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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1329480
審判番号 不服2016-6995  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-12 
確定日 2017-07-10 
事件の表示 特願2012-145337「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月20日出願公開、特開2014-10953、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月28日の出願であって、平成27年12月17日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成28年2月2日に手続補正されたが、同年2月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。発送日:同年2月25日)され、これに対し、同年5月12日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において同年11月25日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、その指定期間内の平成29年1月5日に手続補正され、さらに、同年3月8日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という。)が通知され、その指定期間内の同年4月5日に手続補正されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、平成29年4月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
第1の接続対象物とこの第1の接続対象物に相対する第2の接続対象物との間に配置され、前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とを電気的に接続するコネクタにおいて、
二次元配列されて連結される複数の絶縁性フレームと、
前記複数の絶縁性フレームの各々に保持され、前記第1の接続対象物に形成された第1の端子部と前記第2の接続対象物に形成された第2の端子部とを導通させる複数のコンタクト部材と
を備え、
前記複数の絶縁性フレームの各々が、矩形の枠部を有し、
前記複数のコンタクト部材の各々は、前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とで挟まれる板状の絶縁性弾性体と、前記絶縁性弾性体にその長手方向に沿って等間隔に設けられた複数の帯状の導電膜とで構成され、
前記枠部の4つの内側面のうちの互いに平行な2つの内側面に、各々の前記コンタクト部材の両端部を保持する複数の保持部が設けられ、
前記複数のコンタクト部材が、前記複数の保持部が設けられた前記2つの内側面に平行な方向に沿って隣接するように配列されており、
前記複数の帯状の導電膜の各々が、前記絶縁性弾性体の前記第1の接続対象物側の面から前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の一方の面を経て前記絶縁性弾性体の前記第2の接続対象物側の面まで達し、
前記導電膜の両端が、前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の他方の面よりも前記一方の面側に位置している
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
隣接する前記枠部同士を分離可能に連結する連結用凹凸部が、前記枠部に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記連結用凹凸部が、前記枠部の4つの外側面のうち互いに平行な2つの外側面にそれぞれ設けられ、
前記2つの外側面のうちの一方の外側面の前記連結用凹凸部の凸部と、他方の外側面の前記連結用凹凸部の凸部とが、前記2つの外側面に平行な方向へ所定ピッチずれている
ことを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記連結用凹凸部が、前記枠部の4つの外側面にそれぞれ設けられ、
前記4つの外側面のうち互いに平行な外側面の一方の外側面の前記連結用凹凸部の凸部と、他方の外側面の前記連結用凹凸部の凸部とが、前記平行な外側面に平行な方向へ所定ピッチずれている
ことを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項5】
前記コンタクト部材が、絶縁性弾性体と、前記絶縁性弾性体にその長手方向へ貫くように設けられた芯材とを有し、
前記芯材の両端部が、前記絶縁性弾性体の両端から突出し、
前記芯材の両端部が前記保持部に保持されている
ことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項6】
前記保持部が、前記芯材の両端部を受け容れる凹部である
ことを特徴とする請求項5記載のコネクタ。
【請求項7】
二次元配列されて連結された前記複数の絶縁性フレームを保持するホルダを備えている
ことを特徴とする請求項2?6のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ホルダが、前記連結用凹凸部と嵌合可能な位置決め用凹凸部を有する
ことを特徴とする請求項7記載のコネクタ。
【請求項9】
前記ホルダの厚さ寸法が前記絶縁性フレームの前記枠部の厚さ寸法より大きく、
前記ホルダの上部に前記第1の接続対象物を前記ホルダ内に導くガイド面が形成されている
ことを特徴とする請求項7又は8記載のコネクタ。
【請求項10】
前記ホルダの厚さ寸法と前記絶縁性フレームの前記枠部の厚さ寸法とがほぼ等しい
ことを特徴とする請求項7又は8記載のコネクタ。」

第3 刊行物
1 刊行物A
原査定に引用され、本願の出願前に頒布された米国特許出願公開第2005/0037639号明細書(以下「刊行物A」という、原査定では刊行物1として引用。)には、「ELECTRICAL CONNECTOR」(電気コネクタ)に関して、図面(特に、FIG.1、FIG.2、FIG.5、FIG.7(あ)、FIG.8参照)とともに、次の事項が記載されている。仮訳は当審が作成した。

(1)[0001]
(仮訳)本発明は、一般に電子通信装置に関し、より詳細には、複数の電気コンタクトを収容できる電気コネクタに関するものである。本発明が集積回路及び回路搬送素子との間の電気的連絡を確立する際に特に使用される。

(2)[0030]
(仮訳)図面を参照すると、同様の参照番号は同様の特徴を指しており、図1に示されている集積回路パッケージ102とプリント回路基板104との間の典型的なアプリケーションに位置する挿入体組立体100の一実施形態である。例示された特定の用途では、集積回路パッケージ102から熱を除去するために、ヒートシンク106は、上方に位置すると集積回路パッケージの上面に取り付けることができる。集積回路パッケージ102と電気的通信を確立するために、格子状に配置された導電性の複数の接触パッド108をその下面に配置され、ランド・グリッド・アレイ(“LGA”)と呼ばれる。プリント回路基板104の上面に配置された電気的接触子パッドまたはトレース110のうちの対応するLGA構成となっている。集積回路パッケージ102とプリント回路基板104との間の電気通信は、複数の電気接触子を収容する平面状挿入体組立体100を介して確立される。

(3)[0032]
(仮訳)図2及び図3を参照すると、挿入体組立体100の図示の実施形態は、互いに隣接する2×2の構成に配列され、フレーム200内に組み付け4パネル120を備える点は、第1の面116及び第2面118を画定するほぼ平坦な平面を、図4に示すように、形成される。図2及び図3を参照して、電気接点を収容するために、各パネル120は、第1面と第2面との間に配置された複数の孔122を含む。開口は、集積回路基板とプリント回路基板上に配置されたLGAに対応するパターンで配置されることが好ましい。

(4)[0033]
(仮訳)実施形態では、各パネルは、精密成形法によって液晶ポリマー(“LCP”)から成形することができる。精密射出成形されるパネルの全特徴部(feature)を成形できる、エッジ及び開口を含む。好ましくは、図示の実施形態において、各パネルであり、2インチの幅で約2インチ、0.032インチの厚さである。各パネルを形成するために使用されるLCP材料の体積は、約0.106立方インチである。

(5)[0034]
(仮訳)図5に示す実施形態では、各開口部122は、少なくとも1つのコンタクト124を収容するように構成されるコンタクトと第1及び第2の表面116、118よりも若干突出している。コンタクト124は面よりも突出していることにより、プリント基板にLGAと当接面のパッドに接触することができる。好ましくは、信頼性の高い電気的接続を確立するために、圧縮されて、パッドおよび接触面に抗して後退付勢できるように接点は弾力性がある。

(6)[0035]
(仮訳)図示の実施形態において、コンタクト124は、実質的な弾性を示す円筒形状、詰められたワイヤ接触される。このタイプの連絡先は無作為に詰められた単一の薄い電気的に導電性ワイヤから製造することができる。例として、接点タイプのものであってもよい。詰められたワイヤコンタクト124を開口部122内には、開口は、好ましくは、第1及び第2の面116、118に近接したフレア状端部を有する砂時計形状である。砂時計形状の利点は、圧縮されるとフレア状の端部が変位する余地が詰められたワイヤ接触を提供するが凹んだ中央部分は、詰められたワイヤ接触を挟みこんで保持することである。

(7)[0038]
(仮訳)図7aを参照すると、別の実施形態では、各開口部122は、弾性接触子136を収容することができる。弾性コンタクト136は、弾性材料と導電性粒子との混合物から製造することができる。弾性品質との通電能力の両方と弾性コンタクト136を提供する。弾性接点の端部は、第1の表面116及び第2の表面118を越えて僅かに突出するように、エラストマーコンタクト136は開口内に保持されることが好ましい。

(8)[0040]
(仮訳)図8に示す組立前にパネル120及びフレーム200は複数存在する。開口122を含むことに加えて、各パネル120の形状は平面であり、一般的には正方形である。正方形を定義するためには、各パネル122は、互いに垂直な2固定端縁140、141と同様に互いに直交する2フレーム縁部142を備えている。エッジの垂直配置のため、各固定端縁140、141は、枠縁142の1つに平行である。一緒に組み立てられると、図2及び図3に示すように、枠縁142は、挿入体組立体を一緒に保持するための支持フレーム200と係合する隣接するパネル120の係止縁部140、141は連動して互いに係合する挿入体組立体100の中心に比べて剛性および安定性を提供することである。

上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物Aには、FIG.7(a)の実施形態について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「集積回路パッケージ102とこの集積回路パッケージ102に相対するプリント回路基板104との間に配置され、前記集積回路パッケージ102と前記プリント回路基板104とを電気的に接続する平面状挿入体組立体100において、
二次元配列されて連結される複数のパネル120と、
前記複数のパネル120の各々に保持され、前記集積回路パッケージ102に形成された接触パッド108と前記プリント回路基板104に形成された電気的接触子パッドまたはトレース110とを導通させる複数の弾性コンタクト136と
を備え、
前記複数のパネル120の各々が、矩形の固定端縁140、141及びフレーム縁部142、142を有し、
前記複数の弾性コンタクト136の各々は、弾性材料と導電性粒子との混合物から製造され、端部が第1の表面116及び第2の表面118を越えて僅かに突出するように開口部122内に保持される平面状挿入体組立体100。」

2 刊行物B
原査定に引用され、本願の出願前に頒布された特開2006-147469号公報(以下「刊行物B」という、原査定では刊行物4として引用。)には、「コネクタ」に関して、図面(特に、図1ないし図3参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に係る貫通孔(スルーホール)を利用したインターポーザの場合、マザーボードの貫通孔に電極端子(コネクタピン)を挿入するタイプであるため、貫通孔の間隔(ピッチ)でしか接続相手側の基板の導体パターンとの接続を行うことができないという構造上の制約があり、これが昨今の高密度化接続の要求が顕著なコネクタとしての基本機能(性能)の限度となっているという問題があり、その他にも貫通孔から露呈した端子部(コンタクト)が剥き出しになっていることにより異物等が付着すると接触不良になったり、或いは他の導電性部材と接触すると短絡を起こす危険性がある等、基本構造的にも安定して信頼性高く接続し得る構造でないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、接続対象物の貫通孔の間隔よりも高密度な導体パターンへの接続が可能であると共に、コンタクトの電気的な短絡や接触不良の危険性が極めて少なく、安定して信頼性高く接続し得るコネクタを提供することにある。」

(2)「【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る配線基板20,30間の接続に供されるコネクタ10の外観構成を一部破断して透視して示した斜視図である。図2は、コネクタ10の図1中に示される局部領域E近傍を拡大して示した外観斜視図である。図3は、コネクタ10の細部構成を一部分解して示した外観斜視図である。
【0015】
このコネクタ10の場合、複数のコンタクト12がインシュレータ11に設けられて成るもので、図1を参照すれば、第1の接続対象物として、長さ方向に延びて平行に高密度な間隔で配設された配線パターンにおける先端にあっての幅方向へ2段で配列され、且つ長さ方向における同一直線上で対向するように配置された太線パターンに係るパッド部21と細線パターンに係るパッド部22との略中心位置及びそれらの中間位置に貫通孔が設けられた配線基板20と、第2の接続対象物として、長さ方向に延びて平行に高密度な間隔で配設された配線パターンにおける先端にあっての幅方向へ段差を成して配列され、且つ幅方向で隣接するもの同士が長さ方向における同一直線上で対向するように配置されたパッド部31,32のうちの一方側の対向するパッド部32の略中心位置及びそれらの中間位置に貫通孔が設けられた配線基板30との間を各コンタクト12を介在したパッド部21,31に繋がる配線パターン同士とパッド部22,32に繋がる配線パターン同士との接続(導体パターンの接続)により導通させる構造を持つものである。
【0016】
このような配線基板20,30間の接続に供されるコネクタ10の細部構成として、各コンタクト12は、部材支持及び係止用の棒状片12cの両端以外の中途部分に弾性部材としてのゲル12bの表面上に導体部としての金属薄膜12aがゲル12bに挟まれるように直線状に連設されて成るもので、配線基板20のパッド21,22と配線基板30のパッド部31,32とに対してそれぞれ配線基板20,30の長さ方向で接続されると共に、幅方向で直線状に並設される2列構成となっている。
【0017】
インシュレータ11は、2列構成の各コンタクト12を固定保持するための保持部として、平行する2段の切り込まれたフレーム形における切り込み部でそれぞれ直線状に高密度で配列された各コンタクト12を収納し、各切り込み部の両側に総計4箇所設けられた係止用溝15で棒状片12cの両端を装着して係止する構造を持つ他、配線基板20,30の長さ方向でパッド部21,22とパッド部32とに設けられた貫通孔への圧入固定に供される圧入部としての圧入用突起14と、この圧入用突起14よりも低背で配線基板20,30の表面に当接されると共に、各コンタクト12における弾性変位量を規定するための係止部としての係止用突起13とが直線状に交互に所定の間隔を有して高密度で配線基板20,30の幅方向に配設された上、これらの圧入用突起14及び係止用突起13が各コンタクト12の配列方向と平行して各コンタクト12の2列構成をそれぞれ間に挟むように並設された3列構成となっている。因みに、ここでのインシュレータ11自体は絶縁性の樹脂等から成り、圧入用突起14及び係止用突起13が一体的に形成されているものである。
【0018】
このコネクタを用いれば、図1に示したように、高密度に配線パターンが配設された配線基板20,30を接続対象としても、配線基板20の配線パターンにおけるパッド部21,22及びそれらの中間位置と配線基板30の配線パターンにおけるパッド部32の略中心位置及びそれらの中間位置に設けられた貫通孔に対してインシュレータ11の3段配列の圧入用突起14をそれぞれ上下方向で圧入して圧着し、各コンタクト12を配線基板20,30の表面に押圧する状態で嵌合させることにより、各コンタクト12が弾性変形してパッド部21,31に繋がる配線パターン同士とパッド部22,32に繋がる配線パターン同士とを介在接続し、導体パターンの接続による導通機能が得られる。このとき、コネクタにおいては、全体的に低背な略薄板状の構造であり、貫通孔の間隔よりも高密度な導体パターンを持つ配線基板20,30を接続対象としても、各コンタクト12の大部分が配線基板20,30間に覆われて特許文献1の構成のように露呈されることが無いため、電気的な短絡や接触不良の危険性が極めて少なく、結果として安定して信頼性高く接続を行うことができる。」

上記記載事項及び図面の図示内容を整理すると、刊行物Bには、次の事項(以下「刊行物Bに記載された事項」という。)が記載されている。

「複数のコンタクト12の各々は、配線基板20と配線基板30とで挟まれる棒状片12c及びゲル12bと、前記棒状片12c及びゲル12bにその長手方向に沿って等間隔に設けられた複数の金属薄膜12aとで構成され、インシュレータ11の内側面のうちの互いに平行な内側面に、各々の前記コンタクト12の両端部を保持する複数の係止用溝15が設けられ、前記複数のコンタクト12が、前記複数の係止用溝15が設けられた前記内側面に平行な方向に沿って配列されており、前記複数の金属薄膜12aの各々が、前記棒状片12c及びゲル12bの前記配線基板20側の面から前記複数のコンタクト12の配列方向における前記棒状片12c及びゲル12bの一方の面を経て前記棒状片12c及びゲル12bの前記配線基板30側の面まで達しているコネクタ10。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「集積回路パッケージ102」は前者の「第1の接続対象物」に相当し、以下同様に、「プリント回路基板104」は「第2の接続対象物」に、「平面状挿入体組立体100」は「コネクタ」に、「パネル120」は「絶縁性フレーム」に、「前記集積回路パッケージ102に形成された接触パッド108」は「前記第1の接続対象物に形成された第1の端子部」に、「前記プリント回路基板104に形成された電気的接触子パッドまたはトレース110」は「前記第2の接続対象物に形成された第2の端子部」に、「弾性コンタクト136」は「コンタクト部材」に、「矩形の固定端縁140、141及びフレーム縁部142、142」は「矩形の枠部」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「第1の接続対象物とこの第1の接続対象物に相対する第2の接続対象物との間に配置され、前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とを電気的に接続するコネクタにおいて、
二次元配列されて連結される複数の絶縁性フレームと、
前記複数の絶縁性フレームの各々に保持され、前記第1の接続対象物に形成された第1の端子部と前記第2の接続対象物に形成された第2の端子部とを導通させる複数のコンタクト部材と
を備え、
前記複数の絶縁性フレームの各々が、矩形の枠部を有する、
コネクタ。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
本願発明1は、「前記複数のコンタクト部材の各々は、前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とで挟まれる板状の絶縁性弾性体と、前記絶縁性弾性体にその長手方向に沿って等間隔に設けられた複数の帯状の導電膜とで構成され、前記枠部の4つの内側面のうちの互いに平行な2つの内側面に、各々の前記コンタクト部材の両端部を保持する複数の保持部が設けられ、前記複数のコンタクト部材が、前記複数の保持部が設けられた前記2つの内側面に平行な方向に沿って隣接するように配列されており、前記複数の帯状の導電膜の各々が、前記絶縁性弾性体の前記第1の接続対象物側の面から前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の一方の面を経て前記絶縁性弾性体の前記第2の接続対象物側の面まで達し、前記導電膜の両端が、前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の他方の面よりも前記一方の面側に位置している」のに対し、
引用発明は、「複数の弾性コンタクト136の各々は、弾性材料と導電性粒子との混合物から製造され、端部が第1の表面116及び第2の表面118を越えて僅かに突出するように開口部122内に保持される」点(以下「相違点」)。

そこで、相違点について検討する。
本願発明1と刊行物2に記載された事項とを対比すると、後者の「コンタクト12」は前者の「コンタクト部材」に相当し、以下同様に、「配線基板20」は「第1の接続対象物」に、「配線基板30」は「第2の接続対象物」に、「棒状片12c及びゲル12b」は「絶縁性弾性体」に、「金属薄膜12a」は「帯状の導電膜」に、「インシュレータ11」は「枠部」に、「係止用溝15」は「保持部」にそれぞれ相当する。

そうすると、刊行物2に記載された事項は、相違点に係る本願発明1の発明特定事項のうち、「前記複数のコンタクト部材の各々は、前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とで挟まれる絶縁性弾性体と、前記絶縁性弾性体にその長手方向に沿って等間隔に設けられた複数の帯状の導電膜とで構成され、前記枠部の内側面のうちの互いに平行な内側面に、各々の前記コンタクト部材の両端部を保持する複数の保持部が設けられ、前記複数のコンタクト部材が、前記複数の保持部が設けられた前記内側面に平行な方向に沿って配列されており、前記複数の帯状の導電膜の各々が、前記絶縁性弾性体の前記第1の接続対象物側の面から前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の一方の面を経て前記絶縁性弾性体の前記第2の接続対象物側の面まで達し」ているとの事項を備えるが、他方、本願発明1の絶縁性弾性体が「板状」であり、複数のコンタクト部材が枠部の「4つの」内側面のうちの互いに平行な「2つの」内側面に設けられた保持部に、前記「2つの」内側面に平行な方向に沿って「隣接するように」配列されており、「前記導電膜の両端が、前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の他方の面よりも前記一方の面側に位置している」との事項を備えていない。

そして、相違点に係る本願発明1の発明特定事項のうち「前記導電膜の両端が、前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の他方の面よりも前記一方の面側に位置している」との事項は、「絶縁性弾性体51が弾性変形したときに、導電膜53が隣接する他のコンタクト部材5の導電膜53に接触しない」(平成28年2月2日の手続補正により補正された本願明細書の段落【0029】)との効果を奏するものである。

これに対し、刊行物2には、金属薄膜12aについて、ゲル12bの表面上に「金属薄膜12aがゲル12bに挟まれるように直線状に連設されて成る」(段落【0016】)こと、また、インシュレータ11について、「2列構成の各コンタクト12を固定保持するための保持部として、平行する2段の切り込まれたフレーム形における切り込み部でそれぞれ直線状に高密度で配列された各コンタクト12を収納」(段落【0017】)することが記載されるに止まる。

そうすると、刊行物2に記載された事項において、インシュレータ11を「4つの」内側面をもつものとし、コンタクト12を「2つの」内側面に沿って「隣接するように」配列し、金属薄膜12aの「両端が、前記複数のコンタクト部材の配列方向における前記絶縁性弾性体の他方の面よりも前記一方の面側に位置」するようにすることは、当業者にとって設計事項とは認められない。

また、本願の出願前に頒布された特開2004-63476号公報(以下「刊行物C」という、原査定では刊行物2として引用。)及び同実願昭63-5605号(実開平1-111488号)のマイクロフィルム(以下「刊行物D」という、原査定では刊行物3として引用。)には、相違点に係る本願発明1の発明特定事項に関する記載はない。

したがって、引用発明において、当業者が刊行物BないしDに記載された事項を適用して、相違点に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえない。

よって、本願発明1は、引用発明及び刊行物BないしDに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び刊行物BないしDに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、平成28年2月2日の手続補正により補正された請求項1ないし10に係る発明について、上記刊行物1ないし4に基いて当業者が容易に発明をすることができたから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年4月5日の手続補正により補正された請求項1は、前記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものとなっており、前記のとおり、本願発明1ないし10は、引用発明及び刊行物BないしDに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由1,2の概要及び当審拒絶理由1,2についての判断
当審では、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号又は同項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知した。
しかしながら、平成29年4月5日の手続補正により請求項1ないし10の記載は、前記「第2」のとおり補正されたので、これらの拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし10は、いずれも、引用発明及び刊行物BないしDに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-28 
出願番号 特願2012-145337(P2012-145337)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
P 1 8・ 537- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 内田 博之
冨岡 和人
発明の名称 コネクタ  
代理人 木内 修  

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