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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1328777
審判番号 不服2016-13752  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-13 
確定日 2017-06-01 
事件の表示 特願2014-238438号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月30日出願公開、特開2016-97215号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月26日付けの出願であって、平成28年3月24日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月19日付けで手続補正がなされ、同年6月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲は、
(補正前:平成28年5月19日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定し、判定結果に基づいて遊技を進行する遊技制御手段と、
遊技者による操作が可能な操作手段と、
遊技の進行に基づいて所定の演出手段に遊技演出を実行させる演出制御手段と
を備えた遊技機において、
前記演出制御手段は、
前記操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶するエッジ記憶部、及び前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報を記憶するオン信号カウント数記憶部を備え、
前記エッジ記憶部内及び前記オン信号カウント数記憶部に記憶された情報を一定間隔のサンプリングタイミング毎に更新可能であり、
特定遊技演出を実行しているときに、前記操作手段に対して、遊技者により所定の長押し操作が行われることを条件に前記特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことが可能であり、
前記長押し演出を行うことが可能な予め定められた所定期間に遊技者に対し所定の長押し操作が可能であることを報知する長押し指示演出を実行し、
前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作に基づいて、前記長押し演出を行うことを特徴とする遊技機。」
から、

(補正後:本件補正である平成28年9月13日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定し、判定結果に基づいて遊技を進行する遊技制御手段と、
遊技者による操作が可能な操作手段と、
遊技の進行に基づいて所定の演出手段に遊技演出を実行させる演出制御手段と
を備えた遊技機において、
前記演出制御手段は、
前記操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶するエッジ記憶部、及び前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報を記憶するオン信号カウント数記憶部を備え、
前記エッジ記憶部内及び前記オン信号カウント数記憶部に記憶された情報を一定間隔のサンプリングタイミング毎に更新可能であり、
前記オン信号カウント数記憶部には、オン-オフエッジ間オン信号数カウンタおよび、累積オン信号数カウンタを含み、
特定遊技演出を実行しているときに、前記操作手段に対して、遊技者により所定の長押し操作が行われることを条件に前記特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことが可能であり、
前記長押し演出を行うことが可能な予め定められた所定期間に遊技者に対し所定の長押し操作が可能であることを報知する長押し指示演出を実行し、
前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合に、前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作であると判断し、前記長押し演出を行うことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。)。

2 本件補正の適否
本件補正のうち、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「オン信号カウント数記憶部」に関して、「前記オン信号カウント数記憶部には、オン-オフエッジ間オン信号数カウンタおよび、累積オン信号数カウンタを含み」とする補正は、補正前には「オン信号カウント数記憶部」がどのようなカウンタを含むのかが限定されていなかったところを、「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタおよび、累積オン信号数カウンタを含」むとして限定するものである。
そして、本件補正のうち、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作に基づいて、前記長押し演出を行うこと」に関して、「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合に、前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作であると判断し、前記長押し演出を行うこと」とする補正は、補正前には「長押し演出」をどのような場合に行うのかが限定されていなかったところを、「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合」に行うとして限定するとともに、あわせて、補正前には「長押し操作に基づいて」とされていたところを、「長押し操作であると判断」するとしたものである。

ここで、本件補正のうち、「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタ」という記載については、「または」の前後がいずれも「前記累積オン信号数カウンタ」とされているが、補正後の請求項1において当該記載の前に「累積オン信号数カウンタ」と「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタ」が併記されていることから判断すると、「または」の前後どちらかは「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタ」とすべき誤記であることは明らかである。
また、当該記載について、請求人が審判請求書(3.(1))において補正の根拠として挙げている【0446】及び【0447】に、「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタ」又は「累積オン信号数カウンタ」が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上であると判定した場合に、継続操作時間が長押し操作であると判定し得る長さに達したと判断することが記載されていることからも、当該「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタ」という記載については、「または」の前後どちらかは「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタ」とすべき誤記であることは明らかである。
そして、そのような誤記であったとしても、当該補正については上記したとおり、補正前には「長押し演出」をどのような場合に行うのかが限定されていなかったところを限定するものであるといえる。
そこで、以降の検討は、当該「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタ」の記載について、「または」の前後どちらかは「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタ」とすべきものであるとして行う。

したがって、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「オン信号カウント数記憶部」及び「前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作に基づいて、前記長押し演出を行うこと」に関して、以上のとおりに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項に違反するところはない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1) 本願補正発明
本願補正発明は、上記1の本件補正の概要において示した次のとおりのものである(A?H、Z、Iは、本願補正発明を分説するため当審で付した。)。
「【請求項1】
A 始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定し、判定結果に基づいて遊技を進行する遊技制御手段と、
B 遊技者による操作が可能な操作手段と、
C 遊技の進行に基づいて所定の演出手段に遊技演出を実行させる演出制御手段と
D を備えた遊技機において、
前記演出制御手段は、
E 前記操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶するエッジ記憶部、及び前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報を記憶するオン信号カウント数記憶部を備え、
F 前記エッジ記憶部内及び前記オン信号カウント数記憶部に記憶された情報を一定間隔のサンプリングタイミング毎に更新可能であり、
G 前記オン信号カウント数記憶部には、オン-オフエッジ間オン信号数カウンタおよび、累積オン信号数カウンタを含み、
H 特定遊技演出を実行しているときに、前記操作手段に対して、遊技者により所定の長押し操作が行われることを条件に前記特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことが可能であり、
Z 前記長押し演出を行うことが可能な予め定められた所定期間に遊技者に対し所定の長押し操作が可能であることを報知する長押し指示演出を実行し、
I 前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合に、前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作であると判断し、前記長押し演出を行うことを特徴とする遊技機。」

(2) 刊行物に記載された事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-209949号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア) 「【0020】
・・・パチンコ遊技機1では、遊技球が第1始動口11を通過して入賞した場合、または遊技球が第2始動口12を通過して入賞した場合、遊技者にとって有利な大当たり遊技(特別遊技)を実行するか否かが判定され、その判定結果が後述する表示器4に表示される。
・・・
【0023】
・・・第1大入賞口13は、通常は上記プレートによって閉塞されている。これに対して、特別図柄判定の判定結果が「大当たり」であることを示す所定の大当たり図柄が表示器4に停止表示された場合、上記プレートを作動させて第1大入賞口13を開放する大当たり遊技が実行される。・・・」

(イ) 「【0041】
[パチンコ遊技機1の操作手段の構成例]
図2に例示されるように、枠部材3には、遊技者が操作する操作手段として、演出ボタン26および十字キー27が設けられている。・・・」

(ウ) 「【0049】
本実施形態における操作内容変更演出では、演出ボタン26の操作が可能となる操作有効期間の途中で演出ボタン26の操作を促す操作内容が変化する。例えば、装飾図柄を変動表示している状態で操作有効期間が到来すると、当該操作有効期間の前半において遊技者に演出ボタン26の操作を第1操作指示内容(ここでは長押し操作)で促す演出(以下、第1操作報知演出と記載することがある)が行われる。
【0050】
一例として、図4(A)に示すように、第1操作報知演出として、演出ボタン26を模したボタン画像および演出ボタン26の長押し操作を促す文字画像を含む操作指示画像DIと、演出ボタン26の操作が有効となる操作有効期間の残り時間を報知するゲージ画像VBとが液晶表示装置5に表示される。・・・
【0052】
そして、操作有効期間の前半において遊技者が演出ボタン26を長押しする長押し操作を行い、当該長押し操作が有効であると判定された場合、当該操作有効期間の後半において遊技者に演出ボタン26の操作を第1操作指示内容とは異なる第2操作指示内容(ここでは連打操作)で促す演出(以下、第2操作報知演出と記載することがある)が行われる。
・・・
【0056】
ここで、長押し操作が有効であるか否かの判定基準は、一例として、所定時間(例えば、3秒)以上連続して演出ボタン26を押下し続けた場合、または演出ボタン26を押下した累積時間が所定時間に到達した場合に、長押し操作を有効と判定する。・・・」

(エ) 「【0067】
・・・図7に例示されるように、パチンコ遊技機1の制御装置は、各種判定やコマンドの送信といった遊技の進行を制御する遊技制御基板100、遊技制御基板100から受信したコマンドに基づいて演出を統括的に制御する演出制御基板130、画像や音による演出を制御する画像音響制御基板140、各種のランプや可動体による演出を制御するランプ制御基板150等から構成されている。・・・」

(オ) 「【0079】
[画像音響制御基板140の構成例]
画像音響制御基板140は、図には示されていないが、統括CPU、制御用ROM、制御用RAM、VDP(Video Display Processor)、音響DSP(Digital Signal Processor)等を有して構成されている。統括CPUは、制御用ROMに記憶されたプログラムに基づいて、演出制御基板130において演出内容が設定された演出を表現する画像や音を制御する際の演算処理を行う。制御用RAMは、統括CPUが上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域またはデータ処理などの作業領域として使用される。
【0080】
統括CPUは、演出制御基板130からのコマンドおよび制御用ROMに記憶されているプログラムに基づいて制御信号を生成してVDPおよび音響DSPに出力することにより、VDPおよび音響DSPの動作を制御する。
【0081】
図には示されていないが、VDPは、演出画像の生成に必要な素材データを記憶する画像用ROM、演出画像の描画処理を実行する描画エンジン、および描画エンジンによって描画された演出画像を液晶表示装置5に出力する出力回路を有している。描画エンジンは、統括CPUからの制御信号に基づいて、画像用ROMに記憶されている素材データを用いて、フレームバッファに演出画像を描画する。出力回路は、このフレームバッファに描画された演出画像を所定のタイミングで液晶表示装置5に出力する。
【0082】
図には示されていないが、音響DSPには、楽曲や音声、効果音等に関する各種音響データを記憶する音響用ROMと、音響DSPによるデータ処理等の作業領域として使用されるSDRAMが接続されている。音響DSPは、統括CPUからの制御信号に対応する音響データを音響用ROMからSDRAMに読み出してデータ処理を実行し、データ処理後の音響データをスピーカ24へ出力する。
・・・
【0089】
ここで、大当たり乱数は、大当たりまたはハズレを決定するための乱数である。図柄乱数は、大当たりであると判定された場合に、大当たりの種類を決定するための乱数である。リーチ乱数は、ハズレであると判定された場合に、リーチ有りの演出を行うかまたはリーチ無しの演出を行うかを決定するための乱数である。変動パターン乱数は、特別図柄が変動表示される際の変動パターンを決定するための乱数である。普通図柄乱数は、第2始動口12を開放するか否かを決定するための乱数である。大当たり乱数、図柄乱数、リーチ乱数、変動パターン乱数、および普通図柄乱数は、上記ステップ1の処理が行われる毎に「1」加算される。一例として、上記ステップ1の処理を行うカウンタとしてループカウンタが使用され、各乱数が予め設定された最大値に達した後は「0」に戻される。」

(カ) 「【0159】
ステップ505において、統括CPUは、操作内容変更演出処理を行い、ステップ506に処理を進める。なお、上記ステップ505で行う操作内容変更演出処理については、後述する。」

(キ) 「【0163】
[画像音響制御基板140による操作内容変更演出処理]
図18は、図17の上記ステップ505における操作内容変更演出処理の一例を示す詳細フローチャートである。
・・・
【0168】
ステップ605において、統括CPUは、当該操作有効期間中に遊技者に指示する操作指示内容として長押し操作を制御用RAMの設定情報に設定し、次のステップに処理を進める。なお、上記ステップ605で設定される操作内容(長押し操作)が、図4?図6を用いて説明した第1操作指示内容となり、後述するステップ620が実行されることによって、当該操作指示内容による操作が遊技者に促される。なお、操作指示内容に応じて演出ボタン26に内蔵されているボタンランプ261の発光制御を行う場合は、当該操作指示内容に関するデータを、上記ステップ508の処理において演出制御基板130に送信する。
【0169】
次に、統括CPUは、演出ボタン26に対する押下操作があるか否かを判定する(ステップ606)。例えば、上述したように、演出制御基板130から操作コマンドが画像音響制御基板140へ送信されており、統括CPUは、当該操作コマンドを用いて演出ボタン26に対する押下操作があるか否かを判定する。そして、統括CPUは、演出ボタン26に対する押下操作がある場合、ステップ607に処理を進める。一方、統括CPUは、演出ボタン26に対する押下操作がない場合、ステップ612に処理を進める。
【0170】
ステップ607において、統括CPUは、長押し時間を計測し、次のステップに処理を進める。例えば、統括CPUは、制御用RAMに設定されている長押し時間に所定数(例えば、当該処理を行う周期(例えば、30ミリ秒)に相当する数値)を加算し、当該加算後の時間を用いて長押し時間を更新する。」

上記記載事項から、以下のことがいえる(認定)。

(ク) 上記(エ)の【0067】には「パチンコ遊技機1の制御装置は・・・遊技の進行を制御する遊技制御基板100、遊技制御基板100から受信したコマンドに基づいて演出を統括的に制御する演出制御基板130、画像や音による演出を制御する画像音響制御基板140・・・等から構成されている」と記載され、上記(オ)の【0079】には「画像音響制御基板140は・・・統括CPU・・・を有して構成され・・・統括CPUは・・・演出制御基板130において演出内容が設定された演出を表現する画像や音を制御する際の演算処理を行う」と記載されている。
これらの記載から、「画像音響制御基板140」は、「遊技の進行」を制御する「遊技制御基板100」から受信したコマンドに基づいて「演出制御基板130」において設定された演出について、「演出を表現する画像や音を制御する」ものであるといえる。そうすると、上記(エ)、(オ)には、遊技の進行に基づいて演出を表現する画像や音を制御する画像音響制御基板140が記載されているといえる。
また、上記(オ)の【0079】には「画像音響制御基板140は・・・統括CPU、・・・VDP、・・・音響DSP・・・を有して構成されている」と記載され、同【0080】には「統括CPUは・・・VDPおよび音響DSPの動作を制御する」と記載され、同【0081】には「VDPは・・・演出画像を液晶表示装置5に出力する」と記載され、同【0082】には「音響DSPは・・・音響データをスピーカ24へ出力する」と記載されている。
これらの記載から、「画像音響制御基板140」は、「統括CPU」、「VDP」及び「音響DSP」によって、「液晶表示装置5」及び「スピーカ24」に、「演出画像」及び「音響データ」を出力するものであるといえる。そうすると、上記(オ)には、統括CPU、VDP及び音響DSPによって液晶表示装置5及びスピーカ24に演出画像及び音響データを出力する画像音響制御基板140が記載されているといえる。
したがって、上記(エ)、(オ)には、遊技の進行に基づいて、統括CPU、VDP及び音響DSPによって液晶表示装置5及びスピーカ24に演出画像及び音響データを出力して、演出を表現する画像や音を制御する画像音響制御基板140が記載されている。

(ケ) 上記(カ)の【0159】には「統括CPUは、操作内容変更演出処理を行い・・・」と記載されている。ここで、「統括CPU」は、上記(オ)の【0079】に記載されているとおり(上記(ク)で示したとおり)「画像音響制御基板140」が有するものである。
そして、上記(ウ)の【0049】には「操作内容変更演出では・・・演出ボタン26の操作を促す操作内容が変化する・・・装飾図柄を変動表示している状態で操作有効期間が到来すると、当該操作有効期間の前半において遊技者に演出ボタン26の操作を第1操作指示内容(ここでは長押し操作)で促す演出・・・が行われる」と記載され、同【0052】には「遊技者が演出ボタン26を長押しする長押し操作を行い、当該長押し操作が有効であると判定された場合・・・遊技者に演出ボタン26の操作を第1操作指示内容とは異なる第2操作指示内容(ここでは連打操作)で促す演出・・・が行われる」と記載されており、画像音響制御基板140は、統括CPUによる操作内容変更演出に係る処理、つまり操作内容変更演出処理において、当該【0049】?【0052】に記載された処理を行っているといえる。
したがって、上記(ウ)、(カ)には、画像音響制御基板140は、統括CPUによる操作内容変更演出処理において、装飾図柄を変動表示している状態で操作有効期間が到来すると、遊技者に演出ボタン26の操作を長押し操作で促す演出を行い、遊技者が演出ボタン26を長押しする長押し操作を行い、当該長押し操作が有効であると判定された場合、演出ボタン26の操作を長押し操作とは異なる連打操作で促す演出を行うことが可能であることが記載されている。

(コ) 上記(ウ)の【0049】には「演出ボタン26の操作が可能となる操作有効期間の途中で演出ボタン26の操作を促す操作内容が変化する」と記載され、同【0056】には「長押し操作が有効であるか否かの判定基準は、一例として、所定時間(例えば、3秒)以上連続して演出ボタン26を押下し続けた場合、または演出ボタン26を押下した累積時間が所定時間に到達した場合に、長押し操作を有効と判定する」と記載されている。
ここで、「長押し操作が有効であるか否かの判定基準」は、同【0052】に記載された「長押し操作が有効であると判定」する際の基準であって、上記(ケ)で示したとおり、画像音響制御基板140は、統括CPUによる操作内容変更演出処理において、当該基準を用いた処理を行っているといえる。また、上記(ケ)で示したとおり、当該長押し操作が有効であると判定された場合、演出ボタン26の操作を長押し操作とは異なる連打操作で促す演出が行われる。
したがって、上記(ウ)には、画像音響制御基板140は、統括CPUによる操作内容変更演出処理において、所定時間以上連続して演出ボタン26を押下し続けた場合、または演出ボタン26を押下した累積時間が所定時間に到達した場合に、演出ボタン26の操作が可能となる操作有効期間内における長押し操作を有効と判定し、演出ボタン26の操作を長押し操作とは異なる連打操作で促す演出を行うことが記載されている。

以上(ア)?(キ)の記載事項及び(ク)?(コ)の認定事項から、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。a?f、h、z、iは引用発明を分説するため当審で付した。)。

「a 遊技球が第1始動口11を通過して入賞した場合または遊技球が第2始動口12を通過して入賞した場合、遊技者にとって有利な大当たり遊技(特別遊技)を実行するか否かを判定し、判定結果が「大当たり」である場合、大当たり遊技を実行し、遊技の進行を制御する遊技制御基板100と(【0020】、【0023】、【0067】)、
b 遊技者が操作する演出ボタン26と(【0041】)、
c 遊技の進行に基づいて、統括CPU、VDP及び音響DSPによって液晶表示装置5及びスピーカ24に演出画像及び音響データを出力して、演出を表現する画像や音を制御する画像音響制御基板140と(認定事項(ク))
d を備えたパチンコ遊技機1において(【0020】)、
画像音響制御基板140は、
e 統括CPUによる操作内容変更演出処理において、演出ボタン26の長押し時間が計測され、所定の周期に相当する数値が加算され、長押し時間が更新される制御用RAMを備え(【0159】、【0163】、【0169】、【0170】)、
f 制御用RAMに設定されている長押し時間を所定の周期で更新可能であり(【0170】)、
h 統括CPUによる操作内容変更演出処理において、装飾図柄を変動表示している状態で操作有効期間が到来すると、遊技者に演出ボタン26の操作を長押し操作で促す演出を行い、遊技者が演出ボタン26を長押しする長押し操作を行い、当該長押し操作が有効であると判定された場合、演出ボタン26の操作を長押し操作とは異なる連打操作で促す演出を行うことが可能であり(認定事項(ケ))、
z 統括CPUによる操作内容変更演出処理において、演出ボタン26を模したボタン画像および演出ボタン26の長押し操作を促す文字画像を含む操作指示画像DIと、演出ボタン26の操作が有効となる操作有効期間の残り時間を報知するゲージ画像VBとが液晶表示装置5に表示され(【0050】、【0168】)、
i 統括CPUによる操作内容変更演出処理において、所定時間以上連続して演出ボタン26を押下し続けた場合、または演出ボタン26を押下した累積時間が所定時間に到達した場合に、演出ボタン26の操作が可能となる操作有効期間内における長押し操作を有効と判定し、演出ボタン26の操作を長押し操作とは異なる連打操作で促す演出を行う(認定事項(コ))パチンコ遊技機1。」

イ 刊行物2
当審で新たに引用する特開2013-162986号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア) 「【0070】
・・・前記駆動物61が第二位置へ変位した時点(前記想定時間が経過した時点)から前記遊技操作スイッチ67の入操作継続時間が計測される。遊技者がさらに前記遊技操作スイッチ67を押下し続けて入操作状態を継続させ、入操作継続時間が第一段階の操作継続判定時間に到達すると、図27の(27-C)に示すように、前記駆動部物(第一演出部材)61を第二位置に位置させた状態で、前記表示装置(第二演出部材)10の表示がそれまでの第一段階の演出動作から第二段階の演出動作72に変化して実行される。・・・
【0071】
また、前記遊技操作スイッチ67の押下を解除すると、すなわち操作状態を解除する解除操作を行うと、それまでの入操作継続時間が記憶され、図27の(27-D)に示すように、前記表示装置(第二演出部材)10における演出動作の段階的な変化が現在の段階で停止すると共に、前記駆動物61が右側へ略90度回転して前記表示装置(第二演出部材)10に重ならない略垂直上向きに格納された第一位置に変位し、前記蓋62が閉じられる。・・・
【0072】
その後、再び、遊技者が前記遊技操作スイッチ67を押下して入操作を行うと・・・前記遊技操作スイッチ67の入操作継続時間に対する計測が、記憶されている入操作継続時間から再開されて累積(加算)される。
【0073】
さらに遊技者が前記遊技操作スイッチ67を押下し続けて入操作状態を継続させ、入操作継続時間が第二段階の操作継続判定時間に到達すると、図27の(27-F)に示すように、前記駆動部物(第一演出部材)61を第二位置に位置させた状態で、前記表示装置(第二演出部材)10の表示がそれまでの第二段階の演出動作72から第三段階の演出動作73に変化して実行される。・・・
・・・
【0075】
図28に前記遊技操作スイッチ(操作手段)67の操作、前記駆動物(第一演出部材)61の変位、前記表示装置(第二演出部材)10における演出動作、入操作継続時間に関するタイムチャートを示す。図28における遊技操作スイッチ入力の「ON」は押下(入操作)されている状態を示し、一方「OFF」は、押下されていない解除状態を示す。・・・押下時間加算の「ON」は、前記入操作継続時間(押下時間)を累積(加算)している状態を示し、一方「OFF」は前記入操作継続時間(押下時間)の累積(加算)を停止している状態を示す。」

(イ) 「【0122】
10msタイマ割り込み処理(S500)では、図23に示すように、スイッチ状態取得処理(S501)、音声制御処理(S502)、報知タイマ判定処理(S503)、メインコマンド解析処理(S504)、ランプ処理(S505)が行われる。
・・・
【0125】
前記メインコマンド解析処理(S504)では、図24及び図25に示すように、まず前記主制御基板200から受信したコマンドの有無が確認され(S504-1)、受信コマンドが無い場合にはこのメインコマンド解析処理(S504)が終了する。一方、受信コマンドが有る場合には、受信したコマンドが変動コマンドか確認される(S504-2)。・・・
・・・
【0127】
それに対して、受信した変動コマンドが操作演出有りの変動パターン(操作演出変動パターン)の場合には、予告SW処理(S504-5)が行われ、その後にこのメインコマンド解析処理(S504)が終了する。
【0128】
予告SW処理(S504-5)は、演出部材制御手段に相当し、図25に示すように、まず駆動タイマの値が0が確認される(S504-5-1)。前記駆動タイマは前記駆動物61の変位開始と共に減算が開始される。前記駆動タイマの初期値T1は、前記駆動物(第一演出部材)61が第一位置から第二位置へ到達するのに要する想定時間であり、本実施例では200msに相当するカウント数からなる想定時間に設定されている。・・・前記駆動タイマの値が0ではない場合、現在のタイマの値から1減算され(S504-5-12)、この予告SW処理(S504-5)が終了する。一方、前記駆動タイマの値が0の場合、前記遊技操作スイッチ(操作手段)67が押下(入操作)状態か確認される(S504-5-2)。
・・・
【0130】
前記S504-5-2で遊技操作スイッチ(操作手段)67が押下(入操作)状態と判断されると、前記駆動物(第一演出部材)61が出現位置(第二位置)あるいは格納位置(第一位置)の何れに位置するか判断される(S504-5-3)。前記駆動物(第一演出部材)61が出現位置(第二位置)に位置する場合には、後述する予告SU制御処理(S504-5-4)が行われ、その後にこの予告SW処理(S504-5)が終了する。
・・・
【0133】
前記予告SU制御処理(S504-5-4)では、図26に示すように、まず押下タイマが1加算されて更新され、記憶される(S504-5-4-1)。押下タイマは、前記駆動物(第一演出部材)61が出現位置(第二位置)となった状態で前記遊技操作スイッチ(操作手段)67が入操作とされている時間(入操作継続時間)を計測し記憶するタイマである。・・・」

上記記載事項から、以下のことがいえる(認定)。

(ウ) 上記(ア)の【0070】には「遊技者がさらに前記遊技操作スイッチ67を押下し続けて入操作状態を継続させ、入操作継続時間が第一段階の操作継続判定時間に到達すると・・・前記表示装置(第二演出部材)10の表示がそれまでの第一段階の演出動作から第二段階の演出動作72に変化して実行される」と記載され、同【0071】には「前記遊技操作スイッチ67の押下を解除すると・・・それまでの入操作継続時間が記憶され」と記載され、同【0072】には「その後、再び、遊技者が前記遊技操作スイッチ67を押下して入操作を行うと・・・前記遊技操作スイッチ67の入操作継続時間に対する計測が、記憶されている入操作継続時間から再開されて累積・・・される」と記載され、同【0073】には「入操作継続時間が第二段階の操作継続判定時間に到達すると・・・前記表示装置(第二演出部材)10の表示がそれまでの第二段階の演出動作72から第三段階の演出動作73に変化して実行される」と記載されている。
これらの記載から、上記(ア)には、遊技操作スイッチ67の入操作継続時間を累積して記憶することが記載されている。
また、上記(イ)の【0122】には「10msタイマ割り込み処理(S500)では・・・メインコマンド解析処理・・・が行われる」と記載され、同【0128】には「予告SW処理(S504-5)」において「駆動タイマの初期値T1は・・・200msに相当するカウント数からなる想定時間に設定され・・・現在のタイマの値から1減算され」と記載され、同【0133】には「押下タイマが1加算されて更新され、記憶される・・・押下タイマは・・・前記遊技操作スイッチ(操作手段)67が入操作とされている時間(入操作継続時間)を計測し記憶するタイマである」と記載されている。
ここで、同【0128】に記載された「駆動タイマ」は、「200msに相当するカウント数」が設定され、10msタイマ割り込みに基づいて1減算されるものであって、当該タイマに記憶されるカウント数は、所定の時間に関連付けた情報であることは明らかである。そして、「駆動タイマ」と同様に、同【0113】に記載された「押下タイマ」についても、10msタイマ割り込みに基づいて1加算されるものであって、当該タイマに記憶されるカウント数が、同【0113】に記載された「遊技操作スイッチ67」の「入操作継続時間」に関連付けた情報であることも明らかである。そうすると、上記(イ)には、遊技操作スイッチ67の入操作継続時間に関連付けたカウント数を記憶する押下タイマが記載されている。
したがって、上記(ア)、(イ)から、刊行物2には、遊技操作スイッチ67の入操作継続時間に関連付けたカウント数を累積して記憶する押下タイマが記載されている。

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(対比の見出しとしての(a)?(f)は引用発明の分説構成と対応させた。)。

(a) 引用発明における「遊技球が第1始動口11を通過して入賞した場合または遊技球が第2始動口12を通過して入賞した」こと、「遊技者にとって有利な大当たり遊技(特別遊技)」を「実行するか否かを判定」すること、「判定結果が「大当たり」である場合、大当たり遊技を実行し、遊技の進行を制御する」こと、「遊技制御基板100」は、それぞれ、本願補正発明における「始動条件」が「成立」したこと、「特別遊技」を「行うか否かを判定」すること、「判定結果に基づいて遊技を進行する」こと、「遊技制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の「遊技球が第1始動口11を通過して入賞した場合または遊技球が第2始動口12を通過して入賞した場合、遊技者にとって有利な大当たり遊技(特別遊技)を実行するか否かを判定し、判定結果が「大当たり」である場合、大当たり遊技を実行し、遊技の進行を制御する遊技制御基板100」は、本願補正発明の「始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定し、判定結果に基づいて遊技を進行する遊技制御手段」に相当する。

(b) 引用発明の「遊技者が操作する演出ボタン26」は、本願補正発明の「遊技者による操作が可能な操作手段」に相当する。

(c) 引用発明における「液晶表示装置5及びスピーカ24」、「演出画像及び音響データを出力して、演出を表現する画像や音を制御する」こと、「画像音響制御基板140」は、それぞれ、本願補正発明における「所定の演出手段」、「遊技演出を実行させる」こと、「演出制御手段」に相当する。
したがって、引用発明の「遊技の進行に基づいて、統括CPU、VDP及び音響DSPによって液晶表示装置5及びスピーカ24に、演出画像及び音響データを出力して、演出を表現する画像や音を制御する画像音響制御基板140」は、本願補正発明の「遊技の進行に基づいて所定の演出手段に遊技演出を実行させる演出制御手段」に相当する。

(d) 引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

(e) 引用発明の「演出ボタン26の長押し時間」は、本願補正発明の「前記操作手段が継続操作されている時間」に相当する。
そして、引用発明において「統括CPUによる操作内容変更演出処理において、演出ボタン26の長押し時間が計測され、所定の周期に相当する数値が加算され、長押し時間が更新される」際の、当該更新される長押し時間は、「演出ボタン26の長押し時間」に関連付いていることは明らかであって、本願補正発明の「前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報」に相当する。
また、引用発明において、「所定の周期に相当する数値」が「加算」され「制御用RAM」が「更新」されるということは、当該数値によるプラスのカウントが行われて、当該カウントに係る数値、つまりカウント数が「制御用RAM」に「記憶」されているといえる。
そうすると、引用発明の「長押し時間が更新される制御用RAM」は、本願補正発明の「前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報を記憶する」「カウント数記憶部」に相当する。
したがって、引用発明において、「画像音響制御基板140」は「統括CPUによる操作内容変更演出処理において、演出ボタン26の長押し時間が計測され、所定の周期に相当する数値が加算され、長押し時間が更新される制御用RAM」を備えることは、本願補正発明において、「演出制御手段」は「前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報を記憶する」「カウント数記憶部」を備えることに相当する。

(f) 引用発明の「制御用RAMに設定されている長押し時間」は、本願補正発明の「記憶部に記憶された情報」に相当する。
また、引用発明において、「所定の周期で更新可能」であることは、本願補正発明において、「一定間隔のサンプリングタイミング毎に更新可能」であることに相当する。
したがって、引用発明において、「制御用RAMに設定されている長押し時間を所定の周期で更新可能」であることは、本願補正発明において、「記憶部に記憶された情報を一定間隔のサンプリングタイミング毎に更新可能」であることに相当する。

(z) 引用発明において「演出ボタン26を模したボタン画像および演出ボタン26の長押し操作を促す文字画像を含む操作指示画像DIと、演出ボタン26の操作が有効となる操作有効期間の残り時間を報知するゲージ画像VB」は、いずれも「演出ボタン26の操作が有効となる操作有効期間」に表示されるものであることは明らかであって、本願補正発明において「前記長押し演出を行うことが可能な予め定められた所定期間に」報知されるものであるといえる。
また、引用発明において当該「操作指示画像DI」と「ゲージ画像VB」は、いずれも遊技者に対し「演出ボタン26」の「長押し操作」が可能であることを報知するものであることも明らかであって、引用発明においてこれらの画像を表示することは、本願補正発明において「遊技者に対し所定の長押し操作が可能であることを報知する長押し指示演出を実行」することに相当する。
したがって、引用発明において、「画像音響制御基板140」は「統括CPUによる操作内容変更演出処理において、演出ボタン26を模したボタン画像および演出ボタン26の長押し操作を促す文字画像を含む操作指示画像DIと、演出ボタン26の操作が有効となる操作有効期間の残り時間を報知するゲージ画像VBとが液晶表示装置5に表示され」ることは、本願補正発明において、「演出制御手段」は「前記長押し演出を行うことが可能な予め定められた所定期間に遊技者に対し所定の長押し操作が可能であることを報知する長押し指示演出を実行」することに相当する。

以上の検討より、本願補正発明と引用発明とは、
「A 始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定し、判定結果に基づいて遊技を進行する遊技制御手段と、
B 遊技者による操作が可能な操作手段と、
C 遊技の進行に基づいて所定の演出手段に遊技演出を実行させる演出制御手段と
D を備えた遊技機において、
前記演出制御手段は、
E’ 前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報を記憶するカウント数記憶部を備え、
F’ 前記カウント数記憶部に記憶された情報を一定間隔のサンプリングタイミング毎に更新可能であり、
Z 前記長押し演出を行うことが可能な予め定められた所定期間に遊技者に対し所定の長押し操作が可能であることを報知する長押し指示演出を実行する遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]:本願補正発明では「前記操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶するエッジ記憶部」を備えるのに対し、引用発明ではそのような記憶部を備えることについて特定がされていない点。(E)

[相違点2]:カウント数記憶部に関し、本願補正発明では「オン信号」のカウント数記憶部であって、「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタおよび、累積オン信号数カウンタを含」むのに対し、引用発明ではそのような特定がされていない点。(E、G)

[相違点3]:本願補正発明では「特定遊技演出を実行しているときに、前記操作手段に対して、遊技者により所定の長押し操作が行われることを条件に前記特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことが可能であり」、「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合に、前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作であると判断し、前記長押し演出を行う」のに対し、引用発明では、演出ボタン26の長押し操作が有効であると判定された場合、長押し操作で促す演出を連打操作で促す演出に変化させているが、本願補正発明のような特定がされていない点。(H、I)

(4) 判断
ア 相違点1について
遊技機において、操作手段の操作状態の変化を把握するために、操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶するエッジ記憶部を備えることは、本願の出願日前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である(例えば、特開2014-144066号公報(【0113】?【0117】、図9参照。)には、設定スイッチSET、音量スイッチVSWを含む各種のスイッチ信号を取得し、ONエッジとOFFエッジを検出して、対応する記憶領域に記憶することが記載され、特開2010-148569号公報(【0158】、【0159】、【0199】、【0202】参照。)には、スイッチがOFFからONに変化した場合には、該当するスイッチがOFFからONに変化した旨を示す立上りエッジを設定し、ONからOFFに変化した場合には、該当するスイッチがONからOFFに変化した旨を示す立下りエッジを設定し、エッジデータは格納領域に格納されていることが記載されている。)。
そして、引用発明において演出ボタン26の操作状態の変化を把握するために、周知技術1を適用して、エッジ記憶部を備えることで、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
遊技機において、操作手段が継続操作されている時間に関連付けたカウント数を記憶するために、「オン信号」のカウント数記憶部である「オン-オフエッジ間オン信号数カウンタ」を備えることは、本願の出願日前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である(例えば、上記アでも示した特開2014-144066号公報(【0116】、【0117】参照。)には、1mS毎にインクリメント更新され、音量スイッチVSWが継続してON操作されている継続時間を計測する長押しカウンタCNTが、立上りエッジ(ONエッジ)が検出された場合には、インクリメント更新され、立下りエッジ(OFFエッジ)が検出された場合には、ゼロクリアされるカウンタであることが記載され、特開2014-64693号公報(【0090】参照。)には、操作子の操作による入力検知を行うための1mS毎の処理において、操作子の操作検出信号について、入力信号波形のHが検知され、カウンタのインクリメントが行われる入力カウンタが、信号波形にエッジが検出されたらリセットし、その後、エッジが発生しない期間、カウントアップしていくカウンタであることが記載されている。)。
また、刊行物2に記載された事項における「遊技操作スイッチ67の入操作継続時間に関連付けたカウント数を累積して記憶する押下タイマ」は、遊技操作スイッチ67の入操作があること、つまり当該スイッチの入力が「ON」(【0075】)であることを累積してカウントするものであるから、「オン信号」のカウント数記憶部であって、「累積オン信号数カウンタ」であるといえる。
そして、引用発明は、「所定時間以上連続して演出ボタン26を押下し続けた場合」(以下、「前者の場合」という。)と「演出ボタン26を押下した累積時間が所定時間に到達した場合」(以下、「後者の場合」という。)のそれぞれについて「長押し操作を有効と判定」し得るものである。そして、前者の場合と後者の場合とは、互いに他方が生じたことに影響されるものではない。
したがって、引用発明における長押し判定のためのカウント数記憶部として、それぞれ、前者の場合に周知技術2に係るオン-オフエッジ間オン信号数カウンタを適用し、後者の場合に刊行物2に記載された事項に係る押下タイマを適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

ウ 相違点3について
遊技機において、特定遊技演出を実行しているときに、操作手段に対して、遊技者により所定の長押し操作が行われることを条件に当該特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことが可能であり、当該特定遊技演出に基づいて定められた所定期間内(操作有効期間内)に当該長押し操作時間が長押し操作であると判定し得る長さに達すると当該長押し演出を行うことは、本願の出願日前に周知の技術(以下、「周知技術3」という。)である(例えば、特開2014-23832号公報(【0081】?【0093】、【0134】、図4、5参照。)には、リーチ演出が実行されているときに、演出操作ボタン70の操作を有効として受け付け可能な第2操作有効期間となり、演出操作ボタン70の操作を検知した回数を計数する操作カウンタが規定数となったときに、演出操作ボタン70の長押し操作があったと判断し、被覆画像が表示されていた被覆画像表示領域HRの一部が、示唆画像が表示される示唆画像表示領域SRに変化するように表示されることなどが記載され、特開2014-188119号公報(【0039】、【0040】、【0046】参照。)には、リーチ演出中に、ボタン演出が始まった際にはボタン操作有効期間が始まって、所定時間に亘って操作ボタン82の操作が有効となり、演出図柄表示装置60の表示領域194に操作ボタン82の図柄とともに、「長押しせよ」といった文字が表示され、遊技者がこれに従って操作ボタン82を比較的長時間に亘って押圧し続けると、登場人物がコメントを発するような演出や、味方キャラクタが敵キャラクタに対する攻撃を行うような演出を行うことが記載されている。)。
ここで、引用発明は、上記「(2) ア」で示した認定事項(コ)のとおり、演出ボタン26の長押し操作が有効であると判断された場合、演出内容を変化させるものである。
また、刊行物1(【0089】参照。)には、演出としてリーチ有りの演出を行うことが記載されている。
そうすると、引用発明において、演出ボタン26に対する長押し操作であるとの判定と、演出ボタン26の長押し操作に基づく演出の内容の、それぞれに関して、当該判定については、上記イで示したとおり、刊行物2に記載された事項に係る押下タイマ又は周知技術2のオン-オフエッジ間オン信号数カウンタをカウント数記憶部として用いることは当業者であれば適宜なし得たことであり、また、当該演出の内容としては、周知技術3の長押し演出を適用し、リーチ有りの演出などの特定遊技演出を実行しているときに当該特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことも、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、引用発明において、演出ボタン26に対する長押し操作であるとの判定について刊行物2に記載された事項に係る押下タイマ又は周知技術2のオン-オフエッジ間オン信号数カウンタを、また、演出ボタン26の長押し操作に基づく演出の内容について周知技術3の長押し演出をそれぞれ適用して、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

エ 請求人の主張及び本願補正発明が奏する効果について
請求人は、審判請求書(3.(4))において、本願補正発明(注:審判請求書では「本願発明」と記載されている)と引用発明の相違点について、「相違点1:本願発明が、操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶、更新する構成である」点、「相違点2:本願発明が、オン-オフエッジ間オン信号数カウンタおよび、累積オン信号数カウンタの情報を記憶、更新する構成である」点、「相違点3:本願発明が、累積オン信号数カウンタまたは累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合に、所定期間内における遊技者により操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作であると判断する構成である」点の3点を指摘した上で、「本願発明は、相違点2及び3の構成を有することにより、長押し演出の契機となる長押し操作とそれ以外の操作との判別を精度よく行うことができる、という効果を奏することができます」と主張し、また、引用発明には「相違点2及び3の構成は開示されておらず、それを示唆する記載もありません。よって、相違点1の構成が周知の技術的手段であるか否かに関わらず、本願発明は・・・当業者が容易に想到し得るものではありません」と主張する。
しかしながら、請求人が主張する相違点1は、上記(3)で示した相違点1に含まれており、この点については上記アで検討したとおりである。また、請求人が主張する相違点2は、上記(3)で示した相違点2に含まれており、この点については上記イで検討したとおりである。さらに、請求人が主張する相違点3は、上記(3)で示した相違点3に含まれており、この点については上記ウで検討したとおりである。
また、請求人による「長押し操作とそれ以外の操作との判別を精度よく行うことができる」という効果の主張は、当該「精度」が何らかの手法と比べて定性的あるいは定量的によいといったことまでを主張するものではなく、単に、本願補正発明(構成I)では「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合に」「前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作であると判断」することによって、長押し操作であるとの判定が行えるという程度の効果を主張するものであるといえる。そうすると、引用発明において、上記イ及びウで示したとおり、長押し操作であるとの判定について、刊行物2に記載された事項に係る押下タイマ又は周知技術2のオン-オフエッジ間オン信号数カウンタをカウント数記憶部として用いた場合にも、長押し操作であるとの判定が行えることは自明であって、本願補正発明と同じ効果を奏するといえる。
さらに、請求人が主張する上記効果以外で、上記相違点によって本願補正発明が奏する効果も、当業者が引用発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。

(5) まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明、刊行物2に記載された事項及び周知技術1?3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年5月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(A?F、H、Z、I’は本願発明を分説するため当審で付した。)。

「【請求項1】
A 始動条件の成立により特別遊技を行うか否かを判定し、判定結果に基づいて遊技を進行する遊技制御手段と、
B 遊技者による操作が可能な操作手段と、
C 遊技の進行に基づいて所定の演出手段に遊技演出を実行させる演出制御手段と
D を備えた遊技機において、
前記演出制御手段は、
E 前記操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶するエッジ記憶部、及び前記操作手段が継続操作されている時間に関連付けた情報を記憶するオン信号カウント数記憶部を備え、
F 前記エッジ記憶部内及び前記オン信号カウント数記憶部に記憶された情報を一定間隔のサンプリングタイミング毎に更新可能であり、
H 特定遊技演出を実行しているときに、前記操作手段に対して、遊技者により所定の長押し操作が行われることを条件に前記特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことが可能であり、
Z 前記長押し演出を行うことが可能な予め定められた所定期間に遊技者に対し所定の長押し操作が可能であることを報知する長押し指示演出を実行し、
I’ 前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作に基づいて、前記長押し演出を行うことを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された事項
刊行物1の記載事項、認定事項及び刊行物1に記載された発明(引用発明)については、上記「第2 3 (2) ア」で示したとおりである。

3 対比、判断
本願発明は、「オン信号カウント数記憶部」に関して、上記「第2 3 (1)」で示した本願補正発明において、「前記オン信号カウント数記憶部には、オン-オフエッジ間オン信号数カウンタおよび、累積オン信号数カウンタを含み」とされていた事項(G)を省くとともに、「前記特定遊技演出に基づいて定められた所定期間内における遊技者により前記操作手段が長押し操作されている長押し操作時間」に基づいて「前記長押し演出を行うこと」に関して、当該長押し演出を行う場合が「前記累積オン信号数カウンタまたは前記累積オン信号数カウンタが所定値以上であると判定した場合」であるとされていた事項(Iの一部)を省きつつ、あわせて「長押し操作であると判断し」とされていた事項(Iの一部)を「長押し操作に基づいて」としたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

[相違点1]:本願発明では「前記操作手段が非操作状態から操作状態に変化したこと又は操作状態から非操作状態に変化したことを示す情報を記憶するエッジ記憶部」を備えるのに対し、引用発明ではそのような記憶部を備えることについて特定がされていない点。(E)(上記「第2 3 (3)」で示した相違点1と同じ)

[相違点2]:カウント数記憶部に関し、本願発明では「オン信号」のカウント数記憶部であるのに対し、引用発明ではそのような特定がされていない点。(E)(上記「第2 3 (3)」で示した相違点2の一部)

[相違点3]:本願発明では「特定遊技演出を実行しているときに、前記操作手段に対して、遊技者により所定の長押し操作が行われることを条件に前記特定遊技演出の実行態様を変化させる長押し演出を行うことが可能であり」、「前記所定期間内における遊技者により前記操作手段が操作されている操作のうち、所定の条件を満たす長押し操作に基づいて、前記長押し演出を行う」のに対し、引用発明ではそのような特定がされていない点。(H、I’)(上記「第2 3 (3)」で示した相違点3の一部)

しかしながら、これらの相違点については、いずれも上記「第2 3 (3)」で示した相違点1?3に含まれることであって、上記「第2 3 (4)」で示したとおり、当業者が引用発明及び周知技術1?3に基づいて適宜又は容易になし得たことである。
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術1?3に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-31 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2014-238438(P2014-238438)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 石原 徹弥
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人JAZY国際特許事務所  

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