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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1328556
審判番号 不服2015-18958  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-21 
確定日 2017-05-24 
事件の表示 特願2011-130419「有機発光表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日出願公開、特開2012- 23028〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年6月10日(パリ条約による優先権主張 2010年7月14日,韓国)に出願した特願2011-130419号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成27年 2月19日:拒絶理由通知(同年同月24日発送)
平成27年 5月22日:意見書
平成27年 5月22日:手続補正書
平成27年 6月29日:拒絶査定(同年7月7日送達) (以下「原査定」という。)
平成27年10月21日:審判請求
平成27年10月21日:手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 補正の却下の決定
[結論]
平成27年10月21日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1,4,7及び8の記載は,以下のとおりである(以下,この請求項8に係る発明を,「本願発明」という。)。
「【請求項1】
基板と,
前記基板上に配される素子回路部と,
前記素子回路部と電気的に連結される画素電極と,
有機物からなり,前記画素電極を露出させる画素定義膜と,
前記画素電極上に配されて光を放出する中間層と,
前記画素定義膜上に形成される第1イオン注入層と,を備え,
前記第1イオン注入層は,前記画素定義膜にイオンを注入して形成され,
前記イオンは,BHx+またはPH+であることを特徴とする有機発光表示装置。」

「【請求項4】
前記画素電極と前記画素回路部との間に配され,前記画素回路部を覆う平坦化膜をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の有機発光表示装置。」

「【請求項7】
前記平坦化膜上には第2イオン注入層が配されることを特徴とする請求項4に記載の有機発光表示装置。」

「【請求項8】
前記第2イオン注入層は,前記平坦化膜上にイオンを注入して形成されることを特徴とする請求項7に記載の有機発光表示装置。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,この記載に係る発明を,「本件補正後発明」という。)。なお,下線は当合議体が付したものである(以下同じ。)。
「【請求項1】
基板と,
前記基板上に配され,ソース/ドレイン電極を有する薄膜トランジスタである画素回路部と,
前記画素回路部と電気的に連結される画素電極と,
前記画素電極と前記画素回路部との間に配され,前記画素回路部を覆う平坦化膜であって,前記画素回路部の前記ソース/ドレイン電極を覆う平坦化膜と,
有機物からなり,前記画素電極を露出させる画素定義膜と,
前記画素電極上に配されて光を放出する中間層と,
前記画素定義膜上に形成される第1イオン注入層と,
前記平坦化膜上に形成される第2イオン注入層と,を備え,
前記第1イオン注入層は,前記画素定義膜にイオンを注入して形成され,
前記第2イオン注入層は,平坦化膜にイオンを注入して形成され,
前記イオンは,BHx+またはPH+であることを特徴とする有機発光表示装置。」

2 補正の適否
本件補正のうち,請求項1に係る補正は,本件補正前の請求項1を削除し,本件補正前の請求項8を独立形式の記載に改めて新たな請求項1とするものである。そして,「素子回路部」とあったところを「画素回路部」の記載に揃えるとともに,本件補正後の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「画素回路部」について,明細書の段落【0039】,【0040】及び図1などに記載された事項に基づいて,「ソース/ドレイン電極を有する薄膜トランジスタである」という限定を付加するとともに,本件補正後の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「平坦化膜」について,明細書の段落【0054】及び図3などに記載された事項に基づいて,「前記画素回路部の前記ソース/ドレイン電極を覆うもの」であるとの限定を付加するものである。
そして,補正前の請求項8に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正の上記限定を付加する補正は,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するところはない。
そこで,本件補正後発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下,検討する。

(1)本件補正後発明
本件補正後発明は,上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載及び引用発明
ア 引用例1の記載
本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2005-150105号公報(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。

(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,電極間に発光材料を挟んだ素子(以下,発光素子という)を有する表示装置及びその作製方法に関する。特に,EL(エレクトロルミネッセンス:Electro Luminescence)が得られる発光性材料(以下,EL材料という)を用いた表示装置に関する。」

(イ) 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,封止構造により,EL素子で形成される表示領域を密封して,外部から侵入する水分を遮断しても,EL表示装置の劣化を完全に防ぐことが出来なかった。すなわち,画素内における点状の非発光領域(発光輝度が部分的に低下する領域も含む)の形成やその拡大による不良(以下「ダークスポット」ともいう。),画素周辺からの非発光領域が経時的に拡大する不良(以下「シュリンク」ともいう。)を無くすことが出来なかった。」

(ウ) 「【0014】
本発明では,耐熱性平坦化膜,第1電極または絶縁層(隔壁)に一導電型の不純物元素である周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素をドーピング処理することで添加する。ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行えば良い。周期律13族もしくは15族の元素として,B,Al,Ga,In,Tl,P,As,Sb,Biの元素を用いることができ,典型的にはリン(P),ボロン(B)を用いる。比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する。また,ドーピング処理自体のベーク効果により,水分を処理時に放出できる。第1の電極にも周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって,抵抗値などの物性を制御することができる。」

(エ) 「【0040】
また,TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり,例えば,トップゲート型TFT,ボトムゲート型(逆スタガ型)TFT,または順スタガ型TFTに適用することが可能である。」

(オ) 「【発明の効果】
【0042】
隔壁に用いる絶縁層に,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することにより,絶縁層の表面及び側面が改質され高密度となり,外部から進入する水分や絶縁層中に含まれる水分が放出され,ELに作用することを防止できる。よって,ダークスポットやシュリンクなど様々な劣化を防止することができ,表示装置の信頼性を向上させることができる。」

(カ) 「【0045】
[実施形態1]
本発明の実施形態について,以下に説明する。
(中略)
【0091】
ゲート絶縁膜105をエッチングし,ソース領域,ドレイン領域に達する開口部を形成する。開口部は,耐熱性平坦化膜109をエッチングした後,再度マスクを形成するか,エッチングされた耐熱性平坦化膜109をマスクとして,絶縁膜108及びゲート絶縁膜105をエッチングし,開口部を形成すればよい。エッチング用ガスにCHF_(3)とArを用いてゲート絶縁膜105のエッチング処理を行う。上記条件のエッチングにより,エッチング残渣を低減し,凹凸の少ない平坦性の高いコンタクトホールを形成することができる。なお,より半導体層上に残渣を残すことなくエッチングするためには,10?20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。以上の工程で,コンタクトホール130が形成される(図1(B)参照。)。
【0092】
金属膜を形成し,金属膜をエッチングして各不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線112を形成する。配線112はソース電極,ドレイン電極としても機能する。金属膜は,アルミニウム(Al),チタン(Ti),モリブデン(Mo),タングステン(W)もしくはシリコン(Si)の元素からなる膜又はこれらの元素を用いた合金膜を用いればよい。なお本実施形態では,TiN,Al,TiNをこの順にそれぞれ100,350,100nmと積層したのち,所望の形状にパターニングして,配線を形成する(図1(C)参照。)。なお,TiNは,耐熱性平坦化膜との密着性が良好な材料の一つである。耐熱性平坦化膜に,アルキル基を含む酸化珪素(SiOx)を用い,配線としてTiを積層すると,その界面でSi-O-Tiという結合が生じ,O-Tiという結合aが生じる。一方,配線としてTiNを積層すると,その界面でSi-N-Tiという結合が生じ,Si-Nという結合b,N-Tiという結合cが生じる。結合aであるO-Ti結合力は弱いため,密着性が悪い。しかし,Si-Nの結合b,及びN-Tiの結合cの結合力は強いため,密着性がよく,ピーリングなどの膜はがれが生じにくい。加えて,TFTのソース領域またはドレイン領域とコンタクトを取るためにTiNのN含有量は44atomic%より少なくすることが好ましい。なおより望ましくはTiNのN含有量は7atomic%より多く,44atomic%より少なくするとよい。また,導電膜をTiNとAlの2層構造にして工程を簡略化してもよい。」

(キ) 「【0109】
[実施形態2]
本実施形態を図3乃至5を用いて詳細に説明する。
【0110】
本実施形態では,耐熱性平坦化膜,第1の電極,絶縁層(隔壁)に対してそれぞれ形成後に周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素のドーピング処理を行う。
【0111】
実施形態1で説明したように,基板300上に下地膜301a,301bを形成し,不純物領域303及び304を有する半導体層302を形成する。半導体層302上にゲート絶縁膜305を介してゲート電極である導電層306及び307を形成し,パッシベーション膜として絶縁膜308を形成する。そして,層間膜として,耐熱性平坦化膜309を形成する(図3(A)参照。)。ここまでの工程についての詳細(材料,形成条件等)は実施形態1を参照すればよい。本実施形態においては,耐熱性平坦化膜309にシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜を用いる。
【0112】
本実施形態においては,レジストからなるマスクを用いて耐熱性平坦化膜309にコンタクトホール(開口部)330を形成すると同時に周縁部の耐熱性平坦化膜を除去した後に,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を有するガス315を耐熱性平坦化膜309にドーピングし,添加領域316を形成する(図3(B)参照。)。
【0113】
ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行えば良い。周期律13族もしくは15族の元素として,B,Al,Ga,In,Tl,P,As,Sb,Biを用いることができ,典型的にはリン(P),ボロン(B)を用いる。比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する。また,ドーピング処理自体のベーク効果により,水分を処理時に放出できる。高密度化した部分(添加領域316)に含まれる周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素は,1×10^(18)?5×10^(21)/cm^(3),代表的には2×10^(19)?2×10^(21)/cm^(3)の濃度範囲とする。なお,端部をテーパー形状とすると,耐熱性平坦化膜の側面にドーピングしやすくなる。
【0114】
また,コンタクトホール330形成後,導電性を有する元素をコンタクトホールの周辺に添加する場合,コンタクトホール周辺部を高密度化するだけでなく,コンタクトホール下の半導体層にも導電性を有する元素を,同工程で添加することができる。本実施形態においては,pチャネル型の不純物領域を有する半導体層に,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素としてボロン(B)を添加するので,半導体層に高濃度不純物領域331を自己整合的に形成することができる。また同工程で耐熱性平坦化膜も高密度化と,高濃度不純物領域の形成が行えるので,工程数を増加することなく,表示装置の信頼性の向上と,所望の電気特性に制御することが可能となる。このように不純物濃度を制御して,所望な不純物領域を作製する工程は,本発明の他の実施形態1,3乃至5,実施例1乃至6に対しても適用することができる。
【0115】
次に配線312を形成し,配線312と接するように第1の電極313を形成する(図3(C)参照。)。本実施形態では,TiN,Al,TiNをこの順にそれぞれ100,350,100nmと積層したのち,所望の形状にパターニングして,配線312を形成する。なお,TiNは,耐熱性平坦化膜との密着性が良好な材料の一つである。
【0116】
本実施形態では,表示素子として発光素子を用い,発光素子からの光を第1の電極側から取り出す構造のため,第1の電極が透光性を有する。第1の電極として,透明導電膜を形成し,所望の形状にエッチングすることで第1の電極313を形成する。第1の電極313として,ITO,IZO,ITSOの他,酸化インジウムに2?20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いることができる。本実施形態では,第1の電極313としてITSOを用いている。ITSOは,ベークを行ってもITOのように結晶化せず,アモルファス状態のままである。従って,ITSOは,ITOよりも平坦性が高く,有機化合物を含む層が薄くとも陰極とのショートが生じにくい。第1の電極313は,その表面が平坦化されるように,CMP法,ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し,研磨しても良い。またCMP法を用いた研磨後に,第1の電極313の表面に紫外線照射,酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
【0117】
本実施形態では,第1の電極313形成後,第1の電極313及び耐熱性平坦化膜309の一部に周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を有するガス325のドーピング処理を行う。周期律13族もしくは15族の元素として,B,Al,Ga,In,Tl,P,As,Sb,Biを用いることができ,典型的にはリン(P),ボロン(B)を用いる。ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行えば良い。本実施形態では,pチャネル型の周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素であるボロン(B)を有するガス325をドーピングし,添加領域317を形成する(図3(D)参照。)。本発明によって第1の電極の添加領域317においては,導電性を有する元素の添加によって抵抗値などの物性が変化する。よって,本発明により,電極の電気的物性(電気特性)を制御することができる。
【0118】
次に,第1の電極313の端部,配線312を覆う絶縁層(絶縁物)314(バンク,隔壁,障壁,土手などと呼ばれる)を形成する。絶縁層314としては,塗布法により得られるSOG膜(例えば,アルキル基を含むSiOx膜)を膜厚0.8μm?1μmの範囲で用いる。エッチングには,ドライエッチングとウェットエッチングのどちらかを用いることができるが,ここではCF_(4)とO_(2)とHeの混合ガスを用いたドライエッチングにより絶縁層314を形成する。圧力は5Pa,1500Wで,CF_(4)25sccm,O_(2)25sccm,He50sccmでドライエッチングを行う。このドライエッチングにおいて,アルキル基を含むSiOx膜のエッチングレートは500?600nm/min,一方,ITSO膜のエッチングレートは10nm/min以下であり十分選択比が取れる。また,配線312は,アルキル基を含むSiOx膜からなる絶縁物314に覆われるため,密着性のよいTiN膜が最表面となっている。絶縁物314は,シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜の他に,耐熱性が高く,平坦化性がよいものであれば,無機材料(酸化珪素,窒化珪素,酸化窒化珪素,窒化酸化珪素など),感光性または非感光性の有機材料(有機樹脂材料)(ポリイミド,アクリル,ポリアミド,ポリイミドアミド,レジスト,ベンゾシクロブテンなど),低誘電率であるLow k材料などの一種,もしくは複数種からなる膜,またはこれらの膜の積層などを用いることができる。
【0119】
絶縁層314の形成後,絶縁層314に周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素のドーピング処理を行う。周期律13族もしくは15族の元素として,B,Al,Ga,In,Tl,P,As,Sb,Biの元素を用いることができ,典型的にはリン(P),ボロン(B)を用いる。ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行えば良い。本実施形態では,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素であるBを有するガス335をドーピングし,添加領域318を形成する(図4(E)参照。)。本発明によって耐熱性平坦化膜及び絶縁物の添加領域318は高密度化した部分となる。比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する。また,添加領域に含まれる周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素は,1×10^(18)?5×10^(21)/cm^(3),代表的には2×10^(19)?2×10^(21)/cm^(3)の濃度範囲とする。なお,耐熱性平坦化膜の端部をテーパー形状とすると,耐熱性平坦化膜の側面にドーピングしやすくなる。
【0120】
本発明による周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素のドーピング処理によって,隔壁となる絶縁層314の添加領域318は,黒く着色する。よって,この隔壁をブラックマトリクスとしても用いることができる。よって,本発明により,隔壁は,高密度化された汚染物質遮断物としての機能と,低透過率及び低反射率を有する光学特性的に良好なブラックマトリクスとしての機能を兼ね備えることができる。従って,低コストで歩留まりよく信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0121】
本実施形態では,隔壁となる絶縁層を形成し,パターニングを行った後,第1の電極及び隔壁に周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素をドーピングしている例を示した。しかし,隔壁となる絶縁膜を形成後に全面にわたって周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素をドーピングし,着色した後,パターニングを行っても良い。この場合,このドーピング工程では,第1の電極には周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素が添加されないので,添加濃度,添加領域の箇所などが自由に決定でき,設計の幅が広がる。
【0122】
なお,信頼性を向上させるため,有機化合物を含む発光層319の形成前に真空加熱を行って脱気を行うことが好ましい。例えば,有機化合物材料の蒸着を行う前に,基板に含まれるガスを除去するために減圧雰囲気や不活性雰囲気で200℃?300℃の加熱処理を行うことが望ましい。ここでは,層間絶縁膜と隔壁とを高耐熱性を有するSiOx膜で形成しているため,高い加熱処理を加えても問題ない。従って,加熱処理による信頼性向上のための工程を十分行うことができる。
【0123】
第1の電極313(添加領域317)の上には発光層319が形成される。具体的には,正孔注入層として20nm厚の銅フタロシアニン(CuPc)膜を設け,その上に発光層として70nm厚のトリス-8-キノリノラトアルミニウム錯体(Alq_(3))膜を設けた積層構造としてもよい。Alq_(3)にキナクリドン,ペリレンもしくはDCM1といった蛍光色素を添加することで発光色を制御することができる。
【0124】
但し,以上の例は発光層として用いることのできる有機発光材料の一例であって,これに限定する必要はまったくない。発光層,電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせて発光層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。
【0125】
次に,発光層319の上には導電膜からなる第2の電極320が設けられる。本実施形態では,第1の電極を陽極として,第2の電極を陰極として機能させるので,電極320としては,仕事関数の小さい材料(Al,Ag,Li,Ca,またはこれらの合金MgAg,MgIn,AlLi,CaF_(2),またはCaN)を用いればよい。本実施形態は,第2の電極320は陰極として機能し,陽極として機能する第1の電極313側から光を取り出す構造のため,第2の電極320はAl,Ag,Li,Ca,またはこれらの合金MgAg,MgIn,AlLiからなる金属膜(膜厚50nm?200nm)を用いることが好ましい。しかし,本発明は,この構成に限定されず,画素部のTFTをnチャネル型TFTとし,第1の電極313を陰極とし,第2の電極320を陽極とすることもできる。
【0126】
第2の電極320を覆うようにしてパッシベーション膜321を設けることは有効である。パッシベーション膜としては,窒化珪素,酸化珪素,酸化窒化珪素(SiON),窒化酸化珪素(SiNO),窒化アルミニウム(AlN),酸化窒化アルミニウム(AlON),窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム(AlNO)または酸化アルミニウム,ダイアモンドライクカーボン(DLC),窒素含有炭素膜(CN)を含む絶縁膜からなり,該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。また,シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され,置換基に少なくとも水素を含む材料,もしくは置換基にフッ素,アルキル基,または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料を用いてもよい。
【0127】
次いで,封止基板323をシール材324で貼り合わせて発光素子を封止する。シール材が耐熱性平坦化膜309(添加領域316)の端部を覆うように貼りあわせる。断面からの水分の侵入がシール材によって遮断されるので,発光素子の劣化が防止でき,表示装置の信頼性が向上する。なお,シール材で囲まれた領域には充填材322を充填する(図4(F)参照。)。本実施形態では,第1の電極313側から光を取り出す構造なため,充填材322は透光性を有する必要はないが,充填材322を透過して光を取り出す構造の場合は,透光性を有する必要がある。ここでは屈折率1.50,粘度500cps,ショアD硬度90,テンシル強度3000psi,Tg点150℃,体積抵抗1×10^(15)Ω・cm,耐電圧450V/milである高耐熱のUVエポキシ樹脂(エレクトロライト社製:2500Clear)を用いる。また,充填材322を一対の基板間に充填することによって,全体の透過率を向上させることができる。
【0128】
こうして作製された表示装置は,耐熱性平坦化膜309,代表的にはシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成されるTFTの層間絶縁膜(後に発光素子の下地膜となる膜),絶縁層(隔壁)314において,端部または開口部をテーパー形状とし,さらに,比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する構造として,表示装置の信頼性を向上させている。また,第1の電極313にも周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって,抵抗値などの物性を制御することもできる。
【0129】
また,絶縁層(隔壁)314を形成後,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素のドーピング処理を行わなかった場合を図5に示す。この場合は,隔壁である絶縁層314は添加領域318を有さない。しかし耐熱性平坦化膜309が高密度化された添加領域316を有しており,水分等に対する遮断効果がある。よって,信頼性の高い表示装置とすることができる。」

(ク) 「【0148】
[実施形態4]
本実施形態を図9及び図10を用いて詳細に説明する。
【0149】
本実施形態では,耐熱性平坦化膜,及び隔壁(絶縁層)に対して,耐熱性平坦化膜,隔壁形成後にそれぞれ周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素のドーピング処理を行う。
【0150】
実施形態1で説明したように,基板900上に下地膜901a,901bを形成し,不純物領域903及び904を有する半導体層902を形成する。半導体層902上にゲート絶縁膜905を介してゲート電極である導電層906及び907を形成し,パッシベーション膜として絶縁膜908を形成する。そして,層間膜として,耐熱性平坦化膜909を形成する(図9(A)参照。)。本実施形態においては,耐熱性平坦化膜909にシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜を用いる。
【0151】
本実施形態においては,レジストからなるマスクを用いて耐熱性平坦化膜909にコンタクトホール(開口部)930を形成すると同時に周縁部の耐熱性平坦化膜を除去した後に,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を有するガス915を耐熱性平坦化膜909にドーピングし,添加領域916を形成する(図9(B)参照。)。
【0152】
ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行えば良い。周期律13族もしくは15族の元素として,B,Al,Ga,In,Tl,P,As,Sb,Biの元素を用いることができ,典型的にはリン(P),ボロン(B)を用いる。比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する。また,高密度化した部分(添加領域916)に含まれる周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素は,1×10^(18)?5×10^(21)/cm^(3),代表的には2×10^(19)?2×10^(21)/cm^(3)の濃度範囲とする。なお,端部をテーパー形状とすると,耐熱性平坦化膜の側面にドーピングしやすくなる。
【0153】
次に配線912を形成し,配線912と接するように第1の電極913を形成する(図9(C)参照。)。本実施形態では,TiN,Al,TiNをこの順にそれぞれ100,350,100nmで積層したのち,所望の形状にパターニングして,配線912を形成する。なお,TiNは,耐熱性平坦化膜との密着性が良好な材料の一つである。
【0154】
本実施形態では,表示素子として発光素子を用い,発光素子からの光を第1の電極側から取り出す構造のため,第1の電極が透光性を有する。第1の電極として,透明導電膜を形成し,所望の形状にエッチングすることで第1の電極913を形成する。第1の電極913として,ITO,IZO,ITSOの他,酸化インジウムに2?20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いることができる。本実施形態では,第1の電極913としてITSOを用いている。ITSOは,ベークを行ってもITOのように結晶化せず,アモルファス状態のままである。従って,ITSOは,ITOよりも平坦性が高く,有機化合物を含む層が薄くとも陰極とのショートが生じにくい。第1の電極913は,その表面が平坦化されるように,CMP法,ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し,研磨しても良い。またCMP法を用いた研磨後に,第1の電極913の表面に紫外線照射,酸素プラズマ処理などを行ってもよい。ここまでの工程についての詳細(材料,形成条件等)は実施形態1及び実施形態2を参照すればよい。
【0155】
次に,第1の電極913の端部,配線912を覆う絶縁層914(バンク,隔壁,障壁,土手などと呼ばれる)を形成する(図9(D)参照。)。絶縁層914としては,塗布法により得られるSOG膜(例えば,アルキル基を含むSiOx膜)を膜厚0.8μm?1μmの範囲で用いる。エッチングには,ドライエッチングとウェットエッチングのどちらかを用いることができるが,ここではCF_(4)とO_(2)とHeの混合ガスを用いたドライエッチングにより絶縁層914を形成する。圧力は5Pa,1500Wで,CF_(4)25sccm,O_(2)25sccm,He50sccmでドライエッチングを行う。このドライエッチングにおいて,アルキル基を含むSiOx膜のエッチングレートは500?600nm/min,一方,ITSO膜のエッチングレートは10nm/min以下であり十分選択比が取れる。また,配線912は,アルキル基を含むSiOx膜からなる絶縁層914に覆われるため,密着性のよいTiN膜が最表面となっている。絶縁層914は,シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜の他に,耐熱性が高く,平坦化性がよいものであれば,無機材料(酸化珪素,窒化珪素,酸化窒化珪素,窒化酸化珪素など),感光性または非感光性の有機樹材料(有機樹脂材料)(ポリイミド,アクリル,ポリアミド,ポリイミドアミド,レジスト,ベンゾシクロブテンなど),低誘電率であるLow k材料などの一種,もしくは複数種からなる膜,またはこれらの膜の積層などを用いることができる。
【0156】
絶縁層914の形成後,第1の電極913及び絶縁層914に周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素のドーピング処理を行う。周期律13族もしくは15族の元素として,B,Al,Ga,In,Tl,P,As,Sb,Biの元素を用いることができ,典型的にはリン(P),ボロン(B)を用いる。ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行えば良い。本実施形態では,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素であるBを有するガス935をドーピングし,添加領域917及び918を形成する(図10(E)参照。)。本発明によって耐熱性平坦化膜及び絶縁物の添加領域917,918は高密度化した部分となる。比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する。また,添加領域に含まれる周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素は,1×10^(18)?5×10^(21)/cm^(3),代表的には2×10^(19)?2×10^(21)/cm^(3)の濃度範囲とする。なお,端部をテーパー形状とすると,側面にドーピングしやすくなる。また,第1の電極913にも周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって,抵抗値などの物性を制御することもできる。
【0157】
本発明による周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素のドーピング処理によって,隔壁となる絶縁層914の添加領域918は,黒く着色する。よって,この隔壁をブラックマトリクスとしても用いることができる。よって,本発明により,隔壁は,高密度化された汚染物質遮断物としての機能と,低透過率及び低反射率を有する光学特性的に良好なブラックマトリクスとしての機能を兼ね備えることができる。従って,低コストで歩留まりよく信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0158】
本実施形態では,隔壁となる絶縁層を形成し,パターニングを行った後,第1の電極及び隔壁に周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素をドーピングしている例を示した。しかし,隔壁となる絶縁層を形成後に全面にわたって周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素をドーピングし,着色した後,パターニングを行っても良い。この場合,このドーピング工程では,第1の電極には周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素が添加されないので,添加濃度,添加領域の箇所などが自由に決定でき,設計の幅が広がる。
【0159】
なお,信頼性を向上させるため,有機化合物を含む発光層919の形成前に真空加熱を行って脱気を行うことが好ましい。例えば,有機化合物材料の蒸着を行う前に,基板に含まれるガスを除去するために減圧雰囲気や不活性雰囲気で200℃?300℃の加熱処理を行うことが望ましい。ここでは,層間絶縁膜と隔壁とを高耐熱性を有するSiOx膜で形成しているため,高い加熱処理を加えても問題ない。従って,加熱処理による信頼性向上のための工程を十分行うことができる。
【0160】
第1の電極913(添加領域917)の上には発光層919が形成される。具体的には,正孔注入層として20nm厚の銅フタロシアニン(CuPc)膜を設け,その上に発光層として70nm厚のトリス-8-キノリノラトアルミニウム錯体(Alq_(3))膜を設けた積層構造としてもよい。Alq_(3)にキナクリドン,ペリレンもしくはDCM1といった蛍光色素を添加することで発光色を制御することができる。
【0161】
但し,以上の例は発光層として用いることのできる有機発光材料の一例であって,これに限定する必要はまったくない。発光層,電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせて発光層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。
【0162】
次に,発光層919の上には導電膜からなる第2の電極920が設けられる。本実施形態では,第1の電極を陽極として,第2の電極を陰極として機能させるので,電極920としては,仕事関数の小さい材料(Al,Ag,Li,Ca,またはこれらの合金MgAg,MgIn,AlLi,CaF_(2),またはCaN)を用いればよい。本実施形態は,第2の電極920は陰極として機能し,陽極として機能する第1の電極913側から光を取り出す構造のため,第2の電極920はAl,Ag,Li,Ca,またはこれらの合金MgAg,MgIn,AlLiからなる金属膜(膜厚50nm?200nm)を用いることが好ましい。しかし,本発明は,この構成に限定されず,画素部のTFTをnチャネル型TFTとし,第1の電極913を陰極とし,第2の電極920を陽極とすることもできる。
【0163】
第2の電極920を覆うようにしてパッシベーション膜921を設けることは有効である。パッシベーション膜としては,窒化珪素,酸化珪素,酸化窒化珪素(SiON),窒化酸化珪素(SiNO),窒化アルミニウム(AlN),酸化窒化アルミニウム(AlON),窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム(AlNO)または酸化アルミニウム,ダイアモンドライクカーボン(DLC),窒素含有炭素膜(CN)を含む絶縁膜からなり,該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。また,シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され,置換基に少なくとも水素を含む材料,もしくは置換基にフッ素,アルキル基,または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料を用いてもよい。
【0164】
次いで,封止基板923をシール材924で貼り合わせて発光素子を封止する。シール材が耐熱性平坦化膜909(添加領域916)の端部を覆うように貼りあわせる。断面からの水分の侵入がシール材によって遮断されるので,発光素子の劣化が防止でき,表示装置の信頼性が向上する。なお,シール材で囲まれた領域には充填材922を充填する(図10(F)参照。)。本実施形態では,第1の電極913側から光を取り出す構造なため,充填材922は透光性を有する必要はないが,充填材922を透過して光を取り出す構造の場合は,透光性を有する必要がある。ここでは屈折率1.50,粘度500cps,ショアD硬度90,テンシル強度3000psi,Tg点150℃,体積抵抗1×10^(15)Ω・cm,耐電圧450V/milである高耐熱のUVエポキシ樹脂(エレクトロライト社製:2500Clear)を用いる。また,充填材922を一対の基板間に充填することによって,全体の透過率を向上させることができる。
【0165】
こうして作製された表示装置は,耐熱性平坦化膜909(代表的にはシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成されるTFTの層間絶縁膜であり,後に発光素子の下地膜となる膜),絶縁層(隔壁)914において,その端部または開口部をテーパー形状とし,さらに,比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する構造として,表示装置の信頼性を向上させている。また,第1の電極913にも周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって,抵抗値などの物性を制御することもできる。」

(ケ) 「【図3】



(コ) 「【図4】



(サ) 「【図5】



(シ) 「【図9】



(ス) 「【図10】



イ 引用発明
引用例1には,実施形態4について記載した段落【0154】に,「ここまでの工程についての詳細(材料,形成条件等)は実施形態1及び実施形態2を参照すればよい。」と記載されている。そして,実施形態4の「配線912」に対応する実施形態1の「配線112」について,段落【0092】には「金属膜を形成し,金属膜をエッチングして各不純物領域とそれぞれ電気的に接続する配線112を形成する。配線112はソース電極,ドレイン電極としても機能する。」と記載されている。
したがって,引用例1には,実施形態4(段落【0148】?【0165】)に記載のプロセスにより作製される「表示装置」に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。(段落番号を併記する。)

「【0150】基板900上に下地膜901a,901bを形成し,不純物領域903及び904を有する半導体層902を形成し,半導体層902上にゲート絶縁膜905を介してゲート電極である導電層906及び907を形成し,パッシベーション膜として絶縁膜908を形成し,層間膜として,耐熱性平坦化膜909を形成し,耐熱性平坦化膜909にシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜を用い,
【0151】耐熱性平坦化膜909にコンタクトホール(開口部)930を形成すると同時に周縁部の耐熱性平坦化膜を除去した後に,周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を有するガス915を耐熱性平坦化膜909にドーピングし,添加領域916を形成し,
【0152】ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行い,周期律13族もしくは15族の元素として,リン(P),ボロン(B)を用い,
【0153】TiN,Al,TiNをこの順に積層したのち,所望の形状にパターニングして,配線912を形成し,配線912は,【0092】金属膜を形成し,金属膜をエッチングして形成され,各不純物領域とそれぞれ電気的に接続し,ソース電極,ドレイン電極としても機能し,
【0153】配線912と接するように,【0154】透明導電膜を形成し,所望の形状にエッチングすることで第1の電極913を形成し,
【0155】第1の電極913の端部,配線912を覆う絶縁層914を形成し,絶縁層914としては,塗布法により得られるSOG膜を膜厚0.8μm?1μmの範囲で用い,
【0156】絶縁層914の形成後,第1の電極913及び絶縁層914に周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうちBを有するガス935をドーピングし,添加領域917及び918を形成し,ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法で行い,
【0160】第1の電極913(添加領域917)の上には,正孔注入層として20nm厚の銅フタロシアニン(CuPc)膜を設け,その上に発光層として70nm厚のトリス-8-キノリノラトアルミニウム錯体(Alq_(3))膜を設けた発光層919が形成され,
【0162】発光層919の上には導電膜からなる第2の電極920が設けられ,
【0163】第2の電極920を覆うようにしてパッシベーション膜921を設け,
【0164】封止基板923をシール材924で貼り合わせて発光素子を封止し,シール材が耐熱性平坦化膜909(添加領域916)の端部を覆うように貼りあわせ,シール材で囲まれた領域には充填材922を充填して
【0165】作製される表示装置。」

(3) 対比
ア 基板,画素回路部
引用発明の「基板900」は,本件補正後発明の「基板」に相当する。
引用発明の「配線912」は,「ソース電極,ドレイン電極としても機能」するものである。引用発明の「不純物領域903及び904を有する半導体層902」,「ゲート絶縁膜905」,「ゲート電極である導電層906及び907」及び「配線912」が,TFT(薄膜トランジスタ)を構成していることは,技術的にみて明らかである。この点は,引用例1の「しかし,本発明は,この構成に限定されず,画素部のTFTをnチャネル型TFTとし,第1の電極913を陰極とし,第2の電極920を陽極とすることもできる。」(段落【0162】)などの記載からも明らかである。
したがって,引用発明の「不純物領域903及び904を有する半導体層902」,「ゲート絶縁膜905」,「ゲート電極である導電層906及び907」及び「配線912」を併せたもの(以下「TFT部」という。)は,本件補正後発明の「画素回路部」に相当するとともに,基板900上に形成されるものであるから,「基板上に配され,ソース/ドレイン電極を有する薄膜トランジスタである」との要件を満たす。

イ 画素電極,平坦化膜
引用発明の「第1の電極913」は,「配線912と接するように」,形成されている。そして,引用発明の「第1の電極913(添加領域917)の上に」,「発光層919」を形成して,「表示装置」を作製している。ここで,「表示装置」における「発光層919」は画素を構成していることは,技術的にみて明らかである。したがって,引用発明の「第1の電極913」は,本件補正後発明の「画素電極」に相当するとともに,「配線912と接する」電極であるから,「前記画素回路部と電気的に連結される」との要件を満たす。
引用発明の「耐熱性平坦化膜909」は,平坦化膜として形成される。したがって,引用発明の「耐熱性平坦化膜909」は,本件補正後発明の「平坦化膜」に相当する。

ウ 画素定義膜,中間層
引用発明においては,「第1の電極913の端部,配線912を覆う絶縁層914を形成」している。そして,「第1の電極913及び絶縁層914」に「ガス935をドーピングし,添加領域917及び918を形成し」,「第1の電極913(添加領域917)の上に」,「発光層919」を形成している。
引用発明の「絶縁層914」は,本件補正後発明の「画素定義膜」に相当する。そして,引用発明の「絶縁層914」は,「第1の電極913の端部」を覆い,「第1の電極913(添加領域917)の上に」,「発光層919」を形成するのであるから,「第1の電極913」は,「絶縁層914」に対して,外部に露出されているといえる。したがって,引用発明の「絶縁層914」は,本件補正後発明の「前記画素電極を露出させる」との要件を満たす。
ここで,本願の明細書の段落【0062】には,「中間層162としては,・・・ホール注入層・・・,ホール輸送層・・・,発光層・・・,電子輸送層・・・,電子注入層・・・などが単一あるいは複合の構造で積層されて形成でき」ると記載されている。引用発明の「発光層919」は,「正孔注入層として20nm厚の銅フタロシアニン(CuPc)膜を設け,その上に発光層として70nm厚のトリス-8-キノリノラトアルミニウム錯体(Alq_(3))膜を設け」て形成されている。したがって,引用発明の「発光層919」は,本件補正後発明の「中間層」に相当する。そして,引用発明の「発光層919」は,「発光層」を含み,光を発するのであるから,本件補正後発明の「前記画素電極上に配されて光を放出する」との要件を満たす。

エ 第1,第2のイオン注入層
引用発明の「耐熱性平坦化膜909」には,「周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を有するガス915」がドーピングされて,「添加領域916」が形成される。引用発明の「第1の電極913及び絶縁層914」にも,「周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうちBを有するガス935」がドーピングされ,「添加領域917及び918」が形成されている。そして,引用発明においては,「ドーピング処理はイオンドープ法,プラズマドープ法もしくはイオン注入法」で行っている。イオンドープは,「イオン」を「ドープ」しており,ドープ処理は何かを「注入」する処理といえること,及び注入物が「イオン」であることは,技術的にみて明らかである。プラズマドープ法及びイオン注入法についても同様である。
したがって,引用発明の「添加領域916」は,「耐熱性平坦化膜909」にイオンを注入することにより形成されるのであるから,本件補正後発明の「第2イオン注入層」に相当し,「平坦化膜にイオンを注入して形成され」,「前記平坦化膜上に形成される」との要件を満たす。同様に,引用発明の「添加領域918」は,「絶縁層914」にイオンを注入することにより得られ,本件補正後発明の「第1イオン注入層」に相当し,「前記画素定義膜にイオンを注入して形成され」,「前記画素定義膜上に形成される」との要件を満たす。

オ 有機発光表示装置
引用発明の「表示装置」は,「発光層として70nm厚のトリス-8-キノリノラトアルミニウム錯体(Alq_(3))膜」を用いており,有機の発光層を用いているのであるから,本件補正後発明の「有機発光表示装置」に相当する。そして,引用発明の「表示装置」は,上記ア?エの範囲で,本件補正後発明の「基板」と,「画素回路部」と,「画素電極」と,「平坦化膜」と,「画素定義膜」と,「中間層」と,「第1イオン注入層」と,「第2イオン注入層」と,を「備える」との要件を満たす。

(4) 一致点
上記(3)からみて,本件補正後発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「【請求項1】
基板と,
前記基板上に配され,ソース/ドレイン電極を有する薄膜トランジスタである画素回路部と,
前記画素回路部と電気的に連結される画素電極と,
平坦化膜と,
前記画素電極を露出させる画素定義膜と,
前記画素電極上に配されて光を放出する中間層と,
前記画素定義膜上に形成される第1イオン注入層と,
前記平坦化膜上に形成される第2イオン注入層と,を備え,
前記第1イオン注入層は,前記画素定義膜にイオンを注入して形成され,
前記第2イオン注入層は,平坦化膜にイオンを注入して形成される有機発光表示装置。」

(5) 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。

ア 相違点1
本件補正後発明の「平坦化膜」は,「前記画素電極と前記画素回路部との間に配され,前記画素回路部を覆う平坦化膜であって,前記画素回路部の前記ソース/ドレイン電極を覆う」のに対して,引用発明の「ソース電極,ドレイン電極としても機能」する「配線912」は,「耐熱性平坦化膜909」にコンタクトホールを形成して設けており,引用発明の「耐熱性平坦化膜909」は,「前記画素電極と前記画素回路部との間に配され」,「前記画素回路部」及び「前記画素回路部の前記ソース/ドレイン電極を覆う」とはいえない点。

イ 相違点2
本件補正後発明の「画素定義膜」が「有機物からな」るのに対して,引用発明の「絶縁層914」は,「SOG膜」からなる点。

ウ 相違点3
本件補正後発明のイオン注入層を形成する「イオン」は,「BHx+またはPH+」であるのに対して,引用発明は,イオンを注入することにより,リン(P),ボロン(B)を添加しているが,イオンが「BHx+またはPH+」であるかは,必ずしも明らかでない点。

(6) 判断
上記相違点について,検討する。

ア 相違点1について
有機発光表示装置に関する技術分野において,ソース/ドレイン電極を形成した後に,その上に平坦化膜を形成し,平坦化膜にビアホールを形成し,画素電極によりソース/ドレイン電極と画素電極を接触させる構造とすることは,例えば,原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-347275号公報の【図3C】,また,特開2009-272313号公報の図1,2及び特開2010-20311号公報の各図などにも開示されているように,本願の優先日時点の当業者における周知技術にすぎない(以下「周知技術1」という。)。また,引用例1の段落【0040】には「TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能」とも記載されている。
そうしてみると,引用発明のTFT部の構造に替えて周知技術1のTFTの構造を採用することは,引用例1の記載が示唆する設計的事項に過ぎない。
また,引用発明のTFT部の構造に替えて周知技術1のTFTの構造を採用してなるものは,「平坦化膜」が,「前記画素電極と前記画素回路部との間に配され」,「前記画素回路部」及び「前記画素回路部の前記ソース/ドレイン電極を覆う」こととなる。
したがって,引用発明を,相違点1に係る構成を具備するものに変更することは,引用例1の記載が示唆する設計変更にすぎない。

イ 相違点2について
引用例1には,「絶縁層914は,シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される絶縁膜の他に,耐熱性が高く,平坦化性がよいものであれば,・・・感光性または非感光性の有機樹材料(有機樹脂材料)(ポリイミド,アクリル,ポリアミド,ポリイミドアミド,レジスト,ベンゾシクロブテンなど)・・・などの一種,もしくは複数種からなる膜,またはこれらの膜の積層などを用いることができる。」(段落【0155】)と記載されている。つまり,引用例1には,「絶縁層914」について,実施形態のSOGに代えて,有機樹脂材料を用いることが記載されている。したがって,引用例1の示唆に従って,引用発明における「絶縁層914」を,有機樹脂材料とすることもまた,引用例1の記載が示唆する範囲内の設計変更にすぎない。

ウ 相違点3について
引用発明において用いられるリン(P),ボロン(B)をイオンドーピングする際に,B_(2)H_(6)やPH_(3)などのガスを材料ガスとして,「BHx+またはPH+」といったイオンを注入することは,当業者に広く知られている(以下,「周知技術2」という。)(例えば,原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-256638号公報の段落【0042】,【0043】,特開2001-59978号公報の段落【0082】,【0085】などを参照,他にも特開2004-39936号公報の段落【0005】,【0006】など参照。)。
したがって,引用発明におけるドーピング処理として周知技術2を採用することは,引用発明を具体化するに際して当業者が適宜選択し得る事項にすぎない。

(7) 効果について
発明の目的に関して,本願の明細書には,「本発明の一実施形態によれば,外部から有機発光層へのガスの流れ込み,または画素定義膜などの有機膜の内部からのガス排出を遮断できる。」(段落【0035】)などと記載されている。
しかしながら,引用例1の段落【0014】には「本発明では,耐熱性平坦化膜,第1電極または絶縁層(隔壁)に一導電型の不純物元素である周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素をドーピング処理することで添加する。・・・比較的原子半径の大きい周期律13族もしくは15族から選ばれた元素のうち少なくとも一種の元素を添加することによって歪みを与え,表面(側壁を含む)を改質,または高密度化して水分や酸素の侵入を防止する。」と記載されている。したがって,引用例1には,耐熱性平坦化膜,絶縁層(隔壁)などに所定の元素をドーピング処理することにより,水分や酸素の侵入を防止できることが記載されており,本件補正後発明が奏する上記の効果は,引用発明がすでに奏していた効果であるか,引用発明において周知技術を採用した当業者が期待する効果の範囲内のものである。

(8) 小括
本件補正後発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

3 補正却下のまとめ
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲の請求項8に係る発明(本願発明)は,上記「第2」1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,本願の優先日前に日本国又は外国において頒布された引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例に記載の事項及び引用発明について
引用例1の記載及び引用発明については,上記「第2」2(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,上記「第2」2で検討した本件補正後発明から,相違点1に関する「素子(画素)回路部」が「ソース/ドレイン電極を有する薄膜トランジスタである」に係る限定事項と,「平坦化膜」が,「前記画素回路部の前記ソース/ドレイン電極を覆う」に係る限定事項を除いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正後発明が,上記「第2」2に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。また,引用例1の実施形態2に対応する引用発明を基にした場合についても,同様である。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,その優先日前に日本国又は外国において頒布された引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,他の請求項に係る発明について審究するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-19 
結審通知日 2016-12-20 
審決日 2017-01-10 
出願番号 特願2011-130419(P2011-130419)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中山 佳美  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 多田 達也
清水 康司
発明の名称 有機発光表示装置及びその製造方法  
代理人 阿部 達彦  
代理人 崔 允辰  
代理人 佐伯 義文  
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