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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1329009
審判番号 不服2016-14752  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-03 
確定日 2017-06-08 
事件の表示 特願2013-554113「ディスプレイおよびディスプレイシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月25日国際公開、WO2013/108362〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成24年1月17日(国際出願)
拒絶理由通知: 平成27年11月30日(発送日:同年12月8日)
手続補正: 平成28年1月29日(以下、「補正1」という。)
拒絶査定: 平成28年6月29日(送達日:同年7月5日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年10月3日
手続補正: 平成28年10月3日 (以下、「本件補正」という。)


第2 補正の却下の決定

[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲は、以下のように補正された。


(補正前)
「【請求項1】
外部に設けられたコントローラからの画像情報に基づいて使用されるディスプレイであって、
前記ディスプレイは、単独または複数組合せて使用可能であり、
自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段の判別結果に応じて、複数組合せて使用されているときは、複数のうちの、位置を特定する位置特定手段と、
前記判別手段の判別結果と、前記位置特定手段による位置の特定結果に応じて、単独であれば全画面を、複数組合せて使用されているときは、自分の位置に応じた画像を表示する表示手段と、
を含み、
前記コントローラは、前記ディスプレイの位置情報について外部コントローラとディスプレイ間で通信しない、ディスプレイ。
【請求項2】
前記ディスプレイは、前記コントローラから送信された前記画像信号に基づいて、必要な画像を調整する画像調整手段を含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記ディスプレイは矩形状であり、矩形の4辺のそれぞれには、他のディスプレイとの接続の有無を検出する接続検出手段を有し、
前記判別手段は前記接続検出手段の検出結果に応じて自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記判別手段は、自分の横方向の一方側においてのみ他のディスプレイと接続されていることを検出したときは、自分が横方向の他方側の端部に位置すると判別する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記判別手段は、自分の縦方向の一方側においてのみ、他のディスプレイと接続されていることを検出したときは、自分が縦方向の他方側の端部に位置すると判別する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記判別手段が、自分が横方向および縦方向においてそれぞれ前記一方側の端部に位置すると判別したときは、その旨を他のディスプレイに通知する通知手段を含む、請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記判別手段が、自分が横方向および縦方向においてそれぞれ前記一方側の端部に位置すると判別したときは、自分の位置情報を記憶する、請求項5に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記接続検出手段が、自分が他のディスプレイと接続されていることを検出したときは、前記ディスプレイは、接続されている他のディスプレイに対して、自分の位置情報を伝達する位置情報伝達手段を含む、請求項3に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記ディスプレイが複数組合せられるときは、同じ画面サイズのディスプレイが組合せられる、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記ディスプレイが複数組合せられるときは、異なる画面サイズのディスプレイが組合せられる、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記ディスプレイからの位置の情報に基づいてマルチディスプレイの表示画面数を検知する画面数検知手段を有する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記ディスプレイの各々は横方向および縦方向の端部において、所定の間隔で設けられた通信手段を有し、
前記通信手段は隣接して接続される他のディスプレイの通信手段と接続される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記所定の間隔は、相互に接続されるディスプレイのサイズの最大公約数によって決定される、請求項12に記載のディスプレイ。
【請求項14】
単独または複数組合せて使用可能なディスプレイと、前記ディスプレイを制御する外部に設けられたコントローラとを含むディスプレイシステムであって、
前記ディスプレイは、自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段の判別結果に応じて、複数組合せて使用されているときは、複数のうちの、位置を特定する位置特定手段と、
前記判別手段の判別結果と、前記位置特定手段による位置の特定結果に応じて、単独であれば全画面を、複数組合せて使用されているときは、自分の位置に応じた画像を表示する表示手段とを含み、
前記コントローラは、前記ディスプレイの位置情報について外部コントローラとディスプレイ間で通信しない、ディスプレイシステム。」

(補正後)
「【請求項1】
外部に設けられたコントローラからの画像情報のみに基づいて使用されるディスプレイであって、
前記ディスプレイは、単独または複数組合せて使用可能であり、
自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段の判別結果に応じて、複数組合せて使用されているときは、複数のうちの、位置を特定する位置特定手段と、
前記判別手段の判別結果と、前記位置特定手段による位置の特定結果に応じて、単独であれば全画面を、複数組合せて使用されているときは、自分の位置に応じた画像を表示する表示手段と、
を含み、
前記コントローラは、前記ディスプレイの位置情報について外部コントローラとディスプレイ間で通信しない、ディスプレイ。
【請求項2】
前記ディスプレイは、前記コントローラから送信された画像信号に基づいて、必要な画像を調整する画像調整手段を含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
単独または複数組合せて使用可能なディスプレイと、前記ディスプレイを制御する外部に設けられたコントローラとを含むディスプレイシステムであって、
前記ディスプレイは、前記コントローラからの画像情報のみに基づいて使用され、
自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段の判別結果に応じて、複数組合せて使用されているときは、複数のうちの、位置を特定する位置特定手段と、
前記判別手段の判別結果と、前記位置特定手段による位置の特定結果に応じて、単独であれば全画面を、複数組合せて使用されているときは、自分の位置に応じた画像を表示する表示手段とを含み、
前記コントローラは、前記ディスプレイの位置情報について外部コントローラとディスプレイ間で通信しない、ディスプレイシステム。」(下線は補正箇所。)

上記補正のうち請求項1についての補正は、補正前に「外部に設けられたコントローラからの画像情報に基づいて使用されるディスプレイ」とされていたものを、「外部に設けられたコントローラからの画像情報のみに基づいて使用されるディスプレイ」と限定するものである。
よって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 検討
(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の国際出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2011-257540号公報(以下「引用例」という。)には、「マルチ・ディスプレイ・システム、画像表示方法、及びディスプレイ装置」(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項(a)ないし(d)が記載されている。(下線は当審による。)

(a)
「【0001】
本発明は、複数のディスプレイ装置を組み合わせて形成した一つの大画面で、画像を大きく表示できるようにしたマルチ・ディスプレイ・システム、画像表示方法、及びディスプレイ装置に関し、特に、複数のディスプレイ装置を無線通信で接続することにより、従来に比べて容易にシステムを構築できるようにしたものである。」

(b)
「【0038】
図4は、ディスプレイ装置Aの本発明に関連する主要な内部構成を示すブロック図であり、他のディスプレイ装置B?Pも同様の内部構成になっている。ディスプレイ装置Aは、装置全体の各種制御処理を行う制御部10を中心に、様々なコンポーネントを具備している。具体的にディスプレイ装置Aは、映像表示に関連する部分として、図示しないアンテナと接続されるチューナユニット11、ビデオ信号入力部12、ビデオ切替部13、ビデオ信号出力部14、フレームメモリ15、映像処理回路16、キャラクタジェネレータ17、及びディスプレイ画面部3を有している。
【0039】
また、ディスプレイ装置Aは、ユーザインターフェイスに関連する部分として、装置筐体2に設けられる本体操作部18と、リモコン装置25から発せられる赤外光(操作信号を含む赤外光)のリモコン受光部8とを具備し、さらに、各種データ・情報等を記憶するためにROM19、メモリ20も有し、制御部10等を所定のクロック数で作動させるための発信部21も有する。そして、ディスプレイ装置Aは、上述した無線通信ユニット4?7を具備して、制御部10に接続させている。以下、ディスプレイ装置Aが備える上記の各部を順次説明する。
【0040】
チューナユニット11は、アンテナで受信される各種の放送信号の中から、ユーザが本体操作部18又はリモコン装置25を操作することにより選局した放送信号について復調や誤り訂正等を行い、ビデオ切替部13へビデオ信号を出力する。ビデオ信号入力部12は、外部のビデオ信号の出力が可能な装置(たとえば、HDD等の記憶媒体に番組の録画を行うビデオ装置、DVD等の記憶媒体の再生を行う再生装置、セットトップボックス等の各種装置)との接続用のビデオ入力端子を具備し、このビデオ入力端子で受け付けたビデオ信号をビデオ切替部13へ出力するものである。」

(c)
「【0054】
次に、制御部10が、ROM19に記憶されるプログラムpの規定に基づき行う本発明に関連する処理内容について説明する。制御部10は、組合せに係る初期設定として、ディスプレイ装置Aが単独で使用されるのか、又はマルチ・ディスプレイ・システムとして使用されるのかを検出すると共に、マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合は、システム中のいずれの位置で使用されるのかを検出する処理を行う。また、マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合では、表示範囲の特定処理を行うと共に、設定項目(彩度、色相、明度等)をシステム全体で統一するための処理を行う。」

(d)
「【0091】
このように、座標系における自位置を特定した各ディスプレイ装置A、B等の制御部10は、特定した自位置が(X、Y)=(1、1)の基準である場合、マスターのディスプレイ装置として機能するようになり、自位置が基準以外にある場合、スレ-ブのディスプレイ装置として機能するようになる。基準に位置するマスターのディスプレイ装置Aの制御部10は、他(スレーブ)のディスプレイ装置から完了信号(位置情報を含む信号)が送信されてくるのを待ち、全スレーブのディスプレイ装置から完了信号を受け取ると、受け取った完了信号に含まれる各位置情報より、構築されたマルチ・ディスプレイ・システム1の形態(行数・列数)を特定し、特定した行数・列数をスレーブのディスプレイ装置へ、図7(a)に示す順路で伝送する。これにより、スレーブの各ディスプレイ装置は、構築されたシステム全体における自位置を特定でき、この特定した自位置に基づき、以降の表示範囲の特定処理を行うことになる。」

上記(a)ないし(d)の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「ビデオ装置、再生装置、セットトップボックス等の外部のビデオ信号の出力が可能な装置との接続用のビデオ入力端子を具備するディスプレイ装置であって、
ディスプレイ装置は単独で使用されるか、又はマルチ・ディスプレイ・システムとして使用され、
ディスプレイ装置が単独で使用されるのか、又はマルチ・ディスプレイ・システムとして使用されるのかを検出すると共に、マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合は、システム中のいずれの位置で使用されるのかを検出する処理を行い、また、マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合では、特定した自位置に基づき、表示範囲の特定処理を行う制御部10と、
ディスプレイ画面部3と、
を有する、ディスプレイ装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
まず、引用発明の「ビデオ装置、再生装置、セットトップボックス等の外部のビデオ信号の出力が可能な装置との接続用のビデオ入力端子を具備するディスプレイ装置」と、本願補正発明における「外部に設けられたコントローラからの画像情報のみに基づいて使用されるディスプレイ」とは、共に「外部に設けられた装置からの画像情報に基づいて使用されるディスプレイ」である点で共通するといえる。
次に、引用発明において「ディスプレイ装置は単独で使用されるか、又はマルチ・ディスプレイ・システムとして使用され」ることは、本願補正発明において「前記ディスプレイは、単独または複数組合せて使用可能であ」ることに相当する。
また、引用発明の「制御部10」は「ディスプレイ装置が単独で使用されるのか、又はマルチ・ディスプレイ・システムとして使用されるのかを検出すると共に、マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合は、システム中のいずれの位置で使用されるのかを検出する処理を行」うものであるから、本願補正発明の「自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する判別手段」及び「前記判別手段の判別結果に応じて、複数組合せて使用されているときは、複数のうちの、位置を特定する位置特定手段」に相当する。
さらに、引用発明は「ディスプレイ装置が単独で使用されるのか、又はマルチ・ディスプレイ・システムとして使用されるのかを検出すると共に、マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合は、システム中のいずれの位置で使用されるのかを検出する処理を行い」、「マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合では、特定した自位置に基づき、表示範囲の特定処理を行う」ものであるから、その「ディスプレイ画面部3」は、「ディスプレイ装置が単独で使用されるのか、又はマルチ・ディスプレイ・システムとして使用されるのか」の検出結果と、「システム中のいずれの位置で使用されるのかを検出」した結果に応じて、「マルチ・ディスプレイ・システムとして使用される場合では、特定した自位置に基づ」いた表示を行うものであるといえる。また、「ディスプレイ装置が単独で使用される」場合に全画面表示となることは明らかである。そうすると、引用発明の「ディスプレイ画面部3」は、本願補正発明の「前記判別手段の判別結果と、前記位置特定手段による位置の特定結果に応じて、単独であれば全画面を、複数組合せて使用されているときは、自分の位置に応じた画像を表示する表示手段」に相当する。
そして、引用発明の「ビデオ装置、再生装置、セットトップボックス等の外部のビデオ信号の出力が可能な装置」は、一般的な映像出力装置であって、ディスプレイ装置との間でディスプレイ装置の位置情報について通信する機能を有しないものを含むことは明らかである。したがって、引用発明の「ビデオ入力端子」に接続される装置が「ビデオ装置、再生装置、セットトップボックス等の外部のビデオ信号の出力が可能な装置」であることと、本願補正発明において「前記コントローラは、前記ディスプレイの位置情報について外部コントローラとディスプレイ間で通信しない」とされていることとは、共に「前記外部に設けられた装置は、前記ディスプレイの位置情報について外部に設けられた装置とディスプレイ間で通信しない」点で共通する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「外部に設けられた装置からの画像情報に基づいて使用されるディスプレイであって、
前記ディスプレイは、単独または複数組合せて使用可能であり、
自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段の判別結果に応じて、複数組合せて使用されているときは、複数のうちの、位置を特定する位置特定手段と、
前記判別手段の判別結果と、前記位置特定手段による位置の特定結果に応じて、単独であれば全画面を、複数組合せて使用されているときは、自分の位置に応じた画像を表示する表示手段と、
を含み、
前記外部に設けられた装置は、前記ディスプレイの位置情報について外部に設けられた装置とディスプレイ間で通信しない、ディスプレイ。」

(相違点)
相違点1:本願補正発明においては、その画像情報に基づいてディスプレイが使用され、またディスプレイの位置情報についてディスプレイとの間で通信しないとされている外部に設けられた装置が、「コントローラ」であるのに対し、引用発明においては「ビデオ装置、再生装置、セットトップボックス等の外部のビデオ信号の出力が可能な装置」である点。

相違点2:本願補正発明のディスプレイは、外部に設けられたコントローラからの画像情報「のみ」に基づいて使用されるのに対し、引用発明においてはそのような限定はなされていない点。

(3)判断
ア 相違点1について
本願請求項1において、「コントローラ」については、「外部に設けられたコントローラからの画像情報のみに基づいて使用されるディスプレイであって」、「前記コントローラは、前記ディスプレイの位置情報について外部コントローラとディスプレイ間で通信しない」という以外の限定はなく、「コントローラ」として画像情報を出力する以外の機能を有しない装置を含むものであることは明らかといえる。
本願明細書の記載を見ても、「コントローラ」の機能としては、
「【0034】
図2を参照して、外部コントローラ90は、外部から入力された表示データの色合いや明るさなどを偏りのないバランスの取れた表示データに調整する外部コントローラ用ピクチャコントロール回路91と、外部コントローラ用ピクチャコントロール回路91で調整された表示データに変調をかける変調回路92と、変調回路92で変調された変調信号を増幅するPA93と、PA93で増幅された変調信号を個々のディスプレイに送信する外部コントローラ用送信アンテナ94とを含む。また、個々のディスプレイと個別に通信するデータ処理をする外部コントローラ用CPU95と、送受信する信号に対して変調などの調整をする外部コントローラ用トランシーバ96と、外部コントローラ用トランシーバ96に接続され、個々のディスプレイと後に説明するデータの送受信を行う外部コントローラ用送受信アンテナ97と、ディスプレイからの相互の位置情報に基づいて、ディスプレイの相互の位置関係を格納する格納手段として作動するメモリ98を有する。」
とされており、画像出力装置として一般的な、表示データの調整、変調、増幅、送信などを行う以外の構成はいずれも、ディスプレイの位置情報についてディスプレイとの間で通信を行ってディスプレイをコントロールする場合に用いるためのものであって、それらが本願補正発明に含まれないことは明らかである。
したがって、本願補正発明の「コントローラ」は画像情報を出力する以外の機能を有しない装置を含むものであって、相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
引用例には、
「【0039】
また、ディスプレイ装置Aは、ユーザインターフェイスに関連する部分として、装置筐体2に設けられる本体操作部18と、リモコン装置25から発せられる赤外光(操作信号を含む赤外光)のリモコン受光部8とを具備し、・・・」
と記載されており、引用発明は「外部のビデオ信号の出力が可能な装置」以外に、本体操作部やリモコン装置などからの情報に基づいて使用されるものを除外していないといえる。
しかしながら、本体操作部やリモコン装置などの、ディスプレイの使用に関する制御指示を行う構成が、引用発明のディスプレイ装置が「外部のビデオ信号の出力が可能な装置」からのビデオ信号を表示するに際して必須の構成ではないことは当業者にとって明らかである。そのような構成を省略することを妨げる理由もなく、また省略することにより当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められないので、引用発明において、外部のビデオ信号の出力が可能な装置以外の、ディスプレイの使用に関する構成を設けないようにして、該装置からの画像情報のみに基づいて使用されるディスプレイとすることは、当業者が容易になし得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「外部に設けられたコントローラからの画像情報に基づいて使用されるディスプレイであって、
前記ディスプレイは、単独または複数組合せて使用可能であり、
自分が単独か、又は、複数組合せて使用されているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段の判別結果に応じて、複数組合せて使用されているときは、複数のうちの、位置を特定する位置特定手段と、
前記判別手段の判別結果と、前記位置特定手段による位置の特定結果に応じて、単独であれば全画面を、複数組合せて使用されているときは、自分の位置に応じた画像を表示する表示手段と、
を含み、
前記コントローラは、前記ディスプレイの位置情報について外部コントローラとディスプレイ間で通信しない、ディスプレイ。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その国際出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2011-257540号公報(引用例)に記載された発明などに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 判断
本願発明は、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明から、「外部に設けられたコントローラからの画像情報のみに基づいて使用されるディスプレイ」として、ディスプレイの使用がコントローラからの画像情報「のみ」に基づくという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(3)判断」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-29 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2013-554113(P2013-554113)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之西島 篤宏斎藤 厚志  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 ディスプレイおよびディスプレイシステム  
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所  

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