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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04M
管理番号 1329417
審判番号 不服2016-10454  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-11 
確定日 2017-07-10 
事件の表示 特願2014-538932「近接センサを使用するデッドレコニング」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 2日国際公開、WO2013/063122、平成27年 1月22日国内公表、特表2015-502681、請求項の数(32)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年10月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年10月28日 米国、2012年5月18日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年5月25日付けで拒絶理由が通知され、同年9月1日付けで手続補正がされ、平成28年3月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年2月13日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年4月7日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願発明1-32に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明32」という。)は、平成29年4月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-32に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
絶対ロケーション測定を使用してモバイルデバイスのロケーションを判定するステップと、
前記モバイルデバイスの複数の近接センサを使用して近接度データを収集するステップと、
前記近接度データを使用して、ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するか判定するステップと、
前記ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するかの前記判定に少なくとも部分的に基づいた期間の間、デッドレコニング技法を使用して前記モバイルデバイスの前記ロケーションを追跡し、前記モバイルデバイスの相対ロケーションを判定するステップであって、前記期間の長さが、前記ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するかの前記判定に少なくとも部分的に依存する、ステップとを含み、
前記相対ロケーションが、前記絶対ロケーション測定を使用して判定される前記ロケーションに対して相対的である、方法。」

なお、本願発明2-32の概要は以下のとおりである。

本願発明10,本願発明19、本願発明27は、本願発明1と同じ技術的な特徴を有し、それぞれ、カテゴリー表現が異なる発明であり、「モバイルデバイス」、「コンピュータプログラム」、「装置」の発明である。

請求項2-9、請求項11-18は、請求項20-26、請求項28-32は、それぞれ、直接的または間接的に、請求項1、請求項10、請求項19、請求項27を引用しているので、本願発明2-9、本願発明11-18、本願発明20-26、本願発明28-32は、それぞれ、本願発明1、本願発明10、本願発明19、本願発明27の発明特定事項を含むものであり、本願発明1、本願発明10、本願発明19、本願発明27を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定で引用された引用文献1(特表2011-504578号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0020】
いくつかのさらなる実施形態では、移動端末は、移動端末の加速度を示す加速度情報を生成する加速度計回路と、GPS受信機回路の電源オフサイクル中に加速度計回路からの加速度情報を使用して、移動端末の加速度ベースの現在位置を測定するように構成された加速度ベース位置測定回路とをさらに有する。GPS受信機回路は、少なくとも閾時間長の間に移動端末の位置を測定するのに十分なGPS信号強度がないことを受けて、移動端末においてGPS信号が途絶しているのを検出するように構成される。コントローラ回路は、移動端末においてGPS信号が途絶していることの検出に応えてGPS受信機回路を電源オフにし、移動端末の加速度ベースの現在位置とGPS測定の前の位置との間の距離が閾距離を上回るまでGPS受信機回路の電源オフサイクル期間を延長し、GPS受信機回路の電源オン時に移動端末のGPS測定による現在位置の測定を試みるように構成される。」(8頁)

「【0040】
図1は、GPS受信機回路を有する例示の移動端末100を含む、地上および衛星通信システムの略ブロック図である。図2は、図1に示される移動端末100のさらなる態様を示す略ブロック図である
【0041】
図1および2を参照すると、移動端末100は、1群のGPS衛星110から受信するGPS無線信号を使用して移動端末100の地理的位置を測定するGPS受信機回路200を有する。GPS受信機回路200は、可視衛星からGPS無線信号を受信し、無線信号がそれぞれのGPS衛星から移動端末100まで伝わるのにかかる時間を測定する。伝達時間に伝播速度を掛けることによって、GPS受信機回路200は、視野内の各衛星までの距離を計算する。GPS無線信号の中で提供されるエフェメリス情報が衛星の軌道および速度を描写し、それによって、GPS受信機回路200は、三角測量処理によって移動端末100の位置の計算が可能になる。」(10?11頁)

「【0054】
図3は、コントローラ210にGPS受信機回路200への電源を調整させうるトリガイベントおよび関連方法を示すイベント図である。コントローラ210は、1つ以上のトリガイベントに対して、定義されたただ1つの動作であるGPS受信機回路200の電源オンまたは電源オフの実施によって対応してもよい。あるいは、コントローラ210は、1つ以上のトリガイベントに対応して、GPS受信機回路200の電源オンと電源オフを繰り返して、GPS受信機回路200の電源オン対電源オフのデューティ比(すなわち、電源オン期間の電源オフ期間に対する比)を調整(増大/減少)してもよい。
【0055】
移動端末100とGPS信号に基づいて前に測定した位置との間の距離は、移動端末100が感知した加速度に基づき検出される。トリガイベント302を参照すると、前のGPS位置測定から閾時間の経過後、コントローラ210は、移動端末100が前に測定したGPS位置からまだ閾距離離れていないと判定する場合、GPS受信機回路200の電源オフにより対応してもよい。GPS受信機回路200が繰り返し直ぐにオン・オフされるとき、コントローラ210は、GPS受信機回路200の電源オフ時間の延長および/または電源オン時間の短縮によって、電源オン対電源オフのデューティ比を減少してもよい。」(14頁)

「【0058】
移動端末100は、加速に反応して加速度情報を生成する加速度測定回路220を使用して加速度を感知してもよい。GPS受信機200が電源オフである間、コントローラ210は、加速度情報を使用して、移動端末100とGPS信号からGPS受信機回路200が測定した前の位置との間の距離を測定する。例えば、コントローラ210は、GPS受信機回路200が電源オフされている間、移動端末の位置を測定するために加速度信号を時間に関して二重積分してもよい。加速度測定回路220は、移動端末100の少なくとも2次元方向の移動に対応しうる少なくとも2方向の加速度を感知する少なくとも2軸の加速度計を有してもよい。移動端末100は、地面に対して種々の角度で保持されることがあるので、3軸加速度計あるいは2軸加速度計および傾斜センサを有してもよく、これらは、移動端末100が地面に対してどの角度で保持されるかに関係なく、コントローラ210が地面に沿って移動した距離を測定するのを可能にする。」(14?15頁)

「【0072】
コントローラ210は、GPS受信機回路200のアンテナがユーザの身体の近く(例えば、衣服のポケット内)にあるために、遮蔽(GPS信号途絶)されることになりかねないかどうかを検出する近接センサとして動作するようにさらに構成されてもよい。コントローラ210は、近接センサでそのような近接性を判定してもよい。・・・(中略)・・・コントローラ210は、追加または代替で、例えば移動端末210が衣服のポケット、ハンドバッグまたは車のグローブボックスに置かれていることを示しうる明るさの大幅な変化などを感知するカメラを使用して、近接性および潜在的なGPS信号途絶を判定してもよい。」(18頁)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、引用発明」という。)が記載されていると認める。

(引用発明)
「GPS測定で移動端末の地理的位置を測定し、
ユーザの身体との近接性を判定する近接センサを用いて、
GPS信号途絶を検出し、
前記GPS信号途絶の検出により、
前記移動端末のGPS受信機回路が電源オフとなり、
前記電源オフである間、加速度情報を使用して、移動端末の加速度ベースの現在位置を測定し、
前記加速度ベースの現在位置と、前記GPS測定による前記地理的位置とがある、
方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特表2010-507870号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【背景技術】
【0002】
携帯電話などのポータブル・デバイスは、ますます一般的になりつつある。こうしたポータブル・デバイスは、時間の経過につれて、例えばMP3プレーヤ機能、ウェブ・ブラウジング機能、携帯情報端末(PDA)の機能などの多くの機能を組み込んで、より複雑になってきている。」(7頁)

「【0067】
図2、3、4、5A、5B、6、12に示されるデバイスのうちのいずれか1つで方法200を実施することができ、方法200は、図8に示される人工知能プロセスを使用することがあり、または使用しないことがある。オペレーション202は、1つまたは複数のセンサからセンサ・データを収集し、センサ・データは、ユーザ動作についての情報を供給する。例えば、近接センサは、デバイスがユーザの耳の近くにあるかどうかを示すことができる。温度センサと、周辺光センサ(または差動周辺光センサ)と、近接センサとがあいまって、デバイスがユーザのポケット内にあることを示すことができ、ジャイロスコープと近接センサとがあいまって、ユーザがデバイスを見ていることを示すことができる。オペレーション204で、1つまたは複数のセンサからのデータが解析され、この解析を、センサのうちの1つまたは複数の中のプロセッサを含む、デバイス内の1つまたは複数のプロセッサで実施することができる。・・・(略)・・・」(19頁)

「【0074】
・・・(略)・・・」
ユーザ動作に関するデータ(例えば、顔からのブロブを検出することのできる、近接センサおよび/またはタッチ入力パネルなどの1つまたは複数のセンサからのデータ)が、デバイスのモードに対して解析され、解析は、デバイスの設定を調節するかどうかを判定しようと試みる。感知したユーザ動作およびデバイス・モードに基づいて、1つまたは複数のデバイス設定を調節することができる。例えば、ユーザがデバイス(この場合は電話でよい)をユーザの耳のそばに配置したことを近接データ、および任意選択で他のデータ(例えば、動作センサおよび周辺光センサからのデータ)が示すとき、デバイスは、スピーカフォン・モードから非スピーカフォン・モードに自動的に切り替わることができる。
・・・(略)・・・」(21?22頁)

したがって、引用文献2には、「携帯電話に設けた複数のセンサ(耳の近くにあるかどうかを示す近接センサを含む)でユーザの動作を解析すること。」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2004-64163号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0015】
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態における移動通信装置について説明する。本実施の形態における移動通信装置は、感知手段1として、移動通信装置21の受話部近傍に設けたタッチセンサからなる第1のセンサ22の他に、移動通信装置21の側部に設けたタッチセンサからなる第2および第3の感知手段としての第2および第3のセンサ23、24を有する点で、本発明の第1の実施の形態とは異なる。
【0016】
音声通話する場合、話者は移動通信装置21を手で握り、耳の近傍に位置付けする。従って、音声通話する場合は必然的に話者の手が第2および第3のセンサ23、24に接触することになり、その後に第1のセンサ22に接触することにより、電力供給制御手段4を作動させて音声通話状態になる。従って、第2および第3のセンサ23、24に接触することなく、第1のセンサ22に接触しただけでは電力供給制御手段4を作動させてしまうことはない。このように、音声通話する場合、第1ないし第3のセンサ21?24を用いることにより、使用者が意図せずに第1のセンサ22に接触しただけで電力供給制御手段4を作動させてしまうようなことを防止することができる。」(5頁)

「【0020】
なお、上記本発明の実施の形態における移動通信装置に用いる感知手段としては、話者に接触したことを感知するタッチセンサの他、温度センサ、圧力センサ、赤外線センサ、およびBlue toothを利用したセンサ等も使用することができる。
また、他の形態の感知手段としては、現在の状態を感知するのみでなく、例えば、時間により電力を制御する時間センサ、または昼夜の温度差を利用して夜寒くなると電力を制御する昼夜温度センサ、または照度を感知して明るくなると電力を制御する昼夜照度センサ、更に衝撃を感知すると電力の供給を停止する動作感知センサなどを適用することができる。」(5頁)

したがって、引用文献3には、「移動通信装置に設けた第1ないし第3のセンサ(赤外線センサを含む)により、話者の手や耳との接触を感知することにより、音声通話状態への移行を検知する。」という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「移動端末」、「近接センサ」は、それぞれ、本願発明1における「モバイルデバイス」、「近接センサ」に相当する。
引用発明における「GPS測定」は、本願発明1における「絶対ロケーション測定」に含まれる。
引用発明の「ユーザの身体との近接性を判定する近接センサ」と本願発明1の「前記近接度データを使用して、ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するか判定する」とは、「前記近接性のデータを使用して、ユーザの体に前記モバイルデバイスが近接するか判定する」である点で共通する。
引用発明の「ユーザの身体との近接性を判定する近接センサを用いて」、「前記GPS信号途絶の検出により、前記移動端末のGPS受信機回路が電源オフとなり、前記電源オフである間」と、本願発明1の「前記ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するかの前記判定に少なくとも部分的に基づいた期間の間、」とは、「前記ユーザの体に近接するかの前記判定に少なくとも部分的に基づいた期間の間、」で共通する。
引用発明の「加速度ベースの現在位置を測定」は、本願発明1の「デッドレコニング技法」に含まれる。また、引用発明の「加速度ベースの現在位置」は、本願発明の「相対ロケーション」に含まれる。
引用発明の「加速度ベースの現在位置」の「加速度ベース」は、「以前の位置」と「加速度情報」に基づいた現在位置を求める「相対的ロケーション測定」である。一方、「GPS測定による地理的位置」の「GPS測定」は、「以前の位置」とは関係なく受信電波で現在位置を求める「絶対ロケーション測定」である。したがって、「相対的ロケーション測定」は、「絶対ロケーション測定」に比べて「相対的である」といえるので、引用発明の「前記加速度ベースの現在位置と、前記GPS測定による前記地理的位置とがある、」は、本願発明1の「前記相対ロケーションが、前記絶対ロケーション測定を使用して判定される前記ロケーションに対して相対的である、」に相当する。
引用発明の「方法」において、各動作を「ステップ」と呼ぶことは任意である。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「絶対ロケーション測定を使用してモバイルデバイスのロケーションを判定するステップと、
前記モバイルデバイスの複数の近接センサを使用して近接性のデータを収集するステップと、
前記近接性のデータを使用して、ユーザの体に前記モバイルデバイスが近接するか判定するステップと、
前記ユーザの体に近接するかの前記判定に少なくとも部分的に基づいた期間の間、デッドレコニング技法を使用して前記モバイルデバイスのロケーションを追跡し、前記モバイルデバイスの相対ロケーションを判定するステップであって、
前記相対ロケーションが、前記絶対ロケーション測定を使用して判定される前記ロケーションに対して相対的である、方法。」

(相違点1)一致点の「近接センサ」について、本願発明1では、「複数」であるのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。それに伴い、一致点の「ユーザの体」に関し、本願発明1では、「どの部分」かを「判定」するのに対し、引用発明では、そのような「判定」は行わない点。

(相違点2)一致点の「期間の間」の「期間」に関して、本願発明1では、「前記期間の長さが、前記ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するかの前記判定に少なくとも部分的に依存する、」のに対して、引用発明では、そのような特定を有さない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み(相違点1)について検討する。
引用発明の「近接センサ」は、「GPS信号途絶かどうかを検出するため」、「移動端末」が「ユーザの身体の近く」かを判定するだけに用いられるものである。他方、引用文献2の「近接センサ」は、ユーザの動作を解析するため、耳の近くにあるかを示すために用いられ、引用文献3の「第1ないし第3のセンサ」は、「音声通話状態」への移行を検知するために、話者の手や耳との接触を感知するために用いられるものである。してみると、引用発明の「近接センサ」と、引用文献2の「近接センサ」、引用文献3の「第1ないし第3のセンサ」とは、その用途及び検出の対象が異なっているため、両者を組み合わせる動機が存在しない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明および引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-32について
「第2 本願発明」の項で記載したとおり、本願発明2-32も、本願発明1と同じ技術的特徴を有することから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明および引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-4、7-10、12-15、18-20、23-26、29-31、33-36、39、40について、上記引用文献1、2、3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年4月7日付け手続補正により補正された請求項1-32は、上記「第4 対比・判断」の項に記載した理由により、本願発明1-32は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審の拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号、第2号について
(1)当審では、請求項1、3、12、14、23、25、33、35における「ユーザーの体に対して前記モバイルデバイスがどこに位置するか」における「どこに」は、「ユーザの体」との間の距離(近い位置か遠い位置か)を意味するのか、あるいは「ユーザの体の」どの部位に近接するかを意味するのか特定していないから、日本語として意味が不明確である(6項2号)との拒絶理由を通知しているが、平成29年4月7日付けの手続補正において、「ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するか」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

(2)当審では、請求項1、12、23、33について、本願明細書段落【0003】より、本願の課題は、「デッドレコニングの不正確さを限定すること」であり、課題解決手段は「ユーザに対するモバイルデバイスの位置」に基づいて、「デッドレコニング技法の」使用を限定すること」であるが、特許請求の範囲には、課題解決手段が記載されておらず、発明の詳細な説明と対応していないとの拒絶理由を通知しているが、平成29年4月7日付けの手続補正において、「デッドレコニング技法を使用して前記モバイルデバイスの前記ロケーションを追跡」するのが、「前記ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するかの前記判定に少なくとも部分的に基づいた期間の間」と補正され、「前記期間の長さが、前記ユーザの体のどの部分に前記モバイルデバイスが近接するかの前記判定に少なくとも部分的に依存する」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

(3)当審では、請求項2、13、23、34 について、例えば、請求項2の「変位を示す情報を使用して前記モバイルデバイスの前記ロケーションを追跡するステップをさらに備え、」に関し、「デッドレコニング技法を使用して前記モバイルデバイスの前記ロケーションを追跡し、・・・相対ロケーションを判定するステップ」との関係が明らかでない。仮に「変位を示す情報」が「デッドレコニング情報」についてのものとすると、「さらに備え」の用語は不適切である(6項2号)との拒絶理由を通知しているが、平成29年4月7日付けの手続補正において、「前記デッドレコニング技法は、変位を示す情報の使用を含み」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。請求項13、23,34(補正後の請求項11、20、28)についても同様である。

(4)当審では、請求項6、17、28,38について、例えば、請求項6には「前記モバイルデバイスが前記ユーザの手に握られていると判定」するための手段が記載されておらず、引用された請求項1の「近接センサ」との関係も不明である(6項2号)との拒絶理由を通知しているが、平成29年4月7日付けの手続補正において、「前記複数の近接センサのうちの少なくとも1つは、前記モバイルデバイスが前記ユーザの手に握られていることを判定する際に使用できるように位置決めされ」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。請求項6、17、28,38(補正後の請求項5、14、23、31)についても同様である。

(5)当審では、請求項7、18、29、39について、例えば、請求項7の「変位を示す前記情報に応答して、前記モバイルデバイスの前記ロケーションの追跡を停止することをさらに含む、請求項2に記載の方法」について、引用する請求項2が引用する請求項1には、「ユーザの体に対して前記モバイルデバイスがどこに位置するかの前記判定に少なくとも部分的に基づいて、・・・判定する」とは記載されているが、「変位を示す前記情報に応答して、・・追跡を停止する」との関係が明確でない。(6項2号)との拒絶理由を通知しているが、平成29年4月7日付けの手続補正において、関連する請求項が削除された結果、この拒絶理由は解消した。

(6)当審では、請求項8と請求項30の「加速度データ」は、それぞれ引用する請求項2と請求項24の「加速度データ」のことであるから、「前記」が抜けており、「前記加速度データ」の誤記であると認められる(6項2号)との拒絶理由を通知しているが、平成29年4月7日付けの手続補正において、「前記」が加筆された結果、この拒絶理由は解消した。

(7)当審では、 請求項11、21、32 の「ユーザが前記モバイルデバイスを握っているときを判定」は、人を主語とした構成を含んでいる。(6項2号)との拒絶理由を通知しているが、平成29年4月7日付けの手続補正において、「前記モバイルデバイスが前記ユーザの手に握られていると判定」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

第7.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願発明1-32を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2014-538932(P2014-538932)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04M)
P 1 8・ 537- WY (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 吉田 隆之
山中 実
発明の名称 近接センサを使用するデッドレコニング  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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