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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
管理番号 1329085
異議申立番号 異議2017-700282  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-17 
確定日 2017-05-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第5995303号発明「製袋充填包装機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5995303号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5995303号の請求項1?5にかかる特許についての出願は、平成23年8月25日に特許出願され、平成28年9月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人株式会社フジキカイにより特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件発明
特許5995303号の請求項1?5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。

第3.申立理由の概要
特許異議申立人株式会社フジキカイは、証拠として以下の刊行物1?7をそれぞれ甲第1号証?甲第7号証(以下、それぞれの証拠を、単に「甲1」等という。また、甲1等に記載された発明あるいは事項を、それぞれ「甲1発明」、「甲1事項」等ということがある。)として提出し、本件発明1?5は、以下の[理由]により特許法第29条第2項の規定に該当する発明であるから、本件発明1?5にそれぞれ係る特許は特許法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消されるべきである、と主張している。

[理由]
本件発明1?5について
甲1発明、甲2事項、甲3事項、及び、周知の事項(甲4?7に例示)から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<刊 行 物 一 覧>
甲1:特開2003-160102号公報
甲2:特開昭61-190409号公報
甲3:特開2007-50934号公報
甲4:特開昭63-110119号公報
甲5:特開2010-260685号公報
甲6:特公昭57-57369号公報
甲7:特開2011-57310号公報

第4.刊行物に記載された発明

甲1には、段落【0032】?【0076】の記載、並びに、【図1】?【図8】の図示があり、以下の甲1発明が記載されていると認められる。

「帯状をしたフィルムの両側縁部を重ね合わせ、当該重ね合わせ部分を縦シールして筒状フィルムFを形成するとともに、当該フィルムを下流側へ繰り出しながら一対のシールジョー11a、11bで挟持して熱シールする機能を備えた、縦型製袋包装機1において、
前記一対のシールジョー11a、11bは、前記フィルムを挟んで相互に開閉自在であって、且つ前記フィルムの繰り出し方向に沿った軌跡Sのうちのフィルム並走区間と当該フィルム並走区間の終端から始端へ復帰する軌跡Sのうちの戻り区間との間を移動自在であり、前記フィルム並走区間内で相互に閉じて前記フィルムを熱シールする構成となっており、
前記フィルムを下流側へ繰り出すフィルム搬送用サーボモータ6と、
前記シールジョー11a、11bを開閉するジョー開閉用サーボモータ23と、
前記シールジョー11a、11bをフィルム並走区間と戻り区間との間で移動させるジョー昇降用サーボモータ31と、
これらフィルム搬送用サーボモータ6、ジョー開閉用サーボモータ23、及び、ジョー昇降用サーボモータ31を制御するコントロールユニット100と、を含み、
前記コントロールユニット100が(イ’)乃至(ニ’)の条件に従って制御動作を実行する縦型製袋包装機1。
(イ’)前記フィルムを下流側へ繰り出しながら、前記シールジョー11a、11bを閉じてフィルムの横シール動作を実行するように、前記フィルム搬送用サーボモータ6及びジョー開閉用サーボモータ23を制御する。
(ロ’)前記シールジョー11a、11bがフィルム並走区間の始端から終端に至りさらに戻り区間を経て前記フィルム並走区間の始端まで移動する1サイクルの動作時間が、指定された動作条件に応じて選択された低速、中速、高速の搬送モードを自動的に切り替えることで変動するようにし、前記ジョー昇降用サーボモータ31を制御する。
(ハ’)前記シールジョー11a、11bによりフィルムを挟持して熱シールするための横シール時間があらかじめ設定してあり、前記フィルム並走区間において当該横シール時間の間だけ前記シールジョー11a、11bを閉じてフィルムの横シール動作を実行するように、前記ジョー開閉用サーボモータ23を制御する。このとき、当該横シール時間に対する前記1サイクルの動作時間の変動に対応して、前記横シールブロックは横シール中の移動距離が変動する。
(ニ’)前記調整した1サイクルの動作時間から前記横シール時間を差し引いた時間の間で、前記横シールブロックを開き、前記戻り区間を経て、次サイクルの横シール動作を開始させるように、前記ジョー開閉用サーボモータ23及びジョー昇降用サーボモータ31を制御する。」

第5.対比・判断

1.本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明1の制御部は、「1サイクルの動作時間を、上流側下流側での製品の滞留や搬送間隔の伝動に対応して任意に変動させるように、前記ブロック移動用モータを制御する」ものであるのに対し、甲1発明のコントロールユニット100は、「1サイクルの動作時間が、指定された動作条件に応じて選択された低速、中速、高速の搬送モードを自動的に切り替えることで変動するように前記ジョー昇降用サーボモータ31を制御する」ものである点。

そこで検討する。甲1発明の制御について、甲1には、以下の記載がある。
「【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、消費者の嗜好の多様性や、それに伴う商品の差別化等により、少量多品種生産が頻繁である。その結果、ある商品の生産では、包材が厚いため横シール時間を長くとることが包装機の動作条件とされ、別の商品の生産では、内容物が嵩高いためしごき作業を行うことが必須とされ、また別の商品の生産では生産能力が重要視されたりする。」

「【0013】本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、多種多様な生産品目及びそれに伴う包装機の動作条件に応じて各種の運転方式を1機で実現させることのできる製袋方法、及び該製袋方法の実施に用いることのできる汎用性に優れた使い勝手のよい縦型製袋包装機を提供することを課題とする。」

「【0055】図8に示すように、コントロールユニット100は、低速モードを実行するときは、筒状フィルムFを停止させている間に(時刻tb?ta)、横移動手段Hでシールジョー11a,11bを対接させて横シールを行う(横シール時間TS:時刻tc?td)。一方、中速モード及び高速モードを実行するときは、筒状フィルムFを等速で搬送させている間に横シールを行う(横シール時間TS:時刻tc?td)。
【0056】コントロールユニット100は、横シールを実行するときは、横シール部が所定のシール領域からはみ出したり、シール不良が起きないように、シールジョー11a,11bの縦方向の移動速度を、筒状フィルムFの縦方向の搬送速度に一致させる。よって、横シールを筒状フィルムFの停止中に行う低速モードでは、シールジョー11a,11bは縦方向に移動しない(速度ゼロ)。シールジョー11a,11bは所定の高さ位置に固定する。もちろんこの所定の高さ位置は任意に変更してよい。」

「【0064】一方、高速モードは、フィルムFの搬送動作が比較的シンプルである。よって、起動時や停止時でも制御の複雑化から免れる。しかも、フィルムFを等速搬送するから、フィルムFの蛇行が抑制され、フィルムFに局所的に大きな張力が作用することが低減される。この高速モードでは、シール時間TS及び袋Xの長さLが制限されることと引き換えに、1サイクル動作期間Cを短くすることができ、何よりも高速運転に好適である。」

「【0066】これに対し、中速モードは、筒状フィルムFの搬送速度を増減変化させることによって、該筒状フィルムFを下方にしごいたり、上方にたるませたりして、良好な包装を実現するための補助的な前処理作業TXを行うのが特徴である。・・・」

「【0067】図7に示すように、この包装機1には、コントロールユニット100に動作条件指定信号を出力する操作パネル200が備えられている。作業員は、この操作パネル200を操作して包装機1の動作条件を指定する。その動作条件としては、例えば、この包装機1の能力、横シールに必要な時間TS、袋Xの長さL、あるいはフィルムFの厚み等である。さらに、内容物が嵩高いためしごき作業を行うかどうかであってもよい。」

「【0069】コントロールユニット100は、このようにして指定された動作条件に応じて、前述した低速、中速、高速の各搬送モードを自動的に切り替えて包装機1を運転する。例えば包装機1の能力が指定されたときは、高速モードが優先的に選択される。横シール時間TS、袋長さL、包材厚み等が指定されたときは、低速モードが優先的に選択される。前処理作業TXが要求されたときは、中速モードが優先的に選択される。もちろん、これらの動作条件を2つ以上指定してもよい。その場合は、最も能力が出る範囲内で、各動作条件が満たされるようにモードが選択される。そのとき、前述したように、高速モードや中速モードであっても、フィルム搬送速度やジョー移動速度を制御して、1サイクル動作期間Cを長くすることと引き換えに、シール時間TSや袋Xの長さLを長くできることを勘案する。」

以上の摘記から、甲1発明は、近年の「ある商品の生産では、包材が厚いため横シール時間を長くとることが包装機の動作条件とされ、別の商品の生産では、内容物が嵩高いためしごき作業を行うことが必須とされ、また別の商品の生産では生産能力が重要視されたりする」ことについて、1機の縦型製袋包装機で対応できるようにすることを課題とするものである。
そして、当該課題を解決しようとして、例えば、この包装機1の能力、横シールに必要な時間TS、袋Xの長さL、あるいはフィルムFの厚み等の動作条件を予め指定すると、コントロールユニットは、低速、中速、高速の各搬送モードを自動的に切り替えて、それぞれのモードに応じて決められたジョー昇降用サーボモータ31の制御を行うものである。
したがって、甲1には、「製袋充填包装」を行う「製品製造ライン」において生じる「上流側下流側での製品の滞留や搬送間隔の変動」に対応して「1サイクルの動作時間」を任意に変動させることの技術的思想は記載されていない。また、当該技術的思想は、甲2?7のいずれの書証にも記載されていない。
なお、甲2には、「製造ラインの速度変化に合わせて包装機械を可変速運転することができる」(4ページ左下欄4?6行)ものが記載されている。しかし、一般に製造ラインの速度が変化とは無関係に、上流側下流側での製品の滞留や搬送間隔の変動が生じる場合があるところ、甲2には、そうした上流側下流側での製品の滞留や搬送間隔の変動に応じて、「1サイクルの動作時間」を任意に変動させることまでは記載されていない。
本件発明の製袋充填包装機は、上記相違点に係る構成を備えたことで、「一連の製品製造ラインに組み込まれ、同機の上流や下流側での製品の対流や搬送間隔の変動に応じて、エンドシールを実行する1サイクルの動作時間も変動させる」(本件特許明細書段落【0004】)との好ましい作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲1発明、甲2事項、甲3事項、及び、例えば甲4?7記載の周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に該当する発明ではない。

2.本件発明2?5について
本件発明2?5の各々は、いずれも本件発明1を直接あるいは間接に引用するものであるから、本件発明1に特定された事項の全てを、包含するものである。
ここで、上記1.に示したように、本件発明1は、甲1発明、甲2事項、甲3事項、及び、例えば甲4?7記載の周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件発明1に特定された事項の全てを含む本件発明2?5の各々の発明も、甲1発明、甲2事項、甲3事項、及び、例えば甲4?7記載の周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当する発明ではない。

第6.むすび
したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-05-15 
出願番号 特願2011-183734(P2011-183734)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長谷川 一郎  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 井上 茂夫
久保 克彦
登録日 2016-09-02 
登録番号 特許第5995303号(P5995303)
権利者 株式会社東京自働機械製作所
発明の名称 製袋充填包装機  
代理人 山本 寿武  
代理人 恩田 誠  
代理人 中嶋 恭久  
代理人 恩田 博宣  

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