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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1329077
異議申立番号 異議2016-700648  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-29 
確定日 2017-05-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5867661号発明「香料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5867661号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔8?18〕、〔19?23〕、〔24、26?28〕、〔25、29?31〕について訂正することを認める。 特許第5867661号の請求項1ないし31に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許異議の申立てに係る特許第5867661号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年 3月27日 本件特許出願
平成28年 1月15日 設定登録
同年 7月29日 特許異議申立書
同年11月10日 取消理由通知書
平成29年 1月 4日 意見書、訂正請求書(特許権者)
同年 2月14日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正について
1 訂正の内容
平成29年1月4日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項8に
「【請求項8】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程」
とあるのを
「【請求項8】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)」
と訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項9に
「【請求項9】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程」
とあるのを
「【請求項9】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)」
と訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項19に
「【請求項19】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程」
とあるのを
「【請求項19】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)」
と訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項24に
「【請求項24】
調理感の付与が、塩味の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」
とあるうち、請求項19を引用するものについて、独立形式に改め、
「【請求項24】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程を含む、塩味の増強方法。」
と訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項25に
「【請求項25】
調理感の付与が、スパイス感の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」とあるうち、請求項19を引用するものについて、独立形式に改め、
「【請求項25】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程を含む、スパイス感の増強方法。」
と訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の請求項24に
「【請求項24】
調理感の付与が、塩味の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」とあるうち、請求項20を引用するものについて、請求項19を引用する請求項24を独立形式に改めることに伴い、当該請求項を引用する形式に改め、
「【請求項26】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項24記載の方法。」と改め、新たに請求項26と訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の請求項24に
「【請求項24】
調理感の付与が、塩味の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」とあるうち、請求項21を引用するものについて、請求項19を引用する請求項24を独立形式に改めることに伴い、当該請求項を直接又は間接に引用する形式に改め、
「【請求項27】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項24又は26記載の方法。」と改め、新たに請求項27と訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の請求項24に
「【請求項24】
調理感の付与が、塩味の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」とあるうち、請求項22を引用するものについて、請求項19を引用する請求項24を独立形式に改めることに伴い、当該請求項を間接に引用する形式に改め、
「【請求項28】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項27記載の方法。」と改め、新たに請求項28と訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の請求項25に
「【請求項25】
調理感の付与が、スパイス感の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」とあるうち、請求項20を引用するものについて、請求項19を引用する請求項25を独立形式に改めることに伴い、当該請求項を引用する形式に改め、
「【請求項29】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項25記載の方法。」と改め、新たに請求項29と訂正する。
(10)訂正事項10
訂正前の請求項25に
「【請求項25】
調理感の付与が、スパイス感の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」とあるうち、請求項21を引用するものについて、請求項19を引用する請求項25を独立形式に改めることに伴い、当該請求項を直接又は間接に引用する形式に改め、
「【請求項30】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項25又は29記載の方法。」と改め、新たに請求項30と訂正する。
(11)訂正事項11
訂正前の請求項25に
「【請求項25】
調理感の付与が、スパイス感の増強である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。」とあるうち、請求項22を引用するものについて、請求項19を引用する請求項25を独立形式に改めることに伴い、当該請求項を間接に引用する形式に改め、
「【請求項31】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項30記載の方法。」と改め、新たに請求項31と訂正する。

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1?3は、訂正前の請求項8、9及び19に係る発明における「(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程」から、当該工程に包含される「焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程」のみを除外し、添加する工程をより狭い範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項1?3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項、第6項に適合するものである。

(2) また、訂正事項4及び5は、訂正前の請求項24及び25が請求項19?22のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項20?22を引用しないものとし、請求項19を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、また、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項、第6項に適合するものである。

(3) 訂正事項6は、訂正前の請求項24が請求項19?22のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項20を引用するものについて、請求項19を引用する請求項24を独立形式に改めることに伴い、引用する請求項を訂正後の請求項24に改めるための訂正である。
訂正事項7は、訂正前の請求項24が請求項19?22のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項21を引用するものについて、請求項19を引用する請求項24を独立形式に改めることに伴い、引用する請求項を訂正後の請求項24又は26に改めるための訂正である。
訂正事項8は、訂正前の請求項24が請求項19?22のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項22を引用するものについて、請求項19を引用する請求項24を独立形式に改めることに伴い、引用する請求項を訂正前の請求項22から訂正後の請求項27に改めるための訂正である。
訂正事項9は、訂正前の請求項25が請求項19?22のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項20を引用するものについて、請求項19を引用する請求項25を独立形式に改めることに伴い、引用する請求項を訂正前の請求項20から訂正後の請求項25に改めるための訂正である。
訂正事項10は、訂正前の請求項25が請求項19?22のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項21を引用するものについて、請求項19を引用する請求項25を独立形式に改めることに伴い、引用する請求項を訂正前の請求項21から訂正後の請求項25及び29に改めるための訂正である。
訂正事項11は、訂正前の請求項25が請求項19?22のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項22を引用するものについて、請求項19を引用する請求項25を独立形式に改めることに伴い、引用する請求項を訂正前の請求項22から訂正後の請求項30に改めるための訂正である。
よって、訂正事項6?11は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であり、また、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項、第6項に適合するものである。

(4) したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔8?18〕、〔19?23〕、〔24、26?28〕、〔25、29?31〕について訂正を認める。
また、訂正後の請求項24、25に係る訂正事項4、5は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項24、25について訂正が認められるときは、訂正後の請求項〔24、26?28〕、〔25、29?31〕について請求項19とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔24、26?28〕、〔25、29?31〕について請求項ごとに訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?31に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明31」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1?31に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を含む香料組成物。
【請求項2】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(A1)の濃度が1重量ppm以上99重量%以下であり、(A2)の濃度が1重量ppm以上99重量%以下であり、(B1)の濃度が99重量%以下であり、(B2)の濃度が99重量%以下であり、(B3)の濃度が99重量%以下である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
(C)フルフリルアルコールを更に含有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
(C)の濃度が、1重量ppm以上99重量%以下である、請求項4又は5記載の組成物。
【請求項7】
調理感の付与用である、請求項1?6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)を含む、調味料の製造方法。
【請求項9】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)を含む、食品の製造方法。
【請求項10】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
(1)調味料における(A1)の濃度が1重量ppm以上10重量%以下であり、(A2)の濃度が1重量ppm以上10重量%以下であり、(B1)の濃度が3重量%以下であり、(B2)の濃度が11重量%以下であり、(B3)の濃度が4重量%以下であるか;又は
(2)調味料における(A1)の濃度が0.01重量ppm以上1000重量ppm以下であり、(A2)の濃度が0.01重量ppm以上1000重量ppm以下であり、(B1)の濃度が1000重量ppm以下であり、(B2)の濃度が5000重量ppm以下であり、(B3)の濃度が1500重量ppm以下である、請求項8又は10記載の方法。
【請求項12】
(1)食品における(A1)の濃度が0.01重量ppm以上30重量ppm以下であり、(A2)の濃度が0.01重量ppm以上30重量ppm以下であり、(B1)の濃度が80重量ppm以下であり、(B2)の濃度が300重量ppm以下であり、(B3)の濃度が100重量ppm以下であるか;又は
(2)食品における(A1)の濃度が0.1重量ppm以上300重量ppm以下であり、(A2)の濃度が0.1重量ppm以上300重量ppm以下であり、(B1)の濃度が800重量ppm以下であり、(B2)の濃度が3300重量ppm以下であり、(B3)の濃度が1200重量ppm以下である、請求項9又は10記載の方法。
【請求項13】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項8?12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(1)調味料における(C)の濃度が、1重量ppm以上10重量%以下であるか;又は
(2)調味料における(C)の濃度が、0.01重量ppm以上10000重量ppm以下である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
(1)食品における(C)の濃度が、0.01重量ppm以上1000重量ppm以下であるか;又は
(2)食品における(C)の濃度が、0.1重量ppm以上3000重量ppm以下である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項17】
調味料が、調理感が付与された調味料である、請求項8、10、11及び13?15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
食品が、調理感が付与された食品である、請求項9、10、12?14及び16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)を含む、調理感の付与方法。
【請求項20】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
調理感の付与が、調理香の付与である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程を含む、塩味の増強方法。
【請求項25】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程を含む、スパイス感の増強方法。
【請求項26】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項24又は26記載の方法。
【請求項28】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項25記載の方法。
【請求項30】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項25又は29記載の方法。
【請求項31】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項30記載の方法。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項8?23に係る特許に対して平成28年11月10日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

本件特許の請求項8?23に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって(請求項8に係る発明は引用発明1?4と、請求項9に係る発明9は引用発明5と、請求項10?23に係る発明は引用発明1?5とそれぞれと同一である。)、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

<引用例>
1.特開2011-87599号公報(異議申立人提出の甲第1号証)
2.特開2002-95439号公報(同甲第4号証)
3.特開2011-92160号公報(同甲第6号証)
4.特開昭47-43397号公報(同甲第7号証)
5.特開2012-147747号公報(同甲第8号証)
6.Puvipirom,J. and Chaiseri,S., "Contribution of roasted grains and seeds in aroma of oleang", International Food Research Journal, 2012, Vol.19, No.2, p.583-588(同甲第2号証、技術常識を示す文献)
7.Tung-Hsi Yu, Li-Yun Lin, and Chi-Tang Ho, "Volatile Compounds of Blanched, Fried Blanched, and Baked Blanched Garlic Slices", Journal of Agricultural and Food Chemistry, 1994, Vol.42, No.6, p.1342-1347(同甲第3号証、技術常識を示す文献)
8.特開2011-62125号公報(同甲第5号証、技術常識を示す文献)

3 引用例
(1) 引用例1
引用例1には、以下の事項が記載されている(下線は当審による。)。
(1a) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆多糖類及びスクラロースを含有する甘味組成物。
【請求項2】
大豆多糖類とスクラロースを1:10?200000:1(重量比)の割合で含有する請求項1記載の甘味組成物。
【請求項3】
スクラロースを含有する甘味組成物に大豆多糖類を共存させることを特徴とする、スクラロース含有甘味組成物の吸湿、ケーキング又は潮解防止方法。」

(1b) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラロースの特性に基づいた種々の新規用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より甘味料として、その良質な甘味とコク感(ボディー感)、保湿性、粘度の付与等の特性から、ショ糖(砂糖)が広く利用されている。しかしながら、最近の健康志向や低カロリー志向から、肥満や虫歯の原因となるショ糖は敬遠されるようになり、特に飲料やデザートなどの嗜好品においては低カロリー化が進んでいる。このため、ショ糖代替甘味料として従来から種々の高甘味度甘味料が研究開発されており、中でもショ糖の約600倍の甘味度を有するスクラロースが、非う蝕性でかつ非代謝ノンカロリーであるという多くの利点から、新しい甘味料として注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はスクラロースを含有することによって種々の特性を備えた組成物に関する。より詳細には、本発明は次に掲げる種々の特有な性質を有する組成物及びその用途に関する。
I.甘味組成物
II.不快臭・不快味がマスキングされた食品
III.機能性食品組成物
IV.風味が改善された食品
V.味質が改善された保存料及び食品
VI.フレーバー感が改善された香気性組成物」

(1c) 「【0685】
実施例(IV-7-1) 焼肉のたれ
スクラロース 0.008(kg)
還元水飴(アマミール:東和化成工業(株)) 20.00
トレハロース(トレハオース:林原(株)) 0.50
濃口醤油 24.00
みりん 4.00
アップルピューレ 19.00
ガーリックペースト 4.50
ジンジャーペースト 4.50
ごま油 0.10
キサンタンガム※ 0.50
レッドペッパー末 0.10
ブラックペッパー末 0.05
調味料(サンライクアジエキス)※ 3.00
調味料(サンライクビーフエキス)※ 1.00
調味料(サンライクアミノベーススーパーN)※ 0.20
クエン酸(結晶) 0.20
いりごま 0.40
水 残 部
合計 100.00 kg
上記処方で常法に従い焼肉のたれを調製した。得られた焼肉のたれは甘辛風味が引き締まり、醤油の味が引き立っていた。」
以上によれば、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「いりごま、及び
ガーリックペースト
を添加する工程を含む、焼肉のたれの調整方法。」

(2) 引用例2
引用例2には、以下の事項が記載されている。
(2a) 「【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は全て重量基準である。
【0025】〔実施例1〕
<原料>
(調味料原料A)
濃い口醤油 30部
赤味噌 2部
(調味料原料B)
砂糖 8部
みりん 5部
ソルビトール 5部
(調味料原料C)
黒胡椒 0.05部
トウガラシ粉末 0.05部
ゴマ油 2部
リンゴ酢 1部
リンゴパルプ 10部
タマネギペースト 7部
トマトピューレ 5部
ニンニクペースト 4部
ショウガペースト 2部
グルタミン酸ナトリウム 2部
炒りゴマ 2部
水 15部
【0026】<調味料製造方法>原料Aを加熱し、85℃まで達したら原料Bを溶解し、溶解後30℃まで冷却しD液とする。D液100mlに、ドコサヘキサエン酸(DHA)10重量%、イコサペンタエン酸(EPA)15重量%を含有する高度不飽和脂肪酸トリグリセリド(イワシ油)10mlを加え、ホモミキサー1500rpmで撹拌乳化した。次いで、原料Cを添加混合し、高度不飽和脂肪酸グリセリド含有調味料a(以下、単に調味料a)を得た。」
以上によれば、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「炒りごま、及び
ニンニクペースト
を添加する工程を含む、調味料の製造方法。」

(3) 引用例3
引用例3には、以下の事項が記載されている。
(3a) 「【0030】
一方、このキムチ味の炙りネギ製品において、味付け用とする調味液は、キムチ味とする分だけ成分は多様となり、原料である下味処理済みの白ネギ葉鞘部分82wt%に対し、水1.2wt%と、魚醤5.5wt%、かつお節エキス0.5wt%、りんご酢0.5wt%、乳酸0.1wt%、りんご0.7wt%、なし0.2wt%、グルタミン酸ナトリウム4wt%、酢酸ナトリウム0.4wt%、ビタミンB1製剤0.3wt%、あみの塩辛0.6wt%、しょうが0.1wt%、にんにく1.2wt%、パプリカ色素0.3wt%、唐辛子1.5wt%、キサンタンガム0.2wt%、いりごま0.1wt%、昆布0.2wt%、にら0.2wt%、およびネギ0.2wt%とを混入、調整した調味液16.7wt%を加えて漬け込み容器に入れ、この場合も実施例1同様にシートで表面を覆うようにして実施するものである。
こうして完成する炙りネギ製品の塩分濃度は2.1ないし2.5%に設定したものとする。」
以上によれば、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「いりごまと、
にんにく
を添加する工程を含む、調味液の製造方法。」

(4) 引用例4
引用例4には、以下の事項が記載されている。
(4a) 「実施例1.
醸造味噌(大豆、米、麦等を蒸して搗き砕き、これに米、麦の麹と塩を添加して自然発酵させたもの)
30 kg
大蒜 2?3 kg
柚皮(外皮) 1?2 kg
煎り胡麻 0.5 kg
唐辛子粉末又は細切片 0.5 kg
砂糖 1?1.5 kg
味淋 1?1.8 l
醤油 1.8?2.0 l
グルタミン酸ソーダ 適 量
炒め用植物油 〃 」

(4b) 「上記材料の内、先ず細切した生大蒜の全量を、深い加熱鍋中に入れて、同大蒜が充分に浸る程度の、自絞り油、綿実油等の植物油の添加と共に油炒め処理に付するもので、このさい、その加熱温度は、特に大蒜が焦げない程度の例えば90?110℃程度の温度とし、これによつて大蒜が充分に柔らかくなつた後、柚子皮の全量をこれに投入して同柚子皮が柔軟化するまで共に炒め処理をするのであり、次いで醸造味噌及び味醂を共に投入してよく混練し、更に醤油を適量宛投入して、味噌が適当に弛んでペースト状を呈するようにし、かつ加熱を続行して混練処理に付するのであり、このさい全体を焦げないようにすることが必要であり、混連は加熱鍋中に挿入した攪拌棒乃至スクリユ等によつて行い、場合に応じては加熱鍋を後回動させて、加熱の均等と焦げ付きの防止を期することが適当であり、次いで攪拌混練を行なつて砂糖が全般に混在するようにし、かくして加熱を止めてから、又は加熱温度を下げ、グルタミン酸ソーダ、煎り胡麻及び唐辛子粉末を適宜添加混練し、加熱を停止して、1週間乃至10日程度常温に放置することによつて、製品が得られる。」(公報2ページ右上欄)
以上によれば、引用例4には、次の発明(以下「引用発明4という。)が記載されていると認められる。
「大蒜と、
煎り胡麻
を添加する工程を含む、味噌の製造方法。」

(5) 引用例5
引用例5には、以下の事項が記載されている。
(5a) 「【請求項1】
焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する水中油型乳化食品であって、
(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下であり、
(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下であり、
(3)食品全体に対する油相の含有割合が15重量%以上かつ65重量%以下であることを特徴とする、食品。
【請求項2】
焙煎ごま粉砕物が、すりごま及び/又はねりごまである、請求項1記載の食品。
【請求項3】
香辛料が、香味野菜である、請求項1又は2記載の食品。
【請求項4】
香味野菜が、生姜及び/又はにんにくである、請求項3記載の食品。」

(5b) 「【0037】
(実施例1?15の水中油型乳化ドレッシングの製造)
下記表2に示す配合割合で、水相原料(2)?(11)をスティックミキサー(エスゲー社製 BAMIX M250)で均一に混合して水相を調製した後、これを攪拌しながら油相原料(1)を徐々に添加し、全量添加した後に3分間攪拌を継続することによって、実施例1?15の水中油型乳化ドレッシングをそれぞれ製造した。尚、焙煎ごま粉砕物には、すりごま(白ごまを焙煎した後、粉粒状に擂ったもの)を用い、香辛料には、生にんにくをすりおろしたものの冷凍品又は生姜を2mmダイス状に切断したものの冷凍品を用いた。それぞれの焙煎ごま粉砕物及び香辛料の臭気指数は、表2に示すとおりであった。」
以上によれば、引用例5には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「焙煎ごま粉砕物、及び
にんにく
を添加する工程を含む、食品の製造方法。」

(6) 引用例6
引用例6には、ごまを、220℃のオーブンで20分間焙煎したごまに含まれる揮発成分について、2,6-ジメチルピラジンの濃度が2348.35(μg/g)、2-エチル-3-メチルピラジンの濃度が1075.20(μg/g)、2-フランメタノールの濃度が1526.33(μg/g)であることが記載されている(表1)。

(7) 引用例7
引用例7には、ブランチングして焼いたにんにく(BBG)、ブランチングして揚げたにんにく(FBG)及びブランチしたにんにく(BG)に含まれる揮発成分として、アリルスルフィドについて、BBGが1.16ppm、FBGが8.99ppm、及びBGが0.09ppm含むことが、メチルアリルジスルフィドについて、BBGが0.80ppm、FBGが7.26ppm、及びBGが0.04ppm含むことが、アリルジスルフィドについて、BBGが9.14ppm、FBGが50.74ppm、及びBGが2.40ppm含むことが記載されている。

(8) 引用例8
引用例8には、以下の事項が記載されている。
(8a) 「【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピラジン類を含むフレーバー組成物を得ることができ、前記フレーバー組成物を肉類の調理時に用いたり、真空包装される調理された食品に添加し、或いはソース類などに適用して、食品材料を短時間の焼成で香ばしさ、コク味を付与し、加熱温度が70?80℃によりハム商品に香りを付与するなど、簡易にロースト臭、コク味、グリル感等付与することができる。」

(8b) 「図2に示すピラジン類の香気成分解析結果から、L-アスパラギン酸ナトリウム、リジン塩酸塩、グリシン又はL-グルタミン酸との組み合わせがピラジン類を多く生成していることが分かった。一方、香気の官能評価では、L-アスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸の組み合わせが最も良い香ばしい香りであった。
フラン類の香気成分解析結果では、L-アスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸の組み合わせが最も多いものであった(図3参照)。
L-アスパラギン酸ナトリウムにグルタミン酸を組み合わせることで、ピラジン類の生成と共にフラン類も多く生成され、そのため、甘いロースト臭を発現し、官能的に風味が好ましく感じられるのである。ピラジン類にフラン類が適量混じり合うことで醤油を焦がしたような香りとなる。」

(8c) 「【0035】
(4)A?E試験区と2倍の添加量とする2A?2E試験区において、同様に反応を行い、ピラジン類とフラン類の生成関係を調べた。その結果を図7に示す。アミノ酸の中でL-アスパラギン酸ナトリウムが多いとピラジン類が多く、グルタミン酸が多いとフラン類の生成が多いことが分かった。ピラジン類が多いとロースト臭、フラン類が多いと醤油を焦がした時の匂いに近いものであることが分かった。
【0036】」

4 対比・判断
(1) 取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件発明8?23について
引用発明1の「いりごま」、引用発明2の「炒りごま」、引用発明3の「いりごま」、引用発明4の「煎り胡麻」、引用発明5の「焙煎ごま粉砕物」は、それぞれ本件発明8、9、19の「焙煎ごま又はその粉砕物」に相当する。また、引用発明1の「ガーリックペースト」、引用発明2の「ニンニクペースト」、引用発明4の「大蒜」は、それぞれ本件発明8、9、19の「にんにく」に相当する。
また、引用発明1の「焼肉のたれ」、引用発明2の「調味料」、引用発明3の「調味液」、引用発明4の「味噌」は、それぞれ、本件発明8の「調味料」、又は本件発明9の「食品」に相当する。
そして、本件発明8?23は、本件訂正により、「(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程」から、引用発明1?5の発明を特定するために必要な事項である「焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程」を「除く」ものとされたので、本件発明8?23が、引用発明1?5と同一のものであるとすることはできない。
そうすると、上記「2 取消理由の概要」のとおり、既に通知した取消理由の、本件発明8が引用発明1?4と、本件発明9が引用発明5と、本件発明10?23が引用発明1?5とそれぞれと同一であるとすることはできず、また、本件発明8?23が特許法第29条第1項第3号に該当するから特許法第113条第2号の規定によりその発明に係る特許は取り消すべきものであるとすることはできない。
さらに、本件発明8?23について、上述のとおり、添加する工程から、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除くものとされているので、焙煎ごまやニンニクを添加することを前提とする引用発明1?5及び引用例6、7に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものであるとすることはできず、また、「(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB」の少なくとも3成分を含むものの記載がない引用例8、9?12に基いて当業者が容易になし得たものであるとすることもできない。

(2) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許異議申立人は、訂正前の請求項1?7、24、25に係る発明(本件発明1?7、24?31)について、引用例1?9を証拠方法として提出し、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、訂正前の請求項1?7、24、25(本件発明1?7、24?31)について、引用例1、6、7、8、9?12を証拠方法として提出し、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張している。
イ しかしながら、引用例1?9のいずれの文献にも、「(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB」
の少なくとも3成分を含む「香料組成物」としての記載はなく、また、「(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB」の少なくとも3成分を含むものが、塩味を増強すること、及びスパイス感を増強することの記載はないので、訂正前の請求項1?7、24、25に係る発明(本件発明1?7、24?31)が、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものということはできない。
ウ さらに、訂正前の請求項1?7、24、25(本件発明1?7、24?31)は、上記イのとおりであるから、引用例1、6、7、8、9?12に基づいて、上記少なくとも3成分を含む「香料組成物」とすることや、上記少なくとも3成分を含むものが、「塩味」や「スパイス感」を増強するものであるとすることを当業者が容易になし得たとすることはできない。

<引用例>
9.国際公開第2013/103031(異議申立人提出の甲第9号証)
10.特開2005-229905号公報(同甲第10号証)
11.特開2008-113568号公報(同甲第11号証)
12.特開平11-313635号公報(同甲第12号証)

オ なお、異議申立人は、平成29年2月14日の意見書に参考資料1(日本香料協会編、「香り百科事典」、第2刷、株式会社朝倉書店、2007年7月30日、p.77-79、p326-329、p.406-407、p.470-473、p.528-531、p.613-614、p.615-618)、参考資料2(特開2009-125066号公報)、参考資料3(特開2000-41614号公報)、参考資料4(特開平6-32802号公報)、参考資料5(特開2010-220520号公報)、参考資料6(特開2011-120603号公報)、参考資料7(特開平10-215819号公報)、参考資料8(特開2008-307031号公報)、及び参考資料9(特開2007-330204号公報)を提示して、本件発明8?31について、新規性進歩性を有さない旨の主張をしているが、いずれの文献にも、「(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB」
を含む「香料組成物」についての記載はなく、また、「(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA」と「(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB」の少なくとも3成分自体を「添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)」についても記載するところはないので、仮に参考資料1?9を採用し得たとしても、異議申立人の主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1?31に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?31に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を含む香料組成物。
【請求項2】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(A1)の濃度が1重量ppm以上99重量%以下であり、(A2)の濃度が1重量ppm以上99重量%以下であり、(B1)の濃度が99重量%以下であり、(B2)の濃度が99重量%以下であり、(B3)の濃度が99重量%以下である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
(C)フルフリルアルコールを更に含有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
(C)の濃度が、1重量ppm以上99重量%以下である、請求項4又は5記載の組成物。
【請求項7】
調理感の付与用である、請求項1?6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)を含む、調味料の製造方法。
【請求項9】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)を含む、食品の製造方法。
【請求項10】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
(1)調味料における(A1)の濃度が1重量ppm以上10重量%以下であり、(A2)の濃度が1重量ppm以上10重量%以下であり、(B1)の濃度が3重量%以下であり、(B2)の濃度が11重量%以下であり、(B3)の濃度が4重量%以下であるか;又は
(2)調味料における(A1)の濃度が0.01重量ppm以上1000重量ppm以下であり、(A2)の濃度が0.01重量ppm以上1000重量ppm以下であり、(B1)の濃度が1000重量ppm以下であり、(B2)の濃度が5000重量ppm以下であり、(B3)の濃度が1500重量ppm以下である、請求項8又は10記載の方法。
【請求項12】
(1)食品における(A1)の濃度が0.01重量ppm以上30重量ppm以下であり、(A2)の濃度が0.01重量ppm以上30重量ppm以下であり、(B1)の濃度が80重量ppm以下であり、(B2)の濃度が300重量ppm以下であり、(B3)の濃度が100重量ppm以下であるか;又は
(2)食品における(A1)の濃度が0.1重量ppm以上300重量ppm以下であり、(A2)の濃度が0.1重量ppm以上300重量ppm以下であり、(B1)の濃度が800重量ppm以下であり、(B2)の濃度が3300重量ppm以下であり、(B3)の濃度が1200重量ppm以下である、請求項9又は10記載の方法。
【請求項13】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項8?12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(1)調味料における(C)の濃度が、1重量ppm以上10重量%以下であるか;又は
(2)調味料における(C)の濃度が、0.01重量ppm以上10000重量ppm以下である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
(1)食品における(C)の濃度が、0.01重量ppm以上1000重量ppm以下であるか;又は
(2)食品における(C)の濃度が、0.1重量ppm以上3000重量ppm以下である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項17】
調味料が、調理感が付与された調味料である、請求項8、10、11及び13?15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
食品が、調理感が付与された食品である、請求項9、10、12?14及び16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程(但し、焙煎ごま又はその粉砕物とにんにくとを添加する工程を除く)を含む、調理感の付与方法。
【請求項20】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
調理感の付与が、調理香の付与である、請求項19?22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程を含む、塩味の増強方法。
【請求項25】
(A1)2,6-ジメチルピラジン及び(A2)2-エチル-3-メチルピラジンからなる成分グループA、並びに
(B1)アリルスルフィド、(B2)アリルジスルフィド及び(B3)アリルメチルジスルフィドから選択される少なくとも一つの化合物からなる成分グループB
を添加する工程を含む、スパイス感の増強方法。
【請求項26】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項24又は26記載の方法。
【請求項28】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
(A1)と(A2)の重量比が、1:0.01?100であり、成分グループAと成分グループBの総重量比が、1:0.001?10000である、請求項25記載の方法。
【請求項30】
(C)フルフリルアルコールを更に添加することを含む、請求項25又は29記載の方法。
【請求項31】
成分グループAと(C)の重量比が、1:0.01?1000である、請求項30記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-04-27 
出願番号 特願2015-533355(P2015-533355)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 潤也  
特許庁審判長 中村 則夫
特許庁審判官 山崎 勝司
鳥居 稔
登録日 2016-01-15 
登録番号 特許第5867661号(P5867661)
権利者 味の素株式会社
発明の名称 香料組成物  
代理人 中 正道  
代理人 當麻 博文  
代理人 小池 順造  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 當麻 博文  
代理人 小池 順造  
代理人 中 正道  
代理人 高島 一  
代理人 高島 一  

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