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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
管理番号 1329137
異議申立番号 異議2015-700302  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-14 
確定日 2017-04-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5739614号発明「アミノ酸を高濃度に含有する茶飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5739614号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5について、訂正することを認める。 特許第5739614号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 同請求項5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5739614号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成27年5月1日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人花崎健一より特許異議の申立てがなされ、平成28年3月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年5月31日に意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成28年6月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成28年9月5日に意見書の提出がなされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正し、その結果として請求項1を引用する請求項2?4も、以下の事項により特定されるとおりの請求項2?4として訂正することを請求する(訂正事項1)。
「【請求項1】 加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料であって、以下(a)?(c)及び(e)を含有する茶飲料:
(a)アミノ酸 40ppm以上
(b)カフェイン 200ppm以上
(c)フラネオール 50ppb以上
(e)カテキン類 600ppm以下。
【請求項2】 さらに(d)ピラジン類を含有し、(c)フラネオールの(d)ピラジン類に対する割合((c)/(d))が2.0以上である、請求項1に記載の茶飲料。
【請求項3】 (c)フラネオール及び/又は(d)ピラジン類が、茶葉の抽出物として添加されたものである、請求項2に記載の茶飲料。
【請求項4】 pHが6.4?7.0である、請求項1?3のいずれか1項に記載の茶飲料。」(下線は訂正箇所を示す。)
さらに、特許権者は、特許請求の範囲の請求項5を以下の事項により特定されるとおりの請求項5として訂正することを請求する(訂正事項2)。
「【請求項5】 アミノ酸を40ppm以上含有し、かつ加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料の加熱劣化臭を緩和する方法であって、該飲料の加熱殺菌前に、該飲料中のカフェイン量を200ppm以上、フラネオール量を50ppb以上、及びカテキン類量を600ppm以下に調整することを含む、方法。」
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、特許明細書の請求項1に「加熱殺菌して製造される容器詰茶飲料」とあるのを、「加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料」に訂正するものであって、訂正前の記載では、「茶飲料」が容器詰めされた後のものとも、あるいは容器詰めされる前のものとも理解できるため、不明瞭であったものを、容器詰めされた後のものであることを明らかにするためのものである。
訂正事項2についても、上記訂正事項1と同様に、「茶飲料」が容器詰めされた後のものであることを明らかにするためのものである。
したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正前の請求項1で特定される「容器詰茶飲料」が「含有する」「フラネオール 50ppb以上」に関して、特許明細書の段落【0017】に「本発明におけるフラネオールは、最終製品(加熱殺菌処理された茶飲料)中、50?200ppb、好ましくは50?100ppb程度である。」との記載があり、フラネールは、加熱殺菌処理された茶飲料である最終製品について特定されていること、また、「加熱殺菌」に関して、段落【0028】に「調合液を殺菌して容器に充填する、又は容器に充填した後に加熱殺菌(レトルト殺菌等)を行うことで、容器詰茶飲料とすることができる。本発明における加熱殺菌とは、調合液を110℃以上に加熱することにより、調合液を殺菌することをいい、例えば、レトルト殺菌や、UHT殺菌などの処理が挙げられる。例えば缶飲料とする場合には、調合液を缶に所定量充填し、レトルト殺菌(例えば、110?140℃、1?数十分)を行う。ペットボトルや紙パック、カップ、瓶飲料とする場合には、例えば120?150℃で1?数十秒保持するUHT殺菌等を行い、所定量をホットパック充填或いは低温で無菌充填する。」との記載があり、容器詰茶飲料は、加熱殺菌され容器に詰められたものであると認められる。
さらに、「【0036】
実施例1.フラネオール添加茶飲料(1)
原料茶としてアミノ酸含量の高い一番茶かぶせ茶を用い、茶葉の乾燥重量に対して25倍量の水を抽出溶媒として用いた。55℃の温水で7分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、抽出液Aを得た。
【0037】
この抽出液Aをアミノ酸含量が75ppmとなるように希釈した(比較例1)。これに、フラネオール(純度95%以上)を表1の濃度になるように添加し、L-アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpHを6.7に調整した後、125℃×7分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料(本発明品1?3)を得た。
【0038】
得られた緑茶飲料のフラネオール、ピラジン類、アミノ酸、カフェイン及びカテキン含有量を測定し、官能評価を実施した。」との記載からも、請求項1の「(a)アミノ酸 40ppm以上
(b)カフェイン 200ppm以上
(c)フラネオール 50ppb以上
(e)カテキン類 600ppm以下」の各数値が、加熱殺菌した後の数値を特定していることとも符合する。
したがって、訂正事項1の容器詰茶飲料が容器詰めされた後のものであることを特定する「加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料」は願書に添付した明細書に記載されていた事項であって、新規事項を追加するものではなく、また、請求項1?4の一群の請求項ごとに請求された訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
また、訂正事項2の「加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料」についても、訂正事項1についてと同様に、願書に添付した明細書に記載されていた事項であって、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(3)むすび
したがって、上記訂正請求による訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕、5について訂正を認める。
第3 取消理由についての判断
1 訂正請求項1?5に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、上記「第2・1 訂正の内容」において示したとおりのものである。
2 取消理由「第2 特許法第36条第6項第2号(明確性)」及び「第3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)」について
上記訂正事項1及び2により、特許法第36条第6項第2号(明確性)及び特許法第36条第6項第1号(サポート要件)についての取消理由は解消した。
3 取消理由「第4 特許法第29条第2項(容易性)」について
(1) 引用刊行物
取消理由に引用した引用例1(特開平6-343389号公報)には、以下の各記載がある。
(1a)「【0002】
【従来の技術】近年、煎茶、かま入り茶(ほうじ茶)等の緑茶の容器詰飲料の自動販売機による販売が増加している。現在、容器詰緑茶飲料は50?60℃で加温販売される場合も、常温以下たとえば10℃付近に冷却されて販売される場合も、茶葉抽出工程はほとんど同一であり、通常60?80℃で数分の抽出条件で製造されている。」(下線は当審で付与したものである。以下同様である。)
(1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、緑茶飲料の飲用温度が風味嗜好性に及ぼす影響について詳しく研究した結果、従来の60℃以上の抽出では高温飲用では風味嗜好性に優れるが、低温飲用では渋味、収歛味が強すぎて風味嗜好性が劣ることを見いだした。従来、煎茶などの緑茶は60-80℃の熱時に飲用されるものであり、常温以下の、例えば10℃付近の低温で飲用される茶飲料の製造条件や成分組成についてはどのような範囲が嗜好性に優れるのかを明らかにした例が無かった。」
(1c)「【0004】本発明は、上記知見にもとずきなされたものであって、常温以下に冷却された状態で販売され飲用される場合に渋味、収歛味が強すぎることなく、風味に優れた低温飲用用の容器詰緑茶飲料およびその製造方法を提供しようとするものである。」
(1d)「【0009】茶の渋味、収歛味成分の本態がエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのカテキン(植物ポリフェノール)類にあり、その中でも特にエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなど没食子酸エステル型カテキン類が支配的物質であることはすでに知られている。・・・」
(1e)「【0017】抽出用水に対する乾燥茶葉の使用重量比は1%とし、250メッシュのナイロン製濾袋に入れた後、ときどきゆるやかに攪拌しながら所定の温度・時間条件で抽出し、抽出液はプレート式熱交換器で95℃まで加熱し、これを200ml容の接着缶に窒素ガスフロー下で充填・密封し、ただちに120℃、6分間殺菌し、冷却後官能テストに供試した。この試料の一部を用い、カテキン類、カフェイン、アミノ酸類の分析を高速液体クロマトグラフ及びアミノ酸分析計を用いて行った。
【0018】官能テストは財団法人東洋食品研究所のパネルにつき、茶の渋味、収歛味を予め識別できるかどうかの予備テストを行った後10名を選抜し、あらかじめ飲料を10℃および55℃に保持し、直前に水色による影響を避けるため赤色グラスに注いでパネルに与え1-5点(高い方が嗜好性に優れる)の評点法で評価させた。
【0019】得られた諸結果を表1、2、3に示した。また、抽出条件と没食子酸エステル型カテキン類の抽出挙動を図1に示した。」
(1f)「【表1】


(1g)「【表2】


(1h)上記(1f)の表1によると、煎茶飲料缶詰の総カテキン類(A)(mg/100ml)、没食子酸エステル型カテキン類(B)(mg/100ml)、(B)/(A)(%)、アミノ酸(mg/100ml)、及びカフェイン(mg/100ml)の数値は、抽出条件80℃-3分の場合に、それぞれ58.5、29.4、50.2、13.0及び24.3、並びに70℃-3分の場合に、それぞれ49.7、23.8、47.9、11.9、21.7との記載がある。
(1i)上記(1g)の表2によると、容器詰緑茶飲料の嗜好性に及ぼす飲用温度と抽出条件について、80℃-3分の抽出条件の緑茶飲料は飲用温度55℃で、「官能テストトータルスコア小(不良)・大(良)」が「29」、「パネルの判定理由」が「濃すぎる」と、70℃-3分の抽出条件の緑茶飲料は飲用温度55℃で、同じく「39」と、同じく「かなり良い」との記載がある。
以上を総合すると、引用例1には飲料について、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「乾燥茶葉を抽出条件80℃?70℃で3分で抽出し、抽出液を95℃まで加熱し、充填・密封し、120℃、6分間殺菌した、容器詰緑茶飲料であって、
アミノ酸(mg/100ml)が11.9?13.0、
カフェイン(mg/100ml)が21.7?24.3、
総カテキン類(A)(mg/100ml)が49.7?58.5、を含有する容器詰緑茶飲料。」
また、抽出して飲料を得ることについて、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「乾燥茶葉を抽出条件80℃?70℃で3分で抽出し、抽出液を95℃まで加熱し、充填・密封し、120℃、6分間殺菌して、容器詰緑茶飲料を得る方法であって、
容器詰緑茶飲料は、アミノ酸(mg/100ml)が11.9?13.0、
カフェイン(mg/100ml)が21.7?24.3、
総カテキン類(A)(mg/100ml)が49.7?58.5、を含有する容器詰緑茶飲料を得る方法。」
取消理由に引用した引用例2(特開2007-167003号公報)には、以下の各記載がある。
(2a)「【請求項3】
2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを1?1000ppb濃度添加したことを特徴とする茶飲料。」
(2b)「【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは各種天然素材を検索し、茶飲料への香味成分の寄与を検討した結果、微量の2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの添加が茶飲料へまったりとした自然な甘さを付与することを見いだし、本発明を完成させた。・・・」
(2c)「【発明の効果】
【0006】
本発明の茶飲料用添加剤を茶飲料に添加することにより、高級茶葉類が本来有している、まったりとした自然な甘さを感じさせる、高級感あふれる茶飲料を提供することができる。」
(2d)「【0007】
以下に、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。本発明でいう2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンとは、一般にはフラネオール(フィルメニッヒ社の商品名)として知られ、1967年にパイナップル及びストロベリーから発見され、その後ラズベリー、コーヒー、ポップコーン、ローストアーモンド、醤油、ローストビーフからも見いだされている。香調は強くフルーティでカラメル香を有し、ジャムあるいは調理されたパイナップルを想起させる香気であり、マルトールに似た甘みを有している。用途としては、パイナップル、ストロベリー、ラズベリー、シュガータイプフレーバーに有用とされ、最終製品での使用濃度は5.0?10.0ppmとされている(合成香料 化学と商品知識 印藤元一著 化学工業日報社 2005年3月22日増補改訂版発行)。」
(2e)「【実施例】
【0012】
以下に実施例を挙げ、更に詳細に説明する。
【0013】
[分析例]
中級から極上までの各等級の茶葉を用いて、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの含有量を測定した。測定対象は、各茶葉30gに対して85℃の湯1500gを加え、10分間抽出し、濾過したものを検体とした。測定は、検体1000gに対して内部標準としてメチルウンデカノエートを添加し、カラム中で20mlのセパビーズSP700に香気成分を吸着させ、蒸留水で洗浄後イソペンタン-エーテルの混合溶媒で脱着し、無水硫酸ナトリウムで脱水後濃縮し、GC/MSにより定量を行った。結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
表1の結果から、高級茶葉と2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの含有量との間には明確な相関関係が見られた。」
(2f)「【0016】
[実施例1](緑茶飲料)
60℃の湯500mlに対して、緑茶葉(静岡産)10g、ビタミンC0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを10ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を調製した。
【0017】
[実施例2](緑茶飲料)
60℃の湯500mlに対して、緑茶葉(静岡産)10g、ビタミンC0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを20ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を調製した。
【0018】
[実施例3](緑茶飲料)
60℃の湯500mlに対して、緑茶葉(静岡産)10g、ビタミンC0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを50ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を調製した。
【0019】
[実施例4](緑茶飲料)
60℃の湯500mlに対して、緑茶葉(静岡産)10g、ビタミンC0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを100ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を調製した。
【0020】
[実施例5](緑茶飲料)
60℃の湯500mlに対して、緑茶葉(静岡産)10g、ビタミンC0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを300ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を調製した。
【0021】
[実施例6](緑茶飲料)
60℃の湯500mlに対して、緑茶葉(静岡産)10g、ビタミンC0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを1000ppb濃度添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を調製した。」
取消理由に引用した引用例3(特開2008-148604号公報)には、以下の各記載がある。
(3a)「【請求項2】
2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン及び2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンからなる群から選ばれる2種以上からなることを特徴とする茶飲料用添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の茶飲料用添加剤を1?10000ppm濃度添加したことを特徴とする茶飲料用香味料組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の茶飲料用添加剤を0.5?10000ppb濃度添加したことを特徴とする茶飲料。」
(3b)「【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは各種天然素材を検索し、茶飲料への香味成分の寄与を検討した結果、微量の2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン又は3-エチル-2,5-ジメチルピラジンの添加が、茶飲料へ後半の厚味のある味、飲みごたえ感を付与することを見いだし、さらには2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを組み合わせると相乗的効果を示すことを見いだし、本発明を完成させた。・・・」
(3c)「【0010】
また、本発明でいう2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン(2,5-dimethyl-4-hydroxy-3(2H)-furanone)とは、一般にはフラネオール(フィルメニッヒ社の商品名)として知られ、1967年パイナップル及びストロベリーから発見され、その後ラズベリー、コーヒー、ポップコーン、ローストアーモンド、醤油、ローストビーフからも見いだされている。香調は強くフルーティでカラメル香を有し、ジャムあるいは調理されたパイナップルを想起させる香気であり、マルトールに似た甘味を有している。用途としては、パイナップル、ストロベリー、ラズベリー、シュガータイプフレーバーに有用とされ、最終製品での使用濃度は5.0?10.ppmとされている(「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社、2005年3月22日増補改訂版発行)。」
(3d)「【0014】
本発明で用いられる2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの、茶飲料に対して使用可能な濃度範囲は1?10000ppbの範囲であるが、本発明においては1?5000ppb濃度を添加して用いる。添加濃度が1ppb未満であると、人によっては風味が弱く飲みごたえ感として感じなくなる場合があり、添加濃度が5000ppbを超えると、風味がややアーティフィシャルに感じられる場合がある。本発明の効果をさらに十分に発揮するには、添加濃度を50?3000ppbにすることが最も望ましい。」
(3e)「【0041】
[実施例4?14](緑茶飲料)
60℃の湯500mlに対して、緑茶葉(静岡産)10g、ビタミンC0.2gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、水を加えて1,000mlとし、炭酸水素ナトリウムにてpHを5.5に調整後、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン及び2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを各種濃度(単位ppb)混合物添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明の緑茶飲料を調製した。」
(3f)「【0044】
【表3】

【0045】
表3の結果から、本発明の化合物を相互に組み合わせることにより、のどごし感増強作用として相乗効果を示すことが明らかである。」
(3) 判断
ア 特許権者(訂正請求の請求人)は、平成28年5月31日付け意見書において、当審が平成28年3月29日付けて通知した取消理由における引用発明の認定は、「渋味、収斂味が強すぎて風味嗜好性が劣る飲料は、発明として開示されているとはいえません。」(5ページ下から4?3行)、平成28年9月5日付け意見書において、「表2には、『抽出条件80℃3分』の飲料の10℃での飲用でのパネルの判定理由に『渋味、収斂味が強く不味い』、『抽出条件70℃3分』の飲料の10℃での飲用でのパネルの判定理由には、『渋味、収斂味が舌に残る』となっています。当業者は、このような『渋味、収斂味が強く不味い』飲料を基にして、風味の向上させるようななんらかの手段を施しても好ましい飲料は得られないであろうと考えるはずです。」(3ページ6?11行)と主張しているので、これらの点について検討する。
引用例1には、従来の技術について「【0002】
【従来の技術】近年、煎茶、かま入り茶(ほうじ茶)等の緑茶の容器詰飲料の自動販売機による販売が増加している。現在、容器詰緑茶飲料は50?60℃で加温販売される場合も、常温以下たとえば10℃付近に冷却されて販売される場合も、茶葉抽出工程はほとんど同一であり、通常60?80℃で数分の抽出条件で製造されている。」(上記記載事項(1a))と記載されていることから、上記引用発明1及び2の抽出条件は、引用例1においては従来技術の範囲内のものといえる。
しかし、引用発明1が、従来どおり、50?60℃で加温販売される場合には、表3の70℃3分の抽出条件で飲用温度が55℃の官能テストによると、トータルスコアが「39」で、パネルの判定理由は「かなり良い」とされていて、飲用に不適当なものではないこと、また、70℃より低い抽出条件のものと比較して総カテキン類が多く含まれ(上記記載事項(1f))、容器詰緑茶飲料におけるカテキンの機能性に着目できることから、引用発明1及び2が引用例1において従来技術の範疇に属するとしても引用発明1及び2を認識できないというものではない。
そして、特許法第29条第2項は、同条第1項各号に掲げる発明に基いて特許出願に係る発明が容易に発明をすることができたか否かを判断する旨を規定しているところ、同条第1項第3号は、「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明」と規定しているにとどまり、それ以上に、「刊行物に記載された発明」の適格性について何ら制限をしていない。よって、引用例1に記載された従来技術に基づいて、上記のとおり認定した引用発明1及び2が「刊行物に記載された発明」の適格性に欠くものとはいえない(参考判決:平成22年(行ケ)第10125号)。
したがって、引用例1に記載された発明として、上記引用発明1及び2のとおり認定し、以下検討する。
イ 本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、各文言の意味等からみて、後者の「緑茶飲料」は、前者の「茶飲料」に相当する。
後者の「乾燥茶葉を抽出条件80℃?70℃で3分で抽出し、抽出液は95℃まで加熱し、充填・密封し、120℃、6分間殺菌した」ことは、前者の「加熱殺菌して製造された」ことに相当する。
後者の「アミノ酸(mg/100ml)が11.9?13.0」、「カフェイン(mg/100ml)が21.7?24.3」及び「総カテキン類(A)(mg/100ml)が49.7?58.5」は、「緑茶飲料」の比重がほぼ1であるので、それぞれ前者の「(a)アミノ酸 40ppm以上」、「(b)カフェイン 200ppm以上」及び「(e)カテキン類 600ppm以下」に相当する。
よって、本件発明1と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料であって、以下(a)、(b)及び(e)を含有する茶飲料:
(a)アミノ酸 40ppm以上
(b)カフェイン 200ppm以上
(e)カテキン類 600ppm以下。」
[相違点1]
本件発明1は、「(c)フラネオール 50ppb以上」含有するとされているのに対し、引用発明1は、そのような特定はなされていない点。
そこで、上記相違点1について検討する。
上記引用例2には、「本発明の茶飲料用添加剤を茶飲料に添加することにより、高級茶葉類が本来有している、まったりとした自然な甘さを感じさせる、高級感あふれる茶飲料を提供すること」(段落【0006】)、「2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンが甘い風味を有する香味料であること」(段落【0009】)及び緑茶飲料に「2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン」を50ppb?1000ppb添加すること(段落【0018】?【0021】)が、上記引用例3には、「本発明で用いられる2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンの、茶飲料に対して使用可能な濃度範囲は1?10000ppbの範囲であるが、本発明においては1?5000ppb濃度を添加して用いる。添加濃度が1ppb未満であると、人によっては風味が弱く飲みごたえ感として感じなくなる場合があり、添加濃度が5000ppbを超えると、風味がややアーティフィシャルに感じられる場合がある。本発明の効果をさらに十分に発揮するには、添加濃度を50?3000ppbにすることが最も望ましい。」(段落【0014】)ことがそれぞれ記載され、いずれもフラネオールを茶飲料に添加し、風味を向上させるものといえる。
そして、引用発明1において、風味を向上させることが好ましいことは明らかであるから、フラネオールを茶飲料に添加させるという引用例2、3に記載された上記技術を引用発明1に適用することは、当業者が容易になし得たことである。また、フラネオールを含有させる際の添加量は、茶飲料の味等を確認しながら当業者が適宜行う設計的事項であり、また、茶飲料に添加するフラネオールの量として、引用例2には50ppb?1000ppb添加すること(段落【0018】?【0021】)が、引用例3には添加濃度を50?3000ppbにすることが最も望ましいこと(段落【0014】)がそれぞれ記載されていることからも、「(c)フラネオール 50ppb以上」とすることが、当業者にとって格別困難なこととも認められない。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、引用発明1に、引用例2、3に記載の事項を採用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
なお、この点について、特許権者は、「茶の香気成分としては非常に多くの成分が知られているのであって、その中でフラネオールを選択したであろうという理由がありません。」(平成28年9月5日付け意見書3ページ20?22行)、「フラネオール含有量の『50ppb以上』は、カフェイン含有量等の他の構成との組み合わせにおいて、臨界的意義を有する範囲です。」(同意見書8ページ下から14?12行)、さらに、「本件発明は、アミノ酸含有量が高い容器詰茶飲料に特有の加熱劣化臭の問題を解決したものであり、特有の臭いに対するものです。単に風味を向上させればよいというものではなく、また単に臭いがマスキングできればよいというものではありません。」(同意見書5ページ22?25行)と主張するが、「アミノ酸(mg/100ml)が11.9?13.0」含有する引用発明1において、上述のとおり、フラネオールを用いることを当業者が容易に想到し得たものである。
また、容器詰茶飲料における上記請求人の主張する効果は、フラネオールが香気成分であり、異臭のマスキングに有効であることから(甲第6号証;特開2005-143467号公報【0002】参照。)、当業者が予測し得ない顕著な効果とまではいえない。
したがって、本件発明1は、引用発明1及び引用例2、3に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明1にさらに限定を付加するものであり、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1に加えて、以下の点で相違する。
[相違点2]
茶飲料について、本件発明2は、「さらに(d)ピラジン類を含有し、(c)フラネオールの(d)ピラジン類に対する割合((c)/(d))が2.0以上である」と特定されているのに対し、引用発明1は、そのような特定はなされていない点。
次に、上記相違点2について検討する。
引用例3には、「茶飲料への香味成分の寄与を検討した結果、微量の2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-メチルピラジン又は3-エチル-2,5-ジメチルピラジンの添加が、茶飲料へ後半の厚味のある味、飲みごたえ感を付与することを見いだし、さらには2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンを組み合わせると相乗的効果を示すことを見いだし」(上記記載事項(3b))と記載されており、引用発明1に、フラネオールを加える際に、さらにピラジン類を加えることは当業者が容易になし得たことである。
また、フラネオールとピラジン類との割合について、引用例3の、上記記載事項(3f)の表3の実施例6、8?10、12、14の測定結果によると、フラネオール/ピラジン類の比の値は、2.0を超えたものであることは明らかであり、香調が強く(上記記載事項(2d)、(3c))、風味改善に優れた(上記記載事項(2c))フラネオールをピラジンより多く添加し、フラネオール/ピラジン類の値を2.0以上とすることも当業者が適宜なし得た設計的事項である。
よって、相違点2に係る本件発明2の構成は、引用発明1に、引用例2、3に記載の事項を採用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件発明2の奏する効果をみても、引用発明1及び引用例2、3に記載の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別ではない。
したがって、本件発明2は、引用発明1及び引用例2、3に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 本件発明3について
茶飲料について、本件発明3は、本件発明2を引用し、本件発明2にさらに限定を付加するものであり、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。
[相違点3]
本件発明3は、「(c)フラネオール及び/又は(d)ピラジン類が、茶葉の抽出物として添加されたものである」と特定されているのに対し、引用発明1は、そのような特定はなされていない点。
次に、上記相違点3について検討する。
引用例2には、フラネオールが高級茶葉に多く含まれることが記載され(上記記載事項(2e))、引用発明1において、フラネオールとして茶葉の抽出物として添加することは、当業者が容易になし得たことである。
よって、相違点3に係る本件発明3の構成は、引用発明1に、引用例2、3に記載の事項を採用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件発明3の奏する効果をみても、引用発明1及び引用例2、3に記載の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別ではない。
したがって、本件発明3は、引用発明1及び引用例2、3に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
オ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1?3のいずれか1項を引用し、本件発明1?3にさらに限定を付加するものであり、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。
[相違点4]
茶飲料について、本件発明4は、「pHが6.4?7.0である」と特定されているのに対し、引用発明1は、そのような特定はなされていない点。
次に、上記相違点4について検討する。
引用例2、3には、緑茶飲料において、pHを調整することが記載されており(上記記載事項(2f)、(3e))、飲料のpHは、味、保存性等を考慮して当業者が適宜調整する設計的事項である。
よって、相違点4に係る本件発明4の構成は、引用発明1に、引用例2、3に記載の事項を採用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件発明4の奏する効果をみても、引用発明1及び引用例2、3に記載の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別ではない。
したがって、本件発明4は、引用発明1及び引用例2、3に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
カ 本件発明5について
本件発明5と引用発明2とを対比すると、各文言の意味等からみて、後者の「緑茶飲料」は、前者の「茶飲料」に相当する。
後者の「乾燥茶葉を抽出条件80℃?70℃で3分で抽出し、抽出液を95℃まで加熱し、充填・密封し、120℃、6分間殺菌し」たことは、前者の「加熱殺菌して製造された」ことに相当する。
そして、後者の「容器詰緑茶飲料は、アミノ酸(mg/100ml)が11.9?13.0、
カフェイン(mg/100ml)が21.7?24.3、
総カテキン類(A)(mg/100ml)が49.7?58.5、を含有」させることと、前者の「アミノ酸を40ppm以上含有し、かつ加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料の加熱劣化臭を緩和する方法であって、該飲料の加熱殺菌前に、該飲料中のカフェイン量を200ppm以上、フラネオール量を50ppb以上、及びカテキン類量を600ppm以下に調整することを含む」こととは、「アミノ酸、カフェイン、カテキン類を所定量に調整することを含む」ことの限りで一致する。
後者の「容器詰緑茶飲料を得る方法」と、前者の「容器詰茶飲料の加熱劣化臭を緩和する方法」とは、「容器詰茶飲料に係る方法」との限りにおいて一致する。
よって、本件発明5と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料に係る方法であって、アミノ酸、カフェイン、カテキン類を所定量に調整することを含む、方法。」
[相違点5]
アミノ酸、カフェイン、カテキン類を所定量に調整することについて、本件発明5は、「アミノ酸を40ppm以上含有し」、「該飲料の加熱殺菌前に、該飲料中のカフェイン量を200ppm以上、及びカテキン類量を600ppm以下に調整する」のに対して、
引用発明2は、「容器詰緑茶飲料」が「アミノ酸(mg/100ml)が11.9?13.0(119ppm?130ppm)、
カフェイン(mg/100ml)が21.7?24.3(217ppm?243ppm)、
総カテキン類(A)(mg/100ml)が49.7?58.5(497ppm?585ppm)、を含有」している点(当審注:( )内のppm濃度は、緑茶飲料の比重をほぼ1として換算表記したものである。)。
[相違点6]
容器詰茶飲料に係る方法について、本件発明5は、「フラネオール量を50ppb以上」とする「加熱劣化臭を緩和する方法」であるのに対して、引用発明2は、「容器詰緑茶飲料を得る方法」である点。
次に、上記相違点5について検討する。
引用発明2において、「容器詰緑茶飲料」が「アミノ酸(mg/100ml)が11.9?13.0(119ppm?130ppm)、
カフェイン(mg/100ml)が21.7?24.3(217ppm?243ppm)、
総カテキン類(A)(mg/100ml)が49.7?58.5(497ppm?585ppm)、を含有」することは、本件発明5の「容器詰茶飲料」が「アミノ酸を40ppm以上含有」することであり、本件発明5の「該飲料の加熱殺菌前に、該飲料中のカフェイン量を200ppm以上、及びカテキン類量を600ppm以下に調整する」ことと実質相違するものでもない。
さらに、相違点6について検討する。
引用発明2において、抽出液を95℃まで加熱しているが、加熱に伴い劣化臭が生じることは技術的に明らかであり、当業者が予測し得る事項であるとしても、上記引用例1?3及び他に異議申立人が示した証拠(特開2008-178395号公報(異議申立人提出の甲第2号証)、特開2004-180535号公報(同甲第3号証)、特開2005-143467号公報(同甲第6号証))には、フラネオールを茶飲料に添加することにより、加熱劣化臭を緩和することについて明示する記載はない。また、フラネオールは香気成分であるので異臭のマスキングに有効であることが予測し得たとしても、加熱劣化臭という特定の異臭に着目して、多くの香気成分の中からフラネオールを選択して、特定の量を添加することは動機付けはなく、当業者にとって容易に想到し得たとすることはできない。
よって、相違点6は、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。
したがって、本件発明5は、引用発明2及び引用例2、3に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、請求項5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?4は、引用発明1、引用例2及び引用例3に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明5は、引用発明2、引用例2及び引用例3に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、本件発明5の特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明5の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料であって、以下(a)?(c)及び(e)を含有する茶飲料:
(a)アミノ酸 40ppm以上
(b)カフェイン 200ppm以上
(c)フラネオール 50ppb以上
(e)カテキン類 600ppm以下。
【請求項2】 さらに(d)ピラジン類を含有し、(c)フラネオールの(d)ピラジン類に対する割合((c)/(d))が2.0以上である、請求項1に記載の茶飲料。
【請求項3】 (c)フラネオール及び/又は(d)ピラジン類が、茶葉の抽出物として添加されたものである、請求項2に記載の茶飲料。
【請求項4】 pHが6.4?7.0である、請求項1?3のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項5】 アミノ酸を40ppm以上含有し、かつ加熱殺菌して製造された容器詰茶飲料の加熱劣化臭を緩和する方法であって、該飲料の加熱殺菌前に、該飲料中のカフェイン量を200ppm以上、フラネオール量を50ppb以上、及びカテキン類量を600ppm以下に調整することを含む、方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-02-20 
出願番号 特願2009-256456(P2009-256456)
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (A23F)
P 1 651・ 537- ZC (A23F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 水野 浩之  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 佐々木 正章
山崎 勝司
登録日 2015-05-01 
登録番号 特許第5739614号(P5739614)
権利者 サントリー食品インターナショナル株式会社
発明の名称 アミノ酸を高濃度に含有する茶飲料  
代理人 山崎 幸作  
代理人 小笠原 有紀  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 田上 靖子  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 星野 修  
代理人 中村 充利  
代理人 梶田 剛  
代理人 吉田 樹里  
代理人 江尻 ひろ子  
代理人 鶴喰 寿孝  
代理人 富田 博行  
代理人 廣瀬 しのぶ  

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