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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1328628
審判番号 不服2016-5272  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-08 
確定日 2017-06-13 
事件の表示 特願2012-247228「液体現像剤、及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日出願公開,特開2014- 95802,請求項の数(3)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成24年11月9日の出願であって,平成27年8月10日付けで拒絶理由が通知され,同年10月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成28年1月4日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,平成28年4月8日に請求されたものであって,当審において,平成29年2月22日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年4月26日に意見書及び手続補正書が提出された。


第2 原査定の拒絶の理由
1 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,概略次のとおりである。

この出願の請求項(審決注:平成27年10月16日提出の手続補正書による補正後の請求項である。)1及び3に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないか,前記引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができず,請求項2に係る発明は,前記引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。(以下,「査定理由」という。)

2 引用例
査定理由で引用された引用文献1及び2は次のとおりである。

引用文献1:特開2012-128073号公報
引用文献2:特開2006-251252号公報


第3 当審拒絶理由
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は,概略次のとおりである。

本件出願の請求項1ないし3に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。(以下,「当審拒絶理由」という。)

2 引用例
当審拒絶理由で引用された引用文献1及び周知例1ないし4は,次のとおりである。

引用文献1:特開2012-128073号公報(査定理由で引用された引用文献1と同じ)
周知例1:特開2008-242039号公報
周知例2:特開平11-184169号公報
周知例3:特開2011-123375号公報
周知例4:特開2012-42727号公報


第4 本件出願の請求項1ないし3に係る発明
本件出願の請求項1ないし3に係る発明は,平成29年4月26日提出の手続補正書によって補正された請求項1ないし3に記載された事項によって特定されたとおりのものと認められるところ,請求項1ないし3の記載は次のとおりである。(以下,請求項1ないし3に係る発明をそれぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)

「【請求項1】
電気絶縁性のキャリア液と,着色粒子と,有機高分子化合物と,分散剤とを含み,
前記有機高分子化合物が,前記キャリア液に溶解しており,
前記有機高分子化合物が,スチレン系エラストマーからなり,
前記着色粒子が,前記キャリア液中に分散しており,
前記着色粒子が,結着樹脂と顔料(ただしカーボンブラックを除く)とを含み,
前記着色粒子における前記顔料の含有量が,前記結着樹脂100質量部に対して,40質量部以上150質量部以下であり,
液体現像剤中の前記有機高分子化合物の含有量(OP)が,0.6質量%以上9.0質量%以下であり,
液体現像剤中の前記有機高分子化合物の含有量(OP)に対する,液体現像剤中の前記分散剤の含有量(V)の質量比(V/OP)が,0.3以上1.5以下である,液体現像剤。
【請求項2】
前記結着樹脂が,スチレンアクリル系共重合体である,請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
感光体ドラムの表面を帯電させる帯電工程と,
帯電された前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成させる露光工程と,
請求項1又は2に記載の液体現像剤を用いて前記感光体ドラム表面の前記静電潜像を現像する現像工程と,
現像された画像を被記録媒体に転写する転写工程と,
画像が転写された前記被記録媒体を排出部に排出する排出工程と,を有する湿式現像法による画像形成方法。」


第5 引用例
1 引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献1は,本件出願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用文献1には,次の記載がある。
(1) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ,複写機,ファクシミリ装置,及びこれらの機能を併せ持つ複合機等の電子写真方式の画像形成装置としては,種々の現像方式の現像装置が備えられたものが挙げられる。具体的には,例えば,使用する現像剤の形態により,乾式現像方式と湿式現像方式とに大別される。そのうち,湿式現像方式の現像装置では,トナー粒子や顔料等の着色粒子等をキャリア液中に分散させた液体現像剤が用いられる。そして,湿式現像方式の現像装置は,液体現像剤中で帯電した着色粒子が,電気泳動の原理により現像ローラ表面から感光体ドラム表面に移動し,そのことによって,像担持体である感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を顕像化させるものである。
【0003】
また,電子写真方式を利用した画像形成装置では,粒子径の比較的小さな着色粒子を含む現像剤を用いると,高解像度で階調性に優れた高画質な画像を形成することができると考えられる。しかしながら,乾式現像剤では,着色粒子の粒子径の小さくすれば,着色粒子が大気中に飛散しやすくなる傾向があった。これに対して,液体現像剤は,着色粒子がキャリア液中で分散しているので,着色粒子の大気中への飛散が充分に抑制することができると考えられる。このことより,乾式現像剤では,着色粒子の飛散を充分に抑制できないような粒子径の小さな着色粒子,例えば,平均粒子径がサブミクロンサイズの微細な着色粒子であっても,好適に使用することができる。よって,湿式現像方式の現像装置を備える画像形成装置は,このような平均粒子径の比較的小さな着色粒子を含む液体現像剤を用いることができるので,高解像度で階調性に優れた高画質な画像を形成することが期待できる。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液体現像剤は,上述したように,高画質な画像を形成するために,含有される着色粒子として,平均粒子径の比較的小さなものを用いる。一方,着色粒子の粒子径が小さいほど,比表面積が大きくなり,中間転写体等への付着力が高まる傾向があると考えられる。このことから,中間転写体を備えた画像形成装置において,2次転写後に中間転写体上に残留しやすいと考えられる。また,2次転写後に中間転写体上に残留した液体現像剤は,画像形成に影響を与えると考えられる。
【0012】
よって,高画質な画像を形成させるためには,2次転写後に中間転写体上に残留した現像剤を好適にクリーニングすることができることが求められる。
・・・(中略)・・・
【0015】
しかしながら,・・・(中略)・・・例えば,着色粒子として,結着樹脂と顔料等の着色剤とを含むトナーを含む液体現像剤を用いた場合ではなく,樹脂を溶解させたキャリア液に顔料等の着色剤を分散させた液体現像剤を用いた場合等に,液体現像剤のクリーニングが不充分である場合があった。
【0016】
本発明は,かかる事情に鑑みてなされたものであって,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができ,高画質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様に係る画像形成装置は,表面に静電潜像が形成される像担持体と,キャリア液,前記キャリア液中に分散された着色粒子,及び前記キャリア液中に溶解された樹脂を含む液体現像剤を用いて,前記像担持体の表面に形成された静電潜像を顕像化した着色粒子像を形成する現像装置と,前記像担持体に対向して配置した,回転可能な中間転写体と,前記像担持体の表面上に形成された着色粒子像を,前記中間転写体に転写する1次転写部と,前記中間転写体に転写された着色粒子像を記録媒体に転写する2次転写部と,前記2次転写部による転写後,前記中間転写体に残留した液体現像剤を回収するクリーニング部と,前記2次転写部より前記中間転写体の回転方向下流側であって,前記クリーニング部より前記中間転写体の回転方向上流側に配置され,前記液体現像剤に含まれる樹脂の凝集を促進させる凝集促進剤を,前記中間転写体の表面上に添加する凝集促進剤添加部とを備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができる。よって,高画質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
【0019】
このことは,以下のことによると考えられる。
【0020】
前記2次転写部より前記中間転写体の回転方向下流側であって,前記クリーニング部より前記中間転写体の回転方向上流側に配置された凝集促進剤添加部によって,前記液体現像剤に含まれる樹脂の凝集を促進させる凝集促進剤を,前記中間転写体の表面上に添加する。そうすることによって,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤に対して,前記凝集促進剤が添加されることになり,前記液体現像剤に含まれる樹脂が凝集されると考えられる。この樹脂が凝集される際,着色粒子等も取り込んで凝集すると考えられる。そして,このように,着色粒子等を取り込んで凝集された樹脂は,前記クリーニング部によって,回収しやすいと考えられる。すなわち,粒子径の小さく,中間転写体に対する付着力の高い着色粒子であっても,凝集された樹脂とともに,前記クリーニング部によって,回収されると考えられる。
・・・(中略)・・・
【0030】
また,前記画像形成装置において,前記キャリア液が,前記樹脂が不溶な第1溶媒と,前記樹脂が可溶な第2溶媒とを少なくとも含み,前記凝集促進剤が,前記第1溶媒であることが好ましい。
【0031】
このような構成によれば,液体現像剤を構成する成分以外の成分を用いることなく,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができる。
【0032】
また,前記樹脂が,セルロースエーテル系樹脂を含み,前記キャリア液が,トール油脂肪酸と脂肪族炭化水素との混合溶媒であり,前記凝集防止剤が,脂肪族炭化水素であることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0043】
また,前記画像形成装置において,前記樹脂が,環状オレフィン共重合体を含み,前記キャリア液が,脂肪族炭化水素であり,前記凝集促進剤が,アルコール系溶媒であることが好ましい。
【0044】
このような構成によれば,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができ,さらに,光エネルギーや熱エネルギー等のエネルギーによらず,記録媒体に転写した着色粒子像を定着させて,画像を形成することができる。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができ,高画質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。」

(2) 「【発明を実施するための形態】
【0056】
以下,本発明に係る実施形態について説明するが,本発明は,これらに限定されるものではない。
【0057】
本実施形態に係る画像形成装置は,表面に静電潜像が形成される像担持体と,キャリア液,前記キャリア液中に分散された着色粒子,及び前記キャリア液中に溶解された樹脂を含む液体現像剤を用いて,前記像担持体の表面に形成された静電潜像を顕像化した着色粒子像を形成する現像装置と,前記像担持体に対向して配置した,回転可能な中間転写体と,前記像担持体の表面上に形成された着色粒子像を,前記中間転写体に転写する1次転写部と,前記中間転写体に転写された着色粒子像を記録媒体に転写する2次転写部とを備える画像形成装置である。すなわち,本実施形態に係る画像形成装置は,まず,液体現像剤を用いた湿式画像形成装置である。そして,本実施形態に係る画像形成装置は,中間転写体を備えた,いわゆるタンデム方式の画像形成装置である。さらに,本実施形態に係る画像形成装置は,上述したタンデム方式の湿式画像形成装置において,前記2次転写部による転写後,前記中間転写体に残留した液体現像剤を回収するクリーニング部と,前記2次転写部より前記中間転写体の回転方向下流側であって,前記クリーニング部より前記中間転写体の回転方向上流側に配置され,前記液体現像剤に含まれる樹脂の凝集を促進させる凝集促進剤を,前記中間転写体の表面上に添加する凝集促進剤添加部とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0058】
このような画像形成装置は,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができる。よって,高画質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
【0059】
このことは,以下のことによると考えられる。
【0060】
前記2次転写部より前記中間転写体の回転方向下流側であって,前記クリーニング部より前記中間転写体の回転方向上流側に配置された凝集促進剤添加部によって,前記液体現像剤に含まれる樹脂の凝集を促進させる凝集促進剤を,前記中間転写体の表面上に添加する。そうすることによって,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤に対して,前記凝集促進剤が添加されることになり,前記液体現像剤に含まれる樹脂が凝集されると考えられる。この樹脂が凝集される際,着色粒子等も取り込んで凝集すると考えられる。そして,このように,着色粒子等を取り込んで凝集された樹脂は,前記クリーニング部によって,回収しやすいと考えられる。すなわち,粒子径の小さく,中間転写体に対する付着力の高い着色粒子であっても,凝集された樹脂とともに,前記クリーニング部によって,回収されると考えられる。
【0061】
よって,2次転写後に,中間転写体上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができると考えられる。
・・・(中略)・・・
【0095】
凝集促進剤としては,具体的には,前記樹脂が不溶な液体であることが好ましい。さらに,この凝集促進剤は,液体現像剤に含まれるキャリア液と相互に可溶な液体であることが好ましい。すなわち,この凝集促進剤は,液体現像剤に含まれるキャリア液との相溶性が高いことが好ましい。
【0096】
なお,ここで不溶とは,溶解させる対象物,ここでは樹脂をほとんど溶解させないことである。また,不溶な液体とは,溶解させる対象物,ここでは樹脂をほとんど溶解させず,液体現像剤に添加することによって,液体現像剤に含まれる樹脂の凝集を促進させる液体である。また,不溶とは,可溶との比較によるものであり,不溶な液体は,可溶な液体を用いたときより溶解性が低い液体である。また,ここで,相互に可溶とは,2種の液体をどのような混合比で混合させても,均一に混ざり合い,溶解することである。
【0097】
また,液体現像剤は,上述したように,キャリア液と,キャリア液中に分散された着色粒子と,キャリア液中に溶解された樹脂とを含むものである。そして,液体現像剤は,キャリア液と着色粒子と樹脂とを含み,液体現像剤として使用可能なものであれば,特に限定されない。具体的には,以下のようなものが挙げられる。
【0098】
液体現像剤の第1の例としては,例えば,キャリア液と,キャリア液中に分散された着色粒子と,キャリア液中に溶解された樹脂とを含み,前記樹脂が,セルロースエーテル系樹脂を含有する液体現像剤が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0101】
前記キャリア液は,液体キャリアの役割を果たし,得られる液体現像剤の電気絶縁性を高めることを目的として用いられる。前記キャリア液としては,電気絶縁性を有するものであって,液体現像剤のキャリア液として用いられるものであれば,特に限定されない。具体的には,例えば,25℃における体積抵抗率が1010Ω・cm以上,すなわち電気伝導度が100pS/cm以下の有機溶媒等が挙げられる。前記キャリア液としては,特に限定されないが,例えば,流動パラフィン等の,常温で液体の脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。・・・(中略)・・・
【0107】
前記着色粒子としては,顔料を結着樹脂に分散させたトナーであっても,顔料そのものであってもよい。そのような顔料としては,例えば,従来公知の有機顔料や無機顔料を特に限定することなく用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0111】
また,このような液体現像剤には,液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有してもよい。分散安定剤としては,例えば,ビックケミー社製の「BYK-116」等が好適である。その他,ルーブリゾール社製の「ソルスパース9000」,「ソルスパース11200」,「ソルスパース13940」,「ソルスパース16000」,「ソルスパース17000」,「ソルスパース18000」や,ISP社製の「Antaron(登録商標)V-216」,「Antaron(登録商標)V-220」等も好ましく用いられ得る。
【0112】
液体現像剤中の分散安定剤の含有量は,1?10質量%程度,好ましくは,2?6質量%程度である。
・・・(中略)・・・
【0117】
液体現像剤の第2の例としては,例えば,キャリア液と,キャリア液中に分散された着色粒子と,キャリア液中に溶解された樹脂とを含み,前記樹脂が,環状オレフィン共重合体を含有する液体現像剤が挙げられる。
【0118】
前記環状オレフィン共重合体が,ノルボルネンとエチレンとの共重合体であることが好ましい。前記環状オレフィン共重合体の含有量は,前記液体現像剤100質量部に対して,2?8質量部であることが好ましい。
【0119】
前記キャリア液としては,前記液体現像剤の第1の例のキャリア液と同様のものが挙げられる。
【0120】
そして,ここで使用し得るキャリア液としては,前記物性に加えて,環状オレフィン共重合体を溶解させることができるもの(環状オレフィン共重合体の溶解度が相対的に高いもの)が好ましい。また,前記キャリア液としては,環状オレフィン共重合体がキャリア液に溶解すれば特に限定されない。前記キャリア液としては,環状オレフィン共重合体の溶解度が相対的に高いもの(環状オレフィン共重合体の良溶媒)のみを用いてもよく,又は,環状オレフィン共重合体の良溶媒と,環状オレフィン共重合体の溶解度が相対的に低いもの(環状オレフィン共重合体の貧溶媒)とを混合して用いてもよい。その場合,用いるキャリア液の種類によってキャリア液全体の導電率ひいては液体現像剤の導電率が過度に高くならないように留意する。
【0121】
前記着色粒子としては,前記液体現像剤の第1の例の着色粒子と同様のものが挙げられる。
【0122】
また,このような液体現像剤には,前記液体現像剤の第1の例と同様,液体現像剤中の粒子の分散を促進し安定化するための分散安定剤を含有してもよい。前記分散安定剤としては,前記液体現像剤の第1の例の分散安定剤と同様のものが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0131】
前記環状オレフィン共重合体の含有量は,前記液体現像剤100質量部に対して,2?8質量部であることが好ましく,3?6質量部であることがより好ましく,3.5?4質量部であることがさらに好ましい。環状オレフィン共重合体の含有量が少なすぎると,記録媒体の表面上に留まる環状オレフィン共重合体被膜の量が少なくなり過ぎ,造膜性ひいては定着性が過度に不足する可能性がある。また,環状オレフィン共重合体の含有量が多すぎると,記録媒体の表面上に留まる環状オレフィン共重合体被膜の量が多くなり過ぎ,被膜の乾燥性が過度に低下し,被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり,画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。
【0132】
また,液体現像剤に含まれるキャリア液としては,上述したように,単一の液体からなるものであってもよいし,2種類以上の液体を組み合わせたものであってもよい。
・・・(中略)・・・
【0142】
また,液体現像剤に含まれるキャリア液が,単一の液体からなるものである場合,液体現像剤に含まれる樹脂が,環状オレフィン共重合体を含み,液体現像剤に含まれるキャリア液が,脂肪族炭化水素であり,液体現像剤に含まれる凝集促進剤が,アルコール系溶媒であることが好ましい。さらに,前記環状オレフィン共重合体としては,ノルボルネンとエチレンとの共重合体であることが好ましい。
【0143】
このような液体現像剤及び凝集促進剤を用いることによって,2次転写後に,中間転写ベルト21上に残留した液体現像剤を好適にクリーニングすることができ,さらに,光エネルギーや熱エネルギー等のエネルギーによらず,記録媒体に転写した着色粒子像を定着させて,画像を形成することができる。」

(3)「【実施例】
【0187】
以下に,実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお,本発明は,実施例に何ら限定されるものではない。
・・・(中略)・・・
【0192】
(液体現像剤Bの製造)
環状オレフィン共重合体として,ノルボルネンとエチレンとの共重合体(トパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製の「TOPAS(登録商標)TM」(ノルボルネン含有率:約60質量%,ガラス転移温度:約60℃))5質量部を,キャリア液としての流動パラフィン(株式会社MORESCO製の「モレスコホワイトP-200」)95質量部に溶解させることにより,樹脂溶液を調製した。
【0193】
また,キャリア液としての流動パラフィン(株式会社MORESCO製の「モレスコホワイトP-200」)72質量部に,着色粒子としてのシアン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)20質量部と,分散安定剤としてのISP社製の「Antaron(登録商標)V-216」8質量部とを,ロッキングミル(セイワ技研社製の「RM-10」)を用いて,駆動周波数60Hzにて,1時間,混合・分散させることにより,顔料分散体を調製した。
【0194】
顔料分散体中の顔料の平均粒子径(D50)は0.5μmであった。そして,樹脂溶液と顔料分散体とを3:1の混合比(質量比)で混合することにより,表1に示すように,顔料を5質量%,環状オレフィン共重合体を3.75質量%含有するシアンの液体現像剤Bを製造した。
【0195】
なお,キャリア液である流動パラフィンには,樹脂であるノルボルネンとエチレンとの共重合体が可溶である。
・・・(中略)・・・
【0203】
(実施例3)
液体現像剤として,液体現像剤Aの代わりに液体現像剤Bを用い,さらに,凝集促進剤として,アイソパーGの代わりにイソプロパノールを用いたこと以外,実施例1と同様である。」

2 引用文献1に記載された発明
前記1(1)ないし(3)を含む引用文献1の全記載から,実施例3に用いる液体現像剤Bについての発明を把握することができるところ,【0192】ないし【0194】の記載から,液体現像剤Bにおけるキャリア液(株式会社MORESCO製の「モレスコホワイトP-200」)の含有量が89.25質量%,分散剤(ISP社製の「Antaron V-216」)の含有量が2質量%であると算出できるから,引用文献1に次の発明が記載されていると認められる。

「表面に静電潜像が形成される像担持体と,キャリア液,前記キャリア液中に分散された着色粒子,及び前記キャリア液中に溶解された樹脂を含む液体現像剤を用いて,前記像担持体の表面に形成された静電潜像を顕像化した着色粒子像を形成する現像装置と,前記像担持体に対向して配置した,回転可能な中間転写体と,前記像担持体の表面上に形成された着色粒子像を,前記中間転写体に転写する1次転写部と,前記中間転写体に転写された着色粒子像を記録媒体に転写する2次転写部と,前記2次転写部による転写後,前記中間転写体に残留した液体現像剤を回収するクリーニング部と,前記2次転写部より前記中間転写体の回転方向下流側であって,前記クリーニング部より前記中間転写体の回転方向上流側に配置され,前記液体現像剤に含まれる樹脂の凝集を促進させる凝集促進剤を,前記中間転写体の表面上に添加する凝集促進剤添加部とを備える画像形成装置に用いられる液体現像剤であって,
前記キャリア液として,電気絶縁性を有する流動パラフィンである株式会社MORESCO製のモレスコホワイトP-200を用い,
前記着色粒子として,シアン顔料であるC.I.Pigment Blue 15:3を用い,
前記キャリア液中に溶解された樹脂として,ノルボルネンとエチレンとの共重合体であるトパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製のTOPAS TMを用いるとともに,
前記キャリア液,前記着色粒子及び前記キャリア液中に溶解された樹脂に加えて,分散安定剤であるISP社製のAntaron V-216を含有しており,
前記キャリア液,前記着色粒子,前記キャリア液中に溶解された樹脂及び前記分散安定剤の含有量がそれぞれ89.25質量%,5質量%,3.75質量%及び2質量%であり,
当該液体現像剤に含まれる樹脂である前記TOPAS TMの凝集を促進させる前記凝集促進剤としては,イソプロパノールが用いられる,
液体現像剤B。」(以下,「引用発明」という。)

第6 当審拒絶理由についての判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と引用発明の対比
ア 引用発明の「『キャリア液』である『電気絶縁性を有する流動パラフィンである株式会社MORESCO製のモレスコホワイトP-200』」,「着色粒子」,「ノルボルネンとエチレンとの共重合体であるトパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製のTOPAS TM」,「分散安定剤であるISP社製のAntaron V-216」及び「液体現像剤B」は,本件発明1の「電気絶縁性のキャリア液」,「着色粒子」,「有機高分子化合物」,「分散剤」及び「液体現像剤」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「液体現像剤B」は,キャリア液である「株式会社MORESCO製のモレスコホワイトP-200」(本件発明1の「キャリア液」に相当する。以下,「(1)本件発明1と引用発明の対比」欄中で,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に相当する本件発明1の発明特定事項を表す。)と,前記キャリア液中に分散された「着色粒子」(着色粒子)であるC.I.Pigment Blue 15:3と,前記キャリア液中に溶解された樹脂である「トパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製のTOPAS TM」(有機高分子化合物)を含み,これらに加えて「分散安定剤であるISP社製のAntaron V-216」(分散剤)を含有しているから,引用発明は,本件発明1の「電気絶縁性のキャリア液と,着色粒子と,有機高分子化合物と,分散剤とを含み,前記有機高分子化合物が,前記キャリア液に溶解しており,前記着色粒子が,前記キャリア液中に分散しており」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

ウ 引用発明の「キャリア液中に溶解された樹脂」(有機高分子化合物)の含有量は3.75質量%であって,当該含有量は「0.6質量%以上9.0質量%以下」という本件発明1の有機高分子化合物の含有量(OP)の数値範囲を満足するから,引用発明は,本件発明1の「液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量(OP)が,0.6質量%以上9.0質量%以下であり」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

エ 引用発明の「キャリア液中に溶解された樹脂」(有機高分子化合物)及び「分散安定剤であるISP社製のAntaron V-216」(分散剤)の含有量はそれぞれ3.75質量%及び2質量%であり,分散安定剤の含有量/キャリア液中に溶解された樹脂の含有量は約0.53であって,当該値は「0.3以上1.5以下」という本件発明1のV/OPの数値範囲を満足するから,引用発明は,本件発明1の「液体現像剤中の有機高分子化合物の含有量(OP)に対する,液体現像剤中の分散剤の含有量(V)の質量比(V/OP)が,0.3以上1.5以下である」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

オ 前記アないしエに照らせば,本件発明1と引用発明は,
「電気絶縁性のキャリア液と,着色粒子と,有機高分子化合物と,分散剤とを含み,
前記有機高分子化合物が,前記キャリア液に溶解しており,
前記着色粒子が,前記キャリア液中に分散しており,
液体現像剤中の前記有機高分子化合物の含有量(OP)が,0.6質量%以上9.0質量%以下であり,
液体現像剤中の前記有機高分子化合物の含有量(OP)に対する,液体現像剤中の前記分散剤の含有量(V)の質量比(V/OP)が,0.3以上1.5以下である,液体現像剤。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件発明1の「有機高分子化合物」が,「スチレン系エラストマー」からなるのに対して,
引用発明の「キャリア液中に溶解された樹脂」は,「ノルボルネンとエチレンとの共重合体であるトパース・アドヴァンスト・ポリマーズ・ゲーエムベーハー社製のTOPAS TM」からなる点。

相違点2:
本件発明1の「着色粒子」が,「結着樹脂と顔料(ただしカーボンブラックを除く)とを含」むものであり,「着色粒子における顔料の含有量が,結着樹脂100質量部に対して,40質量部以上150質量部以下であ」るのに対して,
引用発明の「着色粒子」は,「シアン顔料であるC.I.Pigment Blue 15:3」であって,結着樹脂を含んでいない点。

(2)相違点の判断
まず相違点1の容易想到性について判断する。
引用文献1の【0015】等の記載から明らかなように,引用文献1に記載された発明は,樹脂を溶解させたキャリア液に着色剤を分散させた液体現像剤を用いた場合等に,液体現像剤のクリーニングが不充分である場合があるという問題点を解決することを課題とし,これを,画像形成装置内に,液体現像剤に含まれる樹脂の凝集を促進させる凝集促進剤を,クリーニング部より上流側で添加する凝集促進剤添加部を採用することによって,解決したものであり,引用発明は,当該画像形成装置に用いることを前提とした液体現像剤である。
しかるに,キャリア液中に溶解された樹脂の種類について,引用文献1には,【0098】等に記載された「セルロースエーテル系樹脂」と,引用発明の「TOPAS TM」も属する「環状オレフィン共重合体」とが開示されているのみであって,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項である「スチレン系エラストマー」を用いることができることは記載も示唆もなく,「スチレン系エラストマー」に適した凝集促進剤の具体例も開示されていない。
また,当審拒絶理由で引用された周知例1ないし4及び査定理由で引用された引用文献2のいずれにも,キャリア液中に溶解された樹脂として「スチレン系エラストマー」を用いることや,当該「スチレン系エラストマー」に適した凝集促進剤については記載も示唆もされていない。
さらに,画像形成装置の技術分野において,「スチレン系エラストマー」に適した凝集促進剤が当業者に知られていたことを示す証拠も見当たらない。
そうすると,引用発明において,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,当業者といえども,容易なこととはいえない。
したがって,相違点2について検討するまでもなく,本件発明1は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明2及び3について
本件出願の請求項2及び3は,いずれも請求項1の記載を引用する形式で記載されているところ,本件発明1が,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件発明1の発明特定事項を全て有し,これに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件発明2及び3も,本件発明1と同様の理由で,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

3 小括
前記1及び2のとおりであるから,当審拒絶理由によって,本件出願を拒絶することはできない。


第7 原査定についての判断
査定理由は,当審拒絶理由と同じ主引例(引用文献1)に基づく新規性欠如又は進歩性欠如をいうものであるところ,前記第6 1及び2と同様の理由で,本件発明1ないし3のいずれも,引用文献1に記載された発明と同一であるとも,当該発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-29 
出願番号 特願2012-247228(P2012-247228)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 113- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高松 大  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 液体現像剤、及び画像形成方法  
代理人 岩池 満  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
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