に行ってもよい)。核分裂爆燃波が所定の軸方向のアクチニド元素の「燃焼」にわたって通過し、核分裂生成物の「灰」へ変換するように、使用済み燃料が除去されるか否かに関わらず、搭載された直後の燃料の予備拡張は、高濃度アクチニドが燃料元素の全体的な量変化なしに低濃度核分裂生成物へと変換することを可能にする。)

「 Now that the fuel-charge of the nuclear fission reactor core assembly 100 has been "ignited", propagation of the nuclear fission deflagration wave, also referred to herein as "nuclear fission burning", will now be discussed. The spherically-diverging shell of maximum specific nuclear power production continues to advance radially from the nuclear fission igniter toward the outer surface of the fuel charge. When it reaches this surface, it naturally breaks into two spherical zonal surfaces, with one surface propagating in each of the two opposite directions along the axis of the cylinder.」(22頁1行?7行)
(核分裂炉炉心アセンブリ100の燃料チャージが「点火された」ので、「核分裂燃焼」とも称する核分裂爆燃波の伝搬について説明する。最大比出力による原子力生産のための球状に発散する殻(shell)は、核分裂点火部から燃料チャージの外面に向かって急速に前進し続ける。殻がこの外面に到達すると、殻は自然に割れて2つの球帯状表面になり、各表面は円筒の軸に沿った2つの対向する方向にそれぞれに伝搬する。)

「Referring now to FIGURE 2A, a nuclear fission reactor 200, such as a fast neutron spectrum nuclear fission reactor, includes nuclear fission fuel assemblies 210 disposed therein. The following discussion includes details of exemplary nuclear fission fuel assemblies 210 that may be used in the nuclear fission reactor 200. Other details regarding the nuclear fission reactor 200, including origination and propagation of a nuclear fission deflagration wave burnfront (that is, "burning" the nuclear fission fuel) are similar to those of the nuclear fission reactor 10 (FIGURE 1A), and need not be repeated for sake of brevity.」(27頁6行?12行)
(ここで図2Aによると、高速中性子スペクトル核分裂炉などの核分裂炉200は、そこに配置される複数の核燃料集合体210を有する。以下では、核分裂炉200において使用し得る核燃料集合体210の詳細な例を説明する。核分裂炉200についての、核分裂爆燃波燃焼前線(すなわち、核燃料の「燃焼」)の誘起および伝搬を含む他の詳細は、原子炉10(図1A)と同様であり、簡潔にするために、繰り返す必要はない。)

「The modular nuclear fission fuel core 500 may be operated in any number of ways. For example, all of the fuel assembly receptacles 530 in the modular nuclear fission fuel core 500 may be fully populated with modular nuclear fission fuel assemblies 520 prior to initial operation (e.g., prior to initial origination and propagation of a nuclear fission deflagration propagating wave burnfront within and through the modular nuclear fission fuel assemblies 520).」(30頁25行?31頁3行)
(モジュラー核分裂炉心500は、任意の数の方法で運転してもよい。例えば、モジュラー燃料核500における燃料集合体容器530の全ては、初期運転に先立って(例えば、モジュラー核燃料集合体520の中およびモジュラー核燃料集合体520を経る核分裂爆燃波燃焼前線の初期誘起および伝搬に先立って)、モジュラー核燃料集合体520で満たされてもよい。)

「Referring now to FIGURE 8, in some embodiments a nuclear fission deflagration wave burnfront can be driven into areas of nuclear fission fuel as desired, thereby enabling a variable nuclear fission fuel burn-up. In a propagating burnfront nuclear fission reactor 800, a nuclear fission deflagration wave burnfront 810 is initiated and propagated as described above. Actively controllable neutron modifying structures 830 can direct or move the burnfront 810 in directions indicated by areas 820. In one embodiment, the actively controllable neutron modifying structures 830 insert neutron absorbers, such as without limitation Li6, BlO, or Gd, into nuclear fission fuel behind the burnfront 810, thereby driving down or lowering neutronic reactivity of fuel that is presently being burned by the burnfront 810 relative to neutronic reactivity of fuel ahead of the burnfront 810, thereby speeding up the propagation rate of the nuclear fission deflagration wave. In another embodiment, the actively controllable neutron modifying structures 830 insert neutron absorbers into nuclear fission fuel ahead of the burnfront 810, thereby slowing down the propagation of the nuclear fission deflagration wave. In other embodiments the actively controllable neutron modifying structures 830 insert neutron absorbers into nuclear fission fuel within or to the side of the burnfront 810, thereby changing the effective size of the burnfront 810.」(34頁4行?18行)
(ここで図8によると、いくつかの実施形態では、核分裂爆燃波燃焼前線は、所望のとおり、核燃料の領域へと進行させられ、この進行につれて、可変核燃料燃焼度を可能にする。伝搬燃焼前線核分裂炉800では、核分裂爆燃波燃焼前線810は、上述したように誘起され伝搬される。能動制御可能な中性子修正構造830は、領域820で示される方向に燃焼前線810を導き動かす。一実施形態では、能動制御可能な中性子修正構造830は、限定するわけではないが、Li6、B10,またはGdなどの中性子吸収体を、燃焼前線810の後にある核燃料に挿入する。これによって、燃焼前線810の前における中性子反応度に比較して、燃焼前線810によって燃焼されつつある燃料の中性子反応度を押し下げ低減することができ、核分裂爆燃波の伝搬速度を上昇させることができる。他の実施形態では、能動制御可能な中性子修正構造830は、燃焼前線810の前にある核燃料に中性子吸収体を挿入し、これによって、核分裂爆燃波の伝搬の速度を落とす。他の実施形態では、能動制御可能な中性子修正構造830は、燃焼前線810の範囲内または横側における、核燃料に中性子吸収体を挿入し、これによって、燃焼前線810の有効な大きさを変化させる。)

「The removal 1054 can take place either during operation of the propagating nuclear fission deflagration wave reactor 1000 or afterward it has been "shut-off", 」(38頁4行?6行)
(除去1054は、伝搬核分裂爆燃波原子炉1000の運転中または「遮断」した後に起こり得る。)

「Or, in another aspect, controlled positioning of the propagating nuclear fission deflagration wavefront by physically displacing the nuclear fission fuel can simplify or reduce constraints upon other aspects of the nuclear fission reactor, such as the cooling system, neutron shielding, or other aspects of neutron density control.」(45頁10行?13行)
(または、他の態様では、核燃料を物理的に移動することによって伝搬核分裂爆燃波面の位置を制御すると、例えば冷却システム、中性子遮蔽、または中性子密度制御の他の態様など、核分裂炉の他の態様に対する制約を単純化または低減し得る。)

上記記載から、引用文献1には、次の事項(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「核燃料が核分裂炉炉心アセンブリに追加され、または除去され、除去は、運転中または遮断した後に起こり得る伝搬核分裂爆燃波原子炉の運転方法おいて、
核分裂炉に、複数の核燃料集合体またはモジュラー核燃料集合体が配置され、
核分裂炉炉心アセンブリが点火されると、核分裂爆燃波の伝搬は、核分裂点火部から球状に発散し、
核分裂爆燃波燃焼前線は、所望のとおり、核燃料の領域へと進行させられ、この進行につれて、可変核燃料燃焼度を可能にし、
能動制御可能な中性子修正構造は、核分裂爆燃波燃焼前線を導き動かし、その有効な大きさを変化させ、
さらに、核燃料を物理的に移動することによって伝搬核分裂爆燃波面の位置を制御する
方法。」

2.引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
(a)「【0018】請求項3の発明では、上記第1の目的を解決するために、請求項1または請求項2に記載の原子炉の炉心において、核分裂連鎖反応による燃焼を、この燃焼の持続時間である原子炉運転期間に亘って、燃焼開始部が備えられた核燃料領域の端部側から、核燃料領域の上端部と下端部とを結ぶ軸に沿って、ほぼ同じ熱出力分布で移動させる。
【0019】従って、請求項3の発明の原子炉の炉心においては、原子炉運転期間に亘って、燃焼部の軸方向(鉛直方向)における熱出力分布、すなわち中性子束分布を一定に保つことができるので、制御棒等による出力分布調整を行わなくとも原子炉運転期間に亘って一定の出力分布を維持することができる。」

(b)「【0022】請求項5の発明では、上記第2の目的を解決するために、請求項4に記載の原子炉の炉心における核燃料物質の取替方法であって、熱出力部が、燃焼開始部が備えられた核燃料領域の端部から、軸に沿って核燃料領域の他の端部の近傍にまで移動した場合には、核分裂連鎖反応を停止させ、この停止時における熱出力部にある核燃料を次の原子炉運転期間の炉心の燃焼開始部として、次の原子炉運転期間の炉心を構成する。
【0023】従って、請求項5の発明の原子炉の炉心における核燃料物質の取替方法においては、残存している核燃料を次の運転サイクルの燃焼開始部として有効利用することができる。更に、この取替方法は、核燃料領域の径方向(平面方向)の配置換えを不要とし、残存している核燃料を軸方向(鉛直方向)に直線的に移動することにより実現できるので、短時間で行うことができる。これによって、2回目の運転サイクル以降には燃焼開始部の製作が不要となる。このような核燃料物質の取替方法は、ブロック燃料型高温ガス炉に対しては、ほとんど設計変更することなく適用することが可能である。」

(2)そうすると、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「核分裂連鎖反応による燃焼を、この燃焼の持続時間である原子炉運転期間に亘って、燃焼開始部が備えられた核燃料領域の端部側から、核燃料領域の上端部と下端部とを結ぶ軸に沿って、ほぼ同じ熱出力分布で移動させ、
熱出力部が、燃焼開始部が備えられた核燃料領域の端部から、軸に沿って核燃料領域の他の端部の近傍にまで移動した場合には、核分裂連鎖反応を停止させ、この停止時における熱出力部にある核燃料を次の原子炉運転期間の炉心の燃焼開始部として、次の原子炉運転期間の炉心を構成する方法。」

3.引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【0010】本発明に係る運転方法では最初に炉心中心領域、つまり第一領域11に上記燃料集合体を装荷し、その後の燃料交換のたび毎に、燃料集合体を第一領域11から外周方向の第二,第三・・・領域12,13・・・に順次移動させ、燃料集合体内で装荷核種がより分裂性の高い核種に転換するのに合わせて、その装荷位置をより中性子密度の低い位置に移動させることによって出力分布の平坦化を行うものである。」

(2)そうすると、引用文献3には、「最初に炉心中心領域、つまり第一領域11に上記燃料集合体を装荷し、その後の燃料交換のたび毎に、燃料集合体を第一領域11から外周方向の第二,第三・・・領域12,13・・・に順次移動させ、燃料集合体内で装荷核種がより分裂性の高い核種に転換するのに合わせて、その装荷位置をより中性子密度の低い位置に移動させることによって出力分布の平坦化を行う運転方法」ことについて記載されていると認められる。

4.引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【0029】図2の炉心構成で第1運転サイクルを運転後、図1の第2ステップで第1回の燃料移動を行う。第1回燃料移動では、図3に示すように、主に第3層に装荷されていた周辺Gd燃料4を、4aで示した炉心の最外層に移動(シャッフリング)する。また、図4に示すように、炉心の最外層に装荷されていた低濃縮度燃料1を、1aで示した第3層?第5層の領域に移動する。領域1aは炉心の中心部を中心としてほぼ同心円状に位置している。この第1回燃料移動では、初装荷の燃料集合体(以下、初装荷燃料と呼ぶ)は新しい燃料集合体(以下、新燃料と呼ぶ)と交換されることはなく、全ての初装荷燃料は第2運転サイクルも継続して燃焼する。」

(2)そうすると、引用文献4には、「炉心構成で第1運転サイクルを運転後の第1回燃料移動では、主に第3層に装荷されていた周辺Gd燃料4を、炉心の最外層に移動(シャッフリング)し、炉心の最外層に装荷されていた低濃縮度燃料1を、第3層?第5層の領域に移動する運転方法」について記載されていると認められる。

5.引用文献5について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【0047】
ここで、移動先の直領域20Aは移動前に燃料集合体1が位置する領域と同一であるため、移動の前後の位置におけるチャンネルボックス3の屈曲態様は同一とみなせる。また、移動する際に、燃料集合体1を180度回転させて、チャンネルボックス3の屈曲した部分が炉心の外側を向くようにしているので、移動前の位置で屈曲した部分と反対側の部分を炉心の中心部O側に向けることができる。したがって、このような位置に燃料集合体1を移動すると、先の運転サイクルで屈曲した部分と反対側の部分を炉心の中心部O側に配置できるので、次の運転サイクルでチャンネルボックス3Aの屈曲を緩和することができる。」

(2)そうすると、引用文献5には、「燃料集合体を180度回転させて」配置することについて記載されていると認められる。

6.引用文献6について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「請求の範囲
1.二相原子炉の燃料管理方法において、
第1および第2の軸方向端部を有する燃料束を第1の軸方向端部が第2の軸方向端部より上になるように設置し、原子炉の第1回目の動作を行い、
原子炉を停止させ、
燃料束の第2の軸方向端部が第1の軸方向端部より上になるように燃料束を設置しなおし、
原子炉の第2回目の動作を行うことを含む二相原子炉の燃料管理方法。」(1頁左下欄1行?10行)

(2)そうすると、引用文献6には、「第1および第2の軸方向端部を有する燃料束を第1の軸方向端部が第2の軸方向端部より上になるように設置し、原子炉の第1回目の動作を行い、原子炉を停止させ、燃料束の第2の軸方向端部が第1の軸方向端部より上になるように燃料束を設置しなおし、原子炉の第2回目の動作を行うこと」について記載されていると認められる。

7.引用文献7について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「第5図は高速炉機器に関するもので、原子炉容器内筒1の内部に燃料棒、制御棒等の炉心構成要素で構成される炉心2、炉心の計測器類等の炉内干渉物3、燃料交換装置4、燃料交換装置アーム4a、グリッパ5、炉内中継装置6があり、これらは冷却材である金属ナトリウム(図示されず)に覆われている。燃料交換装置4の上部は固定プラグ7に偏心して取り付けられている回転プラグ8に据え付けられており、回転プラグ8の旋回と、回転プラグ8内でも燃料交換装置4の旋回の2つの自由度にて、グリッパ5は移動することが可能である。回転プラグ8及び燃料交換装置4の駆動は回転プラグ駆動モータ9a及び燃料交換アーム駆動モータ9bによって行われ、回転角は回転プラグ位置検出器10a及び燃料交換装置アーム検出器10bによって行われる。また、高速炉機器は、定期的に炉心内2の炉心構成要素を交換する必要があり、グリッパ5により、使用済みの炉心構成要素を抜取り炉内中継装置6に渡すと、炉内中継装置6が原子炉容器内筒1の外部の新炉心構成要素(図示されず)と交換する。炉内中継装置6で使用済み炉心構成要素が新炉心構成要素に交換されると、燃料交換装置4の先端グリッパ5は、新炉心構成要素を、炉内中継装置6の位置から、使用済みの炉心構成要素を抜き取った場所に再び装荷するという作業を行う。」(2頁左上欄4行?右上欄9行)

(2)そうすると、引用文献7には、「燃料交換装置」について記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「伝搬核分裂爆燃波原子炉」、「運転方法」は、それぞれ本願発明1の「進行波核分裂反応炉」、「操作方法」に相当する。

引用発明の「核燃料集合体またはモジュラー核燃料集合体」は、本願発明1の「核分裂燃料サブアセンブリ」に相当する。

引用発明の「核分裂爆燃波燃焼前線」は、面状に伝搬していることは明らかであるから、本願発明1の「核分裂進行波の燃焼波面」に相当する。
また、引用発明において、「核分裂炉炉心アセンブリが点火されると、核分裂爆燃波の伝搬は、核分裂点火部から球状に発散」するから、引用発明の「核分裂爆燃波燃焼前線」は、半径方向へも伝搬していることは明らかである。
よって、引用発明の「核分裂炉炉心アセンブリが点火されると、核分裂爆燃波の伝搬は、核分裂点火部から球状に発散」することは、本願発明1の「進行波核分裂反応炉の炉心における複数の核分裂燃料サブアセンブリ内で進行波核分裂反応炉の核分裂燃料サブアセンブリの主軸に沿った軸方向に垂直な半径方向に沿って核分裂進行波の燃焼波面を伝搬すること」に相当する。

引用発明の「核燃料を物理的に移動することによって伝搬核分裂爆燃波面の位置を制御する」ことと、本願発明1の「上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、第1位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリと上記第1位置から上記半径方向に位置する第2位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリとを入れ替えるように、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させること」とは、共に、「上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、制御可能に移動させる」点で共通する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは、
「進行波核分裂反応炉の炉心における複数の核分裂燃料サブアセンブリ内で進行波核分裂反応炉の核分裂燃料サブアセンブリの主軸に沿った軸方向に垂直な半径方向に沿って核分裂進行波の燃焼波面を伝搬することと、
上記複数の核分裂燃料サブアセンブリから選択されたものについて、制御可能に移動させることと、
を含む進行波核分裂反応炉の操作方法。」で一致する。

そして、本願発明1は、「上記核分裂進行波の燃焼波面の所望の形状を、上記核分裂燃料サブアセンブリの燃焼度に基づき上記軸方向に沿って決定し、決定された上記所望の形状に対応するように、」「第1位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリと上記第1位置から上記半径方向に位置する第2位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリとを入れ替えるように、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する(以下、「相違点」という。)。

(2)相違点についての判断
相違点に係る本願発明1の構成のうち、「第1位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリと上記第1位置から上記半径方向に位置する第2位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリとを入れ替えるように、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる」こと自体(以下、「燃料移動」という。)は、一般の原子炉においては、各核燃料の燃焼度をそろえるための周知慣用の技術事項であるといえる。
しかしながら、本願発明1では、上記「燃料移動」を「上記核分裂進行波の燃焼波面の所望の形状を、上記核分裂燃料サブアセンブリの燃焼度に基づき上記軸方向に沿って決定し、決定された上記所望の形状に対応するように」するために行っており、一般の原子炉における周知慣用の技術事項とは異なるものである。また、この点は引用文献2?7に記載されたものでもない。してみると、相違点に係る本願発明1の構成は、本願優先日前において周知慣用又は公知の技術事項であるとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知慣用又は公知の技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2?18について
本願発明2?18も、本願発明1の「上記核分裂進行波の燃焼波面の所望の形状を、上記核分裂燃料サブアセンブリの燃焼度に基づき上記軸方向に沿って決定し、決定された上記所望の形状に対応するように、」「第1位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリと上記第1位置から上記半径方向に位置する第2位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリとを入れ替えるように、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる」構成を備えるものであるから、本願発明2?18は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び、周知慣用の技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 当審拒絶理由について
1.特許法第29条第2項について
上記第5及び第6で検討したとおり、補正2で補正された本願発明及び請求項2?18に係る発明は、引用発明及び、周知慣用の技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえないから、当審拒絶理由1(4)で通知した特許法第29条第2項についての拒絶の理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第1,2号及び第4項1号について
当審拒絶理由1で(1)(明確性)、(2)(実施可能要件)、(3)(サポート要件)についての拒絶理由を、また、当審拒絶理由2で(サポート要件)と(明確性)についての拒絶理由を通知しているが、補正2により補正された結果、当審拒絶理由1、2で通知した特許法第36条第6項第1,2号及び第4項第1号についての拒絶の理由は解消した。

第8 原査定についての判断
補正2の補正により、補正後の請求項1?18は、「上記核分裂進行波の燃焼波面の所望の形状を、上記核分裂燃料サブアセンブリの燃焼度に基づき上記軸方向に沿って決定し、決定された上記所望の形状に対応するように、」「第1位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリと上記第1位置から上記半径方向に位置する第2位置に存在する核分裂燃料サブアセンブリとを入れ替えるように、それぞれを上記半径方向に沿って制御可能に移動させる」という構成を備えるものである。
上記「第6」で検討したとおり、上記構成は、原査定における引用文献1(当審拒絶理由1で引用した引用文献1)には、記載されていない。また、、原査定で引用した引用文献2?7(上記「第5」「2」?「7」参照。)にも記載されておらず、本願優先日前において公知の技術事項であるともいえない。
したがって、本願発明1?18は、当業者であっても引用発明、引用文献2?7に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-23 
出願番号 特願2012-537858(P2012-537858)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G21C)
P 1 8・ 121- WY (G21C)
P 1 8・ 536- WY (G21C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山口 敦司  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
森 竜介
発明の名称 進行波核分裂反応炉の操作方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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