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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E04H
管理番号 1329138
判定請求番号 判定2017-600009  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 判定 
判定請求日 2017-01-25 
確定日 2017-06-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第3899354号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「免震建物」は、特許第3899354号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定請求の趣旨は、補正された判定請求書(以下「判定請求書」という。)に添付したイ号図面及びその説明書(甲第2号証)に示す「免震建物」(以下「イ号物件」という。)は、特許第3899354号(以下「本件特許」という。)に係る特許発明の技術的範囲に属しないとの判定を求めるものである。

本件特許に係る手続の経緯は、平成16年10月8日に出願され、平成19年1月5日に特許権の設定登録がなされ、平成29年1月25日になされた本件判定請求について、同年2月15日に請求人から手続補正書が提出されたものである。その後、平成29年2月17日付けで判定請求書副本及び手続補正書副本を送達するとともに、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人から答弁書等の提出はなかった。

第2 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(当審において、構成要件ごとに分説し、記号A?Fを付した。以下「構成要件A」などという。)。

「A 建物本体と、この建物本体の荷重を地盤に伝達して支持する建物基礎と、この建物基礎に固定され前記建物本体を支持する免震装置とを備えた免震建物であって、
B 前記建物基礎は、地盤に貫入された複数の鋼管杭と、これら複数の鋼管杭の杭頭部同士を連結する連結部材とを有して構成され、前記鋼管杭の杭頭部上に前記免震装置が固定され、この免震装置上に前記建物本体の最下階の大梁が直接固定され、
C 前記免震装置は、前記鋼管杭の杭頭部に設置された固定部材を介して当該鋼管杭に固定されており、
D 前記固定部材は、前記免震装置が固定されるベースプレートと、このベースプレート下面に固定されたアンカー部材とを有して構成され、
E 前記鋼管杭の杭頭部に前記アンカー部材を挿入し、かつ前記ベースプレートを位置決めした状態で、前記杭頭部にコンクリートを注入して前記ベースプレート下面まで充填することで、硬化したコンクリートにより前記鋼管杭と前記固定部材とが一体化されることを特徴とする
F 免震建物。」

第3 イ号物件
1 判定請求書におけるイ号物件の説明
平成29年2月15日付け手続補正書により補正された判定請求書に添付されたイ号図面及びその説明書(甲第2号証)では、イ号物件について、概ね以下のように説明している。

「a.建物の上部構造における鉛直荷重を支える複数本の柱の位置に、下部構造の基礎となる複数本の鋼管杭を地盤に打ち込み、各柱が取り付けられるフーチングと鋼管杭を含む下部基礎との間に免震装置が取り付けられた免震建物であって、
b.前記下部基礎は、鋼管杭の頭部と周囲とを囲うように立ち上げて形成され、上面中央部にアンカーボルトを介して下部ベースプレートが取り付けられた構成であり、
c.前記下部ベースプレート上に免震装置を載置して固定ボルトにより固定することで下部基礎に取り付け、
d.前記免震装置の上に、下面にアンカーボルトを介して上部ベースプレートが取り付けられた上部フーチングを載置して固定ボルトにより固定し、
e.前記上部フーチングに上部構造の柱及び基礎梁の端部が取り付けられた構成で構築され、
f.さらに、前記上部フーチングの上に柱を立設し、各階毎に柱間に大梁を架け渡して複数階の建造物が構築される構成の
g.免震建物。」(イ号図面の説明書3頁3行?17行)

2 当審によるイ号物件の特定
(1)イ号図面及びその説明書(甲第2号証)
ア イ号図面の説明書には以下の記載がある。
(ア)「図2(b)の仮想線aで示したように型枠で四角形状に囲うと共に、各形成される下部基礎4の間につなぎスラブ5を形成すべく両側からの囲いで所要幅の空間部を形成し」(イ号図面の説明書1頁20行?22行。下線は当審で付与。以下同様。)

(イ)「下部ベースプレート6の中央部には、図2(a)に示したように、コンクリート打設孔7が設けられると共に、下面側には、円形状に所要間隔をもって複数の下部アンカーボルト8と袋ナット9とが取り付けられており、図2(b)で示したように、下部アンカーボルト8は、鋼管杭2の空間部2b内に垂下した状態で、袋ナット9は鋼管杭2の頭部から立ち上げて形成された下部基礎4の上面に位置する。」(イ号図面の説明書1頁25行?29行。)

(ウ)「下部ベースプレート6の中央部の打設孔7から鋼管杭2の空間部2b内と、下部ベースプレート6の周縁部と型枠との空間から下部基礎4を形成するためのコンクリートを打設すると共に、つなぎスラブ5を形成するためのコンクリートも略同時に打設して一体化するのである。・・・図3に示したように、杭2の頭部内空間部2bも含めて頭部周囲と上部とに立ち上げられた下部基礎4が一体的に形成され、該下部基礎4の上面には下部ベースプレート6が面一状態で一体的に取り付けられると共に、つなぎスラブ5も連続して形成されている。」(同説明書2頁1行?9行)

イ イ号図面から、以下の事項が看て取れる。
(ア)上記ア(ア)、(ウ)の記載を踏まえ、イ号図面の図1?5から、下部基礎4とつなぎスラブ5はコンクリートで一体的に形成され、両部材によって鋼管杭2同士が連結されていること、及び下部基礎4、つなぎスラブ5、鋼管杭2により下部構造の基礎が構成されている。

(イ)上記ア(イ)の記載を踏まえ、イ号図面の図2?4から、免震装置が固定される下部ベースプレート6の下面には下部アンカーボルト8が固定されている。

(ウ)上記ア(イ)、(ウ)の記載を踏まえ、イ号図面の図2?4から、下部アンカーボルト8は鋼管杭2の杭頭部まで挿入されること、下部ベースプレート6はコンクリート打設前に位置決めされていること、及び鋼管杭2頭部とその周縁部にコンクリートを打設し下部ベースプレート6下面まで充填することで、硬化したコンクリートにより、鋼管杭2と、下部基礎4と、下部ベースプレート6が一体化されている。

(2)イ号物件の特定
上記1及び(1)を総合して、イ号物件を上記本件特許発明の構成要件A?Fに対応させて整理すると、イ号物件は以下のとおり分説した構成を具備するものと認められる(構成ごとに記号a?fを付した。以下、分説した構成を「構成a」などという。)。

「a 建物の上部構造における鉛直荷重を支える複数本の柱の位置に、下部構造の基礎となる複数本の鋼管杭を地盤に打ち込み、各柱が取り付けられるフーチングと鋼管杭を含む下部基礎との間に免震装置が取り付けられた免震建物であって、
b 前記下部構造の基礎は、地盤に打ち込まれた複数本の鋼管杭と、鋼管杭の頭部と周囲とを囲うように立ち上げて形成された下部基礎、及び下部基礎とコンクリートで一体的に形成されたつなぎスラブから形成され、下部基礎とつなぎスラブにより鋼管杭の杭頭部同士は連結され、前記下部基礎の上面中央部に免震装置が固定され、前記免震装置の上に上部フーチングを載置して、前記上部フーチングに上部構造の柱及び基礎梁の端部が取り付けられた構成で、さらに、前記上部フーチングの上に複数階の建造物が構築され、
c 前記免震装置は、前記下部基礎の上面中央部に設置された下部ベースプレート上に固定ボルトにより固定されており、
d 前記下部ベースプレートの下面にはアンカーボルトが固定されており、
e 前記鋼管杭の杭頭部まで前記下部ベースプレートのアンカーボルトを挿入し、かつ前記下部ベースプレートを位置決めした状態で、前記杭頭部及びその周縁部にコンクリートを注入して前記下部ベースプレート下面まで充填することで、硬化したコンクリートにより前記鋼管杭と、前記下部基礎と、前記下部ベースプレートが一体化されている
f 免震建物。」

第4 属否の判断
イ号物件が、本件特許発明の構成要件を充足するか否かについて検討する。

1 構成要件Aについて
イ号物件の構成aの「建物」、「下部構造の基礎」、「免震装置」は、それぞれ本件特許発明の「建物本体」、「建物基礎」、「免震装置」に相当することは明らかである。
したがって、イ号物件の構成aは本件特許発明の構成要件Aを充足する。

2 構成要件Bについて
(1)イ号物件の構成bの「鋼管杭」、「基礎梁」が、それぞれ本件特許発明の「鋼管杭」、「最下階の大梁」に相当する。

(2)イ号物件の構成bについて「鋼管杭の頭部と周囲とを囲うように立ち上げて形成された下部基礎、及び下部基礎と一体的に形成されたつなぎスラブから形成され、下部基礎とつなぎスラブにより鋼管杭の杭筒部同士は連結され」ていることから、イ号物件の構成bの「下部基礎とつなぎスラブ」は、本件特許発明の「連結部材」に相当する。

(3)イ号物件の構成bの「免震装置」は「鋼管杭の頭部と周囲とを囲うように立ち上げて形成された下部基礎」の「上面中央部」に固定されており、すなわち下部基礎上に固定されるものである。
一方、本件特許発明は、構成要件Bに関して「鋼管杭の杭頭部上に」「免震装置が固定され」るとの構成を有している。当該「鋼管杭の杭頭部上」に関連して、本件特許の明細書では「背景技術」として「【0002】・・・特許文献1に記載された免震建物は、地盤に貫入した支持杭、この支持杭頭部に固定された基礎フーチング、および基礎フーチング同士を連結する基礎梁からなる建物基礎と、基礎フーチング上に固定された免震装置と、この免震装置上に固定された建物本体とを備えて構成されている。・・・」(下線は当審で付与。以下同様。)とあるように、支持杭頭部に基礎フーチングを構築し、基礎フーチング上に免震装置を固定する技術を挙げ、「発明が解決しようとする課題」として「【0004】しかしながら、前記特許文献1に記載の免震建物では、支持杭を施工してから基礎フーチング下面位置および基礎スラブ下面位置まで地盤を掘削し、基礎フーチングを支持杭頭部に一体に形成し、かつ基礎スラブおよび基礎梁を形成して建物基礎を構築し、その後に、基礎フーチング上に免震装置をセットする必要がある。このため、建物基礎の施工に手間が掛かって免震装置のセットまでに長期間を要するために、建物の施工に係る全体工期も長期化してしまうという問題がある。」とし、基礎フーチング上へ免震装置を設置することの問題点を記載している。さらに、図3、4等の実施例から見て、鋼管杭の杭頭部上に基礎が設けられた態様はないことから、本件特許発明の構成要件Bにおける「前記鋼管杭の杭頭部上に前記免震装置が固定され」るとは、鋼管杭の杭頭部上に免震装置が直接固定されることを意味し、鋼管杭の杭頭部上に基礎フーチング等を設置し、これを介して免震装置を固定することは含まれないことは明らかである。
そして、イ号物件の構成bの「免震装置」は下部基礎上に固定されるものであるから、本件特許発明の構成要件Bの「鋼管杭の杭頭部上に前記免震装置が固定され」ることに該当しない。

(4)したがって、イ号物件の構成bは本件特許発明の構成要件Bを充足しない。

3 構成要件Cについて
イ号物件の構成cにおいて、「下部ベースプレート」は「下部基礎の上面中央部に設置され」ている。
そして、上記2(3)で説示したとおり、本件特許発明は鋼管杭の杭頭部上に免震装置が直接固定されることを前提としているから、本件特許発明の構成要件Cの「鋼管杭の杭頭部に設置された固定部材」は杭頭部上の基礎に設置されるものではないことは明らかである。
よって、イ号物件の構成cの下部ベースプレートは下部基礎上に固定されていることから、本件特許発明の構成要件Cの「免震装置は、前記鋼管杭の杭頭部に設置された固定部材を介して当該鋼管杭に固定され」ることに該当しない。
したがって、イ号物件の構成cは本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

4 構成要件Dについて
イ号物件の構成dの「下部ベースプレート」、「アンカーボルト」が、それぞれ本件特許発明の「ベースプレート」、「アンカー部材」に相当することは明らかである。
したがって、イ号物件の構成dは本件特許発明の構成要件Dを充足する。

5 構成要件Eについて
イ号物件の構成eにおいても「鋼管杭の杭頭部まで前記下部ベースプレートのアンカーボルトを挿入し、かつ前記下部ベースプレートを位置決めした状態で、前記杭頭部」「にコンクリートを注入して前記下部ベースプレート下面まで充填することで、硬化したコンクリートにより前記鋼管杭と」「前記下部ベースプレートが一体化されている」のであるから、イ号物件の構成eは本件特許発明の構成要件Eに該当する。
したがって、イ号物件の構成eは本件特許発明の構成要件Eを充足する。

6 構成要件Fについて
イ号物件の構成fは本件特許発明の構成要件Fに該当することは明らかであるので、イ号物件の構成fは本件特許発明の構成要件Fを充足する。

7 本件特許発明についてのまとめ
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件B、Cを充足しないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

第5 請求項2ないし5に係る発明について
本件の請求項2ないし5は請求項1を直接的または間接的に引用する形で、請求項1に係る発明(本件特許発明)をさらに限定する発明である。したがって、上記のようにイ号物件が本件特許発明の技術的範囲に属しない以上、イ号物件は本件の請求項2ないし5にかかる発明の技術的範囲にも属しない。

第6 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件B、Cを充足しないから、イ号物件は、本件特許に係る特許発明の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2017-06-01 
出願番号 特願2004-296286(P2004-296286)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (E04H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 萩田 裕介  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 井上 博之
小野 忠悦
登録日 2007-01-05 
登録番号 特許第3899354号(P3899354)
発明の名称 免震建物  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 特許業務法人東京アルパ特許事務所  
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