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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1328888
審判番号 不服2016-4445  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-24 
確定日 2017-06-07 
事件の表示 特願2013-527541「誤差修正アクチュエータ、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日国際公開、WO2012/031930、平成25年11月 7日国内公表、特表2013-540932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011(平成23)年8月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月10日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成25年3月11日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成25年5月8日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面及び要約書の日本語による翻訳文が提出され、平成27年2月20日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成27年5月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年11月18日付けで拒絶査定がされ、平成28年3月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成28年8月9日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年3月24日付けの手続補正について
1 平成28年3月24日付けの手続補正の内容
平成28年3月24日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年5月28日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
過給器(6)の誤差修正アクチュエータ(1)の製造方法であって、
アクチュエータ(1)は、レギュレーティングロッド(2)、およびレギュレーティングロッド(2)に接続され得るコネクティングエレメント(3)を有するレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)を含み、
誤差修正アクチュエータ(1)は、定義された信号によって、予め定義された位置に至らされ、
コネクティングエレメント(3)をレギュレーティングロッド(2)に相対的にシフトすることにより、レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)が、予め定義された一定の全長(L)を有するように調整され、
コネクティングエレメント(3)は、レギュレーティングロッド(2)に固定的に接続されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
コネクティングエレメント(3)の全長(L)の調整のために、コネクティングエレメント(3)のコネクティングプレート(7)がレギュレーティングロッド(2)のグルーブ(12)内に押し込まれることを特徴とする方法。
【請求項3】
過給器(6)上のアクチュエータの調整装置であって、
アクチュエータ(1)は、少なくとも並進動が伝達され得るレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)を含み、
アクチュエータ(1)の予め定義された位置でのレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)の長さが、予め定義された一定の全長(L)を有し、全長(L)に関して、アクチュエータ(1)は、誤差修正され、同じタイプの2つのアクチュエータ(1)が同じ全長(L)を有していることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項3のアクチュエータであって、
レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)は、レギュレーティングロッド(2)、および上記レギュレーティングロッド(2)に接続されるコネクティングエレメント(3)を含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4のアクチュエータであって、
コネクティングエレメント(3)は、コネクティングプレート(7)、およびコネクティングコンター(8)を含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項5のアクチュエータであって、
コネクティングプレート(7)は、少なくとも部分的にレギュレーティングロッド(2)のグルーブ(12)内に押し込まれていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
請求項5または請求項6のアクチュエータであって、
レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)の全長(L)は、コネクティングコンター(8)からアクチュエータ(1)のコネクティングフランジ(5)までの距離として定義され、
コネクティングフランジ(5)によってアクチュエータ(1)が過給器(6)に接続され得ることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
請求項5から請求項7のうち何れか1項のアクチュエータであって、
コネクティングコンター(8)は、ピンまたはスタッドとして設計され、少なくとも、可変タービンジオメトリまたはウェストゲートバルブの調整レバー(10)のリセス(9)内で固定エレメント(11)によって回転移動可能に位置されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
過給器(6)にアクチュエータ(1)を取り付ける方法であって、
アクチュエータ(1)が、過給器(6)に相対的に位置されて固定され、
過給器(6)の可変タービンジオメトリまたはウェストゲートバルブが、予め定義された位置に至らされ、
アクチュエータ(1)が、予め定義された位置に至らされ、
アクチュエータ(1)の予め定義された一定の全長(L)を有するレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)に回転移動可能に接続された調整レバー(10)が、可変タービンジオメトリまたはウェストゲートバルブのアクチュエーティングエレメント(17)に回転固定的に接続されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9の方法であって、
スピンドルまたはスタッドとして設計されたアクチュエーティングエレメント(17)が、調整レバー(10)の更なるリセス(15)内に導入されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項3から請求項8のうち何れか1項の誤差修正アクチュエータ(1)を有する過給器であって、
少なくとも並進動が伝達され得る誤差修正アクチュエータ(1)のレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)が、アクチュエータ(1)の予め定義された位置で予め定義された一定の全長(L)を有し、同じタイプの2つのアクチュエータ(1)が、同じ全長(L)を有していることを特徴とする過給器。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
過給器(6)の誤差修正アクチュエータ(1)の製造方法であって、
アクチュエータ(1)は、レギュレーティングロッド(2)、およびレギュレーティングロッド(2)に接続され得るコネクティングエレメント(3)を有するレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)を含み、
誤差修正アクチュエータ(1)は、定義された信号によって、予め定義された位置に至らされ、
コネクティングエレメント(3)をレギュレーティングロッド(2)に相対的にシフトすることにより、レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)が、予め定義された一定の全長(L)を有するように調整され、
コネクティングエレメント(3)は、レギュレーティングロッド(2)に固定的に接続されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
コネクティングエレメント(3)の全長(L)の調整のために、コネクティングエレメント(3)のコネクティングプレート(7)がレギュレーティングロッド(2)のグルーブ(12)内に押し込まれることを特徴とする方法。
【請求項3】
過給器(6)上のアクチュエータであって、
アクチュエータ(1)は、少なくとも並進動が伝達され得るレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)を含み、
アクチュエータ(1)の予め定義された位置でのレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)の長さが、予め定義された一定の全長(L)を有し、全長(L)に関して、アクチュエータ(1)は、誤差修正され、同じタイプの2つのアクチュエータ(1)が同じ全長(L)を有していることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項3のアクチュエータであって、
レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)は、レギュレーティングロッド(2)、および上記レギュレーティングロッド(2)に接続されるコネクティングエレメント(3)を含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4のアクチュエータであって、
コネクティングエレメント(3)は、コネクティングプレート(7)、およびコネクティングコンター(8)を含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項5のアクチュエータであって、
コネクティングプレート(7)は、少なくとも部分的にレギュレーティングロッド(2)のグルーブ(12)内に押し込まれていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
請求項5または請求項6のアクチュエータであって、
レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)の全長(L)は、コネクティングコンター(8)からアクチュエータ(1)のコネクティングフランジ(5)までの距離として定義され、
コネクティングフランジ(5)によってアクチュエータ(1)が過給器(6)に接続され得ることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
請求項5から請求項7のうち何れか1項のアクチュエータであって、
コネクティングコンター(8)は、ピンまたはスタッドとして設計され、少なくとも、可変タービンジオメトリまたはウェストゲートバルブの調整レバー(10)のリセス(9)内で固定エレメント(11)によって回転移動可能に位置されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
過給器(6)にアクチュエータ(1)を取り付ける方法であって、
アクチュエータ(1)が、過給器(6)に相対的に位置されて固定され、
過給器(6)の可変タービンジオメトリまたはウェストゲートバルブが、予め定義された位置に至らされ、
アクチュエータ(1)が、予め定義された位置に至らされ、
アクチュエータ(1)の予め定義された一定の全長(L)を有するレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)に回転移動可能に接続された調整レバー(10)が、可変タービンジオメトリまたはウェストゲートバルブのアクチュエーティングエレメント(17)に回転固定的に接続されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9の方法であって、
スピンドルまたはスタッドとして設計されたアクチュエーティングエレメント(17)が、調整レバー(10)の更なるリセス(15)内に導入されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項3から請求項8のうち何れか1項の誤差修正アクチュエータ(1)を有する過給器であって、
少なくとも並進動が伝達され得る誤差修正アクチュエータ(1)のレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)が、アクチュエータ(1)の予め定義された位置で予め定義された一定の全長(L)を有し、同じタイプの2つのアクチュエータ(1)が、同じ全長(L)を有していることを特徴とする過給器。」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項3について、本件補正前の特許請求の範囲の請求項3における「過給器(6)上のアクチュエータの調整装置であって、」を、本件補正後に「過給器(6)上のアクチュエータであって、」とすることにより誤記を訂正するものであって、特許法第17条の2第5項第3号に規定される誤記の訂正を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するものではない。
したがって、本件補正は適法になされたものである。

第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲並びに平成25年5月8日に提出された明細書及び図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定されるとおりである。

第4 特許法第29条第2項について
1 引用文献
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-148107号公報(以下、「引用文献」という。)には、「可変容量タービンのアクチュエータ調整装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。(なお、下線は理解の一助とするために当審で付した。)

ア 「【0002】
【従来の技術】過給機付き内燃機関においては、機関からの排ガス流量と過給機の最適作動条件となるガス流量とのマッチングをなすために、渦巻状のスクロールからタービンロータに送られる排ガス流量を機関の運転状態に応じて可変とする可変容量タービンを備えた過給機が、近年多く用いられている。かかる可変容量タービンを備えた過給機は、図7に示されるような基本構造をそなえており、同図において、30はタービンケーシング、38は該タービンケーシング30内の外周部に渦巻状に形成されたスクロール通路、44はタービンロータで膨張仕事をした排ガスを機外に送出するための排気ガス出口である。31はコンプレッサケーシング、36は該コンプレッサケーシング31と前記タービンケーシング30とを連結する軸受ハウジングである。
【0003】34はタービンホイール、35はコンプレッサホイール、33は該タービンホイール34とコンプレッサホイール35とを連結するタービンシャフト、37は前記軸受ハウジング36に取り付けられて前記タービンシャフト33を支持する軸受である。40はノズルベーンで、前記スクロール通路38の内周側にタービンの円周方向等間隔に複数個配置されるとともに、これに一体形成されたノズルピンが前記タービンケーシング30に固定されたノズル組立品を形成しているノズルマウントに回動可能に支持され、その可変ノズル機構100によりその翼角が変化せしめられるようになっている。
【0004】100は可変ノズル機構、50はアクチュエータで、該アクチュエータ50の駆動力がアクチュエータロッド51及びレバー組立品042を介して前記タービンシャフト33の回転軸心廻りに回転駆動せしめられるリング組立品(図示省略)を回転させることにより前記ノズルベーン40を回転させてその翼角を変化させるようになっている。該アクチュエータ50はアクチュエータブラケット54を介してボルト054により前記コンプレッサケーシング31に固定されている。
【0005】図8はかかる可変容量タービンを備えた過給機における可変ノズル機構駆動用アクチュエータ装置におけるアクチュエータロッドとレバー組立品との連結部の従来の1例を示し、図において、50はアクチュエータ、51は該アクチュエータにより往復動せしめられるアクチュエータロッドである。042はレバー組立品で、前記アクチュエータロッド51の出力端部にピン56を介して連結されるレバー42、該レバー42の根元部に固定された回転軸55(図2参照)等からなる。該レバー組立品042の回転軸55は前記可変ノズル機構100に連結されている。60は前記アクチュエータロッド51とレバー組立品042との間に介装された中間継手で、左右逆ねじを有するターンバックル61を備えている。
【0006】かかる可変容量タービンを備えた過給機とこれが搭載されるエンジン(内燃機関)との性能のマッチングを行うにあたっては、該過給機を生産現場で組み立てる際、図8に示されるように、過給機の単体状態にて前記アクチュエータ50に空気圧を与え、該アクチュエータ50の空気圧と前記ノズルベーン40の開度(翼角)との関係を空力的な要求仕様に合わせて、前記アクチュエータロッド51とレバー組立品042との間に介装された中間継手60のターンバックル61によりアクチュエータロッド51とレバー組立品042側のリンク63との間の長さを調整し、ロックナット62を締め付けて仮止めを施す。そしてエンジンに搭載する際に、エンジン性能に合わせ前記中間継手60によって前記と同様にアクチュエータロッド51とレバー組立品042側のリンク63との間の長さ調整を行い、最終的にロックナット62で固定する。」(段落【0002】ないし【0006】)

(2)引用文献の記載から分かること
上記(1)及び図面の記載から、以下の事項が分かる。

カ 上記(1)ア(特に段落【0005】)及び図8から、引用文献には、可変容量タービンを備えた過給機における可変ノズル機構駆動用アクチュエータ装置が記載されていることが分かる。

キ 上記(1)ア(特に段落【0005】)及び図8から、引用文献に記載されたアクチュエータ装置は、アクチュエータ50、アクチュエータロッド51、ピン56、レバー42、回転軸55、ターンバックル61を備える中間継手60等を含むことが分かる。

ク 上記(1)ア(特に段落【0006】)及び図8から、引用文献に記載されたアクチュエータ装置は、該過給機を生産現場で組み立てる際、図8に示されるように、過給機の単体状態にて前記アクチュエータ50に空気圧を与え、該アクチュエータ50の空気圧と前記ノズルベーン40の開度(翼角)との関係を空力的な要求仕様に合わせて、前記アクチュエータロッド51とレバー組立品042との間に介装された中間継手60のターンバックル61によりアクチュエータロッド51とレバー組立品042側のリンク63との間の長さを調整し、ロックナット62を締め付けて仮止めを施すことが分かる。

ケ 上記(1)ア(特に段落【0006】)及び上記ク並びに図8から、引用文献に記載されたアクチュエータ装置は、「過給機の単体状態にてアクチュエータ50に空気圧を与え、該アクチュエータ50の空気圧と前記ノズルベーン40の開度(翼角)との関係を空力的な要求仕様に合わせ」ることから、アクチュエータ装置は、アクチュエータ50に所定の空気圧を与えられたときに、ノズルベーン40の開度が空力的な要求仕様に合わせた所定の開度となる位置に、設定されるといえる。

コ 上記(1)ア(特に段落【0006】)及び上記ク並びに図8から、引用文献に記載されたアクチュエータ装置は、「中間継手60のターンバックル61によりアクチュエータロッド51とレバー組立品042側のリンク63との間の長さを調整し、ロックナット62を締め付けて仮止めを施す」ことから、ターンバックル61をアクチュエータロッド51に相対的にシフトすることにより、中間継手60が、過給機に適合する一定の全長を有するように調整され、ターンバックル61は、アクチュエータロッド51にロックナット62により仮止めされるといえる。

(3)引用発明
上記(1)、(2)及び図面(特に図8)の記載から、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「過給機のアクチュエータ装置の組立方法であって、
アクチュエータ装置は、アクチュエータロッド51、及びアクチュエータロッド51に接続され得るターンバックル61を備える中間継手60を含み、
アクチュエータ装置は、所定の空気圧によって、ノズルベーン40の開度が所定の開度となる位置に設定され、
ターンバックル61をアクチュエータロッド51に相対的にシフトすることにより、中間継手60が、過給機に適合する一定の全長を有するように調整され、
ターンバックル61は、アクチュエータロッド51にロックナット62により仮止めされる、方法。」

2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「過給機」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「過給機(6)」に相当し、以下同様に、「組立方法」は「製造方法」に、「アクチュエータ装置」は「誤差修正アクチュエータ(1)」に、「アクチュエータロッド51」は「レギュレーティングロッド(2)」に、「ターンバックル61」は「コネクティングエレメント(3)」に、「中間継手60」は「レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)」に、「設定され」は「至らされ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「アクチュエータ装置は、所定の空気圧によって、ノズルベーン40の開度が所定の開度となる位置に設定され」は、「誤差修正アクチュエータは、所定の信号によって、所定の位置に至らされ」という限りにおいて、本願発明における「誤差修正アクチュエータは、定義された信号によって、予め定義された位置に至らされ」に相当する。
また、引用発明における「仮止めされる」は、「接続される」という限りにおいて、本願発明における「固定的に接続される」に相当し、したがって、引用発明における「ターンバックル61をアクチュエータロッド51に相対的にシフトすることにより、中間継手60が、過給機に適合する一定の全長を有するように調整され、ターンバックル61は、アクチュエータロッド51にロックナット62により仮止めされる」は、「コネクティングエレメントをレギュレーティングロッドに相対的にシフトすることにより、レギュレーティングコンポーネントアセンブリが、所定の全長を有するように調整され、コネクティングエレメントは、レギュレーティングロッドに接続される」という限りにおいて、本願発明における「コネクティングエレメント(3)をレギュレーティングロッド(2)に相対的にシフトすることにより、レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)が、予め定義された一定の全長(L)を有するように調整され、コネクティングエレメント(3)は、レギュレーティングロッド(2)に固定的に接続される」に相当する。

したがって、両者は、
「過給器の誤差修正アクチュエータの製造方法であって、
アクチュエータは、レギュレーティングロッド、およびレギュレーティングロッドに接続され得るコネクティングエレメントを有するレギュレーティングコンポーネントアセンブリを含み、
誤差修正アクチュエータは、所定の信号によって、所定の位置に至らされ、
コネクティングエレメントをレギュレーティングロッドに相対的にシフトすることにより、レギュレーティングコンポーネントアセンブリが、所定の全長を有するように調整され、
コネクティングエレメントは、レギュレーティングロッドに接続される、方法。」
という点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。

<相違点>
(1)「誤差修正アクチュエータは、所定の信号によって、所定の位置に至らされ」に関して、本願発明においては、「誤差修正アクチュエータ(1)は、定義された信号によって、予め定義された位置に至らされ」るのに対し、引用発明においては、「アクチュエータ装置は、所定の空気圧によって、ノズルベーン40の開度が所定の開度となる位置に設定され」る点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「コネクティングエレメントをレギュレーティングロッドに相対的にシフトすることにより、レギュレーティングコンポーネントアセンブリが、所定の全長を有するように調整され、コネクティングエレメントは、レギュレーティングロッドに接続される」に関して、本願発明においては、「コネクティングエレメント(3)をレギュレーティングロッド(2)に相対的にシフトすることにより、レギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)が、予め定義された一定の全長(L)を有するように調整され、コネクティングエレメント(3)は、レギュレーティングロッド(2)に固定的に接続される」のに対して、引用発明においては、「ターンバックル61をアクチュエータロッド51に相対的にシフトすることにより、中間継手60が、過給機に適合する一定の全長を有するように調整され、ターンバックル61は、アクチュエータロッド51にロックナット62により仮止めされる」点(以下、「相違点2」という。)。

3 相違点についての判断
相違点について、以下に検討する。
(1)相違点1について
本願発明における「誤差修正アクチュエータ(1)は、定義された信号によって、予め定義された位置に至らされる」の技術的意味を知るために、本願明細書を参照する。
本願明細書には、「誤差修正されたアクチュエータ1を形成するために、全長Lは、縦軸13に沿ったグルーブ12内でのコネクティングプレート7のシフトによってアクチュエータ1が予め定義された位置に至らされた後に、調整される。・・・ここで、アクチュエータ1の予め定義された位置は、ギアリングの定義位置、および/または位置センサの定義位置、および/またはレギュレーティングロッド2の定義位置であり得る。そのような予め定義されたアクチュエータ1の位置は、アクチュエータに供給される信号を通じて調整され得、または例えばセンサの信号によって検出され得る。」(段落【0016】及び【0017】。下線は当審で付した。)と記載されている。
すなわち、本願発明における「定義された信号」とは、「アクチュエータに供給される信号」又は「センサの信号」を意味し、本願発明における「予め定義された位置」とは、「ギアリングの定義位置、および/または位置センサの定義位置、および/またはレギュレーティングロッド2の定義位置」であり得ることが分かる。
一方、引用発明においては、「アクチュエータ装置は、所定の空気圧によって、ノズルベーン40の開度が所定の開度となる位置に設定され」るのであるが、上記「所定の空気圧」とはアクチュエータ50を駆動するための空気圧であるから、引用発明における「所定の空気圧」は、本願発明における「定義された信号」(アクチュエータに供給される信号)に相当するといえる。
また、上記のように、本願発明における「予め定義された位置」がどの位置であるかは特に限定されておらず、任意の位置(例えば、ウェストゲートバルブの閉じた位置)に設定できると解されるから、引用発明における「ノズルベーン40の開度が所定の開度となる位置」を「予め定義された位置」として設定することもできることは明らかである。

したがって、相違点1は、実質的な相違点ではないと認められ、仮に、相違点1が実質的な相違点であったとしても、引用発明において、相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
本願発明における「予め定義された一定の全長(L)を有するように調整され」の技術的意味を知るために、本願明細書を参照する。
本願明細書には、「さらに、レギュレーティングロッド2には、グルーブ12(Nut)が設けられ、これに、コネクティングエレメント3のコネクティングプレート7が押し込まれ得る。レギュレーティングロッド2の縦軸13に沿ったグルーブ12内でのコネクティングプレート7のシフトによって、オフセット長さNによりレギュレーティングコンポーネントアセンブリ4の全長Lが変えられ得る。ここで、全長Lは、コネクティングフランジ5と、ピンまたはスタッドとして設計されたコネクティングコンター8の中心軸14との間の距離として定義され得る。誤差修正されたアクチュエータ1を形成するために、全長Lは、縦軸13に沿ったグルーブ12内でのコネクティングプレート7のシフトによってアクチュエータ1が予め定義された位置に至らされた後に、調整される。」(段落【0016】。下線は当審で付した。)と記載されている。
この記載から、「予め定義された一定の全長(L)」とは、「コネクティングフランジ5と、ピンまたはスタッドとして設計されたコネクティングコンター8の中心軸14との間の距離」(図1及び2にLとして示されている長さ)として定義されることができ、該全長(L)は、「誤差修正されたアクチュエータ1を形成するために」、「縦軸13に沿ったグルーブ12内でのコネクティングプレート7のシフトによってアクチュエータ1が予め定義された位置に至らされた後に、調整される」ものであることが分かる。
一方、引用発明における「一定の全長」は、引用文献の段落【0006】の記載から、「過給機に適合する一定の全長」であると解され、引用文献の段落【0004】及び【0005】並びに図8の記載から、該「一定の全長」は、可変ノズル機構100のレバー組み立て品042に取り付けられたリンク63のピン56と、アクチュエータブラケット54(なお、図8の符号「53」は「54」の誤記と認める。)との間の距離となっている。
すなわち、本願発明における「予め定義された一定の全長(L)」と引用発明における「一定の全長」とは、どちらも、過給機において誤差修正アクチュエータ(引用文献におけるアクチュエータ装置)を取り付けるための距離(長さ)であり、本願発明におけるコネクティングフランジ5(引用文献におけるアクチュエータブラケット54)と、中心軸14(引用文献におけるピン56)との間の距離(長さ)であるから、両者は実質的に相違しないと解される。

また、引用発明において「ターンバックル61は、アクチュエータロッド51にロックナット62により仮止めされる」(下線は当審で付した。)のは、「エンジンに搭載する際に、エンジン性能に合わせ前記中間継手60によって前記と同様にアクチュエータロッド51とレバー組立品042側のリンク63との間の長さ調整を行い、最終的にロックナット62で固定する」ためであるが、このようにエンジン性能に合わせて長さ調整をする必要が無ければ、上記「仮止めされる」に代えて、「固定される」ことができることは明らかである。

してみると、引用発明において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明は、引用発明からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

なお、請求人は、審判請求書において、
「本願発明において、上記のようにレギュレーティングコンポーネントアセンブリ(4)が、予め定義された一定の全長(L)を有するようにでき、個々の調整を不要にできるためには、次のようなことが前提となっています。・・・すなわち、本願発明では、複数の過給機が製造される場合に、何れの過給機も、「予め定義された一定の全長(L)」を有するアクチュエータを取り付けたときに適切に動作するように調整されていることを前提としています。したがって、現場でアクチュエータを過給機に取り付けたり交換したりするときに、アクチュエータの全長を調整する必要がありません。つまり、本願発明は、過給器が上記のように調整されてさえいれば、現場でアクチュエータの全長の調整を回避して現場の作業性を向上させ得る等の利点が得られることに気づいてなされたものです。」(3.(4))と主張している。
しかしながら、「複数の過給機が製造される場合に、何れの過給機も、「予め定義された一定の全長(L)」を有するアクチュエータを取り付けたときに適切に動作するように調整されていること」は、本願発明の発明特定事項ではなく、本願の明細書に記載された事項でもない。
また、出願人の上記主張は、過給機の製造誤差が全くない(又は、極めて小さい)ということを意味するものであるが、本願の明細書(例えば、段落【0010】の「過給機の組み付けおよび製造誤差」という記載を参照。)には、過給機には製造誤差があることが記載されている。そして、過給機は、アクチュエータ装置よりも大きく複雑なものであるから、過給機の製造誤差は、アクチュエータ装置の製造誤差よりも大きいと考えられる。そうすると、請求人の上記主張は合理的ではない。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

なお、仮に、請求人が主張するように、「何れの過給機も、「予め定義された一定の全長(L)」を有するアクチュエータを取り付けたときに適切に動作するように調整されている」としても、引用発明において、「一定の全長」を、「予め定義された一定の全長(L)」として設定することは、当業者が容易に想到できたことである。

4 小結
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-27 
結審通知日 2017-01-10 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2013-527541(P2013-527541)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺川 ゆりか  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 三島木 英宏
金澤 俊郎
発明の名称 誤差修正アクチュエータ、およびその製造方法  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
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