• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 F16F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16F
管理番号 1329645
審判番号 不服2016-15840  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-24 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2015- 77139「建設機械」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月16日出願公開、特開2015-203496、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月3日(パリ条約による優先権主張2014年4月11日(EP)欧州特許庁)の出願であって、平成28年1月18日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年4月22日に手続補正がされ、平成28年6月21日付け(発送日:平成28年6月28日)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成28年11月24日付けで前置報告がされ、平成28年12月22日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-12に係る発明は、以下の刊行物1、3-5及び周知技術(刊行物2)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物一覧
1.特開平8-14308号公報
2.特開2009-19642号公報(周知技術を示す文献として原査定で引用)
3.特開2006-349182号公報
4.特開2008-45738号公報
5.米国特許公開第2013/0322965号明細書


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

請求項1-11の補正は、「ダンパ装置」の用途に関し、「路面仕上げ機(35)又は前記チャージャ(38)」の「押し棒(32)を支持」するものである旨を限定するとともに、「逆止弁」について「初期位置に自動的に復帰するときに、閉じて」いる旨を限定することを目的としたものである。

そして、補正後の請求項1冒頭に追加された「建設機械であって、該建設機械は、材料ホッパ(36)と、少なくとも1つのダンパ装置(1)と、を含んで構成される路面仕上げ機(35)又はチャージャ(38)であり、前記ダンパ装置(1)は、前記路面仕上げ機(35)又は前記チャージャ(38)のシャーシ(37)に固定され、前記材料ホッパ(36)の充填のために材料供給車両がドッキング可能な押し棒(32)を支持し、」との事項及び請求項1-11末尾(ダンパ装置)の「建設機械」との事項は、出願当初の特許請求の範囲の請求項15に記載された事項であり、また、補正後の請求項1に追加された「前記逆止弁(12)は、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ(2)内に移動するときに、開いて、前記圧縮性液体(7)が前記2つの絞りポート(11)を通って流れるようにし、前記逆止弁(12)はまた、前記ピストンロッド(4)が前記移動した位置から初期位置に自動的に復帰するときに、閉じて、前記圧縮性液体(7)が前記逆止弁(12)が配置されていない絞りポート(11)のみを通って還流するようにする、」との事項は、当初明細書の段落【0030】に記載された事項であるから、当該補正は新規事項を追加するものではない。

そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

したがって、請求項1-11についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-11に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

また、請求項12の削除は、特許法第17条の2第5項第1号に該当する。


第4 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成28年10月24日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
建設機械であって、該建設機械は、材料ホッパ(36)と、少なくとも1つのダンパ装置(1)と、を含んで構成される路面仕上げ機(35)又はチャージャ(38)であり、
前記ダンパ装置(1)は、前記路面仕上げ機(35)又は前記チャージャ(38)のシャーシ(37)に固定され、前記材料ホッパ(36)の充填のために材料供給車両がドッキング可能な押し棒(32)を支持し、
前記ダンパ装置(1)はまた、一方側にピストンロッド(4)を変位可能に受容するピストン軸受(3)を有し、他方側に底部(5)を備えた、シリンダ(2)を含んで構成され、
前記シリンダ(2)と、前記ピストン軸受(3)と、前記底部(5)と、は圧縮性液体(7)を充填された密閉チャンバ(6)を形成し、前記ピストンロッド(4)は前記チャンバ(6)を第1チャンバ半体(9)と第2チャンバ半体(10)とに分割し、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ(2)に対して変位すると、前記液体(7)が前記第1チャンバ半体(9)と前記第2チャンバ半体(10)との間で移動可能であり、
前記密閉チャンバ(6)が、前記密閉チャンバ(6)の内部における温度起因の圧力変動を補償するよう、可変容積を有し、
前記ピストンロッド(4)が、前記シリンダ(2)の内部で前記ピストン軸受(3)と前記底部(5)との間において変位可能なピストン板(8)を含んで構成され、
前記ピストン板(8)が2つの絞りポート(11)を有し、
前記絞りポート(11)の一方に逆止弁(12)が配置され、
前記逆止弁(12)は、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ(2)内に移動するときに、開いて、前記圧縮性液体(7)が前記2つの絞りポート(11)を通って流れるようにし、
前記逆止弁(12)はまた、前記ピストンロッド(4)が前記移動した位置から初期位置に自動的に復帰するときに、閉じて、前記圧縮性液体(7)が前記逆止弁(12)が配置されていない絞りポート(11)のみを通って還流するようにする、
ことを特徴とする、建設機械。
【請求項2】
前記底部(5)が前記シリンダ(2)の内部に変位可能に配置された隔壁(19)を含んで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記底部(5)が蓋(17)とバネ要素(18)とを含んで構成され、前記バネ要素(18)が前記蓋(17)と前記隔壁(19)との間に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記隔壁(19)が端部(24)とガイド部(23)とを含んで構成され、前記ガイド部(23)が前記端部(24)よりも大きな外径を有することを特徴とする、請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記隔壁(19)が、前記端部(24)と前記ガイド部(23)との間に、前記バネ要素(18)が連結可能な座部(25)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記バネ要素(18)が少なくとも1つの皿バネ(22)を含んで構成されることを特徴とする、請求項3?請求項5のいずれか1つに記載の建設機械。
【請求項7】
前記隔壁(19)が前記シリンダ(2)に対して回転しないように取り付けられることを特徴とする、請求項2?請求項6のいずれか1つに記載の建設機械。
【請求項8】
前記隔壁(19)が前記ダンパ装置(1)の前記チャンバの容積の一部を規定する中空体(30)として形成されることを特徴とする、請求項2?請求項7のいずれか1つに記載の建設機械。
【請求項9】
前記圧縮性液体(7)がシリコーンであることを特徴とする、請求項1?請求項8のいずれか1つに記載の建設機械。
【請求項10】
前記ピストンロッド(4)が前記圧縮性液体(7)により前記ピストン軸受(3)に対して予張力がかけられることを特徴とする、請求項1?請求項9のいずれか1つに記載の建設機械。
【請求項11】
前記シリンダ(2)及び/又は前記底部(5)が、前記チャンバの容積が変化する場合に空気が通過して前記ダンパ装置(1)に出入りできる通気孔(29)を含んで構成されることを特徴とする、請求項1?請求項10のいずれか1つに記載の建設機械。」

第5 刊行物、引用発明等
1.刊行物5について
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0018]This disclosure relates to an automatically adjustable push-roller apparatus for a paving machine. FIG. 1 illustrates an embodiment of a paving machine 100 used in industrial applications to apply asphalt to roadways or other surfaces. The paving machine 100 has a push-roller assembly 200 , a hopper 104 , a operator station 106 , and a screed assembly 112 . The operator station 106 includes a control console 108 used by a machine operator to control operation of the paving machine 100 . During operation of the paving machine 100 , the hopper 104 receives paving material from a dump truck 110 , such as the truck illustrated in FIG. 2 . The paving machine 100 processes the paving material and deposits it onto a work surface through the screed assembly 112.」
(当審仮訳)
「[0018]この開示は、舗装機械のために自動的に調節可能なプッシュローラー装置に関連する。アスファルトを道路あるいは他の表面に敷設するために使われる産業装置の舗装機械100の実施例を図1に図示する。舗装機械100は、プッシュローラーアセンブリ200、ホッパー104、操縦室106及びスクリードアセンブリ112を持っている。操縦室106は舗装機械100の操縦運転をする機械操縦者によって使われる操縦盤108を含む。舗装機械100の操縦の間に、ホッパー104は、図2に図示されたトラックのような、ダンプトラック110から舗装材料を受け取る。舗装機械100は舗装材料を処理し、そしてスクリードアセンブリ112を通して作業表面にそれを蓄積させる。」


「[0019]When transferring paving material from the bed 114 of the dump truck 110 to the paving machine 100 , the dump truck first lines up with the hopper and assumes a proper distance such that its bed is positioned adjacent to and over a material receiving portion of the hopper 104 . This requires the dump truck 110 to back up with the bed 114 full of paving material toward the hopper 104 of the paving machine until the rear tires 111 of the truck contact the push-roller assembly 200 . At that time, the dump truck 110 operator can elevate the bed 114 , such as is illustrated in FIG. 2 , and gradually deposit the paving material into the hopper 104 . Material deposition into the hopper 104 occurs gradually as the machine 100 moves, while pushing the dump truck 110 , along the surface to be paved. The rate at which material is deposited into the hopper 104 depends on the thickness of the layer of material that is deposited by the screed assembly 112 .」
(当審仮訳)
「[0019]舗装材をダンプトラック110のベッド114から舗装機械100へ移すとき、ダンプトラックは最初にホッパーに対して整列し、そして、そのベッドがホッパー104の材料受け部の上方で隣接配置されるよう、適切な距離をとる。これは、トラックの後輪111がプッシュローラーアセンブリ200と接触するまで、舗装機械のホッパー104のための舗装材で満ちているベッド114をダンプトラック110が支持することを要求する。その時、ダンプトラック110のオペレーターは、ベッド114を、図2で図示されるように、上昇させることができ、そして徐々にホッパー104に舗装材を蓄積することができる。ダンプトラック110を押す間に、ホッパー104の中の舗装材の蓄積は、表面に沿った舗装をするよう、機械100の移動を徐々に生じさせる。材料がホッパー104に蓄積される量は、スクリードアセンブリ112によって蓄積される材料の層の厚さに依存する。」

「[0022]The linkage assembly 208 also includes an actuator 228 . The embodiment of the linkage assembly 208 illustrated in FIG. 3 , FIG. 5 , and FIG. 6 shows the actuator 228 as a hydraulic cylinder assembly connected between linkage pivots 220 . Alternatively, an electric motor or other suitable powered mechanism can be used. The illustrated embodiment of the actuator 228 includes a cylinder 230 having a first end 231 and a second end 233 . A plunger 232 is slidably and sealably mounted within a bore of the cylinder 230 .(省略)」
(当審仮訳)
「[0022]リンケージアセンブリ208は、同じくアクチュエータ228を含む。図3、図5及び図6に図示された実施例のリンケージアセンブリ208は、リンケージピボット220の間に連結される水圧式シリンダー組立体としてのアクチュエータ228を示す。代わりに、電気モーターか、あるいは他の適当なパワーで動くメカニズムが使われる得る。図示された実施例のアクチュエータ228は、第一端231と第二端233を有するシリンダー230を含む。プランジャー232は、シリンダー230の内側に摺動可能かつ密閉可能に装着される。」

「[0023]Although the actuator 228 is shown connected between the linkage pivots 220 , alternative connections can also be made. For example, the actuator 228 can be pivotally connected to the support plate 209 instead of the respective linkage pivot 220 . (省略)」
(当審仮訳)
「[0023]アクチュエータ228がリンケーシピボット220の間に連結されるものが示されているものの、代わりの連結も可能である。例えば、アクチュエータ228は、それぞれのリンケージピボット220の代わりに、サポートプレート209に枢着し得る。」

「[0025]FIG. 7 illustrates the chassis 300 of an embodiment of the paving machine 100 with a push-roller assembly 200 attached. The support frame 209 connects to a front end 302 of the chassis 300 such that the linkage assembly 208 can extend and move the rollers 202 away from the chassis. In some embodiments, the support frame 209 is part of the front end 302 of the chassis 300 . (省略)」
(当審仮訳)
「[0025]プッシュローラー200を有する舗装機械100のシャーシ300の実施例が図7に図示されている。リンケージアセンブリ208がローラー202をシャーシから離れるように動かし、そして拡張できるように、サポートフレーム209はシャーシ300のフロントエンド302に結合している。いくつかの実施例では、サポートフレーム209はシャーシ300のフロントエンド302の一部となる。」

したがって、刊行物4には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「舗装機械100であって、該舗装機械100は、ホッパー104と、少なくとも1つのアクチュエータ228と、を含んで構成される舗装機械100であり、
前記アクチュエータ228は、前記舗装機械100のシャーシ300に固定され、前記ホッパー104が舗装材を受けるためにダンプトラック110が接触するプッシュローラーアセンブリ200を支持し、
前記アクチュエータ228はまた、一方側にプランジャー232を摺動可能に受容する第二端233を有し、他方側に第一端231を備えた、シリンダー230を含んで構成された、舗装機械100。」

2.刊行物1、3、4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平8-14308号公報)には、図1-4とともに、以下の事項が記載されている。
「【0008】
【実施例】以下、この発明を図面に示す一実施例にしたがって説明する。図1は、この発明が提供する流体圧シリンダ装置(以下液体を例にとり、液圧シリンダとする)の構成を原理的に示す図で、液圧シリンダ1に対してピストン3と一体のロッド2が貫通している。10はシール部である。ピストン3にはオリフィス3Hが穿設されている。このような液圧シリンダ装置において、この発明は液圧シリンダ1の両端部に比較的小形の体積補償用シリンダ4、5を設置した点に特徴がある。この体積補償用シリンダ4、5は、液圧シリンダ1に穿設されている細孔部1Hの位置に設置され、体積補償用シリンダ4、5内と液圧シリンダ1は連通されている。各体積補償用シリンダ4、5内には、補償用ピストン6、7が嵌挿されていてシリンダ内が仕切られ、液圧シリンダ1と連通しない側は圧縮バネ8、9が挿入されていて、補償用ピストン6、7をそれぞれ付勢している。
【0009】以上の構成において、外力によってピストンロッド2が例えば右方向に移動する(振動する)とピストン3も移動する。この時液体はオリフィス3Hを通過して右側のシリンダ内から左側のシリンダ内に移動するが、オリフィス3Hが細いため抵抗を生じ、ピストン3に抗力が生じ、これがダンパー力となる。また、ピストンロッド2が右方向に移動する際、ピストン3の右側に瞬間的な正の圧力、左側に瞬間的な負の圧力が発生するが、細孔部1Hが細いためピストン3側の圧力変化に対して各体積補償用シリンダ4、5内の圧力は減衰され、補償用ピストン6、7は移動することはない。そこでダンパー機能は維持されることになる。以上ピストンロッド2が右方向に移動した場合の例であるが、左方向に移動した場合も同様である。
【0010】ところが、液圧シリンダ1の温度が変化すると液体体積が変化する。即ち昇温の場合は液体体積は膨脹し、液圧シリンダ1の内圧が上昇する。この時圧力上昇は比較的緩慢であり、液圧シリンダ1の内液はピストン3のオリフィス3Hおよび細孔部1Hを通過して流れ、液圧シリンダ1内から各体積補償用シリンダ4、5内に流入する。この場合各体積補償用シリンダ4、5内の補償用ピストン6、7は圧縮バネ8、9の弾力に抗して変位し液圧を一定に維持させる。温度低下による圧力変化の場合にもこの発明は機能する。
【0011】この発明は以上説明したとおりであるが、発明の特徴を生かした種々の変形実施例を包含するものである。この発明の特徴は液圧シリンダの端部に細孔部を介してシリンダ内と連通する体積補償用シリンダを設置し、温度変化等緩慢な体積変化時にのみ体積補充を行うようにしたものであり、これらを生かした他の実施例を包含する。たとえば図2にその一例を示すように体積補償用シリンダ11を液圧シリンダ1の端面壁に設置することも可能である。12は補償用ピストンであり、13は圧縮バネである。11Nは体積補償用シリンダ11の液圧シリンダ1の端面壁への捩込み部である。あるいは図3と図4にその一例を示すように体積補償用シリンダの一部を液圧シリンダ1の周壁(図3)あるいは端面壁(図4)で兼用させることも可能である。即ち1Mは液圧シリンダ1の周壁あるいは端面壁に穿設したシリンダ用凹部で、この凹部1Mのねじ部にシリンダ用キャップ14ね17がねじ込まれている。15、18は補償用ピストンであり、16、19は圧縮バネである。そしてこれらの作動は上記と同様であり、詳細な説明は省略する。補償用ピストンを付勢する手段としては図示例のようにバネに限定されず、例えばガスを封入して軽量化を図るようにすることも可能である。流体としては油あるいは特殊な水さらには不活性ガス等が利用できる。ただ、液体の場合と気体の場合はダンパー機能が異なり、前者は大きいダンパー機能を必要とする場所に有利であり、後者は小さいダンパー機能を必要とする場所に有利である。また、この発明は振動等が発生しない場所にも使用可能てあることは言うまでもない。この発明はこれらすべてを包含するものである。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3(特開2006-349182号公報)には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
「【0026】
図1では本発明のガスばねは全体として符号50で示されている。ガスばね50は作業シリンダ1を有し、該作業シリンダ1内には作業ピストン2が滑動可能に案内されている。作業ピストン2は作業シリンダ1の内室1aを第1の作業室3と第2の作業室4とに分離している。作業ピストン2にはピストンロッド6が固定されている。このピストンロッド6は外部に対し閉鎖された第2の作業室4を貫通し、シールされて作業シリンダ1の外へ導き出されている。
【0027】
圧力下にあるガス1Mで充たされた作業シリンダ1の内室1a内での作業ピストン2の運動を緩衝できるためには、作業ピストン2に、第1の作業室3を第2の作業室4と接続する絞り孔5が設けられている。しかし、絞り孔5に加えて又は絞り孔5に選択的に少なくとも1つの長手方向溝が作業シリンダ1に構成されていることもできる。
【0028】
ピストンロッド出口側端部1bとは反対側の開放した端部1cにて作業シリンダ1は鉢形の補償ピストン10で閉じられている。補償ピストン10は図示の実施例では、円板状の鉢底10aとピストンロッド出口側端部1bの方向へ鉢底10aから突出するシリンダ区分10bとを有している。内室が補償ピストン10の鉢開口11を形成するシリンダ区分10bは、作業シリンダ1の外周面の上を案内されている。しかも作業シリンダ1はその端部1cにフランジ状の拡大部7を有し、その環状の外周面にはリング溝8が設けられており、このリング溝8にはOリング9が配置されている。作業シリンダ1の端部1cのフランジ状の拡大部7の上では補償ピストン10のシリンダ区分10bが滑動可能にかつOリング9によってシールされて案内されている。
【0029】
作業シリンダ1の内室1aにおける圧力下にあるガス1Mは面A1の上にある補償ピストン10を負荷する。何故ならば作業シリンダ1の自由端部1cに補償ピストン10が接触している場合でもガス1Mは補償ピストン10と作業シリンダ1との間の接触ギャップに侵入するからである。このガス1Mの圧力は補償ピストン10に作業シリンダ1の内室1aを拡大する方向へ向けられた力を発揮する。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物4(特開2008-45738号公報)には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
「【0041】
また、第3シリンダ3の下端部を構成する第3底蓋部材28に空気抜き穴用の貫通孔34を設定することにより、ピストン4のストローク時に第3シリンダ3内の下部空洞部分の体積変化に対応した空気の排出・吸引を確保しつつ、下端部に貫通孔34を設けることで異物の進入をしにくい構造とした。すなわち、第3シリンダ3の最下端部に上記貫通孔を設けることで、いったん入ってしまった水等の異物が当該貫通孔から外に出る構造となっている。」

3.その他の刊行物について
本願優先日前の周知技術について、以下の刊行物2、6及び7がある。

(1)原査定において周知技術を示す文献として引用された刊行物2(特開2009-19642号公報)の段落【0016】には「さらに、上記通路4の途中には、一方室R1から他方室R2へ向かう気体の流れのみを許容する逆止弁13が設けられ、通路5の途中には、他方室R2から一方室R1へ向かう流れのみを許容する逆止弁14が設けられている。したがって、通路4にあっては、緩衝器Dは伸長する、すなわち、シリンダ1からロッド3が突出する作動を行うときのみに気体の通過を許容する一方通行の通路とされ、他方の通路5にあっても、緩衝器Dが収縮する、すなわち、シリンダ1内にロッド3が進入する作動を行うときのみに流体が通過を許容する一方通行の通路をなしている。」と記載されている。

(2)前置報告書において周知技術を示す文献として引用された刊行物6(実願昭48-139461号(実開昭50-83488号)のマイクロフィルム)の第2ページ第2-5行には、「しかも上記ピストンPには、フロント室4側よりバック室5側への非圧縮性流体たとえば作動油の流通は許容するが、その逆の流通は阻止する逆止弁6と、絞り弁7とを内蔵してなり、バック室5内の作動油がピストンPに作用することによってピストンロッドPRに加わる荷重を緩衝するとともにシリンダCの外部に別に設置したすなわち当該ショックアブソーバとは別体な空油変換器CMによってピストンPの復帰を行うようにした点は従来公知である。」と記載されている。

(3)前置報告書において周知技術を示す文献として引用された刊行物7(特開平5-133431号公報)の段落【0007】には、「シリンダ1の中空部内には、第1室7の上半分を残して適宜の粘性の作動油が充填されており、ピストン6は、第3室9から第2室8への作動油の流れを許容するが、逆の流れを阻止する一方向ボール弁18を具備し、一方向ボール弁18のボール18a は、座金10で弁座18b からの脱落が阻止されている。そして、カップ状部材5は、第1室7から第2室8への作動油の流れを許容するが、逆の流れを阻止する一方向ボール弁20を具備し、一方向ボール弁20のボール20a は、カップ状部材5の下面にリベット21で取付けられた係止板片22により弁座20b からの脱落が阻止されている。」と記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「舗装機械100」は、本願発明1における「建設機械」及び「路面仕上げ機(35)」相当し、以下同様に、「ホッパー104」は「材料ホッパ(36)」に、「アクチュエータ228」は「ダンパ装置(1)」に、「シャーシ300」は「シャーシ(37)」に、「ホッパー104が舗装材を受ける」ことは「材料ホッパ(36)の充填」に、「ダンプトラック110」は「材料供給車両」に、「接触する」ことは「ドッキング可能」であることに、「プッシュローラーアセンブリ200」は「押し棒(32)」に、「プランジャー232」は「ピストンロッド(4)」に、「摺動可能」であることは「変位可能」であることに、「第二端233」は「ピストン軸受(3)」に、「第一端231」は「底部(5)」に、「シリンダー230」は「シリンダ(2)」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点と、相違点1及び相違点2があるといえる。

(一致点)
「建設機械であって、該建設機械は、材料ホッパと、少なくとも1つのダンパ装置と、を含んで構成される路面仕上げ機であり、
前記ダンパ装置は、前記路面仕上げ機のシャーシに固定され、前記材料ホッパの充填のために材料供給車両がドッキング可能な押し棒を支持し、
前記ダンパ装置はまた、一方側にピストンロッドを変位可能に受容するピストン軸受を有し、他方側に底部を備えた、シリンダを含んで構成された、建設機械。」

(相違点1)
本願発明1は「前記シリンダ(2)と、前記ピストン軸受(3)と、前記底部(5)と、は圧縮性液体(7)を充填された密閉チャンバ(6)を形成し、前記ピストンロッド(4)は前記チャンバ(6)を第1チャンバ半体(9)と第2チャンバ半体(10)とに分割し、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ(2)に対して変位すると、前記液体(7)が前記第1チャンバ半体(9)と前記第2チャンバ半体(10)との間で移動可能であり、
前記密閉チャンバ(6)が、前記密閉チャンバ(6)の内部における温度起因の圧力変動を補償するよう、可変容積を有し、
前記ピストンロッド(4)が、前記シリンダ(2)の内部で前記ピストン軸受(3)と前記底部(5)との間において変位可能なピストン板(8)を含んで構成され、前記ピストン板(8)が2つの絞りポート(11)を有し、前記絞りポート(11)の一方に逆止弁(12)が配置され、」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記逆止弁(12)は、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ(2)内に移動するときに、開いて、前記圧縮性液体(7)が前記2つの絞りポート(11)を通って流れるようにし、
前記逆止弁(12)はまた、前記ピストンロッド(4)が前記移動した位置から初期位置に自動的に復帰するときに、閉じて、前記圧縮性液体(7)が前記逆止弁(12)が配置されていない絞りポート(11)のみを通って還流するようにする」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討すると、相違点2に係る本願発明1の構成は、上記刊行物1、3及び4には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
特に、刊行物6及び刊行物7に記載されたショックアブソーバ及びダンパは、本願発明のダンパ装置とは用途が異なる上に、ピストンロッドが初期位置(伸びた状態)に復帰するときに逆止弁が「開く」構成となっており、相違点2に係る本願発明1の構成(ピストンロッドが初期位置に復帰するときに逆止弁が「閉じる」構成)と異なっている。

そして、本願発明1は、相違点2に係る本願発明1の構成により、「ピストンロッド4は、ピストンロッド4のピストン板8がピストン軸受3に当接する初期位置へ、減速され減衰されて復帰することができる」(本願明細書段落【0030】参照)ことから、「トラックのドッキング中、もしくはトラックが前方に押し出されているときに、路面仕上げ機又はチャージャが地上で突然後方に位置ずれすることを防止する」(本願明細書段落【0003】参照)という格別顕著な効果を奏すると認められる。

そうであれば、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとは認められない。

したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、刊行物1、3及び4に記載された技術的事項並びに上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-11について
本願発明2-11は、本願発明1をさらに限定的に減縮したものであって、相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、刊行物1、3及び4に記載された技術的事項並びに上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
(特許法第29条第2項について)
審判請求時の補正により、本願発明1-11は、上記第6 1.(1)の相違点2に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された刊行物1、3?5及び刊行物2に記載された周知技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2015-77139(P2015-77139)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16F)
P 1 8・ 572- WY (F16F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 保田 亨介  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 小関 峰夫
内田 博之
発明の名称 建設機械  
代理人 河村 英文  
代理人 西山 春之  
代理人 関谷 充司  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 小川 護晃  
代理人 有原 幸一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ