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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C10B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C10B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C10B
管理番号 1329122
異議申立番号 異議2017-700306  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-27 
確定日 2017-06-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第5999869号発明「発電システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5999869号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許異議の申立てに係る特許第5999869号は、平成22年10月14日に、特願2010-232012号として出願され、平成28年9月9日に、発明の名称を「発電システム」、請求項の数を「1」として特許権の設定登録を受けたものである(以下、請求項1に係る特許を「本件特許」という。)。
そして、本件特許異議の申立ては、当該本件特許に対して、平成29年3月27日に、特許異議申立人(清水きみい)より申し立てられたものである。

第2 本件発明

本件特許に係る請求項1の発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
木質原料を炭化して炭と排出ガスとを得る炭化装置と、この炭化装置の前記排出ガスと水との熱交換により第1の蒸気を生成し、前記排出ガスは排気する排熱ボイラー装置と、前記炭を燃料とする炭ボイラー装置と、前記第1の蒸気と前記炭ボイラー装置から生成される第2の蒸気とを導入して圧力が均一化された混合蒸気として排出する混合ヘッダーと、前記混合ヘッダーからの混合蒸気を駆動源として発電する発電装置とを具備することを特徴とする発電システム。」

第3 特許異議申立人からの申立理由と証拠

1 申立理由の概要
特許異議申立人からの申立理由は、次の3点である。
(1) 本件特許は、特許法第29条第2項の規定(進歩性)に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当するため、取り消すべきものである。
(2) 本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである。
(3) 本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである。

2 提出された証拠
特許異議申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
(1) 甲第1号証:特許第4502331号公報
(2) 甲第2号証:特開2004-270600号公報
(3) 甲第3号証:大辞泉増補・新装版、株式会社小学館、1998年11 月20日第一版<増補・新装版>第1刷発行、P.602、「かん ぜんねんしょう【完全燃焼】」の項、P.2295、「ふかんぜん ねんしょう【不完全燃焼】」の項
(4) 甲第4号証-1:グランド現代百科事典6巻、株式会社学習研究社、 1972年5月1日初版第4刷発行、P.47、「かんぜんねんし ょう【完全燃焼】」の項
(5) 甲第4号証-2:グランド現代百科事典11巻、株式会社学習研究社 、1973年3月15日初版第4刷発行、P.598、599、「 すみやき【炭焼(き)】」の項
(6) 甲第4号証-3:グランド現代百科事典19巻、株式会社学習研究社 、1974年1月15日初版第2刷発行、P.280、283、「 もくざいかんりゅう【木材乾留】」、「もくたん【木炭】」の項
(7) 甲第5号証:特開平6-137501号公報

第4 進歩性についての当審の判断

1 甲第1号証に記載された発明(甲1発明)
甲第1号証には、その実施例1の記載(【0019】?【0026】、【図1】)などからみて、特許異議申立人が主張するような(特許異議申立書8頁参照)、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「木質系バイオマス20を加熱して熱分解ガス22と高カロリーで均質な炭化物23を製造する炭化炉4と、
熱分解ガス22を燃焼させ、高温燃焼ガス21を生成するガス燃焼室5aと、
少なくともガス燃焼室5aからの高温燃焼ガス21の顕熱を利用して高温蒸気27を生成するボイラ6と、
炭化物23を燃焼させ、高温燃焼ガス21を生成する炭化物燃焼室5bと、
少なくとも炭化物燃焼室5bからの高温燃焼ガス21の顕熱を利用して高温蒸気27を生成するボイラ6と、
生成した高温蒸気27を利用して蒸気タービンに連結された発電機により電力を発生させる発電設備12と、
を備える発電システム。」

2 本件発明と甲1発明の対比・判断
本件発明と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違し、当該相違点に係る本件発明の技術的事項は、特許異議申立人が提出した甲各号証の記載を参酌しても、当業者にとって容易なこととはいえない、と判断する。
相違点:本件発明は、「炭化装置の前記排出ガスと水との熱交換により 第1の蒸気を生成し、前記排出ガスは排気する排熱ボイラー装 置」と、「前記第1の蒸気と前記炭ボイラー装置から生成され る第2の蒸気とを導入して圧力が均一化された混合蒸気として 排出する混合ヘッダー」を具備しているのに対して、甲1発明 は、これらを具備していない点。
以下、上記判断理由について詳述する。
(1) 甲1発明は、炭化炉4の熱分解ガス22を、ガス燃焼室5aにて一旦燃焼し、その高温燃焼ガス21の顕熱を利用して、ボイラ6にて、高温蒸気27を生成するものであるから、本件発明のように、炭化装置にて得られた排出ガスそのもの(その後、一旦燃焼させるものではない。)と水との熱交換により蒸気を生成し、当該排出ガスをそのまま排気するものではない。すなわち、甲1発明は、本件発明の「炭化装置の前記排出ガスと水との熱交換により第1の蒸気を生成し、前記排出ガスは排気する排熱ボイラー装置」に相当する設備を具備していないといえる。
この点につき、特許異議申立人は、甲1発明の「ガス燃焼室5a」と「ボイラ6」を合わせて、本件発明の「排熱ボイラー装置」に相当する旨主張するが(特許異議申立書10頁)、この場合においても、当該ガス燃焼室5aにおける燃焼工程が介入することに変わりはないから、当該主張は当を得たものとはいない。
そして、甲各号証を仔細にみても、本件発明の上記「排熱ボイラー装置」を容易想到とするに足りる記載ないし示唆は見当たらない。
(2) その上、甲1発明においては、ガス燃焼室5a及び炭化物燃焼室5bにて生成された各高温燃焼ガス21は、一つのボイラ6に集約され、一系統の高温蒸気27を生成するものであるから、甲1発明は、本件発明のように、2つのボイラーにより生成される、第1の蒸気、第2の蒸気という二系統の蒸気を、混合ヘッダーにより混合蒸気とするような場面を予定したものではないことは明らかである。すなわち、甲1発明は、本件発明の「前記第1の蒸気と前記炭ボイラー装置から生成される第2の蒸気とを導入して圧力が均一化された混合蒸気として排出する混合ヘッダー」に相当する設備を具備していないといえる。
この点につき、特許異議申立人は、甲第2号証及び甲第5号証に記載された、混合ヘッダーに関する技術的事項との組合せを主張するが、仮にこれらの証拠に混合ヘッダーに関する技術的事項が開示されているとしても、上記のとおり、甲1発明には、そもそも当該混合ヘッダーを適用する余地はないのであるから、当該主張を採用することはできない。
そして、甲各号証を仔細にみても、甲1発明に上記「混合ヘッダー」を組み合わせる動機付けとなる記載ないし示唆は見当たらない。
(3) 以上のとおり、甲1発明は、少なくとも、本件発明における「炭化装置の前記排出ガスと水との熱交換により第1の蒸気を生成し、前記排出ガスは排気する排熱ボイラー装置」と、「前記第1の蒸気と前記炭ボイラー装置から生成される第2の蒸気とを導入して圧力が均一化された混合蒸気として排出する混合ヘッダー」に相当する設備を具備していない点において、本件発明と相違するところ、当該相違点についての特許異議申立人の主張は妥当なものではなく、当該相違点に係る本件発明の技術的事項を容易想到と認めるに足りる証拠も存しない。
そして、本件発明は、当該相違点に係る本件発明の技術的事項を具備することにより、炭化装置から排出される熱エネルギーを有効利用できるなど(本件特許明細書の【0007】など)の有利な効果を奏するものであるから、本件発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 実施可能要件及びサポート要件についての当審の判断

標記要件についての特許異議申立人の主張は、要するに、本件発明は、「木質原料を炭化して炭と排出ガスとを得る炭化装置」を具備し、その詳細について記載した本件特許明細書の【0018】には、炭化原料は、完全燃焼雰囲気下で燃焼され、炭化される旨説明されているが、甲第3号証ないし甲第4号証-3に記載されるとおり、一般に、炭化物(炭)は、完全燃焼雰囲気下で製造し得るものではないことに照らすと、当該炭化装置についての発明の詳細な説明の記載は、当業者がこれを実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないし、当該炭化装置を具備する本件発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるともいえない、という点にあると解される。
この点について検討すると、確かに、炭化原料のすべてが完全燃焼されてしまえば、燃料として有益な炭化物(炭)を得ることはできない。しかしながら、本件特許明細書の上記段落には、「完全燃焼雰囲気下で燃焼され」と説明されているものの、「完全燃焼させる」とは記載されていない。よって、これは、炭化原料のすべてが完全燃焼することをいうのではなく(炭化原料のすべてが完全燃焼するとの解釈は、炭ボイラー装置において炭を燃料として使用することと明らかに矛盾するから、そのような解釈は合理的でない。)、単に、通常の炭化炉において採用されているような無酸素あるいは低酸素雰囲気下における炭化処理よりも、高い酸素濃度雰囲気下において処理することを意図したものと解するのが相当であるから、(得られる炭は、多少、燃料としての性能に劣るものであるとしても)当該記載を根拠に、炭化物(炭)が全く生成できないということはできない。
さらにいうと、本件発明の炭化装置は、本件特許明細書の【図2】及び【0015】の説明を斟酌すると、炉体11の他端部(図2の右側)は、開放状態となっているため高酸素雰囲気下にあると予想され、逆に、その一端部(図2の左側)は、さほど高い酸素雰囲気とはなっていない(低酸素雰囲気下にある)と予想される。そして、このような状況下における、当該炭化装置における挙動は、次のように考えるのが合理的である。すなわち、当該一端部から挿入された炭化原料は、低酸素雰囲気下において徐々に炭化され(熱分解され、熱分解ガスの発生を伴う。)、当該他端部付近(高酸素雰囲気下)において、当該熱分解ガスの燃焼による炉内温度の上昇や未炭化成分の更なる熱分解が進行するものと解するのが自然である。
したがって、本件特許明細書の上記【0018】の記載をもって、実施可能要件違反あるいはサポート要件違反の要因になるとまではいえない。
以上のとおりであるから、当該特許異議申立人の主張を採用することはできず、本件特許に係る特許出願が、特許法第36条第4項第1号又は第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第6 結び

以上の検討のとおり、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいえず、同法第113条第2号又は第4号に該当するとは認められないから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-06-06 
出願番号 特願2010-232012(P2010-232012)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C10B)
P 1 651・ 536- Y (C10B)
P 1 651・ 121- Y (C10B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 日比野 隆治
國島 明弘
登録日 2016-09-09 
登録番号 特許第5999869号(P5999869)
権利者 黒岩 陽一郎 吉田 豊
発明の名称 発電システム  
代理人 村中 克年  
代理人 栗原 浩之  
代理人 村中 克年  
代理人 栗原 浩之  
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