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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A45D
管理番号 1328818
審判番号 無効2016-800085  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-07-21 
確定日 2017-05-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第5230864号発明「美肌ローラ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5230864号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成19年12月14日に出願した特願2007-324077号であって、平成25年3月29日にその請求項1ないし7に係る発明について特許の設定登録がなされた。
本件無効審判は、平成28年7月21日付けで、無効審判請求人 ベノア・ジャパン株式会社(以下、「請求人」という。)により、「特許第5230864号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」として請求がなされたものであって、本件審判の手続の概要は以下のとおりである。

平成28年 7月21日 審判請求書
平成28年11月22日 審判事件答弁書
平成28年12月15日 審理事項通知書
平成29年 1月27日 口頭審理陳述要領書、及び上申書(請求人より提出)
平成29年 1月30日 口頭審理陳述要領書(被請求人より提出)
平成29年 2月 2日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人より提出)
平成29年 2月 2日 審理事項通知書
平成29年 2月13日 口頭審理陳述要領書(3)(請求人より提出)
平成29年 2月13日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人より提出)
平成29年 2月13日 口頭審理
平成29年 2月15日 上申書(2)、及び証拠説明書(3)(請求人より提出)
平成29年 2月20日 証拠説明書(被請求人より提出)
平成29年 3月 3日 上申書(3)(請求人より提出)

第2 請求人の主張
請求人は「特許第5230864号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」を請求の趣旨とし、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出し、次の無効理由を主張する。

1 無効理由1
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2ないし4号証に記載された周知技術、及び甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証の1、又は甲第8号証の1に記載された発明のいずれかの発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

2 無効理由2
本件特許の請求項6及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2ないし4号証に記載された周知技術、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証の1、又は甲第8号証の1に記載された発明のいずれかの発明、及び甲第9号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 証拠方法
甲第1号証:特開2005-66304号公報
甲第2号証:特開2002-65867号公報
甲第3号証:特開昭60-2207号公報
甲第4号証:特開昭61-73649号公報
甲第5号証:特開平4-231957号公報
甲第6号証:特開2004-321814号公報
甲第7号証の1:韓国意匠登録第30-0399693号公報
甲第7号証の2:韓国意匠登録第30-0399693号公報の翻訳文
甲第8号証の1:台湾実用新案公報M258730号公報
甲第8号証の2:台湾実用新案公報M258730号公報の翻訳文
甲第9号証:登録実用新案第3109896号公報
甲第10号証の1:韓国意匠審査基準(一部抜粋)のPDFデータを印刷したもの
甲第10号証の2:韓国意匠審査基準(一部抜粋)のPDFデータを印刷したものの翻訳文
甲第11号証:広辞苑第4版1800頁「投影」の項
甲第12号証:広辞苑第4版2178頁「美肌」の項
甲第13号証の1:米国再発行特許発明第19696号明細書
甲第13号証の2:米国再発行特許発明第19696号明細書の翻訳文
甲第14号証の1:米国特許第2011471号明細書
甲第14号証の2:米国特許第2011471号明細書の翻訳文
甲第15号証の1:仏国特許出願公開第2891137号明細書
甲第15号証の2:Espacenet(https://worldwide.espacenet.com/)で英語表示した仏国特許出願公開第2891137号明細書の書誌事項ページを2017年2月10日に表示し印刷したもの
甲第15号証の3:仏国特許出願公開第2891137号明細書の翻訳文

第3 被請求人の主張
被請求人は「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」を答弁の趣旨とし、次のとおり主張する。

1 本件特許の請求項1に係る発明について
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術、甲第5ないし8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項違反となる無効理由はない。

2 本件特許の請求項2に係る発明について
本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術、甲第5ないし8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項違反となる無効理由はない。

3 本件特許の請求項3ないし7に係る発明ついて
本件特許の請求項3ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された周知技術、甲第5ないし8号証、甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項違反となる無効理由はない。

4 証拠方法
乙第1号証:審判請求書(特許第5702019号)抄
乙第2号証:株式会社ファイブスターのホームページを印刷したもの
乙第3号証:特開2009-142509号公報
乙第4号証:アマゾンの毛穴シェイプローラーのホームページ(https://www.amazon.co.jp/グリム-12316-毛穴シェイプロ-ラ-/dp/B0015R1LEQ)を2017年2月9日に表示し印刷したもの
乙第5号証:ゲルマニウム専門店GE32の毛穴シェイプローラーのホームページ(http://www.airm7.com/germa/keana.html)を2017年2月10日に表示し印刷したもの

第4 当審の判断
1 本件発明について
(1)本件特許請求の範囲及び明細書の記載事項
本件の特許請求の範囲及び明細書には、以下の記載がある。

ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄と、
前記柄の一端に導体によって形成された一対のローラと、
生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と、を備え、
前記ローラの回転軸が、前記柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、
前記一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられた、
美肌ローラ。
【請求項2】
導体によって形成された一対のローラと、
前記一対のローラを支持する把持部と、
生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と、を備え、
前記ローラの回転軸が、前記把持部の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、
前記一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられた、
美肌ローラ。
【請求項3】
前記ローラが金属によって形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の美肌ローラ。
【請求項4】
前記ローラが金属の酸化物によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の美肌ローラ。
【請求項5】
前記金属が、
プラチナ、チタン、ゲルマニウム、ステンレス
から1種類以上選ばれることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の美肌ローラ。
【請求項6】
前記ローラが光触媒を含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の美肌ローラ。
【請求項7】
前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする、請求項6に記載の美肌ローラ。」

イ「【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に押し付けてころがすことにより毛穴の中の汚れを押し出す美肌ローラに関する。」

ウ「【背景技術】
【0002】
・・・洗顔料や洗浄剤だけでは、毛穴の奥にたまった汚れまでは取り出すことはできないという問題点があった。・・・
【0004】
・・・効率よく毛穴の汚れを取り除けないという問題点があった。」

エ「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、効率よく毛穴の汚れを除去できる美肌ローラを提供することを目的とする。」

オ「【発明の効果】
【0008】
本発明の美肌ローラによれば、毛穴の汚れを効率的に除去できるという効果がある。」

カ「【0015】
・・・本実施形態の美肌ローラを肌に押し付け、図3に示す矢印Aの方向に押す。このとき肌は両脇に引っ張られ、毛穴が開く。これにより、毛穴の奥の汚れが毛穴の開口部に向けて移動する。
【0016】
さらに、本実施形態の美肌ローラを肌に押し付けたまま矢印Bの方向に引く。このとき、肌は一対のローラの間に挟み込まれ、毛穴は収縮する。これにより、毛穴の中の汚れが押し出される。
【0017】
この押し引きを繰り返すことにより、毛穴の奥の汚れまで効率的に除去することが可能となる。
【0018】
また、太陽電池30により生成した電流をローラ20に通電することにより、ローラ20が帯電し、毛穴の汚れを引き出し、さらに美肌効果をもたらす。・・・」

(2)本件特許発明について
ア 上記(1)のイ?エの記載によれば、本件発明は、「毛穴の奥にたまった汚れまでは取り出すことはできないという問題点を解決すべく、効率よく毛穴の汚れを除去できる美肌ローラの提供」を課題としており、上記(1)のカの記載を参酌すれば、本件発明の「美肌ローラ」は、「肌に押し付け」一方向に「押す」と「肌は両脇に引っ張られ、毛穴が開」き、「毛穴の奥の汚れが毛穴の開口部に向けて移動」し、他方向に「引く」と「肌は一対のローラの間に挟み込まれ、毛穴は収縮」し、「毛穴の中の汚れが押し出される」ものであり、さらに「太陽電池30により生成した電流をローラ20に通電することにより、ローラ20が帯電し、毛穴の汚れを引き出し、さらに美肌効果をもたらす」ものといえる。つまり、本件発明は、押し引きを繰り返すことで、毛穴の奥の汚れまで効率的に除去することが可能な「一対のローラ」という構成と、ローラを帯電させる「太陽電池」という構成が相俟って、「毛穴の汚れを効率的に除去する」という相乗効果を奏するものであると認められる。

イ そして、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件特許発明1ないし7」という。また、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、上記特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。

ウ 請求人は、「すなわち,微弱電流の通電によって,皮膚の汚れが引き出されるとの作用は,一対のローラによる肌の摘まみ上げとは関係なく,それ自体で,独立して生じる作用であり,本件特許の明細書においても,そのように記載されている。」(口頭審理陳述要領書15頁13行?15行)と主張しているが、上記アのとおり、本件発明の「毛穴の汚れを効率的に除去する」という効果は、上記「一対のローラ」という構成と上記「太陽電池」という構成とが奏する相乗効果によって得られるものであり、請求人の主張するような「それぞれ独立して生じる作用」から得られるものとはいえず、当該請求人の主張は採用できない。

2 無効理由1について
(1) 刊行物の記載事項
(1-1)甲第1号証
甲第1号証には、「マッサージ器」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審にて付与した。
ア 「【技術分野】【0001】本発明は、皮膚の活性化を図るマッサージ器に関する。
【0002】女性にとって皮膚を美しくし、その美しい皮膚を長く保つことは古来からの願望であり、そのために多くの化粧品やマッサージ器等が発明されている。・・・」

イ 「【0014】かかるマッサージ器であると、直流電源の一方の端子(陽極)をローラに接続し、直流電源の他方の端子(陰極)を把持部の外周面に接続した場合には、皮膚の老廃物を浮きださせる効果があり、直流電源の端子の接続を切り替え、直流電源の他方の端子(陰極)ローラにを接続し、直流電源の一方の端子(陽極)を把持部に接続した場合には、皮膚にゲルマニウムを浸透させて皮膚の血流を良くするという効果がある。
【0015】また、前記ローラ支持部は二股になっており、2つのローラが離れて支持されていると、皮膚に与える機械的な刺激が大きくなるというメリットがある。」

ウ 「【0022】以下、本発明の実施の形態に係るマッサージ器について説明する。
【実施例1】【0023】まず、本発明の第1の実施の形態に係るマッサージ器について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るマッサージ器の概略的断面図・・・である。
【0024】図1に示すマッサージ器は、外周面に金薄膜120が、さらにその上にゲルマニウム薄膜130がそれぞれ被着された略円柱状の永久磁石110であるローラ100と、先端部にローラ100が回転自在に取り付けられると共に当該ローラ100と電気的に接続された導電性を有するローラ支持部200と、このローラ支持部200の基端部を保持する一方、当該ローラ支持部200と電気的に絶縁された把持部300と、この把持部300の内部に収納される直流電源400とを備えている。以下、各部を詳しく説明する。
【0025】前記ローラ100は、図2に示すように、中央に貫通孔111が開設された永久磁石110と、この永久磁石110の外面に被着された金薄膜120と、この金薄膜120の上で、かつ永久磁石110の外周面に相当する部分に被着されたゲルマニウム薄膜130とを有している。前記永久磁石には、例えばフェライト磁石が使用される。
【0026】また、前記ローラ支持部200は、略T字形状に形成されており、その横軸部210(即ち、先端部)の2つの先端にそれぞれ前記ローラ100を回転可能に支持するようになっている。また、このローラ支持部200の縦軸部220(即ち、基端部)の下端は後述する直流電源400としての乾電池の一方の端子410(ここでは、陽極)又は他方の端子420(ここでは、陰極)の何れか一方の端子が接触するようになっている。なお、このローラ支持部200は、導電性を有する金属から構成されている。
【0027】さらに、前記把持部300は、このマッサージ器を使用する際に手で把持する部分であって、内部に直流電源400である乾電池を収納可能なように円筒形状になった把持部本体310と、この把持部本体310の下端縁部に取り付けられる蓋体320とを有している。・・・
【0029】かかる把持部300を構成する把持部本体310と蓋体320とは、導電性を有する金属から構成されている。・・・
【0031】把持部300とローラ支持部200とは、前記キャップ330を介して構造的に連結してはいるが、キャップ330が絶縁性を有する素材から構成されているために、電気的には絶縁されていることになる。」

エ 「【0032】次に、このように構成されたマッサージ器の使用方法について説明する。まず、皮膚から老廃物を浮きださせる場合の使用方法について説明する。この場合には、図1に示すように、ローラ100を直流電源400の一方の端子410に接続し、把持部300を直流電源400の他方の端子420に接続する。すなわち、直流電源400である乾電池の一方の端子410をローラ支持部200の縦軸部220の下端に接触させ、直流電源400である乾電池の他方の端子420を蓋体320の突起322に接触させるのである。この状態で、把持部300を把持し、ローラ100を皮膚に接触させると、ローラ100が接触している皮膚に含まれている老廃物、例えば油分等が皮膚から浮き上がる。
【0033】すなわち、直流電源400からの数μA程度の微弱な電流が、直流電源400→ローラ支持部200→ローラ100→人間の身体→把持部本体310→蓋体320→直流電源400のように流れる。この場合、ローラ100は正に帯電し、把持部300は負に帯電しているので、皮膚は正に帯電する。このため、皮膚に含まれる負に帯電した油分が皮膚から浮き上がるのである。
【0034】また、ゲルマニウムを肌に浸透させ、血流を良くする場合には、図3に示すように、乾電池である直流電源400を入れ換え、ローラ100を直流電源400の他方の端子420に接続し、把持部300を直流電源400の一方の端子410に接続する。すなわち、直流電源400である乾電池の他方の端子420をローラ支持部200の縦軸部220の下端に接触させ、直流電源400である乾電池の一方の端子410を蓋体320の突起322に接触させるのである。この状態で、把持部300を把持し、ローラ100を皮膚に接触させると、ローラ100が接触している皮膚にゲルマニウムが浸透し、皮膚の血流が良くなる。
【0035】すなわち、直流電源400からの数μA程度の微弱な電流が、直流電源400→蓋体320→把持部本体310→人間の身体→ローラ100→ローラ支持部200→直流電源400のように流れる。この場合、ローラ100は負に帯電し、把持部300は正に帯電しているので、皮膚は負に帯電する。このため、ローラ100のゲルマニウム薄膜130中のゲルマニウム原子GeがゲルマニウムイオンGe^(4+)となってローラ100から皮膚へ浸透するのである。
【0036】なお、ローラ100は2つあるので、ローラが1つのタイプのものより皮膚に与える機械的刺激が多くなるというメリットがある。
【0037】このようなマッサージ器は、把手部300直流電源400の一方の端子410を把持部300の外周面に、他方の端子420をローラ支持部200に、又は他方の端子420を把持部300の外周面に、一方の端子410をローラ支持部200に電気的に接続するように切り替えるための切替スイッチを設け、直流電源400の端子の切り替えを簡単にすることができる。」


オ 図1から「把持部300の上端縁部に設けたキャップ330を介して、T字形状のローラ支持部200の縦軸部220が把持部300にその長軸方向の中心線に合致するように接続されていること。」が看取できる。

カ また、図1から「一対のローラ100,100がT字形状のローラ支持部200の横軸部210の2つの先端に設けられていること。また、一対のローラ100,100は、ローラ支持部200の縦軸部220の縦軸方向の中心線と平行に、且つ等距離に配されていること。」が看取できる。

キ さらに、図1から「把持部300の内部に乾電池400を備え、乾電池の陽極410がローラ支持部200と接触し、乾電池の陰極が把持部の下端縁部に取り付けられた蓋体320の突起322と接触していること。」が看取できる。

ク 上記摘記事項アの「マッサージ器」は、上記摘記事項ウの「図1に示すマッサージ器は、外周面に金薄膜120が、さらにその上にゲルマニウム薄膜130がそれぞれ被着された略円柱状の永久磁石110であるローラ100と、先端部にローラ100が回転自在に取り付けられると共に当該ローラ100と電気的に接続された導電性を有するローラ支持部200と、このローラ支持部200の基端部を保持する一方、当該ローラ支持部200と電気的に絶縁された把持部300と、この把持部300の内部に収納される直流電源400とを備えている。」との記載、及び上記図1の看取事項オ?キの内容に照らせば、「把持部300」、「一対のローラ100,100」、「乾電池400」を備え、当該「一対のローラ100,100」は、「把持部300」の一端に設けられたローラ支持部200の「横軸部210」に回転自在に取り付けられているものと認められる。

ケ また、上記「一対のローラ100,100」は、上記摘記事項ウの「前記ローラ100は、・・・中央に貫通孔111が開設された永久磁石110と、この永久磁石110の外面に被着された金薄膜120と、この金薄膜120の上で、かつ永久磁石110の外周面に相当する部分に被着されたゲルマニウム薄膜130とを有している。」との記載を考慮すれば、導体によって形成されたものと認められ、上記認定事項クに基づき、「把持部300の一端に導体によって形成された一対のローラ100,100」であると認められる。

コ 上記摘記事項エの「直流電源400からの数μA程度の微弱な電流が、直流電源400→ローラ支持部200→ローラ100・・・のように流れる。」との記載、及び上記認定事項クに基づき、上記「乾電池400」が電力を生成し、その電力が上記「一対のローラ100,100」に通電されているものと認められる。

サ 上記摘記事項ウの「前記ローラ支持部200は、略T字形状に形成されており、その横軸部210(即ち、先端部)の2つの先端にそれぞれ前記ローラ100を回転可能に支持するようになっている。」との記載、及び上記図1の看取事項オ?キの内容に照らし、「ローラ100,100の回転軸である横軸部210が、把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ、一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である」と認められる。

以上から、甲第1号証には、次の発明が記載されている(以下、「甲1-1発明」という。)。
「把持部300と、
把持部300の一端に導体によって形成された一対のローラ100,100と、
生成された電力がローラ100,100に通電される乾電池400と、を備え、
ローラ100,100の回転軸である横軸部210が、把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ、
一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である、
マッサージ器。」

また、把持部300の一端に一対のローラ100,100が形成されているので、把持部300は一対のローラ100,100を支持しているといえる。そうすると、甲第1号証には、次の発明が記載されている(以下、「甲1-2発明」という。)。
「導体によって形成された一対のローラ100,100と、
一対のローラ100,100を支持する把持部300と、
生成された電力がローラ100,100に通電される乾電池400と、を備え、
ローラ100,100の回転軸である横軸部210が、把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ、
一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である、
マッサージ器。」

(1-2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【0018】本発明では生体に印加する電気エネルギー源として、特に交流を必要としないために、一般的な一次、二次、太陽電池などが使用できるものである。・・・
【0030】電池4としては、好ましくはボタン状のものを用いる。この形状の電池4は小型化、薄型化を図るのに適している。電池4としては、一次電池、二次電池または太陽電池等を用いることができる。・・・
【0038】本発明では生体に印加する電気エネルギー源として、一次電池、二次電池、太陽電池の電池4を使用するから、構造がシンブルで、形態が極めてコンパクトになり、常時身につけても特に負担とならず、邪魔にならない健康器具が得られる。・・・
【0063】本発明の具体的な用法としては、その他の物品と組み合わせて使用することを制限するものではない。その一例を記載すると、・・・マッサージ器・・・」(以下「甲2事項」という。)

(1-3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている(1頁右欄6行?8行を参照)。
「・・・歯ブラシの柄の部分に乾電池や太陽電池等を内蔵し、その各々の極から電気を導電性の導体で引き出して・・・」(以下「甲3事項」という。)

(1-4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている(1頁左欄4行?17行を参照)。
「2.特許請求の範囲
把握柄部の外周面に正電極を周設し、該把握柄部に連接する刷毛柄部の刷毛植設部に負電極を配設して、正電極と負電極の接続導線を把握柄部及び刷毛柄部に埋設した電子歯刷子において、刷毛柄部(2)の基部周面囲繞状に、1又は2以上の太陽電池(7)を受光面を外向させて配設すると共に、把握柄部(1)に化学電池(8)を内装して、該太陽電池(7)による起電力の減少時に補助電源たる化学電池(8)に切り換えるスイッチング回路(9)を、把握柄部(1)周設の正電極(4)と刷毛植設部(2a)配設の負電極(5)とを結線する接続導線(6)中に介在せしめたことを特徴とする、電子歯刷子。」(以下「甲4事項」という。)

(1-5)甲第5号証
甲第5号証には以下の事項が記載されている(段落【0003】、【0005】、【0008】、【0028】、【0031】、【0043】?【0050】、図3?図6を参照)。
「マッサージ装置は、皮膚の向上した弾力性とマッサージ処理後皮膚表面に存在する水分及び脂肪分の著しい減少とが得られるように、各ローラの軸線の方向間の斜角βを60°ないし170°、特に115°ないし125°とし、前記各ローラを、ショアA硬さ25ないし90のたわみ性材料、特にエラストマー又は熱可塑性エラストマーで作り、前記各ローラに、隆起した部分を設け、この隆起した部分に、皮膚に当てるのに適する接触端部を設け、これ等の接触端部を、前記ローラの軸線方向に又その周辺方向に互いに間隔を置いて配置し、ひだよせ/横揺れの作用のほかに皮膚に振動性の作用を及ぼし又は他方向では皮膚に弛緩作用を加えるものであることを特徴とする。具体的には、マッサージ装置を、皮膚が各ローラの大きい開口により定まる区域から各ローラの小さい開口により定まる出口区域に向かう方向に動かすと、各ローラは皮膚を押圧しわずかに皮膚内に入込み、皮膚上をこすりながら転動し滑動し、皮膚のひだよせ作用を生じ、一方、当該マッサージ装置を他方向に動かすときは、皮膚は同様なマッサージ作用を受けず、そのように装置の移動に伴う各ローラの転動作用により、皮膚は伸張し又は弛緩し、横揺れを生じ、皮膚から徐々に水分を放出するものである。」(以下「甲5事項」という。)

(1-6)甲第6号証
甲第6号証には以下の事項が記載されている(段落【0004】?【0006】、【0008】、【0012】、【0013】、【0017】、【0019】、【0020】、図1?4を参照)。
「ユニットであって、皮膚のマッサージと製品塗布、両方の働きをするように、製品を保持可能な、縦方向の軸Xを持つボトル(10)を備え、当該ボトルは、キャップ(20)によって開閉可能な製品分配孔(17)を第一端に備え、硬度が15ショアAないし90ショアDの柔軟な材料、特にエラストマー又は熱可塑性エラストマーから作られる少なくとも2つのローラ(41,42)を、自由に回転できるように当該第一端の反対側の第二端に備え、当該ローラ(41,42)は、回転軸(A_(1),A_(2))の周りを回転可能であり、2つの回転軸(A_(1),A_(2))の方向が、第一断面P1上で80度から140度、好ましくは100度から120度の角度αをなすよう配置され、当該ユニットを、皮膚がローラ間の大きい開きO_(S)によって画定される領域からローラ間の小さい開きO_(E)によって画定される領域に向かう方向に動かすと、この摩擦しながら摺動する動作によって皮膚は押し曲げられ、一方、当該ユニットを、他方向に動かすと、皮膚はわずかな伸縮又は弛緩しか受けないので同様のマッサージ動作を受けず、皮膚をマッサージした後、当該ユニットをひっくり返して当該キャップを開け、当該ボトルに収容されている製品をマッサージされたばかりの身体部分に塗布することを特徴とする。」(以下「甲6事項」という。)

(1-7)甲第7号証の1
甲第7号証の1には図面とともに以下の事項が記載されている(なお、甲第7号証の2として提出された翻訳文を参照した。)。
「意匠の対象となる物品」欄に「マッサージ器」と記載され、「意匠の説明」欄に「1.材質は合成樹脂材である。」と記載され、「意匠の創作内容の要点」欄に「本願マッサージ器は、人体の部位を引っ張り、押して筋肉をほぐすマッサージ器であって、安定感と立体感を強調し、新しい美感を生じさせるようにしたことを創作内容の要点とする。」と記載されている。また、正面図及び背面図の記載から、「柄からY字状に伸びる2つの腕の先端に一対の球状物が配される」ことが窺える。(以下「甲7事項」という。)

(1-8)甲第8号証の1
甲第8号証の1には図面とともに以下の事項が記載されている(なお、甲第8号証の2として提出された翻訳文を参照した。)。
「請求項7」に「当該マッサージ球は、軽量化及びグリップ軸ロッドの操作コントロール性を高めるために、弾性材質を有するマッサージ球体が中空状を呈するとともに、表端面に複数の径方向軸板を有し、かつ、軸板間に複数の粒状凸起を設けることにより、転動マッサージ回数を増加させるとともに、軸ロッドがY字状を呈するように設置し、かつ、各球体が内向き偏心揺動角度を呈するようにして、2つのマッサージ球体をそれぞれ内向きの挟持角度を呈するようにグリップ軸ロッド上に設けることにより、マッサージ箇所における偏角挟持効果を増進させる、請求項1または4に記載のマッサージ球及びマッサージ器の新規構造。」と記載されている。(以下「甲8事項」という。)

(1-9)甲第9号証
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。
「【0008】・・・ローラ本体の表面を被覆しているチタニア被膜による光触媒作用によって顔面やその他の皮膚面の有機物による汚れや細菌が分解除去され、皮膚の老化が抑制されて皮膚の活性化ひいては皺の発生や弛みが抑制されて皮膚の引締め作用が発揮される。・・・
【0009】・・・ローラ本体の表面のチタニア被膜の光触媒作用によって顔面やその他の皮膚面の有機物による汚れや細菌が分解除去されて皮膚の老化が抑制され、併せて皺や弛みを引き締めて活き活きとした美しい皮膚を保つことが可能になるという効果が奏される。・・・
【0012】・・・そのチタン粉体が大気中の酸素と反応して酸化されることによってチタン製主部の表面にチタニア被膜を生成するという性質を利用することによって作られている。・・・したがって、このローラ本体3に備わっているチタニア被膜は、その表面から内側に入るに従って酸素がわずかに欠乏気味となる酸素欠乏傾斜構造といわれる構造を呈し、この酸素欠乏傾斜構造が光触媒反応において紫外線に対してのみでなく、可視光線、赤外線、電波、X線などのあらゆる電磁波に応答して光触媒反応を起こす要因になると推定されている。
【0013】
そして、冒頭に掲げた先行例にも記載されているところから明らかなように、ローラ本体3の表面のチタニア被膜は脱臭、抗菌、防汚といった分解機能を有する光触媒として作用し、そのような光触媒作用がチタニア被膜に太陽光や蛍光灯などの光が照射されることによって発揮される。・・・
【0014】
したがって、図1に示した実施形態の美容ローラの把手1を手で掴んでそのローラ本体3を顔面や皮膚面上のその他の箇所で軽く転動させると、チタニア被膜による光触媒作用によって皮膚表面の微量の有機物でなる汚れや細菌が分解されて水(水蒸気)と二酸化炭素とに分解または還元されて無害化する。また、チタニア被膜による光触媒作用によって、シミや老化の原因になる活性酸素の働きを抑える抗酸化機能が発揮される。・・・」(以下「甲9事項」という。)

(2)本件特許発明1について
(2-1)対比
本件特許発明1と甲1-1発明とを対比すると、その構造または機能からみて、甲1-1発明の「把持部300」は、本件特許発明1の「柄」に相当し、同様に「把持部300の一端に導体によって形成された一対のローラ100,100」は「柄の一端に導体によって形成された一対のローラ」に相当する。
また、本件特許発明1の「太陽電池」と甲1-1発明の「乾電池400」とは、「電池」という点でのみ共通し、同様に前者の「美肌ローラ」と後者の「マッサージ器」とは、その機能からみて「肌に適用するローラ」という点でのみ共通する。
そうすると、両者は、
「柄と、
前記柄の一端に導体によって形成された一対のローラと、
生成された電力が前記ローラに通電される電池と、を備えた
肌に適用するローラ。」
で一致し、以下の各点で相違する。
(相違点1)
ローラに通電される電力に関して、本件特許発明1では、「太陽電池」によって生成するのに対し、甲1-1発明では、「乾電池400」によって生成する点。
(相違点2)
一対のローラと柄の関係に関して、本件特許発明1では、「ローラの回転軸が、柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられ」ているのに対し、甲1-1発明では、「ローラ100,100の回転軸である横軸部210が、把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ、一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である」点。
(相違点3)
肌に適用するローラが、本件特許発明1は「美肌ローラ」であるのに対し、甲1-1発明は「マッサージ器」である点。

(2-2)判断
以下、上記相違点について検討する。なお、事案に鑑み、相違点2から検討する。
(2-2-1)相違点2について
ア 甲第1号証には、甲1-1発明の「一対のローラ100,100」について、以下の記載がある。
上記(1-1)の摘記事項エに「ローラ100を直流電源400の一方の端子410に接続し、把持部300を直流電源400の他方の端子420に接続する。・・・この状態で、把持部300を把持し、ローラ100を皮膚に接触させると、ローラ100が接触している皮膚に含まれている老廃物、例えば油分等が皮膚から浮き上がる。・・・すなわち、直流電源400からの数μA程度の微弱な電流が、直流電源400→ローラ支持部200→ローラ100→人間の身体→把持部本体310→蓋体320→直流電源400のように流れる。この場合、ローラ100は正に帯電し、把持部300は負に帯電しているので、皮膚は正に帯電する。このため、皮膚に含まれる負に帯電した油分が皮膚から浮き上がるのである。・・・また、ゲルマニウムを肌に浸透させ、血流を良くする場合には、・・・乾電池である直流電源400を入れ換え、ローラ100を直流電源400の他方の端子420に接続し、把持部300を直流電源400の一方の端子410に接続する。・・・この状態で、把持部300を把持し、ローラ100を皮膚に接触させると、ローラ100が接触している皮膚にゲルマニウムが浸透し、皮膚の血流が良くなる。・・・すなわち、直流電源400からの数μA程度の微弱な電流が、直流電源400→蓋体320→把持部本体310→人間の身体→ローラ100→ローラ支持部200→直流電源400のように流れる。この場合、ローラ100は負に帯電し、把持部300は正に帯電しているので、皮膚は負に帯電する。このため、ローラ100のゲルマニウム薄膜130中のゲルマニウム原子GeがゲルマニウムイオンGe^(4+)となってローラ100から皮膚へ浸透するのである。」と記載されている。
上記記載によれば、甲1-1発明の「一対のローラ100,100」は、(A)正又は負に帯電する(導電性を有する)ものであり、(B)直流電源400の極性を入れ換えることで、皮膚に含まれる負に帯電した油分を皮膚から浮き上がらせる効果と、ローラ100が接触している皮膚にゲルマニウムを浸透させ、皮膚の血流を良くする効果とを奏するものである。

イ 甲第5号証に関する容易想到性の検討
甲5事項はマッサージ装置に関し、甲1-1発明と発明の技術分野が共通するといえるが、甲5事項のローラは、「ショアA硬さ25ないし90のたわみ性材料、特にエラストマー又は熱可塑性エラストマーで作」られているので導電性を有さない。
一方、上記アにおいて示したとおり、その機能に鑑みると、甲1-1発明のローラ100,100が導電性を有することは欠くことのできない構成であるので、甲第5号証に接した当業者といえども、甲1-1発明のローラ100,100と回転軸である横軸部210の構成を、甲5事項のローラとローラの軸線の構成に置き換える動機付けがあるとは認められない。
また、仮に甲1-1発明のローラ100,100を甲5事項のローラに置き換えたとしても、その場合には、上記アに示したローラが帯電することによる作用効果が失われることは明らかであり、甲1-1発明に甲5事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
さらに、甲5事項では、ローラにより皮膚の転動/ひだよせの作用を働かせ、さらに、ローラに隆起した部分を設けるのであるから、ローラと皮膚との接触において、上記アの(B)の作用効果が十分発揮できない状態になると認められ、この点においても、甲1-1発明に甲5事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
してみると、甲第5号証に接した当業者といえども、甲1-1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の構成を適用する動機付けがあるとはいえないし、適用することに阻害要因があると認められ、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明から想到することが容易になし得たとはいえない。
また、本件特許発明1は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成により、上記「1 本件発明について」の「(2)本件特許発明について」のアで示した毛穴の汚れを効率的に除去するという相乗効果を奏するものであり、甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明から予測できない効果を奏する。

ウ 甲第6号証に関する容易想到性の検討
甲6事項は皮膚のマッサージを行う装置に関し、甲1-1発明と発明の技術分野が共通するといえるが、甲6事項のローラは、「硬度が15ショアAないし90ショアDの柔軟な材料、特にエラストマー又は熱可塑性エラストマーから作られ」ているので導電性を有さない。
一方、上記アにおいて示したとおり、その機能に鑑みると、甲1-1発明のローラ100,100が導電性を有することは欠くことのできない構成であるので、甲第6号証に接した当業者といえども、甲1-1発明のローラ100,100と回転軸である横軸部210の構成を、甲6事項のローラと回転軸の構成に置き換える動機付けがあるとは認められない。
また、仮に甲1-1発明のローラ100,100を甲6事項のローラに置き換えたとしても、その場合には、上記アに示したローラが帯電することによる作用効果が失われることは明らかであり、甲1-1発明に甲6事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
さらに、甲6事項では、ローラにより皮膚を押し曲げるのであるから、ローラと皮膚との接触において、上記アの(B)の作用効果が十分発揮できない状態になると認められ、この点においても、甲1-1発明に甲6事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
してみると、甲第6号証に接した当業者といえども、甲1-1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の構成を適用する動機付けがあるとはいえないし、適用することに阻害要因があると認められ、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を甲第1号証及び甲第6号証に記載された発明から想到することが容易になし得たとはいえない。
また、本件特許発明1は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成により、上記「1 本件発明について」の「(2)本件特許発明について」アで示した毛穴の汚れを効率的に除去するという相乗効果を奏するものであり、甲第1号証及び甲第6号証に記載された発明から予測できない効果を奏する。

エ 甲第7号証の1に関する容易想到性の検討
甲7事項はマッサージ器に関し、甲1-1発明と発明の技術分野が共通するといえるが、甲7事項のマッサージ器の「材質は合成樹脂材である」ので、仮に「一対の球状物」を請求人の主張のとおり「一対のローラ」であったとしても、導電性を有さない。
一方、上記アにおいて示したとおり、その機能に鑑みると、甲1-1発明のローラ100,100が導電性を有することは欠くことのできない構成であるので、甲第7号証の1に接した当業者といえども、甲1-1発明のローラ100,100と回転軸である横軸部210の構成を、甲7事項の球状物とY字状に伸びる2つの腕の構成に置き換える動機付けがあるとは認められない。
また、仮に甲1-1発明のローラ100,100を甲7事項の球状物に置き換えたとしても、その場合には、上記アに示したローラが帯電することによる作用効果が失われることは明らかであり、甲1-1発明に甲7事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
さらに、甲7事項では、球状物により人体の部位を引っ張り、押して筋肉をほぐすのであるから、球状物と皮膚との接触において、上記アの(B)の作用効果が十分発揮できない状態になると認められ、この点においても、甲1-1発明に甲7事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
してみると、甲第7号証の1に接した当業者といえども、甲1-1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の構成を適用する動機付けがあるとはいえないし、適用することに阻害要因があると認められ、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を甲第1号証及び甲第7号証の1に記載された発明から想到することが容易になし得たとはいえない。
また、本件特許発明1は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成により、上記「1 本件発明について」の「(2)本件特許発明について」アで示した毛穴の汚れを効率的に除去するという相乗効果を奏するものであり、甲第1号証及び甲第7号証の1に記載された発明から予測できない効果を奏する。

オ 甲第8号証の1に関する容易想到性の検討
甲8事項はマッサージ器に関し、甲1-1発明と発明の技術分野が共通するといえるが、甲8事項のマッサージ球は、「弾性材質を有する」ものであるので導電性を有さない。
一方、上記アにおいて示したとおり、その機能に鑑みると、甲1-1発明のローラ100,100が導電性を有することは欠くことのできない構成であるので、甲第8号証の1に接した当業者といえども、甲1-1発明のローラ100,100と回転軸である横軸部210の構成を、甲8事項のマッサージ球とY字状の軸ロッドの構成に置き換える動機付けがあるとは認められない。
また、仮に甲1-1発明のローラ100,100を甲8事項のマッサージ球に置き換えたとしても、その場合には、上記アに示したローラが帯電することによる作用効果が失われることは明らかであり、甲1-1発明に甲8事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
さらに、甲8事項では、マッサージ球によりマッサージ箇所の偏角挟持効果を増進させ、さらに、マッサージ球に粒状凸起を設けるのであるから、マッサージ球と皮膚との接触において、上記アの(B)の作用効果が十分発揮できない状態になると認められ、この点においても、甲1-1発明に甲8事項の構成を適用することには、阻害要因があると認められる。
してみると、甲第8号証の1に接した当業者といえども、甲1-1発明において、相違点2に係る本件特許発明1の構成を適用する動機付けがあるとはいえないし、適用することに阻害要因があると認められ、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を甲第1号証及び甲第8号証の1に記載された発明から想到することが容易になし得たとはいえない。
また、本件特許発明1は、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成により、上記「1 本件発明について」の「(2)本件特許発明について」アで示した毛穴の汚れを効率的に除去するという相乗効果を奏するものであり、甲第1号証及び甲第8号証の1に記載された発明から予測できない効果を奏する。

よって、上記ア?オで検討したとおり、相違点2を容易想到とすることはできない。
また、甲2?4事項は、太陽電池をマッサージ器や歯ブラシに適用する技術に関し、甲9事項は、光触媒作用を有するチタニア被膜をローラ表面に設ける技術に関し、何れの刊行物を参照しても、相違点2を容易想到とすることはできない。

(2-2-2)小括
上記(2-2-1)で検討したとおり、相違点2を容易想到とすることはできないので、相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1-1発明、及び甲第1号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2-3)請求人の主張について
ア 請求人は、「通電するという目的を達するためには,ローラ支持部を二股にするという一対のローラの形態について,一対のローラ(100,100)の回転軸である横軸部(210)のなす角が180度でなければならないとの限定は,甲第1号証には記載されておらず,実際,ローラ支持部を二股として,2つのローラが離れて支持されていることを,甲第1号証では想定していると言わざるを得ない。そして,ローラ支持部を二股として,2つのローラが離れて支持されているマッサージ器に関する先行技術として,甲5?甲8発明が存在するわけであるから,甲1発明に,甲5?甲8発明のいずれかを適用するとする動機付けとなる記載は,甲第1号証に存在すると言わざるを得ない。」(口頭審理陳述要領書15頁下から9行?16頁1行)と主張する。
また、「甲第1号証には,「前記ローラ支持部は二股になっており、2つのローラが離れて支持されている」との動機付けとなる記載が存在し,特に,一対のローラのなす角度が180度でなければならないとの特別な理由も存在せず,二股に分かれた一対の二つのローラとして,甲5?甲8発明が存在するわけであるから,甲1発明に,甲5?甲8発明のいずれかを適用することの動機付けは存在する。そして,甲5?甲8発明を甲1発明に適用することについても,阻害要因は存在せず,むしろ,甲5?甲8発明における一対のローラによる作用は,本件特許発明1における一対のローラの作用と同一である。よって,甲1発明の乾電池を太陽電池に置き換えて,甲5?甲8発明を適用して,本件特許発明1を発明することは,当業者にとって,容易であると言わざるを得ない。」(口頭審理陳述要領書17頁下から4行?18頁8行)と主張する。
しかし、上記(2-2-1)のア?オで検討したとおり、甲第5号証?甲第8号証の1に開示されたローラ等は、その構成及び作用効果において、甲1-1発明のローラの構成(上記(2-2-1)アの条件(A))及び作用効果(上記(2-2-1)アの条件(B))と異なり、そのようなローラ等を甲1-1発明に適用する動機付けがあるとは認められないし、適用することに阻害要因があると認められる。
また、甲第1号証、甲第5号証?甲第8号証の1の何れにも、上記「1 本件発明について」の「(2)本件特許発明について」のアに示した本件特許発明1の「美肌ローラ」による「肌に押し付け、一方向に押すと肌は両脇に引っ張られ、毛穴が開き、毛穴の奥の汚れが毛穴の開口部に向けて移動し、他方向に引くと肌は一対のローラの間に挟み込まれ、毛穴は収縮し、毛穴の中の汚れが押し出される」という格別な作用については、開示も示唆もされておらず、仮に甲第5号証?甲第8号証の1における一対のローラ等のなす角度が周知技術であったとしても、その角度を甲1-1発明の一対のローラのなす角度に適用した際に、「毛穴の汚れを効率的に除去できる」という本件特許発明1の格別な効果を奏することは、当業者であっても予想できたことではない。
よって、上記主張は採用できない。

イ また、請求人は「本件特許発明1は,一対のローラによる毛穴の汚れの押し出し作用と微弱電流の通電による皮膚の汚れの引き出し作用とを,単純に組み合わせた発明として構成されていると理解する他ない。よって,本件特許発明1は,一対のローラの構成と,微弱電流を通電させる構成とを,単純に組み合わせた発明として理解することができ,その観点から進歩性を議論した場合,甲1発明と甲5?甲8発明のいずれかの発明とを単純に組み合わせることで,本件特許発明1を容易に発明することができるとも言える。」(口頭審理陳述要領書18頁14行?21行)と主張する。
しかし、本件特許発明1は、上記1(2)アで示したとおり、「一対のローラ」という構成と「太陽電池」という構成により「毛穴の汚れを効果的に除去する」という相乗効果を奏するものであるから、上記主張は採用できない。

(3)本件特許発明2について
(3-1)対比
本件特許発明2と甲1-2発明とを対比すると、その構造または機能からみて、甲1-2発明の「把持部300」は、本件特許発明2の「把持部」に相当する。
また、本件特許発明2の「太陽電池」と甲1-2発明の「乾電池400」とは、「電池」という点でのみ共通し、同様に前者の「美肌ローラ」と後者の「マッサージ器」とは、その機能からみて「肌に適用するローラ」という点でのみ共通する。
そうすると、両者は、
「導体によって形成された一対のローラと、
前記一対のローラを支持する把持部と、
生成された電力が前記ローラに通電される電池と、を備えた
肌に適用するローラ。」
で一致し、以下の各点で相違する。
(相違点1)
ローラに通電される電力に関して、本件特許発明2では、「太陽電池」によって生成するのに対し、甲1-2発明では、「乾電池400」によって生成する点。
(相違点2)
一対のローラと把持部の関係に関して、本件特許発明2では、「ローラの回転軸が、把持部の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられ」ているのに対し、甲1-2発明では、「ローラ100,100の回転軸である横軸部210が、把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ、一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である」点。
(相違点3)
肌に適用するローラが、本件特許発明2は「美肌ローラ」であるのに対し、甲1-2発明は「マッサージ器」である点。

(3-2)判断
以下、上記相違点について検討する。なお、事案に鑑み、相違点2から検討する。
(3-2-1)相違点2について
甲1-2発明と甲1-1発明の違いは、「把持部300は一対のローラ100,100を支持している」か「把持部300の一端に一対のローラ100,100が形成されている」かの違いであり、甲1-2発明は、一対のローラを形成する位置において甲1-1発明の上位概念であるといえる。そうすると、上記「(2)本件特許発明1について」の(2-2-1)の検討において、「甲1-1発明」を「甲1-2発明」と読み替え、同様の理由により相違点2を容易想到とすることはできない。

(3-2-2)小括
上記(3-2-1)のとおり、相違点2を容易想到とすることはできないので、相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1-2発明、及び甲第1号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明3?5について
本件特許発明3?5は、本件特許発明1又は本件特許発明2の構成をその構成の一部とするものであるから、上記した「(2)本件特許発明1について」及び「(3)本件特許発明2について」と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)小括
よって、請求人の主張する理由によっては、本件特許発明1?5は当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3 無効理由2について
(1)本件特許発明6及び7について
本件特許発明6及び7は、本件特許発明1?5の構成をその構成の一部とするものであるから、上記「2 無効理由1について」において検討したのと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)小括
よって、請求人の主張する理由によっては、本件特許発明6及び7は当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第5 まとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1、無効理由2及び提出した証拠方法によっては本件特許発明1?7についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人らが負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-31 
結審通知日 2017-04-05 
審決日 2017-04-18 
出願番号 特願2007-324077(P2007-324077)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A45D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 橘 均憲
平瀬 知明
登録日 2013-03-29 
登録番号 特許第5230864号(P5230864)
発明の名称 美肌ローラ  
代理人 小林 徳夫  
代理人 冨宅 恵  
代理人 ▲高▼山 嘉成  

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