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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1328739
審判番号 不服2014-20813  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-15 
確定日 2017-05-30 
事件の表示 特願2012-261084「誘導的に動力を備えた装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 9日出願公開、特開2013- 85467〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2004年1月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年2月4日:米国)を国際出願日とする特願2006-502940号の一部を平成22年7月20日に新たな出願とした特願2010-162596号の一部を平成24年11月29日に新たな出願としたものであって、平成26年6月12日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成26年6月16日)、これに対し、平成26年10月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年7月28日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年7月29日)、これに対し、平成28年1月29日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により平成28年4月5日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年4月6日)、これに対し、平成28年9月6日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.平成28年9月6日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月6日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1の負荷と、
前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、
前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え、
前記第1の二次コイルは、第1の巻数のワイヤを含み、前記第2の二次コイルは、第2の巻数のワイヤを含み、前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる誘導的に動力を備えた装置。
【請求項2】
前記第1の二次コイル及び前記第2の二次コイルは、装置について異なる方向に配列されており、前記第1の大きさ及び前記第2の大きさは、前記装置が磁界内で方向が変化するときに反比例の関係で変化することを特徴とする請求項1に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項3】
電力の第3の大きさで前記第1の負荷に電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続される第3の二次コイルをさらに含む請求項1に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項4】
前記第1の二次コイル、前記第2の二次コイル及び前記第3の二次コイルは、前記装置について異なる方向に配列されており、前記第1の大きさ、前記第2の大きさ及び前記第3の大きさは、前記装置が磁界内で方向が変化するときに変化することを特徴とする請求項3に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項5】
前記第1の二次コイル、前記第2の二次コイル及び前記第3の二次コイルは、互いにおよそ90度に向けられていることを特徴とする請求項4に記載の誘導的に動力を備えた装置。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
一次コイルに対して第1及び第2の電力受信位置に配置することができる誘導的に動力を備えた装置であって、
第1の負荷と、
前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位で前記誘導的に動力を備えた装置に配置されており、前記誘導的に動力を備えた装置が一次コイルに対して前記第1の電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、
前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第2の方位で前記誘導的に動力を備えた装置に配置されており、前記誘導的に動力を備えた装置が一次コイルに対して前記第2の電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え、
前記第1の二次コイルと前記第2の二次コイルは、前記誘導的に動力を備えた装置内で互いに異なる方位を有しており、
前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第1の二次コイルとの間の角度方向は、前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第2の二次コイルとの間の角度方向と実質的に同一であり、
前記第1の二次コイルは、第1の巻数のワイヤを含み、前記第2の二次コイルは、第2の巻数のワイヤを含み、前記第2の二次コイルは、a)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさを、b)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさと平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる誘導的に動力を備えた装置。
【請求項2】
前記第1の大きさ及び前記第2の大きさは、前記装置が前記一次コイルの磁界内で方向が変化するときに反比例の関係で変化することを特徴とする請求項1に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項3】
電力の第3の大きさで前記第1の負荷に電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続される第3の二次コイルをさらに含む請求項1に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項4】
前記第1の二次コイル、前記第2の二次コイル及び前記第3の二次コイルは、前記装置内で互いに異なる方向に配列されており、前記第1の大きさ、前記第2の大きさ及び前記第3の大きさは、前記装置が磁界内で方向が変化するときに変化することを特徴とする請求項3に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項5】
前記第1の二次コイル、前記第2の二次コイル及び前記第3の二次コイルは、互いにおよそ90度に向けられていることを特徴とする請求項4に記載の誘導的に動力を備えた装置。」


(2)新規事項
本件補正後の請求項1には、「一次コイルに対して第1及び第2の電力受信位置」、「一次コイルに対して前記第1の電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイル」、「一次コイルに対して前記第2の電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイル」、「前記第1の二次コイルと前記第2の二次コイルは、前記誘導的に動力を備えた装置内で互いに異なる方位」、「前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第1の二次コイルとの間の角度方向は、前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第2の二次コイルとの間の角度方向と実質的に同一」、「前記第2の二次コイルは、a)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさを、b)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさと平衡をとる」と記載されているから、第1の二次コイルが第1の電力受信位置に配置されると第1の大きさの電力が提供され、第2の二次コイルが第1の電力受信位置とは微量でも異なれば足る第2の電力受信位置に配置されると第2の大きさの電力が提供され、第1の大きさの電力と第2の大きさの電力とを平衡をとり、第1の二次コイルと第2の二次コイルは互いに異なる方位にあり、第1の二次コイルが第1の電力受信位置に配置されるときの一次コイルとの間の角度方向は、第2の二次コイルが第1の電力受信位置とは異なる第2の電力受信位置に配置されるときの一次コイルとの間の角度方向と実質的に同一であることとなる。

そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

当初明細書等には、
a「【請求項36】
前記二次装置の少なくとも1つは、第1のコイル及び第2のコイルを有する二次コイルを含み、前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、異なる角度方向に向けられていることを特徴とする請求項35に記載の誘導的に動力を備えた装置。」

b「【請求項43】
前記誘導的な動力を備えた装置の少なくとも1つは、第1のコイル及び第2のコイルを有する二次コイルを含み、前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、異なる角度方向に向けられることを特徴とする請求項42に記載の誘導電源システム。
【請求項44】
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、前記負荷にDC電力を提供するために半ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項43に記載の誘導電源システム。
【請求項45】
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、前記負荷にDC電力を提供するために全ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項43に記載の誘導電源システム。
【請求項46】
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、前記負荷にAC電力を提供するために前記負荷に対して電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項43に記載の誘導電源システム。
【請求項47】
前記誘導的な動力を備えた装置の少なくとも1つは、第1のコイル、第2のコイル及び第3のコイルを有する二次コイルを含み、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、それぞれ互いにおよそ90度に向けられていることを特徴とする請求項42に記載の誘導電源システム。
【請求項48】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、前記負荷にDC電力を提供するために半ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項47に記載の誘導電源システム。
【請求項49】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、前記負荷にDC電力を提供するために全ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項47に記載の誘導電源システム。
【請求項50】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、前記負荷にAC電力を提供するために前記負荷に対して電気的に並列に接続されていることを特徴とする請求項48に記載の誘導電源システム。」

c「【請求項59】
誘導的に動力を備えた装置のための二次コイルであって、
第1の角度方向に配置される第1のコイルと、
第2の角度方向に配置される第2のコイルであって、前記第1の角度方向が前記第2の角度方向とは異なっている第2のコイルと、
共通の負荷を用いて前記第1のコイル及び前記第2のコイルを電気的に並列に接続する回路手段とを備えている二次コイル。
【請求項60】
前記第1の角度方向と前記第2の角度方向は、90度ずれていることを特徴とする請求項59に記載の二次コイル。
【請求項61】
第3の角度方向に配置される第3のコイルをさらに備え、前記第3の角度方向は、前記第1の方向及び前記第2の方向とは異なることを特徴とする請求項59に記載の二次コイル。
【請求項62】
前記第1の角度方向、前記第2の角度方向及び前記第3の角度方向は、お互いにそれぞれ90度をなしていることを特徴とする請求項61に記載の二次コイル。
【請求項63】
前記負荷と、前記第1のコイル、前記第3のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれとの間に直列に接続されるキャパシタをさらに備えている請求項62に記載の二次コイル。
【請求項64】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、前記負荷と、前記第1のコイル、前記第3のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれとの間に直列に接続されるダイオードを用いて半ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項61に記載の二次コイル。
【請求項65】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、前記負荷と、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれの反対側との間に直列に接続される一対のダイオードを用いて全ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項61に記載の二次コイル。
【請求項66】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは共通のボビンに巻きつけられていることを特徴とする請求項61に記載の二次コイル。
【請求項67】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、共通の実質的に球状のボビンに巻きつけられていることを特徴とする請求項61に記載の二次コイル。
【請求項68】
前記第1のコイルは、第1のボビンに巻きつけられており、前記第2のコイルは、第2のボビンに巻きつけられており、前記第3のコイルは、第3のボビンに巻きつけられていることを特徴とする請求項61に記載の二次コイル。
【請求項69】
前記第1のボビンは、前記第2のボビン内に取り付けられており、前記第2のボビンは、前記第3のボビン内に取り付けられていることを特徴とする請求項68に記載の二次コイル。
【請求項70】
前記第1のボビンは第1の直径を有しており、前記第2のボビンは第2の直径を有しており、前記第3のボビンは第3の直径を有しており、前記第1の直径は前記第2の直径より短く、前記第2の直径は前記第3の直径より短くなっており、
前記第1のコイルは、前記第2のコイルより多い巻数を含み、前記第2のコイルは、前記第3のコイルより多い巻数を含むことを特徴とする請求項68に記載の二次コイル。
【請求項71】
負荷と、
前記負荷に電気的に接続される二次コイルであって、前記負荷と電気的に接続される第1のコイル及び前記負荷と電気的に接続される第2のコイルを含む二次コイルであって、前記第1のコイルは第1の角度方向に配置され、前記第2のコイルは前記第1の角度方向とは異なる第2の角度方向に配置されている二次コイルとを備えることを特徴とする誘導的に動力を備えた装置。
【請求項72】
前記第1の角度方向と前記第2の角度方向は、およそ90度をなしていることを特徴とする請求項71に記載の二次コイル。
【請求項73】
第3の角度方向に配置される第3のコイルをさらに備え、前記第3の角度方向は、前記第1の方向及び前記第2の方向とは異なることを特徴とする請求項71に記載の二次コイル。
【請求項74】
前記第1の角度方向、前記第2の角度方向及び前記第3の角度方向は、それぞれお互いにおよそ90度をなしていることを特徴とする請求項73に記載の二次コイル。
【請求項75】
前記負荷と、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれとの間に直列に接続されているキャパシタをさらに備えている請求項73に記載の二次コイル。
【請求項76】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、前記負荷と、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれとの間に直列に接続されるダイオードを用いて半ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項73に記載の二次コイル。
【請求項77】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、前記負荷と、前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルのそれぞれの反対側との間に直列に接続される一対のダイオードを用いて全ブリッジ配置で電気的に接続されていることを特徴とする請求項73に記載の二次コイル。
【請求項78】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、共通のボビンに巻きつけられていることを特徴とする請求項73に記載の二次コイル。
【請求項79】
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記第3のコイルは、共通の実質的に球状のボビンに巻きつけられていることを特徴とする請求項73に記載の二次コイル。
【請求項80】
前記第1のコイルは、第1のボビンに巻きつけられており、前記第2のコイルは、第2のボビンに巻きつけられており、前記第3のコイルは、第3のボビンに巻きつけられていることを特徴とする請求項73に記載の二次コイル。
【請求項81】
前記第1のボビンは、前記第2のボビン内に取り付けられており、前記第2のボビンは、前記第3のボビン内に取り付けられていることを特徴とする請求項80に記載の二次コイル。
【請求項82】
前記第1のボビンは、第1の直径を有しており、前記第2のボビンは、第2の直径を有しており、前記第3のボビンは、第3の直径を有しており、前記第1の直径は、前記第2の直径より短く、前記第2の直径は前記第3の直径より短くなっており、
前記第1のコイルは、前記第2のコイルより多くの巻数を含み、前記第2のコイルは前記第3のコイルより多い巻数を含むことを特徴とする請求項80に記載の二次コイル。」

d「【請求項92】
第1の負荷と、
第1の大きさで前記第1の負荷に電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続される第1の二次コイルと、
第2の負荷と、
第2の大きさで前記第2の負荷に電力を提供するために前記第2の負荷に電気的に接続される第2の二次コイルとを備えている誘導的に動力を備えた装置。
【請求項93】
前記第1の二次コイル及び前記第2の二次コイルは、装置について異なる方向に配列されており、前記第1の大きさ及び前記第2の大きさは、前記装置が磁界内で方向を変化させるように反比例の関係で変化することを特徴とする請求項92に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項94】
第3の大きさで前記第3の負荷に電力を提供するために前記第3の負荷に電気的に接続される第3の負荷及び第3の二次コイルをさらに含む請求項92に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項95】
前記第1の二次コイル、前記第2の二次コイル及び前記第3の二次コイルは、前記装置について異なる方向に配列されており、前記第1の大きさ、前記第2の大きさ及び前記第3の大きさは、前記装置が磁界内で方向を変化させるように変化することを特徴とする請求項94に記載の誘導的に動力を備えた装置。
【請求項96】
前記第1の二次コイル、前記第2の二次コイル及び前記第3の二次コイルは、お互いにおよそ90度に向けられていることを特徴とする請求項95に記載の誘導的に動力を備えた装置。」

e「誘導的な電源端末の柔軟性を改善するために、誘導装置は、異なる方向に配置される複数のコイルを有する二次コイルを含む。単一のコイルが用いられるアプリケーションでは、ランダムに電力レセプタクル内に配置される装置は、磁界に対して実質的に平行に向けられるコイルを用いて配置される。そのような状況においては、二次コイルは、一次コイルから装置に動力を供給するのに十分な電力を受信しないかもしれない。多数のコイルの利用は、少なくとも1つのコイルが一次コイルによって発生させられる磁界の流線を少なくとも実質的に横切る尤度を大きく上昇させる二次コイルの配置を提供することによってこの問題に取り組む。例えば、誘導装置は、互いに90度に向けられている2つのコイルと共に二次コイルを含み得る。この構成であれば、2つのコイルのうちの少なくとも1つは、磁界の流線を横切って延びて一次コイルから電力を受信する見込みがある。別個のコイルの数は、アプリケーションごとに様々であり、例えば、誘導装置は、広範な方向に改善された効率を提供するために異なる方向に3、4、6又は8個のコイルを含み得る。異なる方向に十分な数のコイルを提供することによって、誘導装置は、誘導装置の方向に関わらず一次コイルから電力を受信するように構成され得る。
一実施形態では、誘導的に動力を備えた装置は、デカルト3次元軸系のx、y及びz軸のそれぞれに沿って方向付けされる3つの別個のコイル672a-cを有する二次コイル670を含む。図36に示されるように、3つのボビン660a-cの配置は、3つのコイル672a-cを受信するように提供される。3つのボビン660a-cの直径は、ボビン660a-cがその他の中の1つに取り付けられ得るように変化する。二次コイルに誘導される電力が二次コイルの直径に比例することに鑑みれば、異なるサイズのボビンの利用は、結果としてそれぞれ二次コイルに供給される電力に不均衡を生じさせる。異なるコイル672a-cに誘導される電力の平衡をとることが望ましいアプリケーションでは、精密な巻数の追加がそのサイズに第一に依存するそれぞれ小さいボビンに付加されて、ワイヤの巻数の追加は、より小さいボビン660a-cに付加され得る。例えば、最も外部の二次コイル672aが7回巻を含む場合、中間の二次コイル672bには8回巻を、そして最も内部の二次コイル672cには9回巻を含むことが望ましい。代替的には、球状のボビン(図示されていない)は、各コイルが所望の位置で例えばx、y及びz軸の所望の方向に球状のボビンに巻きつけられた状態で、提供され得る。本実施形態は、3つの二次コイルの直径の差を減少させ、それによって、コイルの平衡を改善する。多数のコイルを有する二次コイルが誘導的に動力を備えたランプアセンブリ614と関係して説明されるが、多数のコイルを有する二次コイルは、実質的に任意の誘導的に電力を備えた装置に取り入れられ、磁界内の装置の様々な方向の電力転送を最大にする。例えば、セルホン(図示されていない)又は個人情報機器(図示されていない)は、上記の二次コイル622のような単一のコイルを備えた又は二次コイル670のような多数のコイルを備えた二次コイルを有する誘導的に動力を備えたバッテリーチャージャーを提供され得る。本実施形態では、二次コイル670は任意の方向に装置を充電するのに十分な電力を得ることができるので、多数のコイルを備えた二次コイルを有するセルホン又は個人情報機器は、その方向に関わらず電力レセプタクル602内でランダムに交換され得る。」(【0042】-【0043】)

とあるのみで、誘導装置は互いに90度に向けられている2つのコイルを有し、誘導される電力の平衡をとるためにワイヤの巻数が追加されてはいるものの、第1の二次コイルが第1の電力受信位置に配置されると提供される第1の大きさの電力と、第2の二次コイルが第1の電力受信位置とは微量でも異なれば足る第2の電力受信位置に配置されると提供される第2の大きさの電力とが平衡をとること、及び、第1の二次コイルと第2の二次コイルが90度には限られない互いに異なる方位にあって、第1の二次コイルが第1の大きさの電力が提供される第1の電力受信位置に配置されるときの一次コイルとの間の角度方向と、第2の二次コイルが第2の大きさの電力が提供される第1の電力受信位置とは微量でも異なれば足る第2の電力受信位置に配置されるときの一次コイルとの間の角度方向が実質的に同一であることは当初明細書等に記載も示唆も無い。

したがって、請求項1に記載された「一次コイルに対して第1及び第2の電力受信位置」、「一次コイルに対して前記第1の電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイル」、「一次コイルに対して前記第2の電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイル」、「前記第1の二次コイルと前記第2の二次コイルは、前記誘導的に動力を備えた装置内で互いに異なる方位」、「前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第1の二次コイルとの間の角度方向は、前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第2の二次コイルとの間の角度方向と実質的に同一」、「前記第2の二次コイルは、a)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさを、b)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさと平衡をとる」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。


(3)目的要件
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

本件補正前後では、装置に係る請求項が共に5項あり、独立項は共に請求項1のみであり、従属項の引用形式も同じであるから、本件補正前の請求項1が本件補正後の請求項1に対応するものとして検討する。
本件補正前の請求項1は、第2の二次コイルが第2の大きさの電力を得るために「一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイル」との構成を有しており、「前記」とあるから第1の二次コイル、第2の二次コイルが共に同じ電力受信位置に配置されるときに、それぞれ第1の大きさ、第2の大きさで電力を提供されていたものが、本件補正後の請求項1は、「一次コイルに対して前記第1の電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイル」、「一次コイルに対して前記第2の電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイル」との構成を有しているので、第1の二次コイルが第1の電力受信位置に配置されるときに第1の大きさで電力を提供され、第2の二次コイルが第2の電力受信位置に配置されるときに第2の大きさで電力を提供されることとなる。
そうすると、本件補正前の請求項1は、第2の二次コイルが第1の二次コイルと同じ電力受信位置に配置されるときに、第2の大きさで電力を提供されていたものが、本件補正後の請求項1は、第2の二次コイルが第1の二次コイルの第1の電力受信位置とは異なる第2の電力受信位置に配置されるときに、第2の大きさで電力を提供され、電力受信位置が異なるから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

本件補正前の請求項1には、「第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイル」、「前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイル」とあり、第1の二次コイルは第1の方位に、第2の二次コイルは第1の方位とは異なる第2の方位に、二次コイル同士の方位(位置)の違いを特定していたものが、本件補正後の請求項1では、第1の方位、第2の方位に加えて、「前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第1の二次コイルとの間の角度方向は、前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第2の二次コイルとの間の角度方向と実質的に同一」と、誘導的に動力を備えた装置以外に設けられる一次コイルと第1の二次コイルとの間の角度方向、誘導的に動力を備えた装置以外に設けられる一次コイルと第2の二次コイルとの間の角度方向が規定されると共に両者実質的に同一となっている。
そうすると、本件補正前の請求項1は、一次コイルと第1の二次コイルとの間の角度方向、一次コイルと第2の二次コイルとの間の角度方向が全く規定されていなかったものが、本件補正後の請求項1は、誘導的に動力を備えた装置以外に設けられる一次コイルと第1の二次コイルとの間の角度方向、誘導的に動力を備えた装置以外に設けられる一次コイルと第2の二次コイルとの間の角度方向が規定されると共に両者が実質的に同一となっており、本件補正前の請求項1記載のどの構成を限定しても導き出せないものであるから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


(4)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記特許請求の範囲に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)特許法第36条第4項及び第6項
本件補正後の請求項1には、「一次コイルに対して第1及び第2の電力受信位置」、「一次コイルに対して前記第1の電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイル」、「一次コイルに対して前記第2の電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイル」、「前記第1の二次コイルと前記第2の二次コイルは、前記誘導的に動力を備えた装置内で互いに異なる方位」、「前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第1の二次コイルとの間の角度方向は、前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第2の二次コイルとの間の角度方向と実質的に同一」、「前記第2の二次コイルは、a)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさを、b)前記誘導的に動力を備えた装置が前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさと平衡をとる」と記載されているが、「[理由I](2)」で述べた理由にように、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
更に、本件補正後の請求項1には、「前記第1の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第1の二次コイルとの間の角度方向は、前記誘導的に動力を備えた装置が前記第2の電力受信位置に配置されるときの前記一次コイルと前記第2の二次コイルとの間の角度方向と実質的に同一」と、誘導的に動力を備えた装置以外に設けられる一次コイルと第1の二次コイルとの間の角度方向、誘導的に動力を備えた装置以外に設けられる一次コイルと第2の二次コイルとの間の角度方向が規定されているが、誘導的に動力を備えた装置に係る発明の構成を誘導的に動力を備えた装置以外の構成(一次コイル)で特定しようとしているため、発明の構成を特定できず不明である。
更に、第36図に示される3つのボビンのコイルを巻回したコイル体、第37図に示される2つのボビンにコイルを巻回したコイル体(ボビンに突部が設けられている)は、図35に示されるようなランプアセンブリにどの様に収納され、どの様に固定されるのか何ら開示が無く不明(単に収納されるだけでなく、ランプの電源として動作しなければならない。)である。
更に、本件補正後の請求項3には、「電力の第3の大きさで前記第1の負荷に電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続される第3の二次コイルをさらに含む」と記載されているが、引用する本件補正後の請求項1は受信する電力の平衡をとろうとしているにもかかわらず、何故第3の二次コイルは第3の大きさで第1及び第2の大きさのように平衡をとろうとしないのか不明(平衡でなければ第3の大きさでは電力に不平衡が生じ、負荷である照明の明るさにムラがでる。)である。

したがって、本件補正後の請求項1-5の記載は発明の詳細な説明に記載したものではないで、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、本件補正後の請求項1-5の記載は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-5に係る発明は、上記した平成28年1月29日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるとおりのものである。


(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成28年4月5日付で通知した最後の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「I 平成28年1月29日付でした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


(1)補正後の請求項1には、「前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え」と記載されているから、第1の二次コイルが、第1の方位にあって、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに第1の大きさの電力を提供し、又、第2の二次コイルが、第1の方位とは微量でも方位が異なっていれば足りる第2の方位にあって、一次コイルに対して前記電力受信位置(「前記」とあるので、第1の二次コイルと同じ電力受信位置。)に配置されるときに第1の大きさとは異なる第2の大きさで電力を提供することとなる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、第2の二次コイルが、第1の方位とは微量でも方位が異なっていれば足りる第2の方位にある(【0042】、図37から判断して、方位は90°異なっている。)こと、及び、第1の二次コイルと同じ電力受信位置に配置される(【0042】、図37から判断して、第1の二次コイルの電力受信位置と第2の二次コイルの電力受信位置は異なる。)ときに第1の大きさとは異なる第2の大きさで電力を提供する(【0043】の記載では、第1の大きさと第2の大きさの平衡を図っている。)ことは記載も示唆もない。

更に、補正後の請求項1には、「前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる」と記載されているから、第1の二次コイルは前記電力受信位置で、第1の大きさの電力ではなくて第2の大きさの電力が誘導されること、及び、第2の二次コイルは前記電力受信位置で、第2の大きさの電力ではなくて第1の大きさの電力が誘導されることとなる。
そこで、当該補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、同じ電力受信位置で、第1の二次コイルが、第1の大きさの電力又は第2の大きさの電力が誘導されること、及び、第2の二次コイルが、第1の大きさの電力又は第2の大きさの電力が誘導されることは記載も示唆もない。

したがって、上記補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。


II この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1には、「前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え」、「前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる」とあるが、Iに記載のように、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
更に、請求項1には、「前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え」とあるが、第2の二次コイルが、第1の方位とは微量でも方位が異なっていれば足りる第2の方位にある場合、誘導的に動力を備えた装置が様々な方向を向いた場合(図35の装置等が転がった場合)、どの様にすれば方向に関わらず電力を安定的に受信できるのか不明であり、又、誘導的に動力を備えた装置が様々な方向を向いても受信できる電力の平衡をとろうとしているにもかかわらず、第2の二次コイルの電力受信位置を何故第1の二次コイルの電力受信位置と同じ(「前記」とあるので、第1の二次コイルと同じ電力受信位置。)にするのか不明であり、又、受信する電力の平衡をとろうとしているにもかかわらず、第1の二次コイルの受信電力と第2の二次コイルの受信電力の大きさが異なる(第1の大きさと第2の大きさは、当然に大きさが異なる。)のか不明であり、第1の大きさと第2の大きさはどちらが大きいのか不明である。
更に、請求項1には、「前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる」とあるが、第1の二次コイルは前記電力受信位置で、第1の大きさの電力ではなくて何故第2の大きさの電力が誘導されるのか不明であり、第2の二次コイルは前記電力受信位置で、第2の大きさの電力ではなくて何故第1の大きさの電力が誘導されるのか不明である。
更に、図36、図37に示されるようなコイル体を、装置にどの様に適用するのか図面さえ示されていないため不明(図1?35に示されるような装置にどの様に適用するのか。仮に適用できたとしても、【0042】に記載されるような問題点・作用効果が生ずるのか。)である。
更に、請求項3には、「電力の第3の大きさで前記第1の負荷に電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続される第3の二次コイルをさらに含む」とあるが、受信する電力の平衡をとろうとしているにもかかわらず、何故第3の二次コイルは、第1及び第2の二次コイルの受信電力と大きさが異なる第3の大きさで電力を受信するのか不明である。」


(2)当審の最後の拒絶の理由についての判断
Iについて
請求項1に、「前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え」と記載されているから、第1の二次コイルが、第1の方位にあって、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに第1の大きさの電力を提供し、又、第2の二次コイルが、第1の方位とは微量でも方位が異なっていれば足りる第2の方位にあって、一次コイルに対して前記電力受信位置(「前記」とあるので、第1の二次コイルと同じ電力受信位置。)に配置されるときに第1の大きさとは異なる第2の大きさで電力を提供することとなるが、平成28年9月6日付意見書を参照しても、平成28年4月5日付の最後の拒絶の理由に示したとおり当初明細書等には記載も示唆も無い。
請求項1に、「前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる」と記載されているから、第1の二次コイルは前記電力受信位置で、第1の大きさの電力ではなくて第2の大きさの電力が誘導されること、及び、第2の二次コイルは前記電力受信位置で、第2の大きさの電力ではなくて第1の大きさの電力が誘導されることとなるが、、平成28年9月6日付意見書を参照しても、平成28年4月5日付の最後の拒絶の理由に示したとおり当初明細書等には記載も示唆も無い。

したがって、「前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え」、「前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる」との補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。

したがって、平成28年1月29日付でした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


IIについて
請求項1には、「前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え」、「前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる」とあるが、Iに記載のように、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
更に、請求項1には、「前記第1の負荷に第1の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、第1の方位にあり、一次コイルに対して電力受信位置に配置されるときに前記第1の大きさで電力を提供するように構成される第1の二次コイルと、前記第1の負荷に第2の大きさの電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続され、前記第1の二次コイルの前記第1の方位とは異なる第2の方位にあり、一次コイルに対して前記電力受信位置に配置されるときに前記第2の大きさで電力を提供するように構成される第2の二次コイルとを備え」とあるが、第2の二次コイルが、第1の方位とは微量でも方位が異なっていれば足りる第2の方位にある場合、誘導的に動力を備えた装置が様々な方向を向いたとき(図35の装置等が転がった場合)、どの様にすれば方向に関わらず電力を安定的に受信できるのか不明であり、又、誘導的に動力を備えた装置が様々な方向を向いても受信できる電力の平衡をとろうとしているにもかかわらず、第2の二次コイルの電力受信位置を何故第1の二次コイルの電力受信位置と同じ(「前記」とあるので、第1の二次コイルと同じ電力受信位置。)にするのか不明であり、又、受信する電力の平衡をとろうとしているにもかかわらず、第1の二次コイルの受信電力と第2の二次コイルの受信電力の大きさが異なる(第1の大きさと第2の大きさは、当然に大きさが異なる。)のか不明であり、第1の大きさと第2の大きさはどちらが大きいのか不明である。
更に、請求項1には、「前記第2の二次コイルは、前記電力受信位置で前記第1の二次コイルに誘導された電力の前記第2の大きさと前記電力受信位置で前記第2の二次コイルに誘導された電力の前記第1の大きさの平衡をとるために追加の巻数のワイヤを含んでいる」とあるが、第1の二次コイルは前記電力受信位置で、第1の大きさの電力ではなくて何故第2の大きさの電力が誘導されるのか不明であり、第2の二次コイルは前記電力受信位置で、第2の大きさの電力ではなくて何故第1の大きさの電力が誘導されるのか不明であり、ひいては、何故第1の大きさの電力と第2の大きさの電力の平衡をとるのか不明である。
更に、第36図に示される3つのボビンのコイルを巻回したコイル体、第37図に示される2つのボビンにコイルを巻回したコイル体(ボビンに突部が設けられている)は、図35に示されるようなランプアセンブリにどの様に収納され、どの様に固定されるのか何ら開示が無く不明(単に収納されるだけでなく、ランプの電源として動作しなければならない。)である。
更に、請求項3には、「電力の第3の大きさで前記第1の負荷に電力を提供するために前記第1の負荷に電気的に接続される第3の二次コイルをさらに含む」と記載されているが、引用する請求項1は受信する電力の平衡をとろうとしているにもかかわらず、何故第3の二次コイルは第3の大きさで第1及び第2の大きさのように平衡をとろうとしないのか不明(平衡でなければ第3の大きさでは電力に不平衡が生じ、負荷である照明の明るさにムラがでる。)である。

したがって、請求項1-5の記載は発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、請求項1-5の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


(3)むすび
したがって、平成28年1月29日付でした手続補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、請求項1-5の記載は特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-19 
結審通知日 2016-12-21 
審決日 2017-01-16 
出願番号 特願2012-261084(P2012-261084)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H02J)
P 1 8・ 561- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
P 1 8・ 572- WZ (H02J)
P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
P 1 8・ 55- WZ (H02J)
P 1 8・ 537- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 慎  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 誘導的に動力を備えた装置  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 鈴木 信彦  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 上杉 浩  
代理人 辻居 幸一  
代理人 大塚 文昭  

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