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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22D
管理番号 1329131
異議申立番号 異議2017-700295  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-21 
確定日 2017-06-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6002271号発明「金型分流子およびそれを備えた鋳造用金型」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6002271号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6002271号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成27年4月1日に特許出願され、平成28年9月9日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 西谷敬之(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件特許発明

特許第6002271号の請求項1ないし7の特許に係る発明(以下、「本件発明1ないし7」という。また総称する場合は「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものである。


第3 申立理由の概要

1 特許異議申立人の主張

特許異議申立人は、下記2の証拠方法を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張し、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものとしている。

2 証拠方法

甲第1号証:特開2006-239738号公報

甲第2号証:特開2010-75939号公報

甲第3号証:特開2008-137022号公報

甲第4号証:特開2007-275989号公報


第4 各甲号証の記載事項

1 甲第1号証

(1)「鋳造に際しては、図2(a)に示すように、まずスプールブッシュ4の後端側に接続された鋳造機の射出スリーブ5内に、ラドル6により汲み出された溶湯が流し込まれ、次いで、図2(b)に示すようにプランジャー7が射出スリーブ5の中を前進することによって溶湯がスプールブッシュ4、スプールコア10のランナー11を経てキャビティC内に押し込まれ、図2(c)に示すようにプランジャー7がスプールブッシュ4内に入りこむことによって、キャビティC内への溶湯の充填が完了し、溶湯が凝固した後、型開きすることによって、ダイカスト製品Pが得られる。
なお、このようなスプールコアに関しては、例えば特許文献1に開示されたものがある。」(段落【0003】)

(2)「上記スプールコア10は、鋳造機から金型のキャビティC内へ溶湯を充填するに際して、プールブッシュと共に溶湯の導入路としての役割を担うものであって、溶湯が最初に接触する部位に相当することから、特に激しい冷熱サイクルを繰返し受ける部品であると共に、鋳物形状のうち、最も厚肉になるビスケット部やランナーと接しているため、相当な冷却効率が要求される部品である。さらに、溶湯を流し、固化させる機能が要求されるため、冷却手段を設けることが考えられる。」(段落【0004】)

(3)「(実施例1)
図1(a)?(c)は、本発明のスプールコアの一実施例を示すものであって、当該実施例に係わるスプールコア10は、図2に示した金型1における可動型3の下端寄りの位置に配設されるものであって、可動型3の嵌合する円柱部11と、該円柱部11の前端側(固定型2の側)に位置する円錐台状部12から成る一体構造をなし、円錐台状部12の上部及び円柱部11の前端部には、ランナー13が溝状に形成されている。
そして、円錐台状部12の正面部及びランナー13の溝表面、すなわち溶湯との接触面に沿って、温度調整用流体としての冷却水を流通させるための温調回路14が形成されている。」(段落【0020】)

(4)「当該温調回路14は、円錐台状部12の正面部及びランナー13の溝表面に平行に配置された複数の水平流路と、隣接する水平流路の端部同士をそれぞれ連結して全体を合流や分岐のない連続した流路にする連結流路と、図中最下部の水平流路の始端側に連結された冷却水供給路と、図中最上部の水平流路の終端に連結された冷却水排出路から構成されている。」(段落【0021】)

(5)図2から、スプールコア10とプランジャー7との間にビスケット部が形成されていることが読み取れる。

上記の摘記事項(1)ないし(4)並びに認定事項(5)の記載からみて、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「射出スリーブ5の中を前進して溶湯を押し込むプランジャー7との間にビスケット部を形成するスプールコア10であって、
円柱部11と該円柱部11の前端側に位置する円錐台状部12から成るとともに、前記プランジャー7により押し込まれた溶湯を前記ビスケット部からキャビティCへ導くランナー13が、円錐台状部12の上部及び円柱部11の前端部に溝状に形成された一体構造と、
円錐台状部12の正面部及びランナー13の溝表面に沿って形成され、冷却水を流通させる温調回路14とを備え、
前記温調回路14に前記ビスケット部と対向する水平流路及び連結流路が形成され、
前記温調回路14に前記水平流路及び連結流路と連通するとともに前記ランナー13と対向する水平流路及び連結流路が形成され、
前記温調回路14は、外部から流入した冷却水を最下部の水平流路の始端側に連通させる冷却水供給路と、最上部の水平流路の終端側に連通した冷却水排出路とを有し、
前記ランナー13の溝表面と前記温調回路14の前記ランナー13と対向する水平流路及び連結流路とが平行に配置されているスプールコア10。」

2 甲第2号証

(1)「ダイカスト金型10は、ランナー16、ゲート17を介してキャビティ15と連通する筒状のスプルブッシュ(スリーブ)40を備えている。スプルブッシュ40内には、プランジャーチップ45が進退可能に設けられ、プランジャーチップ45が前進して図示しない溶湯を押圧することで、溶湯をランナー16、ゲート17を介してキャビティ15に送り込むように構成されている。」(段落【0015】)

(2)「また、スプルコア50は、衝突部55とは反対側(基端側)の端部が開口した内部凹所57を備えている。この内部凹所57によって、衝突部55およびランナー部56は、必要な強度を保持する肉厚を有するとともに、内部から冷却するのに適した、つまり必要以上に厚すぎない肉厚に形成されている。内部凹所57は、開口端側から衝突部55に向けて先細り状のテーパが付いた実質的に裁頭円錐形の形状を有している。」(段落【0019】)

(3)「スプルコア50の内部凹所57に収まる部分の冷却用部材60は、スプルコア50のテーパが付いた内部凹所57の形状に相当する輪郭から、衝突部55の内側領域およびランナー部56の内側領域に、冷却媒体の流路を形成する形状に構成されている。すなわち、冷却用部材60は、スプルコア50の衝突部55の内面(裏面)側に、冷却媒体を通す第1の領域(衝突部55の内側領域)を備え、また、衝突部55に連なるランナー部56の内面(裏面)側に、冷却媒体を通す第2の領域(ランナー部56の内側領域)を備え、そして、この両領域を除くスプルコア50の内面に接する領域には、冷却媒体を通さない形状に構成してある。」(段落【0021】)

(4)「また、冷却用部材60がスプルコア50の内部凹所57に収められたとき、冷却用部材60の先端部から続く上部には、スプルコア50のランナー部56の内面(裏面)との間に空間を形成し、これにより冷却媒体を流すことのできる凹部66が形成されている。凹部66の軸方向長さ(図2、図5で左右方向長さ)は、ランナー部56を効果的に冷却できるように、ランナー部56の軸方向長さより長く形成されている。同様に、凹部66の円周方向長さ(図6参照)は、ランナー部56を効果的に冷却できるように、ランナー部56の円周方向長さ(図4参照)より長く形成されている。凹部66の深さはほぼ一定である。したがって、凹部66が、スプルコア50のランナー部56の内側領域における流路を構成する。」(段落【0023】)

(5)「冷却用部材60は、さらに、第1の領域(衝突部55の内側領域)における流路としての凹溝65に冷却媒体を供給する冷却媒体供給路67および、第2の領域(ランナー部56の内側領域)における流路としての凹部66から冷却媒体を排出する冷却媒体排出路68を内部に備えている。冷却用部材60がスプルコア50の内部凹所57に収められたとき、スプルコア50の開口端から外方へ突出する部分(の下部)に、冷却媒体供給路67の入口ポート67iおよび冷却媒体排出路68の出口ポート68oが開口している。」(段落【0025】)

(6)図2ないし図4から、スプルコア50が裁頭円錐形の部分に、プランジャーの移動方向に沿って延びる外周面及び内周面を有していることが読み取れる。

3 甲第3号証

(1)「金型分流子Aの内部には、冷却水やオイルなどの冷媒を流通させてその周辺を冷却するための冷却室5が軸方向に抉るように形成される。従って、この冷却室5の前方壁A’及び反対側の開口は、別形成された封止壁部材6でもって、溶接等の後加工により水密状に封止される。」(段落【0017】)

(2)「そして封止壁部材6には、金型の外部に通じている連通管7,7を接続する冷媒流入口61及び冷媒流出口62が形成されると共に、その外周面が冷却室5の内周面と接触し且つ当該冷却室5の内奥との間で冷媒貯留部8を画成する画成部63を突設せしめ、更にその画成部63の外周面に、冷媒流入口61から上記冷媒貯留部8に至る往路用冷却溝64と、冷媒貯留部8から冷媒流出口62に至る復路用冷却溝65がそれぞれ螺旋状に形成される。」(段落【0018】)

(3)「すなわち、封止壁部材6は、冷却室5の開口を封止する封止部60と、冷却室5の内周面に接触する略円柱形状の画成部63とで構成され、封止部60に金型の外部に通じている連通管7,7を接続する冷媒流入口61と冷媒流出口62が形成され、画成部63の外周面に往路用冷却溝64と復路用冷却溝65とが形成される。」(段落【0019】)

(4)「封止壁部材6の画成部63は、その先端部を除く外周面が全周にわたって冷却室5の内周面に緊密に接触するように略円柱形状に形成されると共に、その先端部と冷却室5の前方壁A’の内側との間で冷媒貯留部8を画成し得る長さに形成される。」(段落【0020】)

(5)「そして、封止壁部材6の画成部63の外周面には、封止部60に形成された冷媒流入口61から画成部63の先端部(冷媒貯留部8)に至る往路用冷却溝64と、画成部63の先端部(冷媒貯留部8)から封止部60の冷媒流出口62に至る復路用冷却溝65が、それぞれを当該画成部63の外周面に沿って螺旋状に形成される。この際、往路用冷却溝64を流通する冷媒と復路用冷却溝65を流通する冷媒とが流通過程で混ざらないように、画成部63の外周面が全周にわたって冷却室5の内周面に緊密に接触するように形成することが好ましい。」(段落【0021】)

(6)図2から、封止壁部材6が、冷媒貯留部8から復路用冷却溝65へ導かれた冷却媒体を外部に排出させる流出流路を有することが読み取れる。

4 甲第4号証

(1)「本実施例1の分流子は、図4に示すように熱間工具鋼で作られた本体部1と固定部2とからなる。この分流子は、本体部1の分流区画面11の背向側(裏側)に設けられた凹部10に固定部2を嵌装し、溶接して一体化したものである。」(段落【0022】)

(2)「本体部1は図1及び図4より明らかなように背向側が円形で分流区画面11側が、図1上、上方が欠けた円錐台となり、欠けた部分が斜面状となっている。分流区画面11は頂部に当たる欠けた円形部分111と傾斜面112とからなっている。本体部1の背向側は開口部が図3に示す奴形状で図3の下方部分が深い穴となり上方部が斜め状の穴となっている。この凹部10を区画する最深部の底面121と傾斜面122で主流路面12を構成している。この主流路面12には補強部とガイド壁とを兼ねる多数の突壁13が形成されている。これら突壁13は図3に符号Bで示す部分から符号Cで示す部分に冷却水をガイドするように、BからCに間隔を隔てて延びている。また、突壁13の頂部は図4に示すように固定部2の副流路面21に当接する高さとなっている。また、図4から明らかなように、本体部1の主流路面12は分流区画面11と互いに背向する関係にあり、主流路面12は分流区画面11の延びる方向に広がり、主流路面12と分流区画面11との間隙(型部分の厚さ)はほぼ一定となっている。」(段落【0023】)

(3)「固定部2は図2にその裏側面、図4にその断面図を示すように、裏側面はやっこ形状の平面で構成され、中央部に冷却水の導入孔22、導出孔23が開口している。副流路面21側は、本体部1の凹部12とほぼ型対象の突部となっている。導入孔22及び導出孔23の他端はそれぞれ副流路面21に開口している。この固定部2は本体部1の凹部12に嵌装され、裏側面で溶接されて一体化される。副流路面21は主流路面12の突壁13の頂部に当接した状態となっている。本体部1の主流路面12と固定部2の副流路面21との間に間隙がほぼ等しい空間が形成され、この空間が冷却水の流路3となる。また、固定部2の導入孔22は主流路面の図3に示す符号Bで示す流路3の部分に開口し、導出孔23は符号Cで示す流路の部分に開口する。」(段落【0024】)


第5 判断

1 本件発明1について

(1)本件発明1と甲1発明を対比する。

ア 甲1発明における「プランジャー」、「スプールコア」、「ランナー」、「冷却水供給路」及び「冷却水排出路」は、本件発明1における「プランジャチップ」、「金型分流子」、「ランナー部」、「流入流路」及び「流出流路」にそれぞれ相当する。

イ 射出スリーブ5の中を前後移動するプランジャー7が、中心軸線に沿って移動するものであることは、技術常識にすぎず、甲1発明のプランジャー7が「射出スリーブ5の中を前進して溶湯を押し込む」ことは、本件発明1のプランジャチップが「中心軸線に沿って移動して溶湯を射出する」ことに相当する。

ウ 甲1発明の円柱部11及び円錐台状部12が中心軸線に沿って形成されていることは、図面から見て明らかであるから、甲1発明の「円柱部11と該円柱部11の前端側に位置する円錐台状部12から成る」「一体構造」は、本件発明1の「前記中心軸線に沿って略円錐台状に形成される外周面を有する」「本体部」に相当するものである。また、甲1発明の「前記プランジャー7により押し込まれた溶湯を前記ビスケット部からキャビティCへ導くランナー13が、円錐台状部12の上部及び円柱部11の前端部に溝状に形成された一体構造」が、本件発明1の「前記プランジャチップにより射出された溶湯を前記ビスケット部からキャビティ部へ導くランナー部が上部の前記外周面に形成された本体部」に相当することも、当業者には明らかである。

エ 甲1発明の「冷却水を流通させる温調回路14」は、本件発明1の「冷却機構」に相当する。

オ 甲1発明の「前記温調回路14に前記ビスケット部と対向する水平流路及び連結流路が形成され」た点は、本件発明1の「第1空間が形成され」た点と対比すると、「前記冷却機構に、前記ビスケット部と対向する第1空間が形成され」た点で一致する。

カ 甲1発明の「前記温調回路14に前記水平流路及び連結流路と連通するとともに前記ランナー13と対向する水平流路及び連結流路が形成され」た点は、本件発明1の「第2空間が形成され」た点と対比すると、「前記冷却機構に、前記第1空間と連通するとともに前記ランナー部と対向する第2空間が形成され」た点で一致する。

キ 甲1発明の「前記温調回路14は、外部から流入した冷却水を最下部の水平流路の始端側に連通させる冷却水供給路と、最上部の水平流路の終端側に連通した冷却水排出路とを有し」た点は、本件発明1の「前記冷却機構は、外部から流入した冷却媒体を前記第1空間の下方であって前記中心軸線よりも下方の領域へ流通させる流入流路と、前記第1空間から前記第2空間へ導かれた冷却媒体を外部へ流出させる流出流路とを有し」た点に相当する。

そうすると、両者は、
「中心軸線に沿って移動して溶湯を射出するプランジャチップとの間にビスケット部を形成する金型分流子であって、
前記中心軸線に沿って略円錐台状に形成される外周面を有するとともに前記プランジャチップにより射出された溶湯を前記ビスケット部からキャビティ部へ導くランナー部が上部の前記外周面に形成された本体部と、
冷却機構とを備え、
前記冷却機構に、前記ビスケット部と対向する第1空間が形成され、
前記冷却機構に、前記第1空間と連通するとともに前記ランナー部と対向するように前記中心軸線に沿って延びる第2空間が形成され、
前記冷却機構は、外部から流入した冷却媒体を前記第1空間の下方であって前記中心軸線よりも下方の領域へ流入させる流入流路と、前記第1空間から前記第2空間へ導かれた冷却媒体を外部へ流出させる流出流路とを有している金型分流子。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件発明1の金型分流子が、「前記中心軸線に沿って略円錐台状に形成される内周面」「を有する」「本体部」と、「前記中心軸線に沿って略円錐台状に形成されるとともに前記内周面に接触した状態で配置される冷却機構」とを備え、前記本体部と前記冷却機構とを嵌め合わせることで、「前記冷却機構の先端部と前記本体部の前記内周面との間に」「前記中心軸線に直交する断面が略円形の第1空間」及び「前記冷却機構の上部に形成される溝部と前記本体部の前記内周面との間に」「前記中心軸線に沿って延びる第2空間」が形成され、「前記ランナー部を形成する前記外周面の前記中心軸線に対する第1傾斜角度と前記第2空間を形成する前記本体部の前記内周面の前記中心軸線に対する第2傾斜角度とが一致している」構成を有するのに対して、甲1発明のスプールコア10は、円柱部11と該円柱部11の前端側に位置する円錐台状部12から成る一体構造で形成され、当該一体構造に、前記ランナー13の溝表面と前記温調回路14の前記ランナー13と対向する水平流路及び連結流路とが平行に配置されている点。

(2)相違点について以下検討する。

金型分流子を「略円錐台状に形成される内周面を有する本体部」及び「略円錐台状に形成されるとともに前記内周面に接触した状態で配置される冷却機構」を嵌め合わせることで形成した点は、例えば、甲第2号証に、スプルコアがプランジャーチップの移動方向に沿って裁頭円錐形状に延びる内面を有し、冷却用部材が前記プランジャーチップの移動方向に沿って裁頭円錐形状に形成されるとともに前記内周面に接触した状態で配置され、前記冷却用部材の先端部と前記スプルコアの内面との間に第1の領域が形成され、前記冷却用部材の上部に形成される凹部と前記スプルコアの前記内面との間に第2の領域が形成され、前記冷却用部材が冷却媒体供給路及び冷却媒体排出路を有する、スプルコアと冷却用部材からなる組立体として記載されている。
また、甲第3号証には、金型分流子の内周面が略円錐台状である点、封止壁部材が略円錐台状である点及び封止壁部材の上部に形成される溝部と金型分流子の内周面との間に復路用冷却溝が形成される点は、記載されていないものの、金型分流子がプランジャチップの移動方向に沿って円柱形状に延びる内周面を有し、封止壁部材が前記プランジャチップの移動方向に沿って円柱形状に形成されるとともに前記内周面に接触した状態で配置され、前記封止壁部材の先端部と前記金型分流子の前記内周面との間に冷媒貯留部が形成され、前記封止壁部材に形成される溝部と前記金型分流子の前記内周面との間に復路用冷却溝が形成され、前記封止壁部材は流出流路を有する、金型分流子と封止壁部材からなる組立体が記載されている。
さらに、甲第4号証には、本体部の内周面が略円錐台状である点、固定部が略円錐台状である点及び固定部の上部に形成される溝部と本体部の内周面との間に流路が形成される点については、記載されていないものの、本体部が内周面を有し、固定部が前記内周面に接触した状態で配置され、前記固定部の先端部と前記本体部の前記内周面との間に流路が形成され、前記固定部の上部と前記本体部の前記内周面との間に流路が形成され、前記固定部は導入孔と導出孔とを有する、分流子が記載されている。
しかしながら、甲1発明において、スプールコアを一体構造として、分割面が隙間としてスプールコアの内部に残ることのないよう前記分割面同士で接合し一体化することは、分割された部品からスプールコアを製造する際における、甲1発明の冷却効率の向上という課題を解決するための必須の技術的事項であるといえるところ、甲第2?4号証には、前記スプルコアと前記冷却用部材とを、継ぎ目を隙間として残すことのないよう、継ぎ目同士で接合し一体化することは記載されていないため、甲1発明に、甲第2?4号証に記載された事項を適用することは甲1発明の課題に反することになるから、そのようにする動機付けを見出すことはできない。

したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。


2 本件発明2ないし7について

本件発明2ないし7は、本件発明1をさらに減縮したものであるから、上記1に示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

第6 むすび

したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-06-14 
出願番号 特願2015-75102(P2015-75102)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B22D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川崎 良平  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 平岩 正一
柏原 郁昭
登録日 2016-09-09 
登録番号 特許第6002271号(P6002271)
権利者 株式会社スグロ鉄工
発明の名称 金型分流子およびそれを備えた鋳造用金型  

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