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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1329600
審判番号 不服2016-12052  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-09 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2011-227950号「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013-86617号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月17日の出願であって、平成27年8月21日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月30日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年1月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成29年4月27日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、同年5月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1-5に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平06-262908号公報
2.特開平05-025326号公報
3.特開2010-059250号公報
4.特開2004-122904号公報
5.特開2005-132305号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.請求項1に「tanδ」の数値範囲が特定されているが、同じゴム組成物でも「tanδ」の数値は温度条件(例えば、0℃付近と60℃付近)によっては、大きく異なるとともに、周波数、初期歪、及び動歪等の条件よっても異なるものでるから、ゴム組成物の特性が特定されず、不明確である。また、「硬さ」の測定条件も不明であるから、同様にゴム組成物の特性が特定されず、不明確である。

第4 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成29年5月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-3は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
トレッド部におけるタイヤ赤道線の両側にタイヤ周方向に延びる一対の周方向溝を設け、これら一対の周方向溝の相互間に第1陸部を区画し、前記一対の周方向溝の外側に第2陸部を区画した空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部を構成するキャップトレッドコンパウンドに、JIS K6394に準拠して温度60℃、周波数20Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で測定されるtanδが0.05?0.18の範囲にあり、JIS K6253に準拠してAタイプのデュロメータにより測定される硬さが58?63の範囲にあるゴム組成物を使用し、正規リムに組み付けられて正規内圧に調整された状態で、前記第1陸部のタイヤ赤道線の位置がタイヤ最大外径部となるトレッドプロファイルを構成し、前記第1陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR1を前記第2陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR2よりも大きくし、かつ前記第1陸部の両側に配置された各周方向溝のタイヤ幅方向内側の溝壁をタイヤ幅方向外側の溝壁よりも高くし、トレッド表面の法線方向に対する前記周方向溝の両溝壁の傾斜角度を互いに異ならせ、そのタイヤ幅方向内側の溝壁の傾斜角度をタイヤ幅方向外側の溝壁の傾斜角度よりも大きくしたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1陸部の両側に配置された各周方向溝のタイヤ幅方向内側の溝壁の高さHaとタイヤ幅方向外側の溝壁の高さHbとの差を0.3mm?1.1mmとしたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1陸部がタイヤ周方向に連続的に延在するリブ構造を有することを特徴とする請求項1?2のいずれかに記載の空気入りタイヤ。」

第5 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
原査定で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下同様。)

(1-1)「【0004】
この発明は、従来技術の有するかかる問題点を解決することを課題として検討した結果なされたものであり、この発明の目的は、路面からトレッド部への入力を十分小ならしめることにより、コーナリングパワーの低下、転がり抵抗の増加などをもたらすことなしに車外騒音を有効に低減させることができる空気入りラジアルタイヤを提供するにある。」

(1-2)「【0011】
【実施例】以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の実施例を示す、タイヤ幅方向の横断面外輪郭線であり、これは、タイヤを規定リムにリム組みし、そこへ規定内圧を充填した状態の下での輪郭線である。なお、タイヤの内部補強構造は、一般的なラジアルタイヤのそれと同様であるので、図示を省略する。
【0012】ここでは、タイヤのトレッド部1に、周方向に連続して延びる直線状、ジグザグ状などの三本の周溝2,3を設け、これらの周溝2,3のうち、一本の周溝2をタイヤ赤道面X-X上に位置させるとともに、残りの二本一対の周溝3をそれぞれのトレッドショルダー部に位置させる。ここで、一対のショルダー周溝3は、タイヤ赤道面X-Xから実質的に等距離のほぼ対称位置に形成され、トレッド幅TWの50?75%に相当する間隔をおいて位置する。
【0013】またここでは、それぞれのショルダー周溝3で、トレッド部1をセンター領域4とショルダー領域5とに分割したところにおいて、トレッド部1の外表面を特定する横断面輪郭線をそれらのそれぞれの領域内では、曲率半径がR1 およびR2 の連続曲線とする一方、両ショルダー領域5とセンター領域4との相互間では、ショルダー周溝3の位置を不連続点として、センター領域4のトレッド部外表面に対して、両ショルダー領域5のトレッド部外表面をタイヤの内側方向に0.3?1.0mm の段差で凹ませる。これをいいかえれば、このタイヤでは、ショルダー領域5の現実のトレッド部外表面の曲率半径R2 と、図に仮想線で示されて、センター領域4のトレッド部外表面に滑らかに連続する仮想のトレッド部外表面の曲率半径R3 との差を、ショルダー周溝3の近傍位置にて0.3 ?1.0mm の範囲とする。」

以上の記載事項から次の事項が認定できる。
(1-3)記載事項(1-2)の【0012】の記載内容及び【図1】の図示内容から、トレッド部1におけるタイヤ赤道面X-X上に位置させて一本の周溝2を設けるとともに、タイヤ赤道面X-Xから実質的に等距離のほぼ対称位置に二本一対の周溝3を設け、これら二本一対の周溝3の相互間にセンター領域4を区画し、前記二本一対の周溝3の外側にショルダー領域5を区画した空気入りラジアルタイヤであることが理解できる。

(1-4)【図1】には、センター領域4の外表面を特定する横断面輪郭線の曲率半径R1を前記ショルダー領域5の外表面を特定する横断面輪郭線の曲率半径R2よりも大きいことが示されている。

これら記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「トレッド部1におけるタイヤ赤道面X-X上に位置させて一本の周溝2を設けるとともに、タイヤ赤道面X-Xから実質的に等距離のほぼ対称位置に二本一対の周溝3を設け、これら二本一対の周溝3の相互間にセンター領域4を区画し、前記二本一対の周溝3の外側にショルダー領域5を区画した空気入りラジアルタイヤにおいて、正規リムに組み付けられて正規内圧に充填された状態の下で、前記センター領域4の外表面を特定する横断面輪郭線の曲率半径R1を前記ショルダー領域5の外表面を特定する横断面輪郭線の曲率半径R2よりも大きくし、かつ両ショルダー領域5とセンター領域4との相互間では、周溝3の位置を不連続点として、センター領域4のトレッド部外表面に対して、両ショルダー領域5のトレッド部外表面をタイヤの内側方向に0.3?1.0mmの段差で凹ませる空気入りラジアルタイヤ。」

(2)引用文献2について
原査定で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2-1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐偏摩耗性の良好な低燃費用タイヤのトレッド用ゴム組成物に関するものである。」

(2-2)「【0021】また、本発明のゴム組成物は、ゴム組成物自体として60℃における損失正接tanδが0.15以下、ゴム硬度が50?70度であることを要する。これは、本発明に係る上記カーボンブラックを使用することにより初めて、補強性を損なうことなく配合要因を任意コントロールするだけで達成することが可能となったものであり、これにより耐偏摩耗性を維持したまま転動抵抗を20%低減することができるようになった。・・・」

(3)引用文献3について
原査定で引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3-1)「【0008】
本発明は、前記課題を解決し、良好な氷上・雪上での制動力と、耐偏摩耗性、操縦安定性、さらには良好な転がり抵抗特性と耐摩耗性までをも両立する高性能なトラック・バス用またはライトトラック用スタッドレスタイヤを提供することを目的とする。さらには、該スタッドレスタイヤをより高い生産効率で生産して、より安価に消費者に提供することを目的とする。」

(3-2)「【0037】
前記ゴム組成物の硬化物の硬度は、JIS-A硬度で好ましくは58度以上、より好ましくは58度以上、さらに好ましくは62度以上、最も好ましくは64度以上である。硬度を60度以上にすることによって、良好なブロック剛性を確保し、操縦安定性と良好な耐偏摩耗性、耐摩耗性を確保することができる。一方、硬度は好ましくは75度以下、より好ましくは70度以下、さらに好ましくは67度以下である。硬度を75度以下にすることによって、優れた氷雪上性能を達成することができる。
【0038】
前記ゴム組成物を架橋した架橋物のtanδは、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%および周波数10Hzの条件下で測定したtanδが0.17以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。」

(4)引用文献4について
原査定で引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(4-1)「【0028】
図5(A)には、内の縦溝6Bの付近の拡大図を示す。
中央陸部3の面取部9は、そのタイヤ半径方向の内縁9iが中間陸部4の外面を仮想延長した円弧線Y2よりもタイヤ半径方向の内方に位置している。これにより、中央陸部3と中間陸部4との接地圧の分布がより均一化する。とりわけ面取部9の内縁9iと円弧線Y2との間のタイヤ半径方向の距離Sは、例えば0.2?0.8mm、より好ましくは0.3?0.5mmとするのが望ましい。また面取部9の外縁9o(トレッド面との交わり部)と縦溝6の溝壁の仮想延長線Y3との間の中央陸部3の外面に沿った距離Kは1?2mmとするのがより効果的である。」

(5)引用文献5について
原査定で引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(5-1)「【請求項1】
トレッド踏面部にタイヤ赤道面の両側に設けた1対の周方向主溝と、該1対の周方向主溝により区画された中央陸部とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記中央陸部がタイヤ赤道面を含み、かつその幅が接地幅の5?30%であり、
前記中央陸部が、該中央陸部の幅方向外側に隣接する陸部表面の、タイヤ内側を中心とする半径Rの外輪郭線Lに対して径方向外側に突出しており、
前記中央陸部の表面が前記外輪郭線Lに対して実質的に平行であり、かつ前記中央陸部表面の前記外輪郭線Lに対する突出量が0.1mm?1.0mmであることを特徴とする空気入りタイヤ。」

第6.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「トレッド部1」は前者の「トレッド部」に相当する。後者の「トレッド部1におけるタイヤ赤道面X-Xから実質的に等距離のほぼ対称位置に形成された二本一対のショルダー周溝3」は前者の「トレッド部におけるタイヤ赤道線の両側にタイヤ周方向に延びる一対の周方向溝」に相当する。

後者の「センター領域4」には、一本の周溝2を挟んで複数の陸部が存在するから、後者の「これら二本一対の周溝3の相互間にセンター領域4を区画し」と前者の「これら一対の周方向溝の相互間に第1陸部を区画し」とは、「これら一対の周方向溝の相互間に陸部が存在し」という限度で共通する。

後者の「二本一対の周溝3の外側に」「区画」された「ショルダー領域5」はトレッド部1の一部であるから、該周溝3の外側に陸部が存在することは明らかである。そうすると、後者の「前記二本一対の周溝3の外側にショルダー領域5を区画した」は前者の「前記一対の周方向溝の外側に第2陸部を区画した」に相当する。また、後者の「空気入りラジアルタイヤ」は前者の「空気入りタイヤ」に含まれる。

後者の「正規リムに組み付けられて正規内圧に充填された状態の下で」は前者の「正規リムに組み付けられて正規内圧に調整された状態で」に相当し、後者の「前記センター領域4の外表面を特定する横断面輪郭線の曲率半径R1を前記ショルダー領域5の外表面を特定する横断面輪郭線の曲率半径R2よりも大きくし」と前者の「前記第1陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR1を前記第2陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR2よりも大きくし」とは、「前記陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR1を前記第2陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR2よりも大きくし」という限度で共通する。

後者の「両ショルダー領域5とセンター領域4との相互間では、ショルダー周溝3の位置を不連続点として、センター領域4のトレッド部外表面に対して、両ショルダー領域5のトレッド部外表面をタイヤの内側方向に0.3?1.0mmの段差で凹ませる」ことは、【図1】を参酌すれば、各周溝3のタイヤ幅方向内側の溝壁をタイヤ幅方向外側の溝壁よりも高くすることといえるから、前者の「前記第1陸部の両側に配置された各周方向溝のタイヤ幅方向内側の溝壁をタイヤ幅方向外側の溝壁よりも高くする」こととは、「前記陸部の両側に配置された各周方向溝のタイヤ幅方向内側の溝壁をタイヤ幅方向外側の溝壁よりも高くする」ことに相当する。

そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「トレッド部におけるタイヤ赤道線の両側にタイヤ周方向に延びる一対の周方向溝を設け、これら一対の周方向溝の相互間に陸部が存在し、前記一対の周方向溝の外側に第2陸部を区画した空気入りタイヤにおいて、正規リムに組み付けられて正規内圧に調整された状態で、前記陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR1を前記第2陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR2よりも大きくし、かつ前記陸部の両側に配置された各周方向溝のタイヤ幅方向内側の溝壁をタイヤ幅方向外側の溝壁よりも高くする空気入りタイヤ。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明1は、「これら一対の周方向溝の相互間に第1陸部を区画し、」かつ「前記第1陸部のタイヤ赤道線の位置がタイヤ最大外径部となるトレッドプロファイルを構成」するものであるのに対し、
引用発明は、「トレッド部1におけるタイヤ赤道面X-X上に位置させて一本の周溝2を設けるとともに、これら二本一対の周溝3の相互間にセンター領域4を区画」しているものであるから、二本一対の周溝3の相互間に一本の周溝2を挟んで複数の陸部が存在するが、各陸部は二本一対の周溝3で区画されているものではなく、かつタイヤ赤道面の位置には周溝2が存在しているから、タイヤ最大外径部とはなっていない点。

[相違点2]
本願発明1は、「前記トレッド部を構成するキャップトレッドコンパウンドに、JIS K6394に準拠して温度60℃、周波数20Hz、初期歪10%、動歪±2%の条件で測定されるtanδが0.05?0.18の範囲にあり、JIS K6253に準拠してAタイプのデュロメータにより測定される硬さが58?63の範囲にあるゴム組成物を使用」するのに対し、
引用発明は、トレッド部1に使用されるゴム組成物の特性が特定されていない点。

[相違点3]
「前記陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR1を前記第2陸部のタイヤ子午線方向のトレッドラジアスTR2よりも大きくし」に関し、
本願発明1の「前記陸部」は、「第1陸部」であるのに対し、
引用発明の「前記陸部」は、「センター領域4」に存在する陸部である点。

[相違点4]
「前記陸部の両側に配置された各周方向溝のタイヤ幅方向内側の溝壁をタイヤ幅方向外側の溝壁よりも高くする」に関し、
本願発明1の「各周方向溝」は、「前記第1陸部の両側に配置された」ものあるのに対し、
引用発明の「周溝3」は、「センター領域4を区画し」たものである点。

[相違点5]
本願発明1は、「トレッド表面の法線方向に対する前記周方向溝の両溝壁の傾斜角度を互いに異ならせ、そのタイヤ幅方向内側の溝壁の傾斜角度をタイヤ幅方向外側の溝壁の傾斜角度よりも大きくした」のに対し、
引用発明は、周溝3の両溝壁のかかる傾斜角度が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点5について先に検討する。
引用文献4及び5には、引用発明と同様に、センター領域を区画する各周溝のタイヤ幅方向内側の溝壁をタイヤ幅方向外側の溝壁よりも高くすることが記載されている。
しかしながら、引用文献4及び5には、周溝の両溝壁の傾斜角度の関係については記載も示唆もされていない。また、トレッド表面の法線方向に対する周溝の両溝壁の傾斜角度を互いに異ならせ、そのタイヤ幅方向内側の溝壁の傾斜角度をタイヤ幅方向外側の溝壁の傾斜角度よりも大きくすることが周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明に引用文献4及び5に開示された技術的事項を適用しても上記相違点5に係る本願発明1の構成には至らない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-5に開示された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様により、当業者であっても引用発明、引用文献2-5記載されている技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 当審拒絶理由について
平成29年5月15日付け手続補正により、「tanδ」及び「硬さ」の測定条件が明らかになったので、当審拒絶理由の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2011-227950(P2011-227950)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B60C)
P 1 8・ 121- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶本 直樹佐々木 智洋  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
平田 信勝
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 昼間 孝良  
代理人 境澤 正夫  
代理人 清流国際特許業務法人  

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