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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1328883
審判番号 不服2015-22446  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-22 
確定日 2017-06-07 
事件の表示 特願2011-241599「音声システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月20日出願公開,特開2013- 98869〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成23年11月2日の出願であって,
平成26年10月28日付けで審査請求がなされ,平成27年7月13日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年8月31日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年10月19日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成27年12月22日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成28年2月1日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成28年11月17日付けで当審による拒絶理由が通知され,これに対して平成29年1月13日付けで意見書が提出されたものである。

第2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成27年12月22日付けの手続補正(以下,これを「本件手続補正」という)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

「音声素片とインデックスとを対応づけた対応表を保持する対応表保持部と,
言語入力を受付ける言語入力受付部と,
言語入力受付部から入力された言語を構成する音声素片のインデックスである生インデックスを対応表からパターンマッチングにより生成する生インデックス生成部と,
生インデックスを暗号化したインデックスである暗号化インデックスを取得する暗号化インデックス取得部と,
取得した暗号化インデックスに対応する音声素片を対応表から取得し,音声合成を行う秘話化音声合成部と,
合成された秘話化音声を出力する出力部と,
を有する出力装置と,
秘話化音声を取得する取得部と,
音声素片とインデックスとを対応づけた対応表を保持する対応表保持部と,
取得した秘話化音声に応じた音声素片のインデックスである暗号化インデックスを対応表を利用してパターンマッチングにより生成する暗号化インデックス生成部と,
暗号化インデックスを復号化して生インデックスを取得する生インデックス復号化部と,
復号化された生インデックスに対応する音声素片を対応表から取得し,対応する言語を復元する言語復元部と,
を有する復元装置と,
からなる音声システム。」

第3.引用刊行物に記載の事項
1.原審における平成27年7月13日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用され,当審における平成28年11月17日付けの拒絶理由(以下,これを「当審拒絶理由」という)においても引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2005-141282号公報(平成17年6月2日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0008】
図1は本発明の実施例の構成で,暗号化システム1は,入力文字列記憶部2と文字セット特定部3と文字種分類部4とインデックスコード変換部5と暗号化部6と文字列変換部7と出力文字列記憶部8と変換テーブル9から構成される。」

B.「【0014】
以下,文字セットはASCII,文字種は英大字と数字を例に説明する。まず,インデックステーブルを使って変換する方法で説明する。図2は数字を変換するインデックステーブルであり,例えば数字2は文字コード0x32であり,これをインデックスコード0x03に変換する。図3は英大文字を変換するインデックステーブルであり,例えば英大文字Cは文字コード0x43であり,これをインデックスコード0x0dに変換する。次に線形演算によって変換する方法で説明する。数字の変換式を「文字コード-0x30=インデックスコード」とすると,数字2は文字コード0x32であり,0x32-0x30=0x02たるインデックスコードに変換する。英字の変換式を「文字コード-0x41=インデックスコード」とすると,英字Yは文字コード0x59であり,0x59-0x41=0x18たるインデックスコードに変換する。なお,復号化処理にあっては,上記と逆の動きをする。」

C.「0018】
変換テーブル9は,インデックスコード変換部5や文字列変換部7で使われる変換テーブルを格納した記憶部であり,図2,図3,図4,図5が挙げられる。
【0019】
次にフローチャート(図6)に従って暗号化処理について,文字セットASCIIの英大文字「DOG」を例に説明する。まず,文字セット特定部3は,暗号化する文字列を入力文字列記憶部2から読出し,該文字列の文字セット(ここでは‘ASCII’)を特定する(S1)。次に文字種分類部4は,特定した文字セットの中で文字種(‘英大文字’)を分類する(S2)。次にインデックスコード変換部5は,分類した文字種毎に該当する文字コード(DOG:‘0x444f47’)を英大文字のインデックス変換テーブル(図3)を使って,D:0x44を0x18に,O:0x4fを0x09に,G:0x47を0x00とそれぞれ変換し,その結果インデックスコード(‘0x180900’)に変換する(S3)。次に暗号化部6は,文字種毎に変換されたインデックスコードを暗号化する(ここでは‘0x050c0d’に暗号化されたとする)(S4)。次に,文字列変換部7は,文字種毎に暗号化されたインデックスコードを英大文字の文字コード変換テーブル(図5)を使って,0x05を0x5a:Zに,0x0cを0x46:Fに,0x0dを0x43:Cにそれぞれ変換し,その結果文字コード(‘0x5a4643’:ZFC)に変換し,出力文字列記憶部8に記憶する(S5)。そうすると,最終的に得られた「ZFC」はバラバラで意味のない文字列に,文字列の長さも変わらずに変換され,この文字列を入力元として,文字列であることを前提とした処理が正常に動作できることになる。
【0020】
暗号化された文字コードの復号化処理は,上記フローと反対の処理を行うことになる(図7)。まず,文字セット特定部3は,復号化する文字列を入力文字列記憶部2から読出し,該文字列の文字セットを特定する(S6)。次に文字種分類部4は,特定した文字セットの中で文字種を分類する(S7)。次に文字列変換部7は,文字種毎にS5で変換された文字コードをインデックスコードに逆変換する(S8)。次に暗号化部6は,文字種毎に逆変換されたインデックスコードを復号化する(S9)。次にインデックスコード変換部5は,文字種毎に復号化したインデックスコードを文字コードに逆変換し,出力文字列記憶部8に記憶する(S10)。こうして元の意味のある文字列に戻されたことになる。」

2.当審拒絶理由において引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2008-136646号公報(平成20年6月19日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

D.「【請求項1】
患者の医療情報を表示手段に表示する医用支援装置であって,
あらかじめ音声を文字に変換する言語モデル及び音響モデルを含む複数の辞書,及び事前に登録された単語と前記辞書との対応を記憶しておく記憶手段と,
前記音声が入力される音声入力手段と,
操作者により入力された前記音声を文字に変えるための変換条件を基に前記辞書を複数選択する変換制御手段と,
前記変換条件に応じて選択された辞書及び前記登録された単語と辞書との対応を参照して,前記入力された音声を認識し文字に変換する認識変換手段と,
前記変換された文字を前記表示手段に表示する表示制御手段と
を備えることを特徴とする医用支援装置。」

E.「【0041】
本実施形態において,医療支援装置メーカーは,あらかじめ記憶手段004に音声をそのままの単語として変換するための基本辞書群を記憶させておく。また,医療支援装置メーカーは,あらかじめ暗号化された単語として複数の単語を記憶手段004に記憶させる。さらに,医療支援装置メーカーは,あらかじめ暗号化された単語と,使用するアプリケーションやその表示欄などを含む,入力された音声を文字に変換するための変換条件に合わせて,暗号化された単語とその暗号化された単語を本来の意味に戻した単語を1対1に対応付けて,その対応表を記憶手段004に記憶させておく。
【0042】
認識変換手段001は,音声入力手段011から入力された音声を,記憶手段004に記憶されている基本辞書群を使用して,その音声をそのままの単語として認識する。
【0043】
実行制御手段003は,操作者による入力手段012を利用しての入力や,問診などによって事前に作成されているオーダ情報からの入力に基づき,使用するアプリケーションの情報,操作者の名前,専門分野,部位名,といった入力された音声を文字に変換するための変換条件を取得し,さらに,該アプリケーションから表示欄の情報を取得する。
【0044】
変換制御手段002は,記憶手段004に記憶されている暗号として使用する単語の一覧を参照し,該単語が暗号化された単語か否かを判断する。該単語が暗号化された単語の場合,入力された変換条件を実行制御手段003から受けて,対応表を使用する命令及びその変換条件を認識変換手段001に送る。
【0045】
認識変換手段001は,音声認識手段006から受けた単語が暗号化された単語の場合には,記憶手段004に記憶されている対応表を基に,変換制御手段002から受けた変換条件に合う対応を参照し,該単語を対応する文字に変換する。次に,その文字を表示制御手段005に送る。また,受けた単語が暗号化された単語でない場合には,認識変換手段001は,そのまま文字にして表示制御手段005に送る。
【0046】
表示制御手段005は,実行制御手段003から指示された使用するアプリケーション及びその表示欄に基づいて,認識変換手段001から受けた文字を表示手段013に表示させる。」

3.当審拒絶理由において引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2000-242289号公報(平成12年9月8日公開,以下,これを「引用刊行物3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F.「【請求項1】 単語の認識辞書を有して入力音声の分析で単語を認識しその単語番号を認識結果として得る音声認識装置と,音声合成用データを有して入力文字列に対応する合成音声を得る音声合成装置と,音声入力用文字列の辞書を有してアプリケーションが前記音声認識装置からの単語番号に対応する文字列を音声情報処理入力として取り込み,音声合成用文字列の辞書を有してアプリケーションが音声情報処理結果として前記音声合成装置に文字列を渡して合成音声の出力を得る音声情報処理装置とを備えた音声応答システムにおいて,
前記単語番号と音声入力用文字列と音声合成用文字列とグループ識別文字列等を記述したテキストファイルを読み込み,前記単語番号の文字列を数値に変換し,その数値をインデックスとして,残りの文字列をテーブルの各項目に読み込んで文字列テーブルを構築し,文字列の読み出し時には,前記文字列テーブルのインデックス番号と項目番号とを指定することで希望する文字列を取り出す文字列管理装置を備えたことを特徴とする音声応答システムの文字列管理方式。
【請求項2】 前記文字列管理装置は,前記単語番号の文字列を数値に変換する際に,文字列と数値とを対応づけたテーブルを照合して変換を行い,文字列の読み出し時には,一旦文字列をそのテーブルによって数値に変換し,その数値をインデックス番号として希望する文字列を取り出すことを特徴とする請求項1に記載の音声応答システムの文字列管理方式。」

4.当審拒絶理由において引用された,本願の出願前に既に公知である,特開昭63-085929号公報(昭和63年4月16日公開,以下,これを「引用刊行物4」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G.「次に音声認識部19について説明する。
音声認忠部19は,例えば第15図に示すように構成される。音声入力回路19aは,前記音声入力部5から入力された音声信号,または公衆電話回線を介して前記通信装置12.13にて受信された音声信号を入力するもので,この入力音声イに号を適当な信号レベルに増幅する増幅器や,帯域制限用のバンドパスフィルタおよびA/D変換器等によって構成される。入力音声はこの音声入力回路19aにて,例えば30?3400Hzの周波数帯域の信号に制限され,12KHzのサンプリング周期で12ビツトのディジタル信号に量子化される。
音響処理部19bは,例えば専用のハードウエアにより構成された積和回路からなる。そして基本的には前記音声入力回路19aと同期してパイプライン的に高速動作する。
ここでの音響処理は,2種のバンドパスフィルタ群により実行される。その1つは16チャンネルのフィルタバンクで,このフィルタバンクを介して入力音声信号のスペクトルの変化が抽出される。
今1つは,同じ帯域を4チャンネルに分割したグロスフィルタであり,このグロスフィルタを介して入力音声の音響的特徴が抽出される。
これらの2種類のフィルタ群(フィルタバンクとグロスフィルタ)は,例えば4次巡回形のディジタルフィルタとして構成される。そして,例えば10msec毎にそのフィルタリング出力を求めるものとなっている。尚,この音響処理部の制御はマイクロプログラム方式にて行われる。
しかして前処理・認識部19cは,高速プロセッサ19d,パターンマツチング処理部19e,単語辞書メモリ19f,およびバッファメモリ19gによって構成される。
バッファメモリ19gは上記音響処理部19bにてフィルタリング処理された音声信号を入力し,例えば最大1.8秒分の音声データを蓄積するものとなっている。高速プロセッサ19dはこのバッファメモリ19gに格納されたデータに対して,音声区間検出,リサンプリング,ラベリング,遷移ネットワークによる認識処理,およびその総合論理判定処理の実行を行なっている。またこの高速プロセッサ19dにより,ホスト計算機との間の通信や該音声認識部19全体の動作制御が行われる。
この高速プロセッサ19dにて処理された音声データについて,パターンマツチング処理部19eは単語辞書メモリ19fに登録された単語音声の標準パターンデータとの間で複合類似度計算等のマツチング処理を実行し,その認識候補を求めている。
例えば認識対象となる音声単語は離散的に発声される。そこで高速プロセッサ19dは,例えば音響処理の際に10msec毎に計算される入力音声エネルギを用いて単語音声の入力区間を検出している。
具体的には第16図に示すように,背景雑音レベルと入力音声レベルとから適応的に計算される閾値E_(θ)を用い,入力音声信号レベルが上記閾値E_(θ)を一定時間以上継続して越えたとき,該閾値E_(θ)を越えた時点を音声単語の始端Sとして検出している。その後,上記入力音声信号のレベルが上記閾値E_(θ)を一定時間以上継続して下回ったとき,該閾値E_(θ)を下回った時点を音声単語の終端Eとして検出している。」(6頁左下欄8行?7頁左下欄8行)

第4.引用刊行物に記載の発明
1.上記Aの「暗号化システム1は,入力文字列記憶部2と文字セット特定部3と文字種分類部4とインデックスコード変換部5と暗号化部6と文字列変換部7と出力文字列記憶部8と変換テーブル9から構成される」という記載,上記Bの「インデックステーブルを使って変換する方法で説明する。図2は数字を変換するインデックステーブルであり,例えば数字2は文字コード0x32であり,これをインデックスコード0x03に変換する。図3は英大文字を変換するインデックステーブルであり,例えば英大文字Cは文字コード0x43であり,これをインデックスコード0x0dに変換する」という記載,及び,上記Cの「変換テーブル9は,インデックスコード変換部5や文字列変換部7で使われる変換テーブルを格納した記憶部」という記載から,引用刊行物1には,
“文字コードと,インデックスコードとを対応付けた,インデックステーブル”について記載されていることが読み取れる。

2.上記1.において引用した上記Aの記載内容における「入力文字列記憶部2」と,上記Cの「文字セットASCIIの英大文字「DOG」を例に説明する。まず,文字セット特定部3は,暗号化する文字列を入力文字列記憶部2から読出し,該文字列の文字セット(ここでは‘ASCII’)を特定する(S1)。次に文字種分類部4は,特定した文字セットの中で文字種(‘英大文字’)を分類する(S2)。次にインデックスコード変換部5は,分類した文字種毎に該当する文字コード(DOG:‘0x444f47’)を英大文字のインデックス変換テーブル(図3)を使って,D:0x44を0x18に,O:0x4fを0x09に,G:0x47を0x00とそれぞれ変換し,その結果インデックスコード(‘0x180900’)に変換する(S3)」という記載における,「暗号化する文字列を入力文字列記憶部2から読出」すという記載内容から,引用刊行物1においては,「入力文字列記憶部2」に,「入力文字列」を入力するための,“文字列入力部”を有していることは明らかであるから,上記ア.において引用した上記A,及び,上記Bの記載内容と,上記に引用した,上記Cの記載内容から,引用刊行物1における「暗号化システム」は,
“文字列入力部から入力された文字列を記憶する入力文字列記憶部と,前記入力文字列記憶部から読み出した文字列の文字セットを特定する文字セット特定部と,前記文字セットが特定された文字列の,1文字ずつの文字種を特定する文字種分類部と,前記文字種分類部で分類された文字列の各文字の文字コードを,インデックステーブルを用いて,インデックスコードに変換するインデックスコード変換部”を有するものであることが読み取れる。

3.上記1.に引用した上記Aの記載内容と,上記Cの「暗号化部6は,文字種毎に変換されたインデックスコードを暗号化する(ここでは‘0x050c0d’に暗号化されたとする)」という記載から,引用刊行物1における「暗号化システム」は,
“文字種毎に変換されたインデックスコードを暗号化する暗号化部”を有していることが読み取れる。

4.上記1.において検討した事項と,上記Cの「文字列変換部7は,文字種毎に暗号化されたインデックスコードを英大文字の文字コード変換テーブル(図5)を使って,0x05を0x5a:Zに,0x0cを0x46:Fに,0x0dを0x43:Cにそれぞれ変換し,その結果文字コード(‘0x5a4643’:ZFC)に変換し,出力文字列記憶部8に記憶する(S5)」という記載から,引用刊行物1における「暗号化システム」は,
“暗号化されたインデックスコードを,インデックステーブルを用いて,文字コードに変換する文字列変換部”を有していることが読み取れ,更に,上記引用の上記Cの記載内容から,変換された「結果文字コード」は,「出力文字列記憶部8に記憶」されるのであるから,当該「暗号化システム」は,
“文字列変換部が変換した結果文字コードを出力する出力部”を有していることは明らかである。
そして,上記1.?4.おいて検討した事項は,引用刊行物1における「暗号化システム」の“暗号化部”に関するものであると解される。

5.上記Cの「暗号化された文字コードの復号化処理は,上記フローと反対の処理を行うことになる(図7)。まず,文字セット特定部3は,復号化する文字列を入力文字列記憶部2から読出」すという記載と,上記2.において「入力文字列記憶部」に関して検討した事項から,引用刊行物1における「暗号化システム」においても,“暗号化された文字列の入力を受け付ける文字列入力部”を有していることは明らかである。

6.上記1.において引用した上記Cの記載内容と,上記Cの「文字列変換部7は,文字種毎にS5で変換された文字コードをインデックスコードに逆変換する」という記載から,引用刊行物1における「暗号システム」の,「暗号化された文字コードを復号化処理する」“復号化側”においても,上記1.において検討した,“暗号化側”が有する“文字コードと,インデックスコードとを対応付けた,インデックステーブル”を有することは明らかである。
したがって,上記に引用した上記Cの記載内容を踏まえると,引用刊行物1における「暗号化システム」は,
“文字コードと,インデックスコードとを対応付けた,インデックステーブルと,
暗号化された文字コードをインデックスコードに逆変換する文字列変換部と”を有するものであることが読み取れる。

7.上記Cの「暗号化部6は,文字種毎に逆変換されたインデックスコードを復号化する」という記載から,引用刊行物1における「暗号化システム」は,
“文字種毎に逆変換されたインデックスコードを復号化する暗号化部”を有することが読み取れる。

8.上記Cの「インデックスコード変換部5は,文字種毎に復号化したインデックスコードを文字コードに逆変換し,出力文字列記憶部8に記憶する(S10)。こうして元の意味のある文字列に戻されたことになる」という記載と,「出力文字列記憶部」に関して,上記4.において検討した事項から,引用刊行物1における「暗号化システム」は,
“文字種毎に復号化したインデックスコードを文字コードに逆変換するインデックスコード変換部と,前記文字コードを出力する出力部”とを有することが読み取れる。

9.上記8.に引用した上記Cの記載内容における「こうして元の意味のある文字列に戻されたことになる」という内容から,引用刊行物1における「暗号化システム」においては,“文字コードが,出力文字列に変換される出力文字列生成部”を有するものであることが読み取れる。
そして,上記5.?9.において検討した事項は,引用刊行物1における「暗号化システム」の“復号化部”に関するものであると解される。

10.以上,1.?9.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

文字コードと,インデックスコードとを対応付けた,インデックステーブルと,
文字列入力部から入力された文字列を記憶する入力文字列記憶部と,
前記入力文字列記憶部から読み出した文字列の文字セットを特定する文字セット特定部と,
前記文字セットが特定された文字列の,1文字ずつの文字種を特定する文字種分類部と,
前記文字種分類部で分類された文字列の各文字の文字コードを,前記インデックステーブルを用いて,インデックスコードに変換するインデックスコード変換部と,
文字種毎に変換されたインデックスコードを暗号化する暗号化部と,
暗号化されたインデックスコードを,インデックステーブルを用いて,文字コードに変換する文字列変換部と,
文字列変換部が変換した結果文字コードを出力する出力部と,
を有する暗号化部と,
暗号化された文字列の入力を受け付ける文字列入力部と,
文字コードと,インデックスコードとを対応付けた,インデックステーブルと,
暗号化された文字コードをインデックスコードに逆変換する文字列変換部と,
文字種毎に逆変換されたインデックスコードを復号化する暗号化と,
文字種毎に復号化したインデックスコードを文字コードに逆変換するインデックスコード変換部と,
前記文字コードを出力する出力部と,
前記文字コードが,出力文字列に変換される出力文字列生成部と,
を有する復号化部から構成される暗号化システム。

第5.本願発明と引用発明との対比
1.引用発明における「入力文字」と,それに対応する「文字コード」は,1文字ずつの“語”に対応するものであって,本願発明における「音声素片」も,入力される“語”“1語ずつ”に対応するものであるから,
引用発明における「入力文字」,或いは,「文字コード」と,
本願発明における「音声素片」とは,“語”である点で共通し,
引用発明において,「文字コードと,インデックスコードとを対応付けた,インデックステーブル」は,該「インデックステーブル」に,「文字コード」,或いは,該「文字コード」によって表される“文字”と,「インデックスコード」との対応関係が保持されるものであるから,
本願発明における「音声素片とインデックスとを対応づけた対応表を保持する対応表保持部」と,
“語と,インデックスを対応づけた対応表を保持する対応表保持部”である点で共通する。

2.引用発明における「文字列入力部」も,「文字列」で構成された「言語」の入力を受け付けるものであるが,本願発明における「言語」が,「音声素片」によって構成されていることを考慮すると,上記1.において検討した事項を踏まえて,
引用発明における「文字列入力部」と,
本願発明における「言語入力を受付ける言語入力受付部」とは,
“語の入力を受付ける語入力受付部”である点で共通する。

3.引用発明においては,“文字セット特定部が,入力された文字列の文字セットを特定し,当該結果に基づいて,文字種分類部が,入力文字列の1文字ずつを文字種を特定し,分類された各文字の文字コードを,インデックスコード変換部が,インデックステーブルを用いて,インデックスコードに変換する”ものであり,当該処理は,即ち,“入力文字列の1文字ずつに対応する,インデックスコードを取得する”ことに他ならない。
そして,引用発明における“インデックスコードを取得する”ことが,
本願発明における「生インデックスを生成する」ことに相当するから,上記1.,及び,2.において検討した事項を踏まえると,
引用発明における「入力文字列記憶部から読み出した文字列の文字セットを特定する文字セット特定部と,前記文字セットが特定された文字列の,1文字ずつの文字種を特定する文字種分類部と,前記文字種分類部で分類された文字列の各文字の文字コードを,前記インデックステーブルを用いて,インデックスコードに変換するインデックスコード変換部」と,
本願発明における「言語入力受付部から入力された言語を構成する音声素片のインデックスである生インデックスを対応表からパターンマッチングにより生成する生インデックス生成部」とは,
“語入力受付部から入力された語のインデックスである生インデックスを対応表より生成する生インデックス生成部”である点で共通する。

4.引用発明における「文字種毎に変換されたインデックスコードを暗号化する暗号化部」が,
本願発明における「生インデックスを暗号化したインデックスである暗号化インデックスを取得する暗号化インデックス取得部」に相当する。

5.引用発明における「暗号化されたインデックスコードを,インデックステーブルを用いて,文字コードに変換する文字列変換部」,及び,「文字列変換部が変換した結果文字コードを出力する出力部」と,
本願発明における「取得した暗号化インデックスに対応する音声素片を対応表から取得し,音声合成を行う秘話化音声合成部」,及び,「合成された秘話化音声を出力する出力部」とは,上記1.,及び,3.において検討した事項を踏まえると,
“取得した暗号化インデックスに対応する語を対応表から所得し,秘匿語を生成する語生成部”と,“生成された秘匿語を出力する出力部”である点で共通する。

6.上記1.?5.において検討した事項を踏まえると,
引用発明におえる「暗号化部」と,本願発明における「出力装置」とは,
“秘匿語出力手段”である点で共通する。

7.引用発明における「暗号化された文字列の入力を受け付ける文字列入力部」と,
本願発明における「秘話化音声を取得する取得部」とは,
上記5.において検討した事項を踏まえると,
“秘匿語を取得する秘匿語取得部”である点で共通する。

8.引用発明における「文字コードと,インデックスコードとを対応付けた,インデックステーブル」と,
本願発明における「音声素片とインデックスとを対応づけた対応表を保持する対応表保持部」とは,上記1.において検討した事項を踏まえると,
“語と,インデックスを対応づけた対応表を保持する対応表保持部”である点で共通する。

9.引用発明における「暗号化された文字コードをインデックスコードに逆変換する文字列変換部」と,
本願発明における「取得した秘話化音声に応じた音声素片のインデックスである暗号化インデックスを対応表を利用してパターンマッチングにより生成する暗号化インデックス生成部」とは,
上記3.,及び,7.において検討した事項を踏まえると,
“秘匿語取得部から入力された秘匿語のインデックスである暗号化インデックスを対応表より生成する暗号化インデックス生成部”である点で共通する。

10.引用発明において,「文字種毎に逆変換されたインデックスコードを復号化する暗号化」は,「逆変換」で得られた,暗号化されている「インデックスコード」の復号を行うものであり,当該,復号された「インデックスコード」が,本願発明における「生インデックス」に相当するものであるから,
引用発明における「文字種毎に逆変換されたインデックスコードを復号化する暗号化」が,
本願発明における「暗号化インデックスを復号化して生インデックスを取得する生インデックス復号化部」に相当する。

11.引用発明において,「インデックスコード変換部」が,「文字種毎に復号化したインデックスコードを文字コードに逆変換し」,「出力部」が,前記「文字コードを出力」し,「出力文字列生成部」が,前記「文字コード」を,対応する「出力文字列」に変換するものであるから,このことは,
本願発明における「復号化された生インデックスに対応する音声素片を対応表から取得し,対応する言語を復元する言語復元部」における処理と,
“復号化された生インデックスに対応する語を対応表から取得し,対応する復号語を復元する復号語復元部”である点で共通するので,以上,7.?10.までに検討した事項と,上記において検討した事項とを踏まえると,
引用発明における「復号化部」と,本願発明における「復元装置」とは,
“秘匿語復元手段”である点で共通する。
そして,上記1.?10.において検討した事項と,当該11.の上記において検討した事項から,引用発明における「暗号化システム」と,本願発明における「音声システム」とは,“入力語の暗号化・復号システム”である点で共通する。

12.以上,1.?11.において検討した事項から,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
語と,インデックスを対応づけた対応表を保持する対応表保持部と,
語の入力を受付ける語入力受付部と,
語入力受付部から入力された語のインデックスである生インデックスを対応表より生成する生インデックス生成部と,
生インデックスを暗号化したインデックスである暗号化インデックスを取得する暗号化インデックス取得部と,
取得した暗号化インデックスに対応する語を対応表から所得し,秘匿語を生成する語生成部と,
生成された秘匿語を出力する出力部と,
を有する秘匿語出力手段と,
秘匿語を取得する秘匿語取得部と,
語と,インデックスを対応づけた対応表を保持する対応表保持部と,
秘匿語取得部から入力された秘匿語のインデックスである暗号化インデックスを対応表より生成する暗号化インデックス生成部と,
暗号化インデックスを復号化して生インデックスを取得する生インデックス復号化部と,
復号化された生インデックスに対応する語を対応表から取得し,対応する復号語を復元する復号語復元部と,
を有する秘匿語復元手段と,
から構成される入力語の暗号化・復号システム。

[相違点1]
“対応表保持部”に関して,
本願発明においては,「音声素片とインデックスとを対応づけた対応表を保持する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「文字コードと,インデックスコードとを対応付けた」ものであって,「音声素片」についての言及はない点。

[相違点2]
“語入力受付部”に関して,
本願発明においては,“音声”による「言語入力」であるのに対して,
引用発明においては,「入力された文字列」が,“音声”によるものであるとの言及はなされていない点。

[相違点3]
“生インデックス生成部”に関して,
本願発明においては,「音声素片のインデックスである生インデックスを対応表からパターンマッチングにより生成する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「文字の文字コードを,前記インデックステーブルを用いて,インデックスコードに変換する」ものであって,「音声素片」や,「パターンマッチング」についての言及がない点。

[相違点4]
“語生成部”に関して,
本願発明においては,「取得した暗号化インデックスに対応する音声素片を対応表から取得し,音声合成を行う」ものであるのに対して,
引用発明においては,「音声合成」に関する言及はない点。

[相違点5]
“出力部”に関して,
本願発明においては,「合成された秘話化音声を出力する」ものであるのに対して,
引用発明においては,“音声”による出力については,言及されていない点。

[相違点6]
“秘匿語取得部”に関して,
本願発明においては,「秘話化音声を取得する」ものであるのに対して,
引用発明においては,“音声を取得する”ことについては,言及されていない点。

[相違点7]
“暗号化インデックス生成部”に関して,
本願発明においては,「秘話化音声に応じた音声素片のインデックスである暗号化インデックスを対応表を利用してパターンマッチングにより生成する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「音声素片」や,「パターンマッチング」についての言及がない点。

[相違点8]
“復号語復元部”に関して,
本願発明においては,「復号化された生インデックスに対応する音声素片を対応表から取得し,対応する言語を復元する」ものであるのに対して,
引用発明においては,「音声素片」を用いた「言語」の「復元」についての言及がない点。

第6.相違点についての当審の判断

1.相違点についての総括
本願発明と,引用発明とにおける[相違点1]?[相違点8]は,入力言語が,音声(本願発明)によるものか,テキスト(引用発明)によるものかの違いに起因するものであって,入力される情報の相違による,当該情報の処理系に関する相違が存在するものの,主な構成点については,本願発明と,引用発明との間に格別な相違は存在しない。
以下では,引用発明において,入力言語として,音声を導入することが容易であるかについて検討する。

2.[相違点2]について
上記D,及び,上記Eに引用した引用刊行物2の記載内容には,入力された音声を,辞書(本願発明の対応表に対応)を用いて,そのままの単語に変換した後,該単語を暗号化された単語に変換して出力する発明が開示されており,出力が音声ではないものの,暗号化のために,音声入力を変換する技術は,本願の出願前に,当業者には知られた技術事項であって,引用発明と,引用刊行物2に記載の発明とは,入力された言語を暗号化する点で共通しているので,本願の出願前に,引用発明において,入力として,音声を採用すること自体は,当業者が適宜なし得る事項であった。
よって,[相違点2]は,格別のものではない。

3.[相違点1],及び,[相違点3]について
上記Fに引用した引用刊行物3の記載内容には,音声入力を認識してテキストデータを抽出し,該テキストデータをインデックスに変換した後に,当該インデックスを用いて,対応する文字列を抽出して,該文字列を音声として出力する発明が開示されていて,引用刊行物3に係る発明においては,言わば対応表を2つ用いている構成と言い得るものであるが,引用発明においては,テキストと,インデックスコードとを対応させる対応表1つを用いて,インデックスコードへの変換を行っているものである。
そして,入力音声を「パターンマッチング」を用いて処理することは,例えば,上記Gに引用した引用刊行物4の記載内容にもあるとおり,本願の出願前において,当業者には周知の技術事項であった。
ここで,「音声素片」の処理については,本願発明には,具体的な処理構成は開示されていない,また,本願明細書の発明の詳細な説明には,段落【0021】に,
「対応表保持部(0305)は,音声素片とインデックスとを対応づけた対応表を保持する機能を有する。具体的には,音声素片データベースに蓄積されている音声素片と,音声素片のインデックスとを関連付けて保持しているテーブルである。例えば素片データが50音からなるものであった場合には,図5(A)のような対応表等が考えられる。音声素片については,単に50音から構成されているものの他,母音-母音,母音-子音,子音-母音,子音-子音,のように2音のつながりで構成されているものや,1音素が複数の素片から構成されているもの,また単語レベルで音声素片を構成しているもの等,種々のものが考えられる。」
との記載が存在し,特に,「子音-母音,子音-子音」といった要素が存在することについても言及されてはいるが,これらの要素自体は,音声を考慮した場合に,当業者であれば,当然に想定されるものであり,これらの要素に対する処理については,本願明細書には,例えば,段落【0020】に,「言語入力が音声データである場合においては,DPマッチング等のパターン認識の手段を使用」するといった,当業者にとって周知の技術事項が開示されているに止まることから,
この程度の処理を前提とした構成であれば,本願明細書の発明の詳細な説明の記載内容を考慮したとしても,上記に引用した引用刊行物に係る発明を考慮すれば,引用発明においても,「テキスト」に替えて,パターンマッチングの照合用音声素片とインデックスとを対応付けて対応表を作成すること,及び,当該対応表を用いて,音声素片をインデックスに変換するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点1],および,[相違点3]は,格別のものではない。

4.[相違点4]について
上記2.,及び,3.において検討したとおりであるから,引用発明において,引用刊行物3に係る発明を採用し,インデックスから直接音声を合成するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点4]は,格別のものではない。

5.[相違点5]について
引用発明において,音声を扱うのであれば,音声出力部を設けることは,引用刊行物3等を参酌するまでもなく,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点5]は,格別のものではない。

6.[相違点6]について
上記3.において検討した事項を踏まえれば,引用発明において,暗号化された音声を取得するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点6]は,格別のものではない。

7.[相違点7]について
上記3.おいて検討した事項を踏まえれば,暗号化され音声を生成するためのインテックステーブルを生成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点7]は,格別のものではない。

8.[相違点8]について
引用発明,上記3.?7.において検討した事項,及び,暗号化・復号の分野における周知技術を考慮すれば,引用発明において,インデックスを用いて,対応する音声を再生するよう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点8]は,格別のものではない。

9.以上,1.?8.において検討したとおりであるから,[相違点1]?[相違点8]は,格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第7.審判請求人の平成29年1月13日付けの意見書に対する検討
1.請求人の主張
請求人は,平成29年1月13日付けの意見書において,
「出願人としては,「音声素片」は"語"ではなく,上記認定が誤っていると考えます。
ア "語"は,複数の音声素片を接続ないし連結することで構成され,単独の音声素片によって構成されるものではありません。
一例を挙げて説明すれば,"語"は,複数の波形を接続ないし連結することによって,その音をなしています。単独の音声波形(少なくとも半波長)によって,"語"の音を構成しているものではございません(例えば,[ https://www.youtube.com/watch?v=KakKhA5p3qM ]のYOUTUBE動画をご参照ください。)。
また,多数の録音フレーズを集めたデータベース(音声コーパスや歌手ライブラリ,楽音コーパス)から,ユーザが指定したフレーズの音を生成する合成手法である波形接続合成{素片接続型(音声素片を接続する形式に相当。),素片連結方式(音声素片を連結する形式に相当。)など}とは,録音された音の断片(一般に「単位」と呼ばれる。本願発明の「音声素片」に相当。)を連結して合成する手法であるとされています。そして,音の断片(単位,音声素片)の長さは,およそ10ms?1秒程度の範囲とされています(Wikipediaにおける「波形接続型音声合成」の検索結果,[ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A2%E5%BD%A2%E6%8E%A5%E7%B6%9A%E5%9E%8B%E9%9F%B3%E5%A3%B0%E5%90%88%E6%88%90 ]をご参照ください。)。このことからも,1つ1つの音声素片(音の断片,単位)が,それぞれ単独で"語"を構成していないことは明らかです。
以上に加えて,音声波形は,異なる"語"において共通に現れ,用いられるので,原則的に言葉の音を構成するための基本波形を音声素片として準備すれば,音声素片の組み合わせによって,全ての話言葉を合成することも可能となります。」(以下,これを「主張点1」という)
及び,
「イ 本願発明では,音声による暗号化された情報伝送を介して受け取り側で情報を復元することを目的としていますから,音声素片を単位にした情報伝送をしなければ復元できないことになります。従来技術のように,インデックスを暗号化された音声に置き換えて伝送し,音声素片を利用しないで受け手で情報復元しようとしても,復元は実現されません。なぜなら,機械は"語"の単位で伝送された音声を処理することができないからです。
ウ 以上のように,本願発明は,音声素片をユニークに識別させて情報処理するように構成した点に特徴があり,引用されている従来技術の方法では,伝送音声を認識し復号化することはできないと考えます。」(以下,これを「主張点2」という)
旨主張している。

2.主張点1について
主張点1は,本願明細書の特許請求の範囲,発明の詳細な説明,及び,図面に記載された事項に基づかないものであるから,採用できない。
本願明細書の発明の詳細な説明には,上記「第6.相違点についての当審の判断」の「3.[相違点1],及び,[相違点3]について」において検討した,段落【0020】の記載内容が存在しているが,この内容を検討しても,変換テーブルとして,音声素片と,インデックスの対応を示すテーブルを構築することに,格別の困難を要しないことは,上記「第6.相違点についての当審の判断」の「3.[相違点1],及び,[相違点3]について」において検討したとおりである。
仮に,上記引用主張のとおり,「音声素片」を,“語”ではなく,“単位”として認定し,上記「第5.本願発明と引用発明との対比」において,“語”を,“単位”である点で共通であると認定したとしても,上記「第6.相違点についての当審の判断」において指摘したことと同様のことがいえる。

3.主張点2について
主張点2も,本願明細書の発明の詳細な説明に基づくものではなく,また,当該主張点における「機械は"語"の単位で伝送された音声を処理することができないからです」は,根拠が不明である。
仮に,上記引用主張のとおりであるとしても,上記「第6.相違点についての当審の判断」の「3.[相違点1],及び,[相違点3]について」において指摘したとおり,本願明細書には,当該技術分野における当業者の周知技術知識の範囲内で構築し得る構成が開示されているに止まる。

4.主張点に対する総括
以上,2.,及び,3.において指摘したとおりであるから,請求人の主張は採用できない。
よって,本願発明は,引用発明,引用刊行物2に係る発明,引用刊行物3に係る発明,引用刊行物4に係る発明,及び,当該技術分野における周知の技術知識とに基づいて,当業者が容易になし得たものである。

第8.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-31 
結審通知日 2017-04-03 
審決日 2017-04-21 
出願番号 特願2011-241599(P2011-241599)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 須田 勝巳
石井 茂和
発明の名称 音声システム  
代理人 工藤 一郎  

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