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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
管理番号 1329113
異議申立番号 異議2017-700242  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-07 
確定日 2017-06-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第5996226号発明「使用済み高吸水性ポリマーの再生方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5996226号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5996226号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成24年3月23日に特許出願され、平成28年9月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 平川弘子により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5996226号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
使用済み高吸水性ポリマーの再生方法であって、該方法は、使用済みの高吸水性ポリマーを多価金属塩水溶液で処理する工程および多価金属塩水溶液で処理した高吸水性ポリマーをアルカリ金属塩水溶液で処理することにより、高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させて、高吸水性ポリマーの水分吸収能力を回復させる工程を含み、多価金属塩水溶液が乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり4.5?10ミリモルの多価金属塩を含み、アルカリ金属塩水溶液が乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり30?150ミリモルのアルカリ金属塩を含む、方法。
【請求項2】
多価金属塩がアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ金属塩水溶液で処理した高吸水性ポリマーを水で洗浄する工程をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用済み吸収性物品から高吸水性ポリマーを回収再生する方法であって、該方法は、使用済みの吸収性物品から高吸水性ポリマーを回収する工程、回収した高吸水性ポリマーを多価金属塩水溶液で処理する工程、多価金属塩水溶液で処理した高吸水性ポリマーをアルカリ金属塩水溶液で処理することにより、高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させて、高吸水性ポリマーの水分吸収能力を回復させる工程、アルカリ金属塩水溶液で処理した高吸水性ポリマーを水で洗浄する工程、および水で洗浄した高吸水性ポリマーを乾燥する工程を含み、多価金属塩水溶液が乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり4.5?10ミリモルの多価金属塩を含み、アルカリ金属塩水溶液が乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり30?150ミリモルのアルカリ金属塩を含む、方法。

第3 異議申立の理由について
申立人は、次の甲各号証を証拠として提出し、以下に示す概要の異議申立理由を主張している。
<証拠>
甲第1号証:特開2003-326161号公報
甲第2号証:特開2003-225645号公報
甲第3号証:特表2011-511136号公報

<申立理由の概要>
(理由1)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1ないし4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないので、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(理由2)本件特許は、本件発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載されたものでないので、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(理由3)本件特許は、本件発明1ないし4が明確でないので、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
(理由4)本件発明1ないし4に係る特許は、同発明が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
以下、申立理由1ないし4について検討する。

1.理由1について
<異議申立人の主張の概略>
実際の「使用済み高吸水性ポリマー」においては、同ポリマー全体が一様に吸水しているわけではないこと等から、吸水量、乾燥重量等を定めることが難しく、本件発明の適用に当たり、乾燥重量から求められる「多価金属塩」、「アルカリ金属塩」の添加量を定めることは困難であるところ、本件発明の「使用済み高吸水性ポリマーの再生」にあたり、高吸水性ポリマーの乾燥重量を定め、「多価金属塩」、「アルカリ金属塩」の添加量を定める手段は具体的に本件特許明細書に見いだせないから、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
<当審の判断>
異議申立人も認めるように、実際の「使用済み高吸水性ポリマー」の全体が一様に吸収しているわけではないが、高吸水性ポリマーの商品名などから使用前の状態を推測するなどして、当該「使用済み高吸水性ポリマー」の乾燥重量を確認する等の手法は、実際の操作を考えれば、簡単に推測できるものといえるから、本件発明が実施不能とはいえない。
したがって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1ないし4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものでない。

2.理由2について
<異議申立人の主張の概略>
本件発明の解決すべき課題は、本件特許明細書【0005】に記載されるように「酸やアルカリを使用せずに、簡単かつ安価に、使用済みの高吸水性ポリマーを再生する方法、すなわち使用済みの高吸水性ポリマーの水分吸収能力を回復させる方法を提供する」ことであるといえる。
しかるに、
i)本件発明1及び4には「アルカリ金属塩水溶液」を適用することが記載されており、これは、例えば「炭酸ナトリウム」等の、水溶液がアルカリ性を示す態様を含むものであり、また、「塩化ナトリウム」「塩化カリウム」という二つの実施例のみで「アルカリ金属塩」全般に発明が拡張されており、
ii)また、「高吸水性ポリマー」は同【0011】の作用機序の及ぶものであるべきところ、本件発明1及び4では「高吸水性ポリマー」全般に発明が拡張されている。
よって、本件発明1及び同発明を直接又は間接的に引用する本件発明2ないし3と本件発明4は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
<当審の判断>
i)について
同【0005】には、本件発明1及び4が「酸やアルカリを使用」しないものであることが明記され、同【0019】には、「アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムの水溶性の塩が使用できる。好ましいアルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等が挙げられ、なかでも塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが好ましい。」と記載され、「塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム」は、それらの水溶液は全てpHが中性である。
すると、本件発明1及び4の「アルカリ金属塩水溶液」は「アルカリ性」を示すものを文言上は含み得るとしても、発明の目的が「酸やアルカリを使用」しないことであり、「アルカリ金属塩水溶液」として具体的に使用されるものに「アルカリ性」を示すものが含まれないのであるから、本件発明1及び4の「アルカリ金属塩水溶液」は「炭酸ナトリウム」等の「アルカリ性」を示すものを含まないと解される。
また、上記【0019】には「アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムの水溶性の塩が使用できる」と明記されており、また、「ナトリウム」「カリウム」以外の「アルカリ金属塩」では本件発明は実施できないとする合理的な理由も見いだせず、さらに、明細書の記載要件として全ての実施例を記載しなければならないものではないから、「塩化ナトリウム」「塩化カリウム」という二つの実施例をもって、本件発明1及び4において「アルカリ金属塩」とできない理由は見いだせない。
ii)について
本件発明1及び4の「高吸水性ポリマー」は、「多価金属塩水溶液で処理」された後に「アルカリ金属塩水溶液で処理」され、「再生」されて「水分吸収能力を回復」するものであり、そのようにできるのは同【0011】に記載の作用機序に則し得る「高吸水性ポリマー」に限られることは明らかといえる。
そして、同【0026】に記載の「高吸水性ポリマー」は同【0011】に記載の作用機序に則し得る「高吸水性ポリマー」であることも同様である。
また、例えば甲第3号証の【0003】に示されるように、高吸水性ポリマーとして実際に使用されるものは、実質的には同【0011】に記載の作用機序に則し得るものといえる。
すると、本件発明1及び4の「高吸水性ポリマー」は「多価金属塩水溶液で処理」された後に「アルカリ金属塩水溶液で処理」され、「再生」されて「水分吸収能力を回復」するもの、あるいは同【0011】に記載の作用機序に則し得るものに限定されているというべきであり、本件発明1及び4は、「高吸水性ポリマー」全般を意味するものではないといえる。
以上から、本件特許は、本件発明1ないし4が、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号の規定に適合する特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものでない。

3.理由3について
<異議申立人の主張の概略>
「高吸水性ポリマー」が「使用済み」というのはいかなる状態をいうのか明らかでなく、本件発明1ないし4は明確でない。
<当審の判断>
同【0010】に「使用済み高吸水性ポリマーとは、高吸水性ポリマーの用途にかかわらず、水などの液体を吸収した後の高吸水性ポリマーをいうものとする。」と定義されており、「高吸水性ポリマー」が「使用済み」というのはいかなる状態をいうのかは明確である。
よって、本件特許は、本件発明1ないし4が明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものでない。

4.理由4について
(1)甲第1号証について
i)甲第1号証には次の技術手段が記載されている。すなわち、
「使用済みの体液吸収性物品から被吸収液を吸収した吸水性樹脂を取り出し、洗浄および脱水処理を行う吸水性樹脂の再生方法であって、洗浄及び/又は脱水処理が、該吸水性樹脂が吸収した被吸収液を排出する環境に置く操作を含むことを特徴とする吸水性樹脂の再生方法。」(【請求項1】)であって、
「体液吸収性物品が紙おむつ、失禁パット、布おむつ」(【請求項7】)であり、それらが「アクリル酸またはその塩等を主成分とするポリアクリル酸(塩)系架橋重合体」でつくられており(【0013】)、
「洗浄及び/又は脱水処理」について、「脱水工程は前記の洗浄工程に先立って行っても良い」(【0039】)ものであり、
「脱水処理」は、「膨潤している吸水性樹脂の含水率を低減させること」であり、その複数の具体例の中に「吸水性樹脂を塩化カルシウムのような多価金属塩水性溶液と接触させる方法」(【0033】)が例示され、
「洗浄処理」は、「吸水性樹脂の膨潤ゲルの粒子間、粒子表面に存在している被吸収液(主には尿)の大部分を取り除くこと」であり、その複数の具体例の中に「膨潤している吸水性樹脂ゲル」を「塩水」に「接触させて、ゲルの空隙に存在する被吸収液を除去する方法」(【0031】)が例示され、「塩水」は「NaCl」すなわち「アルカリ金属塩の水溶液」であることは明らかである。
そして、「脱水処理」、「洗浄処理」の後で、「必要によりpHを調整する為」に「炭酸ナトリウム」等の「再度塩基性化合物を添加すること」が記載されているる。
さらに、「実施例1」として、「人尿」を吸収させ「膨潤」した「吸水性樹脂(1)」に「35%塩酸」を添加し「ゲルを酸で収縮脱水」させ、「生理食塩水でリンスすることにより、吸水性樹脂の洗浄および脱水処理を含む再生処理を行」ない、「炭酸ナトリウム」を「加えてよくブレンドした後、熱風乾燥させたのち粒子を解砕分級して、含水率が5%の本発明の吸水剤(1)を得た」(【0054】?【0056】)ことが記載されている。

ii)本件発明1及び4と、甲第1号証に記載の技術手段を比較する。
ii-1)本件発明1及び4における「アルカリ金属塩水溶液」による処理は、「高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させ」る(本件特許明細書【0021】)ものであるから、「アルカリ金属塩水溶液」は「高吸水性ポリマー」の内部に浸潤して作用するものであるのに対して、
甲第1号証に記載の技術手段(以下、「甲1技術」という。)における「塩水」すなわち「アルカリ金属塩の水溶液」による処理は、「洗浄処理」であって、「吸水性樹脂」の「膨潤ゲルの粒子間、粒子表面に存在している被吸収液(主には尿)の大部分を取り除くこと」であるから、「吸水性樹脂」の「膨潤ゲルの粒子」の内部に「アルカリ金属塩の水溶液」が浸潤して作用するものとはいえない。
すると、甲1技術における「塩水」すなわち「アルカリ金属塩の水溶液」による処理は、単に「洗浄処理」であって、「高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させ」ることを目的とするものとは考えられず、同処理は本件発明1及び4の「アルカリ金属塩水溶液」による処理にあたらないし、使用される「アルカリ金属塩」の量も甲第1号証の記載中に見いだせない。
この点で、異議申立書22?23頁には、甲1技術では「塩水」すなわち「アルカリ金属塩の水溶液」で処理しており、この点は本件発明1及び4と同じだから、必然的に「高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させて、高吸水性ポリマーの水分吸収能力を回復させる」という結果が得られるので、本件発明1及び4と甲1技術は実質的に相違しないか、又は甲第3号証の記載を参酌すれば容易になし得るものと主張している。
しかし、上記したように、甲1技術における「アルカリ金属塩の水溶液」による処理は、「吸水性樹脂」の「膨潤ゲルの粒子間、粒子表面に存在している被吸収液(主には尿)」を取り除くだけの「洗浄処理」であり、「吸水性樹脂」の「膨潤ゲルの粒子」の内部に「アルカリ金属塩の水溶液」が浸潤して作用するものでないから、当該処理により「高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させて、高吸水性ポリマーの水分吸収能力を回復」するものではなく、その後の「炭酸ナトリウム」(アルカリ性剤)を「加えてよくブレンド」して、「膨潤ゲルの粒子」の内部にアルカリ性剤を浸潤させて作用させることではじめて吸水性能が回復するものといえる。
また、甲第3号証に記載の技術手段においては、以下に記すように、「第2のトリガー組成物」(「アルカリ金属塩の水溶液」に対応する)を適用して「高吸収性ポリマー組成物」が「再膨潤および液体の吸収が再び生じ得る」ようにするものであり、「第2のトリガー組成物」を「高吸収性ポリマー組成物」に浸潤せしめて反応させるものだから、「吸水性樹脂」の「膨潤ゲル」の表面を「洗浄処理」するにすぎない甲1技術における「アルカリ金属塩の水溶液」とはその使用方法が異なり、甲1技術に甲第3号証に記載の技術手段を適用し得るものとはいえない。
それゆえ、異議申立人の主張は採用し得ない。
ii-2)甲1技術における「脱水処理」は、「膨潤している吸水性樹脂の含水率を低減させる」ために「吸水性樹脂を塩化カルシウムのような多価金属塩水性溶液と接触させる」ものであり、これは本件発明1及び4における「多価金属塩水溶液」による処理にあたるといえる。
しかし、甲1技術における上記「脱水処理」は、複数の具体例の一つとして記載されたものにすぎないのでその詳細は明らかでなく、「実施例1」をみても、「吸水性樹脂(1)」を、「多価金属塩水性溶液と接触させる」のではなく、「35%塩酸」の添加により「収縮脱水」させるものだから、「多価金属塩」の使用量については明らかでない。

iii)本件発明1及び4と甲1技術との相違点
そうすると、甲1技術は、本件発明1及び4と比較して、
「使用済み高吸水性ポリマー」の「再生」の「方法」において、
「多価金属塩水溶液で処理」した後で、さらに「アルカリ金属塩水溶液」で単に洗浄処理するものだから、
(相違点1)「多価金属イオンを離脱」させる処理をしておらず、
(相違点2)「多価金属塩水溶液」と「アルカリ金属塩水溶液」の使用量が明らかでない
ことの、少なくとも2点で相違する。

(2)甲第2号証について
上記相違点1及び2について検討するために、甲第2号証の記載をみてみる。
i)甲第2号証は次の技術手段が記載されている。すなわち、
「使用済み吸収性物品に含有される、パルプ成分と吸水性ポリマーとのゲル状混合物に、遷移金属塩単独または遷移金属塩とアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩との混合物を添加して、吸水性ポリマーに含まれる水分を脱水し、吸水性ポリマーを収縮・固化するとともに、前記遷移金属塩により吸水性ポリマーを着色した後、パルプ成分および吸水性ポリマーをそれぞれ分離回収することを特徴とする、使用済み吸収性物品からのパルプ成分および吸水性ポリマーの分離回収法。」(【請求項1】)であって、
「分離に使用した前記遷移金属塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、分離した吸水性ポリマーから酸処理により回収」(【請求項4】)し、
当該「酸処理後の吸水性ポリマーをアルカリ処理して、吸水性ポリマーの吸水力を回復させ」るもの(【請求項5】)であり、
「パルプ成分と吸水性ポリマー」に添加される「遷移金属塩単独または遷移金属塩とアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩との混合物」について、「遷移金属塩」は「着色」による「パルプ成分と吸水性ポリマーとの識別」「分離」に必須で、さらに「脱水」調整のために「アルカリ金属塩」と「アルカリ土類金属塩を併用する」場合があり、「遷移金属塩」及び「アルカリ土類金属」に対して、「アルカリ金属塩」は不使用又は使用するとしてもそれらと同時に使用するものであり(【0028】?【0030】)、
「分離した吸水性ポリマー」は「希塩酸およびイオン交換水を用いて洗浄処理」(【0035】)の後で「水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等によるアルカリで中和処理(アルカリ処理)することにより、その本来の吸水力を回復」させ、「アルカリ処理後乾燥することにより、紙おむつ等の吸収性物品などの原料として再利用できる」(【0038】)ものであり、
「実施例1」(【0044】、【表1】【0045】)には、「回収多価金属塩」として「CoCl_(2)・6H_(2)Oとして1.00g」を用いて、回収した「回収吸収性ポリマー」が「全回収率」が「98.5%」で「0.55g」(乾燥重量)であることが記載されている。
ここで、異議申立書23頁で記載されるように、「回収吸収性ポリマー」を100%回収したなら、それは100×(0.55/98.5)=0.5583[g]であるはずだから、CoCl_(2)・6H_(2)O=237.8[g/mol]なので、CoCl_(2)・6H_(2)Oの1.00[g]は1/237.8=4.205[m mol]となり、「脱水」に用いた「多価金属塩」は、「吸収性ポリマー」の乾燥重量1[g]あたりで、4.205/0.5583=7.531[m mol]といえるものである。

ii)甲1技術への甲第2号証に記載の技術手段(以下、「甲2技術」という。)の適用の可否を検討する。
甲1技術は、「多価金属塩水溶液」で「脱水処理」した後で、さらに「アルカリ金属塩水溶液」で単に洗浄処理するものである。
これに対して、甲2技術は、「吸水性ポリマーに含まれる水分を脱水し、吸水性ポリマーを収縮・固化する」ために、「遷移金属塩」と「アルカリ土類金属塩」、又は「遷移金属塩」と「アルカリ土類金属塩」と「アルカリ金属塩」を使用するものではあるが、「遷移金属塩」と「アルカリ土類金属」による処理の後で、「アルカリ金属塩」を使用するものではない。
よって、甲2技術は、「遷移金属塩」と「アルカリ土類金属塩」、又は「遷移金属塩」と「アルカリ土類金属塩」と「アルカリ金属塩」で脱水した後で、「アルカリ金属塩水溶液」で洗浄処理するものではない。
すると、甲2技術は、「吸収性ポリマー」の乾燥重量1[g]あたりで7.531[m mol]を「多価金属塩」の添加量とし、これは本件発明1の「高吸水性ポリマーあたり4.5?10ミリモルの多価金属塩を含」むことにあたるが、甲2技術は「遷移金属塩」と「アルカリ土類金属塩」による処理の後で「アルカリ金属塩」による処理を行うものではなく、上記の「多価金属塩」の添加量も、後の「アルカリ金属塩」による処理を行うことを前提とするものではない。

iii)すると、甲2技術は、「多価金属塩水溶液で処理」した後で、さらに「アルカリ金属塩水溶液」で単に洗浄処理する甲1技術とは相違するから、上記数値が単に本件発明1の特定事項にあたるからといって、甲1技術へ甲2技術を適用する動機付けに欠けるものであり、上記相違点1及び2に係る本件発明1の特定事項が容易に想到し得るものとはいえない。

(3)甲第3号証について
さらに、上記相違点1及び2について検討するために、甲第3号証の記載をみてみる。
i)甲第3号証には次の技術手段が記載されている。すなわち、
「高吸収性ポリマー組成物は、トリガー組成物化学品の溶解度の変化により誘発されて、収縮され、そして再膨潤され得る。本発明の1つの態様において、吸収剤組成物は、アニオン官能基を有する高吸収性ポリマー組成物;2つ以上のイオン化された原子価を有するカチオンXを含む、第1の水溶性化学品からなる第1のトリガー組成物;ならびにアニオンYを含む、第2の水溶性化学品からなる第2のトリガー組成物、を含み得、ここで第1の水溶性化学品のカチオンXは、第2の水溶性化学品のアニオンYと錯体を形成すること(complexing)ができ、溶解度積定数Ksp<10^(-5)を有する塩を形成する。・・・第1のトリガー組成物と高吸収性ポリマーとの間のイオン交換反応は、高吸収性ポリマーを誘発して収縮させ、吸収された液体を遊離させる、ゲルネットワーク中にイオン性架橋を生じさせ得ると仮定される。第2のトリガー組成物と収縮された高吸収性ポリマーの間のイオン交換反応は、イオン性架橋の少なくとも1部を除去し得、その結果、高吸収性ポリマーは再膨潤して、さらに液体を吸収し得る。」(【0056】)、
「第1の水溶性化学品は、2以上のイオン化された原子価を有するカチオンを含む。その第1の化学品の具体例は、たとえば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、ギ酸亜鉛および硫酸亜鉛を含む。」(【0057】)、
「第2のトリガー組成物の水溶性化学品は、第1のトリガー組成物の化学品と不溶性塩を形成し得るアニオンを含む。・・・具体例は、たとえばフッ化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫酸ナトリウムまたはトリポリリン酸ナトリウムを含む。」(【0058】)、
「高吸収性ポリマー組成物は膨潤し、液体を吸収し、そしてトリガー組成物が適用されるとき、収縮して液体を遊離することができ、そして第2のトリガー組成物が適用されるとき、再膨潤および液体の吸収が再び生じ得る。」(【0049】)と、記載されている。
これらの記載から、甲第3号証には、「アニオン官能基を有する高吸収性ポリマー組成物」が液体を吸収して膨潤したら、「塩化カルシウム」「ギ酸カルシウム」等の「第1のトリガー組成物」を適用して「収縮」させて「液体を遊離」させ、その後「炭酸ナトリウム」「トリポリリン酸ナトリウム」等の「第2のトリガー組成物」を適用して「再膨潤および液体の吸収が再び生じ得る」ようにする方法、についての技術が示されているといえる。
すると、「第1トリガー組成物」、「第2のトリガー組成物」は、それぞれ本件発明1の「多価金属塩」、「アルカリ金属塩」に対応しているといえる。
そして、「第1のトリガー組成物」と「第2のトリガー組成物」とは、「第1のトリガー組成物」の「カチオンX」と「第2のトリガー組成物」の「アニオンY」とが「錯体を形成」し「溶解度積定数Ksp<10^(-5)を有する塩を形成」するような両者の特定の組み合わせでなるものといえる。
また、当該組み合わせにおいて「高吸収性ポリマー組成物およびトリガー組成物は、約1:0.01?約1:10、または約1:0.1?約1:2の質量比で吸収剤組成物中に存在し得る。吸収剤組成物は、高吸収性ポリマー組成物の約10?約90wt%、第1トリガー組成物の約5?約60wt%、第2トリガー組成物の約5?約60wt%含み得る。」(【0051】)ことが記載されている。
さらに、上記の「第1トリガー組成物」と「第2トリガー組成物」の特定の組み合わせについて記載されるのは、【0185】と以下に示す「表7」(【表9】【0184】)及び「表8」(【表10】【0186】)であるが、「第2トリガー組成物」として記載されているのは「Na_(5)P_(3)O_(10)(トリポリリン酸ナトリウム)」「Na_(2)CO_(3)(炭酸ナトリウム)」であり、これらはその水溶液がアルカリ性であるから、本件発明1の「アルカリ金属塩」に相当しない。
唯一、本件発明1の「多価金属塩」と「アルカリ金属塩」の組み合わせに相当するのが、「例13」の「第1トリガー組成物」として「KCl」、「第2トリガー組成物」として「Na_(2)SO_(4)(硫酸ナトリウム)」を使用するものである。


そこで、例13について、「乾燥質量1gの高吸水性ポリマー」あたりの、「多価金属塩」に相当する「第1トリガー組成物」(KCl)の量、「アルカリ金属塩」に相当する「第2トリガー組成物」(Na_(2)SO_(4))の量を計算してみる。
(例13)「高吸水性ポリマー組成物」を「SAP」とする。
SAP:KCl:Na_(2)SO_(4)=1:0.4:0.4
KClはSAP 1[g]に対して0.4[g]適用され、それは0.4/74.55=5.29[mmol]に換算される。(KCl=74.55[g/mol])
Na_(2)SO_(4)はSAP 1[g]に対して0.4[g]適用され、それは0.4/142.1=2.81[mmol]に換算される。(Na_(2)SO_(4)=142.1[g/mol])
よって、例13は、本願発明1の「多価金属塩」及び「アルカリ金属塩」の物質と重複するものであるが、使用量が本願発明1と相違するものであり、また、例13は比較例であり、「高吸収性ポリマーは有効な収縮および再膨潤を示さなかった」(【0185】)ものである。

ii)甲1技術への甲第3号証に記載の技術手段(以下、「甲3技術」という。)の適用の可否を検討する。
上記i)に記載したとおり、甲第3号証には、液体を吸収して膨潤した「高吸収性ポリマー組成物」に、「塩化カルシウム」「ギ酸カルシウム」等の「第1のトリガー組成物」を適用して「収縮」させて「液体を遊離」させ、その後「炭酸ナトリウム」「トリポリリン酸ナトリウム」等の「第2のトリガー組成物」を適用して「再膨潤および液体の吸収が再び生じ得る」ようにする方法が示されており、「第2のトリガー組成物」により(「第1のトリガー組成物」の化学成分が完全に離脱させられているかは定かではないが)少なくとも「高吸収性ポリマー組成物」が「再膨潤および液体の吸収が再び生じ得る」ようにされることが示されており、その際に、「第1のトリガー組成物」と「第2のトリガー組成物」の使用量も、乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたりどの程度であるかを理解することができる。
しかしながら、「第1のトリガー組成物」と「第2のトリガー組成物」とは、「第1のトリガー組成物」の「カチオンX」と「第2のトリガー組成物」の「アニオンY」とが「錯体を形成」し「溶解度積定数Ksp<10^(-5)を有する塩を形成」するような両者の組み合わせであることが必要で、当該組み合わせの内で、本件発明1に相当するのは例13のみで、その組み合わせであっても、本件発明1の「多価金属塩」の使用量(「乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり4.5?10ミリモル」)及び「アルカリ金属塩」の使用量(「乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり30?150ミリモル」)の双方共に合致しているものではないし、例13は「高吸収性ポリマーは有効な収縮および再膨潤を示」さず、これは脱水、再生しないものといえる。
すると、「第1のトリガー組成物」と「第2のトリガー組成物」は特定の組み合わせを要するところ、本件発明1に相当する組み合わせの物質を使用する場合にも使用量が異なる上に脱水、再生できないのだから、本件発明1の「多価金属塩」と「アルカリ金属塩」及びそれらの使用量を、甲3技術から推測することは当業者といえども困難であるといえる。

iii)この点に関して、特許異議申立人は、甲第3号証の【0051】の記載を根拠にして、「第1のトリガー組成物」と「第2のトリガー組成物」、さらに、それらの配合割合を【0051】に記載の範囲から任意に選択して、本願発明1の使用量に合うものにできる(特許異議申立書17?18頁)ことを主張する。
しかし、上記のとおり「第1のトリガー組成物」と「第2のトリガー組成物」とそれらの使用量は、特定の組み合わせにおいて特定の使用量であることを要するものであるところ、そのような組み合わせにおいて特定の使用量とすることは、甲第3号証の上記記載を参酌しても、当業者が任意に設定し得るものとは認められないから、当該主張は採用できない。

iv)すると、少なくとも本願発明1と甲1技術の相違点2は、甲3技術に示されておらず、また、甲3技術から導かれるものでもないから、甲1技術へ甲3技術を適用しても本願発明1を発明するにいたらない。
よって、上記相違点1及び2に係る本件発明1の特定事項が容易に想到し得るものとはいえない。

(4)結言
以上から、甲第1?3号証には、「多価金属塩水溶液が乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり4.5?10ミリモルの多価金属塩を含み、アルカリ金属塩水溶液が乾燥質量1gの高吸水性ポリマーあたり30?150ミリモルのアルカリ金属塩を含む」点が開示されていない。
したがって、本件発明1及び4は、甲第1?3号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、本件発明2,3は、直接又は間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-05-31 
出願番号 特願2012-68436(P2012-68436)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B01J)
P 1 651・ 536- Y (B01J)
P 1 651・ 537- Y (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 周士郎  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 中澤 登
永田 史泰
登録日 2016-09-02 
登録番号 特許第5996226号(P5996226)
権利者 ユニ・チャーム株式会社
発明の名称 使用済み高吸水性ポリマーの再生方法  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 出野 知  
代理人 古賀 哲次  
代理人 小野田 浩之  
代理人 森本 有一  
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