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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04H
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
管理番号 1329112
異議申立番号 異議2017-700265  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-13 
確定日 2017-06-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5992938号発明「防液堤の構築方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5992938号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5992938号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成26年3月6日に特許出願され、平成28年8月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人中川賢治(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5992938号の請求項1の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下「本件発明」という。発明特定事項の分説AないしGの記号を付した。)。

「【請求項1】
A:底版の上面に載置した複数のセグメントをリング状に連結して内型枠を形成する工程と、
B:前記内型枠から隙間をあけて、当該内型枠の外側に外型枠を設置する工程と、
C:前記内型枠と前記外型枠との間にコンクリートを打設する工程と、を備える防液堤の構築方法であって、
D:前記リング状の内型枠は自立しており、
E:前記外型枠は、セパレータを介して前記内型枠に連結し、
F:前記外型枠に作用する前記コンクリートの打設時の側圧を前記内型枠が受け持つことを特徴とする、
G:防液堤の構築方法。」

第3 申立された取消理由の概要
申立人が主張する取消理由の概要は以下のとおりである。

1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)(以下「取消理由1」という。)
申立人は、本件発明は、セグメントの組立てに際して微調整を行う際に、セグメントが支持部材に固定されていると微調整に手間がかかること、及び支持部材の設置や取り外しに手間がかかることを課題としているが、本件発明は、セグメントを連結した後の「内型枠」が自立することを発明特定事項としているのみで、組み立て中の「セグメント」が自立することを発明特定事項としておらず、したがって、本件発明は、課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである旨主張し(申立書2頁4?11行)、その理由として概ね以下(1)ないし(3)のとおり主張している。

(1) 本件発明の課題について、本件明細書の段落【0005】には以下の記載がある。
「セグメントの組み立ては、微調整を行いながら行う必要があるが、支持部材に固定されたセグメントは、微調整に手間がかかる。
また、大型の防液堤の内型枠には、大掛かりな支持部材が必要となるため、支持部材の設置や取り外しに手間がかかるとともに材料費も嵩む。」
また、本件発明の作用効果につき、本件明細書の段落【0008】には以下の記載がある
「かかる防液堤の構築方法によれば、内型枠が底版に固定されずに自立しているため、微調整を容易に行うことができ、施工性に優れている。」
これらの記載からすると、本件発明は、セグメントの組み立ての際に、セグメントが支持部材に固定されていると微調整に手間がかかり、また支持部材の設置や取り外しに手間がかかるろいうことを課題とした発明である。(申立書5頁2?20行)

(2) 上述した本件発明の作用効果についての段落【0008】の記載からすると、本件発明は、上記課題を解決するために、「内型枠」の部材を自立状態とすることで、セグメントの組み立ての際に支持部材を取り付けることを省略できるようにした発明と見受けられるが、セグメントの組み立ての際に支持部材の取り付けを省略できるのは、セグメントが自立するからであり、「内型枠」が自立しているとしても、直ちに、課題を解決することにはならない。仮に、セグメント自体は自立せず、セグメントをリング状に組み立てて内型枠とした段階で初めて自立するというのであれば、セグメントを組み立てる際には支持部材が必要となり、設置及び取り外しに手間がかかるという課題を解決することはできない。加えて、セグメント微調整は、リング状の組み立て終わって初めて行うことではなく、リング状に組み立てる途中であっても適宜行われるものであるから、やはりセグメントが自立していなければ、微調整の際にセグメントは支持部材に固定されており、微調整に手間がかかるという課題を解決できない。
すなわち、上記の課題を解決するためには、セグメント自体が自立するという構成が必須となるが、本件発明の発明特定事項には、セグメントが自立することについては、何ら特定されていない。
よって、本件発明は、発明の課題か解決できることを当業者が認識出るように記載された範囲を超えるものである。(申立書5頁25行?6頁21行)

(3) 本件明細書の段落【0025】には以下の記載がある。
「セグメント2aの多目的ポスト(支持部材)による支持は、必要に応じて行えばよい。例えば、セグメント2a同士(内型枠21)の組み始め等の不安定な状況下では、セグメント2aが倒れることがないように支持する。一方、複数のセグメント2aが弧状に連結されて安定したら、セグメント2aを支持する必要はない。」
この記載からすると、発明の実施形態において、セグメントは、組み始めにおいて支持部材において支持することが念頭におかれている。
この場合、当然ながら、支持部材の設置及び取り外しの手間がかかるという課題は解決されておらず、また組み始めにおいては、セグメントは支持部材で固定されていることになり、微調整に手間がかかるという課題も解決していない。
また、「組み始め」との説明も曖昧であり、どのような状況まで組み立てれば、不安定な状況ではなくなり、倒れることがなくなるのか不明である。特に、本件明細書において、内型枠が自立する理由は、リング状に形成されるからであり、それ以外に内型枠を自立させるための特殊な構成等については何ら記載も示唆もされていない。
そうすると、本件明細書には、リング状に組み立て終わることで、初めて自立できるという限度でしか開示がなく、結局、セグメントが支持部材で支持されるのは組み始めだけでなく、リング状に形成される直前までとも理解される。
このように、本件明細書の発明の実施形態においても、セグメントが自立することについては、記載も示唆もなされておらず、上記本件発明の課題を解決する手段については開示されていない。(申立書6頁22行?7頁最下行)

2 特許法第29条第1項第3号(新規性)(以下「取消理由2」という。)
申立人は、本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当する旨主張している。その中で、本件発明の発明特定事項Aの「上面に載置」という点及び発明特定事項Dに関し、以下のとおり主張している。

本件発明の発明特定事項Aの「上面に載置」という点に関し、
「そして、この図30の記載からすると、セグメントは、「○1」(決定注;原文は丸数字。以下同様。)と記載されたコンクリート(以下、「コンクリート○1」という。)の上面に載置されていることが認められる。」(申立書17頁24?26行)。
「また、甲1発明の「コンクリート○1」は、甲第1号証においては、側壁の一部として説明されているが、その実質は・・・既に形成された底板に対して水平となる面を形成するために打設されたコンクリートといえる。甲第1号証において側壁として機能するのは、・・・図30の「○2」?「○8」の部分に限られている。
一方で、本件特許発明において「底版」は、本件明細書の記載を参酌したとしても、セグメントを載置出来、側壁が立ち上がる際の底面となる意味合いしか見出すことはできない(本件明細書の段落【0016】等参照)。
以上からすると、甲1発明の「コンクリート○1」も、セグメントを載置でき、側壁が立ち上がる際の底面となるものであるから、本件特許発明でいう「底版」に相当する。」(申立書20頁下から4行?21頁7行)。

本件発明の発明特定事項Dに関し、
「甲第1号証において、セグメントがリング状に連結されて形成された内側の型枠につき、特に支持部材等で支えられているとの記載はなく、・・・図38からするとセグメントは自立している。」。(申立書18頁16?18行)

3 特許法第29条第2項(進歩性)(以下「取消理由3」という。)
申立人は、本件発明は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載されたような技術常識から、当業者が容易に想到できる構成であるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反する旨主張し、その理由として概ね以下(1)、(2)のとおり主張している。

(1) 取消理由2で述べたように本件発明は甲第1号証に記載された発明と同一であるが、仮に以下の点につき、甲第1号証には明示がないとし、相違点になると考えたとしても、当該相違点に係る本件発明の構成は、当業者が容易に想到できる。

[相違点] 本件発明は、「内型枠は自立」するのに対し、甲1発明の「内側の型枠」は自立しているか否か明示されていない点。

甲第2号証には、「【0003】従来から、モルタルやコンクリートを使用した水硬性硬化体を永久型枠として用いる多くの例があり、その厚さは30?80mmと比較的厚いものであった。厚い理由はそれ自体が自立する強度をもち型枠内に打設したコンクリートの内圧に耐えることを目指したものであり、また支保工を省略できる利点がある。」と記載されている。
この記載から明らかなように、技術常識として、従来から、コンクリート打設時の型枠につき、厚さ30?80mm程度の厚い型枠は、自立して用いられていた。
ここで、甲1発明の「内側の型枠」を構成する「セグメント」は、厚さが0.2m(200mm)である。
よって、当業者であれば、甲1発明の「内側の型枠」は自立するものだと理解され、仮に「自立する」ことまでは明示されていないとしても、上記技術常識からして、自立して用いようと容易に想到できる。
一方で、本件発明では、内型枠を自立させるための方法として、リング状に連結させることのみを開示しており、それ以外の具体的な手段については一切、記載も示唆もされていない。
すなわち、甲1発明をもとに、「内側の型枠」を自立させようと考えた際の「自立」の程度は、本件発明が規定する「自立」の程度と差はない。(申立書21頁15行?22頁14行)

(2) また、取消理由1で述べたように、本件発明において、「内型枠」を自立する構成としたとしても、本件発明の課題を解決するようなものではないので、上記相違点にかかる本件発明の構成を採用しても、当業者にとって予想外の効果はない。(申立書22頁15?18行)

[証拠方法]
甲第1号証:(清水建設)土木本部土本第二部 中鉢克美,“世界最大級(直径74m)のLNG地下式貯槽の施工”,清水建設土木クォータリー,(清水建設)土木技術第一部、平成元年6月10日,No.83,p.2-33
なお、甲第1号証が本件特許の出願前に頒布された刊行物かどうかについて、申立書には「平成元年6月10日」(申立書8頁4?5行及び23頁16行)という発行日に関する記載しかなく頒布性に関する記載がないが、以下、仮に、頒布された刊行物として検討を行うこととする。

甲第2号証:特開2003-105910号公報

第4 当審の判断
1 取消理由1(サポート要件)について
(1) 検討
本件明細書の発明の詳細な説明では、「【発明を実施するための形態】」として、下記の記載がある(決定で下線を付した。以下同様。)。
A’(内型枠形成工程);「【0020】内型枠形成工程は、底版Bの上面で複数のセグメント2a,2a,…を周方向に連結して内型枠21を形成する工程である。内型枠21(残存型枠2)は、図2の(a)に示すように、平面視リング状を呈している。・・・
【0023】セグメント2aは、図示せぬクレーンなどで吊持し、底版Bの上面に載置する。・・・」
B’(外型枠設置工程);「【0027】外型枠設置工程は、図3の(a)に示すように、内型枠21から隙間をあけて、内型枠21の外側に外型枠3を設置する工程である。・・・」
C’(打設工程);「【0029】打設工程は、内型枠21と外型枠3との間にコンクリートCを打設する工程である。・・・」
E’(セパレータを介した連結);「【0027】・・・外型枠3は、セパレータ5,5を介して内型枠21に連結する。」
F’(打設コンクリートの側圧の受け持ち);「【0031】コンクリートCの打設に伴い、外型枠3に作用するコンクリートCの側圧は、セパレータ5を介して内型枠21に作用する。すなわち、打設コンクリートCの側圧は、内型枠21が受け持つ。」
G’(防液堤の構築方法);「【0015】本発明の実施形態に係る壁体Wは、地上LNGタンクの防液堤であり、・・・」「【0049】このように、本実施形態に係る壁体Wの構築方法(防液堤の構築方法)によれば、・・・」
このように、本件発明の発明特定事項A、B、C、E、F及びGについては、それぞれ上記A’、B’、C’、E’、F’及びG’のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているものである。
さらに、同「【発明を実施するための形態】」には、下記の記載がある。
「【0025】セグメント2aの多目的ポスト(支持部材)による支持は、必要に応じて行えばよい。例えば、セグメント2a同士(内型枠21)の組み始め等の不安定な状況下では、セグメント2aが倒れることがないように支持する。一方、複数のセグメント2aが弧状に連結されて安定したら、セグメント2aを支持する必要はない。」
「【0049】このように、本実施形態に係る壁体Wの構築方法(防液堤の構築方法)によれば、各セグメント2aが底版Bに固定されていないため・・・また、セグメント2aの支持部材を省略することで、支持部材の設置の手間や、支持部材に要する費用を省略することができる。」
このように、内型枠を構成するセグメントが底版に固定されず、かつ支持部材が省略されるところ、内型枠も底版に固定されず、かつ支持部材が省略されることが認識でき、これを本件明細書の「【0009】なお、本明細書において「自立」とは、支持部材や固定部材を使用することなく、立設している状態をいう。複数のセグメントがリング状に連結された内型枠は、セグメント同士の間で力が分散し、応力集中が抑制されるので、安定して自立する。」という記載に照らせば、本件発明の発明特定事項Dも、同「【発明を実施するための形態】」に記載されているものである。
以上のとおりであるから、本件発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるので、サポート要件を満たしている。

(2) 申立人の主張について
ア 発明の課題の解決について
申立人は、本件発明は、「セグメント」自体ではなく複数のセグメントをリング状に組み立てた「内型枠」が自立することが特定されているのみで、組み立て中のセグメント自体が自立することを発明特定事項としておらず、そのような構成では発明の課題を解決できないものである旨主張する。
一方、発明の詳細な説明には、発明の課題について、
「【発明が解決しようとする課題】【0005】セグメントの組み立ては、微調整を行いながら行う必要があるが、支持部材に固定されたセグメントは、微調整に手間がかかる。また、大型の防液堤の内型枠には、大掛かりな支持部材が必要となるため、支持部材の設置や取り外しに手間がかかるとともに材料費も嵩む。」
と記載されている。
すなわち、「セグメントの組み立ては、微調整を行いながら行う必要があるが、支持部材に固定されたセグメントは、微調整に手間がかかる」という課題(以下「課題A」という。)と、「また、大型の防液堤の内型枠には、大掛かりな支持部材が必要となるため、支持部材の設置や取り外しに手間がかかるとともに材料費も嵩む。」という課題(以下「課題B」という。)の、複数の課題が把握される。
そして、本件明細書には、「【0025】セグメント2aの多目的ポスト(支持部材)による支持は、必要に応じて行えばよい。例えば、セグメント2a同士(内型枠21)の組み始め等の不安定な状況下では、セグメント2aが倒れることがないように支持する。一方、複数のセグメント2aが弧状に連結されて安定したら、セグメント2aを支持する必要はない。」と記載されており、当業者であれば、この記載より、(セグメントが弧状に連結されて成った)「リング状の内型枠」は「自立」でき、「大型の防液堤の内型枠には、大掛かりな支持部材は必要でないことが理解できる。よって、発明特定事項Dを有する本件発明は、上記課題Bを解決できるものである。
このように、発明特定事項Dを有する本件発明は課題Bを解決でき、またその解決と上記の「【0025】セグメント2aの多目的ポスト(支持部材)による支持は、必要に応じて行えばよい。例えば、セグメント2a同士(内型枠21)の組み始め等の不安定な状況下では、セグメント2aが倒れることがないように支持する。」こととの間に齟齬はない。すなわち、課題Bを解決できるか否かはセグメント自体が自立するか否かに影響されるものではなく、課題Bを解決するにはセグメント自体が自立する構成が必須であるとはいえない。
以上のように、本件発明は課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、サポート要件違反にはあたらない。
また他に、サポート要件違反となる点もない。

イ 補足
上記第3の1(3)に記載したように、申立人は「本件明細書には、リング状に組み立て終わることで、初めて自立できるという限度でしか開示がなく」との旨を主張している。しかし、本件明細書では、「【0025】・・・一方、複数のセグメント2aが弧状に連結されて安定したら、セグメント2aを支持する必要はない。」という記載はあっても申立人主張のような「リング状に組み立て終わることで初めて自立できる」旨の記載はなく、申立人の主張は失当である。

(3) 小括
以上のとおり、申立人が主張する取消理由1によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由2(新規性)について
(1) 対比
甲第1号証には、本件発明における、セグメントを「底版の上面に載置」すること、及び「リング状の内型枠は自立」することに対応する構成の記載がない。
これに関し、申立人は上記第3の2に記載したように主張しているので、この主張について検討する。
まず、セグメントを「底版の上面に載置」することについて、申立人は「以上からすると、甲1発明の「コンクリート○1」も、セグメントを載置でき、側壁が立ち上がる際の底面となるものであるから、本件特許発明でいう「底版」に相当する。」旨主張している。しかし、甲第1号証では、「§側壁の構築 側壁の構築は、底版コンクリート打設後、図-30に示す8分割で施工を行った。」(甲第1号証26頁下から13?11行)という記載及び図-30において、底版コンクリート打設「後」として底版の施工とは明確に区別して、「コンクリート○1」を含めた「側壁」の構築を行うことが明示されており、この「コンクリート○1」の施工を「側壁」の施工でなく底版の施工とする理由は見出せない。よって、申立人の主張は採用できない。
次に、「リング状の内型枠は自立」することについて、申立人は「甲第1号証において、セグメントがリング状に連結されて形成された内側の型枠につき、特に支持部材等で支えられているとの記載はなく、・・・図38からするとセグメントは自立している。」旨主張している。しかし、「特に支持部材等で支えられているとの記載」がないことは支持部材がないことを意味するものではなく、また図38は「内側の型枠」の上部を示しており、下方(底版側)は示されておらず、自立しているかどうか特定できるものではない。よって、申立人の主張は採用できない。

以上より、本件発明と甲第1号証記載の発明は、以下の点で相違する。

[相違点1] 本件発明では、セグメントは「底版の上面に載置」されるのに対し、甲1発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点2] 本件発明では、「リング状の内型枠は自立」しているのに対し、甲1発明ではそのような特定はされていない点。

(2) 検討
以上のように、本件発明は相違点1、2において甲第1号証記載の発明と実質的に相違するので、甲第1号証に記載された発明ではない。

(3) 小括
以上のとおり、申立人が主張する取消理由2によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由3(進歩性)について
(1) 検討
上記2(2)に記載した相違点1、2に係る本件発明の構成の容易想到性について検討する。

ア 相違点1について
甲第2号証には、セグメントを底版の上面に載置するかどうかは記載も示唆もされていない。よって、相違点1に係る本件発明の構成は容易に想到できるとはいえない。

イ 相違点2について
上記第3の3に記載した申立人の主張のとおり、甲第2号証には、【0003】段落に、「【従来の技術】」として、「従来から、モルタルやコンクリートを使用した水硬性硬化体を永久型枠として用いる多くの例があり、その厚さは30?80mmと比較的厚いものであった。厚い理由はそれ自体が自立する強度をもち型枠内に打設したコンクリートの内圧に耐えることを目指したものであり、また支保工を省略できる利点がある。」との記載がある。
しかし、同号証の【0001】段落に「【産業上の利用分野】」として「本発明は、既設新設を問わず、建築物柱、橋梁および高架橋の橋脚の補強に用いる永久型枠に関する。」と記載されているように、同号証には、設置された「柱、橋脚」の補強用の型枠についての記載しかなく、甲第1号証記載の発明のような「地下式貯槽」の「側壁」の「外側」と「内側」よりなる「型枠」の「内側」の「セグメント」に関連するような記載はない。このように、甲第2号証記載の技術は甲第1号証とは対象とする土木構造物も型枠の態様も異なるところ、甲第2号証の上記記載に接した当業者といえども、甲第1号証の「地下式貯槽」の「側壁」の「外側」と「内側」よりなる「型枠」の「内側」の「セグメント」に対し、甲第2号証記載の型枠の構成を適用する動機はない。
加えて、本件明細書(【0009】段落)には、「なお、本明細書において「自立」とは、支持部材や固定部材を使用することなく、立設している状態をいう。」と明記されているが、甲第2号証には「支保工を省略できる」までの記載はあるが、「固定部材」も使用していないかどうかについての記載はない。
よって、相違点2に係る本件発明の構成は容易に想到できるとはいえない

ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は甲第1号証記載の発明及び甲第2号証の記載事項より容易に発明できたものではない。

(2) 小括
以上のとおり、申立人が主張する取消理由3によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-05-29 
出願番号 特願2014-43681(P2014-43681)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04H)
P 1 651・ 537- Y (E04H)
P 1 651・ 113- Y (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河内 悠  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
前川 慎喜
登録日 2016-08-26 
登録番号 特許第5992938号(P5992938)
権利者 大成建設株式会社
発明の名称 防液堤の構築方法  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
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