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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G07D
審判 一部申し立て 特29条の2  G07D
管理番号 1329114
異議申立番号 異議2017-700074  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-30 
確定日 2017-06-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第5961727号発明「現金払出システム及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5961727号の請求項1?7、9、10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5961727号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?7、9、10に係る特許についての出願は、平成27年5月29日に特許出願され、平成28年7月1日にその特許権の設定登録がされ、平成28年8月2日にその掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成29年1月30日に特許異議申立人 田中理恵子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?7、9、10の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7、9、10に記載された事項により特定されるとおりのものである。

第3 申立理由の概要
異議申立人は、証拠として特許第5944551号公報(以下、「甲第1号証」という。)、モバイルFeliCa ICチップ機能解説書(平成26年7月、フェリカネットワークス株式会社)(以下、「甲第2号証」という。)、「Near Field Communication(NFC:近距離無線通信技術)」対応に向けた取り組みについて(http://www.felicanetworks.co.jp/news/topics/20110210.html、平成22年2月10日、フェリカネットワークス株式会社)(以下、「甲第3号証」という。)、「外部リーダ/ライタからの携帯電話機能連携(コンビネーション機能)」仕様書Ver.1.2(平成22年11月1日、KDDI株式会社)(以下、「甲第4号証」という。)を提出し、以下のとおり、請求項1?7、9、10に係る特許を取り消すべきである旨主張している。

1.申立理由1(特許法第29条の2違反)
請求項1?4、6、7、9、10に係る発明は、甲第1号証に記載の特許に係る出願の願書に最初に添付された明細書および図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一の発明であるから、請求項1?4、6、7、9、10に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。

2.申立理由2(特許法第36条第6項第2号違反)
請求項2に係る発明は、不明確であり、また請求項2に係る発明を引用する請求項3?5、9、10に係る発明も不明確であるから、請求項2?5、9、10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない出願に対してなされたものである。

第4 甲第各号証の記載事項
1.甲第1号証の記載事項
甲第1号証における、特に段落[0046]、[0048]、[0050]-[0052]、[0066]、[0068]、[0074]、[0077]、[0079]、[0081]-[0084]、[0099]-[0105]、[図14]の記載及び図示内容からみて、先願明細書等には、以下の2つの発明が記載されている。
「近距離無線通信によって、端末識別情報又はOTPを通信端末から受信する提供装置と、前記提供装置が近距離無線通信によって前記端末識別情報又はOTPを受信したことに応じて、取引実行通知を送信した通信端末のユーザの端末識別情報又はOTPを保持する提供サーバと通信して、前記提供装置が受信した前記端末識別情報又はOTPを前記提供サーバが保持しているか否かを確認する提供装置と、前記提供装置が受信した前記端末識別情報又はOTPを前記提供サーバが保持していることが前記提供装置によって確認された場合に、現金を払い出す提供装置とを備え、前記通信端末が、ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて、前記取引実行通知を前記提供サーバに送信するためのユーザインターフェースを表示する提供システム。」(以下、「甲1先願発明」という。)

「近距離無線通信によって、端末識別情報又はOTPを通信端末から受信する提供装置と、前記提供装置が近距離無線通信によって前記端末識別情報又はOTPを受信したことに応じて、取引実行通知を送信した通信端末のユーザの端末識別情報又はOTPを保持する提供サーバと通信して、前記提供装置が受信した前記端末識別情報又はOTPを前記提供サーバが保持しているか否かを確認する提供装置と、前記提供装置が受信した前記端末識別情報又はOTPを前記提供サーバが保持していることが前記提供装置によって確認された場合に、現金を払い出す提供装置とを備え、前記通信端末が、ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて、前記取引実行通知を前記提供サーバに送信するためのユーザインターフェースを表示し、当該ユーザインターフェースを表示した後の前記近距離無線通信において、前記通信端末の存在を検出したことに応じて、前記端末識別情報又はOTPを前記通信端末から受信する提供システム。」(以下、「甲1先願発明2」という。)

2.甲第2号証の記載事項
甲第2号証の第1頁には、「外部のリーダ/ライタから、モバイルFeliCa ICチップに対して所定のデータ(※1)を第2章で述べる方法を用いて送信することにより、携帯端末内の特定機能を起動することができます(※2)。この様子を図1-1に示します。」と記載されるとともに、以下の図1-1が示されている。


甲第2号証の上記摘記事項および上記図1-1の図示内容を、技術常識を踏まえ、請求項1に係る発明に照らして整理すると、甲第2号証には、
ユーザが携帯端末を外部のリーダ/ライタにかざすと、外部のリーダ/ライタから、携帯端末に搭載されたモバイルFeliCa ICチップに対して所定のデータが送信され、携帯端末内の特定機能が起動されること(以下、「甲2記載事項」という。)
が記載されている。

3.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「Near Field Communication(NFC: 近距離無線通信技術)」、「NFCにはFeliCa技術方式が包含されています。」と記載されている。
甲第3号証の上記摘記事項を、技術常識を踏まえ、請求項1に係る発明に照らして整理すると、甲第3号証には、
NFC(近距離無線通信技術)には、FeliCa技術方式が包含されていること(以下、「甲3記載事項」という。)
が記載されている。

4.甲第4号証の記載事項
甲第4号証の第4頁には、「本ドキュメントは、KDDI株式会社及び沖縄セルラー株式会社が提供するEZ FeliCaにおいて、「外部リーダ/ライタから携帯端末内の特定機能を起動するデータフォーマット仕様書」に準拠した、EZ FeliCa対応コンビネーション機能にかかわる仕様を規定した仕様書である。」と記載されている。
また、第14頁には、以下の図が示されている。



甲第4号証の上記摘記事項および図示内容を、技術常識を踏まえ、請求項1に係る発明に照らして整理すると、甲第4号証には、
外部リーダ/ライタから、携帯端末内の特定機能を起動してユーザが操作する画面を携帯端末に表示させること
が記載されている。

第5 当審の判断
1.申立理由1(特許法第29条の2違反)について
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と、甲1先願発明1とを対比すると、請求項1に係る発明は、「端末通信部は、近距離無線通信によってユーザ端末の存在を検出したことに応じて、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースをユーザ端末に表示させる」のに対し、甲1先願発明1は、通信端末が、ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて、取引実行通知を提供サーバに送信するためのユーザインターフェースを表示するものであって、近距離無線通信によってユーザ端末の存在を検出したことに応じて、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースをユーザ端末に表示させる端末通信部を備えていない点で相違する。
上記相違点について、異議申立人が主張するように、甲2?甲3記載事項を踏まえ、甲第4号証に、「近距離無線通信によって起動される携帯端末内の特定機能として、ユーザインターフェースを携帯端末に表示させる」という事項が記載され、かつ本件特許の出願前の周知技術であったとしても、相違点に係る端末通信部が、近距離無線通信によってユーザ端末の存在を検出したことに応じて、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを携帯端末に表示させることまで周知技術であるとはいえない。
よって、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを表示させるのに、「ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて」である点を「近距離無線通信によってユーザ端末の存在を検出したことに応じて」に転換することは、周知技術の転換であるということはできない。
また、請求項1に係る発明は、上記相違点に係る構成を備えたことにより、ユーザは払出通知をサーバに送信するためのユーザインターフェースを表示するための操作を要することなく簡単な操作で現金を引き出すことができるという格別の効果を奏するものといえる。
したがって、上記相違点が課題解決のための具体化手段における微差であるということはできないから、請求項1に係る発明は甲1先願発明1と同一であるとはいえない。

また、異議申立人は、特許異議申立書35頁の(3)本件特許発明1について(2)の脚注7において、「本件特許発明1の「払出通知」には、甲第1号証の「取引実行通知」以外のものも含まれると解される。・・・もっとも、ステップS531の後に、ステップS517において取引可否判断が行われ、ステップS521で現金が提供される以上、ステップS531において、「現金を払い出す旨の払出通知」が送信されていることは、甲第1号証に記載されているに等しいといえる。」とした上で、特許異議申立書37頁[一応の相違点]において、請求項1に係る発明と甲1先願発明1との相違点を「本件特許発明1では、構成1-D「前記端末通信部は、近距離無線通信によって前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、前記払出通知を前記サーバに送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させる」があるのに対し、甲1発明では、そのような構成に特定されていない点。」とし、同頁のウ 相違点の検討において、「甲1発明では、近距離無線通信(ステップS531)によって通信端末200の存在を検出したことによって、通信端末200から端末識別情報又はOTP、及び払出通知を提供サーバ100Aに送信しているところ、近距離無線通信の後に、これらの情報を提供サーバ100Aに送信する前に、処理を進めてよいかどうかユーザに再度確認させるために、ユーザインタフェースを通信端末200に表示させることは、周知・慣用技術である。そして、このような周知・慣用技術を付加しても、新たな作用効果を奏するものではない。」と主張している。
しかし、本件特許明細書の段落[0025][0032][0033][0041][0056]の記載を参酌すると、請求項1に係る発明の「払出通知」は、払出の依頼の意味合いを含み、ユーザ端末からサーバに送信されるものである。一方、甲第1号証のステップS531の近距離無線通信では、払出の依頼の意味合いをもつ通知は既に取引実行通知として通信端末からサーバに送信されているから、払出の依頼の意味合いを含む通知を送信しておらず、また、ステップS531の近距離無線通信は通信端末と提供装置間の通信であって通信端末からサーバに送信されるものではないから、ステップS531の近距離無線通信が、請求項1に係る発明の「払出通知」に相当する通知を含むとはいえない。
したがって、甲第1号証において、近距離無線通信(ステップS531)によって、通信端末200から払出通知を提供サーバ100Aに送信しているということはできないから、「近距離無線通信の後に、これらの情報を提供サーバ100Aに送信する前に、処理を進めてよいかどうかユーザに再度確認させるために、ユーザインタフェースを通信端末200に表示させることは、周知・慣用技術である。そして、このような周知・慣用技術を付加しても、新たな作用効果を奏するものではない。」ということもできない。
さらに、上記周知・慣用技術との主張に関連する証拠は提出されておらず、異議申立人が提出した甲第1?4号証のいずれにも、異議申立人が主張する周知・慣用技術は記載されていない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明と、甲1先願発明2とを対比すると、請求項2に係る発明は、「端末通信部は、第1の近距離無線通信によって前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、前記払出通知を前記サーバに送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させ」のに対し、甲1先願発明2は、前記通信端末が、ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて、前記取引実行通知を前記提供サーバに送信するためのユーザインターフェースを表示する点(相違点1)、および請求項2に係る発明は、「端末通信部は、前記第1の近距離無線通信の終了後の第2の近距離無線通信において、前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、前記ユーザ識別情報を前記ユーザ端末から受信する」のに対し、甲1先願発明2は、前記通信端末が、前記ユーザインターフェースを表示した後の前記近距離無線通信において、前記通信端末の存在を検出したことに応じて、前記端末識別情報又はOTPを前記通信端末から受信する点(相違点2)で一応相違する。
先に相違点2について検討する。
甲1先願発明2の近距離無線通信は、取引実行通知を提供サーバに送信するためのユーザインターフェースを表示した後に行われるものであり、請求項2に係る発明の第2の近距離無線通信も、第1の近距離無線通信の後、すなわち第1の近距離無線通信によって前記払出通知を前記サーバに送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させた後に行われるものであるから、両者は実質的には相違しない。よって、相違点2は実質的な相違点ではない。
相違点1について検討する。
異議申立人が主張するように、甲2?甲3記載事項を踏まえ、甲第4号証に、「近距離無線通信によって起動される携帯端末内の特定機能として、ユーザインターフェースを携帯端末に表示させる」という事項が記載され、かつ本件特許の出願前の周知技術であったとしても、相違点に係る端末通信部が、第1の近距離無線通信によってユーザ端末の存在を検出したことに応じて、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを携帯端末に表示させることまで周知技術であるとはいえない。
よって、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを表示させるのに、「ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて」である点を「第1の近距離無線通信によって前記ユーザ端末を検出したことに応じて」に転換することは、周知技術の転換であるということはできない。
さらに、請求項2に係る発明は、上記相違点1に係る構成を備えたことにより、ユーザは払出通知をサーバに送信するためのユーザインターフェースを表示するための操作を要することなく簡単な操作で現金を引き出すことができるという格別な効果を奏するものといえる。
したがって、上記相違点1が課題解決のための具体化手段における微差であるということはできないから、請求項2に係る発明は甲1先願発明2と同一であるとはいえない。

(3)請求項3、4に係る発明について
請求項3、4に係る発明は、新たな発明特定事項を加えることにより、請求項2に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項2に係る発明についての判断と同様である。

(4)請求項6に係る発明について
請求項6に係る発明と、甲1先願発明1とを対比すると、請求項6に係る発明は、「前記払出通知を前記サーバに送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させるビーコン信号を、前記近距離無線通信による通信可能範囲より広い範囲に発信するビーコン発信部」を備えるのに対し、甲1先願発明1は、そのような構成を備えていない点で相違する。
上記相違点について検討する。
上記相違点に係るビーコン発信部は、異議申立人が提出した甲第1?4号証のいずれにも記載されておらず、また、周知技術ということもできない。
また、請求項6に係る発明は、上記相違点に係る構成を備えたことにより、ユーザは払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを表示させるための操作を要することなく簡単な操作で現金を引き出すことができるという格別の効果を奏するものといえる。
したがって、上記相違点が課題解決のための具体化手段における微差であるということはできないから、請求項6に係る発明は甲1先願発明1と同一ではない。

請求項6に係る発明について、異議申立人は異議申立書49頁10行-50頁8行(空白行は含まない。)において、
「甲第1号証の段落[0051]には、近距離無線通信の例として、RFIDが挙げられている。そして、甲第1号証の段落[0052]には、「提供装置300にBLEが備えられ、通信端末200にRFIDが備えられていてもよい。」と記載されていることから、近距離無線通信として、BLEとRFIDを用いることが記載されているといえる。また、甲第1号証には「通信が通信端末200に備えられたRFIDを用いて行われる場合は、ステップS531の通信によって、提供装置300では通信端末200の端末識別情報を含む通信結果が生成され、提供装置300から提供サーバ100に通信結果が送信されてもよい。」と記載されているところ(段落[0086])、ステップS531において、通信端末200が提供装置300にOTP及び取引情報582に含まれる端末識別情報を送信する際に用いる近距離無線通信(2-a)として、RFIDを用いることが記載されているといえる。
ここで、RFIDの通信可能範囲は、数十センチメートルであり、BLEの通信可能範囲は、2.5m?50mであることは技術常識である。
そうすると、両発明は次の点のみで一応相違し、それ以外の構成は一致している。
[一応の相違点]
払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを表示させるにあたって、両者は「ユーザインタフェースを表示させる必要に応じて」である点において一致するものの、本件特許発明6では、ビーコン信号の受信に応じてであるのに対し、甲1発明では、ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じてである点で相違する。」
と主張している。
確かに、甲第1号証には、段落[0050]-[0052]に、提供装置と通信端末が行う近距離無線通信として、RFIDやBLE(BluTooth(登録商標) Low Energy)が例として挙げられており、さらに、BLEを用いて提供装置の装置識別情報を伝達するビーコンを発信することが記載されている。
しかしながら、甲第1号証には、提供装置が「前記払出通知を前記サーバに送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させるビーコン信号」を送信することは記載されていない。
また、異議申立人は異議申立書50頁のイ 相違点の検討において、
「上記相違点について検討すると、上記相違点に係る本件特許発明6の構成は、本件特許の出願前における周知技術である。
そして、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを表示させるのに、「ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて」である点を「ビーコン信号の受信に応じて」であることに転換することは、周知技術の転換であって、いずれも必要に応じて実行されるものであるから、格別な作用効果を奏するものではない。」
と主張している。
しかし、提供装置がビーコン信号の受信に応じて払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースをユーザ端末に表示させること、すなわち、払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースをユーザ端末に表示させるビーコン信号を発信することが周知技術であるとまではいえない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。

(5)請求項7に係る発明について
請求項7に係る発明と、甲1先願発明1とを対比すると、請求項7に係る発明は、「現金払出装置と、前記現金払出装置に対応づけて設けられた受付装置とを備え、前記受付装置は、近距離無線通信によってユーザ端末と通信し、近距離無線通信によって前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、現金を払い出す旨の払出通知を送信したユーザ端末のユーザのユーザ識別情報を保持するサーバに前記払出通知を送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させるユーザ端末制御部を有」するのに対し、甲1先願発明1は、受付装置を備えず、ユーザが希望する取り引き手続きが実行されることに応じて、取引実行通知を提供サーバに送信するためのユーザインターフェースを通信端末に表示させる点で少なくとも相違する。
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る受付装置は、異議申立人が提出した甲第1?4号証のいずれにも記載されておらず、また、周知技術ということもできない。
また、請求項7に係る発明は、上記相違点に係る構成を備えたことにより、ユーザは払出通知をサーバに送信するためのユーザインタフェースを表示させるための操作を要することなく簡単な操作で現金を引き出すことができるという格別の効果を奏するものといえる。
したがって、上記相違点が課題解決のための具体化手段における微差であるということはできないから、請求項7に係る発明は甲1先願発明1と同一ではない。

請求項7に係る発明について、異議申立人は異議申立書52頁のウ 相違点の検討において、「一つのシステムを複数の装置によって実現することは周知・慣用技術である。」と主張している。異議申立人が主張するように、一つのシステムを複数の装置によって実現することが本件特許の出願前の周知・慣用技術であったとしても、現金払出システムから、近距離無線通信によってユーザ端末と通信し、近距離無線通信によって前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、現金を払い出す旨の払出通知を送信したユーザ端末のユーザのユーザ識別情報を保持するサーバに前記払出通知を送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させる機能を分離して、当該機能を上記相違点に係る受付装置によって実現することが周知・慣用技術であるとまではいえない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。

(6)請求項9、10に係る発明について
請求項9、10に係る発明は、上記請求項1?4、6、7を引用し、上記1?4、6、7に係る発明をさらに減縮したものであるから、上記(1)?(5)の判断と同様である。

(7)小括
以上のとおり、請求項1、6、7、9及び10に係る発明は甲1先願発明1と、請求項2?4、9、10に係る発明は甲1先願発明2と、同一の発明であるということはできない。
よって、申立理由1によって請求項1?4、6、7、9、10に係る特許を取り消すことはできない。

2.申立理由2(36条6項2号違反)について
異議申立人は、特許異議申立書54頁の5-2 具体的理由である取消理由2(明確性)において、請求項2に記載の「前記第1の近距離無線通信の終了後の第2の近距離無線通信において、前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、前記ユーザ識別情報を前記ユーザ端末から受信する」の、「前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて」との発明特定事項は、「第1の近距離無線通信によって前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて」という意味であるのか、「第2の近距離無線通信によって前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて」という意味であるのか不明確であるから、請求項2に係る発明、および請求項2を引用する請求項3-5、9,10に係る発明は不明確であり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと主張している。
しかしながら、上記発明特定事項は、「前記端末通信部は、第1の近距離無線通信によって前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、前記払出通知を前記サーバに送信するためのユーザインタフェースを前記ユーザ端末に表示させ、」という記載の後に続いて「前記第1の近距離無線通信の終了後の第2の近距離無線通信において、前記ユーザ端末の存在を検出したことに応じて、前記ユーザ識別情報を前記ユーザ端末から受信する」と記載されているのであるから、第1の近距離無線通信、第2の近距離無線通信それぞれにおいて、ユーザ端末の存在を検出したという条件を満たした場合に、後続の処理を行っていることは、文理上明らかである。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の段落[0065][0066]には、「NFC部210は、第1の近距離無線通信によってユーザ端末180の存在を検出したことに応じて、第1の近距離無線通信においてユーザIDをユーザ端末180から受信し、払出確認部200は、第1の近距離無線通信によってユーザ端末180から受信したユーザIDと、払出装置IDとを、サーバ110へと送信させる。そして、サーバ110は、CD100から受信したユーザIDと払出装置IDとを対応づけて保持する。払出確認部200は、NFC部210が第2の近距離無線通信によってユーザIDをユーザ端末180から受信したことに応じて、受信したユーザIDと払出装置IDとを、サーバ通信部220からサーバ110へ送信させる。サーバ110は、CD100からユーザID及び払出装置IDを受信した場合に、受信したユーザIDに対応づけて受信した払出装置IDを保持していることを条件として、CD100が現金を払い出すことをCD100に許可する。以上に説明した現金払出システム5の第1変形例によれば、最初に用いたCD100とは異なるCD100から現金の払い出しを禁止することができる。そのため、ユーザ端末180で払出通知を送信した後にユーザ端末180が盗まれたとしても、他のCD100で現金が引き出されることがない。したがって、現金払出システム5の第1変形例によれば、不正利用される可能性を低減することができる。」との記載がある。上記記載において現金払出システムは、不正利用の防止のために第1の近距離無線通信を行うユーザ端末と、第2の近距離無線通信を行うユーザ端末が一致するか否かを検証しているから、第2の近距離無線通信において、第1の近距離無線通信とは独立してユーザ端末の存在を検知し、このとき検知したユーザ端末からユーザIDを受信していることは自明である。すなわち、上記記載も請求項2の記載の解釈と整合しており、他にこの解釈と矛盾するような記載も見出せない。
したがって、請求項2の上記発明特定事項は、端末通信部が、第1の近距離無線通信の終了後の第2の近距離無線通信において、第2の近距離無線通信によってユーザ端末の存在を検出したことに応じて、ユーザ識別情報を前記ユーザ端末から受信することを意味することが明らかであるから、請求項2に係る発明、および請求項2を引用する請求項3?5、9、10に係る発明は明確である。
よって、申立理由2によって請求項2?5、9、10に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7、9、10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7、9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-06-08 
出願番号 特願2015-109754(P2015-109754)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (G07D)
P 1 652・ 16- Y (G07D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 根本 徳子
関谷 一夫
登録日 2016-07-01 
登録番号 特許第5961727号(P5961727)
権利者 株式会社日本総合研究所 株式会社三井住友銀行
発明の名称 現金払出システム及びプログラム  
代理人 龍華国際特許業務法人  
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