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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C12P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12P
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C12P
管理番号 1329536
審判番号 不服2016-6690  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2014- 31850「微生物由来の油の単離方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月31日出願公開、特開2014-138598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月21日の出願であって、平成13年8月1日を国際出願日とする特願2002-516339号(パリ条約による優先権主張 平成12年8月2日 欧州特許庁)の一部を特許法第44条第1項の規定に基づいて分割出願した特願2011-196284号の一部を同法第44条第1項の規定に基づいて分割出願したものであり、 平成27年4月23日付け拒絶理由通知に対し、同年8月26日に意見書および手続補正書が提出され、同年12月18日付けで拒絶査定がなされ、平成28年5月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成28年5月6日付け手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成28年5月6日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「【請求項1】
(a)微生物の細胞の細胞壁を破壊して油を放出させる工程、および
(b)前記工程(a)で形成された細胞壁細片の少なくとも一部から油を分離する工程を含む
微生物の細胞から1種以上のポリ不飽和脂肪酸を含有する油を生成する方法であって、
前記油に含有される前記ポリ不飽和脂肪酸の50%以上がトリグリセリドの形態であり、
前記段階(a)および(b)において有機溶媒を用いない、方法。」とあったものを、
「【請求項1】
(a)微生物の細胞の細胞壁を破壊して油を放出させる工程、
(b)前記工程(a)で形成された細胞壁細片の少なくとも一部から油を分離する工程、および
(c)前記微生物由来の油または1種以上のポリ不飽和脂肪酸を抽出、精製または単離する工程を含む
微生物の細胞から1種以上のポリ不飽和脂肪酸を含有する油を生成する方法であって、
前記油に含有される前記ポリ不飽和脂肪酸の50%以上がトリグリセリドの形態であり、
前記段階(a)、(b)および(c)において有機溶媒を用いず、
(i)当該方法が、段階(a)の前に、前記細胞を低温殺菌することを含む、
(ii)細胞が、物理的、酵素的または機械的に破壊され、破壊が、均質化を含み、前記均質化中の圧力が、150?900barである、または、
(iii)微生物の細胞がMortierella alpinaで、前記ポリ不飽和脂肪酸が、アラキドン酸である、
の(i)、(ii)および(iii)うち少なくとも1つが適用される、方法。」とする補正事項を含むものである。

2.目的要件について
上記補正事項によって、補正後の請求項1の方法が、(ア)「(c)前記微生物由来の油または1種以上のポリ不飽和脂肪酸を抽出、精製または単離する工程」を含むこと、(イ)(c)工程において有機溶媒を用いないこと、および、(ウ)「(i)当該方法が、段階(a)の前に、前記細胞を低温殺菌することを含む、
(ii)細胞が、物理的、酵素的または機械的に破壊され、破壊が、均質化を含み、前記均質化中の圧力が、150?900barである、または、
(iii)微生物の細胞がMortierella alpinaで、前記ポリ不飽和脂肪酸が、アラキドン酸である、
の(i)、(ii)および(iii)うち少なくとも1つが適用される」ことが特定された。

上記(ア)は、補正前の請求項5に記載されており、上記(イ)は上記(ア)について限定するものであるから、これらの補正は特許請求の範囲の限定的減縮に相当すると認められる。
しかし、上記(ウ)に記載される事項は、補正前のいずれの請求項にも記載されていない。補正前の請求項2には「細胞が、物理的、酵素的または機械的に破壊される請求項1記載の方法。」が記載され、補正前の請求項3には「破壊が、均質化を含む請求項2記載の方法。」が記載され、補正前の請求項4には「前記均質化中の圧力が、150?900barである、請求項3記載の方法。」が記載されており、また、補正前の請求項17には「前記ポリ不飽和脂肪酸が、アラキドン酸及びドコサヘキサエン酸から選ばれる」こと、補正前の請求項18には、「段階(a)の前に、前記細胞を低温殺菌すること」が記載されているが、補正前の請求項1に記載される方法において、「(i)、(ii)および(iii)うち少なくとも1つが適用される」ことは記載されていない。
したがって、上記(ウ)の事項を特定する補正は、補正前の発明の限定的減縮には相当せず、また、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明にも相当しないことも明らかである。
よって、この補正事項は、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものとも認められない。

なお、仮に本件補正が補正前の発明の限定的減縮に相当するとしても、以下(1)、(2)のとおり、補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する)ものとはいえない。

(1)補正後の請求項1には(i)?(iii)のいずれか1つの工程が適用されることが特定されており、発明を特定するための事項が選択肢で表現されているが、(i)?(iii)の選択肢は、全く異なる観点について特定するものであって、選択肢同士が類似の機能を有するものでないため、請求項1の記載から一の発明が明確に特定されない。
したがって、補正後の請求項1に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号の要件に適合しない。

(2)補正後の請求項1に記載される「(ii)細胞が、物理的、酵素的または機械的に破壊され、破壊が、均質化を含み、前記均質化中の圧力が、150?900barである」の記載における「細胞が、物理的、酵素的または機械的に破壊され、破壊が、均質化を含み」の記載は、「物理的、酵素的または機械的に破壊」と「均質化」とを組み合わせることを特定しているとも、あるいは「物理的、酵素的または機械的に破壊」が「均質化」であることを特定するものとも解され、いかなる事項を特定するものか明らかでない。
なお、発明の詳細な説明には、「機械的な破壊」はホモジナイザーを用いた「均質化」を包含すること(段落【0016】)、「均質化」が細胞壁を破壊する好ましい方法であること(段落【0017】)が記載され、実施例には、ホモジナイザーによる「均質化」によって細胞を機械的に破壊することが記載されているから、「機械的」な破壊としての均質化が記載されていると認められるが、「物理的、酵素的」な破壊としての「均質化」については何ら記載されていない。また、「物理的、酵素的または機械的に破壊」と「均質化」とを組み合わせることは記載されていない。
したがって、補正後の請求項1に係る発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号の要件に適合しない。

3.小括
以上のとおり、上記の補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1?18に係る発明は、平成27年8月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載の事項により特定される発明であると認める。そのうち、この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(a)微生物の細胞の細胞壁を破壊して油を放出させる工程、および
(b)前記工程(a)で形成された細胞壁細片の少なくとも一部から油を分離する工程を含む
微生物の細胞から1種以上のポリ不飽和脂肪酸を含有する油を生成する方法であって、
前記油に含有される前記ポリ不飽和脂肪酸の50%以上がトリグリセリドの形態であり、
前記段階(a)および(b)において有機溶媒を用いない、方法。」

2.先願明細書
この出願の日前の外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願である PCT/US01/01806号 の国際出願日における国際出願の明細書(以下、「先願明細書」という。国際公開第01/053512号、翻訳文として特表2003-520046号公報を参照)には、以下の事項が記載されている。

ア 「無溶媒抽出プロセス」(発明の名称)

イ 「【請求項1】微生物から脂質を得るプロセスであって、
(a)微生物の細胞を溶解して、溶解した細胞混合物を生成する工程と、
(b)前記溶解した細胞混合物を処理して、水溶液を含む重い層と前記脂質を含む軽い層から成る相分離混合物を生成する工程と、
(c)前記軽い層から前記重い層を分離する工程と、
(d)前記軽い層から前記脂質を得る工程と、から成るプロセス。」(特許請求の範囲)

ウ 「【請求項18】前記微生物は、コレステロール、フィトステロール、デスモステロール、トコトリエノール、トコフェロール、ユビキノン、β-カロチン等のカロテノイドおよびキサントフィル、ルテイン、リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、および共役リノール酸のような脂肪酸、ならびにエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ステアリドン酸、ジホモガンマリノレン酸およびγ-リノレン酸のようなω-3およびω-6高度不飽和脂肪酸、またはそれらの混合物を少なくとも約0.1g/L/h生産することができる、請求項1に記載のプロセス。」

エ 「本発明のプロセスは、細胞内に存在する脂質を放出するために微生物細胞を破裂または溶解させることも含み得る。細胞は、化学的方法;熱的方法;フレンチプレス、ミル、超音波処理、均質化、および蒸気爆発を含むがそれらに限定されない機械的方法;およびそれらの組み合わせを含む既知の方法のうちの任意のものを使用して溶解することができる。細胞の熱的溶解では、微生物の細胞(つまり細胞壁)が分解または崩壊するまで、微生物を含む発酵培養液が加熱される。」(段落【0026】)

3.先願明細書に記載された発明
上記ア、イより、先願明細書には以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「微生物から無溶媒で脂質を得るプロセスであって、
(a)微生物の細胞を溶解して、溶解した細胞混合物を生成する工程と、
(b)前記溶解した細胞混合物を処理して、水溶液を含む重い層と前記脂質を含む軽い層から成る相分離混合物を生成する工程と、
(c)前記軽い層から前記重い層を分離する工程と、
(d)前記軽い層から前記脂質を得る工程と、から成るプロセス。」

4.対比
本願発明と先願発明とを対比する。
上記ウの記載から、先願発明において得られる脂質(油)には、高度不飽和脂肪酸が含有されていると認められる。そして、先願発明における細胞の溶解とは、上記エに具体的に記載されるような、機械的な方法や熱的な方法による細胞の破壊であると認められるところ、本願発明の細胞の細胞壁の破壊は、本願明細書の段落【0014】に記載される、機械的な方法や物理的な方法(加熱等)による細胞の破壊(または溶解)であると認められるから、先願発明の「微生物から無溶媒で脂質を得るプロセスであって、
(a)微生物の細胞を溶解して、溶解した細胞混合物を生成する工程と、
(b)前記溶解した細胞混合物を処理して、水溶液を含む重い層と前記脂質を含む軽い層から成る相分離混合物を生成する工程と、
(c)前記軽い層から前記重い層を分離する工程と、
(d)前記軽い層から前記脂質を得る工程と、から成るプロセス」は、本願発明の「(a)微生物の細胞の細胞壁を破壊して油を放出させる工程、および
(b)前記工程(a)で形成された細胞壁細片の少なくとも一部から油を分離する工程を含む
微生物の細胞から1種以上のポリ不飽和脂肪酸を含有する油を生成する方法であって」、「前記段階(a)および(b)において有機溶媒を用いない、方法」に相当すると認められる。
したがって、両者は、「(a)微生物の細胞の細胞壁を破壊して油を放出させる工程、および
(b)前記工程(a)で形成された細胞壁細片の少なくとも一部から油を分離する工程を含む
微生物の細胞から1種以上のポリ不飽和脂肪酸を含有する油を生成する方法であって、
前記段階(a)および(b)において有機溶媒を用いない、方法。」である点で一致し、本願発明が「前記油に含有される前記ポリ不飽和脂肪酸の50%以上がトリグリセリドの形態であり」と特定しているのに対して、先願発明は特定していない点で一応相違する。

5.当審の判断
先願明細書には、油(油脂)に含有されるトリグリセリドの割合については記載されていないが、一般に微生物から回収される油が主にトリグリセリドを含むことは技術常識であると認められる(必要であれば、拒絶査定において文献1として引用された国際公開第97/04121号、第1頁末行?第2頁1行)。したがって、先願発明で得られる油(脂質)も、主にトリグリセリドを含有する、つまり、油に含有されるポリ不飽和脂肪酸の多くの割合がトリグリセリドの形態であると認められる。
また、先願発明で使用される微生物について、先願明細書には「好ましくは、微生物は脂質に富んだ微生物である。より好ましくは、微生物は、藻類、細菌類、真菌類および原生生物から成る群より選択される。より好ましくは、微生物は、黄金色藻、緑藻、渦鞭毛虫、酵母、モルティエラ(Mortierella )属の真菌類、およびストラメノパイルから成る群より選択される。好ましくは、微生物には、モルティエラ属、クリプテコディニウム(Crypthecodinium )属およびヤブレツボカビ(Thraustochytriales)目の微生物が含まれる。」(段落【0009】)と記載されており、先願発明において、モルティエラ属の微生物が用いられることが記載されているが、拒絶査定において文献2として引用された特表2000-508888号公報の「Yamadaら(単細胞オイルの工業的応用(Industrial applications of single cell oils)KyleおよびRatledge編、118?138頁、1992年)は、トリグリセリド含有量が90%である、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)から精製されるアラキドン酸含有オイルを記載する。」(第7頁)の記載、および、当審が周知例として引用する、New Food Industry, 1995, vol.37, no.9, p.1-9の「M.aipinaiS-4株のPUFA生合成経路を図2に示した。・・・生成したARAの70-90%はトリアシルグリセリンとして菌糸中に蓄積する。」(第3頁)の記載から、先願発明において微生物としてモルティエラ属アルピナが使用された場合に得られる油は、ポリ不飽和脂肪酸の50%以上がトリグリセリドの形態であると認められる。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点ではない。
よって、本願発明は先願発明と同一であると認められる。


第4 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、この出願の日前の外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書に記載された発明と同一であると認められ、しかも、この発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13の規定により同法第29条の2が適用され、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-11 
結審通知日 2017-01-17 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2014-31850(P2014-31850)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C12P)
P 1 8・ 16- Z (C12P)
P 1 8・ 572- Z (C12P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福間 信子藤井 美穂  
特許庁審判長 大宅 郁治
特許庁審判官 中島 庸子
山本 匡子
発明の名称 微生物由来の油の単離方法  
代理人 山口 和弘  
代理人 山田 行一  
代理人 池田 成人  
代理人 野田 雅一  
代理人 清水 義憲  
代理人 阿部 寛  
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