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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  B43K
管理番号 1329371
審判番号 無効2015-800105  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-04-03 
確定日 2017-05-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4973013号発明「出没式筆記具」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第4973013号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
手続の経緯の概要は以下のとおりである。
平成18年 5月31日 出願(特願2006-152440号)
平成24年 2月17日 特許査定
平成24年 4月20日 設定登録(特許第4973013号)
平成27年 4月 3日 本件無効審判の請求
平成27年 5月14日 手続補正書(請求人)
平成27年 8月 3日 答弁書(被請求人)
訂正請求書
平成27年12月15日 弁駁書(請求人)
平成28年 3月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成28年 3月11日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成28年 3月17日 上申書(請求人)
平成28年 4月 8日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
平成28年 4月 8日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
平成28年 4月15日 口頭審理
平成28年 5月 6日 上申書(請求人)
平成28年 5月 9日 上申書(被請求人)
なお,請求人が平成28年5月6日に提出した上申書には,「上申書(2)」という表記はないが,先に請求人が平成28年3月17日に提出した上申書と区別するために,上記のとおりとした。

第2 訂正の可否に対する判断
1 訂正請求の内容
平成27年8月3日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,本件特許第4973013号(以下「本件特許」という。)の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである。
そして,その訂正内容は,以下のとおりである(下線は,当審で付した。以下も同じ。)。
訂正事項1
訂正前の【請求項1】の「軸筒内に前後動可能な筆記体を有し,前記筆記体の前後動作に連動して前記筆記体の筆記芯を外気から密封するシール蓋を有する筆記具であって,前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内に設けた突起によって作動させると共に,その突起と前記シール蓋との係合部をシール蓋の非シール部に設けたことを特徴とする出没式筆記具。」を,
「軸筒内に前後動可能な筆記体を有し,前記筆記体の前後動作に連動して前記筆記体の筆記芯を外気から密封するシール蓋を有する筆記具であって,前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起によって作動させると共に,その突起と前記シール蓋との係合部をシール蓋の非シール部に設けたことを特徴とする出没式筆記具。」に訂正する。

訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0005】及び【0006】にそれぞれ記載された「前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内に設けた突起」を,
「前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」に訂正する。

2 当審の判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は,訂正前に「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内に設けた」と限定されていた「突起」に関して,さらに「(カバーリングの外周面の領域内であって)カバーリングの先端部から突出しない位置」と限定するものである。
したがって,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮に該当し,特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして,願書に添付した明細書の段落【0009】には「前記カバーリング22aの表面には突起37が対向する位置に形成されているが,その突起37はカバーリング22aと先端筒部22に架けて形成されている。」と記載され,
【図7】には「先端筒部22」の前端に設けられた「カバーリング22a」に「突起37」が設けられていることと,該突起37の先端部(図7においては,下端部)が,カバーリング22aの先端部(図7においては,下端部)を超えないこと,つまり,訂正事項1によって限定された「カバーリングの先端部から突出しない位置」に設けられている点が記載されているから,訂正事項1によって限定された事項は,願書に添付した明細書又は図面に記載された事項に基づいたものであって,願書に添付した明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではなく,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるから,訂正事項1は特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
また,訂正事項1によって,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもなく,訂正事項1は特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2は,本件特許請求の範囲における請求項1を訂正事項1のとおりに訂正したことに伴い,訂正された請求項1の記載と整合性を取るために,願書に添付した明細書のうち関連する,発明の詳細な説明の段落【0005】及び【0006】の記載を訂正するものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして,訂正事項1と同じ理由により,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
よって,訂正事項2は,特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に該当し,特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 一群の請求項等について
訂正事項1に係る訂正後の請求項1を含む訂正後の請求項1及び2は,訂正後の請求項1を他の請求項2が直接的に引用しているものであるから,当該訂正後の請求項1及び2は,特許法施行規則第46条の2第4号に規定する関係を有する一群の請求項である。
よって,本件訂正は,特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第3項の規定に適合するものである。

また,訂正事項2は,願書に添付した明細書に記載されている事項の訂正であるが,訂正事項2は,請求項1及び2にそれぞれ対応する記載であり,訂正事項1に係る一群の請求項である請求項1及び2は,当該訂正事項2と関係を有するから,願書に添付した明細書の訂正である当該訂正事項2と関係する全ての一群の請求項(請求項1及び2)全てが請求の対象となっている。
よって,本件訂正は,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第4項の規定に適合するものである。

4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから,本件訂正請求に係る訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし,かつ特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第3項ないし第6項の規定に適合する。

したがって,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲を,平成27年8月3日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり請求項1及び2からなる一群の請求項ごとに訂正することを認める。

第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は,審判請求書において,「特許第4973013号の請求項1及び2に係る特許(以下「特許第4973013号の請求項1及び2に係る特許を,請求項の項番にしたがって「本件発明1」,「本件発明2」という。)を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め」(請求の趣旨),以下の理由により,本件発明1及び2は特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項第6号の規定により無効にされるべきである旨主張し,証拠方法として甲第1?15号証を提出した。

1 請求の理由の概要
(1)無効理由
請求書による請求の根拠は,本件特許の請求項1及び2に係る特許発明は,その特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるから,平成23年法律第63号改正附則第2条9項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第123条第1項第6号の規定により無効とされるべきである。
なお,平成27年4月3日付けの無効審判の請求書には,本件発明1及び2に対して,
ア 特許法29条の2の規定に該当し,無効とすべきであるとした「(審判請求書における)無効理由1及び2」,
イ 特許法17条の2第3項の規定に違反するから,無効とすべきであるとした「(審判請求書における)無効理由3」,
ウ 特許法36条第6項第1号の規定に違反するから,無効とすべきであるとした「(審判請求書における)無効理由4」,が主張されていたが,いずれも,取り下げられた。

甲第1号証?15号証の概要は以下のとおりである。
電子メールの送信時刻の記載について,例えば甲第4号証の「15:17」のように午前か午後が明らかであるものについては「午後3時17分」と記し,甲第6号証の「11:42」のように午前か午後が明らかでないものについては,「11時42分」と記した。
個人名については,敬称を省略した。
この取り扱いについては,各乙号証も同じである。
(ア) 甲第1号証:特表2009-535233号公報
(イ) 甲第2号証:特願2006-152440号に係る,平成23年10月21日付け手続補正書
(ウ) 甲第3号証:特願2006-152440号に係る,平成23年10月21日付け意見書
(エ) 甲第4号証:2006年4月26日・水曜日・午後3時17分に,「Morris Moon」から「Katsuhiko Hihara」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(オ) 甲第4号証の2:甲第4号証の日本語訳文
(カ) 甲第5号証:甲第4号証に添付された添付ファイルをプリントアウトしたもの
(キ) 甲第5号証の2:甲第5号証の図面に付加された英語を日本語に置き換えたもの
(ク) 甲第6号証:2006年4月5日・水曜日・11時42分に,「Masashi Machida」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ケ) 甲第6号証の2:甲第6号証の日本語訳文
(コ) 甲第7号証:2006年1月13日・金曜日・午後6時24分に,「Morris Moon」から「Kimura Masahiro」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(サ) 甲第8号証の1:甲第7号証に添付された添付ファイルをプリントアウトしたもの
(シ) 甲第8号証の2:甲第7号証に添付された添付ファイルの図面のプロパティをプリントアウトしたもの
(ス) 甲第9号証:2006年4月4日・火曜日・午後6時56分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(セ) 甲第10号証の1:2006年2月8日・水曜日・午前5時25分に,「Miki Iizuka」から「Dennis(MorrisPen)」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(セ-1) 甲第10号証の4:甲第10号証の1の日本語訳文
(ソ) 甲第10号証の2:International Frankfurt Messe:The World of Office & Paper Products(フランクフルト国際文具・紙製品見本市)(PaperWorld Frankfurt 2006)に関する,JETRO(日本貿易振興機構)のホームページを,2016年3月10日にプリントアウトしたもの
(タ) 甲第10号証の3:「ぺんてる SX12 Handy-line(ハンディライン)ノック式蛍光ペン」に関する,Bungle(ステーショナリーストアー ぶんぐる)のホームページを,2016年3月10日にプリントアウトしたもの
(チ) 甲第11号証の1:甲第1号証における特許情報プラットフォームによる審査経過に関する事項をプリントアウトしたもの
(ツ) 甲第11号証の2:甲第1号証における特許情報プラットフォームによる審査経過のうち,平成22年11月17日付け拒絶理由通知をプリントアウトしたもの
(テ) 甲第12号証の1:2006年4月4日・火曜日・午後6時56分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(テ-1) 甲第12号証の14:甲第12号証の1の日本語訳文
(ト) 甲第12号証の2:2006年4月5日・水曜日・11時42分に,「Masashi Machida」から「Morris Moon」に送信された電子メールの本文と添付された図面をプリントアウトしたもの
(ト-1) 甲第12号証の15:甲第12号証の2の日本語訳文
(ナ) 甲第12号証の3:2006年4月13日・木曜日・午後4時15分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ナ-1) 甲第12号証の16:甲第12号証の3の日本語訳文
(ニ) 甲第12号証の4:2006年4月17日・月曜日・午後2時41分に,「Katsuhiko Hihara」から「Dennis(MorrisPen)」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ニ-1) 甲第12号証の17:甲第12号証の4の日本語訳文
(ヌ) 甲第12号証の5:2006年4月21日・金曜日・午後1時27分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ヌ-1) 甲第12号証の18:甲第12号証の5の日本語訳文
(ネ) 甲第12号証の6:2006年4月24日・月曜日・午前11時34分に,「Kimura Masahiro」から「Dennis(MORRIS);Morris Moon;Kevin Han(MORRIS)」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ネ-1) 甲第12号証の19:甲第12号証の6の日本語訳文
(ノ) 甲第12号証の7:2006年4月25日・火曜日・午後9時12分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ノ-1) 甲第12号証の20:甲第12号証の7の日本語訳文
(ハ) 甲第12号証の8:2006年5月9日・火曜日・午後4時51分に,「Katsuhiko Hihara」から「Dennis;Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ハ-1) 甲第12号証の21:甲第12号証の8の日本語訳文
(ヒ) 甲第12号証の9:2006年5月9日・火曜日・午後6時29分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ヒ-1) 甲第12号証の22:甲第12号証の9の日本語訳文
(フ) 甲第12号証の10:2006年5月10日・水曜日・午後1時54分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(フ-1) 甲第12号証の23:甲第12号証の10の日本語訳文
(へ) 甲第12号証の11:2006年5月11日・木曜日・午後4時56分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon;Dennis;Kimura Masahiro」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ヘ-1) 甲第12号証の24:甲第12号証の11の日本語訳文
(ホ) 甲第12号証の12:2006年5月15日・月曜日・午後12時50分に,「Kimura Masahiro」から「吉田次長(物流);DENNIS MOON(MORRIS);Kevin Han(MORRIS);MORRIS MOON」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(ホ-1) 甲第12号証の25:甲第12号証の12の日本語訳文
(マ) 甲第12号証の13:2006年5月31日・水曜日・午後4時19分に,「Katsuhiko Hihara」から「Dennis(MorrisPen)」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(マ-1) 甲第12号証の26:甲第12号証の13の日本語訳文
(ミ) 甲第13号証の1:2006年4月17日・月曜日・午後4時10分に,「Morris Moon」から「Kimura Masahiro」に送信された電子メールの本文と添付された図面をプリントアウトしたもの
(ミ-1) 甲第13号証の3:甲第13号証の1の日本語訳文
(ム) 甲第13号証の2:2006年4月18日・火曜日・午後8時55分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon;Kimura Masahiro」に送信された電子メールの本文と添付された図面をプリントアウトしたもの
(ム-1) 甲第13号証の4:甲第13号証の2の日本語訳文
(モ) 甲第14号証:甲第5号証の図面データのプロパティ画面をプリントアウトしたもの
(ヤ) 甲第15号証:特許情報プラットフォームによる特許・実用新案テキスト検索の結果を,2016年4月6日にプリントアウトしたものであって,検索条件は,2006年1月13日までに公開された公開特許公報,公開実用新案公報,実用新案公報のうち,出願人/権利者が「ぺんてる」,公報全文におけるキーワードは「ボール シール」である。

被請求人は,甲第1ないし15号証の成立を認めている。

第4 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は,「本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め,請求人が主張する無効理由は,理由がない旨主張し,証拠方法として乙第1?13号証を提出した。
乙第1号証?13号証の概要は以下のとおりである。
(1) 乙第1号証:本件特許に関連する3DモデルのCAD図面における,3Dモデルの作図履歴を示すデザインツリーの欄とフィーチャーのプロパティを拡大したものをプリントアウトしたもの
(2) 乙第2号証:乙第1号証の塗りつぶし部分を可視化したものをプリントアウトしたもの
(3) 乙第3号証:ぺんてる株式会社の社員番号「2381」が,ぺんてる株式会社の社員である「町田雅」であることを証明する,ぺんてる株式会社が2016年4月7日に発行した証明書
(4) 乙第4号証:実開平2-124193号公報(実願平1-33257号のマイクロフィルムを添付)
(5) 乙第5号証:実開平3-23494号公報(実願平1-83117号のマイクロフィルムを添付)
(6) 乙第6号証:2006年4月26日・午後7時43分に,「Masashi Machida」から「日原室長」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(7) 乙第7号証:乙第6号証の添付ファイルを3DCADソフトで開いた画面をプリントアウトしたもの
(8) 乙第8号証:乙第7号証の3Dモデルの作図履歴を示すデザインツリーの欄とフィーチャーのプロパティを拡大したものをプリントアウトしたもの
(9) 乙第9号証:2006年4月25日・午後9時12分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(10) 乙第10号証:2006年4月27日・10時52分に,「Katsuhiko Hihara」から「Morris Moon」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの
(11) 乙第11号証:乙第10号証の添付ファイルのうち「Extrusing Shape.xls.」をプリントアウトしたもの
(12) 乙第12号証:乙第10号証の添付ファイルのうち「P16-4_Ball-2,SLDPRT」を3DCADソフトで開いた画面をプリントアウトしたもの
(13) 乙第13号証:2006年4月27日・午後4時19分に,「Morris Moon」から「Katsuhiko Hihara」に送信された電子メールをプリントアウトしたもの

請求人は,乙第1ないし13号証の成立を認めている。

第5 本件発明
本件特許の請求項1,2に係る発明は,上記「第2 訂正の可否に対する判断」に記載したとおり,訂正を認めたため,平成27年8月3日に提出された訂正請求書に記載されたとおりの次のものと認める。(以下,それぞれを「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」といい,これらを総称して「本件訂正発明」という。)
「【請求項1】
軸筒内に前後動可能な筆記体を有し,前記筆記体の前後動作に連動して前記筆記体の筆記芯を外気から密封するシール蓋を有する筆記具であって,前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起によって作動させると共に,その突起と前記シール蓋との係合部をシール蓋の非シール部に設けたことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記突起を対向した位置に設けると共に,それら対向する突起を前記筆記体の長手方向における中心軸線を含む仮想面部から離隔した位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。」

第6 無効理由について
1 請求人の主張
(1-1)平成18年5月以前より,モリスコーポレーションは,本件特許の出願人であるぺんてる株式会社から依頼を受け,ボールシャッターを用いたスライド式筆記具に関するデザインを行うとともにこのスライド式筆記具に搭載される部品の供給(以下「本件プロジェクト」という。)を行っていた。(審判請求書第18頁第19?24行)
(1-2)本件特許及び甲第1号証に開示されるボールシャッターは,ペン先を摩耗させずに非接触でスライド(出没)動作と連動したシャッターの開閉を可能とした画期的な技術であり,モリスコーポレーション(請求人)によって初めてスライド(出没)式筆記具として具現化された。(審判請求書第18頁第25?28行)
(1-3)モリスコーポレーションは,(上記(1-2)に記載された)独自技術を保護するため,平成18年4月に韓国に出願し,その後に日本へも出願し,権利化を図った。(審判請求書第18頁第28?30行)

(2)本件特許の出願日である平成18年5月31日より前の平成18年4月26日に,モリスコーポレーションからぺんてる株式会社へ,本件発明の構成要件の少なくとも一部(「前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内に設けた突起によって作動させると共に」及び「その突起と前記シール蓋との係合部をシール蓋の非シール部に設けたことを特徴とする出没式筆記具」)が記載された図面が添付された電子メール(甲第4号証?甲第5号証の2)が送付された。(審判請求書第18頁第31?第19頁第1行)

(3)甲第4号証の電子メールの宛先には本件特許の発明者は入っていないが,甲第6号証及び甲第6号証の2に示すとおり,本件特許の出願日以前において本件特許の発明者はモリスコーポレーションと電子メールのやりとりを行っている。(審判請求書第19頁第2?5行)

(4-1)本件特許の図面は,その出願日より前に韓国で出願された甲第1号証の図面と酷似している。(審判請求書第19頁第6?7行)
(4-2)本件発明1の「前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内に設けた突起によって作動させると共に」に対応する本件特許の図7は,平成18年4月26日付けのモリスコーポレーションからぺんてる株式会社に送信された電子メールに添付された図における「Reinforcement」と指示された構造図と極めて酷似している。(審判請求書第19頁第7?10行)

(5)ぺんてる株式会社へ,特許を受ける権利の承継がなされていた事実はない。(審判請求書第19頁第11?12行)

(6)本件特許の発明者は,本件プロジェクトの一員であることが推定され,平成18年4月26日付けのモリスコーポレーションからぺんてる株式会社に送信された電子メール及び添付図面の内容が,本件特許の発明者にも,本件特許の出願前に伝わった蓋然性が高いと考えるのが極めて自然である。(審判請求書第19頁第13?17行)

以上のことより,モリスコーポレーションから送付された図面と無関係に本件特許が創作されたとは到底考えられず,本件特許は,その特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであることは明らかである。(審判請求書第19頁第18?21行)

2 被請求人の主張
本件特許の出願日前である2006年4月20日に,被請求人である「ぺんてる株式会社」に在籍し,本件特許の発明者である「町田雅」が作成及び更新した図面には,本件特許の発明特定事項のうち「前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」が記載されている。
したがって,「本件特許の本件発明1及び2が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものである」という請求人の主張は失当である。

3 各甲号証について
例えば,甲第9号証と甲第12号証の2に見られるように,モリスコーポレーションから送信されたメールには,別の甲号証として日本語訳文が提出されているが,同じ内容であるから,一体の証拠として扱うこととする。また,その場合は,メールの原文をプリントアウトした証拠(上記の例においては,甲第9号証)で代表し,日本語訳文の方はその後ろに括弧書きで記載することとする。
そして,各甲号証の内容の抜粋については,翻訳文が提出されているものに関しては,その翻訳文を抜粋した。
さらに,メールの送信者,受信者に関して,いずれのメールにおいても,請求人側,被請求人側のどちらに所属している者であるかが明らかであり,「請求人側から被請求人側へ」,「被請求人側から請求人側へ」のメール以外のメールが提出されていないので,送信者,受信者の個人を特定することなく,単に「請求人からのメール」,「被請求人からのメール」ということとする。
この取り扱いについては,各乙号証も同じである。

各甲号証によれば,以下の事項が認められる。
(1)甲第1号証について
甲第1号証は,審判請求人であるモリスコーポレーションが,本件特許の出願日より前にした「乾き防止装置を備えたスライド式筆記具」に係る出願の公表公報(特表2009-535233号公報)であって,本件発明1及び2が甲第1号証に記載された発明と同一であることを証明するために提出されたものである。
なお,「第3 請求人の主張及び証拠方法」の「1 請求の理由の概要」の「(1)無効理由」の「ア」で,述べたとおり,「本件発明1及び2は,甲第1号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条の2の規定により無効とすべきである。」とした無効理由(審判請求書における無効理由1及び2)は,取り下げられた。

(2)甲第2号証について
本件特許(特願2006-152440号)に係る,平成23年10月21日付け手続補正書である。

(3)甲第3号証について
本件特許(特願2006-152440号)に係る,平成23年10月21日付け意見書である。

(4)甲第4号証(甲第4号証の2)について
本件特許の出願日前である2006年4月26日の請求人からのメールには,
「ペン先ホルダーの端における突起部分:仮に我々があなたの要求に沿って変更したとすれば,添付図のようにボールの回転を阻害してしまいます。?ペン先ホルダーに弾丸形状のペン先を配置したときに突起部分はより目立って醜くなります。」と記載され,
「ペン先ホルダーの端における突起部分」について言及がなされている。

(5)甲第5号証(甲第5号証の2)について
本件特許の出願日前である2006年4月26日の請求人からのメールの添付ファイルの図面であって,「ペン先ホルダーの端における突起部分」が記載され,
図面から該突起部分が「ペン先ホルダーの端から突出していない」ことが看取できる。

(6)甲第6号証(甲第6号証の2),甲第12号証の2(甲第12号証の15)
本件特許の出願日前である2006年4月5日の被請求人からのメールには,
「HiharaさんからのSOLID WORKSのCADデータ入りのCDは受け取りましたか?」,「P16_Ca_2の部品:長円部分の長さが16.00mmから17.50mmとなります」が記載され,
「CADデータ入りのCDの受け取りを確認した」,「P16_Ca_2の部品データの訂正点がある」旨の記載がある。

(7)甲第7号証
本件特許の出願日前である2006年1月13日の請求人からのメールには,「Herewith enclosed the 3D design for Slim retractable marker,Pls check if somoething should be modified!We will prepare another drawings with size after evey matter become clear!」と記載され,
「マーカーの3Dデザインを送信するから,チェックを依頼する」,「図面の修正にも応じる準備がある」旨の記載がある。

(8)甲第8号証の1
甲第7号証に添付された添付ファイルのプリントアウトであって,
「Retr.Permanent Marker」の図面が記載されており,甲第8号証の1の3ページ目の図面において,「4.Cartridge」と示された部材の先端部分(「5.Nib」を指し示す矢印の先端近傍)に,「テーパー部分」が存在すること,該テーパー部分に「8.Shutter」と係合するための突起が存在すること,甲第8号証の1の「テーパー部分」,「Shutter」が,本件特許の「カバーリング」,「シール蓋」に,それぞれ相当することは認められるが,突起が「カバーリングの先端部から突出しない位置に設けた」点までは,当該図面及び他のページの図面から認めることはできない。

(9)甲第8号証の2
甲第7号証に添付された添付ファイルの図面のプロパティをプリントアウトしたものであって,「hyunson」なる作成者が,「P7.cdr」なるタイトルの文書を本件特許の出願日前である2006年1月13日に作製及び更新したことが認められる。

(10)甲第9号証(甲第12号証の1(甲第12号証の14))
本件特許の出願日前である2006年4月4日の請求人からのメールには,「我々の3Dデータを受け取っていただけましたか?我々は,貴方がAubexか他の業者にニブの注文をするかについてお尋ねします。」「ギアに関しては,SX-12と同じギアを使いますか?もしギアが同じ部品であれば,ギア部品を100ピースとRhodia製シリコーン100gを我々に送付していただけないでしょうか。ご連絡をお待ちしております。」と記載され,
「3Dデータの受け取りを確認する」旨の記載,「ニブの注文に対する質問」及び,「SX-12のギア部品等の送付」を依頼するの記載がある。

(11)甲第10号証の1(甲第10号証の4)
本件特許の出願日前である2006年2月8日の被請求人からのメールには,
(被請求人からの本文)「フランクフルトペーパーワールド内の貴展示台で,我々の訪問を受け入れてくれて感謝します。そして,前回と異なると言える第2の金型デザインに関する簡易図面に対しても感謝致します。?イギリスぺんてるからの既存オーダーが生産となって4月からSX12が立ち上がり,この初期オーダーに対しては到着をもって支払われ(貴港からの出荷後30?40日),取引期間については継続して話し合うことを希望します。
(2006年2月7日付けの請求人からの過去のメール)「ドイツでの面会につきありがとうございました。我々は,共に末永く有益な関係を構築していけると信じております。参考として,市場で販売予定の,開発中の我々独自のデザインによる新デザインを準備しました。ご覧の通り,このデザインは,現在のぺんてるSX-12シリーズとは非常に異なったデザインとなっております。このデザインの受領後,できるだけ早急に次のステップ(未決の注文,協定作業など)に進むことを望みます。」と記載され,
「フランクフルトペーパーワールドで,被請求人が請求人を訪問したことに対して,被請求人から請求人への御礼」,「被請求人からのイギリスぺんてるからのオーダーによるSX12に関する相談」に関する記載がある。

(12)甲第10号証の2
本件特許の出願日前である2006年1月25日?29日の会期で,フランクフルト国際文具・紙製品見本市が開催されることが記載されている。

(13)甲第10号証の3
「ぺんてる SX12 Handy-line(ハンディライン)ノック式蛍光ペン」が,販売されていることを示すホームページ上の情報が記載されている。

(14)甲第11号証の1
甲第1号証の書誌事項が記載されている。

(15)甲第11号証の2
甲第1号証の拒絶理由通知であって,請求項5及び6に対してのみ,特許法第36条第6項第2号に係る拒絶理由,つまり特許請求の範囲の記載要件に関して拒絶理由が通知されていることが認められる。

(16)甲第12号証の3(甲第12号証の16)
本件特許の出願日前である2006年4月13日の被請求人からのメールには「Skim marker mold」のタイトルのもと,「金型について次の点についてお尋ねします。1)各部品の注入箇所の位置 2)Runner structure(キャビティ調整) 金型構造の描画が完成したら,その金型図面を送付願います。1個取り金型はどのように進めますか?1個取り金型のスケジュールを連絡願います。」と記載され,
「(Skim marker moldの)金型に対する質問」の記載がある。

(17)甲第12号証の4(甲第12号証の17)
本件特許の出願日前である2006年4月17日の被請求人からのメールには「Re:Skim marker mold」のタイトルのもと,「(被請求人からの)電子メールありがとうございました。我々は貴方の図面を受領できました。」
(2006年4月17日付けの請求人からの過去のメールであって,タイトルは「RE:Skim marker mold」)「容量がとても大きいので,電子メールが返ってきました。よって,再送します。もし受信できなければお知らせください。私は他の方法を探します。」
(2006年4月17日付けの請求人からの過去のメールであって,タイトルは「RE:Skim marker mold」)「金型に関する添付図面をご参照ください。1個取り金型については,詳細なスケジュールをすぐご連絡するように致します。」
(2006年4月13日付けの被請求人からの過去のメールであって,タイトルは「Skim marker mold」)「金型について次の点についてお尋ねします。1)各部品の注入箇所の位置 2)Runner structure(キャビティ調整) 金型構造の描画が完成したら,その金型図面を送付願います。1個取り金型はどのように進めますか?1個取り金型のスケジュールを連絡願います。」と記載され,
「(Skim marker moldの)図面を受領した」旨の記載,及び,この受領を報告するメール以前の同日に,請求人と被請求人との間で,図面の送信,受信に関して,やりとりがあったこと,ならびに「Skim marker moldの金型」に関して,このメールより前の日に請求人と被請求人との間で,やりとりがあったことの記載がある。

(18)甲第12号証の5(甲第12号証の18)
本件特許の出願日前である2006年4月21日の被請求人からのメールには,「我々は,「Knob INT.直径5.62mm」をチェックしました。それは,インク収容部の直径に対して小さいです。よって,このINT.直径5.62mmから直径5.82mmに変更してください。」と記載され,
「Knob INT.直径5.62mmをチェックして,5.82mmに変更することを依頼する」旨の記載がある。

(19)甲第12号証の6
(甲第12号証の19)
本件特許の出願日前である2006年4月21日の被請求人からのメールには,「日原氏と技術的事項について確認されている段階であることだと思います。我々の希望スケジュールについて説明します。最重要事項は,これらのスリムで格納可能な蛍光ペンとマーカーとISOTの展示会で紹介することです。
ISOTにおける紹介前に希望するサンプルは次のとおりです。
1.チラシにおける写真撮影用サンプル
これらのサンプルはシングルキャビティで製造することとします。
2・ISOTサンプル
希望配送時期:6月30日
3.販売員向けサンプル
希望配送時期:6月30日
4.正式製品の購入
9月から購入するスケジュールでいます。
6月末までに注文書を連絡します。」と記載され,
「スリムで格納可能な蛍光ペンとマーカーをISOT(国際文具・紙製品展)の展示会で紹介する」旨の記載がある。

(20)甲第12号証の7(甲第12号証の20)
本件特許の出願日前である2006年4月25日の被請求人からのメールには,「スリムマーカーのカートリッジ図面」のタイトルのもと,「カートリッジの型構造に関しまして,我々の推奨するPL-lineを製造することは出来ますか?前回の我々のカートリッジデザインは前部形状(突出部形状)の見栄えが良くないです。したがって,我々は前部形状のデザインを修正し,そして,PL-lineを製造するための修正した突出部形状と平坦面に関するカートリッジ図面を送付します。添付ファイルを参照いただき,直ちに1個取り金型を進めてください。」と記載され,
「(スリムマーカーの)カートリッジの図面を送付する」旨の記載がある。

(21)甲第12号証の8(甲第12号証の21)
本件特許の出願日前である2006年5月9日の被請求人からのメールには,
(被請求人からの本文)「我々は,来週,蛍光ペンのニブについてAubexにコンタクトします。我々の見積もり後に,Teibowにコンタクトします。」
(2006年5月9日付けの請求人からの過去のメール)「1.新しいスリムマーカーについて我々はAubexと議論しませんでした。」
(2006年5月9日付けの被請求人からの過去のメール)「スリム蛍光ペンのニブについて,スリム蛍光ペンのニブでAubexとコンタクト中です。」と記載され,
「蛍光ペンのニブについてAubexにコンタクトをする」旨の記載及び,この報告のメールの前の同日に請求人と被請求人との間で,「蛍光ペンやアクリル製のニブ」に関して,やりとりがあったことの記載がある。

(22)甲第12号証の9(甲第12号証の22)
本件特許の出願日前である2006年5月9日の被請求人からのメールには,
「我々は貴方に,次のSX12部品を依頼したいと考えております。油性インクによるブロッキング問題を明確にしたい。しかし今では,Rhodia製シリコーンに変更したので何ら問題はありません。」と記載され,
「被請求人から請求人に,SX12部品を依頼する」旨の記載がある。

(23)甲第12号証の10(甲第12号証の23)
本件特許の出願日前である2006年5月10日の被請求人からのメールには,
「インクカートリッジケースの図面に関し,気密部が変更された新たな図面をお送りします。5月2日付電子メールに添付のインクカートリッジケース図面を木村氏が送付したとき,彼は貴方に気密部を修正することをお伝えしました。我々は,気密部をカートリッジとインクカートリッジケースの間に変更したいです。添付ファイルは,その変更を反映した図面です。」と記載され,
「インクカートリッジケースの気密部が変更された新たな図面を送信する」旨の記載がある。

(24)甲第12号証の11(甲第12号証の24)
本件特許の出願日前である2006年5月11日の被請求人からのメールには「気密ゾーンの緊急事項!!!!!!」のタイトルのもと,
(被請求人からの本文)「はい,貴方の事情は理解しました。よって,貴方推奨のノブ型で製造に進んでください。」
(2006年5月11日付けの請求人からの過去のメール)「もし我々が貴方のデザインに従えば,我々はEnjection m/cから各部品を手作業でやらねばならず,これはコストが非常にかかることを意味します。しかしながらもし我々が提案した気密ゾーンに変更すれば,上記部品は自動的にEnjection m/cから姿を現します。」
(2006年5月11日付けの被請求人からの過去のメール)「我々の推奨は,実際のPLlineに対して2mm移動した分割線です。したがって,このPLlineはノブの頭から3.8mmに位置します。」
(2006年5月11日付けの請求人からの過去のメール)「貴方の型構造を早急に我々へ送付いただけませんか?なぜならば,我々の型の技術者は既に型構造を完了させ,金属部分の製造を問い合わせてきているからです。タイトなスケジュールだからです!!ノブの頭から1.8mmエッジまで分割線があります!」
(2006年5月11日付けの被請求人からの過去のメール)「ノブは分割線ですか??現在,我々はノブの型構造を準備しており,すぐに貴方へ送付します。」
(2006年5月11日付けの被請求人からの過去のメール)「我々は,貴方のカートリッジの図面をチェックし,型の技術者及び設計者と共に議論しました。我々は,添付図に示すように気密ゾーンを変更すべきだということを見出しました。もし我々が貴方の図に従えば,分割線があります。?本日にあなたの確認が必要です!そうでなければ,ISOT展示会に向けた我々のスケジュールに影響を及ぼします。」と記載され,
「請求人側の事情を理解したこと」,「請求人側が推奨するノブ型で製造を依頼する」旨の記載及び,この報告のメールの前の同日に請求人と被請求人との間で,「気密ゾーンの緊急事項」に関して,やりとりがあったことの記載がある。

(25)甲第12号証の12(甲第12号証の25)
本件特許の出願日前である2006年5月15日の被請求人からのメールには,
「添付のスリムで格納可能な蛍光ペンおよびマーカーに関する開発スケジュールをご確認ください。そして,すべての型を製造する貴方のスケジュールを矢印で示してこのスケジュール内に加えてください。さらに,それを確認して貴方の意見をいただければと思います。」と記載され,
「スリムで格納可能な蛍光ペンとマーカーに関する開発スケジュールの確認を依頼する」旨の記載がある。

(26)甲第12号証の13(甲第12号証の26)
本件特許の出願日である2006年5月31日の被請求人からのメールには,
(被請求人からの本文)「ISOT向けおよび販売員向けサンプルに関し,我々はいくつかの事項を準備しています。我々は,次に掲げる部品についてお尋ね致します。」
(2006年5月29日付けの請求人からの過去のメール)「関連事項(スプリング/インクリザーバなど)は,予測とスケジュールに応じて準備致します。」
(2006年5月29日付けの被請求人からの過去のメール)「1milは蛍光ペンのみで,蛍光ペンのニブはAubexからです。マーカーのニブはTeiboからです。」
(2006年5月29日付けの請求人からの過去のメール)「はい。しかし我々は,マーカーと蛍光ペンの2つの製品を所有しています。これらすべてのニブはAubexからですか?1milはマーカー+蛍光ペンですか??」
(2006年5月29日付けの被請求人からの過去のメール)「最初の1ロットオーダーは,3?4ヶ月で1000000ピースです。私がこの量をAubexに通知してもよろしいでしょうか?」
(2006年5月29日付けの請求人からの過去のメール)「スリムマーカーに関する貴方の尽力について感謝致します。参考情報として,この製品に関する予測を我々は持っていないため,本日私は木村氏に予測について尋ねました。」
(2006年5月29日付けの被請求人からの過去のメール)「先週,私はAubexと蛍光ペンのニブに関する打ち合わせを行いました。順当であれば,ニブの量産を依頼したら配送時期は9月になります。」と記載され,
「ISOT向けおよび販売員向けサンプルに関しての質問」,及び,「スリム蛍光ペンのニブ」に関して,この質問のメールより前の日に請求人と被請求人との間で,やりとりがあったことの記載がある。

(27)甲第13号証の1(甲第13号証の3)
本件特許の出願日前である2006年4月17日の請求人からのメールには「スリムマーカーの改訂図面」のタイトルのもと,
「このデザインを参照ください。質問事項があればお気軽にお尋ねください。」と記載され,
「スリムマーカーの改訂図面のデザインの参照を依頼する」旨の記載がある。

(28)甲第13号証の2(甲第13号証の4)
本件特許の出願日前である2006年4月18日の被請求人からのメールには,
(被請求人からの本文)「我々は,貴方の改訂図面をチェックしました。我々は,ニブの向きを回転させることは受容出来ません。?我々サイドでも,明日この問題を議論します。」
(2006年4月17日付けの請求人からの過去のメール)「このデザインを参照ください。質問事項があればお気軽にお尋ねください。」と記載され,
甲第13号証の1のスリムマーカーの改訂図面のデザインの参照を依頼を受けて,「改訂図面をチェックした」旨の記載がある。

(29)甲第14号証
甲第5号証の図面のプロパティをプリントアウトしたものであって,「hyunson」なる作成者が,「MO_0426.cdr」なるタイトルの文書を本件特許の出願日前である2006年4月26日に作成し,本件特許の出願日後である2015年4月1日に更新したことが認められる。

(30)甲第15号証
特許情報プラットフォームによる特許・実用新案テキスト検索(検索条件は,2006年1月13日までに公開された公開特許公報,公開実用新案公報,実用新案公報のうち,出願人/権利者が「ぺんてる」,公報全文におけるキーワードは「ボール シール」)した結果,ヒット件数は93件であることが認められる。

4 各乙号証について
各乙号証によれば,以下の事項が認められる。
(1)乙第1号証
本件特許の出願日前である2006年4月18日の被請求人が作成及び更新した図面と,図面の作図履歴を示すデザインツリーの欄とフィーチャーのプロパティが記載されている。
図面には,銀色の筒状体と,該筒状体の先端部に取り付けられた青色の湾曲した2つの薄肉部材と,該薄肉部材に取り付けられた略円柱状の突起が認められ,該突起は薄肉部材の先端方向を超えていないことが看取できる。

(2)乙第2号証
乙1号証における塗りつぶし部分から,塗りつぶしを除去したものであって,作成及び更新した者は「2381」であることが認められる。

(3)乙第3号証
ぺんてる株式会社の社員番号「2381」は,「町田雅」であって,乙第1?3号証を総合すると,乙第1号証の図面を作成及び更新した者は「町田雅」であることが認められる。

(4)乙第4号証
本件特許の出願日前である1990年10月12日に公開された実用新案出願公開公報(実開平2-124193号公報),当該実用新案出願(実願平1-33257号)のマイクロフィルムであって,ボールシャッターを用いたスライド式筆記具が記載されている。

(5)乙第5号証
本件特許の出願日前である1991年3月12日に公開された実用新案出願公開公報(実開平3-23494号公報)と,当該実用新案出願(実願平1-83117号)のマイクロフィルムであって,ボールシャッターを用いたスライド式筆記具が記載されている。

(6)乙第6号証
本件特許の出願日前である2006年4月25日の請求人からのメールには「Cartridgeの図面の件」のタイトルのもと, 「中軸先端の突起形状と,後ろ側のDカット部を書き換えた3Dデータを添付します。モーリスに送って下さい。」と記載され,
「Cartridgeの図面を,モーリスに送ることを依頼する」旨の記載があり,添付ファイルのタイトルは「P16-4 Ca-3-5.SLDPRT」であることが認められる。

(7)乙第7号証
乙6号証の添付ファイルの図面であり,図面からは,銀色の筒状体と,該筒状体の先端部に取り付けられた青色の湾曲した2つの薄肉部材と,該薄肉部材に取り付けられた略円柱状の突起が認められ,該突起は薄肉部材の先端方向を超えていないことが看取できる。

(8)乙第8号証
乙第7号証のフィーチャーのプロパティであって,本件特許の出願日前である2006年4月20日に,「2381」が,作成及び更新したことが認められる。

(9)乙第9号証
請求人が提出した甲第12号証の7(甲第12号証の20)と同一のメールであって,本件特許の出願日前である2006年4月25日の被請求人からのメールには,「Slim maraker cartridge drawing」のタイトルのもと,
「Concerning to Cartridge mold structure. are you able to make our recommend PL-line?
Last our cartridge design is not good looks for front shape (protrusion shape). So, We corrected the design of front shape and send you the corrected cartridge drawing of protrusion shape and flat face in order to make PL-line.
Please refer to attached file and proceed the single cavity mold immediately.」と記載され,
「(スリムマーカーの)カートリッジの図面を送付する」旨の記載がある。

(10)乙第10号証
請求人が提出した甲第4号証のメールに対する返信とした,本件特許の出願日前である2006年4月27日の被請求人のメールであって,その本文には,
「We discussed to your opinion for interference of ball.
The interference of ball is similar to actual shape, please refer attached EXCEL file. So we proceed the our design of extrusion shape.
And, We would like to modify Ball shape as attached file in order to avoid the interference turning of ball.
Please consider our opinion.」と記載され,
「我々の押し出し部材のデザインを推し進めたい」,「回転時に他部材と干渉する現行のボール形状を修正したボール形状を検討してほしい」旨の記載がある。

(11)乙第11号証
乙第10号証の添付ファイルのうち「Extrusing Shape.xls.」をプリントアウトしたものであって,「修正した押し出し部材」と「現行の形状」の図面があり,いずれの図面にも干渉している点が記載されている。

(12)乙第12号証
乙第10号証の添付ファイルのうち「P16-4_Ball-2,SLDPRT」を3DCADソフトで開いた画面をプリントアウトしたものであって,本件訂正発明における「シール蓋12」に相当する図面である。

(13)乙第13号証
被請求人が提出した乙第10号証のメールに対する返信とした,本件特許の出願日前である2006年4月27日の請求人からのメールの本文には,
「We well studied your modified drawings, we will follow your advise.
Now, our mold design delayed very much, in order to catch up with your requested schedule, we are in a very very hurry !」と記載され,
「モールドデザインが非常に遅れていること」,「被請求人が要求するスケジュールに間に合うようにするためには,請求人は非常に急がなくてはならない」旨の記載がある。

第7 判断
1 当審の判断
請求人及び被請求人が提出した証拠のうち,本件訂正発明の発明特定事項である「前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起によって作動させる」に,直接的に関連する,つまり,カバーリングの先端部及び突起に係る形状並びに構造を,当業者が十分に把握できる程度に記載された証拠は,以下のとおりであると認められる。
甲第5号証:2006年4月26日の日付の図面
甲第8号証の1:2006年1月13日の日付の図面
乙第1号証:2006年4月20日の日付の図面
上記の証拠を,日付の古いものから順に並べると,以下のとおりである。
甲第8号証の1,乙第1号証,甲第5号証
そして,「第6 無効理由について」の「3 各甲号証について」及び「4 各乙号証について」で述べたように,上記発明特定事項が記載されている証拠は,甲第5号証と乙第1号証のみであって,日付が最も古い甲第8号証の1には記載がない。
したがって,上記発明特定事項が記載されている最も古い証拠は乙第1号証となり,この乙第1号証の図面は,本件訂正発明の発明者である「町田雅」によって作成された図面であることは,乙第2号証及び3号証から明らかであって,本件訂正発明は,ぺんてる株式会社の町田雅が発明したものであるとするのが合理的である。
したがって,本件訂正発明は,特許法第35条第1項に定義される「職務発明」に該当し,職務発明である以上,使用者である「ぺんてる株式会社」は,従業者である「町田雅」のした発明について特許を受けたとき,その特許権について通常実施権を有することになる。
また,本件訂正発明が「町田雅」以外の発明者が発明したものであるとの主張,それを立証する証拠の提出はなされておらず,本件特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえない。

2 請求人の主張につき検討する。
(1-1)審判請求書の第18頁第19行?30行の「平成18年5月以前より,モリスコーポレーションは,ぺんてる株式会社から依頼を受け,ボールシャッターを用いたスライド式筆記具に関するデザインを行うとともに,このスライド式筆記具に搭載される部品の供給を行っていた」との記載,甲第4,5,7及び甲第12号証の1?13号証のモリスコーポレーションと,ぺんてる株式会社との間で交わされたメール及び添付ファイル等の証拠から,モリスコーポレーションは,ぺんてる株式会社と「Buyer/Provider」の関係にあったことは認められるが,このことをもって,本件訂正発明が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえない。
なお,請求人は「平成18年5月以前より,ぺんてる株式会社に部品の供給を行っていた」旨,主張しているが,「平成18年5月以前」を証明する証拠については何ら提出されていない。

(1-2)本件訂正発明に開示されるボールシャッターは,乙第3号証,乙第4号証に見られるように,モリスコーポレーションではない出願人によって出願され,甲第1号証の優先日である平成18年4月28日より前に公開された技術であるから,モリスコーポレーション(請求人)によって,初めてスライド(出没)式筆記具として具現化されたものではない。

(1-3)ペン先を摩耗させずに非接触でスライド(出没)動作と連動したシャッターの開閉を可能とする技術を保護するため,平成18年4月に韓国に出願(10-2006-0038608(平成18年4月28日))し,その後に日本に出願(特願2009-507598号(平成19年4月26日))し,権利化を図った(特許第4746129号(平成23年5月20日))点については認められる。
しかしながら,「第6 無効理由について」,「3 各甲号証について」,「(1)甲第1号証について」で,検討したとおり,甲第1号証である「特願2009-507598号の公表公報である特表2009-535233号公報」に記載された発明は,本件訂正発明との間に相違点を有しており,当該相違点は,課題解決のための具体化手段における微差でもないため,両者は同一ではない。
したがって,本件訂正発明と異なる発明が,韓国において出願され,日本において出願並びに登録されたことをもって,本件特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとする理由にはならない。

(2)本件特許の出願日より前に,モリスコーポレーションからぺんてる株式会社へ,本件発明の構成要件の少なくとも一部が記載された図面が添付された電子メールが送付された点と,(4-1)の本件特許の図面は,甲第1号証の図面と酷似している点と,(4-2)の本件特許の図7は,甲第5号証の図面に酷似している点は,いずれも図面に関係しているため,併せて検討する。
本件訂正発明の発明特定事項である「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」が記載された図面が添付された電子メールが2006年4月26日に送付されたこと,その図面が甲第5号証であること,本件特許の図7が甲第5号証の図面に酷似していることは認められる。
そして,審判請求書の第18頁第19行?30行の「平成18年5月以前より,モリスコーポレーションは,ぺんてる株式会社から依頼を受け,ボールシャッターを用いたスライド式筆記具に関するデザインを行うとともに,このスライド式筆記具に搭載される部品の供給を行っていた」との記載,甲第4,5,7及び甲第12号証の1?13号証のモリスコーポレーションと,ぺんてる株式会社との間で交わされたメール及び添付ファイル等の証拠からみれば,請求人が主張するとおり,モリスコーポレーションは,ぺんてる株式会社から依頼を受け,ボールシャッターを用いたスライド式筆記具に関するデザインを行うとともにこのスライド式筆記具に搭載される部品の供給を行っていたのであるから,両者間で該スライド式筆記具に搭載される部品の図面を互いに相手方に送付して,その結果,同じ図面や酷似する図面を共有していた蓋然性が非常に高いことは,十分考えられることである。
また,モリスコーポレーション及びぺんてる株式会社が,スライド式筆記具を独自に開発していたと想定した場合であっても,スライド式筆記具が機構上及び構造上,きわめて複雑であるとまではいえないから,両者それぞれに帰属する図面において,酷似する図面が存在してしまうことは,不自然ではない。
なお,甲第1号証については,本件訂正発明の発明特定事項である「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」が描かれた図面はなく,本件特許の図面は,上記発明特定事項が記載された図面に関して,甲第1号証の図面と酷似しているとはいえない。
さらに,甲第5号証は2006年4月26日に請求人から被請求人に送信された甲第4号証のメールの添付ファイルであるところ,乙第1?3号証に示されるように,2006年4月26日より前の2006年4月20日に,ぺんてる株式会社の社員である「町田雅」が作成及び更新した図面において,本件訂正発明の発明特定事項である「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」が明瞭に記載されていることを踏まえると,本件特許の図7と甲第5号証の図面が酷似してとの理由で,本件訂正発明が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえない。
また,請求人は,甲第7号証,甲第8号証の1及び2をもって,2006年4月20日より前の2006年1月13日に,本件訂正発明の発明特定事項である「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」を記載した図面を,被請求人に送信していたと主張しているため,この点について検討する。
「第6 無効理由について」の「3 各甲号証について」で述べたとおり,甲第8号証の1のいずれの図面にも,本件訂正発明の発明特定事項である「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」が記載されているとは認められない。
よって,本件訂正発明の発明特定事項である「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」が記載されている最先の図面は,乙第1号証の図面であるとするのが妥当である。
そして,乙第1号証の図面は,ぺんてる株式会社の社員である町田雅が作製したものである以上,本件特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(3)本件訂正発明の発明者と,モリスコーポレーションとの間で,本件特許の出願日以前に電子メールのやりとりが行われていたことは認められるが,本件訂正発明の発明特定事項である「筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって,かつ,そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起」に関して,本件訂正発明の発明者である町田雅が乙第1号証の図面を作製した2006年4月20日より前に,電子メールを通じてモリスコーポレーションから知り得たとする証拠は何ら提出されておらず,本件訂正発明が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(5)ぺんてる株式会社へ,特許を受ける権利の承継がなされていた事実はない点について,そもそも本件訂正発明は,ぺんてる株式会社の社員である「町田雅」が作成した図面に基づくものであること,及び特許法第35条第1項に定義される「職務発明」に該当することは明らかである。
そして,職務発明である以上,使用者である「ぺんてる株式会社」は,従業者である「町田雅」のした発明について特許を受けたとき,その特許権について通常実施権を有することになる。
また,本件訂正発明1及び2が,「町田雅」以外の発明者が発明したものであるとの主張,それを立証する証拠の提出はなされておらず,ぺんてる株式会社が,特許を受ける権利の承継がなされていた事実がなくとも,このことをもって,本件特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(6)本件特許の発明者に,甲第5号証の図面が,本件訂正発明の出願前に伝わった蓋然性が高く,本件訂正発明は,甲第5号証に無関係に創作されたものとは考えられないとの請求人の主張は,本件訂正発明の発明者に,甲第5号証の図面が,本件訂正発明の出願前に伝わったことを証明する証拠は何ら提出されていないから,採用することはできない。
したがって,本件特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとはいえない。

第8 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張するとおり,本件特許はその特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
したがって,請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件訂正発明1及び2についての特許を無効にすることはできない。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
出没式筆記具
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に前後動可能な筆記体を有し、前記筆記体の前後動作に連動して前記筆記体の筆記芯を外気から密封するシール蓋を有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
水性インキや油性インキなどが収納された筆記具は、筆記芯の乾燥や筆記芯からのインキの蒸発を防止するために、キャップが着脱自在に取り付けられている。勿論、前記筆記芯を被覆し密閉状態にするためのキャップである。
しかし、近年においては、前記キャップの着脱操作の煩わしさや、キャップの紛失などを考慮し、軸筒内に筆記体を出没可能に配置すると共に、前記キャップの作用をなすシール蓋を、前記筆記体の出没動作に連動させて開閉する出没式筆記具が市販されるようになってきている。
【0003】
以下、具体的に説明する。軸筒の前端には、筆記芯が出没する開口部が形成されており、また、その開口部の後部であって前記軸筒の内部には、筆記芯を覆おう密閉状態にする開閉可能なリップが配置されている。そのリップは、弾性を有する筒体の前端部を絞り閉塞させているが、その閉塞部の前端面には、スリットが形成されている。このスリットが前記筆記芯によって拡開され、筆記芯が突出するのである。そして、筆記芯の没入時においては前記リップのスリットが自らの復元力で閉塞し、筆記芯を再び覆い外気からシールし密閉するものとなっている。
【特許文献1】
特開2004-314513
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記の従来技術にあっては、筆記に最も重要である筆記芯によってリップのスリットを拡開している。即ち、筆記芯を出没させるたびに、筆記芯とリップとの間に摺動摩擦が生じてしまっている。そして、この摺動摩擦によって、リップのスリットには摺動キズや形状変化が発生し、その結果、スリットの密閉不良を起こしてしまっていた。また、前記の摺動摩擦は、筆記芯を磨耗、或いは、変形させてしまい、筆記時のカスレの原因ともなってしまっていた。
また、筆記芯がリップのスリットを通過する際、そのスリットに筆記芯のインキが付着してしまい、これまた、スリットの密閉性を悪いものとしてしまっていた。つまり、スリットに付着したインキが乾燥し、粒状となって密閉性を悪くしてしまうのである。
更に、延長部の前端外周部分に膨らみを形勢し、その膨らみによって前記リップのスリットを拡開する手段も試みられたが、延長部とスリットの間に摺動摩擦が発生してしまい、密閉不良を起こす原因となってしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、軸筒内に前後動可能な筆記体を有し、前記筆記体の前後動作に連動して前記筆記体の筆記芯を外気から密封するシール蓋を有する筆記具であって、前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって、かつ、そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起によって作動させると共に、その突起と前記シール蓋との係合部をシール蓋の非シール部に設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、軸筒内に前後動可能な筆記体を有し、前記筆記体の前後動作に連動して前記筆記体の筆記芯を外気から密封するシール蓋を有する筆記具であって、前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって、かつ、そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起によって作動させると共に、その突起と前記シール蓋との係合部をシール蓋の非シール部に設けたので、筆記芯がシール蓋のシール部に接触することなくシール蓋を開閉することができ、これによって、安定した密閉性と筆記が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。また、全ての図面において同一ないし類似の部分は便宜上、同一ないし類似の符号を付けて説明する。
【0008】
(実施の形態1)
図1?図10により本発明の実施の形態1に係る筆記具を例示的に説明する。その筆記具は単一のケースまたは複数の部品からなるケース形態のうち、いずれかである軸筒1になっており、この軸筒1の内部には筆記芯2を外気から密封した密閉装置3を備えている。なお、軸筒1の筆記芯2が突出する側を前方、ノック体6の側を後方と、以下称す。
密閉装置3の後方内面には、樹脂材質から形成され、水やエタノールなどを含むインキを収容した筆記体4が配置されている。その筆記体4は、前軸5とその前軸5に着脱自在に螺合・固定したノック体6から構成されており、前軸5の細軸部7となっている他端には筆記芯2が装着されている。
前記筆記体4を後方に向けて付勢するスプリング8は細軸部7の案内段部9に設けられており、そのスプリング8の一端は、細軸部7の段差側面10に弾性支持され、他端は密閉装置3の一部品であり前軸5の細軸部7に外接される第2Oリング10aの一端面に弾性支持される。
また、後述もするが、密閉装置3の概略的な構成は、軸筒1、この軸筒1の内部に設けられる第2Oリング10a、リテーナ11、シール蓋12及び第1Oリング13からなっている。これらの構成要素はそれぞれの形状を有し、所定の機能を提供するようになっている。
また、軸筒1の後方外周面にはガイドスリット14が設けられ、そのガイドスリット14は軸筒1の壁体を貫通して軸方向に延びている。そのガイドスリット14の両側には複数の固定穴15が開いている。この複数の固定穴15にはフックを設けた突起を形成したクリップ16が取り付けられる。そのクリップ16は、一端が固定されるように軸筒1に取り付けられており、軸筒1に固定されない他端には凸部17が形成されていることにより、紙などの薄いものを軸筒1と挟み込むことができる。そのクリップ16に形成された凸部17の内側にはギア18が軸方向に回転可能に挿設されている。
【0009】
密閉装置3について、図2?図12を基に説明する。
前述もしたが、前軸5の細軸部7に設けられたスプリング8は、一端が細軸部7の段差側面10の案内段部9に案内されながら弾性支持され、他端は前軸5の細軸部7に外接された第2Oリング10aの一端面に弾性支持されている。その第2Oリング10aは、細軸部7が外接されるように内側に凸形状の突起19を円周方向に形成している。なお、本例では突起間の隙間にシリコーンオイルを介在させ、筆記体4の摺動によってシリコーンオイルが剥ぎ取られないように3個の突起19を設けているが、この突起19は1個又は複数個形成してもよい。
前記細軸部7は後方から前方に向けて摺動筒部20とその摺動筒部20の前方に形成され、前方に向かって拡径するテーパー筒部21とそのテーパー筒部21の前方に形成され、前記摺動筒部20より大径な先端筒部22とから構成されている。そして、その先端筒部22の前端には、先端筒部22よりも外径が小径であるが、内径が大径なるカバーリング22aが形成されている。そのカバーリング22aは、全周上に渡って形成されているのではなく、1部に切欠部22bが形成されている。この切欠部22bによって空気の置換がなされるのである。つまり、筆記に連れインキが消費され、筆記体4内が減圧されるが、前記切欠部22bから空気が筆記体4内に侵入し、これによって前記の減圧が解消され、良好な筆記が得られるのである。
また、その切欠部22bの近傍であって、前記カバーリング22aの表面には突起37が対向する位置に形成されているが、その突起37はカバーリング22aと先端筒部22に架けて形成されている。突起37の断面形状は、ほぼ円径状をなしているが、一部が切り欠かれている(切欠部37a)。後述するシール蓋12を容易に開閉させるための切欠部である。
さらに、前記カバーリング22aの内面後方には小径部を形成することによって段部が形成されており、その段部に筆記芯2の中間部に形成された段部が係止している。これらカバーリング22aの段部と筆記芯2との当接によって、その筆記芯2の筆記体4への没入が防止されている。
なお、前記カバーリング22aは、前記突起37を補強する作用をなしており、また、ペン先2の中間部を補強する作用もなしている。
【0010】
前記細軸部7は筆記体4が前後移動する際に、第2Oリング10aの突起19と摺動しており、筆記芯2が軸筒1内に収納されている状態で、第2Oリング10aの内面に密接しているが、このテーパ面21により第2Oリング10aの突起19がより強く密接されることとなる。また、前記第2Oリング10aの外周面には半円状の突起23が円周方向に形成され、軸筒1の内面に形成したテーパ面24に密接している。
前記第2Oリング10aの前方には、リテーナ11が配置されており、そのリテーナ11は、第2Oリング10aの他端面25がリテーナ11の内部に一端が挿入された状態で設置されている。また、リテーナ11の前端には一対の回転支持軸26が形成されており、それぞれの回転支持軸26にはヒンジ孔27が形成されている。そのヒンジ孔27には、半球状をなしたシール蓋12に形成されているヒンジ軸28が回転可能に配置されている。前記軸筒1の内面にはリテーナ11の前方への移動を阻止する壁部29が形成されており、リテーナ11の回転支持軸26のヒンジ孔27に軸支されたヒンジ軸28を挟み込むようにしている。
また、軸筒1の先端開口部30内面には、第1Oリング13が配置されている。この第1Oリング13の段部側面31には凸形状の突起32が円周状に形成されており、軸筒1の先端開口部30内面に設けられた段部33に密接している。その第1Oリング13の後部端面の内側R部34には、第2Oリング10を介してリテーナ11から伝わってきたスプリング8の弾発力がシール蓋12を前方へ押圧し、シール蓋12のボール状表面35と当接している。この弾発力で第1Oリング13がシール蓋12と軸筒1に挟まれることにより、第1Oリング13が弾性変形し、軸筒1の先端開口部30を密封させている。この第1Oリング13と第2Oリング10により、密閉室36が形成される。
【0011】
ここで、ノック体6を押圧すると、筆記体4がスプリング8の弾発力に抗して前進し、筆記芯2が先端開口部30から突出するが、この際、前軸5の細軸部7の先端に形成した突起37がシール蓋12の両側面に形成された回転溝38に接触する。さらに筆記体4が前進すると、シール蓋12がリテーナ11のヒンジ孔27に配置されたヒンジ軸28を中心に回転する。回転溝38は前軸5の平行突起37に比べて充分に大きい溝形状をなしているため、前記突起37の前進によってシール蓋12が回転動作をする間、突起37はシール蓋12の回転溝38内で干渉されることなく前進することができる。シール蓋12が90°回転すると回転溝38から突起37が外れ、軸筒1の先端開口部30に向かう。シール蓋12のボール状表面35は、シリコーンが塗布されているため、第1Oリング13のR部34と円滑に回転することができる。
シール蓋12と筆記芯2には充分な隙間を持たせており、筆記芯2が平行移動によって軸筒先端開口30付近に到達したころにはシール蓋12はすでに開かれているため、筆記芯とシール蓋は接触することはない。
【0012】
なお、筆記時は、筆記面に対してクリップ16を上側にして筆記させるとクリップ16が持つ手の邪魔にならないため、ほとんど全ての使用者はクリップ16を上側にして使用することが予測される。筆記体が前後動作する際、前軸5の細軸部7先端に形成した突起37がシール蓋12を回転させるためには、シール蓋12に設けたヒンジ軸28の回転中心から上下にずらす必要があるが、筆記時の利便性を考慮して、クリップ16を上にして軸筒1の先端開口部30から見たときに、シール蓋12の開閉はクリップ16に対して上下に開閉させると共に、前軸5の突起37は筆記体の長手方向における中心軸線を含む仮想面部より軸線より上側、つまり、クリップ16側に位置させたほうが好ましい。突起37をクリップ16側に位置させることで、筆記具を斜めに傾け筆記する際に、突起37が筆記面に接触しないのである。なお本例においては、前軸5の細軸部7に設けた突起37を細軸部7の外接円内に収めるため、細軸部7の断面を複数の円弧で異形状で設計してあるが、この細軸部7の断面は円形状でも良い。
また、第1Oリング13、第2Oリング10aは気体透過性の低い材質から構成されている。具体的には、ASTM F 1249に規定された水蒸気透過率が3.0g.mm/m2.day.at 37.8℃(90%RH)以下の材料から構成され、かつ、圧縮永久歪み率が20%以下となるゴム材または弾性樹脂材からなる材質であれば特に限定されず、例えばこれらの要件を充足するエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、クロロスルホン化ゴポリエチレンゴム(CSM)、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、その他上記各ゴム同士のブレンド品、上記各ゴムと樹脂材とのブレンド品などが挙げられ、更に好ましくは、上記水蒸気透過率及び、圧縮永久歪み率の要件を充足するEPDM、IIR、CR、FKM、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーが望ましい。
また、円滑に作動するため細軸部7の摺動筒部20、シール蓋12のボール状表面35、ヒンジ軸28には潤滑剤が塗布されているが、成形と同時に樹脂中に混練りさせても良い。その潤滑剤の例としては、シリコーンオイルやロウ、タルク、グリスなどが良好なものとして挙げられるが、塗布する作業性を考慮すると、シリコーンオイルといった液状物が好ましい。
【0013】
前記軸筒1の後方側面には、前軸5の後方外周面に形成された係止用突起39、並びに、回転用突起40が形成されている。そして、それら係止用突起39と回転用突起40は、軸方向に摺動可能にしたガイドスリット14に嵌め込まれている。そのガイドスリット14は、軸筒1の後方壁体を貫通して軸方向に延びており、そのガイドスリット14には、筆記体4が軸筒1に収納されているときの係止部41aを形成するスリット巾を小さくした一対の壁41が、ガイドスリット14の両側から接近する方向に向けて形成されている。この係止部41aに回転用突起40の後方端面40aが当接することによって、筆記体4が軸筒1より離脱しないように拘束している。また、壁41の軸筒1後方側の面には前軸5の係止用突起39、並びに、回転用突起40がガイドスリット14に挿入しやすいように傾斜面42が形成されている。
【0014】
また、軸筒1にはクリップ16を固定する固定穴15がガイドスリット14を跨いだ両側に形成されており、前記クリップ16には、固定突起43と、筆記体4の脱着を防止する突起44が形成されている。なお、本例において、軸筒とクリップ16を固定させる固定突起43、もしくは固定穴15をガイドスリット14の両側に3個ずつ計6個形成しているが、部品の成形上、筆記具の品質上問題なければ個数は問わない。
前記固定突起43は左右3個ずつ軸方向に並んで形成されているが、中央の突起43aにはフックが形成されておらず、軸筒1の固定穴15と同形状の断面を有している。しかし、両側の突起43bはクリップ16の側面から外側に向けてフック43cが形成されており、軸筒1の固定穴15に対してフックの裏側に隙間を設けた断面形状となっている。つまり、クリップ16の固定突起43が、軸筒の固定穴15に挿入される際には、クリップ16の固定突起43の中央の突起43aにより軸筒1の変形が規制され、この規制によって、フック43cが形成された固定突起43bが内側にたわみながら軸筒1の固定穴15に嵌着される。そして、クリップ16が嵌着すると、固定突起43のフック43cにより軸筒1とクリップ16は固定され、また、中央の固定突起43a及びに脱着防止用の突起44によって、軸筒1の変形が防止される。
【0015】
前記軸筒1のガイドスリット14の前方部には、クリップ16の凸部17内に配置されたギア18のカム部45と、前軸5の係止用突起39、並びに、回転用突起40の高さを合わせるため、クリップ16の前方の凸部17が軸筒1内に収まるようにクリップ16の凸部17の形状に合わせて形成されている。言うまでもないが、クリップ16の先端部46は傾斜面を持ち、軸筒1のDカット部47は凸部17の形状に合わせて形成されているため、紙などの薄いものを容易に挟め、さらにノックの誤動作防止機構にもなっている。
また、前記ギア18はカム部45と回転軸部48から構成されており、その回転軸部48はカム部45に対して両側から突き出るように形成されている。また、回転軸部48の一方をクリップ16の凸部17内に設けた軸溝49に挿入し、他方を軸抑え溝50に嵌め込んでいる。さらに、ギア18はクリップ16の凸部17内で回転可能に配置され、凸部17の両壁によりギア18の回転が規制され、この規制によって、ノック動作を行っても筆記状態に係止されないといった不具合はなくなる。
【0016】
図11?図13に出没操作におけるノック動作、クリップと軸筒との係合作用について示し説明する。このノック体6のノック動作の過程において、軸筒後方部について説明する。前記前軸5の後方側面に形成された係止用突起39が、クリップ16の凸部17内に挿設されたギア18の、カム部45に形成された回転傾斜面45aに当接する。ギア18は軸方向に回転可能に挿設されているため、前軸5の係止用突起39が前進し、回転傾斜部45aから外れるまで、ギア18への回転動作が行なわれる。前記係止用突起39は回転傾斜部45aから外れると第1山部45bを乗越えてカム部45を通過する。このとき、係止用突起39の後方に形成された回転用突起40は、逃がし部45cによってギア18に接触することはない。
筆記体4は軸筒1に形成されたガイドスリット14の最端面14aに係止用突起39が接触するまで押圧できるが、係止用突起39がカム部45を通過してから、係止用突起39がガイドスリット14の最端面14aに当たる間でノック体6の押圧を止めると、筆記体4が後退し係止用突起39がカム部45の係止用溝45dに係り、筆記可能状態となる。
また、係止用突起39が係止用溝45dに係る際、係止用溝45dに設けられた斜面に係止用突起39の後方端部が当たり、ギア18を逆回転させている。
【0017】
次に、収納(没入)させる時の動作を説明する。筆記可能状態からノック体6を押圧すると、筆記体4が前進し、係止用突起39、回転用突起40も前進することとなるが、この際、係止用突起39がギア18の係止用溝45dから外れ、さらに回転用突起40がギア18の逆回転傾斜面45eに当たり、ギア18を逆回転させる。
その後、押圧を止め筆記体4を後退させる動作において、係止用突起39は逆転傾斜面45eによって逆回転されたカム部45を、第2山部45fを越えながら通過し、筆記芯2を軸筒1内に導くのである。
軸筒1前方内部では、筆記体4が後退すると前軸5の細軸部7の前方外周面に載置した突起37の後部がシール蓋12の回転溝38に当接する。さらに前記突起37が後退するとシール蓋12はヒンジ軸28を中心にして逆回転する。前進時と同様に、回転溝38は前軸5の突起37に比べて充分に大きい溝形状をなしているため、前記突起37はシール蓋12の回転溝38内で干渉されることなく後退することができる。また、シール蓋12のヒンジ軸28には逆回転を防止するため、Dカットされた平面28aが形成されている。筆記芯2が収納され、シール蓋12が軸筒先端開口部30を密封すると、このDカット平面28aは軸筒1内に設けられた壁面29aと面接触される。なお、ヒンジ軸28が回転し、壁面29aと接触する部分にはR面28bが形成され、無理なくシール蓋12を回転させることができる。さらに、シール蓋12の両側側面にも突起12aを設け、リテーナ11の回転支持軸26の前側端面26aによってシール蓋12の逆回転を防止している。
【0018】
(実施の形態2)
図14、15に本発明の実施の形態2を示す。筆記具後方によるノック構造に関する説明は実施の形態1と同様のため省略する。
軸筒51の内部に備えた筆記芯52を外気から遮断し、密封する密閉装置53について説明する。軸筒51内の前方には、スプリング54を介して移動不能に弾性樹脂成形品からなるシール筒55がセットされている。そのシール筒55の後方内面には、筆記体56の前方の外周面と密閉を保つための内方リブ57が形成されており、その内方リブ57には筆記体の前方部分が摺接している。更に、前記弾性樹脂材質からなるシール筒55には、シール蓋58が取り付けられており、そのシール蓋には3本の細線部59、60、61が放射状にしかも等間隔(120度間隔)な位置に射出成形などの手段によって一体成形されている。これらの細線部59、60、61の表面には、潤滑剤が塗布されているが、成形と同時に樹脂中に混練りさせても良い。その潤滑剤の例としては、シリコーンオイルやロウ、タルク、グリスなどが良好なものとして挙げられるが、塗布する作業性を考慮すると、シリコーンオイルといった液状物が好ましい。なお、その細線部60、61の後端はガイド筒62に一体に連結されているが、細線部59はガイド筒62に摺動可能に取り付けられている。
符号64は前記細線部59に設けた膨出部であり、その膨出部64は前記ガイド筒62の前進に伴ない細線部59が前進するのを、シール筒部55の外側面に突設した係止段部65との係合により前進規制するものになっている。
また、前記シール蓋58の内面には、2個の凸部66が並列した状態で形成されており、その並列した2個の凸部66の幅は前記筆記体56の前方の外周外径よりも大きい幅を有している。一方、筆記体56の前方部には、前記2個の凸部66と当接する突起67が対向する位置に形成されている。筆記体56が前進すると、凸部66は筆記体前方外周面に形成された前記突起67と当接するが、シール蓋58の内面に形成された前記凸部66は、筆記芯52と接触しない充分な高さで形成されている。
そして、ガイド筒62とシール筒55との間には、前記スプリング54が張設されており、そのスプリング54の付勢によって、前記シール蓋58が後方に押し当てられ、そのシール蓋58とシール筒55との密閉が保たれている。
【0019】
次に動作について説明する。軸筒51の後部に設けられたノック体を押圧すると、筆記体56が前進し、筆記芯52が先端開口部63から突出するが、この際、前記細線部60、61も前進すると共に緊張状態から開放され、シール蓋58が開放する。このとき、シール筒部55の外側面に突設した係止段部65によってその細線部59が規制されるが、他の2本の細線部60、61が前進するため、前記シール蓋58は細線部59の先端近傍を回転中心として回転する。この際、筆記体56の前方外周面に形成された突起67は、シール蓋58に形成された凸部66と当接しながら前進し、シール蓋を押し開かせる。即ち、シール蓋58は、前記2本の細線部60、61と、筆記体56の前方に形成された突起67によって拡開させられているのである。尚、前記シール蓋58の凸部66は充分な高さを有しているため、シール蓋58の内面と筆記芯52は接触することなく、確実にシール蓋58の開閉を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一例を示す分解斜視図である。
【図2】
(a) 第2Oリングの縦断面図である。
(b) 第2Oリングの斜視図である。
【図3】
(a) リテーナの側面図である。
(b) リテーナの天面図である。
(c) リテーナの斜視図である。
【図4】
(a) シール蓋の側面図である。
(b) シール蓋の正面図である。
(c) シール蓋の射視図である。
【図5】
(a) 第1Oリングの縦断面図である。
(b) 第1Oリングの射視図である。
【図6】
(a) 前軸の正面図である。
(b) 前軸の側面図である。。
【図7】図6(b)の要部拡大図である。
【図8】
(a) 軸筒の正面図である。
(b) 軸筒の縦断面図である。
【図9】
(a) クリップの裏面図である。
(b) クリップの射視図である。
【図10】
(a) ギアの正面図である。
(b) ギアの左側面図である。
(c) ギアの右側面図である。
【図11】本発明の縦断面図である。
【図12】
(a) 動作を示す要部断面図である(没入時)。
(b) 動作を示す要部断面図である(シール蓋45度回転時)。
(c) 動作を示す要部断面図である(シール蓋90度回転時)。
【図13】
(a) ギアの動作を説明する要部断面図である(筆記体没入時)。
(b) ギアの動作を説明する要部断面図である(筆記体ノック時)。
(c) ギアの動作を説明する要部断面図である(筆記体突出時)。
【図14】
(a) 本発明の実施例を示す側面からの要部断面図である。
(b) 本発明の実施例を示す正面からの要部断面図である。
【図15】
(a) 動作を示す側面からの要部断面図である(筆記体ノック時)。
(b) 動作を示す側面からの要部断面図である(筆記体突出時)。
【符号の説明】
【0021】
1 軸筒
2 前筆記芯
3 密閉装置
4 筆記体
5 前軸
6 ノック体
7 細軸部
8 スプリング
9 案内段部
10 段差側面
10a 第2Oリング
11 リテーナ
12 シール蓋
12a 突起
13 第1Oリング
14 ガイドスリット
14a 最端面
15 固定穴
16 クリップ
17 凸部
18 ギア
19 突起
20 摺動筒部
21 テーパー筒部
22 先端筒部
22a カバーリング
22b 切欠部
23 半円状の突起
24 テーパ面
25 第2Oリング10aの他端面
26 回転支持軸
26a 前側端面
27 ヒンジ孔
28 ヒンジ軸
28a Dカットされた平面
28b R面
29 壁部
29a 壁面
30 先端開口部
31 段部側面
32 凸形状の突起
33 段部
34 R部
35 ボール状表面
36 密閉室
37 突起
37a 切欠部
38 回転溝
39 係止用突起
40 回転用突起
40a 後方端面
41 壁
41a 係止部
42 傾斜面
43 固定突起
43a 中央の突起
43b 両側の突起
43c フック
44 突起
45 カム部
45A 回転傾斜面
45B 第1山部
45C 逃がし部
45D 係止用溝
45E 逆回転傾斜面
45F 第2山部
46 先端部
47 Dカット部
48 回転軸部
49 軸溝
50 軸抑え溝
51 軸筒
52 筆記芯
53 密閉装置
54 スプリング
55 シール筒
56 筆記体
57 内方リブ
58 シール蓋
59 細線部
60 細線部
61 細線部
62 ガイド筒
63 先端開口部
64 膨出部
65 係止段部
66 凸部
67 突起
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸筒内に前後動可能な筆記体を有し、前記筆記体の前後動作に連動して前記筆記体の筆記芯を外気から密封するシール蓋を有する筆記具であって、前記シール蓋の開閉を前記筆記体の前方に設けたカバーリングの外周面の領域内であって、かつ、そのカバーリングの先端部から突出しない位置に設けた突起によって作動させると共に、その突起と前記シール蓋との係合部をシール蓋の非シール部に設けたことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】 前記突起を対向した位置に設けると共に、それら対向する突起を前記筆記体の長手方向における中心軸線を含む仮想面部から離隔した位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-12-01 
結審通知日 2016-12-05 
審決日 2016-12-26 
出願番号 特願2006-152440(P2006-152440)
審決分類 P 1 113・ 152- YAA (B43K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
吉村 尚
登録日 2012-04-20 
登録番号 特許第4973013号(P4973013)
発明の名称 出没式筆記具  
代理人 特許業務法人太田特許事務所  
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