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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S |
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管理番号 | 1328672 |
審判番号 | 不服2015-6211 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-02 |
確定日 | 2017-06-01 |
事件の表示 | 特願2011-504597号「車両のための照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日国際公開、WO2009/130640、平成23年6月23日国内公表、特表2011-518413号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 ・本願発明 本願は、2009年4月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年4月21日、(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月26日付け(発送日:同年12月2日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、本願の請求項1ないし25に係る発明は、平成26年6月11日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 光を発する光源と前記光源によって発される光を集光するためのリフレクタとを有する、車両のための照明装置であって、前記リフレクタの後端部に、前記光源の少なくとも一部を収容する開口と、前記開口を包囲するリフレクタ頸部とが形成されており、前記光源は、前記リフレクタの反射表面に対して規定された位置において前記開口に固定されており、前記リフレクタ頸部が前記リフレクタと一体的に形成されるとともに複数のロック部材が前記リフレクタ上に形成されており、前記ロック部材は、前記リフレクタの光軸の周り又は前記リフレクタの光軸に平行な軸の周りの前記光源の回転運動の過程において、前記光源が、光軸の方向において前記リフレクタ頸部内に少なくとも部分的に挿入された場合、前記光源において形成された対応する穿孔と係合し、前記ロック部材の少なくとも1つは、このような仕方における前記回転運動の過程において前記穿孔の少なくとも1つと協働し、前記光源が前記軸方向における前記リフレクタに対して規定された位置に保持されるような仕方における前記光源の強制的なガイドをもたらし、 前記リフレクタ頸部と前記リフレクタとが共通のダイカスト操作によって製造される、照明装置。」 2.引用文献及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である米国特許第2563217号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、「ヘッドランプ」に関して、次ぎの事項が図面とともに記載されている。(翻訳は当審が作成。下線は当審で付与。) ア.(1ページ1欄1行?10行) 「本発明は、自動車に通常使われるヘッドランプとその他同種類のものに広く関連し、とりわけ、レンズ、リフレクタとそこで用いることができる電球装置を結合した改良に関連し、電球交換が、全体の装置を取り換えることなく、その中にちり、空気またはほこりの侵入をうけることがなく、レンズと電球を開けて行えるという特徴のある装置を提供するという現在の発明の主要な目標に関連する。」 イ.(1ページ1欄40行?51行) 「本発明では、放物線状のまたはティアドロップ形状のリフレクタ要素8は、その前端がレンズ10で密閉され、その後端は11で示されるように円錐の端部を切られ、リフレクタ要素8は円錐と同じ中心で前方に出っ張ったカーブをもつ内側のレンズ12が供され、レンズ12はフランジ14とリフレクタの円錐の端部を切られた端部で係合している周辺のフランジ13を持ち、隙間15が内側のレンズ12をしっかりと受け止めるように範囲規定していることからなる。」 ウ.(1ページ2欄8行?15行) 「電球16を支えているアダプター19は、平らな円錐台状のリテーナ21によって、リフレクタ9の円錐の頭を切った後端に取り外しが可能なように取り付けられる。リテーナ21は、周辺のフランジ23上に耳状の物22を角のある状態で持っている耳状の物22は、スクリュー25が通るような穴24が形成され、スクリュー25でリフレクタ9の外側の後端近くに適切に留められた耳状のアンカー26と結合できる。」 エ.(1ページ2欄16行?31行) 「リテーナ21の周辺のフランジ23は、リフレクタのフランジ14の背面と同一の場所で留まるように、内側のレンズのフランジ13に接合するそれに関して、内側のレンズ12、板状アダプター19と電球16は、お互いがリフレクタ9へ正確に軸方向に配列される関係となるように組み上げる。図2に示されたように、平板アダプター19は、一致する開口部27に着座する。開口部27は、リテーナ21の中央に形成され、頭部付きピン30を受け止めるために差し込みの細長い小さな穴29を持っているアダプターの縁にある部分の背面に対して、輪状のフランジ28を範囲規定する。頭部付きピン30は、電球とアダプターをリテーナ21上で外すことができるよう適所で結合されたものを固定する輪状のフランジ28の上にある。アダプターは、出っ張ったつまみ31を持ち、リテーナ21に対してそれを回転するのを促す。」 オ.(1ページ2欄32行?45行) 「上記の実施形態の中で、電球16はスクリュー25を緩めることによってリテーナ21が外され、それからリテーナから板状アダプター19を外し、アダプターから電球を外せることは明白である。または、もっと便利には、電球は、交換のために単にアダプター19をリテーナ21に対して差し込みの細長い小さな穴と頭部付きピンを外す方向に回転することにより取り外せる。それによって、電球16は、アダプター19に対して差し込みの細長い小さな穴と頭部付きピンを外す方向に回転できる。上記の手順を逆にさせることで、電球交換が進められる。」 以上の記載事項から次の事項が認定できる。 あ.Fig.1?3を参酌すると、リフレクタ9の後端11に、電球16の少なくとも一部を収容する収容部と、前記収容部を包囲するリテーナ21とが設けられていることが理解できる。 い.上記記載事項エ.及びFig.5を参酌すると、頭部付きピン30は、リフレクタ9の光軸の周りの電球16を支えている平板アダプター19の回転の過程において、前記電球16が、光軸の方向においてリテーナ21内に部分的に挿入された場合、前記平板アダプター19において形成された対応する細長い小さな穴29と係合し、前記頭部付きピン30は、前記回転の過程において前記細長い小さな穴29と協働し、前記平板アダプター19と電球16は、お互いが前記リフレクタ9へ正確に軸方向に配列される関係となるように組み上げられていることが理解できる。 以上の記載事項、認定事項及び図示内容からみて、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「電球16を支えている平板アダプター19と放物線状のまたはティアドロップ形状のリフレクタ9とを有する、自動車のためのヘッドライトであって、前記リフレクタ9の後端11に、前記電球16の少なくとも一部を収容する収容部と、前記収容部を包囲するリテーナ21とが設けられており、前記電球16を支えている平板アダプター19は、前記平板アダプター19と電球16が、お互いがリフレクタ9へ正確に軸方向に配列される関係となるように前記収容部に組み上げられており、前記リテーナ21が前記リフレクタ9と一体的に接合されるとともに複数の頭部付きピン30が前記リテーナ21の輪状のフランジ28上にあり、前記頭部付きピン30は、前記リフレクタ9の光軸の周りの前記電球16を支えている平板アダプター19の回転の過程において、前記電球16が、光軸の方向において前記リテーナ21内に部分的に挿入された場合、前記平板アダプター19において形成された対応する細長い小さな穴29と係合し、前記頭部付きピン30は、前記回転の過程において前記細長い小さな穴29と協働し、前記平板アダプター19と電球16が、お互いが前記リフレクタ9へ正確に軸方向に配列される関係となるように組み上げられ、 前記リテーナ21と前記リフレクタ9とがスクリュー25によって接合される、ヘッドライト。」 3.対比 本願発明と引用発明を対比すると、その意味、機能または構造からみて、 (1)前者の「光源」に関する「前記ロック部材は、前記リフレクタの光軸の周り又は前記リフレクタの光軸に平行な軸の周りの前記光源の回転運動の過程において、前記光源が、光軸の方向において前記リフレクタ頸部内に少なくとも部分的に挿入された場合、前記光源において形成された対応する穿孔と係合し、前記ロック部材の少なくとも1つは、このような仕方における前記回転運動の過程において前記穿孔の少なくとも1つと協働し」との特定事項から、前者の「光源」には、「穿孔」が形成されているものであり、かつ「光源」の回転運動の過程において、「ロック部材」が該「穿孔」に係合するものであるから、前者の「光源」は、本願明細書の段落【0035】に記載されているところの「ガラス製エンベロプ11」のみを指すのではなく、「穿孔」に該当する「切り欠き16」を備える「ランプベース18」をも少なくとも含む「ランプ3」であると解釈できる。そうすると、後者の「平板アダプター19」は、該「ランプベース18」に相当するところ、後者の「電球16を支えている平板アダプター19」は、「電球16」と「平板アダプター19」を有するものであるから、前者の「光を発する光源」に相当する。 また、後者の「放物線状のまたはティアドロップ形状の」「リフレクタ9」は、「電球16」によって発される光を集光する機能を有することは技術常識であるから、前者の「光源によって発される光を集光するための」「リフレクタ」に相当し、後者の「自動車のためのヘッドライト」は、前者の「車両のための照明装置」に相当する。 (2)後者の「リフレクタ9の後端11」、「電球16の少なくとも一部を収容する収容部」及び「リテーナ21」は、前者の「リフレクタの後端部」、「光源の少なくとも一部を収容する開口」及び「リフレクタ頸部」に、それそれ相当し、後者の「電球16の少なくとも一部を収容する収容部と、前記収容部を包囲するリテーナ21とが設けられており」と前者の「光源の少なくとも一部を収容する開口と、前記開口を包囲するリフレクタ頸部とが形成されており」とは、「光源の少なくとも一部を収容する開口と、前記開口を包囲するリフレクタ頸部とが設けられており」という限りにおいて共通する。 (3)後者の「前記電球16を支えている平板アダプター19は、前記平板アダプター19と電球16が、お互いがリフレクタ9へ正確に軸方向に配列される関係となるように前記収容部に組み上げられており」は前者の「前記光源は、前記リフレクタの反射表面に対して規定された位置において前記開口に固定されており」に相当し、後者の「前記リテーナ21が前記リフレクタ9と一体的に接合される」と前者の「前記リフレクタ頸部が前記リフレクタと一体的に形成される」とは、「前記リフレクタ頸部が前記リフレクタと一体的に設けられる」という限りにおいて共通し、後者の「頭部付きピン30」及び「細長い小さな穴29」は、前者の「ロック部材」及び「穿孔」に、それぞれ相当し、前者の「複数のロック部材」はリフレクタのうちの「リフレクタ頸部」に形成されるものであるから、後者の「複数の頭部付きピン30が前記リテーナ21の輪状のフランジ28上にあり」と前者の「複数のロック部材が前記リフレクタ上に形成されており」とは、「複数のロック部材が前記リフレクタ頸部上に形成されており」という限りにおいて共通する。 また、後者の「前記平板アダプター19と電球16は、お互いが前記リフレクタ9へ正確に軸方向に配列される関係となるように組み上げられ」は、前者の「前記光源が前記軸方向における前記リフレクタに対して規定された位置に保持される」に相当するところ、頭部付きピン30は、電球16を支えている平板アダプター19の回転の過程において、細長い小さな穴29と協働し、電球16を支えている平板アダプター19の強制的なガイドをもたらことは明らかである。 そうすると、両者は本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 [一致点] 「光を発する光源と前記光源によって発される光を集光するためのリフレクタとを有する、車両のための照明装置であって、前記リフレクタの後端部に、前記光源の少なくとも一部を収容する開口と、前記開口を包囲するリフレクタ頸部とが設けられており、前記光源は、前記リフレクタの反射表面に対して規定された位置において前記開口に固定されており、前記リフレクタ頸部が前記リフレクタと一体的に設けられるとともに複数のロック部材が前記リフレクタ頸部上に形成されており、前記ロック部材は、前記リフレクタの光軸の周り又は前記リフレクタの光軸に平行な軸の周りの前記光源の回転運動の過程において、前記光源が、光軸の方向において前記リフレクタ頸部内に少なくとも部分的に挿入された場合、前記光源において形成された対応する穿孔と係合し、前記ロック部材の少なくとも1つは、このような仕方における前記回転運動の過程において前記穿孔の少なくとも1つと協働し、前記光源が前記軸方向における前記リフレクタに対して規定された位置に保持されるような仕方における前記光源の強制的なガイドをもたらす、照明装置。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願発明は、リフレクタの後端部に、リフレクタ頸部が「形成」されており、前記リフレクタ頸部が前記リフレクタと一体的に「形成」され、複数のロック部材が前記「リフレクタ」上に形成されており、「リフレクタ頸部と前記リフレクタとが共通のダイカスト操作によって製造される」のに対し、 引用発明は、リフレクタ9の後端11に、リテーナ21が「接合」されており、前記リテーナ21が前記リフレクタ9と一体的に「接合」され、複数の頭部付きピン30が前記「リテーナ21」の輪状のフランジ28上にあり、「リテーナ21と前記リフレクタ9とがスクリュー25によって接合されるている点。 4.判断 (1)相違点の検討 引用文献1(上記記載事項オ.)の「もっと便利には、電球は、交換のために単にアダプター19をリテーナ21に対して差し込みの細長い小さな穴と頭部付きピンを外す方向に回転することにより取り外せる。」との記載から、電球の交換には、リテーナ21からアダプター19を取り外せる構成があれば充足することが示唆されているといえる。 また、リフレクタを、光源の取付部(本願発明の「リフレクタ頸部」に相当する。)を含めて一体的に形成することは、従来周知である(特開2002-107517号公報の段落【0024】及び【図2】、特開2006-156341号公報の段落【0032】及び【図1】、特開平5-144309号公報の段落【0022】?【0024】及び【図1】等を参照。)。 本願発明の「リフレクタ頸部と前記リフレクタとが共通のダイカスト操作によって製造される」との特定事項は、製造方法を用いて、物の構成を特定するものであるから、物の発明の構成として必ずしも明確ではないが、ダイカスト操作によって製造されたリフレクタも上記各周知例に記載されている。 そうすると、引用発明に、上記周知技術を適用し、リフレクタ9の後端11に、リテーナ21が形成されており、前記リテーナ21が前記リフレクタ9と一体的に形成され、かつ、ダイカスト操作によって製造されたリフレクタにすることは、当業者であれば適宜になし得ることである。 そして、このような構造になれば、リテーナ21はリフレクタ9の一部となるから、複数の頭部付きピン30がリフレクタ9上に形成されているといえる。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)作用効果について 本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別ではない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができない以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-19 |
結審通知日 | 2016-02-23 |
審決日 | 2016-03-08 |
出願番号 | 特願2011-504597(P2011-504597) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F21S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 栗山 卓也 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 島田 信一 |
発明の名称 | 車両のための照明装置 |
代理人 | 浅村 敬一 |
代理人 | 浅村 敬一 |
代理人 | 浅村 敬一 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 津軽 進 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 津軽 進 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 津軽 進 |