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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C |
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管理番号 | 1328997 |
審判番号 | 不服2016-7264 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-18 |
確定日 | 2017-06-08 |
事件の表示 | 特願2011-253302「環状化合物、その製造方法、感放射線性組成物及びレジストパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日出願公開、特開2013-107841〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯の概要 本願は、平成23年11月18日を出願日とする出願であって、出願後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 平成27年 6月16日付け 拒絶理由通知 同年 8月 4日 意見書・手続補正書の提出 平成28年 2月29日付け 拒絶査定 同年 5月18日 拒絶査定不服審判の請求・手続補正書の提 出 同年10月 4日 上申書の提出 第2 平成28年5月18日付けの手続補正の補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年5月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成28年5月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成27年8月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の 「 【請求項1】 分子量500?5000の、式(5)で示されることを特徴とする環状化合物。 【化1】 式(5)中、R^(1)は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基又は置換もしくは無置換の炭素数2?20のアルケニル基であり、R^(3)は水素原子または炭素数1?4のアルキル基であり、R^(4)は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基又は置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基であり、pは0?5の整数である。」 との記載を、 「 【請求項1】 分子量500?5000の、式(5)で示されることを特徴とする環状化合物。 【化1】 式(5)中、R^(1)は、水素原子であり、R^(3)は水素原子または炭素数1?4のアルキル基であり、R^(4)は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基又は置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基であり、pは0?5の整数である。」 と補正することを含むものである。 2 補正の適否 (1)補正の目的 上記補正は、本件補正前に、R^(1)について「それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基又は置換もしくは無置換の炭素数2?20のアルケニル基」であったのを、「水素原子」に、R^(4)について「それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基又は置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基」であったのを、「それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基又は置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基」にそれぞれ限定するものである。 そして、本件補正の前後において、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正後発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について検討する。 (2)独立特許要件について ア 引用刊行物 刊行物1:国際公開第2011/118726号(原査定の拒絶理由に引用された引用文献1) イ 引用刊行物の記載事項 刊行物1には、以下の記載がある。 1a)「フェノール性水酸基を1分子中に2個以上有し、フェノール性水酸基のオルト位にヒドロキシメチル基、及びアルコキシメチル基よりなる群から選択される1種以上の置換基を1分子中に1個以上有する分子量400?2500のフェノール性化合物(A)を含有するネガ型レジスト組成物であって、当該ネガ型レジスト組成物の全固形分中における前記フェノール性化合物(A)の含有量が70重量%以上である、ネガ型レジスト組成物。」(請求項1) 1b)「[0136]<合成例1> 10重量%水酸化カリウム水溶液20mLとエタノール20mLからなる溶液に、下記化学式(10)で表されるフェノール性化合物(母核化合物:Pre-1)(TEP-BOCP:旭有機材工業株式会社)5.8g(10mmol)を加え、室温で攪拌、溶解した。この溶液に37%ホルマリン水溶液14.0mL(160mmoL)を室温下でゆっくりと加えた。更に、窒素雰囲気下、40℃で24時間攪拌した後、ビーカー中の水200mLに投入した。これを氷浴にて冷却しながら2.0wt%酢酸水溶液をpH5.0になるまでゆっくりと加えた。析出物をろ別し、十分に水洗浄した後、乾燥し、ヒドロキシメチル基の数が4?8個導入されたフェノール性化合物の混合物(A-01M)を得た。精製は、高速液体クロマトグラフィーにて行い、下記化学式(11)で表されるフェノール性化合物1(A-01)を4.8g得た。 得られたフェノール性化合物1(A-01)の構造確認は、^(1)H‐NMRスペクトル及びMALDI-TOF MSより行った。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定より求めた。分析結果を表1に示す。 [0137][化15] [0138][化16] 」 1c)「[0154]<合成例10> 窒素雰囲気下、300mL三口フラスコ中、レゾルシノール11.0g(0.1mol)をエタノール400mLに溶解した。これにベンズアルデヒド10.2mL(0.1mol)を加え、次いで、濃塩酸20mLをゆっくりと滴下し、75℃で12時間反応させた。反応後、反応溶液を氷浴にて冷却し、析出した結晶をろ別後、中性になるまで蒸留水で洗浄、乾燥し、淡黄色の下記化学式(21)で表されるフェノール性化合物(Pre-10)を9.2g得た。 前記合成例1において、フェノール性化合物(Pre-1)を用いる代わりに、下記化学式(21)で表されるフェノール性化合物(Pre-10)0.8g(1mmol)を用い、37%ホルマリン水溶液の添加量を0.7mL(8mmoL)、反応温度を5℃に変更した以外は、合成例1と同様にして、下記化学式(22)で表されるフェノール性化合物10(A-10)を合成した。その結果、薄黄色の化合物を0.7g得た。 得られたフェノール性化合物10(A-10)の構造確認は、^(1)H‐NMRスペクトル及びMALDI-TOF MSより行った。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定より求めた。分析結果を表2に示す。 [0155] [化26] [0156][化27] 」 1d)「[0175][表1] [0176][表2] [0177]<フェノール性化合物の溶剤溶解性の評価> 上記合成例1?15で得られたフェノール性化合物(A-01?A-15)と、比較フェノール性化合物(CA-01、CA-02)を代表的な下記レジスト用溶剤に23℃で1wt%の濃度、又は5wt%の濃度になるよう加え、攪拌を行った。23℃で5wt%の濃度でパターン形成材料が溶解したものを◎、1wt%の濃度でパターン形成材料が溶解したものを○、不溶であったものを×として評価した。なお、結果を表3に示す。 (D)-1 : プロピレングリコールモノメチルエーテル (D)-2 : プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート (D)-3 : シクロペンタノン [0178][表3] [0179] 表3に示されるように、本発明で用いられるフェノール性化合物(A-01?A-15)は、レジスト用溶剤に対する溶解性に優れていることが明らかにされた。一方、比較フェノール性化合物(CA-01、CA-02)は、特定の溶剤にしか溶けないことが明らかにされた。 [0180][実施例Iシリーズ:化学増幅型ネガ型レジスト組成物] (実施例I-1?I-40及び比較例I-1?I-4) フェノール性化合物(A)、酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)、及び有機溶剤(D)、並びに実施例I-33においては本発明に係るフェノール性化合物(A)に加えて、フェノール性化合物(A)とは異なるフェノール性化合物(Pre-1)を、表4に記載の配合量で均一溶液にし、各試料溶液を0.1μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、実施例I-1?I-40のネガ型レジスト組成物を調製した。実施例I-9においては、合成例1で得られたフェノール性化合物の混合物(A-01M)を用いた。 [0181] 比較例I-1では、フェノール性水酸基のオルト位にヒドロキシメチル基を有しないフェノール性化合物(Pre-1)をフェノール性化合物として用い、架橋剤としてフェノール性水酸基のオルト位にヒドロキシメチル基を有する比較フェノール性化合物(CA-01)を用いた。当該、フェノール性化合物(Pre-1)、比較フェノール性化合物(CA-01)、酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)、及び有機溶剤(D)を、表4に記載の配合量で均一溶液にし、各試料溶液を0.1μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過して、比較例I-1のネガ型レジスト組成物を調製した。 比較例I-2では、実施例I-1において、フェノール性化合物(A)を用いる代わりに、フェノール性水酸基のオルト位にヒドロキシメチル基を有するが、分子量が348である比較フェノール性化合物(CA-01)を用いた以外は実施例I-1と同様にして比較例I-2のネガ型レジスト組成物を調製した。 比較例I-3では、実施例I-1において、フェノール性化合物(A)を用いる代わりに、フェノール性水酸基のオルト位にヒドロキシメチル基を有するが、重量平均分子量が2860である比較フェノール性化合物(CA-02)を用いた以外は実施例I-1と同様にして比較例I-3のネガ型レジスト組成物を調製した。 比較例I-4では、比較例I-1と同様に、フェノール性水酸基のオルト位にヒドロキシメチル基を有しないフェノール性化合物(Pre-1)をフェノール性化合物として用い、架橋剤として本発明に係るフェノール性化合物(A)を少量用いて、表4に記載の配合量で比較例I-1と同様にしてネガ型レジスト組成物を調製した。 [0182] なお、表4中の略号は以下の意味を有する。 (B)-1 : トリフェニルスルホニウムトリフルオロメチルスルホネート (B)-2 : ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート (B)-3 : トリフェニルスルホニウムシクロヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミド (B)-4 : ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホナート (C)-1 : トリ-n-オクチルアミン (C)-2 : トリベンジルアミン (C)-3 : 2,4,5‐トリフェニルイミダゾール (D)-1 : プロピレングリコールモノメチルエーテル (D)-2 : プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート (D)-3 : シクロペンタノン 現像液 : テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 [0183] [表4] [0184]<レジストパターンの作成及び評価方法> 上記実施例I-1?I-40及び比較例I-1?I-4で得られたレジスト組成物を用いて、以下に示す方法でレジストパターンを作成し、評価を行った。なお、結果を表5に示す。 [0185](1)レジストの塗布 各レジスト組成物を、6インチシリコン基板上にスピンナーを用いて、均一に塗布し、100℃で60秒間プリベーク処理(PAB)を行い、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。良好なレジスト膜が形成されたものを○、はじきなどにより良好な膜形成が困難であったものを×とした。 [0186](2)レジストパターンの作成 上記の各レジスト膜に対し、電子線描画装置(加速電圧100KeV)を用いて描画を行った。描画終了後、100℃で60秒間ベーク処理(PEB)を施した後、TMAH水溶液(23℃)で60秒間現像処理し、純水にて60秒間リンス処理を行い、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。 [0187](3)評価方法 〔感度、解像力、ラインエッジラフネス〕 感度及びラインエッジラフネス(LER)は、走査型電子顕微鏡(SEM)(ホロン社製)により測定した。感度は100nmのL/Sパターンが1:1に形成される最少照射量を感度としてμC/cm^(2)単位で測定した。また、その照射量における限界解像力(ライン及びスペースが分離解像)を解像力とした。LERは、100nmのL/Sパターンの長手方向のエッジ0.7μmの範囲について、ライン幅を500ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。 [0188] [表5] [0189]<結果のまとめ> レジスト基質に架橋性基を導入した、レジスト基質兼架橋剤のフェノール性化合物(A)を70重量%以上用いた実施例I-1?I-40のレジスト組成物では、従来のように、レジスト基質と架橋剤を混合した比較例I-1や比較例I-4と比較して、レジスト膜が均一となりラインエッジラフネス(LER)が低下(改善)することが明らかにされた。 ・・・ [0190] また、・・・。 また、実施例I-23及びI-24、並びに、実施例I-26及びI-27を比較すると、溶解性の高い溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)で調製した実施例I-23、実施例I-26の方が、それぞれLERがより低くなることが明らかにされた。」 ウ 引用刊行物に記載された発明 刊行物1には、 で表される化合物の合成例、分析結果、溶剤溶解性、該化合物を用いた化学増幅型ネガ型レジスト組成物、該組成物を用いたレジストパターン及びその評価についての記載がある(摘示1a?1d)から、刊行物1には、化学式(22)で表される化合物が製造方法を伴って記載されているといえ、該化合物の分子量は912.97と記載されている(摘示1d、表2、合成例10の欄参照)。 したがって、刊行物1には、 「分子量912.97の化学式 で表される化合物」の発明(以下「引用発明」という。また、引用発明の化合物を「引用化合物」という。)が記載されているといえる。 エ 対比・判断 本件補正後発明と引用発明とを対比する。 引用化合物は、本件補正後発明の式(5)において、R^(1)=R^(3)=水素原子、p=0である化合物に相当する。また、引用化合物の分子量は912.97であり、本件補正後発明の分子量500?5000に該当する。 してみると、本件補正後発明と引用発明とは、 「分子量500?5000の、式(5)で示されることを特徴とする環状化合物。 【化1】 式(5)中、R^(1)は、水素原子であり、R^(3)は水素原子または炭素数1?4のアルキル基であり、R^(4)は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基又は置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基であり、pは0?5の整数である。」である点で一致し、相違する点はない。 したがって、本件補正後発明は、刊行物1に記載された発明である。 オ 独立特許要件についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件補正後発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものでなく、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (3)補正の適否についてのまとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 3 まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 上記第2のとおり、平成28年5月18日付けの手続補正は却下されたのので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成27年8月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」ともいう。)は以下のとおりである。 「分子量500?5000の、式(5)で示されることを特徴とする環状化合物。 【化1】 式(5)中、R^(1)は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基又は置換もしくは無置換の炭素数2?20のアルケニル基であり、R^(3)は水素原子または炭素数1?4のアルキル基であり、R^(4)は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基又は置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基であり、pは0?5の整数である。」 第4 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶理由のうち理由1は次のとおりである。 「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」 また、拒絶理由通知書に、理由1についての具体的な指摘事項、刊行物について以下の記載がある。 「●理由1、2について ・請求項 1?18 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1(合成例10、11、特許請求の範囲等)には、レジスト組成物に含有させて用いるフェノール性化合物として、本願式(1)に該当する化合物が記載されている。 したがって、本願上記請求項に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。」 「 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2011/118726号」 第5 当審の判断 当審は、原査定の拒絶理由のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 引用刊行物 刊行物1:国際公開第2011/118726号(原査定の拒絶理由に引用された引用文献1) 2 引用刊行物の記載 刊行物1には、上記第2の2の(2)のイで示したとおりの記載がある。 3 引用刊行物に記載された発明 刊行物1には、上記第2の2の(2)のウで示したとおりの以下の発明(引用発明、該発明の化合物は引用化合物)が記載されていると認める。 「分子量912.97の化学式 で表される化合物」 4 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用化合物は、本願発明の式(5)において、R^(1)=R^(3)=水素原子、p=0である化合物に相当する。また、引用化合物の分子量は912.97であり、本願発明の分子量500?5000に該当する。 してみると、本願発明と引用発明とは、 「分子量500?5000の、式(5)で示されることを特徴とする環状化合物。 【化1】 式(5)中、R^(1)は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基又は置換もしくは無置換の炭素数2?20のアルケニル基であり、R^(3)は水素原子または炭素数1?4のアルキル基であり、R^(4)は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の分岐状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3?20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基又は置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキルシリル基であり、pは0?5の整数である。」である点で一致し、相違する点はない。 したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 5 平成28年10月4日付けの上申書について 審判請求人は、平成28年10月4日付けの上申書において、 「5.減縮補正案について 上述したように、審判請求人は、審判請求時の補正により、本願発明は進歩性を有するものの、依然として新規性違反及び拡大先願についての拒絶理由が解消していないものと思料します。 そのため、補正を行う機会をいただけるのであれば、上記拒絶理由を解消するべく、本願請求項1における式(5)の化合物中のpについて、「0?5の整数」から「1?5の整数」へと減縮する補正を考えております。ご検討の程、お願い申し上げます。」 と記載している。 しかしながら、刊行物1に記載の合成例10に記載の化合物又は化学式(22)に記載の化合物に基づいて請求項1に係る発明の新規性が否定されることは、平成27年6月16日付けの拒絶理由通知、平成28年2月29日付けの拒絶査定のいずれにおいても指摘されており、すでに二度の補正の機会があったこと、また、拒絶査定不服審判において請求人が補正をすることができるのは、審判請求と同時に補正をする場合を除いては、審判合議体において,拒絶査定と異なる理由で拒絶すべき旨の審決をしようとする場合に限られるのであって、補正案の記載された上申書を提出したからといって、審判合議体において、請求人の提出した補正案の記載された上申書の内容を、当然に審理の対象として手続を進めなければならないものではないと考えられること(知財高裁平成22年(行ケ)10190号参照)に鑑みれば、請求人が提出した補正案を記載した上申書に基づいて補正の機会を与える必要はないと判断する。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その余の点を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-30 |
結審通知日 | 2017-04-04 |
審決日 | 2017-04-17 |
出願番号 | 特願2011-253302(P2011-253302) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C07C)
P 1 8・ 113- Z (C07C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 春日 淳一、前田 憲彦 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
冨永 保 木村 敏康 |
発明の名称 | 環状化合物、その製造方法、感放射線性組成物及びレジストパターン形成方法 |
代理人 | 冨田 和幸 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 吉田 憲悟 |