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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05H
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05H
管理番号 1328909
審判番号 不服2016-10107  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-05 
確定日 2017-06-27 
事件の表示 特願2015- 36510「プラズマ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 6日出願公開、特開2015-144129、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月11日(優先権主張 平成24年3月2日 日本国)の出願である特願2012-89789号の一部を平成27年2月26日に新たな特許出願とした特願2015-36510号であって、平成27年11月16日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月6日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年6月17日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成29年2月27日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年4月4日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年4月20日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年5月8日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年5月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明である。
「【請求項1】
線状の開口部を備えた誘電体ブロックと、
前記誘電体ブロックの壁面によって囲まれ、かつ、前記開口部の延出方向に平行な面で切った断面において一続きに閉じた形状を有する環状チャンバと、
前記環状チャンバの内部にガスを導入するガス供給配管と、
前記環状チャンバの近傍に設けられたコイルと、を有する誘導結合型プラズマトーチユニット、を備え、
前記コイルに接続される高周波電源と、
前記開口部に対向して配置され、かつ、基材を載置する基材載置台と、を有する、
プラズマ処理装置。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった情報に係る引用文献1(国際公開第2011/142125号)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「(2)引用文献1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)
a「[0001]本発明は、熱プラズマを基材に照射して基材を処理する熱プラズマ処理、又は、反応ガスによるプラズマ又はプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を処理する低温プラズマ処理などのプラズマ処理を行う、プラズマ処理装置及び方法に関するものである。」
b「[0030]本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマ又はプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、基材の所望の被処理領域全体を短時間で処理することのできるプラズマ処理装置及び方法を提供することを目的としている。
[0031]本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
[0032]本発明のプラズマ処理装置は、スリット状の開口部を備える筒状チャンバと、
前記チャンバ内にガス導入口を介してガスを供給するガス供給装置と、
前記開口部の長手方向と平行なコイル延出方向を有しかつ前記チャンバ内に高周波電磁界を発生させるソレノイドコイルと、
前記コイルに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記開口部と対向して配置され、かつ基材を基材載置面に載置する基材載置台と、
前記開口部の長手方向と前記基材載置台の前記基材載置面とが平行な状態を維持しながら、前記チャンバと前記基材載置台とを相対的に移動させる移動装置と、を備えることを特徴とする。
[0033]このような構成により、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、あるいは、反応ガスによるプラズマ又はプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、基材の所望の被処理領域全体を短時間で処理することができる。」
c「[0065]図1Aは、本発明の第1実施形態における熱プラズマ処理装置の構成を示すものである。図1Bは、本発明の第1実施形態におけるプラズマ処理装置と四角形の基材2及び基材載置台1との関係を示すプラズマ処理装置の底面図である。図1A及び図1Bは、誘導結合型プラズマトーチユニット3の長尺方向に平行で、かつ、ソレノイドコイル9の中心軸10を含み、かつ、基材2の表面に対して垂直な面で切った断面図である。また、図2Aは、図1Aに示した破線A-Aで切った切断部端面図である。なお、以下の説明では、基材2は四角形で説明しているが、図1Cに示すように、本発明の第1実施形態におけるプラズマ処理装置は円形の基材2A(基材載置台1は図示を省略)にも適用可能である。
[0066]基材2の一例としては、半導体基板などが挙げられる。
[0067]図1A及び図2Aにおいて、基材載置台1の矩形又は円形の基材載置面1a上に基材2が載置されている。誘導結合型プラズマトーチユニット3は、筒状チャンバ7と、ガス導入口の一例としてのガス噴出口8と、ソレノイドコイル9とで構成されている。
[0068]筒状チャンバ7は、長方形のスリット状のプラズマ噴出口4(これを「開口部」と称する場合もある。)が下端面に設けられ、絶縁体材料で構成される円筒5、及び、円筒5の両端をそれぞれ塞ぐ蓋6とで構成されている。
[0069]ガス噴出口8は、各蓋6の中央部から筒状チャンバ7内に挿入されたガス噴出管で構成されて、筒状チャンバ7内にガス供給装置40からガスを一定流速で供給する。
[0070]ソレノイドコイル9は、円筒5の外側に、円筒5の中心軸10と同心に配置されて、高周波電力を高周波電源41から供給して筒状チャンバ7内に高周波電磁界を発生させる。
[0071]基材載置台1(或いは、基材載置台1の基材載置面1a上に載置された基材2)は、プラズマ噴出口4と対向して配置されている。この状態で、筒状チャンバ7内にガス噴出口8よりガスを供給しつつ、プラズマ噴出口4から基材2に向けてガスを噴出させながら、高周波電源41よりソレノイドコイル9に高周波電力を供給することにより、筒状チャンバ7内にプラズマPを発生させ、プラズマ噴出口4からプラズマPを基材2に照射する。
[0072]ソレノイドコイル9の中心軸10の方向と、プラズマ噴出口4(開口部)の長手方向と、基材載置台1の基材載置面1a(基材2の表面)とは、平行に配置されている。ソレノイドコイル9の中心軸10の方向とは、ソレノイドコイル9が延びる方向(コイル延出方向)を意味する。また、プラズマ噴出口4(開口部)の長手方向とは交差する向き、例えば、生産効率を向上させる観点からは、プラズマ噴出口4(開口部)の長手方向とは垂直な(直交する)向き(図1Aにおける紙面と垂直な向き、図2Aにおける矢印の向き)に、筒状チャンバ7を含むプラズマトーチユニット3と基材載置台1とを、移動装置42により、均一速度で相対的に移動しながら基材表面を熱処理することができる。このようにして、基材2の表面近傍11を均一に熱処理することができる。」
d「[0085]また、ソレノイドコイル9の中心軸10の方向と、プラズマ噴出口4の長手方向とが平行に配置されている状態を維持するのは、熱プラズマの長尺方向の均一性を確保するため、筒状チャンバ7の内部空間においては、中心軸10の向きに比較的均一なプラズマを生成することができるので、長尺方向にプラズマが均一となり、基材2を均一に処理することができる。すなわち、ソレノイドコイル9の中心軸10の方向と、プラズマ噴出口4の長手方向とが平行に配置されている状態を維持するのは、熱プラズマの長尺方向の均一性を確保するためである。この平行関係が大幅に崩れると、熱プラズマが長尺方向に不均一となってしまい、好ましくない。また、ソレノイドコイル9の中心軸10の方向と、プラズマ噴出口4の長手方向と、基材載置台1の基材載置面1a(基材2の表面)とが平行に配置されている状態を維持するのは、生産効率を上げるためである。よって、ソレノイドコイル9の中心軸10の方向と、プラズマ噴出口4の長手方向と、基材載置台1の基材載置面1a(基材2の表面)との平行関係は、本実施形態のみならず、他の実施形態でも維持されることが好ましい。」
e「[図1A]


f「[図1B]


g「[図2A]


(2)引用文献1に記載された発明の認定
上記「(1)」のcの[0068]段落の記載から「筒状チャンバ7」は円筒5及び円筒5の両端をそれぞれ塞ぐ蓋6とで構成され、内部空間を閉じた形状を有するものであるということができ、eの「[図1A]、fの「[図1B]及びgの「[図2A]を参酌すれば、長方形のスリット状のプラズマ噴出口4の延出方向に平行な面で切った内部空間の断面は、円筒5の長辺をなす直線部とその両端に蓋5の短辺からなる直線部が連結されてなる閉じた形状となることは明らかである。
よって、上記「(1)」のa?gの記載から、引用文献1には、
「筒状チャンバ7と、ガス導入口の一例としてのガス噴出口8と、ソレノイドコイル9とで構成されている熱プラズマ処理装置誘導結合型プラズマトーチユニット3を備え、
筒状チャンバ7は、長方形のスリット状のプラズマ噴出口4が下端面に設けられ、絶縁体材料で構成される円筒5、及び、円筒5の両端をそれぞれ塞ぐ蓋6とで構成され、長方形のスリット状のプラズマ噴出口4の延出方向に平行な面で切った内部空間の断面は、円筒5の長辺をなす直線部とその両端に蓋5の短辺からなる直線部によって閉じた形状となり、
ガス噴出口8は、各蓋6の中央部から筒状チャンバ7内に挿入されたガス噴出管で構成されて、筒状チャンバ7内にガス供給装置40からガスを一定流速で供給するものであり、
ソレノイドコイル9は、円筒5の外側に、円筒5の中心軸10と同心に配置されて、高周波電力を高周波電源41から供給して筒状チャンバ7内に高周波電磁界を発生させるものであり、
プラズマ噴出口4と対向して基材載置台1が配置され、
ソレノイドコイル9の中心軸10の方向と、プラズマ噴出口4(開口部)の長手方向と、基材載置台1の基材載置面1a(基材2の表面)とは、平行に配置されている熱プラズマ処理装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2003-33647号公報)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「(2)引用文献2に記載された技術事項について」において直接引用した記載に下線を付した。)
a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体ウェーハやガラス基板等に対して、エッチング、アッシング、CVD処理、イオン注入処理等を行うプラズマ処理装置に関する。」
b「【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係るプラズマ処理装置の一実施例の正面図であり、図2は図1における縦断面図であり、図3は図1におけるA-A方向の断面図である。
【0009】図1乃至図3に示すように、プラズマ発生用アウターチャンバー1の上方に天板2が取り付けられている。天板2は、反応性ガスを導入するためのフランジを備えている。また、プラズマ発生用アウターチャンバー1は、石英、若しくはセラミックスで形成されている。更に、プラズマ発生用アウターチャンバー1の外周囲にアルミニウム合金製又はステンレス製のファラデーシールド3が形成されている。
【0010】ファラデーシールド3の外周囲にプラズマ発生用コイル4が設けられている。プラズマ発生用コイル4は、二つの固定部5によって取り付けられ、3周巻回されている。更に、プラズマ発生用コイル4は、高周波出力ユニット6に接続されている。
【0011】また、図2に示すように、プラズマ発生用アウターチャンバー1の内側に、インナーチャンバー7が同軸状に取り付けられている。インナーチャンバー7は、その直径がプラズマ発生用アウターチャンバー1の径より小さく、その底部8がプラズマ発生用アウターチャンバー1の底部9より高く配置されている。すると、プラズマ発生用アウターチャンバー1の内側とインナーチャンバー7の外側との間にプラズマ発生領域10が形成される。なお、インナーチャンバー7の材質はプラズマ発生用アウターチャンバー1と同じである。
【0012】このように、プラズマ発生領域10は、従来より小さくなっている。その結果、プラズマ発生用アウターチャンバーが大きくなっても、プラズマ発生領域は広くならず、断面積が狭いために導入ガスの流速が下がることもなくなり、従来のポンプや電源で十分にプラズマを発生させることができる。
【0013】プラズマ発生用ガスが、ガス導入部11を通して、プラズマ処理装置12に進入して、矢印で示しているように、更にコ字型細管13を通って、プラズマ発生領域10に導入される。また、細管13はガス供給部に相当する。ガス導入部11とガス供給部13からガス導入器を構成する。
【0014】なお、インナーチャンバー7の内部は大気で充満している、或いは真空にしている。また、プラズマ発生用ガスの種類は被処理物の材質等を考慮して決定されるが、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、空気、酸素、6フッ化エチレン、プロパン、ブタン等が挙げられる。
【0015】また、プラズマ発生用アウターチャンバー1の下方に、処理チャンバー14が取り付けられ、その処理チャンバー14の内部に、ウェーハ等の被処理物Wを載置して昇降させるテーブル15が設置されている。
【0016】このように、プラズマ処理装置12の上方にあるガス導入部11から導入されたガスは、細管13を通ってプラズマ発生領域10に供給される。そして、プラズマ発生領域10でプラズマ化されたガスはプラズマ発生領域10の上から下に降りてくる。インナーチャンバー7の底部8を過ぎた時点で一気に中心に向かって流れ込み、渦を作る。その後、プラズマ化されたガスは、均一な状態でテーブル15上の被処理物Wに到達する。
【0017】インナーチャンバー7の底部8と被処理物までの距離があまり大きすぎると、流れ込んできたプラズマが中心部分に集中してしまい、被処理物W全体を均一に処理できなくなってしまう。一方、インナーチャンバー7の底部8と被処理物までの距離に差がないと、流れ込んでくるプラズマが十分に中心に集中できず、被処理物W全体を均一に処理することができなくなってしまう。
【0018】インナーチャンバー7の底部8から被処理物Wまでの距離は50?300mmとするのが好ましい。
【0019】なお、インナーチャンバーの底部を閉塞した形状のものと記載されているが、プラズマ発生領域の容積を小さくするのであれば、インナーチャンバーの底部は閉塞しなくても良い。更に、インナーチャンバーの底部と被処理物との距離を限定したが、係る問題が解決されるのであれば、その範囲は上記の数値に限定されない。更に図示例では、プラズマ発生用電極としてコイル状のものを示したが、薄板状、櫛歯状のものでも良い。
また、ファラデーシールドの形状も図示例に限らず、スリット状の切欠を設けたり、短冊状にしたり、必要に応じて変更も可能である。」
c「【図2】


(2)引用文献2に記載された技術事項について
上記「(1)」のa?cの記載事項から、引用文献2には、
「プラズマ発生用アウターチャンバー1の内側に、インナーチャンバー7が同軸状に取り付けられ、インナーチャンバー7は、その直径がプラズマ発生用アウターチャンバー1の径より小さく、その底部8がプラズマ発生用アウターチャンバー1の底部9より高く配置され、プラズマ発生用アウターチャンバー1の内側とインナーチャンバー7の外側との間にプラズマ発生領域10が形成されるプラズマ処理装置12において、
プラズマ処理装置12の上方にあるガス導入部11から導入されたガスは、細管13を通ってプラズマ発生領域10に供給され、プラズマ発生領域10でプラズマ化されたガスはプラズマ発生領域10の上から下に降りてきて、インナーチャンバー7の底部8を過ぎた時点で一気に中心に向かって流れ込み、渦を作り、その後、プラズマ化されたガスは、均一な状態でテーブル15上の被処理物Wに到達すること。」(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)
が記載されている。

第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「長方形のスリット状のプラズマ噴出口4が下端面に設けられ、絶縁体材料で構成される円筒5、及び、円筒5の両端をそれぞれ塞ぐ蓋6とで構成され」てなる「筒状チャンバ7」が、本願発明の「線状の開口部を備えた誘電体ブロック」に相当する。
引用発明の「長方形のスリット状のプラズマ噴出口4が下端面に設けられ、絶縁体材料で構成される円筒5、及び、円筒5の両端をそれぞれ塞ぐ蓋6とで構成され、長方形のスリット状のプラズマ噴出口4の延出方向に平行な面で切った内部空間の断面は、円筒5の長辺をなす直線部とその両端に蓋5の短辺からなる直線部によって閉じた形状とな」る「筒状チャンバ7」と、本願発明の「前記誘電体ブロックの壁面によって囲まれ、かつ、前記開口部の延出方向に平行な面で切った断面において一続きに閉じた形状を有する環状チャンバ」とは、「前記誘電体ブロックの壁面によって囲まれ、かつ、前記開口部の延出方向に平行な面で切った断面において閉じた形状を有する環状チャンバ」である点で一致する。
引用発明の「各蓋6の中央部から筒状チャンバ7内に挿入されたガス噴出管で構成されて、筒状チャンバ7内にガス供給装置40からガスを一定流速で供給する」「ガス噴出口8」が、本願発明の「環状チャンバの内部にガスを導入するガス供給配管」に相当する。
引用発明の「円筒5の外側に、円筒5の中心軸10と同心に配置されて、高周波電力を高周波電源41から供給して筒状チャンバ7内に高周波電磁界を発生させる」「ソレノイドコイル9」が、本願発明の「環状チャンバの近傍に設けられたコイル」に相当する。
引用発明の「筒状チャンバ7と、ガス導入口の一例としてのガス噴出口8と、ソレノイドコイル9とで構成されている熱プラズマ処理装置誘導結合型プラズマトーチユニット3」が、本願発明の「誘導結合型プラズマトーチユニット」に相当する。
引用発明の「ソレノイドコイル9」に「高周波電力」を「供給して筒状チャンバ7内に高周波電磁界を発生させる」「高周波電源41」が、本願発明の「コイルに接続される高周波電源」に相当する。
引用発明の「ソレノイドコイル9」に「高周波電力」を「供給して筒状チャンバ7内に高周波電磁界を発生させる」「高周波電源41」が、本願補正発明の「コイルに接続される高周波電源」に相当する。
引用発明の「プラズマ噴出口4」と「対向して配置されている」「基材載置台1」が、本願補正発明の「開口部に対向して配置され、かつ、基材を載置する基材載置台」に相当する。
引用発明の「熱プラズマ処理装置」が、本願補正発明の「プラズマ処理装置」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明との間には次の一致点、相違点がある。
(一致点)
「線状の開口部を備えた誘電体ブロックと、
前記誘電体ブロックの壁面によって囲まれ、かつ、前記開口部の延出方向に平行な面で切った断面において閉じた形状を有する環状チャンバと、
前記環状チャンバの内部にガスを導入するガス供給配管と、
前記環状チャンバの近傍に設けられたコイルと、を有する誘導結合型プラズマトーチユニット、を備え、
前記コイルに接続される高周波電源と、
前記開口部に対向して配置され、かつ、基材を載置する基材載置台と、を有する、
プラズマ処理装置。」
(相違点)
環状チャンバの「開口部の延出方向に平行な面で切った断面において閉じた形状」が、本願発明では、「一続きに閉じた形状」であるのに対し、引用発明においては、そのような特定がない点。

2 相違点についての判断
引用文献2に記載された技術事項における「プラズマ処理装置12」の「プラズマ発生用アウターチャンバー1の内側とインナーチャンバー7の外側との間」の断面の形状は、上記相違点の(断面において)「一続きに閉じた形状」に相当するものと認められるから、引用文献2には、上記相違点に係る発明特定事項を、少なくとも部分的には備えるプラズマ発生装置が記載されているといえる。
しかしながら、引用発明は、「ソレノイドコイル9の中心軸10の方向と、プラズマ噴出口4(開口部)の長手方向と、基材載置台1の基材載置面1a(基材2の表面)とは、平行に配置されている」という発明特定事項を備え、それによって、引用文献1の[0085](上記「(1)」のd参照)に記載されている、「筒状チャンバ7の内部空間においては、中心軸10の向きに比較的均一なプラズマを生成することができるので、長尺方向にプラズマが均一となり、基材2を均一に処理することができる。」という作用効果を奏するものであるから、引用発明に、「プラズマ処理装置12の上方にあるガス導入部11から導入されたガスは、細管13を通ってプラズマ発生領域10に供給され、プラズマ発生領域10でプラズマ化されたガスはプラズマ発生領域10の上から下に降りてきて、インナーチャンバー7の底部8を過ぎた時点で一気に中心に向かって流れ込み、渦を作」るという引用文献2に記載の技術事項を適用すると、上記の引用発明の作用効果を阻害してしまうことになり、上記の引用発明への引用文献2に記載された技術事項の適用には阻害要因があるといえる。
そして、本願発明の上記相違点に係る発明特定事項により、本願発明は、「プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができる」という顕著な効果を奏するものであるから、上記相違点が単なる設計的事項であるということもできず、また、上記相違点が引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用して容易に想到し得たものであるということもできない。

3 小活
よって、本願発明は、実質的に引用発明と同一の発明であるということもできないし、また、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用して容易に発明をすることができたものであるということもできない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1に係る発明について、上記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当し、特許を受けることができない、また、上記引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年5月8日付けの手続補正により補正された請求項1は「環状チャンバ」の「開口部の延出方向に平行な面で切った断面において閉じた形状」が「一続きに閉じた形状」であるという発明特定事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明は、実質的に引用発明と同一の発明であるということもできないし、(引用文献2に記載された技術事項を参酌しても)引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、当審拒絶理由1で、請求項1の記載に関して、「一続きに閉じた形状」の「環状チャンバ」が、請求項1に係る発明では「誘電体製」のものであるのに対して、発明の詳細な説明の上記記載では「誘電体で囲まれた空間」であり、両者は整合しないとの拒絶理由を通知し、また、当審拒絶理由2で、、「一続きに閉じた形状を有」するものが「壁面」であるのか「環状チャンバ」であるのか明確でないとの拒絶理由を通知しているが、平成29年5月8日付けの手続補正における補正の結果、これらの拒絶理由は、いずれも解消した。

第7 むすび
以上のとおりであり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-15 
出願番号 特願2015-36510(P2015-36510)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05H)
P 1 8・ 121- WY (H05H)
P 1 8・ 113- WY (H05H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 松川 直樹
森林 克郎
発明の名称 プラズマ処理装置  
代理人 鎌田 健司  
代理人 前田 浩夫  
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