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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B25F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B25F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B25F
管理番号 1329607
審判番号 無効2016-800023  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-02-16 
確定日 2017-06-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第5582337号発明「電動工具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5582337号の請求項1、2、4、5に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5582337号の請求項3に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その5分の1を請求人の負担とし、5分の4を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5582337号(以下、「本件特許」という。)は、平成22年4月27日に出願されたものであって、平成26年7月25日に請求項1ないし5に係る発明について設定登録され、その後、平成28年2月16日に請求人 株式会社マキタから特許無効審判が請求されたものである。以下、特許無効審判が請求された以後の経緯を整理して示す。

平成28年 2月16日 審判請求書(請求人)

平成28年 5月 6日 審判事件答弁書(被請求人)

平成28年 5月31日付け 審理事項通知

平成28年 8月22日 口頭審理陳述要領書(請求人)

平成28年 8月23日 口頭審理陳述要領書(被請求人)

平成28年 9月 6日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)

平成28年 9月 6日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)

平成28年 9月 6日 口頭審理

平成29年 1月17日付け 審決の予告

なお、審決の予告に対する応答はなかった。


第2 本件発明

本件無効審判の対象となっている本件請求項1ないし5に係る発明(以下、各々「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりの以下のものであると認める。
なお、AないしPの分説符号は、請求人が便宜的に付したものである。また、各分説に記載された構成を、以下「構成A」などという。

【請求項1】
A ブラシレスモータを収容するモータハウジングと、
B 該モータハウジングと接続されるハンドルハウジングと、
C 該モータハウジングと接続され、該ブラシレスモータにより駆動される駆動力伝達部を収容するギヤケースと、を備え、
D 該ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子が設けられる基板を、該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間に収容したことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
E 該ハンドルハウジングは、該モータハウジングの外周面の一部に被さり、該基板を収容する基板収容部を有することを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
F 該モータハウジング及び該ハンドルハウジングの一方は吸気口を有するとともに、他方は排気口を有し、
G 該モータハウジングは該ハンドルハウジングの該基板を収容する部分に連通する通路を有し、
H 該ブラシレスモータの出力軸に取付けられたファンの回転によって該吸気口から取込まれた空気は、該ブラシレスモータと該基板とを冷却するように該通路を介して流れて該排気口から排出されるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
I ハウジングと、
J 該ハウジングから一方向に延出するモータハウジングと、
K 該モータハウジング内に収容され該一方向に延びる出力軸を有するブラシレスモータと、
L 該ハウジング内に収容され、該一方向と交わる向きに延び、ブラシレスモータの該出力軸により駆動される駆動力伝達部と、
M 該ハウジングの該駆動力伝達部の延出方向の端部に設けられ、該駆動力伝達部によって回転駆動される出力部と、
N 該ハウジングから該一方向に延出し、該モータハウジングに対して反出力部側に位置するハンドル部と、
O 該ブラシレスモータを制御するために、該ハンドル部内であって該ハンドル部の延出方向の端部に配置された略矩形状の基板と、を有することを特徴とする電動工具。
【請求項5】
P 該ハンドル部の該一方向の端面から該ブラシレスモータ駆動のための電源ケーブルが接続されており、該ハンドル部内には、該ブラシレスモータへの電源の供給と遮断とを切り替えるトリガスイッチが設けられていて、該モータハウジングと該ハンドル部とは該一方向端部で接続していることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。


第3 請求人の主張の概要及び証拠方法

請求人は、平成28年2月16日に、「特許第5582337号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至5に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、甲第1号証ないし第8号証を添付して審判請求書を提出し、同年8月22日に甲第9号証ないし第13号証を添付して口頭審理陳述要領書を提出し、同年9月6日に2回目の口頭審理陳述要領書(2)を提出している(以下、単に初回提出の陳述要領書を「請求人陳述1」とし、2回目提出のものを「請求人陳述2」と呼ぶ。)。
以下に、審判請求書における主張の概略と証拠を示し、その後請求人陳述1の概略と追加証拠を示し、最後に請求人陳述2の概略を示す。

1.審判請求書による主張
(無効理由1)
本件の請求項1及び2に係る各特許発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明とそれぞれ同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当して特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書9頁「(3)特許無効審判請求の根拠」)

(無効理由2)
本件の請求項1乃至5に係る各特許発明は、甲第3号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書9頁「(3)特許無効審判請求の根拠」)

(無効理由3)
本件の請求項1乃至3に係る各特許発明は、特許を受けようとする発明が明確であると認められないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書9頁「(3)特許無効審判請求の根拠」)

そして、請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開2003-199310号公報
甲第2号証:特開2007-196363号公報
甲第3号証:特表2000-515435号公報
甲第4号証:特開平5-245770号公報
甲第5号証:特開平11-123669号公報
甲第6号証:特開2002-79476号公報
甲第7号証:特開2004-98282号公報
甲第8号証:特開2008-125296号公報

2.請求人陳述1による主張

以下、無効理由ごとに請求人陳述1より抜粋して示す。

(1)無効理由3に関する審理事項通知に対する回答陳述
ア.
「(1)「審理事項通知書」2(1)ア「モータハウジングと接続されるハンドルハウジング」との記載に、一体形成のハウジング形態が含まれると解すべき論拠について」
これは、甲第9号証乃至甲第13号証に例示するように、電動工具の技術分野において、別個の名称が与えられるハウジング同士が一体形成されている構造でも、「接続」との表現が慣用的に使用されていることによる。
・・・(中略)・・・
このように、電動工具の技術分野において、別個の名称が与えられるハウジング同士が一体形成されている構造でも、「接続」との表現が慣用的に使用されていることが、構成Bに一体形成のハウジング形態が含まれると解すべきと主張する論拠である。」
イ.
「(2)「審理事項通知書」2(1)イ「明確性違反を結論できるに足る事情」の主張の補填について
甲第9乃至13号証で例示したように、電動工具の技術分野においては、別個の名称が与えられるハウジング同士が一体形成されている構造でも、「接続」との表現は慣用的に使用されているから、構成Bの「モータハウジングと接続されるハンドルハウジング」との記載からは、両ハウジングが別体で作製される場合の他、両ハウジングが一体形成される場合も想定されることになる。
そうすると、構成Bで両ハウジングが一体形成される場合を想定すると、構成Dにおける「モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間」という構造とは辻褄が合わないことになる。
・・・(中略)・・・
このように、構成Bが、両ハウジングが連続する一体形成の構造である場合、両ハウジングが「重なり合う構造」となる構成Dと矛盾することが、本件発明1が明確でないと主張する理由である。」

また、審判請求書の無効理由3について述べた「モータハウジング」と「ハンドルハウジング」との「接続」に関して、本件発明が属する技術分野で「接続」の表現を用いて説明される形態に、互いのハウジング同士が一体成形された場合にも当該「接続」との表現が慣用的に使用されている事実を立証するために請求人が追加で提出した証拠である、甲第9号証ないし13号証を以下に示す。

甲第 9号証:特開2009-72892号公報
甲第10号証:特開2010-566号公報
甲第11号証:特開2003-245875号公報
甲第12号証:特開2007-38308号公報
甲第13号証:特開2008-183635号公報

(2)無効理由1に関する審理事項通知に対する回答陳述(「(3)「審理事項通知書」2(2)「被請求人が答弁書で“記載されていない”とされた点について、無効理由1を成立するとすべき理由」について」)
ア.甲第1号証
「被請求人は、・・・(中略)・・・「基板をモータハウジングの外周面とハンドルハウジングの内周面との間に収容した」ことは記載されていない旨主張している。
しかし、仮に、被請求人の主張するように筐体31が一体的に形成された部材であるとしても、前述のように構成Bが一体形成の構造をも含むことを踏まえると、筐体31においても「ブラシレスモータを収容するモータハウジング」と、「該モータハウジングと接続されるハンドルハウジング」との個々の認識はできる筈である。
また、筐体31が一体形成された部材であるとしても、筐体31の全部を樹脂材料等で一体形成することは現実には不可能であるから、添付した参考資料1(A)に示すように、左右に分割した一対の半割ハウジング同士を組み合わせて筐体31を一体形成されると考えられる。このように一体形成しても、減速機構部32と制御基板36との間を仕切る壁状部は、外形が円筒状のブラシレスモータを収容するために、上側のモータハウジングの筒形状と連続するようにハンドルハウジング内で円弧状に形成されることになる。
そうすると、当該壁状部は、ブラシレスモータを収容する筒状のモータハウジングの一部であると理解できるから、この壁状部の下面もモータハウジングの外周面を形成していると認められる。
従って、甲第1号証には、「制御基板36をモータハウジングの外周面とハンドルハウジングの内周面との間に収容した」構成は記載されていると言える。」
イ.甲第2号証
「これは甲第2号証についても同様である。被請求人は、・・・(中略)・・・甲第2号証にも「基板をモータハウジングの外周面とハンドルハウジングの内周面との間に収容した」ことの記載がない旨主張している。
しかし、3つのハウジング部が一体形成された部材であるとしても、前述のように構成Bが一体形成の構造も含むことを踏まえると、このインパクトドライバ50においても「ブラシレスモータ3を収容するモータハウジング部50a」と、「該モータハウジング部50aと接続されるハンドルハウジング部50c」との個々の認識はできる筈である。
また、3つのハウジング部が一体形成された部材であるとしても、図3、4の記載を参照すると、参考資料1(B)に示すように、左右に分割した一対の半割ハウジング同士を組み合わせて形成されると考えられる。また、ブラシレスモータ3とモータ駆動回路装置2との間を仕切る壁状部は、ブラシレスモータ3を収容するために、上側のモータハウジング部50aの筒形状と連続するようにハンドルハウジング部50c内で円弧状に形成されることになる。
そうすると、当該壁状部は、ブラシレスモータ3を収容する筒状のモータハウジング部50aの一部であると理解できるから、この壁状部の下面もモータハウジング部50aの外周面を形成していると認められる。
従って、甲第2号証には、「モータ駆動回路装置2(基板)をモータハウジング部50aの外周面とハンドルハウジング部50cの内周面との間に収容した」ことは記載されていると言える。被請求人は、甲第2号証にはハンドルハウジング部50cの内周面は開示されていない旨主張しているが、図1に開示されるようにハンドルハウジング部50c内にモータ駆動回路装置2やトリガスイッチ50dが収容されていることからすると、ここには参考資料1(B)に示すように壁状部の下側にこれらを収容する空間が形成されていることは明らかであるから、内周面があることは自明である。」
ウ.甲第3号証
「しかし、甲第3号証の第6頁第17行?第18行に、「ハンドグリップ部分1aの前の、モータ室10を閉鎖している壁に設けられた1つの開口9を通ってモータ室10内へ流入し、」との記載及び、図1において開口9の上側に壁が記載されていることからすると、モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとの開口9での接続部分は、参考資料2に示すように、両者の間をモータケーシング1bの壁で仕切った上で、当該壁に開口9が部分的に設けられていると理解できる。また、ハンドグリップ部分1aは、図1では外形のみが単線で示されているが、下面に開口8が形成されることや、内部に制御電子装置5やスイッチ6が収容されることからすると、参考資料2に示すように、左右及び後部が壁によって囲まれて内部に制御電子装置5等が収容される構造であると理解できる。
そうすると、制御電子装置5の前後には、モータケーシング1bの壁とハンドグリップ部分1aの壁とが位置することになる。被請求人は、開口9は外周面を構成しない旨主張しているが、開口9は制御電子装置5の前側へ部分的に形成されているに過ぎないから、制御電子装置5の前側にモータケーシング1bの壁の外周面が、後側にハンドグリップ部分1aの壁の内周面が、それぞれ位置するのは明らかである。本件発明1の構成Dも、「基板を、該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間に収容」とのみ表現しており、基板と前後や左右方向で「正対」して外周面や内周面が位置すること等を特定していないから、モータケーシング1bの壁の外周面とハンドグリップ部分1aの壁の内周面との間に制御電子装置5が位置する甲第3号証は、構成Dを開示すると言える。また、部分的に開口がある壁が含まれないのであれば、本件発明1の裏付けである本件明細書の図7、8に示されている、モータハウジング202Aに重なるハンドルハウジング202Dに、回路基板222と正対する吸気口202cが形成される構造と矛盾する。
従って、甲第3号証には、「制御電子装置5(基板)をモータケーシング1bの外周面とハンドグリップ部分1aの内周面との間に収容した」ことは記載されていると言える。」

(3)無効理由2に関する審理事項通知に対する回答陳述(「(4)「審理事項通知書」2(3)「被請求人が答弁書で“記載されていない”とされた点について、無効理由2を維持する論拠」について」)
「前述のように甲第3号証に、「制御電子装置5(基板)をモータケーシング1bの外周面とハンドグリップ部分1aの内周面との間に収容した」ことが記載されていることが、無効理由2を維持する論拠である。すなわち、構成Dに相当する構成が開示されている甲第3号証に記載の発明に、甲第2号証及び甲第8号証に例示される周知技術を適用することで、本件発明1は当業者に容易に発明することができたものであるから、無効理由2(進歩性違反)は依然として成立する。」

3.請求人陳述2による主張
(1)無効理由3に関する、平成28年8月23日被請求人提出の口頭審理陳述要領書「5.陳述の要領(1)無効理由3(明確性違反)について」による陳述への反駁
ア.本件発明1の記載から把握される発明を示した【参考図1】について
5点の不明点を挙げ、「このように被請求人が提出した参考図1では、依然として本件発明1の構造は不明確である。」
イ.構成Bで用いられている「接続」について
「構成Bで用いられている「接続」の語が、ハウジングが一体の場合も別体の場合も含むことを踏まえると、参考図1がどちらを示しているか明確にすべきである。但し、ハウジングが一体の場合は、構成Dの「該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間」という記載と矛盾することになるし、ハウジングが別体の場合は、当該外周面と内周面との間を形成するためにモータハウジングとハンドルハウジングとがどの位置にどのような構造で接続されているかが不明確となる。」
ウ.基板の収納位置について
「本件発明1の記載からすると、モータハウジングの外周面と内周面との間であればどこでも構わないことになる。従って、参考図1で見ると、モータハウジングの右側ではなく、モータハウジングの下側にあっても本件発明1は含むことになる。
この場合、モータハウジングの下側が「モータハウジングの延出方向」と仮定すると、本件明細書の第4頁第4行?第5行に記載されている「モータハウジングの延出方向のサイズを小型化した電動工具を提供することができる。」という本件発明1の効果の記載とは矛盾することになる。モータハウジングの延出方向にハンドルハウジングを重ねて両ハウジングの間に基板を収容すれば、当該延出方向のサイズの小型化には繋がらないからである。」

(2)無効理由2に関する、平成28年8月23日被請求人提出の口頭審理陳述要領書「5.陳述の要領(2-2)」及び「5.陳述の要領(2-4)(2-5)」による陳述への反駁
ア.
甲第3号証からは「本件特許発明4の構成である『I.ハウジング』、『J.該ハウジングから一方向に延出するモータハウジング』及び『N.該ハウジングから該一方向に延出し、該モータハウジングに対して反出力部側に位置するハンドル部』の少なくとも一つは、当業者にとって想到することが困難である。」と被請求人は主張しているが、当該主張は、想到困難とする構成を特定することなく進歩性があると述べているに過ぎないから、主張は曖昧であって説得力がなく、失当。
イ.
被請求人は、モータケーシング1b及びハンドグリップ部分1aは、それぞれ衝撃式穿孔機の略上端部から略下端部までを構成し、ハウジング等の別部材から一方向に延出する構成となっていないから、本件発明4のハウジングに相当する部材は開示も示唆もされていない旨主張しているが、本件発明4では、ハウジングやモータハウジング、ハンドル部が一体か別体かを特に規定していないから、甲第3号証において、前後方向に延びる出力部が明確に把握でき、その出力部に対してそれぞれ下方へ延出するモータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとが把握できる以上、本件発明4の「I.ハウジング」「J.該ハウジングから一方向に延出するモータハウジング」「N.該ハウジングから該一方向に延出し、該モータハウジングに対して反出力部側に位置するハンドル部」は当業者には容易に理解できる。
ウ.
被請求人は、甲第8号証に開示されるパワー基板を、甲第3号証記載の衝撃式穿孔機と組み合わせ、本件発明4の構成とすることは、当業者にとって困難である旨主張しているが、請求人は、審判請求書の第22頁第12行?第16行に記載のように、ブラシレスモータの制御部を矩形状の基板とすることは、甲第8号証に開示されているように周知技術であるから、この周知技術を甲第3号証記載の発明に適用して本件発明4のようにすることが当業者に容易になし得ると主張したものである。すなわち、甲第8号証は周知技術(矩形状の基板)の例示に過ぎず、ここでのパワー基板自体を甲第3号証に適用容易と主張したものではない。
結局、被請求人は、口頭審理陳述要領書では、甲第8号証のパワー基板や放熱板の形状を問題にした想到困難性のみを主張し、甲第3号証に周知技術(矩形状の基板)を適用することについての可否を何ら明らかにしていない。かかる甲第8号証のパワー基板や放熱板の適用に基づいた流路の変更や閉塞に係る被請求人の主張が、当該周知技術の適用を否定する論拠となり得ないことは当然である。
従って、甲第8号証のパワー基板を甲第3号証の衝撃式穿孔機と組み合わせて本件発明4とすることは当業者に困難である旨の被請求人の主張は、失当。


第4 被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書を平成28年5月6日付けで提出し、同年8月23日付けで口頭審理陳述要領書を提出し、同年9月6日付けで2回目の口頭審理陳述要領書を提出(以下、単に初回提出の陳述要領書を「被請求人陳述1」とし、2回目提出のものを「被請求人陳述2」と呼ぶ。)して、本件特許は維持すべきものと主張している。
以下に、審判事件答弁書における主張の概略を示し、その後被請求人陳述1の概略を示し、最後に被請求人陳述2の概略を示す。

1.審判事件答弁書による主張
(1)無効理由1について
ア.「筐体31は内側に壁状部を有し、減速機構部32と制御基板36との間を仕切っているが、この壁状部は一体的に形成された筐体31の内側に延びており、「外周面」なるものを形成する部材ではない。辞書によれば「外周」とは「ものの外側に沿ったまわり。ものの外側を取り巻いている部分・区域」を意味するものである。これに対して減速機構部32と制御基板36との間の壁状部は、一体的に形成された筐体31の内側に延びているのであるから、筐体31の外周面を形成しない。したがって甲第1号証には、本件請求項1のように「基板をモータハウジングの外周面とハンドルハウジングの内周面との間に収容した」ことは記載されていない。」(審判事件答弁書5頁8行?16行)

イ.「甲第2号証図1においてハウジングの断面を示すハッチングが示されているが、これによればブラシレスモータ3とモータ駆動回路装置2との間を仕切るように壁状部がハウジング内部に延出している。図1においては、ハッチングが途中で省略されているので、壁状部が下方向にどこまで延びるのかは記載されていない。しかし段落【0031】において、「本発明の実施形態に係るインパクトドライバ50は、(中略)モータ3を収容する合成樹脂材料のモータハウジング部50aと、モータハウジング部50aの他端部に連続して形成された、(中略)動力伝達ハウジング部50bと、(中略)ハンドルハウジング部50cとから構成された工具本体を含み」と記載されていることから、これら3つのハウジング部が一体的に形成されてハウジングを構成していると理解することができる。

すなわち、この壁状部は一体的に形成されたハウジング内部に配置される部分であり、したがってハウジングの外周面を形成しない。また、甲第2号証の明細書及び図面のいずれにも、ハンドルハウジング部50cの内周面は開示されていない。
よって甲第2号証には、本件請求項1のように「基板をモータハウジングの外周面とハンドルハウジングの内周面との間に収容した」ことは記載がない。」(審判事件答弁書5頁下から3行?6頁14行。空白行含まず。)

ウ.「甲第3号証図1において明らかなように、制御電子装置5は、モータ室10に設けられた開口9の後方に位置しており、開口9は制御電子装置5より大きいか、ほぼ同じ大きさである。開口9は、当然、モータケーシング1bの外周面を構成するものではない。
そして、開口9は、制御電子装置5を冷却するための冷却空気流を案内するためのものである(甲第3号証第6頁第14-20行)。そのため、制御電子装置5を開口9の近傍以外に配置することは、甲第3号証に示される技術的効果を減殺または滅却することとなる。すなわち、制御電子装置5を開口9近傍以外に配置することは、甲第3号証において開示及び示唆がない。

加えて、甲第3号証図1においてハンドグリップ部分1aの断面はハッチングで示されていないため、ハンドグリップ部分1aの「内周面」が図1のどこに形成されるのか不明である。また、甲第3号証によれば、制御電子装置5は、モータケーシング1bと直接的な熱交換を行うように「埋設」されるか(甲第3号証第6頁第7-8行)、あるいはハンドグリップ部分1a内に「埋設」されている(甲第3号証第6頁第12-14行)。

エ.「上記「外周」の定義に加え、「内周」が「ものの内側に沿ったまわり」を意味することを考慮すれば、モータケーシング1bまたはハンドグリップ部分1a内に埋設された制御電子装置5が、ハンドグリップ部分1a内周面とモータケーシング1b外周面との間に配置されていないことは明らかである。
辞書によれば「埋設」は「地中に埋めてとりつけること」を意味するとされている。一方で甲第3号証の第5頁第13行には、「ケーシング内には電動モータ2が埋設されていて」と記載されており、甲第3号証の図1には、モータケーシング1bに示されたハッチングからわかるように、モータ2がモータケーシング1bの内周面によって囲まれた空間に収容されている様子が示されている。よって甲第3号証における「埋設」とは、明細書等の記載を参酌すれば、「内蔵部品をケーシングの内周面によって囲まれた空間に収容する」ことを意味すると理解できる。
制御電子装置5がモータケーシング1bの内部に埋設される場合、制御電子装置5はモータケーシング1bの内周面によって囲まれた空間に配置されることになると考えられる。
また制御電子装置5がハンドグリップ部分1aの内部に埋設される場合、制御電子装置5はハンドグリップ部分1aの内周面によって囲まれた空間に配置されることになると考えられる。
いずれの場合においても、制御電子装置5は内周面によって囲まれた空間に配置されるのであるから、制御電子装置5がハンドグリップ部分1aの内周面とモータケーシング1bの外周面との間に配置されていることにはならない。
したがって、甲3号証には、本件請求項1のように「基板をモータハウジングの外周面とハンドルハウジングの内周面との間に収容した」ことは記載されていない。」(審判事件答弁書6頁下から1行?8頁13行。空白行含まず。)

オ.「本件請求項2及び3のそれぞれは、本件請求項1を引用する特許発明であり、そのため本件請求項2及び3記載の特許発明のいずれも、本件請求項1の構成を包含する。上記のように、本件請求項1の構成は、甲第1号証乃至甲第3号証のいずれにおいても開示されていない。」(審判事件答弁書8頁下から4行?8頁末行。)

(2)無効理由2について
ア.「甲第3号証において、本件請求項1の構成が開示されていないことは上述の通りである。さらに、甲第4号証乃至甲第8号証においても、本件請求項1の構成は開示されておらず、これらの文献を組み合わせたとしても、本件請求項1に記載の構成を想到することは、当業者であっても困難である。以下に詳細を述べる。・・・(中略)・・・
上述の通り、甲第3号証の開口9は、制御電子装置5を冷却するための冷却空気流を案内するためのものであり(甲第3号証第6頁第14-20行)、制御電子装置5を開口9の近傍以外に配置すれば、甲第3号証に示される技術的効果を減殺または没却させることとなる。したがって、甲第3号証を甲第4号証乃至甲第8号証と組み合わせても、制御電子装置5をハウジングの開口9近傍以外に配置することは、当業者にとって到底想定し得ないことである。
また上述の通り、甲第3号証において明細書等の記載を参酌すれば、制御電子装置5は、モータケーシング1bの内周面で囲まれた空間か、ハンドグリップ部分1aの内周面で囲まれた空間のうちの、いずれかの空間に収容されていると理解するのが自然である。
上記のように、甲第3号証乃至第8号証においては、これらを組み合わせても、「基板をモータハウジングの外周面とハンドルハウジングの内周面との間に収容」することについて、何らかの示唆・開示は得られない。」(審判事件答弁書9頁7行?10頁12行)

イ.「本件請求項2及び3のそれぞれは、本件請求項1を引用する特許発明であり、そのため本件請求項2及び3記載の特許発明のいずれも、本件請求項1の構成を包含する。本件請求項1は、上記のように、新規性及び進歩性を有するものである。
したがって、本件請求項2及び3記載の各特許発明が当業者によって想到容易であり、特許法第29条第2項および特許法123条第1項第2号により、本件請求項2乃至3を無効にすべきという請求人の主張は失当である。」(審判事件答弁書11頁7行?13行)

ウ.「請求人は、本件請求項4及び5に係る各特許発明は、甲第3号証乃至甲第8号証に記載された発明を根拠としていわゆる進歩性がない旨を主張するが、そのような主張は失当である。以下にその根拠を述べる。・・・(中略)・・・
詳細に述べると、甲第3号証に係る発明は、制御電子装置5を冷却するという技術的課題を解決可能するため、制御電子装置5の位置と形状とを提供していることに技術的特徴がある。このような技術的特徴を考慮すると、甲第3号証に係る電動工具のハウジング内に、制御電子装置5とは著しく形状の異なる矩形状の基板を配置することは不可能である。万一ハウジング内に矩形状の基板を配置したとしても、冷却空気流7の流路が変更または閉塞され、十分な冷却効果を得られないためである。
したがって、甲第8号証に開示されるパワー基板または放熱構造を、甲第3号証開示の構成と組み合わせることは、当業者にとって容易ではない。」(審判事件答弁書11頁下から11行?12頁10行)

(3)無効理由3について
ア.「モータハウジングとハンドルハウジングとの具体的な接続方法の特定がなくとも、本件請求項1を参照した当業者は、本件特許発明を理解し、上記のような技術的課題の解決を達成することが可能である。すなわち、具体的な接続方法を特定せずとも、当業者にとって本件特許発明の技術的範囲を理解することは可能である。
したがって、本件請求項1乃至3記載の特許発明が、特許法第36条第6項第2号及び特許法第123条第1項第4号によって無効にされるべきであるという請求人の主張は失当である。」(審判事件答弁書12頁15?22行)

2.被請求人陳述1による主張
(1)無効理由3(明確性違反)について
ア.「本件発明1の記載から把握される発明を、簡略化した図で示すと、参考図1に示すとおりとなる。参考図1を参照し、さらに構成AからDの詳細を以下に述べる。
「外周」とは、辞書によると、「ものの外側に沿ったまわり」を意味するから、「モータハウジングの外周面」は、参考図1において太い実線で示すように、「モータハウジング」を構成する面のうち、少なくとも一部が外側に露出するように延びる一繋がりの面を指す。
「内周」とは、辞書によると、「ものの内側に沿ったまわり。」を意味するから、「ハンドルハウジングの内周面」は、参考図1において太い破線で示すように、「ハンドルハウジング」を構成する面のうち、内側に沿って延びる一繋がりの面を指す。
「基板」が「該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間」に収容されるのであれば、当然に「モータハウジングの外周面」と「ハンドルハウジングの内周面」が重なるように配置され、両面の間に形成される空間に「基板」が収容されることになる。」

イ.「構成Dによれば、「モータハウジングの外周面」は、少なくとも一部が外側に露出する一方で、他の一部は「ハンドルハウジングの内周面」と重なっており、全体として一繋がりに構成されなければならない。一体に形成されたハウジングでこのように構成することは不可能であり、「モータハウジング」と「ハンドルハウジング」は当然に別体で構成されることになる。よって構成Dと構成Bを合わせて読めば、「モータハウジング」と「ハンドルハウジング」は別体で構成され、互いに接続されることが明らかである。」

(2)無効理由2(進歩性違反)について
ア.「少なくとも甲第3号証の制御電子装置5は単純な矩形状のみで構成されうるものではないと考えている。」

イ.「被請求人は、以下(特に後述の(2-6))に述べるとおり、甲第3号証の電動工具に甲第8号証のパワー基板11を組合せた場合、冷却空気流7の流路は変更または閉塞に至ると考えている。」

ウ.「甲第3号証に開示のモータケーシング1b及びハンドグリップ部分1cは、互いに結合可能な別個の構成部材である(甲第3号証第6頁第26-27行)。さらに、甲第3号証図1を参照すれば、モータケーシング1b及びハンドグリップ部分1aは、衝撃式穿孔機の前方部分と後方部分とをそれぞれ構成するように配置される。また、モータケーシング1b及びハンドグリップ部分1aは、それぞれ衝撃式穿孔機の略上端部から略下端部までを構成し、ハウジング等の別部材から一方向に延出する構成とはなっていない。すなわち、甲第3号証では、本件発明4のハウジングに相当する部材は開示も示唆もされていない。」

エ.「仮に、甲第3号証等に本件発明4のハウジングに相当する部材が開示されていたとしても、本件発明4の構成を想到することは、以下の理由により不可能である。
甲第3号証では、モータケーシング1b及びハンドグリップ部分1aを別個の構成部材とすることにより、ハンドグリップ部分1aの熱的な分離を保障するとともに(甲第3号証第7頁第1-2行)、振動緩衝を保障し(甲第3号証第7頁第1-2行)、モータケーシング1bからの振動と熱の伝達を防止している。
このような技術的効果を考慮すると、甲第3号証のモータケーシング1b及びハンドグリップ部分1aを、駆動力伝達部を収容する本件発明4の「ハウジング」に接続し、一方向に延出させる構成とすることはできない。仮に、甲第3号証の衝撃式穿孔機において本件発明4のハウジングに相当する部材を設け、この部材からモータケーシング1b及びハンドグリップ部分1aが延出する構成とすると、当該ハウジング相当部材から熱または振動が伝達される構造となり、熱的な分離及び振動緩衝という技術的効果は得られないためである。
したがって、本件特許の出願当時の技術常識を参照しても、本件特許発明4の構成である「I.ハウジング」、「J.該ハウジングから一方向に延出するモータハウジング」及び「N.該ハウジングから該一方向に延出し、該モータハウジングに対して反出力部側に位置するハンドル部」の少なくとも一つは、当業者にとって想到することが困難である。」

オ.「仮に、甲第3号証のモータケーシング1bを本件発明4のハウジングに相当する部材であるとしても、以下の理由により、甲第8号証開示のパワー基板または放熱構造を甲第3号証開示の構成と組み合わせることは、当業者にとって容易ではない。
甲第3号証のモータケーシング1bを本件発明4のハウジングに相当する部材であると仮定すると、甲第3号証のハンドグリップ部分1aはモータケーシング1bから後方に延出する部材となる。つまり、甲第3号証での「後方」が、本件発明4における「一方向」に相当することとなる。
この場合、甲第3号証の明細書等から明らかなように、ハンドグリップ部分1aの延出方向の端部、すなわち後方端部において制御電子装置5は配置されておらず、したがって、甲第3号証には、本件発明4の構成Oである「該ハンドル部内であって該ハンドル部の延出方向の端部に配置された略矩形状の基板」は開示も示唆もされていない。」

カ.「または、以下の観点からも、甲第8号証開示のパワー基板または放熱構造を甲第3号証開示の構成と組み合わせることは、当業者にとって容易ではないといえる。
甲第3号証の制御電子装置5の備える周波数変換器は、衝撃式穿孔機の操作性の確保、重量制限及びサイズ制限のために、小型化された構成を有していなければならない(甲第3号証第6頁第3-5行)。また、冷却空気流7は、ハンドグリップ部分1aに設けられた複数の開口8を通ってハンドグリップ部分1a内に達し、かつ、制御電子装置5の表面を擦過するよう誘導される(甲第3号証第6頁第15-16行)。また、制御電子装置5の全体は、冷却空気流7内に配置される(甲第3号証第6頁第21-22行)。
ここで、甲第8号証のパワー基板1は、スペース的な制約から温度上昇を効果的に抑えるための有効な方策が採れないという課題を、放熱板2と組み合わることにより解決したものである(甲第8号証段落4)。甲第8号証では、特に甲第8号証図5を参照すれば、パワー基板1及び放熱板2を、モータハウジング部31の屈曲された箇所という限定された箇所に配置することによって、上記課題を解決している。そのため、甲第8号証のパワー基板1は、放熱板2と分離することはできないし、配置箇所を変更することも、この形状から鑑みておよそ困難である。
仮に、パワー基板1を放熱板2と組み合わせて、甲第3号証のハンドグリップ部分1a内部に配置すれば、放熱板2の屈曲した形状によって冷却空気流7の流路が変更または閉塞され、十分な冷却効果を得られないことは明らかである。
したがって、甲第8号証に開示されるパワー基板1は、放熱板2と分離不可能であるし、甲第3号証開示の衝撃式穿孔機に配置することも、空間の制約上不可能であり、または冷却空気流の効果を制限することとなり、当業者にとって容易ではない。」

キ.「甲第8号証のパワー基板1は、甲第3号証の技術的効果を没却してしまう程度に、甲第3号証の制御電子装置5とは異なる形状を有する。
したがって、甲第8号証に開示されるパワー基板を、甲第3号証開示の衝撃式穿孔機と組み合わせることは、当業者にとって容易ではない。」

3.被請求人陳述2による主張
(1)無効理由3に関する、請求人による参考図に関しての反駁について
ア.「参考図1は、本件発明1から読み取れる構成の一例を示しており、参考図1を参照すれば、前後左右の向きを特定せずとも構成要素の構造的関係が明確に規定されることが分かる。本件発明1では構成要素の構造的関係が明確に読み取れることが理解されるため、本件発明1が不明確であるとの主張は失当である。」

(2)無効理由2に関する、請求人の反駁について
ア.「請求人は、「『I.ハウジング』、『J.該ハウジングから一方向に延出するモータハウジング』及び『N.該ハウジングから該一方向に延出し、該モータハウジングに対して反出力部側に位置するハンドル部』の少なくとも一つは、当業者にとって想到することが困難である」との記載について、想到困難とする構成を特定せずに進歩性を主張しており、説得力がないと主張する。
しかし、上記構成I、J、及びNは、同一請求項内に記載された発明特定事項同士の関係であるため、構成I、J、及びNで特定された事項全てを考慮して発明の構成が定まることになるのが必定である。つまり、構成I乃至Nのいずれか一つのみに限定して発明の構成を考慮する必要性はなく、したがって、請求人の主張は失当である。」

イ.「また、請求人は、口頭審理陳述要領書(2)第3頁最後の段落において構成I、J及びNは当業者には容易に理解できる旨を主張する。
しかし、請求人の主張は、ハウジング「に対して」延出するモータハウジングとハンドル部とが甲第3号証に開示されている旨の主張に留まり、本件発明4の構成である「該ハウジングから延出する」という構成を否定する論拠とはなっていない。したがって、請求人の主張は失当である。」

ウ.「加えて請求人は、甲第8号証には周知技術(矩形の基板)が例示されると主張し、被請求人はこれに反して甲第8号証開示の基板のみに限定される主張をしていると主張する。
しかし、甲第8号証に開示される技術を判断する上で、技術的効果を考慮することは必須である。甲第8号証での技術的効果を考慮すれば、甲第8号証にパワー基板と放熱板との分離不可分の組合せが開示されていることは、当業者に十分理解されるし、これらを分離すると技術的効果が滅却されることも明らかである。つまり、周知技術としての単体の矩形の基板は、甲第8号証に開示も例示もされていないと解釈することが妥当である。したがって、請求人の主張は失当である。」


第5 無効理由に対する当審の判断
1.本件発明1-3に対する無効理由3(明確性)について
まず初めに、無効理由3(明確性)について検討する。
請求人は、上記第3の「1.審判請求書による主張」の(無効理由3)で示す、本件発明1-3に対して、構成Bによる特定が、「モータハウジング」と「ハンドルハウジング」との関係を「接続される」に留めている記載事実を挙げつつ、構成Dによる「基板」の「収容」を果たす前提を考えた場合、両ハウジングが採るであろう重なり合う構造を明確に示したことにならないことを根拠に、特許法第36条第6項第2号で規定する要件を満たさないと主張している。
しかしながら、本件発明1において発明が明確であるか否かは、個々の発明特定事項である構成A-Dで特定される全てを見て合理的に決まるものであることに鑑みれば、「モータハウジング」と「ハンドルハウジング」の構造については、被請求人が上記第4の「2.被請求人陳述1による主張」で参考図1を示しつつ「重なるように配置」と陳述した、いわば被さりを伴う構造として認識されるものである。この場合、まず基板をモータハウジング上に固定させた後に、ハンドルハウジングの端部を重ねて被すようにして双方のハウジング同士を構造上一繋がりとすべきであると考えられる。つまり、双方のハウジング同士を最初から一体で成形させて作るようにした場合には、通常の半割り線が採用できなくなると見るのが相当である。
そうすると、当該請求人が陳述した構造上の矛盾は、特許請求の範囲の記載、すなわち、構成B、Dの発明特定事項から合理的に考えると当然除外される可能性を指摘したものとされるため、モータハウジングとハンドルハウジングの接続を特定できない記載であるとまでもは言えない。そうすると、本件発明1-3に係る特許請求の範囲の記載は、構成Bの発明特定事項と構成Dの発明特定事項の双方から必然的に被請求人が陳述した構造が特定できるということができ、発明を不明確とする記載とは言えない。
よって、本件発明1-3に対して請求人が主張した無効理由3は、これを妥当とすべき理由がない。
なお、本件発明で用いられている「接続」について、通常の解釈では部材同士が繋がっている様を指すと解され、これ以上特別な解釈を要すべき事情は見当たらないため、事前の繋がりにより発生したものか、事後の繋がりにより発生したものかを問わない以上、構成Bを単独で捉えた局面に限っていえば、請求人が一体成形を含み得ると主張することはあながち誤りとはいえないものの、本件発明1の特許請求の範囲には構成Bのみならず構成Dによる発明の特定も働く以上、請求人が言う一体成形による接続の態様を含む前提で生じる矛盾については、構成Bと構成Dとの双方を見るプロセスにおいて、上述のとおり明らかに非合理的とされ除外されることとなるから、特定事項の全てを見てなされた主張でなく、合理的に決まるプロセスを加味した上での主張でもないというべきである。

2.無効理由1(新規性)について
次に、本件発明1-2に対し、甲第1-3号証に記載の発明のいずれとも同一とする無効理由1(新規性)について検討する。

(1)甲第1-3号証記載事項および甲第1-3号証記載発明

[1]甲第1号証の記載事項、図面看取事項及び引用発明
摘記事項ア.
「【0013】電動工具30は、筐体31を備えている。筐体31内には、ブラシレスDCモータ40と、後述するシャフト42に連結された減速機構部32と、減速機構部32に連結されドリル等の工具を固定するチャック33と、ブラシレスDCモータ40にDC電源を供給するDC電源パック34と、スイッチ35と、ブラシレスDC40の回転を制御する制御基板36とを備えている。」

図面看取事項イ.
図1には、電動工具30全体の外殻としてハッチングで示される筐体30が図示され、当該筐体30は、外殻に用いられたハッチングと同様のハッチングによりその内部に仕切り壁が形成されており、仕切り壁は、減速機構30及びブラシレスDCモータ40を収納する工具上部と、スイッチ35、DC電源パック34及び制御基板36を収納する工具下部との間に1つの仕切り壁があり、更に、工具上部内にも減速機構30とブラシレスDCモータ40との間を隔てる箇所に1つの仕切り壁があり、都合2つの仕切り壁が設けられていることが見てとれる。

図面看取事項ウ.
図1には、制御基板36が、上部筐体部分の外周面のうち、上部筐体部分の下部に連なる下部筐体部分の内側の箇所に設けられていることが看取できる。

上記摘記事項ア.及び、図面看取事項イ.ないしウ.を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲1発明)
「ブラシレスDCモータ40と該モータシャフト42に連結された減速機構部32とを収納し、ブラシレスDCモータ40の回転を制御する制御基板36が設けられた上部筐体部分と、スイッチ35とDC電源パック34とを収納し、前記上部筐体部分の下部に連なる下部筐体部分とからなる筐体31を備えた電動工具30であって、
前記上部筐体部分は、減速機構部32とブラシレスDCモータ40との間を仕切る仕切り壁が筐体と一体に形成され、
前記制御基板36は、上部筐体部分の外周面のうち、上部筐体部分の下部に連なる下部筐体部分の内側の箇所に設けられている、
電動工具30。」

[2]甲第2号証の記載事項及び引用発明
摘記事項ア.
「【0031】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の電動工具をコードレスタイプのインパクトドライバに適用した第1の実施形態に従う工具全体の断面図(正面図)を示す。まず、図1を参照して工具全体の構成について説明する。本発明の実施形態に係るインパクトドライバ50は、後述するブラシレスモータ3の回転軸11と同一方向に沿って、一端部(図面の右端部)から他端部(図面の左端部)に延在し、モータ3を収納する合成樹脂材料のモータハウジング部50aと、モータハウジング部50aの他端部に連続して形成された、動力伝達機構部4を収容する動力伝達ハウジング部50bと、モータハウジング部50aおよび動力伝達ハウジング部50bから垂下するハンドルハウジング部50cとから構成された工具本体を含み、動力伝達ハウジング部50bの先端部はアンビル10の端部が突出し、アンビル角穴部10aには先端工具、例えばドライバビット(図示なし)を着脱自在に差し込んで取付部材10bによって固定できるように構成されている。アンビル角穴部10aには、他の先端工具としてボルト締付用ビットも装着することができる。」

摘記事項イ.
「【0032】
モータハウジング部50aは筒状の形状を有し、その内周部内には、駆動源となるブラシレスDCモータ3が収容または装着される。・・・」

摘記事項ウ.
「【0033】
モータハウジング部50aに連続する動力伝達ハウジング部50b内にはモータ3の回転力を回転打撃力としてアンビル10に伝達するための動力伝達機構部4が収容されている。動力伝達機構部4は、遊星ギア6とリングギア7で構成される減速機構部と、スピンドル8およびスピンドル8上に前後摺動可能に配され、かつスプリング5によって打撃力が与えられるハンマ9から成るインパクト機構部と、ハンマ9によって回転打撃力が与えられ、上述のように先端工具(図示なし)を保持可能なアンビル10とで構成される。」

摘記事項エ.
「【0035】
モータ駆動回路装置2は、ブラシレスモータ3のステータコイル12aに駆動電流を通電するための周知のブリッジ回路から成るインバータ回路(図示なし)を含み、さらにインバータ回路を制御するCPU等から成る制御回路を具備する。特に、モータ駆動回路装置2を構成するインバータ回路には、ステータコイル12aに大駆動電流を通電する必要があることより、例えば、スイッチング素子として動作するIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のような大容量の出力トランジスタを使用しなければならない。このため出力トランジスタの電力損失が大きくなり、発熱が問題となる。したがって、モータ駆動回路装置2の出力トランジスタには冷却効果を向上させるための放熱構造が考慮されている。本実施例では、モータ駆動回路装置2にステータコイル配線やインバータ回路が集約されているが、後述する他の実施形態では、インバータ回路基板やステータコイル配線基板がモータ駆動回路装置2より特別に分離され、モータハウジング部50a内に装着される。」

摘記事項オ.
「【0044】
なお、図4および図5に示すように、モータハウジング部50a、動力伝達ハウジング部50bおよびハンドルハウジング部50cを含むハウジング部材50は、モータ3の回転軸中心を横切る垂直面で2分される断面形状が半円状のハウジング部材50(図4参照)の一対を準備し、予め、図5に示すような一方のハウジング部材50に、モータ3のロータ回転軸11やステータ12等の組込みを行い、しかる後に、一対のハウジング部材50の他方を重ねて、図4のようにねじ締め等で一対のハウジング部材を結合させる方法が取られる。」

図面看取事項
図1の図示に拠ると、図中2で示されるモータ駆動回路装置は、50cで示されるハンドルハウジング部に破線囲みで図示されていることが看取される。また、図1と似かよった図示が、別途図9に見られるが、どちらもハッチングはモータ3及び動力伝達機構部4を囲む部分までとされ、破線囲みとされたモータ駆動回路装置2の周辺には図示上及んでいない。
また、図3では、モータハウジング部50aを示すハッチング部分と、ハンドルハウジング部50cを示すハッチング部分とは、一続きの連続したものとして図示されていることが看取できる。

更に、上記記載事項等から当審が認定した事項として、次の2点が挙げられる。

当審認定事項カ.
上記図面看取事項と、上記摘記事項アに記載の、モータハウジング部50aと動力伝達ハウジング部50bとが「連続して形成された」とされていること、及び、ハンドルハウジング部50cは、「モータハウジング部50aおよび動力伝達ハウジング部50bから垂下する」とされていることとを併せると、モータハウジング部50a、動力伝達ハウジング部50b、及びハンドルハウジング部50cの3者は、互いに初めから連続形成、すなわち1つに繋がった形で作られた構造であると理解できる。

当審認定事項キ.
また、図1のハッチングされた範囲と、図3のハッチングされた範囲とが、互いにハッチング図示範囲上異なるようにされているが、これは図1の図示が、上半分のみ断面図で図示がなされ、破線囲みで示すモータ駆動回路装置2を含む下半分は外観図として描かれていると理解するのが相当である。そうすると、モータ駆動回路装置2は、摘記事項イ.の記載で示すモータハウジング部50a内にブラシレスモータ3が収容または装着された例と同様に、図3の図示どおりにハッチングされたハンドルハウジング部50cの内部に収容または装着されたものと理解できる。

上記摘記事項ア.ないしオ.、図面看取事項、及び当審認定事項カ.ないしキ.を総合すると、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲2発明)
「1つに繋がって作成される断面半円状の一対のハウジング部材50を結合させて工具本体とされるインパクトドライバであって、
前記工具本体は、ブラシレスモータ3を収納する合成樹脂材料の筒状モータハウジング部50aと、モータハウジング部50aの端部に連続して形成された、動力伝達機構部4を収容する動力伝達ハウジング部50bと、モータハウジング部50aおよび動力伝達ハウジング部50bから垂下するハンドルハウジング部50cとから構成され、
前記ブラシレスモータ3は、出力トランジスタで構成されるインバータ回路基板と該インバータ回路を制御するCPU等から成る制御回路とを具備するモータ駆動回路装置2により駆動されるものであり、
前記モータ駆動回路装置2は、前記ハンドルハウジング部50c内に収容または装着されている、
インパクトドライバ。」

[3]甲第3号証の記載事項及び引用発明
摘記事項ア.
「図示された工具は衝撃式穿孔機であり、この衝撃式穿孔機はケーシング1を有しており、ケーシング1内には電動モータ2が埋設されていて、この電動モータ2は、クランク伝動装置3を備えた詳しくは図示されていない別個の衝撃装置3aを駆動し、この衝撃装置3aは公知の構造形式を有していてよい。
電動モータ2は、ブラシレスかつスリップリングレスなモータであり、このモータの駆動エネルギーは、インプット側で単相交流4aで供給され、アウトプット側で、モータに適合した電流形式4bを供給する制御電子装置5によって得られ、しかもこの制御電子装置5にはモータ2のスイッチ切換えのために、手で操作可能なスイッチ6が前接続されている。・・・しかも制御電子装置5は例えばマイクロプロセッサによって次のように、つまりその都度のモータが、このモータの運転のために必要な電流形式4bを前記制御電子装置5によって得られるように制御されている。電動モータ2として三相電動機を使用することに関連して、インプット側で単相交流4aで供給される制御電子装置5は、アウトプット側で有利には制御して変更可能な、かつ、有利には電源周波数に比べて高い周波数の三相電流を供給し、ならびに、公知の構造形式を有する周波数変換器により実現され得る。」(第5頁第12行?第6頁第3行)

摘記事項イ.
「制御電子装置5は工具のケーシング1内に、この制御電子装置5が、モータ2を取り囲むモータケーシング1bと直接的な熱交換を行うように埋設されており、この場合モータケーシング1bは金属から成っており、および/または、図面に示されているように、制御電子装置5は電動モータ2の冷却空気流7内に配置されている。後者の、制御電子装置5を電動モータ2の冷却空気流7内に配置する目的のために、制御電子装置5は工具ケーシング1のハンドグリップ部分1a内に、モータ2の冷却空気流7が、少なくとも部分的にハンドグリップ1aを貫流して前記制御電子装置5を介して案内されるように埋設され、このため冷却空気流7は、ハンドグリップ部分1aに設けられた複数の開口8を通ってこのハンドグリップ部分1a内へ達し、かつ、制御電子装置5の表面を擦過した後に、ハンドグリップ部分1aの前の、モータ室10を閉鎖している壁に設けられた1つの開口9を通ってモータ室10内へ流入し、次いでこのモータ室10においてモータ2も冷却するためにこのモータ2を介して案内されている。冷却空気流は、モータシャフト2aに装着された羽根車11によって生ぜしめられる。」(第6頁第7行?第20行)

摘記事項ウ.
「ケーシング1は(既に記載したように)ほぼ、モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとによって形成され、両者は、互いに結合可能な別個の構成部材である。」(第6頁第25行?第27行)

摘記事項エ.
「ケーシング1をモータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとに分割することによって、振動緩衝のために、モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとを、振動緩衝装置12、例えばゴム緩衝装置を介在させて結合することが可能である。図面に示された電動工具では、電動工具の両外側にはそれぞれ2つの、すなわち全部で4つのゴムエレメント12が、モータケーシング1bとハンドグリップ部分1aとの間に配置されている。これらのゴムエレメント12は機械的な連結解除部を示しており、かつ、ハンドグリップ部分1aの振動緩衝を保証している。これにより、特に、ハンドグリップ部分1a内に設けられた制御電子装置5が保護される。」(第7頁第7行?第15行)

図面看取事項
本発明の実施例である工具の長手方向断面図とされる図1には、左右3箇所に1の番号が付されているところからみて、工具ケーシング1とされるものが工具全体のハウジングを指すことが見てとれる。
また、図の右側の白地で図示された部分には別途上下2箇所に1aの番号が付されつつ、白地の形状は手指が入れられる内枠の形状を有しつつ、図の左側にある1bの上下方向に延びた長さと同じ長さを外形上有するものと見てとれる。
更に、図面の左側上部には図中3の番号が付されたクランク伝動装置が示されつつ、当該クランク伝動装置3から左方に延びる部材が見てとれる。
加えて、図中5の番号が付された制御電子装置は、1aの下部であり8の近傍に配置されたことが見てとれる。
そして、図の左側1bの番号が付された、斜線等の模様地で描かれた部分(=モータケーシング1b)の内部には、2の番号が付された電動モータ2が、回転軸を図面の上下方向に配向させた向きで収納されている様が見てとれる。
また、図面のハンドグリップ部分1a側には、外部からスイッチ6へ延びる4aの線(図示右側)と、スイッチ6から制御電子装置5に延びる4aの線とが見てとれる。

当審認定事項
前記図面看取事項と、摘記事項ア.と、電動工具の技術常識とを併せると、工具全体を図示した図1から見て、摘記事項ア.にて詳しくは図示されていないとする別個の衝撃装置3aとクランク伝動装置3とが図中左右方向に延びる軸のような部材で連結されている図示とされ、部材の名称と電動工具の分野での慣例から考えると、当該図で左右方向に延びる軸のような部材は、工具の動力が伝達される駆動軸と通称される部材であると認められる。
この部材を駆動軸とすれば、工具全体での「ハンドグリップ部1a」は、衝撃装置3a及びクランク伝動装置3とが有する駆動軸の延出方向を基準として、衝撃装置3aが置かれる場所と反対側に位置することになる。
更に、ハンドグリップ部1aは、図面看取事項では電動モータ2の回転軸の向きである、図面の上下方向に延びた形状とされ、摘記事項イ.で「工具ケーシング1のハンドグリップ部分1a内」とされた「制御電子装置5」は、当該図面看取事項によると、ハンドグリップ部分1aの下部であり、開口8は摘記事項イ.の記載から見て冷却空気流7の取込口として設けられたものと理解できるため、当然にハウジング外殻に設けられるもの、すなわちハウジングの端部になる。そうすると、「制御電子装置5」が「ハンドグリップ部1a」に対して設置される場所は、ハンドグリップ部1aの電動モータ2の回転軸方向に沿った端部であると言える。
また、制御電子装置5のモータ室10側に、冷却空気流7が通るとされる「開口9」の存在が確認出来るものの、モータ室10を閉鎖している壁と、当該開口9とが、ハンドグリップ部1aとモータハウジング1bとの接続箇所とでまとまった形の後壁を形成しているか否かについては、具体的な記載や図示はない。
加えて、摘記事項ア.の4a関係と図面看取事項の4a関係とから、図示された衝撃式穿孔機には、外部電源からの電源ケーブルが図面右側の4a図示線で描かれ、その引き込みは工具ケーシング1の一部であるハンドグリップ部分1aの延長方向下端面で行われていること、衝撃式穿孔機は、スイッチ6で切換え操作がなされると認められる。

以上纏めると、甲第3号証には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲3発明)
「工具ケーシング1と、
該工具ケーシングの一部をなし、電動モータ2の出力軸に沿った向きに延びて形作られるモータハウジング1bと、
該モータハウジング1b内に収容され、ブラシレスである電動モータ2と、
該工具ケーシング1内に収容され、該電動モータ2により駆動される、クランク伝動装置3及び前記クランク伝動装置3と連結された駆動軸と、
該駆動軸の端部に設けられた衝撃装置3aと、
該工具ケーシング1の一部をなすハンドグリップ部1aと、
該ブラシレスである電動モータ2を制御する制御電子装置5とを有する衝撃式穿孔機であって、
該工具ケーシング1と該モータハウジング1bとは、該モータハウジング1b中に収納された電動モータ2の出力軸と、該駆動軸とが、互いに直交する様に該工具ケーシング1と該モータハウジング1bとが形成されていると共に、該工具ケーシング1と該ハンドグリップ部1aとは、該工具ケーシング1の衝撃装置3aが置かれる位置と反対側の該駆動軸端部に該ハンドグリップ部1aが位置するように形成されつつ、該ハンドグリップ部1aは、該電動モータ2の出力軸と平行である、該モータハウジング1bの延長端位置まで延びた端部を含む外形を有し、
該ハンドグリップ部1aの端部と、該モータハウジング1bの延長端とは、互いに接続されており、該ハンドグリップ部1aの端部内に、該ブラシレスである電動モータ2を制御する該制御電子装置5が配置されており、
該ハンドグリップ部1aの延長方向下端面で外部電源からの電源ケーブル4aの引き込みがなされ、該ハンドグリップ部1a内には、衝撃式穿孔機を切り換え操作するスイッチ6が設けられ、
該ハンドグリップ部1aと工具ケーシング1とは、ゴムエレメント12を介して連結されている
衝撃式穿孔機。」

(2)甲1発明、甲2発明、甲3発明との対比・判断

ア.甲1発明との関係について
[1] 本件発明1についてする対比・判断
本件発明1と、甲1発明とを対比する。

甲1発明の「電動工具」が、「ブラシレスDCモータ40」、「減速機構部32」、「ブラシレスDCモータ40の回転を制御する制御基板36」を有するとした点は、本件発明1の「電動工具」が、「ブラシレスモータ」、「ブラシレスモータにより駆動される駆動力伝達部」、「ブラシレスモータを駆動するため」の「基板」を有するとした点に相当すると認められる。
その上、甲1発明の「スイッチ35とDC電源パック34とを収納し、前記上部筐体部分の下部に連なる下部筐体部分」が、電動工具の通常の使用態様を考えた場合、作業者が工具を握る、すなわちグリップと認識される部分であることや、ブラシレスモータを制御する「基板」が、一般的にはスイッチング素子を要し、基板上に搭載されるのが常識であることを補えば、甲1発明の「制御基板」は、本件発明1の「スイッチング素子が設けられる基板」に相当する。
更に、甲1発明における「上部筐体部分」は、「仕切り壁」により「ブラシレスDCモータ40」と「該モータシャフト42に連結された減速機構部32」とを「収納」する「一体に形成され」た筐体が仕切られる構造であるから、「ブラシレスDCモータ40」と「該モータシャフト42に連結された減速機構部32」の双方を収納する筐体は互いに繋がっている関係にあるため、本件発明1の構成A及びCで特定された「モータハウジング」と「ギヤケース」とが「接続され」たとした点に相当する。
また、甲1発明における「筐体31」の「上部筐体部分」と「下部筐体部分」とが「連なる」点は、同様に本件発明1の構成A及びBで特定された「モータハウジング」と「ハンドルハウジング」とが「接続される」点に相当する。
そして、甲1発明の「前記制御基板36は、上部筐体部分の外周面のうち、上部筐体部分の下部に連なる下部筐体部分の内側の箇所に設けられている」は、本件発明1の「該ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子が設けられる基板を、該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間に収容した」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、構成AないしDの全てで一致し、相違点はない。

なお、甲1発明の認定に当たり、請求人は審判請求書にて、ハッチングで示される筐体31(審判請求書では「30」とされているが、31の誤記であることは、調書記載のとおり)に対して、収容される部品の周囲を「部分」と称することで、筐体31の各部分が各々本件発明1の「モータハウジング」、「ハンドルハウジング」、「ギヤケース」と別個に呼称を与えたハウジング/ケース類に相当すると主張した。これに対し被請求人は、答弁書(上記第4の1.の(1)のア.を参照)にて甲1発明の壁状部が筐体31の内側に延びつつ一体的に形成されていることから、壁状部が外側になることがないとの意により、筐体1の壁状部が外周を形成しない点で本件発明1とは一致していない旨主張している。
しかしながら、本件発明1でモータハウジングとハンドルハウジングとがなす「接続」の構造は、上記第5の1.で説示したとおり、被さりを伴う構造として認識されるものと結論しているものの、最終的に両ハウジングが一繋がりとされた後に、モータハウジングの一部あるいは全部が外側に露出されるか否かは別の事項であって、被さりの範囲をモータハウジングの全面とするか一部にするかで決せられる。また、本件発明1の構成Dの「モータハウジングの外周面」とされた記載、即ち、基板を収納する空間を画定するモータハウジングの面に対して「外周面」との表記がなされていることのみをもって、モータハウジングの基板収納画定面は必ず外側に露出した関係にあるとまでもは言い切れない。
事実、本件明細書及び図面にて基板の収容がなされた状態を確認してみると、【図8】、【図9】の図示では、回路基板収容部202F内で破線で輪郭線が示されているとおり、回路基板収容部202Fの領域でもはやモータハウジング202Aの一部は外側に露出した状態にないことが明らかである。
とすれば、被請求人の、甲1発明の壁状部が外側に露出しておらず外周を形成しないから相違するとした主張は、本件発明1の構成に基づくものでなく、かつ、本件明細書及び図面でサポートされる事実にも反するものであり、主張の妥当性を著しく欠くというべきであって、失当といわざるを得ない。

以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明と本質的に相違するとは認められず、甲1発明と同一である。

[2] 本件発明2についてする対比・判断
本件発明2は本件発明1の構成B及びDに対して、構成Eの特定事項による限定を伴う関係にある。
そうすると、本件発明2に対する検討は、前記ア.にて本件発明1と実質同一とされた甲1発明との間で、構成Eに関する充足がなされ得るかについて行うことになる。
そこで、構成Eの充足性について検討する。
構成Eは、基板が収容される「間」を形成する、「モータハウジングの外周面」と「ハンドルハウジングの内周面」の「接続」に対して、「ハンドルハウジング」が「モータハウジングの外周面」の「一部に被さり」とされることを特定したものであるが、甲1発明で対応する「下部筐体部分」と「上部筐体部分」とは、当該下部筐体部分が「上部筐体部分の下部に連なる」ものとされ、図1の図示を見ればモータの収容部分は完全に下部筐体部分に覆われているため、「ハンドルハウジング」が「モータハウジングの外周面」の「一部に被さり」を具現化した図示がなされていると認められる。
そうすると、構成Eの特定を加味した場合であっても、甲1発明と本件発明2との間になんら新たな相違は生じることがないと認められる。

以上のとおりであるから、本件発明2も甲1発明と本質的に相違するとは認められず、甲1発明と同一である。

イ.甲2発明との関係について
[1] 本件発明1についてする対比・判断
本件発明1と、甲2発明とを対比する。
甲2発明の「インパクトドライバ」は電動工具の一種とされるので、本件発明1の「電動工具」に相当し、係る電動工具を構成する主要部品としてハウジングの細部の特定を除く限り、両者がブラシレスモータ、駆動力伝達部、ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子が設けられる基板をハウジング内に収容した点で共通する。
また、甲2発明の「結合させて工具本体とされる」「1つに繋がって作成される断面半円状の一対のハウジング部材50」を構成する「モータハウジング部50a」、「動力伝達ハウジング部50b」及び「ハンドルハウジング部50c」は、各々本件発明1の「モータハウジング」、「ギヤケース」及び「ハンドルハウジング」に相当すると共に、「モータハウジング部50a」と「動力伝達ハウジング部50b」とが「連続して形成され」て繋がっている点、及び、「ハンドルハウジング」が「モータハウジング部50aおよび動力伝達ハウジング部50bから垂下する」点は、各々本件発明1の「ギヤケース」が「該モータハウジングと接続され」た点、及び、「ハンドルハウジング」が「該モータハウジングと接続される」点に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、また相違する。
(一致点)
ブラシレスモータを収容するモータハウジングと、
該モータハウジングと接続されるハンドルハウジングと、
該モータハウジングと接続され、該ブラシレスモータにより駆動される駆動力伝達部を収容するギヤケースと、を備え、
該ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子が設けられる基板を、ハウジング内に収容した
電動工具。

(相違点)
「基板」の「収容」に関して、本件発明1では「該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間」に収容するとの特定がなされているのに対して、甲2発明の「インバータ回路基板」を含む「モータ駆動回路装置2」は、直接的には「ハンドルハウジング部50c内」としている点。

そこで、上記相違点について検討する。
甲2発明の「ハンドルハウジング部50c」は、「モータハウジング部50a」との関係において、「1つに繋がって作成される」関係を前提としつつ、更に「垂下」した位置とされている。また「モータハウジング部50a」は、その形状から当然に「ハンドルハウジング部50c」の内部収容空間との間に、該モータハウジング部50aのハウジングの一部を伴う形で「ハンドルハウジング部50c」と繋げられていることとなる。そうすると、相違点に係る甲2発明の「インバータ回路基板」が収容されるとした「ハンドルハウジング部50c内」は、モータハウジング部50aの外周面とハンドルハウジング部50cの内周面とで画定される収容空間であると理解できるので、結果として本件発明1の「基板」の「収容」に関して特定された内容を満足することとなり、両者に実質的な相違はないと認められる。

なお、甲2発明と本件発明1とを同一とした無効理由1に対する被請求人の主張は、上記「第4 被請求人の主張の概要」の「1.審判事件答弁書による主張」のイ.に示したとおりであって、甲第2号証の図1から看取されるブラシレスモータ3とモータ駆動回路装置2との間を仕切る壁状部がハウジング内部に配置される部分とされ、ハウジングの外周面を形成しない点を指摘し、また、甲第2号証の明細書及び図面のいずれにも、ハンドルハウジング部50cの内周面を開示していないとも指摘する。
しかしながら、図1に図示されたモータ駆動回路2の収容に関しての当審認定事項キに示すとおり、ハンドルハウジング部50cの内部に当該モータ駆動回路2が収容されたと認定されるので、甲第2号証の明細書及び図面を総合すると、甲第2号証はモータ駆動回路2を収容する内部空間を有することを開示すると見られることから、内周面の非存在を指摘した被請求人の主張は誤っている。
更に、ブラシレスモータ3とモータ駆動回路2との間を仕切る壁状部がハウジング内部に配置される部分であるから、ハウジングの外周面を形成しないとして、本件発明1と相違するとした被請求人の主張は、既に甲第1号証に係る新規性欠如の無効理由でも同様の趣旨の主張がなされたところであるが、上記「(2)甲1発明、甲2発明、甲3発明との対比・判断」のア.の[1]のなお書きで説示したとおり、本件発明1の構成に基づくものでなく、かつ、本件明細書及び図面でサポートされる事実にも反するものであり、主張の妥当性を著しく欠くというべきものであるから、同様に失当というべきである。

以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明と本質的に相違するとは認められず、甲2発明と同一である。

[2] 本件発明2についてする対比・判断
本件発明2は本件発明1の構成B及びDに対して、構成Eの特定事項による限定を伴う関係にある。
そうすると、本件発明2に対する検討は、前記[1]にて本件発明1と実質同一とされた甲2発明との間で、構成Eに関する充足がなされ得るかについて行うことになる。
そこで、構成Eの充足性について検討する。
構成Eは、基板が収容される「間」を形成する、「モータハウジングの外周面」と「ハンドルハウジングの内周面」の「接続」に対して、「ハンドルハウジング」が「モータハウジングの外周面」の「一部に被さり」とされることを特定したものであるが、甲2発明で対応する「ハンドルハウジング部50c」と「モータハウジング部50a」とは、当該ハンドルハウジング部50cが「モータハウジング部50aおよび動力伝達ハウジング部50bから垂下する」ものとされ、図1の図示を見ればモータハウジング部50aの下部は完全にハンドルハウジング部50cに覆われているため、「ハンドルハウジング」が「モータハウジングの外周面」の「一部に被さり」を具現化した図示がなされていると認められる。
そうすると、構成Eの特定を加味した場合であっても、甲2発明と本件発明2との間になんら新たな相違は生じることがないと認められる。

以上のとおりであるから、本件発明2は、甲2発明と本質的に相違するとは認められず、甲2発明と同一である。

ウ.甲3発明との関係について
[1] 本件発明1についてする対比
本件発明1と、甲3発明とを対比する。
甲3発明の「該工具ケーシングの一部をなし、電動モータ2の出力軸に沿った向きに延びて形作られるモータハウジング1b」は、本件発明1の「モータを収容するモータハウジング」に相当し、
以下、同様に、
「該モータハウジング1b内に収容され、ブラシレスである電動モータ2」は、「ブラシレスモータ」に、
「該工具ケーシング1内に収容され、該電動モータ2により駆動される、クランク伝動装置3及び前記クランク伝動装置3と連結された駆動軸」は、「該ブラシレスモータにより駆動される駆動力伝達部」に、
「ゴムエレメント12を介して」「工具ケーシング1」と「連結されている」とする「ハンドグリップ部1a」は、「該モータハウジングと接続されるハンドルハウジング」に、各々相当する。

また、甲3発明の「該電動モータ2により駆動される、クランク伝動装置3及び前記クランク伝動装置3と連結された駆動軸」を収容する「工具ケーシング1」の一部は、上記本件発明1の「駆動力伝達部」との相当関係を踏まえると、本件発明1の「ギヤケース」と共通する。

さらに、甲3発明の「該ブラシレスである電動モータ2を制御する該制御電子装置5」は、「該ブラシレスモータを駆動するための部材」という点で、本件発明1の「該ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子が設けられる基板」と共通する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、また、相違する。

(一致点)
「ブラシレスモータを収容するモータハウジングと、
該モータハウジングと接続されるハンドルハウジングと、
該ブラシレスモータにより駆動される駆動力伝達部を収容するハウジングと、
該ブラシレスモータを駆動するための部材を備えた、
電動工具。」

(相違点)
相違点1.本件発明1の「ギヤケース」は、「モータハウジングと接続され」るとした特定事項を有するのに対して、甲3発明の「クランク伝動装置3及び前記クランク伝動装置3と連結された駆動軸」を収容するとした「工具ケーシング1」は、「モータハウジング1b」に対して「一部をなす」とされている点。
相違点2.本件発明1の「ブラシレスモータを駆動するためのスイッチング素子が設けられる基板」に関して、甲3発明の機能・作用で共通されるとした「制御電子装置5」は、スイッチング素子が設けられているか否か、及び、形態が基板であるか否かが不明である点。
相違点3.相違点2に係る「基板」が「電動工具」に対してどの位置に収容されるかに関して、本件発明1では「該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間に収容した」としているのに対して、甲3発明では「該ハンドグリップ部1aの端部と、該モータハウジング1bの延長端とは、互いに接続されており、該ハンドグリップ部1aの端部内に、該ブラシレスである電動モータ2を制御する該制御電子装置5が配置されており」としており、モータハウジングとされる箇所の「外周」とハンドルハウジングとされる箇所の「内周」との「間」として認識された箇所とはされていない点。

[2]検討・判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。

甲3発明における「制御電子装置5」は、電動工具内の「ハンドグリップ部1a」の「端部」に配置するとした特定以外には、様々な他の配置箇所を間接に示す示唆はない。
また、甲3発明における「ハンドグリップ1a」と「モータハウジング部1b」との接続は、その技術的意義として上記2.(1)の「[3]甲第3号証の記載事項及び引用発明」の「摘記事項イ.」に示すように、ハンドグリップ内に収容される制御電子装置5の冷却を、金属製モータハウジング部1bにて行うようにするために、両ハウジング部同士を連結させ、連結箇所には両ハウジングを連通する冷却空気流7を通す開口9を設けたものとの理解を前提とすべきところ、冷却に必要な開口9を確保しつつ、別途制御電子装置5の収容空間を画定する程の、請求人が参考資料2を示しつつ陳述した(第3の2.(2)ウ.)甲3号証の開口9の周囲に存在するモータケーシング1bの壁部分が相当程度存在するとした主張を確認できる事実は、甲第3号証に直接の明示がない。
また、請求人は、主張する当該壁部分について陳述1にて「部分的に設けられていると理解できる」旨陳述しているものの、甲第3号証の図1で開口9の直上に描かれたモータハウジング部1bの部分は僅かであり、しかもハンドグリップ1aと互いに凹凸で嵌め合う形状として描かれていると理解する余地がある以上、甲第3号証には、モータハウジング部1bとハンドグリップ部1aとの接続部位について、開口9の周囲にモータハウジング部1bの壁がかなりの程度残るようにされていると考えるべき相当の理由はない。
そうすると、制御電子装置5の収容空間はハンドグリップ部1aで専ら画定されるとするのが通常の理解であって、モータハウジング部1bの壁面の関与は実質的にないと認めるのが相当であるから、当該相違点3に係る相違は、本件発明1が「該モータハウジングの外周面と該ハンドルハウジングの内周面との間に収容した」とする点で、実質的な相違とすべきである。
よって、相違点1及び2について検討するまでもなく、甲3発明を本件発明1と同一であるとすることができず、甲3発明に基づく無効理由1は成り立たない。
また、本件発明2は本件発明1の構成B及びDに対して、構成Eの特定事項による限定を伴う関係にあるから、当然本件発明1と同様に、甲3発明に基づく無効理由1は成り立たない。

(3)無効理由1の総括
上記(1)-(2)をまとめると、本件発明1-2に対する無効理由1(新規性)は、請求人が証拠として示した甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証に記載された発明と同一とされるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当して特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

3.無効理由2(進歩性)について
引き続き、無効理由2(進歩性)について検討する。
請求人は、本件発明1-5に対して、甲第3号証を主たる証拠、甲第4号証乃至甲第8号証を従たる証拠として、本件のいずれの発明も、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとする無効理由2を主張している。

(1)従たる証拠である甲第4-8号証の記載事項

ア.甲第4-6号証の記載事項、図面看取事項
甲第4号証には、【0001】-【0002】にかけて、駆動モータを含む手持式電動工具には、穿孔ドリル、ハンマードリル、グラインダー、カッター等の種類があること、これを前提にして特許請求の範囲に示した「手持式電動工具」を原理的に示した図1には、モータハウジング3内に駆動モータ1を備えた電動工具が、握り4をハウジング後方に備えた構造とされる様が記載されている。
同じく甲第5号証にも、【0001】-【0002】にかけて、駆動モータを含む駆動軸を備えた電動工具には、ドリル、ドリルハンマ、回しびき鋸等の種類があること、これを前提にして特許請求の範囲に示した「電動工具」の1実施例を示した図1には、電動工具12のケーシング10の右側にハンドグリップ18が形成された様が記載されている。
同じく甲第6号証にも、【0001】に、インパクト型の電動工具には、ハンマドリル、チゼルハンマ等の種類があること、これを前提にして特許請求の範囲に示した「電動工具装置」の適用可能な制御システムを説明した図3には、電動工具装置8の、サーボモータ8及び衝撃発生装置2並びに8と2とを連結する運動変換機構3、4、6、9を内蔵したハウジング10後方にグリップ11を設置した様が記載されている。

イ.甲第7-8号証の記載事項
甲第7号証には、ハウジングの内部スペースが複数の構造部分に分割され、ブラシレス型のモータとインバータとが別体で分かれた電動工具に関するものであって、ハンマードリルを発明の一実施形態とし、図1を参照しつつハンマードリルのハウジング9のグリップ11の内側領域に設けた吸気口7、ハウジング下端に設けた吸気口7’、ハンマードリル1の前側に設けた吸気口7’’の、各々から取り込まれた空気流5、5’、5’’をハウジング9内部に収納したブラシレスモータ2、インバータ3、衝撃機構13に導き空冷することが記載されているとともに、図1には工具先端部分に工具動作を矢印で示した図示がなされており、矢印の形態から見て回転駆動することが見てとれる。
同じく甲第8号証には、ブラシレスモータ搭載の電動工具におけるパワー基板の放熱構造に関する事項が記載されており、パワー基板について、ブラシレスモータMの回転制御用電子部品が装着されたものであること、形状としてほぼ矩形状をなしていることの開示がある。(【0014】)

(2)本件発明4に関する無効理由2(進歩性)の検討
まず、甲3発明と、本件発明4とを対比する。
[1]対比、一致点、及び相違点
甲3発明の「該電動モータ2により駆動される、クランク伝動装置3及び前記クランク伝動装置3と連結された駆動軸」を「収容」する「工具ケーシング1」は、本件発明4の「ハウジング」に相当する。
また、甲3発明の「モータハウジング1b」、「ブラシレスである電動モータ2」、「クランク伝動装置3及び前記クランク伝動装置3と連結された駆動軸」、「ハンドグリップ部1a」は、各々本件発明4の「モータハウジング」、「ブラシレスモータ」、「駆動力伝達部」、「ハンドル部」に相当する。
引き続き、甲3発明の「工具ケーシング1」と「ハンドグリップ部1a」との配置関係を示す「該工具ケーシング1と該ハンドグリップ部1aとは、該工具ケーシング1の衝撃装置3aが置かれる位置と反対側の該駆動軸端部に該ハンドグリップ部1aが位置するように形成され」は、本件発明4における「出力部側」が、構成Mにて「駆動力伝達部」の「延出方向端部」の側を指す関係とされることを念頭に置くと、本件発明4の「ハンドル部」の特定事項である「該モータハウジングに対して反出力部側に位置する」に相当する。
更に、甲3発明の「ハンドグリップ部1a」の延びる向きに関する「該ハンドグリップ部1aは、該電動モータ2の出力軸と平行である、該モータハウジング1bの延長端位置まで延びた端部を含む外形を有し」は、本件発明4の構成Nに記載された「該一方向」が、構成Kにて「ブラシレスモータ」の「出力軸」を「該一方向」としていることを念頭に置くと、本件発明4の「ハンドル部」の特定事項である「該ハウジングから該一方向に延出し」に相当する。
また、甲3発明の「電動モータ2の出力軸」と「駆動軸」との相対的な配置に関する「該モータハウジング1b中に収納された電動モータ2の出力軸と、該駆動軸とが、互いに直交する様に該工具ケーシング1と該モータハウジング1bとが形成されている」とした事項は、本件発明4の「駆動力伝達部」と「該一方向に延びる出力軸を有するブラシレスモータ」との相対的な配置を特定した「該ハウジング内に収容され、該一方向と交わる向きに延び、ブラシレスモータの該出力軸により駆動される」という事項に相当する。
加えて、甲3発明の「該ハンドグリップ部1aの端部内に、該ブラシレスである電動モータ2を制御する該制御電子装置5が配置されており」は、本件発明4の「該ブラシレスモータを制御するために、該ハンドル部内であって該ハンドル部の延出方向の端部に配置された略矩形状の基板」に、「該ブラシレスモータを制御するために、該ハンドル部内であって該ハンドル部の延出方向の端部に配置されたモータの制御手段」の点で共通する。

そうすると、甲3発明と本件発明4とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。
(一致点)
「ハウジングと、
該ハウジングから一方向に延出するモータハウジングと、
該モータハウジング内に収容され該一方向に延びる出力軸を有するブラシレスモータと、
該ハウジング内に収容され、該一方向と交わる向きに延び、ブラシレスモータの該出力軸により駆動される駆動力伝達部と、
該ハウジングの該駆動力伝達部の延出方向の端部に設けられ、該駆動力伝達部によって駆動される出力部と、
該ハウジングから該一方向に延出し、該モータハウジングに対して反出力部側に位置するハンドル部と、
該ブラシレスモータを制御するために、該ハンドル部内であって該ハンドル部の延出方向の端部に配置されたモータの制御手段と、を有することを特徴とする電動工具。」

(相違点)
相違点1
本件発明4の「電動工具」の「出力部」は、「回転」駆動するとされているのに対して、甲3発明の「電動工具」の一種とされる「衝撃式穿孔機」の出力部(=衝撃装置3a)は、回転する態様とはされていない点。
相違点2
互いにモータの制御手段とされ、ハンドル部の端部に配置される点で共通する部材に関し、本件発明4では当該モータの制御手段は、「略矩形状の基板」と特定されているのに対して、甲3発明では「制御電子装置5」としている点。

[2]検討・判断
上記相違点1、2について検討する。
(相違点1について)
本件発明の出願時点における電動工具分野の技術常識として、電動工具と認識される機器の駆動出力の駆動形態には、当然のこととしてドリルやボルト締めで見られる回転駆動、ハンマーで見られる往復駆動、ハンマードリルで見られる回転及び往復駆動などの各種態様を電動工具が採り得ることが認識され、これに準じた記述も、請求人が提出した甲第4-6号証、及び甲第8号証で確認できる。
そうすると、当該相違点1に係る相違は、電動工具が常識で採り得る態様間で発生した相違に過ぎず、当該電動工具の当業者であれば、往復駆動の態様により示された甲第3号証に記載の発明を、出力が回転駆動となる周知の態様に変更させる程度のことは容易になし得たということができ、態様変更が殊更困難であるとする事情ないし被請求人の主張も見当たらない。

(相違点2について)
甲3発明の「制御電子装置5」に関する文献上の記述を見てみると、上記「[3]甲第3号証の記載事項及び引用発明」の摘記事項ア.に見られるとおり、当該装置5に関して、マイクロプロセッサや周波数変換器により実現できるものと説明されていることから考えると、具体的な実現形態として“装置”の呼称を採用してはいない。そして、前記相違点2で挙げた本件発明の「略矩形状の基板」は、形状とデバイス名とで表現されていることが明らかであるため、具体的な実現形態とされるものである。
そして、甲3発明の当該「制御電子装置」は、実現の例示として「マイクロプロセッサを用い」るとした開示、及び、「周波数変換器」として認識されるとした開示の双方を見れば、どちらの例示も一般的には矩形の基板上にプロセッサを実装した形態、及び、矩形の基板上にスイッチング素子を実装した形態を、当業者であればごく自然に思い至ると判断される。
加えて、電動工具のブラシレスモータを制御するための手段が、基板の態様を採るとした事実を示す証拠として、請求人が提示した甲第8号証のみならず、甲第1号証の摘記事項ア.や、甲第2号証の摘記事項エ.が存在することから見ても、甲3発明の「制御電子装置5」は、これを実現する具体形態が、矩形の基板の態様を採ると言える。
とすれば、本件発明4が当該共通する手段について「略矩形状の基板」と特定した内容と、甲3発明にて「制御電子装置5」とした内容とは、実現の際の具体物として見れば、内容上相違するとは言えないことが明らかである。
そうすると、当該相違点2に係る相違は、単なる呼称上の相違であって、実現の際の具体物を当業者が考えた場合なんら異なる関係を呈するものではないので、当業者が容易に想到できる範疇に留まると認められる。

また、本件発明4が奏する効果は、明細書の【0019】-【0021】に記載された、ブラシレスモータを採用し、かつ、制御基板をハンドル部端部に配置することによるモータハウジングの延出方向サイズを小さくできるとしたことにあり、甲3発明の構成でも、ブラシレスなモータの採用とされ、相違点2でも内容上相違しないとされる点から考えられる効果と同じであるから、両発明が奏する効果にさしたる違いは認められない。
してみれば、本件発明4の奏する効果は、甲3発明及び周知事項から予測される範囲内であって、格別なものでない。

なお、被請求人は、請求人が審判請求書に記載し、陳述したとされる当該無効理由2に関する相違点2を容易想到とできる主張(審判請求書第22頁第12行?第13行)に対して、上記「第4 被請求人の主張の概要」に示した答弁書及び被請求人陳述1にて、以下の2点を主張し、もって容易想到性を否定している。

(い)甲3号証に示される技術的効果を減殺または没却させることになること。

(ろ)甲第3号証の電子制御装置5が矩形状の基板を図示するものではないこと。

しかしながら、前記被請求人の主張は、
(い)甲第8号証に図示されたパワー基板1が相当な長さを有するとの前提に立ち、かつ、実際にかなりの長さの基板を甲第3号証の指定位置に置いた際に【参考図3】で明らかに甲第3号証に当初から図示されていた電子制御装置5の外形よりも長く誇張した図示となった場合を仮想して、甲3発明の一部特定事項の変更を試みる際のある種の阻害要因の発生を述べたと見られるが、請求人の主張は制御部を矩形状の基板とすることが周知技術であることを挙げた上で、甲第8号証を証拠として示したのであって(請求人陳述2の(2)ウ.を参照)、甲3発明に甲第8号証のパワー基板を適用させる論理を展開し主張したものではないから、請求人の主張に正対したものでない。加えて、被請求人は周知技術でないとした反論をなんら行っていない。そうすると、被請求人は、相違点2に係る請求人の主張に正対していないというべきである。
また、
(ろ)請求人は、甲第3号証に図示された電子制御装置5を基板であるとは主張しておらず、相違する(=相違点2)とし、装置の態様の一つとして基板の形態を採ることが周知であるとの理由で、無効とすべき旨を主張している。
また、甲第3号証に図示された電子制御装置5が、図示された輪郭によって必然的に装置の態様を定めえるとすべき特段の事情も考えられない。
そうすると、元来甲第3号証が電子制御装置5について、図示に拠り装置の具体的な態様を示そうとしたものではなく、装置の機能・作用の特定に留まっていると解するのが相当である。
しかるに被請求人が自らの陳述1で【参考図2】を用いた外形線に基づいてした主張は、電子制御装置5が基板の態様を採り得ない合理的な根拠を形成するとは思えず、これを強いて採り上げるべき事情がない。

[3]本件発明4に関する小括
以上纏めると、本件発明4は、甲3発明及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし第6号証、甲第8号証に記載のごとき当業者に周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

(3)本件発明5に関する無効理由2(進歩性)の検討
[1]発明の整理、対比、一致点及び相違点
本件発明5は、本件発明4に対して更に構成Pによる特定を加えたものであるが、甲3発明の「該ハンドグリップ部1aの延長方向下端面で外部電源からの電源ケーブル4aの引き込みがなされ」は、本件発明5の「該ハンドル部の該一方向の端面から該ブラシレスモータ駆動のための電源ケーブルが接続されており」に相当し、
また、甲3発明の「該ハンドグリップ部1a内には、衝撃式穿孔機を切り換え操作するスイッチ6が設けられ」は、本件発明5の「該ハンドル部内には、(該ブラシレスモータへの電源の供給と遮断とを切り替えるトリガ)スイッチが設けられていて」に括弧書きの部分を除いて一致し、さらに、甲3発明の「該ハンドグリップ部1aと工具ケーシング1とは、ゴムエレメント12を介して連結されている」も、本件発明5の「該モータハウジングと該ハンドル部とは該一方向端部で接続している」に相当することとなるため、両者の相違点は、既に検討済みの相違点1、2に加えて、以下の相違点3を有することとなる。
(相違点3)
本件発明5のスイッチは、「該ブラシレスモータへの電源の供給と遮断とを切り替える」とされた「トリガスイッチ」であるとされているのに対して、甲3発明のスイッチ6は、単に「切り換え操作する」とされている点。

[2]検討・判断
そこで、上記相違点3について検討する。
電動工具に設けられるスイッチの仕様として、トリガスイッチを用いること、及び、トリガスイッチに与える役割として、ブラシレスモータへの電源の供給と遮断の切り替えを割り当てるとした事項は、本件出願前に電動工具の分野で慣用的になされていた事項といえ、事実、請求人が証拠として提出した甲第2号証の図1に図示されたハンドルハウジング部50cに設けられているトリガスイッチ50dは、【0036】に記載されているとおり、該トリガスイッチ50dの引き動作によりインパクトドライバ50の動作開始がなされるとされているのであるから、モータへの電源の供給と遮断とを切り替える役割が割り当てられていることになる。
とすれば、甲3発明のスイッチ6についても、その役割が直接一致した特定がなされていないとはいえ、他に電源のオンオフを切り替える別途の明示が無い以上、常識的に見て駆動源とされた電動モータ2の電源のオンオフが当該スイッチ6にて可能とされたというべきであり、当業者に容易想到な常識的な事項と認められる。
そうすると、新たな相違点3にしてみても、当業者に容易想到とされる以上、総合すると相違点1ないし3は、いずれも当業者に周知の事項であって、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到できる範疇に留まると認められるので、本件発明5も当業者が容易に発明できたものである。
また、本件発明5が奏する効果は、明細書の【0019】-【0021】に記載された本件発明4に係る効果に加え、【0022】-【0023】に記載された、ハンドル部内及びモータハウジング内の配線を効率的に行うことにあるとされるが、甲3発明の構成でも、本件の構成Pと結局同様の構成を採用した関係となる以上、甲3発明が奏する効果と同じとなるから、両発明が奏する効果にさしたる違いは認められない。
してみれば、本件発明5の奏する効果は、甲3発明及び周知事項から予測される範囲内であって、格別なものでない。

[3]本件発明5に関する無効理由2(進歩性)の小括
以上纏めると、本件発明5も、甲3発明及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし第6号証に記載のごとき当業者に周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

(4)本件発明1ないし3に関する無効理由2(進歩性)の検討
引き続き、本件発明1ないし3と、甲3発明との対比・検討を行う。
まず、甲3発明と、本件発明1とを対比する。
[1]本件発明1に関する対比、一致点及び相違点
既に「(2)甲1発明、甲2発明、甲3発明との対比・判断」の「ウ.甲3発明との関係について」にて、本件発明1と甲3発明との対比、一致点及び相違点の認定は行われているので、この結果を用いることとする。
[2]相違点に係る検討・判断
事案に鑑み、上記相違点3についてまず検討してみると、既に「2.無効理由1(新規性)について」の「ウ.甲3発明との関係について」の「[2]検討・判断」で示したとおり、当該相違は少なくとも甲第3号証単独では実質的な一致と扱うことができない。
そして、請求人が提示する従たる証拠とされる甲第4号証ないし8号証に、当該相違点に係る本件発明1の特定事項と同じ事項を呈するものは見当たらず、また、当該相違点3に関して、これら従たる証拠を用いて当該無効理由2の成立を求めるとした請求人の陳述も見当たらない。
とすれば、請求人が示した証拠によっては、当該相違点3に係る相違を容易想到とすることができないため、相違点1、2に対する検討結果に関わらず、本件発明1を当業者が容易に想到できたとすることができない。

[3]本件発明1に関する無効理由2(進歩性)の小括
以上により、本件発明1は、請求人が示した証拠によっては、これを無効とする無効理由2は成り立たない。

[4]本件発明2ないし3に関する整理、検討
本件発明2ないし3は、本件発明1の全てを含みつつ、その構成の一部について更なる特定を加えた関係にある。
そして、全てを含むとされた本件発明1に関する無効理由2は、前記[3]のとおり成り立たないのであるから、当然に本件発明2ないし3についても当然に成り立たない。

[5]本件発明2ないし3に関する無効理由2(進歩性)の小括
以上により、本件発明2ないし3は、請求人が示した証拠によっては、これを無効とする無効理由2は成り立たない。

(5)無効理由2の総括

本件発明4ないし5は、請求人が示した証拠によって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
本件発明1ないし3は、請求人が示した証拠によっては、当業者が容易に発明をすることができたものとできないので、無効理由2については成り立たない。


第6 むすび
前記第5の1.ないし3.をまとめると、

本件発明1ないし3に対して請求人が主張する無効理由3は成り立たず、

本件発明1ないし2に対して請求人が主張する無効理由1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当して特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであり、

無効理由2のうち、本件発明4ないし5を対象とする一部については特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであって、その余の本件発明1ないし3を対象とした無効理由2は成り立たない。

審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が5分の1を負担し、被請求人が5分の4を負担すべきものとする。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-14 
結審通知日 2017-04-19 
審決日 2017-05-08 
出願番号 特願2010-102469(P2010-102469)
審決分類 P 1 113・ 113- ZC (B25F)
P 1 113・ 537- ZC (B25F)
P 1 113・ 121- ZC (B25F)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 足立 俊彦  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 西村 泰英
刈間 宏信
登録日 2014-07-25 
登録番号 特許第5582337号(P5582337)
発明の名称 電動工具  
代理人 上田 恭一  
代理人 石田 喜樹  
代理人 市川 朗子  
代理人 小泉 伸  
代理人 福本 鉄平  
代理人 城臺 顕  
代理人 北澤 一浩  
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