• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1329667
審判番号 不服2016-17236  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-18 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2014-537076「1つまたは複数のオンボードセンサーに基づいてモバイルデバイスのワイヤレス信号ベース測位能力に影響を及ぼすための技法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月25日国際公開、WO2013/058928、平成27年 1月15日国内公表、特表2015-501422、請求項の数(40)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、2012年9月20日(パリ条約による優先権主張 2011年10月20日(以下、「優先日」という。)、米国、2012年9月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月27日に翻訳文が提出され、平成27年3月31日付けで拒絶理由が通知され、平成27年6月26日付けで手続補正がなされ、平成27年11月11日付けで、最後の拒絶理由が通知され、平成28年2月17日付けで手続補正がなされ、平成28年7月8日付けで、平成28年2月17日付けの手続補正について、補正却下の決定がなされ、同日付けで、拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年11月18日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
理由(進歩性)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1-40
・引用文献等 1-4
<引用文献等一覧>
1.特開昭64-53180号公報
2.特開平4-121618号公報(周知技術を示す文献)
3.特開昭63-108285号公報(周知技術を示す文献)
4.特開平8-304090号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1?40に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明40」という。)は、平成28年11月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?40に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
モバイルデバイス上で、
前記モバイルデバイスによって受信されたワイヤレス測位信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第1の測位パラメータを判断することと、
前記モバイルデバイスのセンサーによって生成された信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第2の測位パラメータを判断することと、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の指示に影響を及ぼすこと、ここにおいて、不確実性の前記指示に前記影響を及ぼすことは、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された複数の誤り状態に少なくとも基づいて、不確実性のより高いレベルまたはより低いレベルを示すことを含む、と
を備え、前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に前記影響を及ぼす際に使用するのに十分に信頼できること、を検証することを含む、方法。
【請求項2】
前記モバイルデバイス上で、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの位置を推定することと、
不確実性の前記指示に少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの前記推定された位置に関する位置不確実性の指示に影響を及ぼすことと
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モバイルデバイス上で、
不確実性の前記指示または位置不確実性の前記指示のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいてワイヤレス信号ベース測位機能に影響を及ぼすことをさらに備える、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
不確実性の前記指示に影響を及ぼすことが、
前記第1の測位パラメータと前記第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて差分値を判断することと、
前記差分値としきい値との比較に少なくとも部分的に基づいて不確実性の前記指示に影響を及ぼすことと
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の測位パラメータが、前記ワイヤレス測位信号の送信機から前記モバイルデバイスまでの推定擬似距離に少なくとも部分的に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の測位パラメータが前記モバイルデバイスの推定速度を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが、前記モバイルデバイスの推定速度測定値に少なくとも部分的に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記モバイルデバイス上で、
前記モバイルデバイスの動きモードを判断することをさらに備え、
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記モバイルデバイスの前記動きモードに少なくとも部分的に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記センサーが慣性センサーまたは環境センサーのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ワイヤレス測位信号が衛星測位システム(SPS)信号を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
モバイルデバイスにおいて使用する装置であって、
前記モバイルデバイスによって受信されたワイヤレス測位信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第1の測位パラメータを判断するための手段と、
前記モバイルデバイスのセンサーによって生成された信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第2の測位パラメータを判断するための手段と、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の指示に影響を及ぼすための手段、ここにおいて、不確実性の前記指示に前記影響を及ぼすための手段は、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された複数の誤り状態に少なくとも基づいて、不確実性のより高いレベルまたはより低いレベルを示すための手段を含む、と
を備え、前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に前記影響を及ぼす際に使用するのに十分に信頼できること、を検証するための手段を含む、装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの位置を推定するための手段と、
不確実性の前記指示に少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの前記推定された位置に関する位置不確実性の指示に影響を及ぼすための手段と
をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
不確実性の前記指示または位置不確実性の前記指示のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいてワイヤレス信号ベース測位機能に影響を及ぼすための手段をさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて差分値を判断するための手段と、
前記差分値としきい値との比較に少なくとも部分的に基づいて不確実性の前記指示に影響を及ぼすための手段と
をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータが、前記ワイヤレス測位信号の送信機から前記モバイルデバイスまでの推定擬似距離に少なくとも部分的に基づく、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータが前記モバイルデバイスの推定速度を備える、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが、前記モバイルデバイスの推定速度測定値に少なくとも部分的に基づく、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記モバイルデバイスの動きモードを判断するための手段をさらに備え、
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記モバイルデバイスの前記動きモードに少なくとも部分的に基づく、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記センサーが慣性センサーまたは環境センサーのうちの少なくとも1つを備える、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
前記ワイヤレス測位信号が衛星測位システム(SPS)信号を備える、請求項11に記載の装置。
【請求項21】
通信インターフェースと、
センサーと、
前記通信インターフェースによって受信されたワイヤレス測位信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第1の測位パラメータを判断することと、
前記センサーによって生成された信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第2の測位パラメータを判断することと、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の指示に影響を及ぼすこと、ここにおいて、不確実性の前記指示に影響を及ぼすために、1つまたは複数の処理ユニットがさらに、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された複数の誤り状態に少なくとも基づいて、不確実性のより高いレベルまたはより低いレベルを示す、と
を行うための前記1つまたは複数の処理ユニットと
を備え、前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に影響を及ぼすために使用するのに十分に信頼できること、を検証するための前記1つまたは複数の処理ユニットを含む、モバイルデバイス。
【請求項22】
前記1つまたは複数の処理ユニットがさらに、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの位置を推定することと、
不確実性の前記指示に少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの前記推定された位置に関する位置不確実性の指示に影響を及ぼすことと を行う、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項23】
前記1つまたは複数の処理ユニットがさらに、
不確実性の前記指示または位置不確実性の前記指示のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいてワイヤレス信号ベース測位機能に影響を及ぼす、請求項22に記載のモバイルデバイス。
【請求項24】
前記1つまたは複数の処理ユニットがさらに、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて差分値を判断することと、
前記差分値としきい値との比較に少なくとも部分的に基づいて不確実性の前記指示に影響を及ぼすことと
を行う、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項25】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータが、前記ワイヤレス測位信号の送信機から前記モバイルデバイスまでの推定擬似距離に少なくとも部分的に基づく、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項26】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータが前記モバイルデバイスの推定速度を備える、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項27】
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが、前記モバイルデバイスの推定速度測定値に少なくとも部分的に基づく、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項28】
前記1つまたは複数の処理ユニットがさらに、
前記モバイルデバイスの動きモードを判断し、
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記モバイルデバイスの前記動きモードに少なくとも部分的に基づく、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項29】
前記センサーが慣性センサーまたは環境センサーのうちの少なくとも1つを備える、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項30】
前記ワイヤレス測位信号が衛星測位システム(SPS)信号を備える、請求項21に記載のモバイルデバイス。
【請求項31】
モバイルデバイスによって受信されたワイヤレス測位信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第1の測位パラメータを判断することと、
前記モバイルデバイスのセンサーによって生成された信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第2の測位パラメータを判断することと、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の指示に影響を及ぼすこと、ここにおいて、不確実性の前記指示に影響を及ぼすために、前記モバイルデバイスがさらに、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された複数の誤り状態に少なくとも基づいて、不確実性のより高いレベルまたはより低いレベルを示す、と
を行うための、前記モバイルデバイスの1つまたは複数の処理ユニットによって実行可能なコンピュータ実装可能命令を記憶しており、前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に影響を及ぼすために使用するのに十分に信頼できること、を検証することを含む、非一時的コンピュータ可読媒体
を備える物品。
【請求項32】
前記コンピュータ実装可能命令が、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの位置を推定することと、
不確実性の前記指示に少なくとも部分的に基づいて前記モバイルデバイスの前記推定された位置に関する位置不確実性の指示に影響を及ぼすことと
を行うための、前記1つまたは複数の処理ユニットによってさらに実行可能である、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記コンピュータ実装可能命令が、
不確実性の前記指示または位置不確実性の前記指示のうちの少なくとも1つに少なくとも部分的に基づいてワイヤレス信号ベース測位機能に影響を及ぼすことを行うための、前記1つまたは複数の処理ユニットによってさらに実行可能である、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記コンピュータ実装可能命令が、
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて差分値を判断することと、
前記差分値としきい値との比較に少なくとも部分的に基づいて不確実性の前記指示に影響を及ぼすことと
を行うための、前記1つまたは複数の処理ユニットによってさらに実行可能である、請求項31に記載の物品。
【請求項35】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータが、前記ワイヤレス測位信号の送信機から前記モバイルデバイスまでの推定擬似距離に少なくとも部分的に基づく、請求項31に記載の物品。
【請求項36】
前記1つまたは複数の第1の測位パラメータが前記モバイルデバイスの推定速度を備える、請求項31に記載の物品。
【請求項37】
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが、前記モバイルデバイスの推定速度測定値に少なくとも部分的に基づく、請求項31に記載の物品。
【請求項38】
前記コンピュータ実装可能命令が、
前記モバイルデバイスの動きモードを判断することを行うための、前記1つまたは複数の処理ユニットによってさらに実行可能であり、
前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記モバイルデバイスの前記動きモードに少なくとも部分的に基づく、請求項31に記載の物品。
【請求項39】
前記センサーが慣性センサーまたは環境センサーのうちの少なくとも1つを備える、請求項31に記載の物品。
【請求項40】
前記ワイヤレス測位信号が衛星測位システム(SPS)信号を備える、請求項31に記載の物品。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭64-53180号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「[産業上の利用分野]
この発明は、・・・(中略)・・・また、この発明は、GPS機能部と自立型機能部とを併用したものにおいて、GPS機能部が作用しているときの移動体の現在位置の誤差の発生を防止することができるようにされたGPS航法装置に関するものである。

[従来の技術]
船舶、航空機、自動車等の各種の移動体に対して、複数個の人工衛星から電波を送信して、その現在位置や移動速度等を確認したり決定したりするために、GPS測位装置が有用であることが注目されてきている。ここで、GPS測位装置とは、全世界測位システム(Grobal Positioning System)に属する複数個の人工衛星からの電波を受信して、移動体の現在位置を知ることができるようにされたものである。」(第2頁左上欄第7行?同頁右上欄第12行)

(イ)「いま、時点t0においてGPS機能部が選択されたものとする。このときには、移動体は、GPS用アンテナ(81)から衛星電波を受信しながら移動経路上を移動することになるが、例えば、高層のビルが障害物として存在しているものとすると、対象の衛星からの電波を受信することができなかったり、または、他の物体に反射された電波のようなノイズを受信したりして、移動体の現在位置の表示に誤差が含まれてしまうことがある。即ち、第9図において、時間帯t1-t2、t3-t4およびt5-t6で認められるように、移動体がその移動経路から大幅に逸脱してしまったように見えることがあり、このような現象はジャンプ現象と呼ばれている。そして、このジャンプ現象のために、移動体の操作者がその現在位置を誤認して対処の仕方を誤り、重大な事故を誘発する恐れがある。」(第3頁左下欄第5行?同頁右下欄第1行)

(ウ)「また、GPS機能部が選択されているときに、ある時点でのGPSデータが対応の時点における自立型データを超えているときには、前記ある時点で得られたGPSデータを無視する機能を有するようにされたGPS航法装置を得ることをも目的とする。」(第4頁左上欄第4?9行)

(エ)「また、この発明においては、GPS機能部が選択されていて、ある時点でのGPSデータが対応時点における自立型データを超えているときには、前記ある時点で得られたGPSデータを無視するようにされる。」(第4頁左下欄第11?15行)

(オ)「第4図は、この発明の他の実施例であるGPS航法装置を示すブロック図である。この第4図において、(41)は衛星電波を受信するためのGPS用アンテナであって、このGPS用アンテナ(41)の出力側はGPS受信部(42)に接続されている。(43)は方位センサ、(44)は距離センサであり、これらは、GPS受信部(42)の出力側とともに、位置検出装置(45)に接続されている。そして、この位置検出装置(45)の出力側はデータ処理装置(46)に接続されており、また、地図データ記憶装置(47)および表示装置(48)が前記データ処理装置(46)に接続されている。更に、このデータ処理装置(46)には後述される機能を有するコンパレータ(46A)が含まれており、GPSデータ記憶装置(46B)および自立型データ記憶装置(46C)が前記データ処理装置(46)に接続されている。」(第6頁右下欄第13行?第7頁左上欄第8行)

(カ)「第5図は、上記他の実施例の動作の仕方を説明するためのフローチャート図であり、また、第6図は、上記他の実施例の動作例示図である。なお、この第6図において、前記第9図と同一の符号が付されているものは、同一または相当のものを示すものである。
次に、第4図に示した上記他の実施例の動作について、第5図および第6図をも適宜に参照しながら説明する。車両のような移動体の操作者は、例えば、キーボード(図示されない)上のスタートキーを押すことにより、上記他の実施例に係るGPS航法装置を起動させる。ここで第5図をも参照すると、移動体の現在位置は概略的に知られているものとして、この現在位置に対応する所要の地図データが地図データ記憶装置(47)から取り出されて(S50)、データ処理装置(46)を介して表示装置(48)に表示される(S51)。そして、衛星からの電波が、衛星データとしてGPS用アンテナ(41)で受信されて(S52)、位置検出装置(45)およびデータ処理装置(46)により適当な処理が施されて、自らの現在位置が算出される(S53)とともに、その移動速度や加速度が算出される(S54)。次に、方位センサ(43)および距離センサ(44)から取り込まれた所要のデータに基づいて、自立型機能部による自らの移動速度や加速度が算出される(S55)。なお、ステップ(S54)でのデータはGPSデータ記憶装置(46B)に一時的に記憶され、また、ステップ(S55)でのデータは自立型データ記憶装置(46C)に一時的に記憶される。そして、ある時点におけるGPSデータと、これと同時点またはその直前に得られた自立型データとの間で差がとられて、その結果が所定の限度値の範囲内に入るか否かの判定がコンパレータ(46A)によってなされる(S56)。そして、その判定の結果がYESであったときには、衛星データであるGPSデータに基づいて自らの現在位置の表示をして(S57)、ステップ(S51)に戻る。これに対して、その判定の結果がNOであったときには、いわゆる自立型データに基づいて自らの現在位置の表示をして(S58)、ステップ(S51)に戻ることになる。ここで第6図をも参照すると、時間帯t1-t2、t3-t4およびt5-t6において、第5図のステップ(S56)での判定の結果がNOであったことから、GPS機能部からのデータは無視され、自立型機能部からのデータが選択されて、これによる自らの現在位置が表示されることになる。このために、従来例におけるジャンプ現象の発生は確実に防止されることになり、現在位置の誤認の結果としての重大な事故の発生も未然に防止されるものである。」(第7頁左上欄第9行?同頁左下欄第17行)

(キ)「また、この発明のGPS航法装置によれば、GPS機能部が選択されていて、ある時点でのGPSデータが同時またはその直前に得られた自立型データを超えているときには、前記ある時点で得られたGPSデータを無視するようにされるものであるから、いわゆるジャンプ現象の発生は確実に防止されるため、このジャンプ現象に基づく現在位置の誤認の結果としての重大な事故の発生も未然に防止されるという効果が奏せられるものである。」(第7頁右下欄第11?20行)」

イ 上記「ア」「(ア)」より、「移動体における、GPS機能部と自立型機能部とを併用したGPS航法装置」との技術事項を読み取ることができる。
ウ 上記「ア」「(オ)」より、「衛星電波を受信するためのGPS用アンテナ、このGPS用アンテナ(41)の出力側に接続されているGPS受信部(42)、GPS受信部(42)の出力側とともに、位置検出装置(45)に接続されている方位センサ(43)、距離センサ(44)、そして、この位置検出装置(45)の出力側に接続されているデータ処理装置(46)、また、前記データ処理装置(46)に接続されている地図データ記憶装置(47)および表示装置(48)を含み、更に、このデータ処理装置(46)にはコンパレータ(46A)が含まれており、GPSデータ記憶装置(46B)および自立型データ記憶装置(46C)が前記データ処理装置(46)に接続されている、GPS航法装置」との技術事項を読み取ることができる。
エ 引用文献1の図5には、「S56」に「|衛星データ/車速又は加速度-自立型データ/車速又は加速度|<限度値か?」(改行を「/」と表記した。)と記載されている。よって、図5より、ステップ(S56)における判定は、「|衛星データの車速又は加速度-自立型データの車速又は加速度|<限度値か?」であるとの技術事項を読み取ることができる。

オ よって、上記「ア」「(カ)」及び「イ」?「エ」より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「移動体における、GPS機能部と自立型機能部とを併用したGPS航法装置であって、
GPS航法装置は、衛星電波を受信するためのGPS用アンテナ、このGPS用アンテナ(41)の出力側に接続されているGPS受信部(42)、GPS受信部(42)の出力側とともに、位置検出装置(45)に接続されている方位センサ(43)、距離センサ(44)、そして、この位置検出装置(45)の出力側に接続されているデータ処理装置(46)、また、前記データ処理装置(46)に接続されている地図データ記憶装置(47)および表示装置(48)を含み、更に、このデータ処理装置(46)にはコンパレータ(46A)が含まれており、GPSデータ記憶装置(46B)および自立型データ記憶装置(46C)が前記データ処理装置(46)に接続されており、
移動体の現在位置に対応する所要の地図データが、データ処理装置(46)を介して表示装置(48)に表示され(S51)、そして、GPS航法装置衛星からの電波が、衛星データとしてGPS用アンテナ(41)で受信されて(S52)、位置検出装置(45)およびデータ処理装置(46)により適当な処理が施されて、自らの現在位置が算出される(S53)とともに、その移動速度や加速度が算出され(S54)、次に、方位センサ(43)および距離センサ(44)から取り込まれた所要のデータに基づいて、自立型機能部による自らの移動速度や加速度が算出される(S55)が、ステップ(S54)でのデータはGPSデータ記憶装置(46B)に一時的に記憶され、また、ステップ(S55)でのデータは自立型データ記憶装置(46C)に一時的に記憶され、そして、ある時点におけるGPSデータと、これと同時点またはその直前に得られた自立型データとの間で差がとられて、その結果が所定の限度値の範囲内に入るか否かの判定がコンパレータ(46A)によってなされ(S56)、該判定は、「|衛星データの車速又は加速度-自立型データの車速又は加速度|<限度値か?」であり、そして、その判定の結果がYESであったときには、衛星データであるGPSデータに基づいて自らの現在位置の表示をして(S57)、ステップ(S51)に戻るが、これに対して、その判定の結果がNOであったときには、いわゆる自立型データに基づいて自らの現在位置の表示をして(S58)、ステップ(S51)に戻ることになり、ステップ(S56)での判定の結果がNOであったことから、GPS機能部からのデータは無視され、自立型機能部からのデータが選択されて、これによる自らの現在位置が表示されることになり、このために、従来例におけるジャンプ現象の発生は確実に防止される、
GPS航法装置。」

2 引用文献2について
原査定において、周知技術を示す文献として引用された、引用文献2(特開平4-121618号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「また、自立航法に使用するセンサは種々の誤差を有している。
例えば、地磁気センサは車体の着磁などによって乱れやすい。ジャイロは温度変化により測定値が変化する。車速センサはスリップにより誤差が発生する。しかも、これらのセンサは独立で、かつその測定値を互いに補正する手段がないため、センサの誤差補正方法に課題があった。」(第3頁右下欄第5?12行)

イ 「3個以上のGPS衛星が可視範囲にあり、GPS受信装置1による測位が可能かどうか調べる(S12)。可能なときは、両者からデータの取り込みを行う(S13)。GSP信号が受信不可の場合は、自立航法システムのセンサよりデータを取り込み(S20)、得られた距離・回転角度・方位情報を出力する(S22)。さらに、いずれか一方の測定値が直前の測定値と比較して、システムで決められた一定量を越えて変化しているかどうかで、使用可否を判断し(S14,S15)、変化している場合には、その測定値を偽と判定し、もう一方のセンサ出力データを使用してナビゲーションを行う(S20,S22)。両者の測定値ともシステムで決められた一定値以内であればいずれかの測定値を選択するか、両者の平均を計算してナビゲーションを行う(S16)。」(第8頁右上欄第19行?同頁左下欄16行)

3 引用文献3について
原査定において、周知技術を示す文献として引用された、引用文献3(特開昭63-108285号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「例えば、車速が比較的大きいとき(例えば、80km/h以上)、車両進行方位の検出は、磁気センサで検出したよりも電波航法装置で検出した方がより正確であることが実証されている。にも拘らず、従来は、車両進行方位は、専ら推測航法装置に備えた方位センサでのみ検出されている。」(第2頁左上欄第1?6行)

イ 「前記衛星航法装置1と前記推測航法装置2の出力は、信頼性判定装置6に入力される。
信頼性判定装置6は、両装置1,2からの入力信号の各値について信頼性大なるものを判定する装置であり、信頼性大なる方の計測結果θ,υ,x,yを出力する。ただし、本例では、信頼性の判定は、方位θG,θIのみについて行うこととし、車速は推測航法装置2からの入力υIをそのまま出力する。又、位置x,yは、常時は衛星航法装置1で求めた値xG,yGを出力し、衛星航法装置1からの入力が得られない場合に限って推測航法装置2で求めた値xI,yIを出力するものとする。
方位に関しての信頼性の判定は、車速υIによって判定され、車速υIが80km/h以下の場合には推測航法装置2からの入力θIを出力し、車速υIが80km/hを越える場合には、衛星航法装置1からの入力θGを出力する。車速80km/hを判定基準に用いたのは、本例では、第2図に示すように、車速80km/hを境として、両誤差εG,εIの大小関係が逆転するからである。判定基準値は本例では80km/hであるが、この値は方位検出装置4の構成及び計測方式について異なる値となることは勿論である。」(第3頁左上欄第1行?同頁右上欄4行)

4 引用文献4について
原査定において、周知技術を示す文献として引用された、引用文献4(特開平8-304090号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0035】さらに、先の目的を達成するために発明された(請求項3記載の)第3の解決手段としてのカーナビゲーション装置は、上述した第1の解決手段及び第2の解決手段のうち何れか1つのカーナビゲーション装置であって、前記補正後の角速度から前記算出手段によって算出された前記方位の値、及びGPS測位系等の前記角速度センサ以外の測位系や地図データ等に基づくその他の手段により得られた他の方位データとの2つの方位値を受け、これらの2つの方位値を比較する又はこれらの方位値の差を求める比較手段と、前記角速度の正負及び大小等によって前記車両が右折したか又は左折したかを判定等して前記車両の曲折を検出する検出手段と、この検出手段の検出に応じて前記車両の右折若しくは左折の際に又はその後に前記比較手段の比較結果等に基づく前記第1の補正係数又は前記第2の補正係数の調整を行う調整手段とを備えたことを特徴とするものである。」

イ 「【0040】第3の解決手段のカーナビゲーション装置にあっては、角速度センサに依拠する方位値とその他の手段に依拠する他の方位値とが比較手段によって比較等される。これによって、他の方位値の方が信頼性の高い状況では、この他の方位値を基準として、角速度センサに依拠する方位値を較正することが可能となり、さらには角速度センサの感度の変動を推し量ることも可能となる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「移動体」は、「車速」を算出していることからみて、「自動車等」(上記「第4」「1」「ア」「(ア)」「[従来の技術]」参照。)であることは明らかである。よって、引用発明における「移動体」と、本願発明1における「モバイルデバイス」とは、「移動可能な物体」の点で共通する。

イ 引用発明において、「GPS航法装置衛星からの電波が、衛星データとしてGPS用アンテナ(41)で受信されて(S52)、位置検出装置(45)およびデータ処理装置(46)により適当な処理が施されて、自らの現在位置が算出される(S53)とともに、その移動速度や加速度が算出され(S54)」ることと、本願発明1における「モバイルデバイスによって受信されたワイヤレス測位信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第1の測位パラメータを判断すること」とは、「移動可能な物体によって受信されたワイヤレス測位信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第1の測位パラメータを判断すること」の点で共通する。

ウ 引用発明において、「方位センサ(43)および距離センサ(44)から取り込まれた所要のデータに基づいて、自立型機能部による自らの移動速度や加速度が算出される(S55)」ことと、本願発明1における「前記モバイルデバイスのセンサーによって生成された信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第2の測位パラメータを判断すること」とは、「前記移動可能な物体のセンサーによって生成された信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第2の測位パラメータを判断すること」の点で共通する。

エ 引用発明において、「ある時点におけるGPSデータと、これと同時点またはその直前に得られた自立型データとの間で差がとられて、その結果が所定の限度値の範囲内に入るか否かの判定がコンパレータ(46A)によってなされ(S56)、該判定は、「|衛星データの車速又は加速度-自立型データの車速又は加速度|<限度値か?」であり、そして、その判定の結果がYESであったときには、衛星データであるGPSデータに基づいて自らの現在位置の表示をして(S57)、ステップ(S51)に戻るが、これに対して、その判定の結果がNOであったときには、いわゆる自立型データに基づいて自らの現在位置の表示をして(S58)、ステップ(S51)に戻ることになり、ステップ(S56)での判定の結果がNOであったことから、GPS機能部からのデータは無視され、自立型機能部からのデータが選択され」ることと、本願発明1における「前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の指示に影響を及ぼすこと、ここにおいて、不確実性の前記指示に前記影響を及ぼすことは、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された複数の誤り状態に少なくとも基づいて、不確実性のより高いレベルまたはより低いレベルを示すことを含む」こととは、「前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータの取り扱いに影響を及ぼすこと、ここにおいて、取り扱いに影響を及ぼすことは、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された1つまたは複数の誤り状態に少なくとも基づいて」行われる点で共通するといえる。

オ 引用発明におけるステップ(S51)?(S58)は、GPS航法装置において実行される方法であるから、引用発明は、本願発明1と同様に、「方法」としても捉えることができる。

よって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「移動可能な物体上で、
前記移動可能な物体によって受信されたワイヤレス測位信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第1の測位パラメータを判断することと、
前記移動可能な物体のセンサーによって生成された信号に少なくとも部分的に基づいて1つまたは複数の第2の測位パラメータを判断することと、 前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータの取り扱いに影響を及ぼすこと、ここにおいて、取り扱いに影響を及ぼすことは、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された1つまたは複数の誤り状態に少なくとも基づいて行われる、方法。」

(相違点1)
本願発明1では、移動可能な物体が「モバイルデバイス」であるのに対し、引用発明では、「移動体」である点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに少なくとも部分的に基づいて少なくとも前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の指示に影響を及ぼすこと、ここにおいて、不確実性の前記指示に前記影響を及ぼすことは、前記1つまたは複数の第1の測位パラメータと前記1つまたは複数の第2の測位パラメータとに基づいて検出された複数の誤り状態に少なくとも基づいて、不確実性のより高いレベルまたはより低いレベルを示すことを含む」のに対し、
引用発明では、「|衛星データの車速又は加速度-自立型データの車速又は加速度|<限度値か?」の判定がなされ、「その判定の結果がYESであったときには、衛星データであるGPSデータに基づいて自らの現在位置の表示をして(S57)、ステップ(S51)に戻るが、これに対して、その判定の結果がNOであったときには、いわゆる自立型データに基づいて自らの現在位置の表示をして(S58)、ステップ(S51)に戻ることになり」、「GPS機能部からのデータは無視され」ることになるものの、「GPS航法装置衛星からの電波を受信し、適当な処理を施して算出される、自らの移動速度や加速度」(以下、「GPS機能部で算出される自らの移動速度や加速度」という。)について、不確実性の指示に影響を及ぼすことも、不確実性の前記指示に前記影響を及ぼすことが、複数の誤り状態に少なくとも基づいて、不確実性のより高いレベルまたはより低いレベルを示すことを含むことも、示されていない点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に前記影響を及ぼす際に使用するのに十分に信頼できること、を検証することを含む」のに対し、引用発明では、「位置検出装置(45)に接続されている」「方位センサ(43)および距離センサ(44)から取り込まれた所要のデータに基づいて、自立型機能部による自らの移動速度や加速度が算出される(S55)」が、それらの精度が「ある時点におけるGPSデータと、これと同時点またはその直前に得られた自立型データとの間で差がとられて、その結果が所定の限度値の範囲内に入るか否かの判定」に使用するのに十分に信頼できること、を検証することは、示されていない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記「(1)」「(相違点3)」について検討する。
引用文献2?4には、GPS測位により算出される自らの移動速度や加速度と、自立型位置検知手段によって算出される自らの移動速度や加速度との差をとり、その結果が所定の限度値の範囲内に入るか否かを判定するに際し、自立型位置検知手段によって算出される自らの移動速度や加速度が、上記判定に使用するのに十分に信頼できること、を検証すること、つまり、本願発明1でいう、「前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に前記影響を及ぼす際に使用するのに十分に信頼できること、を検証することを含む」ことは記載されていない。また、上記相違点3に係る本願発明1の構成が周知であるともいえない。
よって、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?10について
本願発明2?10は、本願発明1に所定の限定を付した発明であるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、本願発明2?10は、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明11?20について
本願発明11は、本願発明1に対応する「装置」の発明であり、引用発明との相違点は、上記「1」「(2)対比」に記載した(相違点1)?(相違点3)と同様のものであるから、本願発明11は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明12?20は、本願発明11に所定の限定を付した発明であるから、同様の理由により、本願発明12?20は、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明21?30について
本願発明21は、本願発明1に対応する「モバイルデバイス」の発明であり、引用発明との相違点は、上記「1」「(1)対比」に記載した(相違点1)?(相違点3)と同様のものであるから、本願発明21は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明22?30は、本願発明21に限定を付した発明であるから、同様の理由により、本願発明22?30は、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明31?40について
本願発明31は、本願発明1に対応する「非一時的コンピュータ可読媒体を備える物品」の発明であり、引用発明との相違点は、上記「1」「(1)対比」に記載した(相違点1)?(相違点3)と同様のものであるから、本願発明31は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明32?40は、本願発明31に限定を付した発明であるから、同様の理由により、本願発明32?40は、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
ア 本願発明1、11、21、31については、
(ア)本願発明1は、「前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に前記影響を及ぼす際に使用するのに十分に信頼できることを含む」ものであり、
(イ)本願発明11は、「前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に前記影響を及ぼす際に使用するのに十分に信頼できること、を検証するための手段を含む」ものであり、
(ウ)本願発明21は、「前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に影響を及ぼすために使用するのに十分に信頼できること、を検証するための前記1つまたは複数の処理ユニットを含む」ものであり、
(エ)本願発明31は、「前記1つまたは複数の第2の測位パラメータが前記1つまたは複数の第1の測位パラメータに関する不確実性の前記指示に影響を及ぼすために使用するのに十分に信頼できること、を検証することを含む」ものである。

イ よって、本願発明1、11、21、31と引用発明は、少なくとも上記「第5」「1」「(1)対比」に記載した(相違点3)の点で相違するものとなったから、上記「第5」「1」「(2)判断」にて述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ また、本願発明2?10、12?20、22?30、32?40は、それぞれ、本願発明1、11、21、31に所定の限定を付した発明であるから、同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術(引用文献2?4)に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ したがって、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?4に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2014-537076(P2014-537076)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 関根 洋之
清水 稔
発明の名称 1つまたは複数のオンボードセンサーに基づいてモバイルデバイスのワイヤレス信号ベース測位能力に影響を及ぼすための技法  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ