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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1329431
審判番号 不服2016-8868  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-15 
確定日 2017-07-04 
事件の表示 特願2012- 71945「サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 7日出願公開、特開2013-206487、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月27日の出願であって、平成27年9月18日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月10日付けで拒絶査定されたところ、同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明は、平成27年11月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、本願の請求項1及び7に係る発明は以下のとおりである(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、表面にめっき部を有する配線層とを有するサスペンション用基板であって、
前記配線層は、第一配線層、第二配線層および第三配線層を有し、
前記金属支持基板は、周囲とは絶縁されたジャンパー部を有し、
前記ジャンパー部上に形成された前記絶縁層の開口部に、第一ビア部、第二ビア部および第三ビア部が形成され、
前記第一配線層、前記第二配線層および前記第三配線層は、それぞれ、前記第一ビア部、前記第二ビア部および前記第三ビア部と接続され、
前記第一ビア部および前記第二ビア部は、前記ジャンパー部に接続され、
前記第三ビア部は、前記ジャンパー部から絶縁されていることを特徴とするサスペンション用基板。」

「【請求項7】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、表面にめっき部を有する配線層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、
第一配線層、第二配線層および第三配線層を有する前記配線層を備え、前記絶縁層の開口部に第一ビア部、第二ビア部および第三ビア部が形成され、前記第一配線層、前記第二配線層および前記第三配線層がそれぞれ前記第一ビア部、前記第二ビア部および前記第三ビア部を介して金属支持部材に接続された中間部材を準備する準備工程と、
前記金属支持部材からの給電により、少なくとも前記第三配線層の表面に前記めっき部を形成するめっき部形成工程と、
前記金属支持部材をエッチングすることにより、前記第一ビア部および前記第二ビア部とは接続され、前記第三ビア部とは絶縁され、かつ、周囲とは絶縁されたジャンパー部を有する前記金属支持基板を形成する金属支持基板形成工程とを有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。」

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は以下のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.請求項1及び7について、引用文献1-3
2.請求項2-6について、引用文献1-4

〈引用文献等一覧〉
1.米国特許第7468866号明細書
2.特開2009-259357号公報(周知技術を例示)
3.特開2008-85051号公報(周知技術を例示)
4.米国特許第7142395号明細書(周知技術を例示)

第4 当審の判断
1.請求項1に係る発明について
(1)引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された米国特許第7468866号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。

ア 「FIGS. 2-7 illustrate a head gimbal assembly (HGA) 210 incorporating a flexible printed circuit (FPC) 212 according to an exemplary embodiment of the present invention. The HGA 210 includes a slider 214, a suspension 216 to support the slider 214, and a FPC 212 provided to the suspension 216.
As best shown in FIG.2, the suspension 216 generally includes a base plate 220, a load beam 222, and a flexure 224. The base plate 220 includes a mounting hole 226 for use in connecting the suspension 216 to a drive arm of a voice coil motor (VCM) of a disk drive device. The shape of the base plate 220 may vary depending on the configuration or model of the disk drive device. Also, the base plate 220 is constructed of a relatively hard or rigid material, e.g., metal, to stably support the suspension 216 on the drive arm of the VCM.」(第2欄第44行-第58行)
(当審訳:「図2-7は、本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント回路(FPC)212を搭載するヘッド・ジンバル・アセンブリ(HGA)210を示している。HGA210は、スライダ214と、前記スライダ214を支持するサスペンション216と、前記サスペンション216に設けられたFPC212とを備えている。
図2に最もよく示されているように、サスペンション216は、ベースプレート220と、ロードビーム222と、フレキシャ224とを備えている。ベースプレート220は、サスペンション216をディスクドライブ装置のボイスコイルモータ(VCM)の駆動アームに接続する際に使用するための取り付け孔226を含む。ベースプレート220の形状は、ディスクドライブ装置の構成及び型式によって変化してもよい。また、ベースプレート220は、VCMの駆動アームにサスペンション216を安定して支持するために、比較的硬質の又は剛性の材料、例えば、金属で構成される。」)

イ 「As shown in FIGS.2 and 3, the FPC 212 is provided to the flexure 224 to electrically connect the slider 214 and its read/write elements to a conductive tab 230 (which connects to an external control system, e.g., a pre-amplifier circuit) and a test tab 240 (which connects to an external dynamic and/or static testing system). The FPC 212 includes a grounding trace or lead 250 that grounds the FPC 212 during manufacturing and testing processes to prevent ESD damage to the slider 214. In the illustrated embodiment, the FPC 212 and the flexure 224 are the same piece. Also, the FPC 212 and flexure 224 are formed of a stainless steel substrate like CIS or TSA (ILS), not FSA because FSA has no stainless steel substrate.
Specifically, the FPC 212 includes multiple traces or leads 218, e.g., four traces, that extend from the region 228 adjacent the slider 214, through the conductive tab 230, and to the test tab 240. As illustrated, the conductive tab 230 and test tab 240 are provided on a tail 260 of the FPC 212. It should be understood that the FPC 212 may include any suitable number of traces 218. The multiple traces 218 are electrically connected to the slider 214 and its read/write elements, conductive pads 232 (e.g., five pads) provided on the conductive tab 230 (see FIG.5), and test pads 242 (e.g., four pads) provided on the test tab 240 (see FIG.4). The multiple traces 218 may also be electrically connected to other devices in the region 228, e.g., a micro-actuator.
In addition, the FPC 212 includes a grounding trace or lead 250 that extends from the base plate 220, through the conductive tab 230, and to the test tab 240. Specifically, one end 252 of the grounding trace 250 is provided on the test tab 240 as shown in FIG.4 . The one end 252 is conducted or routed to a stainless steel layer of the test tab 240 through a grounding via 254. The other end 256 of the grounding trace 250 is provided on the base plate 220 as shown in FIG.6 . The other end 256 is conducted or routed to a stainless steel layer of FPC through a grounding via 258. Because the FPC is welded to the suspension base plate 220, the suspension base plate and the testing pad are well grounded. The intermediate portion of the grounding trace 250 extends through conductive pad 232 (1) on the conductive tab 230 as shown in FIG.5 .
FIG.7 illustrates an embodiment of the grounding via 254. As illustrated, the grounding via 254 includes a protective layer 262, a die layer 264, and a stainless steel layer 266. As illustrated, the end 252 of the grounding trace 250 is sandwiched between these layers 262, 264, 266. The stainless steel layer 266 on the bottom of the grounding via 254 facilitates the grounding connection and reinforces the FPC 212 around the grounding via 254. It is noted that the other grounding via 258 may have a similar construction.
The grounding trace 250 provides grounding in the test tab 240, the conductive tab 230, and the suspension base plate in order to reduce ESD during examination of the dynamic and/or static performance of the magnetic read/write elements on the slider 214, e.g., MR/GMR head with MR/GMR element. That is, the FPC 212 is electrically shunted and grounded on the test tab 240 during testing processes in order to prevent ESD damage.
The grounding trace 250 also provides grounding before and after testing to prevent ESD damage during manufacturing. For example, the FPC 212 is grounded at the testing tab 240 via the grounding trace 250 before the HGA 210 is tested. The FPC 212 continues to be grounded during testing processes as described above. After testing, the FPC 212 is shunted and grounded at the testing tab 240 before the HGA 210 is assembled to the disk drive device. The shunt may be easily disconnected after the conductive pads 232 are connected to an external control system, e.g., a pre-amplifier circuit, by cutting the tail 260 between the conductive tab 230 and the test tab 240.」(第3欄第1行-第4欄第3行)
(当審訳:「図2及び図3に示すように、FPC212が、スライダ214及びその読取/書込素子を、(外部制御システム、例えば、前置増幅回路に接続するための)導電性タブ230及び(外部の動的及び/又は静的なテストシステムに接続するための)テストタブ240に電気的に接続するために、フレクシャ224に設けられる。FPC212は、スライダ214へのESD損傷を防止するために、製造及びテスト・プロセス中にFPC212を接地するグラウンド配線またはリード250を含む。図示の実施形態では、FPC212とフレキシャ224は同じ部品である。また、FSAはステンレス鋼基板を有していないので、FPC212とフレクシャ224は、FSAではなく、CIS若しくはTSA(ILS)のようなステンレス鋼基板で形成されている。
具体的には、FPC212は、スライダ214に隣接する領域228から、導電性タブ230を介して、テストタブ240まで延びる複数の配線またはリード218、例えば4トレース、を含む。図示のように、導電性タブ230及びテストタブ240は、FPC212のテール260に設けられる。FPC212は、任意の適切な数の配線218を含んでもよいことを理解すべきである。複数の配線218は、スライダ214及びその読取/書込素子、導電性タブ230(図5参照)に設けられた導電性パッド232(例えば、5個のパッド)、テストタブ240(図4参照)に設けられたテストパッド242(例えば、4個のパッド)に電気的に接続される。また、複数の配線218は、領域228内の他のデバイス、例えば、マイクロアクチュエータに電気的に接続される。
さらに、FPC212は、ベースプレート220から導電性タブ230を介して、テストタブ240に延びるグラウンド配線またはリード250を含む。特に、グラウンド配線250の一端252は、図4に示すように、テストタブ240上に設けられる。前記一端252は、接地ビア254を介して、テストタブ240のステンレス鋼層に伝導され又はルーティングされる。図6に示すように、グラウンド配線250の他端256は、ベースプレート220上に設けられる。前記他端256は、接地ビア258を介して、FPCのステンレス鋼層に伝導又はルーティングされる。FPCはサスペンションベースプレート220に溶接されているので、サスペンションベースプレート及びテストパッドは、接地されている。図5に示すように、グラウンド配線250の中間部は、導電性タブ230上の導電性パッド232(1)を介して延びている。
図7は、接地ビア254の実施形態を示す。図示のように、接地ビア254は、保護層262、絶縁層264、及びステンレス鋼層266を含む。図示のように、グラウンド配線250の端部252は、これらの層262、264、266の間にある。接地ビア254の底部にあるステンレス鋼層266は、接地を容易にし、接地ビア254の周囲のFPC212を補強している。他の接地ビア258は、同様の構成を有し得ることに留意されたい。
グラウンド配線250は、スライダ214上の磁気的読取/書込素子、例えば、MR/GMR素子を有するMR/GMRヘッドの動的及び/又は静的な性能の検査中にESDを減少させるために、テストタブ240、導電性タブ230、及びサスペンションベースプレートに接地を提供する。すなわち、ESD損傷を防止するために、FPC212は、テストプロセス中、テストタブ240に分路され電気的に接地される。
グラウンド配線250はまた、製造中にESD損傷を防ぐために試験の前後に接地を提供する。例えば、FPC212は、HGA210がテストされる前にグラウンド配線250を介してテストタブ240で接地される。以上説明したように、FPC212は、テストプロセス中、接地され続ける。試験後、HGA210がディスクドライブ装置に組み込まれる前に、FPC212は、テストタブ240に分路され、接地されている。シャントは、導電性パッド232が外部制御システム、例えば、前置増幅回路、に接続された後、導電性タブ230とテストタブ240との間でテール260を切断することにより、容易に切り離すことができる。」)

ウ ここで、Fig.2及びFig.4は、以下のとおりである。
Fig.2


Fig.4


エ したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「HGA210は、スライダ214と、前記スライダ214を支持するサスペンション216と、前記サスペンション216に設けられたFPC212とを備え、
サスペンション216は、ベースプレート220と、ロードビーム222と、フレキシャ224とを備え、
ベースプレート220の形状は、ディスクドライブ装置の構成及び型式によって変化してもよく、
ベースプレート220は、VCMの駆動アームにサスペンション216を安定して支持するために、比較的硬質の又は剛性の材料、例えば、金属で構成され、
FPC212が、スライダ214及びその読取/書込素子を、導電性タブ230及びテストタブ240に電気的に接続するために、フレクシャ224に設けられ、
FPC212は、スライダ214へのESD損傷を防止するために、製造及びテスト・プロセス中にFPC212を接地するグラウンド配線またはリード250を含み、
FPC212とフレキシャ224は同じ部品であり、ステンレス鋼基板で形成されており、
FPC212は、スライダ214に隣接する領域228から、導電性タブ230を介して、テストタブ240まで延びる複数の配線またはリード218、例えば4トレース、を含み、
導電性タブ230及びテストタブ240は、FPC212のテール260に設けられ、
複数の配線218は、テストタブ240に設けられたテストパッド242に電気的に接続され、
FPC212は、ベースプレート220から導電性タブ230を介して、テストタブ240に延びるグラウンド配線またはリード250を含み、
グラウンド配線250の一端252は、テストタブ240上に設けられ、接地ビア254を介して、テストタブ240のステンレス鋼層に伝導され又はルーティングされ、
グラウンド配線250の他端256は、ベースプレート220上に設けられ、接地ビア258を介して、FPCのステンレス鋼層に伝導又はルーティングされ、
FPCはサスペンションベースプレート220に溶接されているので、サスペンションベースプレート及びテストパッドは、接地されており、
接地ビア254は、保護層262、絶縁層264、及びステンレス鋼層266を含み、他の接地ビア258は、同様の構成を有し得、
ESD損傷を防止するために、FPC212は、テストプロセス中、テストタブ240に分路され電気的に接地され、
グラウンド配線250はまた、製造中にESD損傷を防ぐために試験の前後に接地を提供し、
FPC212は、HGA210がテストされる前にグラウンド配線250を介してテストタブ240で接地され、
FPC212は、テストプロセス中、接地され続け、
シャントは、導電性パッド232が外部制御システムに接続された後、導電性タブ230とテストタブ240との間でテール260を切断することにより、容易に切り離すことができる。」

(2) 対比
ア 引用発明の「FPC212」は、「グラウンド配線250」及び「複数の配線218」を含み、引用発明の「グラウンド配線250」の一端252は、「テストタブ240」上に設けられた「接地ビア254」を介して、「テストタブ240」の「ステンレス鋼層」にルーティングされ、他端256は、ベースプレート220に設けられた接地ビア258を介して、「FPCのステンレス鋼層」にルーティングされる。
また、接地ビア258は、接地ビア254と同様の、「絶縁層」及び「ステンレス鋼層」を有し得るとしている。
そうすると、引用発明の「FPCのステンレス鋼層」及び「絶縁層」は、それぞれ本願発明にいう「金属支持基板」及び「前記金属支持基板上に形成された絶縁層」に相当する。
また、引用発明の「グラウンド配線250」及び「複数の配線218」は、「表面にめっき部を有する」かどうかは定かではないものの、「前記絶縁層上に形成された配線層」といえる点で、本願発明と共通し、引用発明の「FPC212」は、本願発明にいう「サスペンション基板」に対応するものといえる。また、引用発明の「グラウンド配線250」及び「複数の配線218」は、それぞれ本願発明の「第一配線層」及び「第三配線層」に対応する。

イ 引用発明の「テストタブ240」は、「FPC212」のテール260に設けられ、「保護層262」、「絶縁層264」、及び「ステンレス鋼層266」を含む。
また、引用発明では、「テストタブ240」の「ステンレス鋼層」と「FPCのステンレス鋼層」とは、「接地ビア254」、「グラウンド配線250」及び接地ビア258を通じて接地のために接続され、かつ、「FPC212」の「グラウンド配線250」及び「複数の配線218」のうち、「グラウンド配線250」のみが「接地ビア254」を介して「ステンレス鋼層」に接続される。
そうすると、引用発明の「テストタブ240」の「ステンレス鋼層」は、電気的に「周囲とは絶縁されたジャンパー部」ではないものの、「FPCのステンレス鋼層」とは「物理的に連続していない島部」といい得る点で、本願発明と共通し、また、本願発明と引用発明とは、「前記物理的に連続していない島部上に形成された絶縁層の開口部に、第1ビア部が形成され」、「前記第一配線層は、前記第一ビア部と接続され」、「前記第1ビア部は、前記島部に接続され」ている点で共通するといえる。

ウ したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、配線層とを有するサスペンション用基板であって、
前記配線層は、第一配線層および第三配線層を有し、
前記金属支持基板は、物理的に連続していない島部を有し、
前記物理的に連続していない島部上に形成された絶縁層の開口部に、第1ビア部が形成され、
前記第一配線層は、前記第一ビア部と接続され、
前記第1ビア部は、前記島部に接続されていることを特徴とするサスペンション用基板。

[相違点1]
配線層が、本願発明では、「表面にめっき部を有する」のに対し、引用発明では、「表面にめっき部を有する」かどうか定かでない点。

[相違点2]
物理的に連続していない島部が、本願発明では、「周囲とは絶縁されたジャンパー部」であるのに対し、引用発明では、接地のためのものであって「周囲とは絶縁されたジャンパー部」ではない点。

また、上記相違点2に関連して、さらに以下の相違点3及び相違点4を有する。

[相違点3]
本願発明では、配線層が「第二配線層」を有し、「前記ジャンパー部上」に形成された前記絶縁層の開口部に、「第二ビア部が形成」され、「前記第二配線層は、前記第二ビア部と接続され」、「前記第一ビア部および前記第二ビア部は、前記ジャンパー部に接続され」るのに対し、引用発明では、配線層が「第二配線層」を有するものではなく、前記「第二配線層」及び「前記ジャンパー部」に接続される「第二ビア部」も形成されていない点。

[相違点4]
本願発明では、「前記ジャンパー部上」に形成された前記絶縁層の開口部に、「第三ビア部が形成され」、第三配線層は「前記第三ビア部と接続され」、「前記第三ビア部は、前記ジャンパー部から絶縁されている」のに対し、引用発明では、第三配線層は、テストパッドと接続される点。

(3)判断
事案にかんがみ、まず上記相違点2及び3について検討する。

引用発明は、製造中のESD損傷を防ぐべく、テストタブ240の「金属支持基板」を接地のために利用するものである。

そうすると、仮に、引用発明において、さらに「第二配線層」及び「第二ビア部」を設け、該「第二配線層」を該「第二ビア部」を介して、テストタブ240の「金属支持基板」(上記一致点とした「物理的に連続していない島部」)に接続することができたとしても、上記テストタブ240の「金属支持基板」は、該「第二配線層」を接地する機能を果たすだけであって、「第一配線層」から「第二配線層」に電気的な信号をジャンプさせるための「ジャンパー部」とはならないから、相違点2及び3に係る構成に至らないことは明らかである。

また、テストタブ240の「金属支持基板」を、前記「ジャンパー部」として用いるためには、製造中のESD損傷を防ぐための接地部としての機能を犠牲にする必要があるから、引用発明に相違点2及び3に係る構成を適用することの動機付けがあるともいえない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.請求項2-6に係る発明について
請求項2-6に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに限定したものであるから、少なくとも上記1(2)の相違点1-4の点で引用発明と相違し、上記1(3)で検討したのと同様の理由により、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3.請求項7に係る発明について
請求項7に係る発明は、「金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、表面にめっき部を有する配線層とを有するサスペンション用基板」の製造方法の発明であって、少なくとも「前記金属支持部材をエッチングすることにより、前記第一ビア部および前記第二ビア部とは接続され」、「かつ、周囲とは絶縁されたジャンパー部を有する前記金属支持基板を形成する金属支持基板形成工程」を有する点で、上記1(3)で検討したのと同様の理由により、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-7に係る発明は、いずれも、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-20 
出願番号 特願2012-71945(P2012-71945)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 山本 章裕
北岡 浩
発明の名称 サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法  
代理人 山下 昭彦  

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