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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1329618
審判番号 不服2016-17604  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-25 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 特願2012-156130「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月11日出願公開、特開2013-137498、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月12日(優先権主張平成23年7月22日、平成23年11月29日)の出願であって、平成27年6月15日付けで手続補正がされ、平成28年3月8日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月11日付けで手続補正がされ、同年9月7日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1、2、5に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.本願請求項1、2、5に係る発明は、下記の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
また、本願請求項6、7に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
また、本願請求項8に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2008-176287号公報
2.特開2010-224033号公報
3.特開2011-112724号公報
4.特開2010-39118号公報


第3 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成28年11月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1のトランジスタと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、第3のスイッチと、第4のスイッチと、容量素子と、発光素子とを有し、
前記第1のスイッチの第1の端子は、第1の配線と電気的に接続され、
前記第1のスイッチの第2の端子は、前記容量素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記第2のスイッチの第1の端子は、第2の配線と電気的に接続され、
前記第2のスイッチの第2の端子は、前記第1のトランジスタの第1のゲートと電気的に接続され、
前記第3のスイッチの第1の端子は、前記容量素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記第3のスイッチの第2の端子は、前記第1のトランジスタの第1のゲートと電気的に接続され、
前記第4のスイッチの第1の端子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第4のスイッチの第2の端子は、前記発光素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記容量素子の第2の電極は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記発光素子の第1の電極または前記発光素子の第2の電極は、一方が陽極であり他方が陰極であり、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第3の配線に電気的に接続された発光装置であって、
第1の期間を有し、
前記第1の期間において、前記第1のスイッチが導通状態であり、前記第2のスイッチが導通状態であり、前記第3のスイッチが非導通状態であり、かつ、前記第4のスイッチが非導通状態であり、
前記第1の期間において、前記第1のトランジスタの閾値電圧に応じた電圧が前記容量素子に与えられる発光装置。」


第4 引用文献、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。)

「【0139】
(第五の実施形態)
本発明の第五の実施形態における有機EL素子を用いた発光表示デバイスの画素の構成を図10に示す。
【0140】
本実施形態による有機ELディスプレイは、各画素10に、カソード端子がGND(接地)線(以下、GND)に接続(接地)している有機EL素子(以下、OLED)と、そのOLEDのアノード端子に接続される駆動回路11とを備える。
【0141】
OLEDは、アノード端子とカソード端子の間に、有機材料による発光層が挟まれた構造を有し、駆動回路11から供給される電流に応じた輝度で発光する。
【0142】
駆動回路11は、OLEDを駆動し、かつゲート端子、ソース端子、ドレイン端子を有する駆動用トランジスタと、一端がD-TFTのソース端子に接続されている容量素子Cと、複数のスイッチ素子とを有する。
【0143】
駆動用トランジスタは、n型TFT(以下、D-TFT)で構成される。D-TFTは、ドレイン端子が電源線VSと接続されている。
【0144】
容量素子Cと複数のスイッチ素子は、駆動回路11がOLEDへ電流を供給する時に、D-TFTのゲート端子電圧を、OLEDへの電流を供給する電圧と、D-TFTのしきい値電圧と、D-TFTのソース端子電圧を加えた電圧とする昇圧部を構成する。
【0145】
複数のスイッチ素子は、第一から第四のスイッチ素子を有する。
【0146】
第一のスイッチ素子は、n型TFT(以下、TFT1)で構成される。TFT1は、ソース/ドレイン端子の一端がD-TFTのドレイン端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端がD-TFTのゲート端子と接続されている。
【0147】
第二のスイッチ素子は、n型TFT(以下、TFT2)で構成される。TFT2は、ソース/ドレイン端子の一端がD-TFTのゲート端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端(D-TFTのソース端子と接続されていない一端)と接続されている。
【0148】
第三のスイッチ素子は、n型TFT(以下、TFT3)で構成される。TFT3は、ソース端子/ドレイン端子の一端がデータ線DLに接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端(D-TFTのソース端子と接続されていない一端)と接続されている。
【0149】
第四のスイッチ素子は、n型TFT(以下、TFT4)で構成される。TFT4は、ソース端子/ドレイン端子の一端がD-TFTのソース端子に接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端がOLEDのアノード端子と接続されている。
【0150】
有機ELディスプレイは、さらにGNDのほか、データ線DLと、第一、第二の走査線SL1、SL2と、電源線VSとを有する。データ線DLは、D-TFTからOLEDに供給する電流を制御する制御電圧VDを供給する。電源線VSは、電圧VS1を供給する。第一の走査線SL1は、TFT1、TFT3のゲート端子と接続され、電圧信号SV1を供給する第二の走査線SL2は、TFT2、TFT4のゲート端子と接続され、電圧信号SV2を供給する。
【0151】
ここで、電源線VSの電圧VS1は、OLEDに電流を供給する際、D-TFTが飽和領域で動作する電圧とする。かつ、容量素子Cの容量値は、D-TFTに関するチャネル容量と、オーバーラップ容量などの寄生容量との和の3倍以上とする。
【0152】
本実施形態のタイミングチャートを図11に示し、以下にその動作を説明する。
【0153】
まず、第一の走査線SL1の電圧信号SV1をHレベル、第二の走査線SL2の電圧信号SV2をLレベルとする。この期間(以下、電圧書き込み期間)では、TFT1、TFT3がONに、TFT2、TFT4がOFFとなる。本期間において、D-TFTのソース端子電圧は、D-TFTのしきい値電圧をVtとすると、VS1-Vtとなる。また、容量素子Cの他端(D-TFTのソース端子と接続していない一端)の電圧は、データ線DLの電圧VDとなる。この結果、容量素子Cの両端には、電圧差VD-VS1+Vtが保持される。
【0154】
本実施形態では、電圧書き込み期間がOLEDに供給する電流を設定する電流設定期間となる。
【0155】
この後、第一の走査線SL1の電圧信号SV1をLレベル、第二の走査線SL2の電圧信号SV2をHレベルとする。この期間(以下、発光期間)では、TFT1、TFT3がOFF、TFT2、TFT4がONとなる。本期間において、D-TFTのゲート端子-ソース端子の電圧差は、D-TFTのソース端子の電圧が変動しても、チャージポンプ効果により、VD-VS1+Vtが保持される。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、引用文献中の対応する記載の段落番号を括弧書きで示している。)

「有機EL素子を用いた発光表示デバイスであって(【0139】)、
カソード端子が接地線GND線に接続している有機EL素子OLEDと、有機EL素子OLEDのアノード端子に接続される駆動回路11とを備え(【0140】)、
駆動回路11は、有機EL素子OLEDを駆動し、かつゲート端子、ソース端子、ドレイン端子を有する駆動用トランジスタD-TFTと、一端が駆動用トランジスタD-TFTのソース端子に接続されている容量素子Cと、複数のスイッチ素子とを有しており(【0142】、【0143】)、
駆動用トランジスタD-TFTのドレイン端子は、電源線VSと接続され(【0143】)、
複数のスイッチ素子は、第一から第四のスイッチ素子を有し(【0145】)、
第一のスイッチ素子TFT1は、ソース/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのドレイン端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端が駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子と接続され(【0146】)、
第二のスイッチ素子TFT2は、ソース/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端と接続され(【0147】)、
第三のスイッチ素子TFT3は、ソース端子/ドレイン端子の一端がデータ線DLに接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端と接続され(【0148】)、
第四のスイッチ素子TFT4は、ソース端子/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのソース端子に接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端が有機EL素子OLEDのアノード端子と接続され、(【0149】)、
データ線DLは、D-TFTからOLEDに供給する電流を制御する制御電圧VDを供給し、電源線VSは、電圧VS1を供給し(【0150】)、
電圧書き込み期間では、第一のスイッチ素子TFT1、第三のスイッチ素子TFT3がONに、第二のスイッチ素子TFT2、第四のスイッチ素子TFT4がOFFとなり、本期間において、駆動用トランジスタD-TFTのしきい値電圧をVtとすると、容量素子Cの両端には、電圧差VD-VS1+Vtが保持される(【0153】)発光表示デバイス。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「駆動用トランジスタD-TFT」、「第三のスイッチ素子TFT3」、「第一のスイッチ素子TFT1」、「第二のスイッチ素子TFT2」、「第四のスイッチ素子TFT4」、「容量素子C」、「有機EL素子OLED」及び「発光表示デバイス」は、それぞれ、本願発明1の「第1のトランジスタ」、「第1のスイッチ」、「第2のスイッチ」、「第3のスイッチ」、「第4のスイッチ」、「容量素子」、「発光素子」及び「発光装置」に相当する。

イ 引用発明は、「第三のスイッチ素子TFT3は、ソース端子/ドレイン端子の一端がデータ線DLに接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端と接続され」たものであるところ、この「(第三のスイッチ素子TFT3の)ソース端子/ドレイン端子の一端」、「データ線DL」、「(第三のスイッチ素子TFT3の)ソース端子/ドレイン端子の他端」及び「容量素子Cの他端」は、それぞれ、本願発明1の「第1のスイッチの第1の端子」、「第1の配線」、「第1のスイッチの第2の端子」及び「容量素子の第1の電極」に相当するから、引用発明において「第三のスイッチ素子TFT3は、ソース端子/ドレイン端子の一端がデータ線DLに接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端と接続され」ることは、本願発明1において「前記第1のスイッチの第1の端子は、第1の配線と電気的に接続され、前記第1のスイッチの第2の端子は、前記容量素子の第1の電極と電気的に接続され」ることに相当する。

ウ 引用発明は、「第一のスイッチ素子TFT1は、ソース/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのドレイン端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端が駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子と接続され」たものであるところ、この「(第一のスイッチ素子TFT1の)ソース端子/ドレイン端子の他端」及び「駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子」は、それぞれ、本願発明1の「第2のスイッチの第2の端子」及び「第1のトランジスタの第1のゲート」に相当するから、引用発明において「第一のスイッチ素子TFT1は、ソース/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのドレイン端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端が駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子と接続され」る点と、本願発明1において「前記第2のスイッチの第1の端子は、第2の配線と電気的に接続され、前記第2のスイッチの第2の端子は、前記第1のトランジスタの第1のゲートと電気的に接続され」る点とは、「前記第2のスイッチの第2の端子は、前記第1のトランジスタの第1のゲートと電気的に接続され」る点で共通する。

エ 引用発明は、「第二のスイッチ素子TFT2は、ソース/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端と接続され」たものであるところ、この「(第二のスイッチ素子TFT2の)ソース端子/ドレイン端子の一端」、「駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子」、「(第二のスイッチ素子TFT2の)ソース端子/ドレイン端子の他端」及び「容量素子Cの他端」は、それぞれ、本願発明1の「第3のスイッチの第2の端子」、「第1のトランジスタの第1のゲート」、「第3のスイッチの第1の端子」及び「容量素子の第1の電極」に相当するから、引用発明において「第二のスイッチ素子TFT2は、ソース/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのゲート端子と接続され、ソース/ドレイン端子の他端が容量素子Cの他端と接続され」たことは、本願発明1において「前記第3のスイッチの第1の端子は、前記容量素子の第1の電極と電気的に接続され、前記第3のスイッチの第2の端子は、前記第1のトランジスタの第1のゲートと電気的に接続され」たことに相当する。

オ 引用発明は、「第四のスイッチ素子TFT4は、ソース端子/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのソース端子に接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端が有機EL素子OLEDのアノード端子と接続され」たものであるところ、この「(第四のスイッチ素子TFT4の)ソース端子/ドレイン端子の一端」、「駆動用トランジスタD-TFTのソース端子」、「(第四のスイッチ素子TFT4の)ソース端子/ドレイン端子の他端」及び「有機EL素子OLEDのアノード端子」は、それぞれ、本願発明1の「第4のスイッチの第1の端子」、「第1のトランジスタのソース又はドレインの一方」、「第4のスイッチの第2の端子」及び「発光素子の第1の電極」に相当するから、引用発明において「第四のスイッチ素子TFT4は、ソース端子/ドレイン端子の一端が駆動用トランジスタD-TFTのソース端子に接続され、ソース端子/ドレイン端子の他端が有機EL素子OLEDのアノード端子と接続され」たことは、本願発明1において「前記第4のスイッチの第1の端子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、前記第4のスイッチの第2の端子は、前記発光素子の第1の電極と電気的に接続され」たことに相当する。

カ 引用発明の「容量素子C」は、「一端が駆動用トランジスタD-TFTのソース端子に接続されている」ところ、この「(容量素子Cの)一端」及び「駆動用トランジスタD-TFTのソース端子」は、それぞれ、本願発明1の「容量素子の第2の電極」及び「第1のトランジスタのソース又はドレインの一方」に相当すると認められ、引用発明は、本願発明1と同様に「前記容量素子の第2の電極は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され」たものといえる。

キ 引用発明において、「有機EL素子OLED」が「カソード端子」及び「アノード端子」を有していることは、本願発明1において「前記発光素子の第1の電極または前記発光素子の第2の電極は、一方が陽極であり他方が陰極であ」ることに相当する。

ク 引用発明において、「駆動用トランジスタD-TFTのドレイン端子は、電源線VSと接続され」ていることは、本願発明1において「前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第3の配線に電気的に接続された」ことに相当する。

ケ 引用発明において、「電圧書き込み期間では、第一のスイッチ素子TFT1、第三のスイッチ素子TFT3がONに、第二のスイッチ素子TFT2、第四のスイッチ素子TFT4がOFFとな」ることは、本願発明1において「第1の期間を有し、前記第1の期間において、前記第1のスイッチが導通状態であり、前記第2のスイッチが導通状態であり、前記第3のスイッチが非導通状態であり、かつ、前記第4のスイッチが非導通状態であ」ることに相当する。

コ 引用発明は、「本期間(当審注:電圧書き込み期間)において、駆動用トランジスタD-TFTのしきい値電圧をVtとすると、容量素子Cの両端には、電圧差VD-VS1+Vtが保持される」ものであるところ、この「(駆動用トランジスタD-TFTのしきい値電圧)Vt」は、本願発明1の「第1のトランジスタの閾値電圧」に相当するから、引用発明において「本期間において、駆動用トランジスタD-TFTのしきい値電圧をVtとすると、容量素子Cの両端には、電圧差VD-VS1+Vtが保持される」ことは、本願発明1において「前記第1の期間において、前記第1のトランジスタの閾値電圧に応じた電圧が前記容量素子に与えられる」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「第1のトランジスタと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、第3のスイッチと、第4のスイッチと、容量素子と、発光素子とを有し、
前記第1のスイッチの第1の端子は、第1の配線と電気的に接続され、
前記第1のスイッチの第2の端子は、前記容量素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記第2のスイッチの第2の端子は、前記第1のトランジスタの第1のゲートと電気的に接続され、
前記第3のスイッチの第1の端子は、前記容量素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記第3のスイッチの第2の端子は、前記第1のトランジスタの第1のゲートと電気的に接続され、
前記第4のスイッチの第1の端子は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記第4のスイッチの第2の端子は、前記発光素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記容量素子の第2の電極は、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方と電気的に接続され、
前記発光素子の第1の電極または前記発光素子の第2の電極は、一方が陽極であり他方が陰極であり、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第3の配線に電気的に接続された発光装置であって、
第1の期間を有し、
前記第1の期間において、前記第1のスイッチが導通状態であり、前記第2のスイッチが導通状態であり、前記第3のスイッチが非導通状態であり、かつ、前記第4のスイッチが非導通状態であり、
前記第1の期間において、前記第1のトランジスタの閾値電圧に応じた電圧が前記容量素子に与えられる発光装置。」

(相違点)
本願発明1は、「前記第2のスイッチの第1の端子は、第2の配線と電気的に接続され」るという構成を備えるのに対し、引用発明では、「(本願発明1の第2のスイッチに相当する)第一のスイッチ素子TFT1」の「ソース/ドレイン端子の一端」は、「(配線ではなく)駆動用トランジスタD-TFTのドレイン端子と接続され」ている点。

(2)相違点についての判断
ア 引用発明は、「第一のスイッチ素子TFT1」の「ソース/ドレイン端子の一端」は、「駆動用トランジスタD-TFTのドレイン端子と接続され」ており、本願発明1における「前記第2のスイッチの第1の端子は、第2の配線と電気的に接続され」ているという構成に相当する構成を有していない。また該構成が周知技術であるとも認められない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明とはいえない。

イ 上記相違点に関し、当業者が容易に想到できたかについて検討するに、引用文献1では、電源線VSに、電圧書き込み期間において電圧VS2、発光期間において電圧VS1を供給するようにしており、電圧VS2を供給するための配線を電源線VSと独立して設けることの記載や示唆はない。
そして、本願発明1のごとく、電圧VS2を供給するための配線を電源線VSと独立して設けることには、本願明細書の【0060】に記載されるように、(本願発明1の第1のトランジスタに相当する)駆動用トランジスタD-TFTがノーマリオンである場合、すなわち閾値電圧がマイナスの値を有している場合にも、閾値電圧を加味した電圧を駆動用トランジスタD-TFTのゲートに設定でき、請求人が審判請求書で主張するように表示ムラの低減ができるという効果が認められるところ、引用文献1は、このような効果を示唆するものではない。
また、引用文献2-4も、上記相違点に関連する事項を記載するものではない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1-4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1の「前記第2のスイッチの第1の端子は、第2の配線と電気的に接続され」るという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明5-8について
本願発明5-8は、本願発明1-4のいずれかの発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1-4と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-4に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
以上のとおりであって、本願発明1,2,5は、拒絶査定において引用された引用文献1に記載されたものとはいえないから、原査定の理由1.を維持することはできない。
また、本願発明1-8は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえないから、原査定の理由2.を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2012-156130(P2012-156130)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09G)
P 1 8・ 113- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西島 篤宏斎藤 厚志  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
中塚 直樹
発明の名称 発光装置  

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