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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  E05B
管理番号 1328528
審判番号 無効2015-800032  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-20 
確定日 2017-06-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第4008302号発明「ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4008302号(以下「本件特許」という。平成14年8月5日出願、平成19年9月7日登録、請求項の数は3である。)の請求項2に係る発明についての特許を無効にすることを求める事案である。

第2 手続の経緯
本件の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成14年 8月 5日 本件出願(特願2002-226833号、優先権主張番号:特願2001-316885号、優先日:平成13年10月15日)
平成19年 9月 7日 本件特許の設定登録(特許第4008302号)

平成23年10月27日 訂正審判請求(訂正2011-390118号)
平成23年12月20日 訂正審判審決(訂正を認める。)
平成24年 4月 2日 訂正を認める審決の確定の通知書

平成27年 2月19日 本件無効審判請求(無効2015-800032号、同年2月20日差出)
平成27年 4月28日 審判事件答弁書
平成27年 8月 6日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 8月 7日 口頭審理陳述要領書(請求人)(同年8月10日差出)
平成27年 9月 3日 上申書(請求人)
平成27年 9月14日 訂正口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成27年 9月16日 上申書(請求人)(同年9月18日差出)
平成27年 9月18日 口頭審理
平成27年10月 6日 上申書(請求人)
平成27年10月 6日 上申書(被請求人)

第3 本件特許発明
本件特許の請求項2に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、平成23年12月20日の審決(訂正2011-390118号)で訂正することが認められ、確定登録された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、
この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、
この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、
上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、
その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、
一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、
他方、これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し、
この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成27年8月7日付け口頭審理陳述要領書、同年9月3日付け上申書、同年9月16日付け上申書、及び同年10月6日付け上申書を参照。また、第1回口頭審理調書も参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証を提出している。

(1)本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術、並びに甲第2号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明についての特許は無効とすべきである(以下「無効理由1」という。)。
(2)本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第6号証、甲第14号証及び甲第15号証に記載された周知技術、甲第1号証、甲第5号証及び甲第13号証ないし甲第18号証に記載された周知技術、甲第1号証及び甲第5号証に記載された周知技術、並びに甲第6号証ないし甲第12号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明についての特許は無効とすべきである(以下「無効理由2」という。)。
(3)本件特許発明は、甲第5号証に記載された発明、甲第1号証、甲第6号証、甲第14号証及び甲第15号証に記載された周知技術、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術、甲第2号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載された周知技術、並びに甲第1号証及び甲第6号証ないし甲第12号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明についての特許は無効とすべきである(以下「無効理由3」という。)。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:英国特許出願公告第1417054号明細書
甲第2号証:特開平9-144398号公報
甲第3号証:実願昭54-27530号〔実開昭55-128848〕のマイクロフイルム:
甲第4号証:特公昭60-6432号公報
甲第5号証:米国特許第3、928、992号明細書
甲第6号証:実公平6-28616号公報
甲第7号証:実公昭55-32998号公報
甲第8号証:意匠登録第965697号公報
甲第9号証:意匠登録第1110356号公報
甲第10号証:実願昭57-149628号(実開昭59-51958号)のマイクロフイルム)
甲第11号証:実願平4-89007号(実開平6-51443号)のCD-ROM
甲第12号証:実公昭51-15730号公報
甲第13号証:特開2000-96889号公報
甲第14号証:特開昭62-194374号公報
甲第15号証:実願平5-42779号(実開平7-14041号)のCD-ROM
甲第16号証:特開昭62-189269号公報
甲第17号証:特開平6-346639号公報
甲第18号証:特開平9-41742号公報
甲第19号証:「フキ社関連商品カタログVol.2」、2001年1月6日初版発行
甲第20号証:「世界の鍵と錠」(編集・発行;(株)里文出版)、発行日;平成13年6月18日
甲第21号証:「進歩性判断の現況とその応用可能性(2・完)」、著者;時井真、知的財産法政策学研究Vol.42(2013)、P173?P194
甲第22号証:70店の複製キー作成チェーン店「ハロースミス/アレックス」を運営する株式会社関東ホームサービスの代表取締役駒崎政治氏の請求人宛文書のコピー
甲第23号証:特表平9-509895号公報
甲第24号証:甲第19号証に掲載されたニカバキーの写真の拡大写真
甲第25号証:「MIWA LOCK PRODUCTS 総合カタログ 1999-2000」の表紙、56頁及び527頁のコピー、並びに56頁のキー形状の拡大コピー
甲第26号証:「『CP-C』錠型式認定ニュース 2001年8月30日号 No.4号」のコピー

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1について
ア 本件特許発明と甲1発明(甲第1号証に記載された発明)との対比
本件特許発明と甲1発明とを対比すると、両者は、
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、
この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、
この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、
上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成したロータリーディスクタンブラーを挿設し、
ロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、
一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢し、
他方、これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し、
この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキッグバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」
である点で一致し、以下の点で相違するか、一応相違する。

<相違点1>
本件特許発明の鍵の錠では、「その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し」ているのに対し、
甲1発明の鍵の錠では、「本件特許のロータリーディスクタンブラーに相当するセキュリティ・メンバー21(security member21)を本件特許の内筒に相当するバレル(barrel)13の中心軸に対して回動可能に支持するとともに、セキュリティ・メンバー21の円弧の一部をなす外側端縁に本件特許発明の解錠切欠に相当するnotch(ノッチ)21bを形成している」点。
<相違点2>
本件特許発明は「リバーシブルである合鍵」であるのに対し、甲1発明は、「リバーシブルであるか否か不明であるkey(鍵)16」である点。
<相違点3>
本件特許発明の鍵の錠では「常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し」ているのに対し、甲1発明の鍵の錠では「常態ではbarrel(バレル)13をstop means(停止手段)としてのcarrier(キャリア)22のshoulder(肩部)に係止している点。

イ 相違点についての検討・容易性判断
(ア)相違点1及び相違点3について
相違点1及び3については、本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成である支軸やバックアップピンによって鍵の構成に差異が生じるものではないから、実質的に相違点ではない。なお、これらの相違点1及び相違点3に係る構成は、いずれも甲第2?4号証に記載されている周知技術である。

(イ)相違点2について
鍵がリバーシブルであることは、従来周知慣用の技術(甲第2号証、甲第6号証、甲第8号証)であって、この周知慣用技術を甲1発明に適用することは当業者にとって容易である。

(ウ)本件特許発明の作用効果について
本件特許発明の作用効果についても、次に述べるように特段の効果は全く認められない。
「窪みの深さによって鍵違いを得るようにしたので、一の窪み25と隣接する他の窪み25の間隔を従来の鍵溝間のそれより短くすることができる」(段落【0071】)は、甲1発明や「摺り鉢形の窪み」の周知技術(甲第5?10号証)で既に達成されていた作用効果である。
「ロータリーディスクタンブラーの係合突起の突出量を一定にする場合でも、或いは変化させる場合でも、窪みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向、或いはブレードの端縁部の幅方向において微妙に変化させなくてはならないので、合鍵の複製が困難になり、錠前としての安全性が向上する」(【0074】)は、甲1発明で既に達成されていた作用効果である。

(エ)無効2010-800013号の審決における認定・判断について
審決において述べられている本件特許発明の構成・作用・効果の大半は、甲1発明の構成・作用・効果と同じであるか、あるいは、本件特許の特許請求の範囲に根拠を有するものではない。

ウ むすび
以上のとおり、本件特許発明は、鍵として新規有用な発明特定事項を全く含まないものであって、甲1発明に周知技術に基づく改変を加えたものに過ぎず、当業者が容易になしえたものである。
よって、本件特許発明は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。

(2)無効理由2について
ア 本件特許発明と甲2発明(甲第2号証に記載された発明)との対比
本件特許発明と甲2発明とを対比すると、両者は、
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、
この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、
この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、
上記仕切板の間の各スロットに、中央部に点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したロータリーディスクタンブラーを挿設し、
その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、
一方、鍵挿通部の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードと干渉する係合部を一体的に突設し、
各ロ?タリーディスクタンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、
他方、これらのタンブラー群の係合部の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する凹部と係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合部の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの凹部を形成し、
この凹部が対応する前記係合部と係合したとき、該タンブラー群が前記凹部の深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにした
ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明では「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されている鍵孔を有する錠用の鍵であるのに対し、甲2発明ではそのような鍵孔を有しているか不明な錠用の鍵である点。
<相違点2>
本件特許発明では、鍵挿通部が「鍵挿通孔」であって、この「鍵挿通孔」を中央部に形成したロータリーディスクタンブラーが「環状ロータリーディスクタンブラー」である錠用の鍵であるのに対して、 甲2発明では、鍵挿通部が「鍵挿通切欠」であって、この「鍵挿通切欠」を中央部に形成したディスクタンブラーが「C字状のレバータンブラー」である錠用の鍵である点。
<相違点3>
ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠とロツキングバーの内側縁とを整合させるための構成について、本件特許発明では、「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合突起」の、その先端と、合鍵のブレード「平面部」に形成された「摺り鉢形の窪み」との整合により上記整合を行うものであるのに対して、甲2発明では、「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合縁部」と、合鍵のブレードの平面部に形成された「内に凸の曲面及びその両側の誘導斜面より成る刻み」との係合により上記整合を行うものである点。

イ 相違点についての検討・容易性判断
(ア)相違点1について
本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成である鍵孔の位置によって鍵の構成に差異が生じるものではないから、実質的に相違点ではない。また錠としても従来周知慣用の技術である(甲第1号証、甲第6号証、甲第14号証、甲第15号証)。

(イ)相違点2について
本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成であるディスクタンブラーが環状かC字状かによって鍵の構成に差異が生じるものではないから、実質的に相違点ではない。また錠としても従来周知慣用の技術である(甲第1号証、甲第5号証、甲第13?18号証)。

(ウ)相違点3について
鍵のブレードの平面部に形成された「摺り鉢形の窪み」は、甲第6?12号証に開示されているように、本件特許出願前から極めてありふれた周知技術にすぎない。また、鍵の技術分野においてきわめてありふれた「摺り鉢形の窪み」を回動運動する「係合突起」と組合せることは、甲第1号証及び甲第5号証に開示されているように周知であり、なんら本件特許発明において新規に提案されたことではない。
揺動するタンブラーの係合突起と鍵の摺り鉢形の窪み(複数の大きさ・深さ・幅方向の位置を有する)との係合によるタンブラー群の整列開錠という機能・作用・原理の点でも本件特許発明と甲第1号証、甲第5号証記載の技術とは共通しており、この機能・作用・原理の共通性からも、甲2発明に甲第1号証・甲第5号証記載の技術を適用して本件特許発明に至る動機付け・示唆が存在するといえる。

(エ)本件特許発明の作用効果について
本件特許発明の作用効果についても、次に述べるように特段の効果は全く認められない。
「窪みの深さによって鍵違いを得るようにしたので、一の窪み25と隣接する他の窪み25の間隔を従来の鍵溝間のそれより短くすることができる」は、「摺り鉢形の窪み」の周知技術で既に達成されていた作用効果である。
「ロータリーディスクタンブラーの係合突起の突出量を一定にする場合でも、或いは変化させる場合でも、窪みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向、或いはブレードの端縁部の幅方向において微妙に変化させなくてはならないので、合鍵の複製が困難になり、錠前としての安全性が向上する」は、甲1発明や甲5発明で既に達成されていた作用効果である。また、鍵・錠としての作動原理、すなわち「タンブラー係合部の回転軌跡と鍵凹部との交点でタンブラー揺動角度が定まる」を同じくする甲2発明と同質の作用効果である。
本件特許出願当時(優先日2001年10月15日)において、摺り鉢形のディンプルキーを複製する機械(キーマシン)は、例えば株式会社フキが製造販売していた(甲第19号証を参照。)。このキーマシンを用いれば、幅方向に位置の異なる複数のディンプルを有するキーも、実用上十分なものが複製されていた。

(オ)無効2010-800013号の審決における認定・判断について
審決において述べられている本件特許発明の構成・作用・効果の大半は、甲2発明あるいは甲1発明や甲5発明などの上記周知技術の構成・作用・効果と同じであるか、あるいは、本件特許の特許請求の範囲に根拠を有するものではない上に本件特許の実施例の図とも矛盾するものである。

ウ むすび
以上のとおり、本件特許発明は、鍵としての作動原理を全く同じくする甲2発明の鍵に、周知技術に基づく改変を加えたものに過ぎず、当業者が容易に発明し得たものである。また、その作用効果も、甲2発明から当然予測できる範囲内であるとともに、甲1発明及び甲5発明と同じ作用効果である。
よって、本件特許発明は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。

(3)無効理由3について
ア 本件特許発明と甲5発明(甲第5号証に記載された発明)との対比
本件特許発明と甲5発明とを対比すると、両者は、
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、
この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、
この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、
上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、
ロータリーディスクタンブラーの円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、
一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、
他方、これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の深さの摺り鉢形の窪みを形成し、
この窪みが対応する係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明では、鍵孔が「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されているのに対し、甲5発明では、「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されているか不明である点。
<相違点2>
本件特許発明のロータリーディスクタンブラーは、「その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し」ているのに対し、甲5発明では、「ロータリーディスクタンブラーであるlocking disc(ロッキングディスク)58を、本件特許発明の内筒に相当するlock cylinder(ロックシリンダー)16に対して回動可能に支持するとともに、ロッキングディスク58の円弧の一部をなす外側端縁に本件特許発明の解錠切欠に相当するgating notch(ゲイティングノッチ)50、50aを形成している」点。
<相違点3>
本件特許発明は「リバーシブルである合鍵」であるのに対し、甲5発明は、「リバーシブルであるか否か不明であるkey(鍵)80」」である点。
<相違点4>
本件特許発明は「複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪み」であるのに対し、甲5発明は「窪みの深さは複数であるが、窪みの大きさが複数であるか否か不明である」点。

イ 相違点についての検討・容易性判断
(ア)相違点1について
本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成である鍵孔によって鍵の構成に差異が生じるものではないから、実質的に相違点ではない。また錠としても従来周知慣用の技術である(甲第1号証、甲第6号証、甲第14号証、甲第15号証)。

(イ)相違点2について
本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成である支軸によって鍵の構成に差異が生じるものではないから、実質的に相違点ではない。また錠としても従来周知慣用の技術である(甲第2?4号証)。

(ウ)相違点3について
従来周知慣用の技術であり(甲第2号証、甲第6号証、甲第8号証)、適用容易である。

(エ)相違点4について
ブレードの平面部に摺り鉢形の窪みを有する鍵(ディンプルキー)における「複数種類の大きさと深さを有する窪み」は、甲第1号証、甲第6?12号証に記載のように、ディンプルキーにおいて周知の技術である。
特に、甲第6号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第11号証及び甲第12号証には、「深い窪みほど大きい(平面部の表面における窪みの径が大きい)」ことが示されている。
結局、ブレードの平面部に摺り鉢形の窪みを有する鍵(ディンプルキー)においては、窪みの深さが変われば窪みの大きさ(平面部の表面における窪みの径)も変わるのが技術常識であるので、甲5発明の錠の鍵においても窪みの深さを複数種類設ける結果、窪みの大きさも複数種類になる。また、たとえそうではないとしても、複数種類の大きさと深さを有する窪みはディンプルキーにおける周知技術であり、甲5発明をそのように改変するのは容易である。

(オ)本件特許発明の作用効果について
本件特許発明の作用効果についても、全て甲5発明で既に達成されていた作用効果であり、特段の効果は全く認められない。

(カ)無効2010-800013号の審決における認定・判断について
審決において述べられている本件特許発明の構成・作用・効果の大半は、甲5発明の構成・作用・効果と同じであるか、あるいは、本件特許の特許請求の範囲に根拠を有するものではない上に本件特許の実施例の図とも矛盾する。

ウ むすび
以上のとおり、本件特許発明は、甲5発明に周知技術に基づく改変を加えたものに過ぎず、当業者が容易になし得たものである。
よって、本件特許発明は、甲5発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。

第5 被請求人の主張
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成27年4月28日付け審判事件答弁書、平成27年8月6日付け口頭審理陳述要領書、同年9月14日付け訂正口頭審理陳述要領書、同年9月17日付け被請求人上申書、及び同年10月6日付け上申書を参照。)。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:知的財産高等裁判所、平成24年(行ケ)第10339号、平成25年5月23日判決(確定審決も含む)
乙第2号証:平成25年(行ヒ)第356号、平成25年10月4日の最高裁決定
乙第3号証:判例時報1089号:審決取消請求事件、東京高裁昭51(行ケ)9号、昭58、6、20民13部判決
乙第4号証:判例時報1086号:審決取消請求事件、東京高裁昭56(行ケ)115号、昭58、5、31民6部判決
乙第5号証:判例時報2043号:審決取消請求事件、知的財産高等裁判所平20(行ケ)10096号、平21.1.28民3部判決

3 被請求人の具体的な主張
(1)審判事件答弁書(2頁25行ないし13頁末行)
ア 本件特許発明の技術的範囲について
請求人は、本件特許発明は「鍵」なのであるから、タンブラー錠の構成要素を無視しても構わないという主張である。
しかしながら、該主張は特許法第70条の規定等を無視することに繋がり、いわゆるクレームに記載された文言は、「オールエレメントの原則」に晒されるという実務上の経験則に反するものであると、言わざるを得ない。

イ 本件特許発明に進歩性について
(ア)錠本体の揺動障害子
本件特許発明の、錠本体を構成するロータリーディスクタンブラー27(以下、「揺動障害子」という)は、次の4つの要素が有機的に結合しており、しかも、該揺動障害子27は新規なものであり、慣用又は周知事項のいずれでもない。すなわち、
a 内筒5の鍵穴4を囲む鍵挿通孔26が形成された環状体であること、
b 該環状体の実体部の1ヵ所を、前記内筒5を軸線方向に貫通する支軸23を介して揺動可能に軸支されること、
c 前記支軸23と対峙する側に相当する前記実体部の外側端縁に解錠切欠か形成されていること、
d 合鍵のブレードを挿入しない常態では、前記内筒5を軸線方向に貫通するバックアップピン8で係止されること。

(イ)鍵本体を構成する合鍵
本件特許発明の、鍵を構成する合鍵24は、ブレードの平面部に形成されたコード用凹所25を有し、該コード用凹所25は、次の2つの要素が有機的に結合しており、しかも、該コード用凹所25は新規なものであり、慣用又は周知事項のいずれでもない。すなわち、
a タンブラー群の突出量が一定である各係合突起29と係合するコード用凹所25は、すり鉢形の窪みであり、該すり鉢形の窪みは、複数種類の大きさと深さを有するものであり、
b さらに、前記タンブラー群が、前記すり鉢形の窪みの「複数種類の大きさ」と「複数種類の深さ」と「ブレードの幅方向の位置」に対応して、その揺動角度が変わるものであること。

(ウ)本件特許発明の効果
a タンブラー群が、すり鉢形の窪みの「複数種類の大きさ」と「複数種類の深さ」と「ブレードの幅方向の位置」に対応して、その揺動角度が微妙に変わるので、合鍵の複製が困難である(段落【0074】)。
b 揺動障害子27は環状体であるから、該揺動障害子27の剛性を各段に向上させることができる(段落【0070】)。
c 揺動障害子27の剛性を各段に向上することから、揺動障害子27が組み込まれる内筒5の軸線方向の厚さを可能な限り薄くすることができるので、内筒の外形寸法に規格上の制約があっても、揺動障害子27の枚数を増大させることができる(段落【0072】)。その結果、ブレードの平面部の隣に位置するすり鉢形の窪み同士の間隔を従来の鍵溝間のそれよりも短く設定することができる(段落【0071】)。よって、鍵違いが大きい鍵を提供することができる(段落【0016】)。

(エ)各甲号証に対して
各甲号証には、上記アの「本件特許発明の錠本体の揺動障害子27」及び上記イの「鍵本体を構成する合鍵24」の各特徴事項が記載されていない。また、上記アの特徴事項と上記イの特徴事項を結合する旨の記載や示唆(動機付)が全くない。
そして、本件特許発明は、上記(ア)及び(イ)の特徴事項を結合したことにより、上記(ウ)の効果を有するものであり、加えて、本件特許発明の解決原理が「中心軸の外周面に支持される、或いは内筒の内周面に支持される回動障害子方式」ではなく、「揺動障害子27の実体部の1ヵ所を支軸23で軸支する揺動障害子方式」を採用することから、揺動障害子27の揺動時、他の部材との摩擦抵抗を極力無くすることにより、該揺動障害子27の揺動を円滑にすることができる(段落【0052】)。

(オ)甲第1号証に対して
甲第1号証の窪み25は、ブレード(シャンク)の側端縁に相当する側部に谷形の鍵溝を形成した普通一般の鍵と略同様であり、審判請求書の第76頁の「突起24先端の軌跡と窪みの拡大図」における「仮想線のすり鉢形状の浅い窪み」と「仮想線のすり鉢形状のきわめて深い窪み」のようにはならず、あくまでも実線の如く、側端面まで切欠された切欠状の窪みである。甲第1号証や甲第5号証の回動障害子は、それ自体に形成された切欠状の窪みの深さのみによって揺動角が決まるから、仮に鍵の平面部の幅方向に大きなズレを得ようとするならば、回動障害子21の突起24及び被係合部(切欠状の窪み)自体を巨大なものにせざるを得ない。
本件特許発明は、支軸23が発明の特定要件であり、該支軸23と揺動障害子27の突起29との位置関係によって、「窪みの位置が深くなるほど外側から内側に向かってズレる」のであるから、甲第1号証の回動障害子21と本件特許発明の揺動障害子27とは作用・効果が相違する。
それ故に、甲第1号証は、本件特許発明の如く、ブレードの平面部に形成された複数種類の大きさ、複数種類の深さのみならず、ブレードの幅方向のすり鉢形状の窪み25を利用して「窪みの数を増やす」ということはできない。

(カ)甲第2号証に対して
本件特許発明は、揺動障害子を用いて鍵違いの増大化を図るという本件発明の課題を達成するために、新規構成の環状の揺動障害子27と、新規構成の合鍵24の組み合わせにより、少なくとも確定審決が認定した上記(ウ)aの効果を有することから、甲第2号証にその余の各甲号証を適用しても、進歩性を有するものと認定判断されたものである。

(キ)甲第5号証に対して
甲第5号証は甲第1号証と同様の類型に属するものであり、環状の回動障害子58の外周面と内筒16の内周面との間で摩擦を生じさせて回転させるものであるから、回動障害子58の良好(安定的)な回転を得るためには、内筒16の軸線方向に「ある程度の厚み」が要求される。本件特許発明の環状の揺動障害子27は支軸23に軸支されるものであるから、甲5の回動障害子58と比較して、その厚さを抑えることができ、可動障害子の枚数を「1枚」でも増やすことができるという利点がある。

第6 当審の判断
1 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

ア 「A key operable lock according to the invention comprises in combination a body in which is formed a substantially cylindrical cavity having a longitudinally extending recess in its wall, a hollow substantially cylindrical barrel occupying the cavity, said barrel having a longitudinally extending slot in its wall, a longitudinally extending locking bar normally occupying said recess and said slot to prevent relative angular movement between the barrel and the body, means urging the locking bar into said recess, a plurality of disc-like security members disposed within the barrel, stop means for limiting angular movement of each member relative to the barrel, resilient means urging each member angularly towards one limit of its permitted angular movement within the barrel, each of said members having a central aperture into which a projection on the member extends in a substantially circumferential direction for engagement within a depression in the side wall of the shank of a key, each of said members also having a notch in its periphery which will be aligned with the slot in the barrel when its projection is engaged in a depression of appropriate depth in the key, the arrangement being such that when an appropriate key is correctly inserted through the apertures of all the members the projections will all be engaged in depressions of appropriate depth under the influence of the resilient means to bring the notches of the plurality of members into alignment with the slot in the barrel so that when angular movement is imparted to the key the locking bar will be moved from the recess in the body into a position to be accommodated within the slot in the barrel and the plurality of notches in the plurality of members to enable the barrel and members to be moved angularly relative to the body. 」(1頁左欄)13行?右欄54行)
(翻訳)
「本発明による鍵操作可能な錠は、その壁の長手方向に延びるリセスを有する実質的に円筒形の空洞を形成するボディと、空洞を占める中空の略円筒状でその壁の長手方向に延びるスロットを有するバレルと、バレルとボディとの相対的な回転方向運動を防ぐために通常はリセスとスロットを専有する長手方向に延びるロッキングバーと、リセス内にロッキングバーを引き込む手段と、バレル内に配置されている複数の円盤状のセキュリティ・メンバーと、バレルと各メンバーの相対的な回転方向運動を制限する停止手段と、バレル内での各メンバーの回転方向運動の一つのリミットに向けて各メンバーを付勢する弾性手段とからなり、各メンバーには中央開口があり、その中に鍵のシャンクの側壁の窪み内に係合するための実質的に円周方向に延びる突起を有し、各メンバーはまた、その突起が鍵の適切な深さの窪みに係合すると、バレル内のスロットに位置合わせされるノッチを有し、このような配置において、適切な鍵がすべてのメンバーの開口部を通して正しく挿入されると弾性手段の影響を受けて突起はすべて、適切な深さの窪みに係合され、複数のメンバーのノッチとバレルのスロットは位置合わせされ、回転方向運動が鍵に付与されるとロッキングバーはボディのリセスからバレルのスロットと複数メンバーの複数のノッチの収納されるべき位置に移動し、バレルとメンバーがボディに対して角度移動可能となる。」

イ 「In the accompanying drawings:-
……
Figure 4 is a side view of a typical key for use with the illustrated lock,
Figure 5 is a sectional view to an enlarged scale through the assembled lock with the key removed,
Figure 6 is a section on the line 6-6 of Figure 5 but with adjacent security members and carriers omitted for the sake of clarity, and
Figure 7 is a similar view to Figure 5 but showing the key inserted and the barrel partially turned.」(1頁右欄55行?76行)
(翻訳)
「添付の図において:-
……
図4は、図示の錠において使用する典型的な鍵の側面図である。
図5は、鍵を取り去った状態における、組み立てられた錠の拡大断面図である。
図6は、図5の6-6線上の断面側面図であるが、隣接するセキュリティ・メンバーとキャリアは、明瞭化のため省略してある。
及び
図7は、図5と同様の図であるが、挿入された鍵と少し回されたバレルを表示してある。」

ウ 「Referring to the drawings, there is provided a body 10 in which is formed a substantlally cylindrical cavity having a longitudinally extending recess 11 in its wall. Near the base of the recess 11 is embedded in the body a stripmagnet 12. Moreover, the walls of the recess 11 are inclined or curved to form a bell-mouthed opening for a purpose to be described. Within the cavity in the body 10, is a hollow substantially cylindrical barrel 13 having a longitudinally extending slot formed in its periphery. Occupying the slot is a longitudinally extending ferrous locking bar 14 which normally also occupies the recess 11 under the influence of the magnet 12 as seen in Figure 5. In such position the radial depth of the locking bar 14 extends from the base of the recess 11 to the inner periphery of the barrel 13, and provided that it cannot move radially inwards, will prevent relative angular movement between the barrel and body.」(1頁右欄77行?2頁左欄2行)
(翻訳)
「図面を参照すると、その壁に長手方向に延びるリセス11を有する、実質的に円筒形の空洞が形成されたボディ10が設けられている。リセス11の底部の近くには、帯状磁石12がボディに埋設されている。さらに、リセス11の壁は、後述する目的のために、ベルマウス開口部を形成するように傾斜又は湾曲している。ボディ10内の空洞の中に、その表面に形成され長手方向に延びるスロットを有する、中空略円筒状のバレル13がある。スロットを占有するのは、長手方向に延びる鉄製ロッキングバー14であり、それはまた、通常は図5に示すように、磁石12の影響下でリセス11を占有している。このような位置関係において、ロッキングバー14の半径方向の深さは、リセス11の底部からバレル13の内周まで延びていて、それは半径方向内側に移動することができず、バレルとボディとの間の相対的な回動を防止する。」

エ 「In the front of the barrel 13 is a rectangular opening 15 through which a correspondingly rectangular shank of a key 16 can be inserted, the sides of the opening 15 being chamfered to form a lead into the opening.」(2頁左欄3行?8行)
(翻訳)
「バレル13の前面には、矩形の開口15があり、これを通して、鍵16の対応する矩形のシャンクを挿入することができ、開口15の側面は、開口への案内を形成するために面取りされている。」

オ 「Within the barrel 13 is a pluralitv of disclike security members 21 with each of which is associated one of an equal numberof carriers 22. In the example illustrated there are eight security members 21 and eight carriers 22, although it will be appreciated that more or less security members could beused according to the requirements of the lock.」(2頁左欄15行?22行)
(翻訳)
「バレル13内には、複数のディスク状のセキュリティ・メンバー21があり、それらの各々は、等しい数のキャリア22のーつと組み合わせられる。図示の例では、8個のセキュリティ・メンバー21と8つのキャリア22があるが、ただし錠への要求次第では、より多い又はより少ないセキュリティ・メンバーを用いることができることは理解されるであろう。」

カ 「Each carrier 22 has a central hollow boss 22a about which the associated member 21 is angularly movable, this boss 22a having a segmental portion cut away. Moreover, each carrier 22 has an integral tongue 22b engaging a slot in the barrel 13 to prevent relative angular movement, and a slot 22c in alignment with the longitudinal slot in the barrel 13. Furthermore, each carrier 22 has an aperture 23 of an appropriate shape to receive the shank of a key.」(2頁左欄23行?33行)
(翻訳)
「各キャリア22は、組み合わされたメンバー21がその周りを回転方向に移動可能であるように、切り欠き部分のある中空のボス22aを持っている。さらに、各キャリア22は、相対的な回動を防止するためにバレル13内のスロットに係合する一体のタンク22bと、バレル13内の長手方向スロットと位置合わせするスロット22cとを有している。さらに、各キャリア22は、鍵のシャンクを受け入れるのに適した形状の開口23を持っている。」

キ 「Each security member 21 has a central aperture journalled about the boss 22a of its associated carrier. Moreover, extending into the central aperture in a substantially circumferential direction, and in the region of the segmental cut-away portion of the carrier, is an integral projection 24 which is adapted to engage within one of a plurality of depressions 25 formed in the side walls of the shank of the key 16. The projection 24 is chamfered to form a lead whereby the shank of the key 16 which has a chamfer 16a at its inner end can cam the member 21 angularly as the key is inserted throughthe aperture 23.」(2頁左欄34行?48行)
(翻訳)
「各セキュリティ・メンバー21は、その組み合わされるキャリアのボス部22aの周りに軸支される中央部開口を有している。さらに、中央開口内に入り込んで、実質的に周方向に延びる、また、キャリアの部分的切り欠きの領域で延びる一体の突起24があり、それは鍵16のシャンクの側壁に形成された複数の窪み25のうちの1つに係合するように組み合わされる。突起24は、案内を形成するために面取りされており、それによって、鍵が開口23を通して挿入される時に、内側端部に面取り部16aを有する鍵のシャンク16が、セキュリティ・メンバー21を角度を付けながらカム案内できる。」

ク 「Each member 21 is spring-loaded in an angular direction relatlve to its carrier 22 by means of a coiled torsion spring 26, one end of which is bent to bear against a shoulder on the boss 22a and the other end of which is bent to be located within a notch 21a in the member 21. Moreover, angular movement of the member 21 relative to the carrier 22 and therefore to the barrel 13 is limited by abutment of the projection 24 with the shoulders of the carrier bounding the segmental cut-away portion, these shoulders acting as stop means.」(2頁左欄49行?61行)
(翻訳)
「各メンバー21は、一端がボス部22aの肩部に対して支えるように曲げられ、他端がメンバー21のノッチ21a内に配置されるように曲げられるコイル状トーションスプリング26によって、そのキャリア22に対して角度方向にバネ荷重が付加されている。加えて、キャリア22、さらにはバレル13に対するメンバー21の角度の移動は、切り欠き部分の周りのキャリアの肩部と突起24との当接によって制限され、これらの肩部は停止手段として作用する。」

ケ 「In Figure 5, the member 21 is spring-loaded in a clockwise direction and the arrangement is such that as the key is inserted into the aperture 23, the chamfer 16a on the end of the shank will cam the member 21 in an anti-clockwise direction. Moreover, when the correct key has been inserted the projection 24 will be located in a depression 25 of such depth that a notch 21b (diametrically opposite the notch 21a) will be aligned with the slot 22c in the carrier. In this position if the key is turned as shown in Figure 7, the locking bar 14 will be cammed inwardly by the bell-mouthed opening of the recess 11 to allow the key to turn the member 21, together with the carrier 22 and the barrel 13.」(2頁左欄62行?右欄78行)
(翻訳)
「図5で、メンバー21は時計回り方向にバネ荷重が付加されており、鍵が開口23内に挿入される時に、シャンクの端部の面取り部16aが、メンバー21を反時計回り方向にカム案内するような配置になっている。さらに、正しい鍵が挿入されたときに、突起24は、そのような深さの窪み25内に位置して、ノッチ21b(ノッチ21aと径方向反対側)はキャリア内のスロット22cと整列する。この位置において、図7に示すように鍵が回されると、ロッキングバー14は、リセス11のベルマウス開口部によって内側にカム案内され、鍵が、キャリア22とバレル13と一緒に、メンバー21を回すことができるようになる。」

コ 「The depressions 25 in the shank of the key 16 are arranged to be of three alternative depths and the arrangement is such that when the correct key is inserted in the lock the notch 21b of each of the security members will bealigned with the slot 22c in its carrier. However, if any one projection 24 is not located in a depression of appropriate depth the locking bar 14 will be prevented from moving radially inwards as an attempt is made to turn the key, with the result that the lock cannot be actuated. It will be appreciated that the angular position of the notch 21b will be determined by the depth of the appropriate depression 25 in the key with which the projection 24 of the member is to engage.」(2頁右欄79行?95行)
(翻訳)
「鍵16のシャンクの窪み25は、3つの深さを選択できるようになっていて、正しい鍵が錠の中に挿入されたときには、各セキュリティ・メンバーのノッチ21bは、そのキャリアのスロット22cに整列する。しかしながら、いずれかの突起24が適切な深さの窪みに配置されていない場合には、鍵を回そうと試みても、ロッキングバー14が径方向内側に移動するのを防止することができ、その結果、錠を作動させることができない。ここで、ノッチ21bの角度方向位置は、メンバーの突起24が係合されるべき鍵の適切な窪み25の深さによって決定されることが理解されるであろう。」

サ 「In Figures 5 to 7 the projection 24 is located to engage a depression in an upper row of depressions, on one side of the shank. However, the same member 21 can be utilized to engage a depression in a lower row on the opposite side of the key by mounting the member at 180° to the position shown on an alternative form of carrier wherein the segmental cut-out is diametrically opposed to that shown. Similarly, an alternative form of member 21 can be used with another carrier so as to coact with the upper row of depressions on said other side of the key shank. In this instance, the carrier would have the cut-out segmental portion 90° removed from the position shown and the projection 24 would project circumferentially in the opposite direction. Moreover, the member 21 would be angularly spring-loaded in the opposite direction. This member 21 could also be mounted at a position 180° removed from that described to cause the projection 24 to coact with a lower row of depressions in the first mentioned side of the key shank.」(2頁右欄96行?120行)
(翻訳)
「図5?図7において、突起24は、シャンクの一つの側面の上段列の一つの窪みに係合するように配置されている。しかしながら、同じメンバー21を、部分的切り欠き部分が、図示に対して直径方向で反対の位置にある、キャリアの代替的な形態で示めされた位置に対して180°にメンバーを取り付けることによって、鍵の反対側面の下段列の窪みに係合するように、使うことができる。同様に、代替的な形態のメンバー21は、鍵シャンクの他方の側で上段列の窪みと協働するように、他のキャリアと共に使用することができる。この例では、キャリアは、示された位置から90°移動した部分的切り欠き部分を有するであろうし、突起24は円周反対方向に突き出るであろう。さらに、メンバー21は反対方向に角度的にバネ荷重を付加されるであろう。このメンバー21はまた、記載された位置から180°移動した位置に取り付けることができ、その結果、突起24は、最初に述べた鍵シャンク側面の下段列の窪みと共働する。」

シ 「Due to the fact that the key acts upon the projections 24 nearer the centre of the members 21 than the peripheries thereof, the resulting angular movement of the members will cause larger movements of the peripheries of the members, thereby permitting adequate variation in the positioning of the notches 21b, 21a for relatively small variations in the depths of the depressions 25.」(2頁右欄127行?3頁左欄5行)
(翻訳)
「鍵が、メンバー21の周縁部よりも中央寄りで突起24に作用するということにより、結果としてのメンバーの回転方向運動が、メンバーの周縁部のより大きな動きを引き起こし、それによって、窪み25の深さの比較的小さなバリエーションに対して、ノッチ21b、21aの位置決めにおいて適切なバリエーションを可能にする。」

ス 「By virtue of the fact that the depression in the key shank can be disposed in any one of four alternative positions and can be of any one of, for example, three alternatlve depths, an extremely large number of differs can be obtained for a lock of given size. For example, 4^(8 )times as many differs can be obtained with a lock having eight security members 21, as shown, compared with a pin tumbler lock having eight pins and three alternative depths for the notches in the key.」(3頁左欄13行?23行)
(翻訳)
「鍵のシャンクの窪みは、4つの代替的な位置のいずれかに配置することができ、また、例えば3つの代替的な深さのいずれかとすることができるという事実により、所定サイズの錠について、極めて多数の違い(differs)を取得することができる。例えば、8本のピン及び鍵におけるノッチの3つの代替的深さを有するピンタンブラー錠と比較して、示されているように、例えば、8枚のセキュリティ・メンバー21を有する錠について、4の8乗回の違いが得られる。」

セ 「Furthermore, a lock as above described enables master keyed suites without impairing the security of individual locks. Moreover, with a lock having eight security members 21 as shown, and three alternative depths for the notches in the key 3^(8 )master keys each controlIng suites of locks having 4^(8) different combinations can be used, in which no master key will release a lock of another suite. 」(3頁左欄24行?33行)
(翻訳)
「さらに、上述の錠は、個々の錠の安全を損なうことなく、マスター鍵のついた一揃い(master keyed suites)を可能にする。さらに、記載の8つのセキュリティ・メンバー21と鍵におけるノッチの3つの代替的な深さを有する錠によって、それぞれの4の8乗回の異なる組合せを有する錠の一揃いをコントロールしている、3の8乗のマスター鍵を使うことができ、そこにおいて、マスター鍵は、他の一揃いの錠をあけない。」

ソ 図4は次のものである。


タ 図5?7は次のものである。


チ 図5?7をみると、キャリア22の開口23がバレル13の中心軸に沿って貫通し、中心軸に関して点対称に形成されていることがみてとれる。

ツ 図5及び図6をみると、円盤状のセキュリティ・メンバー21の実体部であり、円弧の一部をなす外周縁にノッチ21bが形成されていることがみてとれる。

テ 図6には、鍵16の平面図が記載されており、窪み25が2つの半円状の同心円で示されている。また、図7には、鍵16の断面図が記載されており、窪み25が傾斜面と底面からからなることがみてとれる。そして、図7及び図6の記載を総合すると、図6に記載された窪み25は、内側の同心円の内部が窪み25の底面を意味し、外側の同心円と内側の同心円の間が窪み25の傾斜面を意味するものと認められる。

ト 上記テを踏まえて図4をみると、鍵16のシャンクに、周囲を傾斜面で囲まれた円形の底面を有し、大きさの異なる複数の窪み25が設けられていることがみてとれる。

ナ 上記アないしトによると、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。

「その壁の長手方向に延びるリセス11を有する実質的に円筒形の空洞を形成するボディ10と、空洞を占める中空の略円筒状でその壁の長手方向に延びるスロットを有するバレル13と、バレル13とボディ10との相対的な回転方向運動を防ぐために通常はリセス11とスロットを専有する長手方向に延びるロッキングバー14と、リセス11内にロッキングバー14を引き込む手段と、バレル13内に配置されている複数の円盤状のセキュリティ・メンバー21と、バレル13と各メンバー21の相対的な回転方向運動を制限する停止手段と、バレル13内での各メンバー21の回転方向運動の一つのリミットに向けて各メンバー21を付勢する弾性手段とからなり、各メンバー21には中央開口があり、その中に鍵16のシャンクの側壁の窪み25内に係合するための実質的に円周方向に延びる突起24を有し、各メンバー21はまた、その実体部であり、円弧の一部をなす外周縁に、突起24が鍵16の適切な深さの窪み25に係合すると、バレル13内のスロットに位置合わせされるノッチ21bを有し、このような配置において、適切な鍵16がすべてのメンバー21の中央開口を通して正しく挿入されると弾性手段の影響を受けて突起24はすべて、適切な深さの窪み25に係合され、複数のメンバー21のノッチ21bとバレル13のスロットは位置合わせされ、回転方向運動が鍵16に付与されるとロッキングバー14はボディ10のリセス11からバレル13のスロットと複数メンバー21の複数のノッチ21bの収納されるべき位置に移動し、バレル13とメンバー21がボディ10に対して角度移動可能となり、
リセス11の壁は、ベルマウス開口部を形成するように傾斜又は湾曲しており、
バレル13の前面には、矩形の開口15があり、これを通して、鍵16の対応する矩形のシャンクを挿入することができ、
複数の円盤状のセキュリティ・メンバー21の各々は、等しい数のキャリア22のーつと組み合わせられ、
各キャリア22は、組み合わされたメンバー21がその周りを回転方向に移動可能であるように、切り欠き部分のある中空のボス22aを持っており、
各キャリア22は、鍵16のシャンクを受け入れるのに適した形状の開口23を持っており、開口23はバレル13の中心軸に沿って貫通し、中心軸に関して点対称に形成されており、
各セキュリティ・メンバー21は、その組み合わされるキャリア22のボス部22aの周りに軸支される中央開口を有している鍵操作可能な錠に用いる鍵16であって、
鍵16のシャンクには、周囲を傾斜面で囲まれた円形の底面を有し、大きさの異なる複数の窪み25が設けられ、
窪み25は、3つの深さを選択できるようになっており、
正しい鍵16が錠の中に挿入されたときには、各セキュリティ・メンバー21のノッチ21bは、そのキャリア22のスロット22cに整列する鍵16。」

(2)甲第2号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、レバータンブラー錠用のリバーシブルキー及びその製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のレバータンブラー錠用のリバーシブルキー、すなわち、任意数のC字状のレバータンブラーに当接して各レバータンブラーを解錠位置に整合変位させるための選択された深さの刻みを、平板状のキー本体の両側辺に設けたリバーシブルキーとしては、図12に示されるようなものが知られている。
【0003】リバーシブルキーは、そのキー本体の平板面14、14の表裏を逆にしても鍵孔に挿入することができ、かつ錠を施解錠することができる利便さがある。
【0004】しかしながら、図12に示す従来のリバーシブルキーにおいては、両側辺で対をなす刻み20、20の谷の底部30、30が、キー本体の平板面14、14と直角をなしかつキー本体の中心軸線lを含む平面Pに関し互に平行をなすように形成され、また、キー本体の横断端面が前記平面Pに関し面対称をなすように形成してある。
【0005】その為、一つには、ならい鍵切り機等により複製が不正に行われ易いこと、他の一つには、レバータンブラー錠でC字状のレバータンブラーを表裏逆に入れても(レバータンブラーは、鍵違いを増やす為、それを表裏逆にしてC字状又は逆C字状として装着できるようにしてある)、同じリバーシブルキーによって施解錠可能であるから鍵違い数の減少が余儀なくされることなど、未解決の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明はレバータンブラー錠用として提供されるリバーシブルキーは、前記の問題を悉く解決しようとするものである。すなわち、キー本体の刻みの形状を新規なものに変えることによって複製をしにくくし、かつ鍵違い数の減少を排除することを目的とする。」

イ 「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に示す実施例に基いてこの発明について説明する。図1?図3において、符号1はつまみ11及び平板状のキー本体12から成るリバーシブルキー、13はキー本体12の長さ方向に沿ってその平板面14、14に設けた横断面を任意形状としたウォードである。…
【0012】この発明のリバーシブルキー1が差し込まれて用いられるレバータンブラー錠2は、図3?図6に示すように、内周面の母線に沿ってカム溝21を形成した外筒22と、その外筒22に回転自在に嵌合し、間隙を隔てて列設された複数の仕切板23を備えると共に、前後方向に鍵孔24を貫通させた内筒部25と、その内筒部25の母線に沿って延在し、内筒部25の半径方向に移動可能に装着されると共に、押しばね26により外方に向け付勢されたロッキングバー27とを有する。
【0013】そして、前記の仕切板23が形成する複数のスロット内に、それぞれの先端部分にロッキングバー27を選択的に受け入れる解錠切欠き28を形成したC字状のレバータンブラー29を支軸31で枢着し、各レバータンブラー29は、鍵孔24に差し込まれるキーの側辺部と干渉する方向にタンブラーばね32で付勢される。
【0014】レバータンブラー錠は、合鍵が鍵孔24に挿入されたとき、これらのタンブラー群29のそれぞれが鍵孔24に挿通された合鍵の対応する刻みと係合し、各タンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしてある。
【0015】そしてその状態で合鍵を回すと、カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27が内筒半径方向に移動するので、バックアップピン33を含み、前方のキーガイド34、仕切板23、周囲を囲むリテーナ35及び後方の尾栓36等から成る内筒部25は全体として解錠方向又は施錠方向に回動できる。
【0016】なお、前記のC字状のタンブラー29はその開口部を任意に逆方向に向けて、換言すれば逆C字状をなすようにして装着され得ることは言うまでもない。
【0017】このようなレバータンブラー錠は実公昭59-19099号公報又は特公昭60-6432号公報等にも示され周知であるから、構造や作動についての更に詳しい説明は省略する。」

ウ 「【0018】この発明に係るリバーシブルキーに戻って説明を加えると、そのキーの特徴はキー本体12の両側辺に共に設けた刻みにある。
【0019】キー本体12の両側辺において中心軸線lと直角をなす平面上で対をなすようにして設けた刻みの谷の底部3、3aは、図2に明示するように、キー本体12の厚さ方向でともに傾斜させてあり、一対の谷の底部3、3aの傾斜は、図2に示す平面P、すなわち、キー本体12の平面板14、14と直角をなしかつキー本体12の中心軸線lを含む平面、に関し互に逆向きにしてある。
【0020】言い換えると、前記の対をなす谷の底部3、3aにおける傾斜は、キー本体12の平板面14、14と直角をなしかつキー本体12の中心軸線lを含む平面Pに関し面対称ではなく、キー本体12の横断端面において点対称をなすように形成されている。
【0021】更にまた、傾斜させた各谷の底部3(3a)は図示例では内に凸の曲面に形成してある。底部3(3a)の傾斜面をこのように曲面にすると、キーの不正な複製を一層難しくするが、その傾斜面は平面としてもよい。
【0022】キー本体12の各刻みにおける底部3(3a)の傾斜面は、それが対応するタンブラー29の正面形の違いに応じて形成されるが、例えば、図2に示すように、切削前のキー本体(図7に示す鍵材10の本体のこと)に対しある定点Aを通る直線がその定点Aを中心として角度を変えた時、キー本体(12)の一側辺の稜線とぶつかる直線AOを基準として、角度を変える直線がキー本体(12)をよぎる角度的深さd1、d2、・・・dnを対応するタンブラー29の種類に応じて選択し、その深さdnの刻みを切削する。図2で示す谷の底部3、3aの深さはd2である。
【0023】前記のような構成のこの発明のリバーシブルキーは、両側辺で対をなす1組の刻みにおいても鍵違いを生ずる。その鍵違いについて図5及び図6で説明する。
【0024】図5に示すレバータンブラー29はC字状をなすように装着されており、また、図6に示すレバータンブラー29は同じ列で正面形が同じものを表裏を逆にして逆C字状をなすようにして装着してある。
【0025】図5のC字状のタンブラー29は、本発明のキーにおける長さ方向の所定位置の刻みで押されて解錠切欠き28が解錠位置に至っているが、図6の逆C字状のタンブラー29は同じキーを用いても傾斜している刻みの底部3aの浅い部分が衝接することになる。
【0026】その為、図12の従来のリバーシブルキーとは異なり、解錠切欠き28は解錠位置を占めることにはならず、内筒部25は外筒22に対し回動不能である。このことは本発明のキーがリバーシブルであるに関わらず、鍵違い数の減少を排除していることを示している。」

エ 「【0029】前記の鍵材10は、図8に示すように、特定の固定した軸線mの回りに揺動可能に設けたワーク台4に対して着脱可能に固定する。ワーク台4上の鍵材10はその平板面14、14がワーク台4の軸線mに対し平行をなすようにして取り付ける。
【0030】そして、ワーク台4上の鍵材10におけるキー本体の一側辺を、ワーク台4の軸線mと平行をなす特定の固定した別の軸線rの回りに回転する円板状の回転刃5に押し付ける。回転刃5の刃先にはキーの刻みにおける誘導斜面6、6aを形成するためのテーパ部51を備えている。
【0031】そこで、図9に示すように、キー本体12に対して設けるべき所要の刻みについて谷の底部3を内に凸の曲面として直線AOを基準とする選択された深さdn(図9でd3)の斜面に切削形成する。
【0032】この際、誘導斜面6が同時に形成される。但し、この誘導斜面6はキー本体12の幅方向並びに軸線方向の両方向に対し傾斜して形成される。勿論、キー本体12の一側辺の他の刻みについても同様にして切削形成する。」

オ 「【0037】
【発明の効果】以上に説明したこの発明のリバーシブルキーによれば、両側辺の刻みにおける対をなす谷の底部を互に逆向き傾斜面に形成してあるから、不正な複製を困難にするほか、リバーシブルキーにしたことによる鍵違い数の減少を排除できる効果を奏する。
【0038】また、前記底部の斜面を曲面としたものは、不正な複製を更に難しいものとする。
【0039】更に、この発明では、傾斜させた谷の底部を内に凸の曲面とした特殊なリバーシブルキーを正確にして効率よく製作する方法を提案している。」

カ 図1ないし6は次のものである。
図1

図2

図3

図4

図5

図6


キ そして、特に、上記イの摘記事項を踏まえて、図1?6をみると、
カム溝21が略V字形の横断面形状であること、複数の仕切板23が錠の中心軸線方向に間隙を介して積層されて内筒部25に設けられていること、鍵孔24が錠の中心軸線に沿って貫通されて内筒部25に設けられていることは、何れも明らかであり、
また、ロッキングバー27が、内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されて装着されるものであって、合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき、内筒部25を外筒22に対し相対回動できるように、内筒部25の中心軸方向に移動するものであることは、明らかであり、
さらに、レバータンブラー29が、その中央部に鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠が形成されて、この鍵挿通切欠の開口端縁に鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部が設けられ、この係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢されると共に、常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止するものであって、その実体部の1ヵ所としての一端部が内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支されると共に、その実体部としての先端部分が鍵挿通切欠を挟んで支軸31と対峙する円弧の一部をなす自由端部となっており、その外側端縁に解錠切欠き28が形成されるものであることは、明らかである。
そして、係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12に谷の底部3、3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき、当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合することも明らかである。
また、上記ウの【0021】、【0022】の記載、及び上記カの図5からみて、係合縁部は凸状であって、開口端縁に一体的に突設されていると認められる。

ク 上記アないしキによれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲2発明」という。)。
なお、甲2発明は鍵の発明であるが、本件特許発明との比較のために便宜的に鍵の構成に影響しない錠の構成も記載する。

「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝21を形成した外筒22と、
この外筒22に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板23を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔24を貫通させた内筒部25と、
この内筒部25の母線に沿って延在し、内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー27とを有し、
上記仕切板23の間の各スロットに、中央部に点対称に形成された鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠を形成したC字状のレバータンブラー29を挿設し、
その実体部の1ヵ所を、内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通切欠を挟んで上記支軸31と対峙するレバータンブラー29の実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠き28を形成し、
一方、鍵挿通切欠の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部を設け、
各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に、常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し、
他方、これらのレバータンブラー29群の係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12の端縁部に谷の底部3、3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき、当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしたレバータンブラー錠用の合鍵であって、
鍵孔24に挿入されたときレバータンブラー29の係合縁部と整合するキー本体12の部位に、谷の底部3、3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みを形成し、この刻みが係合縁部と係合したとき、各レバータンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき、カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27を内筒部25中心軸方向に移動させ、内筒部25を外筒22に対し相対回動できるようにしたレバータンブラー錠用の鍵。」

(3)甲第3号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている(なお、丸付き数字は括弧付き数字で表記した。以下甲第14号証も同じ。)。

ア 「(1)仕切板7両側挿入部a,a’が仕切板止め8に挿入されて内筒部を形成し、
仕切板7の間には仕切板7を貫通する支軸3に回動自在に吊架されたレバータンブラー1が挿入され、
内筒部を形成する仕切板止め8に外筒9が嵌め込まれ、
かつ解錠時ロッキングバー5がレバータンブラー1の係合溝14に係合するように仕切板7外筒9の形成するジャーライン上に設けられており、
前記仕切板7仕切板止め8、レバータンブラー1、が少なくともプレス部材で作られている、
ことを特徴とするレバータンブラーシリンダー錠。
(2)レバータンブラー1の上部に支軸3が貫通され、レバータンブラー1はその下部が彎曲部1Aを形成する弧状である実用新案登録請求の範囲第1項記載のレバータンブラー錠。」(実用新案登録請求の範囲)

イ 「以下その組立順序を説明する。
(1) まづ内筒フロント12にバックアップピン4と支軸3が固定される。
(2) つぎに支軸3とバックアップピン4がレバータンブラー1仕切板7が挿通される。
レバータンブラー1には支軸3の挿通孔b’が穿設され、かつロツキングバー係合溝14位置決めスプリング2の係止溝eが凹設されている。
また仕切板7には両側に仕切板止8への挿入部a,a’支軸3の挿通孔b、バックアップピン4の挿通孔c、ロツキングバー5の嵌入切込dが設けられている。
(3) つぎに内筒連動部13が支軸3、バックアップピン4に固定される。
(4) つぎに仕切板7の両側の挿入部a,a’に仕切板止8が挿入される。かくして内筒部が形成される。また予めタンブラー位置決めスプリング2はその一端がタンブラー1の係止溝eに挿入され、他端が仕切板止め8に係止され、固定される。
(5) つぎに仕切板7の切込dにロツキングバー5を、内筒フロント12連動部13にロツキングバーけん引スプリング6を挿入する。
しかる後外筒9を仕切板止8の外側に嵌め込み、錠の内外筒が形成される。
(6) 最後に外筒9の前方のカバー11、錠ケースカバー10が内外筒を被覆して本考案錠は形成される。」(明細書3頁20行?5頁8行)

ウ 「つぎに本考案の作用について説明する。
(1) 本考案錠は前記したように主要部材がプレス部材で作られ容易に組立てられるので大量生産が可能であり、低コストのレバータンブラーシリンダー錠が得られる。
(2) いま鍵を鍵穴hに挿入すると、レバータンブラー1は支軸3を中心として回動し、タンブラー1の係合溝14はロツキングバー5が係合できる位置に直線的にそろい、続いて内筒部を回転すればロツキングバー5は、係合溝に入り込み回動可能となる。
(3) 本考案錠は施錠状態においてはレバータンブラー1は位置決めスプリング2によりタンブラー1の係合溝14がロッキングバー5と異なる位置に保持されている。
またバックアップピン4はレバータンブラー1が外部から攻撃されてもその動を阻止する働らきをしている。すなわち鍵穴hにマイナスドライバー等を挿入し内筒を強制的に回動させようとした時に、ロッキングバー5が内筒中心向きにレバータンブラー1の彎曲部1Aを押圧する力が掛る。もしバックアップピン4が無ければその押圧力がレバータンブラー1の彎曲部1Aを曲げ破壊してロッキングバー5が外筒よりはずれ回動可能に至ることが考えられる。
しかるにバックアップピン4があることにより前記押圧力に対してレバータンブラー1だけでなく、バックアップピン4でも抵抗するのでレバータンブラー1の回動は困難となり、外部からの攻撃に対して安全である。
(4) レバータンブラー1は上部に位置する支軸3を中心として揺動し下端に彎曲部1Aを有する弧状に形成されているので、彎曲部1Aの回動範囲が広くとれ、彎曲部1Aの長さが大きくとれる。したがって彎曲部1Aに多くのロッキングバ-5の係合溝14がとれ、鍵違いの数が多く取れる利点がある。」(明細書5頁10行?7頁7行)

(4)甲第4号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 「1 仕切板7両側挿入部a,a’が仕切板止め8に挿入されて内筒部を形成し、
仕切板7の間には仕切板7を貫通する支軸3に回動自在に吊架されたレバータンブラー1が挿入され、
内筒部を形成する仕切板止め8に外筒9が嵌め込まれ、
かつ解錠時ロッキングバー5がレバータンブラー1の係合溝14に係合するように仕切板7外筒9の形成するジャーライン上に設けられており、
レバータンブラー1の上部に支軸3が貫通され、レバータンブラー1はその下部が弧状の湾曲部1Aを形成し、該湾曲部1Aの上面にはシリンダーを貫通するパックアップピン4が接しているレバータンブラー錠において、
パックアップピン4の先端は起立して先端湾曲部4aを形成し、かつ後部所定数の仕切板7とレバータンブラー1のコンス状態における位置に対応して凸部17、凹部16が設けられ、一方後部所定数のレバータンブラー1の湾曲部1Aにはバックアップピン4の凸部17に嵌合可能のバックアップピン係合溝15が凹状に設けられており、
コンス状態においては後部所定数のレバータンブラー1の凹状のパックアップピン係合溝15にバックアップピン4の凸部17が係合して後部所定数のレバータンブラー1は回動不能であり、
コンス状態を解除するには、バックアップピン4を後方に向けて押動することにより、パックアツプピン4の凹部16がレバータンブラー1の位置に移動するように構成した、
ことを特徴とするレバータンブラーシリンダー錠におけるコンストラクションキー装置。」(特許請求の範囲)

イ 「(2) いま鍵を鍵穴hに挿入すると、レバータンブラー1は支軸3を中心として回動し、レバータンブラー1の係合溝14はロツキンクバー5が係合できる位置に直線的にそろい、続いて内筒部を回転すればロッキングバー5は、係合溝に入り込み回動可能となる。
(3) 前記考案の錠は施錠状態においてはレバータンブラー1は位置決めスプリング2によりレバータンブラー1の係合溝14がロッキングバー5と異なる位置に保持されている。」(5欄19?28行)

(5)甲第5号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 「1. Field of the Invention
This invention relates generally to a lock, and more particularly to a high security lock that utilizes a locking bar and a stack of locking discs having features that make the lock difficult to pick.」(1欄5行?9行)
(翻訳)
「1.本発明の分野
この発明は一般的には錠に関し、より具体的には、ロッキングバーとロッキングディスクの積層体とを用いる、ピッキングを困難にしたことに特徴を有する高セキュリティ錠に関する。」

イ 「The present invention further provides a lock including a housing, a lock cylinder, a plurality of locking members, and a locking bar. A latching device is operatively connected to the lock cylinder and rotation of the lock cylinder effects movement of the latching device between locked and unlocked conditions. Each locking member is provided with a gating notch on the outer periphery thereof and a cam surface which engages the key when inserted into the lock. The locking bar normally occupies a first position coupling the lock cylinder to the housing. Linear insertion of the proper key causes the locking members to move so that the gating notches are aligned in a predetermined manner. This alignment allows the locking bar to be received in the gating notches coupling the locking means to the lock cylinder and uncoupling the lock cylinder from the housing to permit movement of the latching device between the locked and unlocked conditions.」(1欄67行?2欄16行)
(翻訳)
「本発明は、さらに、ハウジング、ロックシリンダー、複数のロッキングメンバー、及び、ロッキングバーを含む錠を提供する。掛け金装置は、ロックシリンダーに作動的に接続され、そして、ロックシリンダーの回転は、ロック及びアンロック位置の間で、掛け金装置の動きに作用する。各ロッキングメンバーには、その外周のゲイティングノッチと、錠に挿入されるときに鍵に係合するカム表面とが設けられている。ロッキングバーは、通常、ロックシリンダーをハウジングと結合する第1ポジションを占める。適切なキーの直線的な挿入がロッキングメンバーを移動させ、ゲイティングノッチは所定の様式(manner)で整列される。この整列は、ロッキングバーをゲイティングノッチ内に受容させ、ロッキング手段をロックシリンダーに結合させ、ロックシリンダーをハウジングから切り離し、掛け金装置のロック状態とアンロック状態との間の移動を許容する。」

ウ 「Referring now to FIG. 1, in a preferred form of the invention, a lock 10 has a face plate 12, an outer housing 14, and a lock cylinder 16. A latch actuating bar 18 is operatively attached to the lock cylinder 16 so as to be rotatable therewith, and a snap ring 20 is provided for retaining the lock cylinder 16 within the outer housing 14. As shown in FIG. 2, the face plate 12 has an aperture 22 therein to receive the lock cylinder 16. A keyway 24 is provided in the lock cylinder 16 to receive a key for actuating the lock. The keyway 24 has inwardly tapered sides 26 to assist the insertion of the key into the lock cylinder 16.」(2欄45行?56行)
(翻訳)
「ここで図1を参照し、本発明の好ましい形態においては、錠10は、フェイスプレート12、外側ハウジング14,及びロックシリンダー16を有している。掛け金の作動棒18は、作動的にロックシリンダー16に取り付けられており、それと一緒に回転可能となっており、そして、スナップリング20が、外側ハウジング14の中でロックシリンダー16を保持するために、備えられている。図2に示されているように、フェイスプレート12は、その中に、ロックシリンダー16を受け取るための開口22を有している。鍵穴24が、錠を作動させるための鍵を受け入れるために、ロックシリンダー16に設けられている。鍵穴24は、ロックシリンダー16への鍵の挿入を助けるために、内側にテーパーした側部26を有している。」

エ 「In the unlocked condition, lock cylinder 16 is rotatable relative to outer housing 14 whereas in the locked condition, the lock cylinder 16 is coupled to the outer housing 14 to prevent rotation of the lock cylinder. Whether the lockcylinder 16 is permitted to or prohibited from rotating is dependent upon the position of a locking bar 40 relative to the lock cylinder 16. In the locked condition, as shown in FIG. 4, the locking bar 40 occupies a longitudinally extending recess 42 provided in the outer housing 14. The locking bar 40 is of sufficient width in the radial direction to extend into a longitudinal slot 44 provided in the lock cylinder 16. By simultaneously occupying recess 42 and longitudinal slot 44, the locking bar 40 prevents rotation of the lock cylinder 16 relative to the outer housing 14 which, in turn, prevents rotation of the latch actuating bar 18 and the actuation of the latching device connected thereto.」(3欄15行?31行)
(翻訳)
「アンロック状態において、ロックシリンダー16は外側ハウジング14に対して回転可能であり、一方ロック状態では、ロックシリンダー16は、ロックシリンダーの回転を防ぐために、外側ハウジング14と結合される。ロックシリンダー16が回転を許されているか、それとも禁止されているかは、ロックシリンダー16に対するロッキングバー40の位置に依存している。ロック状態で、図4に示されているように、ロッキングバー40は、外側ハウジング14に設けられた縦に延びるリセス42を占める。ロッキングバー40は、半径方向には、ロックシリンダー16に設けられた縦のスロット44内に延びることができるくらいの幅のものである。同時にリセス42と縦のスロット44を占めることによって、ロッキングバー40は、外側ハウジング14に対するロックシリンダー16の回転を防ぎ、代わる代わる(inturn)、掛け金の駆動バー18の回転と、それに接続された掛け金装置の駆動を防ぐ。」

オ 「Locking bar 40 is retained within recess 42 by means of a permanent magnet 46 mounted in the base 48 of recess 42. Magnet 46 attracts locking bar 40 so that the locking bar will normally occupy recess 42 and extend into longitudinal slot 44 in lock cylinder 16 coupling the lock cylinder 16 to the outer housing 14 to prevent rotation of the lock cylinder 16 and the actuation of the latching device.」(3欄32行?39行)
(翻訳)
「ロッキングバー40は、リセス42のベース48の中に取り付けられた永久磁石46によって、リセス42内に保持される。磁石46はロッキングバー40を引き付けて、ロッキングバーが、通常、ロックシリンダー16のリセス42を占めて縦のスロット44内に延び、ロックシリンダー16を外側ハウジング14に連結して、ロックシリンダー16の回転と掛け金装置の発動を防ぐ。」

カ 「In the unlocked condition, as shown in FIGS. 5 and 6, the locking bar 40 occupies the longitudinal slot 44 provided in the lock cylinder 16 and a plurality of gating notches 50 which will be described later. Movement of the locking bar 40 in the radial direction from the recess 42 in the outer housing 14 into the plurality of gating notches 50 permits rotation of the lock cylinder 16 relative to the outer housing 14 which, in turn, permits rotation of the latch actuating bar 18 and the actuation of the latching device connected thereto. Recess 42 has inclined walls 52 to form camming surfaces which engage with the locking bar 40 upon rotation of the lock cylinder 16 to drive the locking bar 40 from the recess 42 into the plurality of gating notches 50.」(3欄40行?54行)
(翻訳)
「アンロック状態では、図5と6に示されているように、ロッキングバー40は、ロックシリンダー16に設けられた縦のスロット44と複数のゲイティングノッチ50(後ほど説明)を占める。外側ハウジング14のリセス42から複数のゲイティングノッチ50への半径方向のロッキングバー40の動きは、外側ハウジング14に対するロックシリンダー16の回転を許容し、代わる代わるに(in turn)、掛け金駆動バー18の回転と、それに接続された掛け金装置の発動を可能にする。リセス42は、ロックシリンダー16の回転でロッキングバー40に係合するカム表面を形成する傾斜した壁52を有し、リセス42から複数のゲイティングノッチ50にロッキングバー40を駆動する。」

キ 「Turning once again to FIG. 6, the lock cylinder 16 has a substantially cylindrical concentric bore 54 therein forming a flange 56 at one end thereof. A plurality of locking discs 58, separated by spacers 60, are received in the lock cylinder bore 54 and are rotatable relative thereto. The discs 58 are restrained from axial movement by the plug 28 at one end of the lock cylinder 16 and the flange 56 at the other end thereof.」(3欄55行?62行)
(翻訳)
「再度図6に転じて、ロックシリンダー16は、実質的に筒状の同心の穴54を有し、その中の片端でフランジ56を形成している。スペーサ60によって分離された複数のロッキングディスク58が、ロックシリンダーの穴54に受け入れられて、それに対して回転可能である。ディスク58は、ロックシリンダー16の片端のプラグ28とそれのもう一方の端のフランジ56によって、軸方向の運動が抑制される。」

ク 「Referring again to FIGS. 4 and 5, each locking disc 58 is biased in an angular direction by a compression spring 62 which is received in a recess 64 provided in the periphery of the locking disc. One end of spring 62 is in contact with a first shoulder 66 formed on the periphery of the locking disc 58 by the recess 64. The other end of spring 62 is in contact with a longitudinally extending support member 68 received in a recess 70 provided in the periphery of lock cylinder 16. The springs 62 bias their respective locking discs 58 in a clockwise direction, as shown in FIG.4, so that a second shoulder 72 formed on the periphery of the locking disc 58 by recess 64 is in contact with support member 68 causing alignment of the discs relative to one another before key insertion.」(3欄63行?4欄9行)
(翻訳)
「再び図4と図5を参照しつつ、各ディスク58は、圧縮スプリング62によって回転角方向に付勢されており、その圧縮スプリング62は、ロッキングディスクの周辺に設けられたリセス64に受け入れられている。スプリング62の片端は、リセス64までに、ロッキングディスク58の周辺で形成した最初の肩66に接触している。スプリング62のもう一方の端は、ロックシリンダー16の周辺に設けられたリセス70に受け入れられた縦に延びるサポートメンバー68に接触している。スプリング62は、図4に示されているように、それらの各々のロッキングディスク58を時計周りに付勢しており、ロッキングディスク58の周囲に、リセス64までに、形成した第2の肩72がサポートメンバー68に接触しており、鍵の挿入の前に、お互いに対してディスクの整列を引き起こす。」

ケ 「Referring now to FIGS. 8 and 9, each locking disc 58 has an aperture 74 to receive the shank of a key. Extending in a substantially radial direction into aperture 74 is a projection 76 which has a chamfered surface 78 disposed to engage with the key when it is linearly inserted into the lock. The chamfered surface 78 cams the locking disc 58 as the shank of the key is inserted into the apertures 74 causing the locking discs 58 to rotate. When the proper key has been inserted into the lock 10, the angular movement of each locking disc 58 is such that the gating notches 50 are aligned relative to one another permitting the receipt of the locking bar 40 therein coupling the locking discs 58 to the lock cylinder 16 and uncoupling the lock cylinder 16 from the outer housing 14, as shown in FIG. 5. When coupled, the lock cylinder 16 will rotate as the locking discs 58 rotate which, in turn, causes the rotation of the latch actuating bar 18 and the latching device connected thereto.」(4欄10行?28行)
(翻訳)
「ここで図8及び図9を参照して、各ロッキングディスク58は、鍵のシャンクを受け入れるための開口74を有している。開口74内へ実質的に半径の方向に延びるのは、鍵が直線的に錠に挿入されるときに鍵と係合するために面取りされた表面78を有する突起76である。面取りされた表面78は、鍵のシャンクが開口74に挿入されたときに、ロッキングディスク58とカム係合し、ロッキングディスク58の回転を引き起こす。適切な鍵が錠10に差し込まれたとき、各ロッキッグディスク58の角度方向運動は、ゲイティングノッチ50が相互に整列され、その中へロッキングバー40の受け入れを許容し、ロッキングディスク58をロックシリンダー16に結合し、図5に示されているように、ロックシリンダー16を外側ハウジング14から分離させる。結合されると、ロックシリンダー16は、ロッキングディスク58が回転したときに、回転し、代わる代わるに(in turn)掛け金作動棒18と、それに接続された掛け金装置の回転を引き起こす。」

コ 「Referring now to FIG. 7, the lock 10 is operated by a key 80 which has depressions 82 on the shank thereof. The depressions 82 have different depths and are spaced on the shank of key 80 so as to coincide with projections 76 on the locking discs 58 when the key 80 is fully inserted into the lock 10. Each of the depression depths results in a different angular movement of the locking disc 58 relative to the lock cylinder 16, and thus the location of gating notch 50 on the periphery of the locking discs 58 is determined by the depth of the depression that is to be engaged by projection 76. The gating notch 50 is positioned on the periphery of locking disc 58 so that it will be aligned with longitudinal slot 44 in the lock cylinder 16 if the depression 82 engaged by projection 76 on the locking disc 58 is of the proper depth. Thus, if the proper key has been inserted into lock 10, the rotation of each locking disc will besuch so that each gating notch 50 will be aligned relative to every other gating notch permitting the receipt of the locking bar therein and the actuation of the latching device connected to the lock.」(4欄29行?49行)
(翻訳)
「ここで図7を参照すると、錠10は、シャンク上に窪み82を有する鍵80により操作される。窪み82は、異なった深さを有しており、鍵80が錠10に完全に挿入されたときにロッキングディスク58上の突起76と場所が一致するように、鍵80のシャンクの上に間をおいて配置されている。各窪みの深さは、ロックシリンダー16に対して、ロッキングディスク58の異なった角運動をもたらし、そして、その結果、ロッキングディスク58外周のゲイティングノッチ50の位置は、突起76に係合することになっている窪みの深さによって決定される。ゲイティングノッチ50は、ロッキングディスク58の外周に位置しているので、ロッキングディスク58の上の突起76に係合する窪み82が適切な深さのものであれば、ロックシリンダー16の縦のスロット44に整列される。かくして、適切な鍵が錠10に差し込まれたなら、各ロッキングディスクの回転は、各ゲイティングノッチ50が他の全てのゲイティングノッチと整列するようなものとなり、その中にロッキングバーを受け入れることと、錠に接続された掛け金装置の発動を可能にする。」

サ 「As shown in FIG. 8, in addition to the gating notch 50, anti-picking notches 84 are provided in the periphery of locking disc 58. Such anti-picking notches have a smaller cross-sectional area than the gating notch 58 and thus, cannot receive the locking bar 40, but give the impression of receiving the locking bar when the lock is being picked. It should be noted that the orientation of the gating notch 50 with respect to the anti-picking notches 84 on the periphery of the locking disc 58 may be different from that shown in FIG. 8. The position of gating notch 50, as shown in FIG. 8, is for key depressions 82 of maximum depth. For key depressions of lesser depth, the location of the gating notch 50 will change causing a different orientation of the gating notch with respect to the anti-picking notches 84.」(4欄50行?64行)
(翻訳)
「図8に示すように、ゲイティングノッチ50に加えて、アンチピッキングノッチ84が、ロッキングディスク58の外周に設けられている。そのようなアンチピッキングノッチは、ゲイティングノッチ58より小さい断面積を有しており、その結果、ロッキングバー40を受け入れることはできないが、錠がピッキングされているとき、ロッキングバーを受け入れる印象を与える。ロッキングディスク58外周における、アンチピッキングノッチ84に関するゲイティングノッチ50のオリエンテーションは、図8に示されていたそれと異なっていてもよいことに注意すべきである。図8に示されているゲイティングノッチ50の位置は、最も深い鍵の窪み82についてのものである。より浅い深さの鍵の窪みに関しては、ゲイティングノッチ50の位置は変わり、アンチピッキングノッチ84に関してゲイティングノッチの異なったオリエンテーションをもたらす。」

シ 「As previously mentioned, when the proper key has been inserted into lock 10, each gating notch 50 is aligned relative to every other gating notch. If the key is then turned, the locking bar 40 will be cammed from recess 42 into the plurality of gating notches 50 that are aligned with longitudinal slot 44, causing the lock cylinder 16, together with the plurality of locking discs 58, to rotate relative to outer housing 14 thereby causing the latch actuating bar 18 to rotate which, in turn, actuates the latching device connected thereto. When the key is returned to its original neutral position, the locking bar 40 is attracted by permanent magnet 46 causing the locking bar to move radially outward from the plurality of gating notches 50 in which it was seated and reoccupy recess 42 in outer housing 14. Because of the width of the locking bar 40 in the radial direction, a portion of the locking bar remains within longitudinal slot 44 in lock cylinder 16 after the locking bar moves into recess 42, thus preventing rotation of the lock cylinder 16 relative to the outer housing 14 and the actuation of the latching device.」(4欄65行?5欄17行)
(翻訳)
「前述のように、適切な鍵が錠10に差し込まれたとき、各ゲイティングノッチ50は、他の全てのゲイティングノッチに対して整列する。次に、鍵が回されると、ロッキングバー40は、リセス42から、縦のスロット44に整列した複数のゲイティングノッチ50の中へとカム案内され、ロックシリンダー16を、複数のロッキングディスク58と共に、外側ハウジング14に対して回転させ、その結果、掛け金作動棒18の回転をもたらし、それに接続された掛け金装置を順番に(in turn)作動させる。元のニュートラル・ポジションに鍵を戻すと、ロッキングバー40は永久磁石46に引き寄せられて、それが座っていた複数のゲイティングノッチ50から半径方向に外側に動いて、外側ハウジング14内のリセス42を再占拠する。ロッキングバー40の半径方向の幅のため、ロッキングバーがリセス42内へ移動した後に、ロッキングバーの一部が、ロックシリンダー16の縦のスロット44に残り、その結果、外側ハウジング14に対するロックシリンダー16の回転、及び、掛け金装置の発動を防ぐ。」

ス 「It should be appreciated that gating notch 50, antipicking notches 84, and recess 64 can be repeated at positions 180 DEG removed therefrom at 50a, 84a, and 64a. This enables the locking disc 58 to be used in a symmetrically disposed position relative to other locking discs permitting the projection 76 on the locking disc to engage depressions 82 on the opposite side of the shank of the key 80 and below the longitudinal middle line thereof. Spring 62 and support member 68 are then received in recess 64a and are positioned relative to one another to bias locking disc 58 in a clockwise direction. Additionally, other locking discs may be provided having projections positioned so as to engage depressions 86 below the longitudinal middle line of the shank shown in FIG. 7 or above the longitudinal middle line on the opposite side thereof. In this instance, the spring 62 and support member 68 are received in recess 64 or 64a and are positioned relative to one another to bias the locking disc in a counterclockwise direction. Thus, the lock 10 can be adapted to be operated by depressions located not only above the longitudinal middle line but also below the longitudinal middle line of the key shank, and on the opposite side thereof.」(5欄18行?42行)
(翻訳)
「ゲイティングノッチ50、アンチピッキングノッチ84、及びリセス64は、それら50a、84a、及び64aから180°離れて、繰り返すことができるのが理解されるべきである。これは、ロッキングディスク58が、他のロッキングディスクに対して対称的に配列された位置で使用されるのを可能にし、ロッキングディスク上の突起76が、鍵80のシャンクの反対側の、そして、その縦の正中線の下方の窪み82と係合するのを可能にする。スプリング62とサポートメンバー68は、次に、リセス64aに受け入れられて、お互いに対して位置決めされ、時計回りにロッキングディスク58を付勢する。さらに、図7に示されるシャンクの縦の正中線の下、又は、それの反対側における縦の正中線の上の窪み86と係合するように位置決めされた突起を有する、他のロッキングディスクを設けてもよい。この場合、スプリング62とサポートメンバー68は、リセス64又は64aに受け入れられてお互いに対して位置決めされ、ロッキングディスクを反時計回りに付勢する。かくして、鍵のシャンクの縦の正中線の上方だけではなく、縦の正中線の下方、そして、それの反対側に位置する窪みによって操作されるように、錠10を適合させることができる。」

セ 「In as much as numerous locking discs in various orientations relative to one another can be utilized in the lock, and since the depressions in the key shank can be of various depths, and since the lack of a depression can also be considered to be an additional depth, an extremely large number of different lock combinations is possible with this lock. For example, 4^(10) times as many different combinations can be obtained with a lock, such as this, using ten locking discs and three alternative depth depressions as compared with a pin tumbler lock having ten pins and three alternative depths for the notches in the key.」(5欄43行?54行)
(翻訳)
「お互いに対して様々なオリエンテーションに多数のロッキングディスクが利用でき、そして、鍵のシャンクにおける窪みを様々な深さのものにでき、また、窪みの欠乏(lack)を追加深さであると考えることができるので、非常に多くの異なった錠組み合わせが、この錠で可能である。例えば、10本のピンと鍵の3つの代替深さのノッチを有するピンタンブラー錠と比べて、このような錠について、10枚のロッキングディスクと3つの代替的な深さの窪みを使用して、4の10乗回という多さの異なった組み合わせを得ることができる。」

ソ 「A lock for use with a key for effecting actuation of a latching device, said lock comprising:
a housing having a substantially cylindrical bore therethrough;
a lock cylinder having a substantially cylindrical bore therein, said lock cylinder being received in said bore in said housing and being rotatable relative to said housing;
latch actuating means operatively connected to said lock cylinder and rotatable therewith to effect actuation of the latching device;
locking means received in said bore of said lock cylinder and being rotatable relative thereto in response to the linear movement of the key into the lock;
coupling means for coupling said locking means to said lock cylinder, said coupling means coupling said locking means to said lock cylinder when said lock is in an unlocked condition permitting simultaneous rotation of said locking means and said latch actuating means to effect actuation of the latching device; and
means for moving said coupling means to prevent engagement of said coupling means with said locking means when said lock is in a locked condition.」(6欄1行?25行)
(翻訳)
「鍵とともに用いられ、掛け金装置の発動に作用する錠であって、前記錠は以下を備える:
それを貫通する実質的に筒状の穴を有するハウジング;
その中に実質的に筒状の穴を有し、前記ハウジングの前記穴で受けられる前記ハウジングに対して回転可能なロックシリンダー;
前記ロックシリンダーに作動的に接続されており、それとともに回転して掛け金装置の発動に作用する掛け金発動装置;
前記ロックシリンダーの前記穴に受け入れられており、それに対して、鍵の錠の中への直線的な運動に対応して回転可能であるロッキング手段;
前記ロッキング手段を前記ロックシリンダーに結合する結合手段であって、前記錠がアンロック状態のときに前記ロッキング手段を前記ロックシリンダーに結合し、前記ロッキング手段と前記掛け金発動手段の同時回転を可能にして前記掛け金装置の発動に作用する結合手段;
そして、前記錠がロック状態のときに、前記結合手段と前記ロッキング手段との係合を防ぐように前記結合手段を動かす手段。」

タ 図2は次のものである


チ 図4は次のものである。


ツ 図5は次のものである。


テ 図6は次のものである。


ト 図7は次のものである。


ナ 図9は次のものである。


ニ 図2、図4及び図6をみると、鍵孔24は、中心軸線に沿って貫通されてロックシリンダー16に設けられていることがみてとれる。

ヌ 上記コ及びスの記載を踏まえて図5をみると、スプリング62により、ロッキングディスク58を時計周りに付勢することは、ロッキングディスク58の突起76を鍵80に近接する方向に付勢することであることがみてとれる。

ネ 図5をみると、ロッキングディスク58の中央に開口74が形成されていることがみてとれる。

ノ 上記ケの記載及び図6の記載を踏まえて図9をみると、複数のロッキングディスク58において、突起76の突出量が一定であることがみてとれる。

ハ 上記ケ及びコの記載を踏まえて図5及び図7をみると、鍵のシャンク上の窪み82は有底の擂り鉢形であることがみてとれる。

ヒ 上記アないしソの摘記事項、ニないしハの図示事項、及び図5に示された突起76と窪み82の係合関係からみて窪み82はその深さが深いほど大きくなると認められることによると、甲第5号証には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲5発明」という。)。

「それを貫通する実質的に筒状の穴を有する外側ハウジング14、その中に実質的に筒状の穴を有し、前記外側ハウジング14の前記穴で受けられる前記外側ハウジング14に対して回転可能なロックシリンダー16、ロックシリンダー16の穴に受け入れられて、それに対して回転可能であるスペーサ60によって分離された複数のロッキングディスク58、及びロッキングバー40を含み、
外側ハウジング14には、縦に延びるリセス42が設けられ、リセス42は、ロックシリンダー16の回転でロッキングバー40に係合するカム表面を形成する傾斜した壁52を有し、
ロックシリンダー16には、縦のスロット44が設けられ、錠を作動させるために鍵を受け入れるための鍵穴24が中心軸線に沿って貫通されて設けられ、
各ロッキングディスク58は、複数のゲイティングノッチ50及び鍵のシャンクを受け入れるための中央に形成された開口74を有しており、鍵が直線的に錠に挿入されるときに鍵と係合するために面取りされた表面78を有し、突出量が一定である突起76が前記開口74内へ実質的に半径の方向に延び、
ロッキングディスク58の周囲に形成した第2の肩72が、ロックシリンダー16の周辺に設けられたリセス70に受け入れられた縦に延びるサポートメンバー68に接触しており、鍵の挿入の前に、お互いに対してディスクの整列を引き起こし、
スプリング62は、各々のロッキングディスク58の突起76を鍵に近接する方向に付勢し、
ロッキングバー40は、リセス42のベース48の中に取り付けられた永久磁石46によって、引き付けられ、ロッキングバー40が、通常、リセス42を占めて縦のスロット44内に延び、ロックシリンダー16を外側ハウジング14に連結して、ロックシリンダー16の回転を防ぎ、
前記突起76の面取りされた表面78は、鍵のシャンクが開口74に挿入されたときに、ロッキングディスク58とカム係合し、ロッキングディスク58の回転を引き起こし、
適切な鍵が錠10に差し込まれたとき、各ゲイティングノッチ50は、他の全てのゲイティングノッチ50に対して整列し、鍵が回されると、ロッキングバー40は、リセス42から、縦のスロット44に整列した複数のゲイティングノッチ50の中へとカム案内され、ロックシリンダー16を、複数のロッキングディスク58と共に、外側ハウジング14に対して回転させる、錠10に用いられる鍵であって、
シャンク上に有底の擂り鉢形の窪み82を有し、窪み82は異なった深さと大きさを有しており、鍵が錠10に完全に挿入されたときにロッキングディスク58上の突起76と場所が一致するように、鍵のシャンクの上に間をおいて配置され、各窪み82の深さは、ロックシリンダー16に対して、ロッキングディスク58の異なった角運動をもたらし、その結果、ロッキングディスク58外周のゲイティングノッチ50の位置は、突起76に係合することになっている窪み82の深さによって決定される鍵。」

(6)甲第6号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。

ア 「(作用)
このシリンダ錠装置では、内筒5の鍵孔7に鍵板9を挿入すると、鍵板9の操作凹部13又は操作凹部14或いは該操作凹部間の鍵板側面に各受動突起14が押されて、各ディスクタンブラ2が内筒5の受溝6に沿って上下摺動し、鍵板9が所定長さだけ充分に挿入された段階では、特定のディスクタンブラ2の受動突起14が特定の操作凹部13、14に係合する。
これによって各ディスクタンブラ2の錠止端部が錠本体1の溝部3、4から脱出するため、錠本体1に対する内筒5の錠止が解除され、内筒5は錠本体1内で回転可能となる。そこで、鍵板9を所定方向に回すと、止め金板20が解錠位置に回動し、固定枠体に対する取付パネル23の施錠が解除される。」(4欄18?31行)

イ 「前記鍵孔7も該横方向中心線1_(1)に関して上下対称で該縦方向中心線1_(2)に関して左右対称に形成されている。」(5欄3?4行)

ウ 「(考案の効果)
以上のように本考案のディスクタンブラ型シリンダ錠装置では、内筒5の受溝6を上下対称及び左右対称に形成し、該受溝6の中央部に鍵孔7を貫通させ、バネ受孔8を該鍵孔7の上下両側部分の中央部に縦長に設け、ディスクタンブラ2の外周形状を左右対称に形成し、該ディスクタンブラ2の中央部に鍵板9の挿入用透孔10を設け、バネ受切欠11を該透孔10の錠止端部2a側の孔縁部中央に縦長に設け、錠止端部2aとは反対側の透孔10の孔縁部に受動突起14を左右一側にずらせて突設してあるため、受溝6に対するディスクタンブラ2の組込み方向が一方向に限定されず、複数枚のディスクタンブラ2の一部又は全部を上下半転して挿入したり、表裏半転して挿入したり、上下半転と表裏半転を共にして挿入することができ、これによって複数の受動突起14で形成されるキーウェイを様々に変更することができ、鍵違いを飛躍的に多くすることができる。」(6欄1?17行)

エ 第3、4、6?9図をみると、鍵板9の操作凹部12、13が有底で、複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みとして形成されていることがみてとれる。

(7)甲第7号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 「鍵1の側面に任意位置と任意深さに解錠穴2a、2b、2c……を設け、錠前3のシリンダー4に鍵孔5を穿設し、該鍵孔5に直交する方向を有する数個のタンブラー嵌入孔9を穿設し、該タンブラー嵌入孔9にタンブラー6を発条7を介して埋設し、該タンブラー6に前記鍵1の解錠穴に適合すべき位置と突出度を夫々有し、該解錠穴に挿入可能に先端を先細状に成形した解錠穴と同数の解錠突起8を錠前3の鍵孔5方向に突出するよう斜状に突設したことを特徴とする解錠装置。」(実用新案登録請求の範囲)

イ 「本案は鍵に解錠穴と又之に適合すべき斜状の突起を錠前のタンブラーに設け、両者の複雑な適合によってのみ解錠出来る様にした解錠装置に係るもので、使用者以外の者の解錠の困難な解錠装置を提供せんとするものである。」(1欄27?31行)

ウ 「…タンブラー6の中央部には下方より鍵貫通孔15を穿設する。該鍵貫通孔15に解錠突起8を、該孔15を一部遮る如く突設する…」(2欄33?35行)

エ 第2?4図をみると、タンブラー6の鍵貫通孔15の開口端縁に先端を先細状に成形した解錠突起8が一体に突設されていること、また、鍵1の解錠穴2a、2b、2cが有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みとして形成されていることがみてとれる。

(8)甲第8号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、「電気機器用錠の鍵」(意匠に係る物品)の意匠について、次の事項が記載されている。

ア 正面図、A-A線断面図は次のものである。


イ 正面図、A-A線断面図をみると、ブレードに有底で複数種類の大きさを有する摺り鉢形の窪みを形成した「電気機器用錠の鍵」がみてとれる。

(9)甲第9号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第9号証には、「鍵材」(意匠に係る物品)の意匠について、次の事項が記載されている。

ア 山切り加工状態を示す参考正面図は次のものである(審決で右90°回転させた。)。


イ 山切り加工状態を示す参考正面図をみると、ブレードに有底で複数種類の大きさの摺り鉢形の窪みを形成した「鍵材」がみてとれる。

(10)甲第10号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第10号証には、次の事項が記載されている。

「鍵(A)は断面大略矩形状の帯板状で、その鍵片部における側面(A_(1))に鍵部(10)を、ピンタンブラ(6)をレベル合致状態に作動し得るよう所定の深さ関係に凹設する、一方板面(A_(2))にはその両面に鍵部(11)(11)を、ピンタンブラ(7)(7)をレベル合致状態に作動し得るよう所定の深さ関係に凹設する。
各鍵部(10)(11)(11)は夫々大略倒円錐台形状に凹設形成する。」(明細書4頁3?10行)

(11)甲第11号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第11号証には、次の事項が記載されている。

「【0012】

鍵孔11に挿入されるキーKは、先端に傾斜面14が形成され、挿入されたときに各タンブラピン13と相対するディンプル15a?15eが設けられる(図2及び図4参照)。
【0013】
ディンプル15a?15eは、小判形状のアウトラインをもった凹状に形成され、底面には楔状の斜面を有する楔状凹部16が設けられる(図5参照)。
楔状凹部16の向きは、それぞれキーの幅方向に対して設定した角度を有し、本実施例では、ディンプル15aの楔状凹部16は反時計方向に15度、ディンプル15bの楔状凹部16は時計方向に15度、ディンプル15cの楔状凹部16は反時計方向に30度、ディンプル15dの襖状凹部16は0度、ディンプル15eの楔状凹部16は時計方向に15度の角度を有する(図4参照)。」

(12)甲第12号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第12号証には、次の事項が記載されている。

ア 「第1図、第2図及び第3図を説明すると、キー1の平面にタンブラーピン4、17に合致し、鍵違いを構成する挿入穴11とタンブラーピン4、17を挿入させない部分10とタンブラーピン4、17を途中までしか挿入させない様に穴11を皿もみして面取りした穴12と穴13がある。」(1欄28?33行)

イ 「…又、キーの穴は図面に示すものは貫通穴になっているが凹穴にしてしもよく、又皿穴の様に面取りだけで円錐状になっていてもよい。」(4欄27?30行)

(13)甲第13号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第13号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0021】図において、1は、錠の鍵2によって回動可能な錠シリンダ3を収容する錠本体を示す。特に、本発明の両方向に操作可能な実施例を示す図1を参照して、錠シリンダ3は、錠の開放組合せを決め且つ錠シリンダ3に回動不能に支持された中間円板5によって互いから分離された、一組のコードロック円板4を囲う。さらに、円板4、5を含む円板の組の各端に、錠の中で鍵が回動されるとき、鍵と共に連続的に回動する、所謂リフトゼロのロック円板6がある。ロック作用の観点からは、特に最前部ゼロロック円板が該円板の組の鍵挿入端で最初の円板である必要がないが、実際にはしばしばこれがあり得る。ロック円板4及び6は、鍵用の対抗面を含む、それぞれ、鍵開口4a及び6a並びに両回動方向に、それぞれ、周辺切欠き4b及び6bを有する。」

イ 「【0026】図1の錠機構の基本作用によれば、該機構を開け又は解放すべきときは、錠の鍵2によってロック円板4及び6が回動される。特に、各ロック円板が問題のロック円板のために該鍵に作った組合せ面によって決る通りに回動し、周辺切欠き4b又は6bがそれぞれ錠シリンダ3のスロット8及びロックバー7の位置にあるようにする。それで、周辺切欠き4b及び6bで一様なチャンネルができ、その中へロックバー7が動け、それによって錠シリンダ3を錠本体1に対して回動できるように解放する。」

ウ 図5a?5g、図7、図8a?8c、及び図9a、9bをみると、コードロック円板4が、その中央部に鍵用の対抗面を含む鍵開口4aを有するとともに、その周囲にロックバー7が入る周辺切欠き4bを有し、環状に成形されたものであることがみてとれる。

(14)甲第14号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第14号証には、次の事項が記載されている。

ア 「(1)外筒と内筒との間にサイドバー、内筒中に前記サイドバーの動作を規制する複数のディスクを配備した錠装置において、前記各ディスクは、サイドバーと直交して往復動自在に配備され、それぞれ面内にはスリット状鍵孔および鍵孔の対角線上に位置したコーナ部に鍵の傾斜刻みに適合する高さおよび傾斜角の突部を形成すると共に、一側辺にはサイドバーの係合する凹部、他の側辺には、該凹部をサイドバー位置からずらせるバネを連繋して成るを特徴とする錠装置。
(2)ディスクは、金属板の打抜き成形体である特許請求の範囲第1項記載の錠装置。
(3)ディスクの凹部はサイドバーの端部断面形状に適合する形状に形成されている特許請求の範囲第1項記載の錠装置。」(特許請求の範囲)

イ 「…ディスク4は、内筒1の装填部21に適合する幅および内筒直径より摺動分だけ短い長さの金属製平板に形成し、装填部21中ヘサイドバー3に直交してそれぞれ往復可能に配備され、面内には、鍵軸断面と一致するスリット状の鍵孔41および鍵孔41の対角線上に位置したコーナ部に、鍵を挿入したとき、対応する鍵の傾斜刻みに適合する高さおよび傾斜角の突部42を形成している。また各ディスク4のサイドバー3と対応する側辺には、突部42の高さに応じて鍵孔方向に位置をずらせてサイドバー3の適合する凹部43、該凹部の側方には多数のV状凹凸部45を形成している。更に、他の側辺には凹部44を形成して内筒2のバネ装填部23に係合したU状復帰バネ7の両バネ片71を係合し、各凹部43をサイドバー3の位置からずらせている。」(3頁左上欄14行?右上欄10行)

ウ 第1、3、4図をみると、鍵孔16は内筒2の中心軸線に関して点対称であることがみてとれる。

(15)甲第15号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第15号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0009】
ケース1に回動可能に嵌挿されるロータ5は、前端部に鍔部6が周設され後部に角軸部7が延設され、角軸部の角に雄ねじ8が螺設される(図1参照)。
鍔部6の外周面に、鍵孔9を有するキャップ10が嵌着され、ロータ5の前端部の開口11にピン12の両端部が固着され、ピン12に枢着されるシャック13が、ピン12に巻回されるスプリング14により、鍵孔9を閉鎖する方向に付勢される(図6参照)。
【0010】
ロータ5の内部に形成される収容室15は、前部の開口11に連通し、収容室15に設けられる隔壁16により4つの区画に区分される(図1参照)。
ロータ5の外周面に設けられるバー挿入孔18は、ロータ5の長手方向に平行な長溝18aと、長溝18aより収容室15に貫通する細長孔18bとにより構成される(図2参照)。
収容室15の内壁面には、バー挿入孔18の反対側に穿設された孔により、後述するディスクタンブラ23の突起26が係合する突起係合部19が形成される。
……
【0013】
収容室15の各区画にそれぞれ挿入されるディスクタンブラ23は、ほぼ中央部にキー挿入孔24が設けられ、外周面のー側(図2において右側)に、サイドバー20の後端部20bが係脱する係合溝25が設けられ、他側に突起26が形成される。
突起26は、収容室15の突起係合部19に係入するが、突起係合部19に対して滑り接触が可能である。
【0014】
ディスクタンブラ23の右側上面と収容室15の上壁面との間にスプリング27が挿入され、ディスクタンブラ23は、突起26を支点として時計方向に付勢され(図2参照)、キー挿入孔24がキーに押されたときに、ディスクタンブラ23が反時計方向に回動して、係合溝25とバー挿入孔18が一致し、サイドバー20が係合溝25に係入するようになっている。
【0015】
キー挿入孔24は、突起26と係合溝25のほぼ中央に位置するので、突起26を支点としてディスクタンブラ23が回動するとき、係合溝25の移動量はキー挿入孔24の移動量の約2倍になる。
…」

イ 「【0019】
正規のキーを鍵孔9に挿通すると、キーが各ディスクタンブラ23のキー挿入孔24の内面を押動し、各ディスクタンブラ23は突起26を支点として反時計方向に回動し、係合溝25がバー挿入用孔18に一致する(図3参照)。
次に、キーに解錠方向の回動力を加えると、ロータ5と共に回動しようとするサイドバー20の先端部20aがケース1のバー挿入溝22から押し出され、後端部20bが係合溝25に挿入されるので、ロータ5が回動可能になり(図4参照)、キーにより解錠操作することができる。」

ウ 上記アを踏まえて図6をみると、鍵孔9はロータ5の中心軸線に関して点対称であることがみてとれる。

(16)甲第16号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第16号証には、次の事項が記載されている。

ア 「扉に固定される外筒1と、該外筒1に回転可能に収容される内筒2と、該内筒2に設けた溝状孔部3に収容され、外筒1の内壁面の溝部4に一部を没入することにより内筒2を錠止するロックバー5と、内筒2に収容され、鍵6の挿入時にその外周面の錠止受溝7がロックバー5の内側突部が没入可能な位置、すなわち、ロックバー5が外筒の前記溝部4から脱出可能な位置に来るまで回転する複数枚のディスクタンブラー8と、内筒2の前面の内筒カバー9と内筒2の後部の2箇所で固定され、該ディスクタンブラー8の中心部を貫く案内軸棒10とから成る回転ディスク型シリンダー錠装置。」(特許請求の範囲)

イ 「(作用)
施錠状態においてディスクタンブラー8は、各ディスクタンブラー8のバネ入れ凹部11に収容されて一端が該凹部11の壁面12に当接し、他端がスペーサー13のバネ受突起14に当接したコイルバネ15の弾発作用を受けている。ディスクタンブラー8の該バネ15による回転は、ディスクタンブラー8の停止用突起16が内筒2に設けた回転切欠17の端面に衝接することによって規制され、内筒2はロックバー5の介在によって外筒1に対して回転不能に錠止されている。
装置正面の鍵挿入口24より鍵6を挿入するとディスクタンブラー8の鍵孔18の一端面が鍵6の先端部に形成されている斜面によって押されるので、各ディスクタンブラー8は前記バネ15の弾発作用に抗して回転する。鍵山形状に対応した角度だけ各ディスクタンブラー8がそれぞれ回転したとき、各ディスクタンブラー8の錠止受溝7はロックバー5の内側凸部19が没入可能なように一直線上に整列している。
ロックバー5は上記凸部19と内筒の溝状孔部3との間に挿入されたコイルバネ20の弾発作用によって、その一部を外筒1の溝部4に没入させている。ここで、鍵6を操作して内筒2を外筒1に対して回転させる力を加えると、ロックバー5が上記溝部4の斜面に押されて該溝部4から脱出して、内側凸部19が錠止受溝に没入する。これによって内筒2とディスクタンブラー8は一体回転可能となり、案内軸棒10を中心に回転する。」(2頁左上欄19行?左下欄7行)

ウ 第3?5図、第13図をみると、ディスクタンブラー8は環状であることがみてとれる。

(17)甲第17号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第17号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0015】
【実施例】図中、1は、回転可能な内部シリンダ2をその内部に有するシリンダハウジングを示す。内部シリンダ2は、円板の堆積を包囲する。この堆積は、ロック機構の開口部の組合わせを決定する周辺ノッチ20とキー開口部7とを有し錠のキー12で回転可能な幾つかの標準的なロック用円板4と、キー開口部6を有する少くとも1つの持上げ0-ロック用円板3とを含む。ロック用円板は、キー開口部8を有する中間円板5によって相互に分離される。また、ロック機構は、その施錠位置でシリンダハウジング1に対する内シリンダ2の回転を阻止する様にシリンダハウジング1の溝30に部分的に配置されて、内部シリンダのスロット9に部分的に配置されるロック用バー10を有している。ロック用円板は、所定の位置へ錠のキー12によって回転されてもよく、その位置では、周辺ノッチ20は、均等なチャンネルを錠の軸線方向において内部シリンダ2のスロット9の位置に形成する。ロック用バー10は、シリンダハウジング1の溝30からこのチャンネルへ進入し、これにより、シリンダハウジング1に対してキーと一緒に回転する様に内部シリンダ2を解放する。…」

イ 「【0019】図2は、錠に含まれる標準的なロック用円板4を示す。ロック用円板4のキー開口部7は、2つの対称的に配置された段21を有し、段21は、キーにおいて切削されるべき組合わせ面27(図5参照)と協働する組合わせ面22と、戻し面23とを有し、戻し面23は、キーがロック機構のロックを解いた後に最初の位置に戻されるとき、案内要素14の作用の下で、上述の様にロック機構の施錠位置に対応するロック用円板4の最初の位置に戻る円板4の回転を生じさせる。また、キー開口部7は、周辺ノッチ20とキー開口部7との間の距離Aが製造技術および強さの点で充分である様に、即ち、距離Aが好ましくは少くとも1mmである様に、形成された彎曲面24を有している。」

(18)甲第18号証
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第18号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ピンタンブラー錠、ディスクタンブラー錠及びレバータンブラー錠(ロータリーディスクタンブラー錠)を含むシリンダー錠に係り、特にピッキングによる不正解錠を不可能にした新規なシリンダ錠に関する。」

イ 「【0030】…レバータンブラー錠は、合鍵の鍵溝によりタンブラー3を動かして、その自由外端縁に形成された解錠切欠19を、内筒2の母線に沿って延在するロッキングバー21の内端縁に整合させ、内筒の回動時、外筒1の内周面の母線に沿って形成された断面V字形の溝に係合するロッキングバー21を楔作用により内筒の半径方向に変位させて、内筒を回動可能にするものであり、‥」

ウ 図6をみると、従来技術のタンブラー3が、ほぼ中央に鍵穴4を形成した環状のものであることがみてとれる。

2 無効理由1について
(1)本件特許発明と甲1発明との対比
本件特許発明と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「壁」が「ベルマウス開口部を形成するように傾斜又は湾曲して」いる「リセス11」は、本件特許発明の「横断面形状が略V字形のカム溝」に相当し、甲1発明の「ボディ10」は、本件特許発明の「外筒」に相当し、甲1発明の「その壁の長手方向に延びるリセス11を有する実質的に円筒形の空洞を形成する」は、本件特許発明の「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した」に相当する。

イ 甲1発明の「中空の略円筒状」の「バレル13」は、本件特許発明の「内筒」に相当し、
甲1発明の「バレル13」は、「前面には」、「鍵16の対応する矩形のシャンクを挿入することができ」る「矩形の開口15があ」り、「各キャリア22」の「鍵16のシャンクを受け入れるのに適した形状の開口23」が「中心軸に沿って貫通し」ているから、「中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた」といえ、
さらに、甲1発明の「バレル13」は、「ボディ10」の「空洞を占め」、「ボディ10に対して角度移動可能」なので、「外筒に回転自在に嵌合し」ているといえる。

ウ 甲1発明の「バレル13内に配置されている複数の円盤状のセキュリティ・メンバー21」と「組み合わされ」る「各キャリア22」は、本件特許発明の「間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板」に相当し、
甲1発明の「等しい数のキャリア22のーつと組み合わせられ」、「バレル13内に配置され」、「中央開口があ」る「複数の円盤状のセキュリティ・メンバー21」は、本件特許発明の「上記仕切板の間の各スロットに」「挿設」された「中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラー」に相当する。

エ 甲1発明の「通常はリセス11と」「バレル13」の「壁の長手方向に延びる」「スロットを専有する長手方向に延び」、「引き込む手段」により「リセス11内に」引き込まれる「ロッキングバー14」は、
本件特許発明の「この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー」に相当する。

オ 甲1発明の「中央開口」は、「キャリア22」の「中心軸に関して点対称」の「鍵16のシャンクを受け入れるのに適した形状」の「開口23」に挿入される鍵16が通るから、本件特許発明の「中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさ」の「鍵挿通孔26」に相当する。

カ 甲1発明の「ノッチ21b」は、本件特許発明の「解錠切欠」に相当し、甲1発明の「円盤状のセキュリティ・メンバー21」は、「その実体部であり、円弧の一部をなす外周縁に」、「ノッチ21b」を有することと、本件特許発明の「環状ロータリーディスクタンブラー」の「鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙する」「実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成」することは、「環状ロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす外周縁に解錠切欠を形成する」点で共通する。

キ 甲1発明の「鍵16」、「シャンク」及び「突起24」は、本件特許発明の「鍵」、「ブレード」及び「係合突起」に、それぞれ相当し、
甲1発明の「各メンバー21には中央開口があり、その中に鍵16のシャンクの側壁の窪み25内に係合するための実質的に円周方向に延びる突起24を有」することと、
本件特許発明の「ロータリーディスクタンブラー」の「鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設」することは、
「ロータリーディスクタンブラー」の「鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された」「合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設」する点で共通する。

ク 甲1発明の「適切な鍵16がすべてのメンバー21の中央開口を通して正しく挿入されると弾性手段の影響を受けて突起24はすべて、適切な深さの窪み25に係合され」ることは、突起24が鍵16の窪み25に係合する方向に付勢されていることを意味するから、本件特許発明の「各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢する」ことに相当する。

ケ 甲1発明の「バレル13と各メンバー21の相対的な回転方向運動を」「停止手段」により「制限する」ことと、本件特許発明の「各ロータリーディスクタンブラーを」「常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止」することは、「各ロータリーディスクタンブラーの回転方向運動を制限する」点で共通する。

コ 甲1発明の「適切な鍵16がすべてのメンバー21の中央開口を通して正しく挿入されると弾性手段の影響を受けて突起24はすべて、適切な深さの窪み25に係合され、複数のメンバー21のノッチ21bとバレル13のスロットは位置合わせされ」ることは、
本件特許発明の「これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにした」ことに相当する。

サ 甲1発明の「鍵操作可能な錠」は、本件特許発明の「ロータリーディスクタンブラー錠」に相当する。

シ 甲1発明の「周囲を傾斜面で囲まれた円形の底面を有」する「窪み25」は、本件特許発明の「有底で」「摺り鉢形の窪み」に相当し、
甲1発明は、「適切な鍵16がすべてのメンバー21の中央開口を通して正しく挿入されると弾性手段の影響を受けて突起24はすべて、適切な深さの窪み25に係合され」るから、
甲1発明の「鍵16のシャンクには、周囲を傾斜面で囲まれた円形の底面を有し、大きさの異なる複数の窪み25が設けられ、窪み25は、3つの深さを選択できるようになって」いることと、
本件特許発明の「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成」することは、
「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成する」点で共通する。

ス 甲1発明の「適切な鍵16がすべてのメンバー21の開口部を通して正しく挿入されると」「突起24はすべて」、「3つの深さ」の「窪み25に係合され、複数のメンバー21のノッチ21bとバレル13のスロットは位置合わせされ、回転方向運動が鍵16に付与されるとロッキングバー14はボディ10のリセス11からバレル13のスロットと複数メンバー21の複数のノッチ21bの収納されるべき位置に移動し、バレル13とメンバー21がボディ10に対して角度移動可能とな」ることと、
本件特許発明の「この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにした」こととは、
甲1発明の「ロータリーディスクタンブラー」の支軸を中心とした「揺動」は、「回動」ともいえることを踏まえると、
「この窪みが対応する係合突起と係合したとき、タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さに対応して回動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにした」点で共通する。

セ そうすると、両者は、
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、
この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、
この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、
上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、
環状ロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす外周縁に解錠切欠を形成し、
一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、各ロータリーディスクタンブラーの回転方向運動を制限し、
他方、これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し、
この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さに対応して回動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
環状ロータリーディスクタンブラーの回動機構、及び回動軸と係合突起、解錠切欠の突設位置に関し、
本件特許発明では、環状ロータリーディスクタンブラーの実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔の開口端縁に合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、鍵挿通孔を挟んで支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成したのに対し、
甲1発明では、セキュリティ・メンバー21は、その組み合わされるキャリア22のボス部22aの周りに回転方向に移動可能に軸支される中央開口を有し、中央開口の中に鍵16のシャンクの側壁の窪み25内に係合するための実質的に円周方向に延びる突起24を有し、セキュリティ・メンバー21の実体部であり、円弧の一部をなす外周縁にノッチ21bを有する点。

<相違点2>
環状ロータリーディスクタンブラーの回転方向運動を制限する手段に関し、
本件特許発明では、各環状ロータリーディスクタンブラーを、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止するのに対し、甲1発明では、具体的な構成が不明な点。

<相違点3>
合鍵の構造に関し、本件特許発明では、リバーシブルであるのに対し、甲1発明では、リバーシブルであるか否か不明な点。

<相違点4>
合鍵の窪みに関し、本件特許発明では、窪みは、ロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である係合突起と係合したとき、タンブラー群が窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わるものであるのに対し、
甲1発明では、窪み25は、突起24が係合したとき、各セキュリティ・メンバー21が窪みの深さに対応して回動角度が変わるものである点。

(2)判断
ア 相違点2について
まず、上記相違点2について検討すると、本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成要素である環状ロータリーディスクタンブラーの回転方向運動を制限する手段の具体的構成の差異によって鍵自体の構成に差異が生じるものではないから、上記相違点2は、実質的に相違点ではない。

イ 相違点3について
鍵をリバーシブルとすることは、例えば甲第2号証及び甲第6号証に記載のように周知技術であり(上記1(2)及び(6)を参照。)、甲1発明において、鍵16をリバーシブルとすること、すなわち上記相違点3に係る本件特許発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

ウ 相違点1及び4について
上記相違点1及び4について併せて検討する。
(ア)本件特許発明における相違点1及び4に係る構成により、錠の係合突起の先端と合鍵のブレード平面部に形成された対応する窪みとの関係は以下の図から理解されるように、係合突起の先端が深い窪みに入るほどブレードの平面幅方向中心にずれるものである。

<図:本願の図10>


解錠切欠9とその右側に点線で表された3つの切欠は、解錠切欠9の形成角度が異なる4種類のロータリーディスクタンブラーが用いられることを表している。係合突起29の突出量は一定であり、換言すれば、支軸23の中心と係合突起29の先端との距離は一定であって、係合突起29が合鍵のブレードの窪み25に係入してその底面に当接したとき、窪み25の深さに応じてロータリーディスクタンブラー27の揺動角度を変化させ、解錠切欠9をロッキングバー6の内側縁に整合させるようにしている。
そうすると解錠状態では、一番左に解錠切欠9があるロータリーディスクタンブラーでは係合突起29は図のように右下に下がり、解錠切欠を右側に設けたロータリーディスクタンブラーほど時計回りに回転した位置となって係合突起29は左上に上がるから、係合突起と係合する鍵の窪みの位置と深さは、鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなり、支軸23を中心とする円弧に沿っている。
すなわち、鍵の窪みの深さに応じてその位置がブレードの幅方向において微妙に変化することとなる。
なお、本件特許の図13の実施例においても、係合突起と係合する鍵の窪みの位置と深さが支軸23を中心とする円弧に沿ったものとなる点では同様であるので、便宜上図10の実施例に基づいて検討した。
請求人は、「タンブラーの係合突起の先端」が「摺り鉢形の窪みの底面の中心に当接する」というのなら、鍵の構成に間接的に言及しているといえるが、そのような限定は本件特許請求項2に存在せず、「タンブラーの突出量が一定である係合突起の先端」と「ブレードの摺り鉢形の窪み」との係合関係が、鍵の構成を規定する記載となっていない旨主張するが、本件特許発明は、「窪みが対応する」「係合突起と係合したとき、該タンブラー群が」「摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わる」ものであって、上記検討のとおり、窪みの位置と深さが支軸を中心とする円弧に沿ったものと認められるから、採用できない。

(イ)他方、甲1発明では、窪み25の深さに応じてセキュリティ・メンバー21の回動角度が変わるものであるが、セキュリティ・メンバー21は、中央部開口においてキャリア22のボス部22aの周りに軸支され、該中央部開口の中に突起24を有するから、個々のセキュリティ・メンバー21の突起24に係合する窪み25に着目した場合、窪み25の位置と深さは、鍵のシャンクの中心に寄るものほど浅くなり、ボス部22aの中心をその中心とする円弧に沿うことになるものと解される。
しかし、甲1発明において、各セキュリティ・メンバー21の突起24の突出量が一定であるかは不明なため、鍵のシャンクに設けられた複数の窪み25のシャンクの幅方向の位置と深さの関係は不明であるし、そもそも甲第1号証には、窪み25の深さを異なるものとすることは記載されているが、上述のように、窪み25の位置と深さが、鍵のシャンクの中心に寄るものほど浅くなり、ボス部22aの中心をその中心とする円弧に沿うものであることを認識するような記載もない。

(ウ)上記(ア)及び(イ)の検討を踏まえると、上記相違点1及び4は、鍵の構成の相違としては以下のように言い換えることができる。
<相違点(1、4)>
鍵の窪みの深さとブレードの幅方向の位置は、
本件特許発明では、係合突起と係合する窪みの位置と深さは、支軸を中心とする円弧に沿ったものであるのに対し、
甲1発明では、鍵のシャンクに設けられた複数の窪み25のシャンクの幅方向の位置と深さの関係が不明である点。

(エ)そこで、上記相違点(1、4)について、改めて検討する。
その実体部の1ヵ所を内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支するレバータンブラーは、甲第2ないし4号証に記載のように周知技術である(上記1(2)ないし(4)を参照。)。
しかし、甲1発明のセキュリティ・メンバー21は、円盤状で、その中央開口において、キャリア22のボス部22aの周りに軸支されるものであって、上記周知技術のレバータンブラーとは、その形状及び動作機構(揺動軸又は回動軸と係合突起と解錠切欠との位置関係等)が異なること、並びに甲第2ないし4号証に記載された合鍵は、いずれもタンブラーに突設した突出量が一定の係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成したものでもないことに照らせば、甲1発明において、上記相違点(1、4)の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることはできない。
また、甲第6号証及び甲第8号証は、リバーシブルの鍵が周知であることの根拠として提示されたものであって、それらに記載された事項(上記1(6)及び(8)を参照。)も、甲1発明において、上記相違点(1、4)に係る本件特許発明の構成とすることを教示するものではない。
なお、請求人は、上記相違点(1、4)に係る本件特許発明の構成に関し、本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成である支軸によって鍵の構成に差異が生じるものではなく、実質的に相違点ではない旨、及び甲1発明においても鍵の窪みは、その深さとブレードの幅方向の位置が、揺動による円弧に沿ったものである旨主張するが、上記検討のとおりであっていずれも採用できない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術、並びに甲第2号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 無効理由2について
(1)本件特許発明と甲2発明との対比
本件特許発明と甲2発明とを対比する。

ア 甲2発明の「内筒部25」は、本件特許発明の「内筒」に相当し、以下同様に、「解錠切欠き28」は「解錠切欠」に相当し、「キー本体12」は「ブレード」に相当する。

イ 甲2発明の「鍵挿通切欠」と本件特許発明の「鍵挿通孔」とは、「鍵挿通部」である点で共通し、甲2発明の「C字状のレバータンブラー(29)」は回転するタンブラーであるから、本件特許発明の「環状ロータリーディスクタンブラー」と「ロータリータンブラー」である点で共通する。

ウ 甲2発明の「キー本体12の端縁部と干渉」し、「キー本体12に谷の底部3、3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき、当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わ」る「係合縁部」と、
本件特許発明の「ブレードの平面部と干渉」し、「ブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わる」「係合突起」とは、
「ブレードと干渉」し、「ブレードに形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する窪みと係合したとき、タンブラー群が前記窪みの深さや位置に対応して揺動角度が変わる」「係合部」である点で共通する。

エ そうすると、両者は、
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、
この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、
この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、
上記仕切板の間の各スロットに、中央部に点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したロータリータンブラーを挿設し、
その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するロータリータンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、
一方、鍵挿通部の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードと干渉する係合部を一体的に突設し、
各ロータリータンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、
他方、これらのタンブラー群の係合部の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリータンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリータンブラー錠の合鍵であって、
鍵孔に挿入されたときロータリータンブラーの係合部と整合するブレードに対応する窪みを形成し、この窪みが対応する係合部と係合したとき、各ロータリータンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにした
ロータリータンブラー錠用の鍵。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点5>
本件特許発明では、「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されている鍵孔を有する錠用の鍵であるのに対し、甲2発明ではそのような鍵孔を有しない錠用の鍵である点。

<相違点6>
本件特許発明では、鍵挿通部が「鍵挿通孔」であって、この「鍵挿通孔」を中央部に形成したロータリータンブラーが「環状ロータリーディスクタンブラー」である錠用の鍵であるのに対して、
甲2発明では、鍵挿通部が「鍵挿通切欠」であって、この「鍵挿通切欠」を中央部に形成したロータリータンブラーが「C字状のレバータンブラー」である錠用の鍵である点。

<相違点7>
ロータリータンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための構成について、
本件特許発明では、「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」の、その先端と、合鍵のブレード「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」との係合により、「タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより」上記整合を行うものであるのに対して、
甲2発明では、「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合縁部」と、合鍵のブレードの端縁部と干渉して、当該端縁部に形成された対応する「キー本体12の端縁部に谷の底部3、3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」との係合により、「当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって」上記整合を行うものである点。

(2)判断
ア 上記相違点5及び6について
本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成要素である鍵孔の位置やロータリータンブラーが環状かC字状かによって鍵の構成自体に差異が生じるものではないから、上記相違点5及び6は、実質的に相違点ではない。

イ 上記相違点7について
(ア)本件特許発明における上記相違点7に係る構成により、錠の係合突起の先端と合鍵のブレード平面部に形成された対応する窪みとの関係は、上記2(2)ウ(ア)における検討と同様に、係合突起の先端が深い窪みに入るほどブレードの平面幅方向中心にずれるものであり、係合突起と係合する鍵の窪みの位置と深さは、鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなり、支軸を中心とする円弧に沿っている。すなわち、鍵の窪みの深さに応じてその位置がブレードの幅方向において微妙に変化することとなる。

(イ)上記(ア)を踏まえると、上記相違点7の本件特許発明に係る構成は、鍵としては以下のa、bのとおりと解され、これらの構成が甲2発明にはない点で、両者は相違している。
a 「合鍵」の「ブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」が形成されている。
b さらに、「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」の、その先端と係合する、合鍵のブレード「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」を有するから、「鍵の窪みは、その深さとブレードの幅方向の位置が、揺動による円弧に沿ったものである」との構成を有する。

(ウ)そして、甲第6号証ないし甲第12号証に示されるブレードの「平面部」に「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」を有した鍵が周知であったとしても、それは直線的に動作するタンブラー錠用の鍵又はタンブラーの構成が不明な錠用の鍵であって、鍵の「端縁部」における「刻み」で係合する、揺動するタンブラー錠用の鍵である甲2発明の鍵を、甲第6号証ないし甲第12号証に示された鍵のブレード平面部に設けた窪みを設けたものとすることが当業者にとって容易になし得たということはできない。また、回動する円盤状のタンブラーの係合突起をブレードの平面部の窪みに係合する錠及び鍵が甲第1号証及び甲第5号証に記載のように周知であったとしても、それは、シリンダーの中心軸回りに回転する円盤状のタンブラー錠用の鍵であり、甲2発明の支軸31に揺動可能に軸支するC字状のレバータンブラー29と甲第1号証及び甲第5号証に記載された円盤状のタンブラーとは、タンブラーの形状及び動作機構(揺動軸又は回動軸と係合突起と解錠切欠との位置関係等)が異なるから、甲第1号証及び甲第5号証に記載のものから、係合突起とそれと係合するブレードの窪みのみを取り出し、甲2発明のレバータンブラー29及びブレードに適用することが当業者にとって容易になし得たということはできない。
また、甲第14及び15号証は、点対称の鍵穴が周知であること、環状のタンブラーが周知であることの根拠として提示されたものであり、甲第13号証、甲第16号証ないし甲第18号証は、環状のタンブラーが周知であることの根拠として提示されたものであって、それらに記載された事項(上記1(13)ないし(18)を参照。)も、甲2発明において、上記相違点7に係る本件特許発明の構成とすることを教示するものではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、上記相違点7に係る本件特許発明の構成に関し、鍵の技術分野においてきわめてありふれた「摺り鉢形の窪み」を回動運動する「係合突起」と組合せることは、甲第1号証及び甲第5号証に記載されたように周知であって、当該周知の技術を甲2発明に適用することは容易である旨主張するが、上記イのとおりであって採用できない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲2発明、甲第1号証、甲第6号証、甲第14号証及び甲第15号証に記載された周知技術、甲第1号証、甲第5号証及び甲第13号証ないし甲第18号証に記載された周知技術、甲第1号証及び甲第5号証に記載された周知技術、並びに甲第6号証ないし甲第12号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 無効理由3について
(1)本件特許発明と甲5発明との対比
本件特許発明と甲5発明とを対比する。

ア 甲5発明の「それを貫通する実質的に筒状の穴を有する外側ハウジング14」は、本件特許発明の「外筒」に相当し、甲5発明の「カム表面を形成する傾斜した壁52を有」する「リセス42」は、本件特許発明の「横断面形状が略V字形のカム溝」に相当し、甲5発明の「外側ハウジング14には、縦に延びるリセス42が設けられ」ることは、本件特許発明の「外筒」に「内周面の母線に沿って」「カム溝を形成した」ことに相当する。

イ 甲5発明の「その中に実質的に筒状の穴を有し、前記外側ハウジング14の前記穴で受けられ」る「ロックシリンダー16」は、本件特許発明の「この外筒に回転自在に嵌合」する「内筒」に相当し、甲5発明の「ロックシリンダー16」に「錠を作動させるために鍵を受け入れるための鍵穴24が中心軸線に沿って貫通されて設けられ」たことは、本件特許発明の「内筒」に「中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた」ことに相当する。

ウ 甲5発明の「ロックシリンダー16の穴に受け入れられて、それに対して回転可能であ」り、「複数のロッキングディスク58」を「分離」する「スペーサ60」は、本件特許発明の「間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板」に相当し、
甲5発明の「スペーサ60によって分離され」、「鍵のシャンクを受け入れるための中央に形成された開口74を有」する「複数のロッキングディスク58」と、
本件特許発明の「上記仕切板の間の各スロットに」「挿設」された「中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラー」は、
「上記仕切板の間の各スロットに挿設された中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成した環状ロータリーディスクタンブラー」の点で共通する。

エ 甲5発明の「リセス42のベース48の中に取り付けられた永久磁石46によって、引き付けられ」、「通常、リセス42を占めて」「ロックシリンダー16」に設けられた「縦のスロット44内に延び」る「ロッキングバー40」は、
本件特許発明の「この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー」に相当する。

オ 甲5発明の「ゲイティングノッチ」は、本件特許発明の「解錠切欠」に相当し、甲5発明の「各ロッキングディスク58は」、「外周」に「複数のゲイティングノッチ」を有することと、本件特許発明の「環状ロータリーディスクタンブラー」の「鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙する」「実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成」することは、「環状ロータリーディスクタンブラーの外周に解錠切欠を形成する」点で共通する。

カ 甲5発明の「鍵」、「シャンク」及び「突起76」は、本件特許発明の「鍵」、「ブレード」及び「係合突起」に、それぞれ相当し、
甲5発明の「各ロッキングディスク58」に「鍵が直線的に錠に挿入されるときに鍵と係合するために面取りされた表面78を有し、突出量が一定である突起76が前記開口74内へ実質的に半径の方向に延び」ることと、
本件特許発明の「ロータリーディスクタンブラー」の「鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設」することは、
「ロータリーディスクタンブラー」の「鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された」「合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設」する点で共通する。

キ 甲5発明の「スプリング62は、各々のロッキングディスク58の突起76を鍵に近接する方向に付勢」することは、本件特許発明の「各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢する」ことに相当する。

ク 甲5発明の「ロックシリンダー16の周辺に設けられたリセス70に受け入れられた縦に延びるサポートメンバー68」は、本件特許発明の「内筒を軸線方向に貫通するバックアップピン」に相当し、
甲5発明の「ロッキングディスク58の周囲に形成した第2の肩72が、ロックシリンダー16の周辺に設けられたリセス70に受け入れられた縦に延びるサポートメンバー68に接触しており、鍵の挿入の前に、お互いに対してディスクの整列を引き起こ」すことは、
本件特許発明の「各ロータリーディスクタンブラーを」「常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止」することに相当する。

ケ 甲5発明の「適切な鍵が錠10に差し込まれたとき」、「突起76」が「窪み82」に係合し、「各ゲイティングノッチ50は、他の全てのゲイティングノッチ50に対して整列し、鍵が回されると、ロッキングバー40は、リセス42から、縦のスロット44に整列した複数のゲイティングノッチ50の中へとカム案内され」ることは、
本件特許発明の「これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにした」ことに相当する。

コ 甲5発明の「錠10」は、本件特許発明の「ロータリーディスクタンブラー錠」に相当する。

サ 甲5発明の「有底の擂り鉢形の窪み82」は、本件特許発明の「有底で」「摺り鉢形の窪み」に相当し、
甲5発明の「適切な鍵が錠10に差し込まれたとき」、「ロッキングディスク58」の「突出量が一定である突起76」が係合する「異なった深さと大きさを有」する「有底の擂り鉢形の窪み82を」「シャンク上に」有することは、
本件特許発明の「鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成」することに相当する。

シ 甲5発明の「適切な鍵が錠10に差し込まれたとき」、「突起76」が「異なった深さと大きさを有」する「窪み82」に係合し、「各ゲイティングノッチ50は、他の全てのゲイティングノッチ50に対して整列し、鍵が回されると、ロッキングバー40は、リセス42から、縦のスロット44に整列した複数のゲイティングノッチ50の中へとカム案内され、ロックシリンダー16を、複数のロッキングディスク58と共に、外側ハウジング14に対して回転させる」ことと、
本件特許発明の「この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにした」こととは、
甲1発明の「ロータリーディスクタンブラー」の支軸を中心とした「揺動」は、「回動」ともいえることを踏まえると、
「この窪みが対応する係合突起と係合したとき、タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さに対応して回動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにした」点で共通する。

ス そうすると、両者は、
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、
この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、
この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、
上記仕切板の間の各スロットに、中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、
環状ロータリーディスクタンブラーの外周に解錠切欠を形成し、
一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入された合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、
他方、これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し、
この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さに対応して回動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、
以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点8>
環状ロータリーディスクタンブラーの回動機構、及び回動軸と係合突起、解錠切欠の突設位置に関し、
本件特許発明では、環状ロータリーディスクタンブラーの実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔の開口端縁に合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、鍵挿通孔を挟んで支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成したのに対し、
甲5発明では、ロッキングディスク58は、ロックシリンダー16に対して回転可能であり、鍵と係合する突起76が、ロッキングディスク58の中央に形成された開口74内へ実質的に半径の方向に延び、ロッキングディスク58の外周にゲイティングノッチ50を有する点。

<相違点9>
鍵穴の構成に関し、本件特許発明では、内筒の中心軸線に対して点対称に形成されている鍵孔を有するのに対し、甲5発明では、そのような構成を有するか否か不明な点。

<相違点10>
合鍵の構造に関し、本件特許発明では、リバーシブルであるのに対し、甲5発明では、リバーシブルであるか否か不明な点。

<相違点11>
合鍵の窪みに関し、本件特許発明では、窪みが対応する係合突起と係合したとき、タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わるのに対し、
甲5発明では、窪み82が対応する突起76と係合したとき、ロッキングディスク58は、窪み82の深さに対応して回動角度が変わるが、窪み82のシャンクの幅方向の位置に対応して回動角度が変わるか否かは不明な点。

(2)判断
ア 相違点9について
まず、上記相違点9について検討すると、本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成要素である鍵穴の構成の差異によって鍵自体の構成に差異が生じるものではないから、上記相違点9は、実質的に相違点ではない。

イ 相違点10について
鍵をリバーシブルとすることは、甲第2号証及び甲第6号証に記載のように周知技術であり(上記1(2)及び(6)を参照。)、甲5発明において、鍵をリバーシブルとすること、すなわち上記相違点10に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 相違点8及び11について
上記相違点8及び11について併せて検討する。
(ア)本件特許発明における上記相違点8及び11に係る構成により、錠の係合突起の先端と合鍵のブレード平面部に形成された対応する窪みとの関係は、上記2(2)ウ(ア)における検討と同様に、係合突起の先端が深い窪みに入るほどブレードの平面幅方向中心にずれるものであり、係合突起と係合する鍵の窪みの位置と深さは、鍵のブレードの中心に寄るものほど深くなり、支軸を中心とする円弧に沿っている。
すなわち、鍵の窪みの深さに応じてその位置がブレードの幅方向において微妙に変化することとなる。

(イ)他方、甲5発明では、窪み82の深さに応じてロッキングディスク58の回動角度が変わるものであるが、ロッキングディスク58は、ロックシリンダー16に対して回転可能であり、鍵と係合する突起76が、ロッキングディスク58の中央に形成された開口74内へ実質的に半径の方向に延びるから、突起76と係合する鍵の窪み82の位置と深さは、鍵のシャンクの中心に寄るものほど浅くなり、ロックシリンダー16の中心軸線を中心とする円弧に沿うことになるものと解される。
なお、そもそも甲第5号証には、窪み82の深さを異なるものとすることは記載されているが、上述のように、窪み82の位置と深さが、鍵のシャンクの中心に寄るものほど浅くなり、ロックシリンダーの中心軸線を中心とする円弧に沿うものであることを認識するような記載はない。

(ウ)上記(ア)及び(イ)の検討を踏まえると、上記相違点8及び11は、鍵の構成の相違としては以下のように言い換えることができる。
<相違点(8、11)>
鍵の窪みの深さとブレードの幅方向の位置は、
本件特許発明では、係合突起と係合する窪みの位置と深さは、支軸を中心とする円弧に沿ったものであるのに対し、
甲5発明では、突起76と係合する窪み82の位置と深さは、ロックシリンダー16の中心軸線を中心とする円弧に沿ったものである点。

(エ)そこで、上記相違点(8、11)について、改めて検討する。
その実体部の1ヵ所を内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支するレバータンブラーは、甲第2ないし4号証に記載のように周知技術である(上記1(2)ないし(4)を参照。)。
しかし、甲5発明のロッキングディスク58は、ロックシリンダー16の中心軸線に対して回転可能であって、上記周知技術のレバータンブラーとは、その形状及び動作機構(揺動軸又は回動軸と係合突起と解錠切欠との位置関係等)が異なること、並びに甲第2ないし4号証に記載された合鍵は、いずれもタンブラーに突設した係合突起と係合する窪みをブレードの平面部に形成したものでもないことに照らせば、甲5発明において、上記相違点(8、11)の構成とすることが当業者にとって容易であるとすることはできない。
また、甲第1号証、甲第6号証ないし甲第12号証は、複数種類の大きさと深さを有する擂り鉢状の窪みを設けた鍵が周知であること、リバーシブルの鍵が周知であること、又は点対称の鍵穴が周知であることの根拠として提示されたものであり、甲第14号証及び甲第15号証は、点対称の鍵穴が周知であることの根拠として提示されたものであって、それらに記載された事項(上記1(1)、(6)?(12)、(14)及び(15)を参照。)も、甲5発明において、上記相違点(8、11)に係る本件特許発明の構成とすることを教示するものではない。

エ 請求人の主張について
請求人は、上記相違点(8、11)に係る本件特許発明の構成に関し、本件特許発明は「鍵」であり、錠の構成である支軸によって鍵の構成に差異が生じるものではなく、実質的に相違点ではない旨、及び甲5発明においても鍵の窪みは、その深さとブレードの幅方向の位置が、揺動による円弧に沿ったものである旨主張するが、上記ウのとおりであっていずれも採用できない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲5発明、甲第1号証、甲第6号証、甲第14号証及び甲第15号証に記載された周知技術、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術、甲第2号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載された周知技術、並びに甲第1号証及び甲第6号証ないし甲第12号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張する無効理由によっては、本件特許発明の特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-10 
結審通知日 2015-11-13 
審決日 2015-11-25 
出願番号 特願2002-226833(P2002-226833)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (E05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 住田 秀弘多田 春奈  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 谷垣 圭二
中田 誠
登録日 2007-09-07 
登録番号 特許第4008302号(P4008302)
発明の名称 ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵  
代理人 三浦 光康  
代理人 皆川 由佳  
代理人 栢原 崇行  
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