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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1329674
審判番号 不服2015-17058  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-16 
確定日 2017-07-12 
事件の表示 特願2011-197398「不揮発性半導体記憶装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日出願公開、特開2013- 58691、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月9日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 9月25日 拒絶理由通知(起案日)
平成26年11月25日 意見書及び補正書の提出
平成27年 1月16日 拒絶理由通知(起案日)
平成27年 3月12日 意見書及び補正書の提出
平成27年 6月12日 拒絶査定(起案日)
平成27年 9月16日 審判請求
平成28年10月 6日 当審拒絶理由通知(起案日)
平成28年12月12日 意見書及び補正書の提出
平成29年 2月24日 最後の当審拒絶理由通知(起案日)
平成29年 4月25日 意見書及び補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成29年4月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】
第1配線と、
第2配線と、
一端を前記第1配線に、他端を前記第2配線にそれぞれ電気的に接続され、フィラメント型抵抗変化素子を備えたメモリセルと
を具備し、
前記メモリセルは、
抵抗値の変化で情報を記憶する抵抗変化層と、
前記抵抗変化層の両端にそれぞれ接続され、貴金属を含まない第1電極及び第2電極と
を備え、
前記第1電極は、
第1外側電極と、
前記第1外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接し、窒化チタン又は窒化タンタルである第1界面電極と
を含み、
前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり、
前記第1界面電極の抵抗率は、前記第1外側電極の抵抗率よりも高く、
前記第1電極の抵抗値は、前記抵抗変化層の低抵抗状態の抵抗値よりも低く、
前記第2電極は、
第2外側電極と、
前記第2外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接し、窒化チタン又は窒化タンタルである第2界面電極と
を含み、
前記第2界面電極の膜厚は、前記第2外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり、
前記第2界面電極の抵抗率は、前記第2外側電極の抵抗率よりも高く、
前記第2電極の抵抗値は、前記抵抗変化層の低抵抗状態の抵抗値よりも低い
不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
前記抵抗変化層は、前記第1界面電極および前記第2界面電極と比較して、酸化され易い
不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
前記第1界面電極および前記第2界面電極は、2原子層以上、20原子層以下である
不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
前記第1外側電極および前記第2外側電極は、金属の膜であり、
前記第1界面電極および前記第2界面電極は、前記金属の窒化物である
不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
請求項4に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
前記第1界面電極中の窒素濃度は、前記第1界面電極から前記第1外側電極へ向かって連続的に減少しており、
前記第2界面電極中の窒素濃度は、前記第2界面電極から前記第2外側電極へ向かって連続的に減少している
不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
前記メモリセルは、前記第1電極及び前記第2電極のうちのいずれか一方に直列に接続されたトランジスタを更に備える
不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の不揮発性半導体記憶装置において、
前記メモリセルは、前記第1電極及び前記第2電極のうちのいずれか一方に直列に接続されたダイオードを更に備える
不揮発性半導体記憶装置。」


第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
(1)拒絶理由通知の概要
原査定の根拠となった平成27年1月16日付けの拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。
「理由1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1?4
・引用文献等 1?3
・備考
引用文献1の段落0025に、抵抗変化層(300)と第1外側電極(230)との間に窒化チタンからなるバリアメタル層を設けることが記載されており、本願の第1界面電極に対応する。
引用文献2の段落0040に、導電層(10)に対してバリアメタルを薄く形成することが記載されている。
引用文献3の段落0020に、電極(12)の厚さを、フィラメントの直径20×10^(-9)[m]の50%である10^(-8)[m]とすることが記載されており、上記構成を組み合わせることは当業者が容易に想到し得た事項である。
……(中略)……
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2010-232226号公報
2.国際公開第2009/057262号
3.特開2011-054646号公報(新規引用文献)
4.特開2008-186926号公報
5.国際公開第2011/096194号」

(2)拒絶査定の概要
平成27年6月12日付けの拒絶査定の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願については、平成27年1月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
……(中略)……
・請求項1?10
・引用文献等 1?5
出願人は、平成27年3月12日付け手続補正書において、「前記第1外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接する第1界面電極」と補正し、平成27年3月12日付け意見書において『引用文献2(例えば[0040])には、導電層10の下層にバリアメタルを積層することが記載されています。引用文献2では導電層10と、抵抗変化層5との間には、上部電極9や半導体層8が設けられているため、導電層10の下層に設けられたバリアメタルは、抵抗変化層5に接していないものと思料します。すなわち、引用文献1には、抵抗変化層に接する第1界面電極を含む第1電極の厚さが、抵抗変化層に形成されるフィラメント直径の0%より大きく、80%以下であるとともに、第1電極において抵抗変化層に接する側の電極(第1界面電極)よりも、他方側の電極(第1電極)の抵抗値が小さくなるように設定された記憶装置は、開示されていません。』旨、主張している。
確かに、引用文献2ではバリアメタルが抵抗変化層5に接することは記載されていないが、引用文献1の段落0025に、「また、不揮発性記憶装置10において、下側電極130と整流素子部320との間、整流素子部320と記憶部300との間、記憶部300と上側電極230との間のそれぞれに、図示しないバリアメタル層を設けることもできる。」と記載されており、記憶部300(本願の抵抗変化層に対応)と上側電極230(本願の第1外側電極に対応)との間にバリアメタル層(本願の第1界面電極に対応)を設けていることから、引用文献1記載の発明においても、「前記第1外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接する第1界面電極」である点で本願と同様である。
そして、このような構成を有する引用文献1記載の発明において、電極とバリアメタルの位置関係はそのままに、ともにバリアメタルを用いる引用文献2記載の発明の膜厚の大小関係を採用し、「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く」することは当業者が容易に想到し得た事項である。
したがって、出願人の主張は、採用できない。
よって、請求項1?10に係る発明は、引用文献1?5に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-232226号公報
2.国際公開第2009/057262号
3.特開2011-054646号公報
4.特開2008-186926号公報
5.国際公開第2011/096194号」

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献
ア 引用文献1の記載事項
平成27年1月16日付けの拒絶理由通知に引用された刊行物である特開2010-232226号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付したもの。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性記憶装置として多用されているフラッシュメモリは、集積度の向上に対して限界があるとされている。フラッシュメモリより高集積度の、いわゆる4F^(2)の素子面積が可能な不揮発性記憶装置として、例えば電気抵抗が可変の記憶部を2枚の電極に挟んだ構成の、クロスポイント型不揮発性記憶装置が注目されている(特許文献1)。
すなわち、リソグラフィによる最小パターン線幅をFとすると、配線の幅がFで、配線間の間隔がFとなるため、一般的なクロスポイント型不揮発性記憶装置においては、1つの記憶セルの素子面積は4F^(2)となる。
【0003】
クロスポイント型不揮発性記憶装置において、さらに集積度を向上させることが期待されている。
【0004】
また、集積度を上げた場合、配線が細くなり、配線の基板に対する密着性が弱くなり、信頼性が低下する問題もある。
……(中略)……
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、集積度が高く、配線の密着性を向上した高信頼性の不揮発性記憶装置及びその製造方法を提供することにある。」
(イ)「【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図2(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する、それぞれ、模式的斜視図及び模式的透過平面図である。図1(a)は、図2のA-A’線断面図、図1(b)は、図2のB-B’線断面図である。
図1及び図2に表したように、本発明の第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置10は、基板105の主面106の上に設けられた下側電極130と、下側電極130の上方に位置し、下側電極130と対向して設けられた上側電極230と、下側電極130と上側電極230の間に設けられた記憶部300と、を備えている。
……(中略)……
【0018】
基板105には、例えばシリコン基板を用いることができ、このシリコン基板の上には、不揮発性記憶装置を駆動する駆動回路を設けることもできる。
また、記憶部300としては、例えば、NiO_(X)、TiO_(X)、CoO_(X)、TaO_(X)、MnO_(X)、WO_(X)、Al_(2)O_(3)、FeO_(X)、HfO_(X)、ZnMn_(2)O_(4)、ZnFe_(2)O_(4)、ZnCo_(2)O_(4)、ZnCr_(2)O_(4)、ZnAl_(2)O_(4)、CuCoO_(2)、CuAlO_(2)、NiWO_(4)、NiTiO_(3)、CoAl_(2)O_(4)、MnAl_(2)O_(4)、ZnNiTiO_(4)、及び、Pr_(X)Ca_(1-X)MnO_(3)などを用いることができる。
また、記憶部300には、上記の各種の金属酸化物にドーパントを添加したものを用いても良い。
【0019】
ただし、本発明は、これに限らず、記憶部300には、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する任意の材料を用いることができる。また、記憶部300には、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって相状態が変化し、この相状態の変化に伴って抵抗が変化するいわゆる相変化材料を用いても良い。このように、相変化に伴って抵抗が変化する材料も抵抗変化材料とする。
【0020】
下側電極130(第1の下側電極110及び第2の下側電極120)、及び、上側電極230(第1の上側電極210及び第2の上側電極220)には、例えば、タングステン、タングステンシリサイド、タングステンナイトライド等を用いることができる。
【0021】
また、スペーサ絶縁層150には、例えば、電気抵抗の高い酸化珪素や窒化珪素等を用いることができる。
【0022】
なお、下側電極130をビット線(BL)とし、上側電極230をワード線(WL)とすることができる。ただし、下側電極130をワード線(WL)とし、上側電極230をビット線(BL)としても良い。
【0023】
不揮発性記憶装置10において、下側電極130に与える電位と上側電極230に与える電位の組み合わせによって、各記憶部300に印加される電圧が変化し、その時の記憶部300の特性によって、情報を記憶することができる。この時、記憶部300に印加される電圧の極性に方向性を持たせるために、例えば整流特性を有する整流素子部320を設けることができる。整流素子部320には、例えば、PINダイオードやMIM(Metal-Insulator-Metal)素子などの整流特性を有する素子を用いることができる。
【0024】
なお、図1、図2では、整流素子部320が、下側電極130と記憶部300との間に設けられている例を示しているが、整流素子部320は、上側電極230と記憶部300との間に設けても良い。また、整流素子部320は、下側電極130と上側電極230とが対向する領域以外の領域に設けても良い。
【0025】
また、不揮発性記憶装置10において、下側電極130と整流素子部320との間、整流素子部320と記憶部300との間、記憶部300と上側電極230との間のそれぞれに、図示しないバリアメタル層を設けることもできる。バリアメタル層としては、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)等を用いることができる。
【0026】
なお、下側電極130と上側電極230との間に設けられた記憶部300及び整流素子部320は、これらの電極が3次元的に交差する領域ごとにパターニングされている。そして、記憶部300の周辺には、素子間分離絶縁膜180が設けられている。なお、記憶部300及び整流素子部320は、XY平面で切断した時の断面が長方形の直方体の形状の他、例えば断面が五角形以上の多角形の形状や、例えば断面が円形の円柱の形状等を有することができる。
……(中略)……
【0039】
なお、図1に例示した不揮発性記憶装置10においては、第1の下側電極110及び第2の下側電極120の幅よりもスペーサ絶縁層150の幅が狭い例であり、これにより、第1の下側電極110及び第2の下側電極120の幅が広くでき、下側電極130の配線抵抗を低くすることができる。同様に、第1の上側電極210及び第2の上側電極220の幅よりもスペーサ絶縁層250の幅が狭く、これにより、第1の上側電極210及び第2の上側電極220の幅が広くでき、上側電極230の配線抵抗を低くすることができる。」
(ウ)「【0082】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式断面図である。
図7に表したように、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置20においては、記憶部300の幅は、第1の電極及び第2の電極の幅よりも狭い。
【0083】
すなわち、記憶部300のY軸方向の幅は、例えば第1の下側電極110のY軸方向の幅よりも狭く、第2の下側電極120のY軸方向の幅よりも狭い。これにより、下側電極130の上に記憶部300を形成する例えばフォトリソグラフィの合わせ精度に余裕ができ、製造し易くなる。」

イ 引用文献1に記載された発明
前記ア(イ)には、「図1、図2では、整流素子部320が、下側電極130と記憶部300との間に設けられている例を示しているが……整流素子部320は、下側電極130と上側電極230とが対向する領域以外の領域に設けても良い。」(段落【0024】)と記載されている。すなわち、引用文献1には、「下側電極130と上側電極230とが対向する領域」には「記憶部300」だけを設けることが記載されている。
そうすると、前記アの(ア)?(ウ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「基板105の主面106の上に設けられ、ビット線となる下側電極130と、
前記下側電極130の上方に位置し、前記下側電極130と対向して設けられて、ワード線となる上側電極230と、
前記下側電極130と前記上側電極230の間に設けられた記憶部300と、
を備え、
前記記憶部300は、
NiO_(X)、TiO_(X)、CoO_(X)、TaO_(X)などの、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する金属酸化物の層からなり、前記下側電極130に与える電位と前記上側電極230に与える電位の組み合わせによって変化する特性によって情報を記憶することができるものであり、
前記下側電極130は、
タングステン、タングステンシリサイド、タングステンナイトライド等を用いて形成される第1の下側電極110及び第2の下側電極120と、
前記第1の下側電極110及び前記第2の下側電極120と、前記記憶部300との間に設けられる、チタン、窒化チタンを用いて形成されるバリアメタル層と、
を含み、
前記上側電極230は、
タングステン、タングステンシリサイド、タングステンナイトライド等を用いて形成される第1の上側電極210及び第2の上側電極220と、
前記第1の上側電極210及び前記第2の上側電極220と、前記記憶部300との間に設けられる、チタン、窒化チタンを用いて形成されるバリアメタル層と、
を含む、
不揮発性記憶装置。」

ウ 引用文献2の記載事項
平成27年1月16日付けの拒絶理由通知に引用された文献である国際公開第2009/057262号(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明は、抵抗変化層を用いたクロスポイント型の不揮発性半導体記憶装置に関し、特にダイオードを配線層に集積化した場合における引き出しコンタクトの構成に関する。」
(イ)「[0038] (第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成を説明する断面図である。
[0039] 本実施の形態の不揮発性半導体記憶装置は、基板1と、この基板1上に形成されたストライプ形状の第1の配線2と、第1の配線2を被覆して基板1上に形成された第1の層間絶縁層3と、第1の層間絶縁層3上に第1の配線2と直交するように形成されたストライプ形状の第2の配線11と、第2の配線11を被覆して第1の層間絶縁層3上に形成された第2の層間絶縁層12と、第2の層間絶縁層12上に形成された上層配線13とを備えている。また、第1の配線2と第2の配線11が直交する領域の第1の層間絶縁層3には第1のメモリセルホール4が形成され、この第1のメモリセルホール4中には、第1の配線2に接続する第1の抵抗変化層5と、第1の抵抗変化層5上に形成された第1のダイオード素子の下部電極7とを備えている。また、第2の配線11は第1のダイオード素子の半導体層8と第1のダイオード素子の上部電極9と第2の配線の抵抗率の低い導電層10からなり、第1のダイオード素子の下部電極7、第1のダイオード素子の半導体層8、第1のダイオード素子の上部電極9で第1のダイオード素子6(MSMダイオード)が構成されている。第1の配線2は、第1の層間絶縁層3と第2の層間絶縁層12を貫通して形成された第1のコンタクト14を介して上層配線13に接続され、第2の配線11は第2の層間絶縁層12を貫通して形成された第2のコンタクト15を介して上層配線13に接続されている。
[0040] 以上の構成において、第1の配線2、第2の配線の抵抗率の低い導電層10、上層配線13は、例えば銅あるいはアルミニウムなどからなる抵抗率の低い導電層(厚み:100nm?500nm)もしくはこれらの下層に窒化チタン、チタン、窒化タンタル、タンタルなどのバリアメタル(厚み:5nm?100nm)を積層した構成からなることが好ましい。前者は配線をより低抵抗化することで、回路動作の遅延の防止、高速動作を実現するためであり、後者は層間絶縁層からの不純物の拡散の防止、層間絶縁層との密着性の向上に効果がある。
……(中略)……
[0042] また、第1の層間絶縁層3及び第2の層間絶縁層12としては、絶縁性の酸化物材料を用いることができる。具体的には、CVD法による酸化シリコン(SiO)やオゾン(O_(3))とテトラエトキシシラン(TEOS)を用いてCVD法により形成したTEOS-SiO膜あるいはシリコン窒化(SiN)膜を用いることができる。さらに、低誘電率材料であるシリコン炭窒化(SiCN)膜やシリコン炭酸化(SiOC)膜あるいはシリコンフッ素酸化(SiOF)膜等を用いてもよい。第1の層間絶縁層3及び第2の層間絶縁層12の膜厚は100?500nm程度の膜厚が好ましい。配線間絶縁層が薄くなると配線間リーク電流の増加し、配線間絶縁層が厚くなると第1のコンタクトが深くなり、加工するのが困難になるからである。
[0043] また、第1の抵抗変化層5としては、鉄を含む酸化物、例えば四酸化三鉄(Fe_(3)O_(4))や、酸化チタン、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、ニオブ酸化膜等の遷移金属酸化物を用い、スパッタリング法等で形成してもよい。このような遷移金属酸化物材料は、閾値以上の電圧または電流が印加されたときに特定の抵抗値を示し、その抵抗値は新たに一定の大きさのパルス電圧またはパルス電流が印加されるまでは、その抵抗値を維持しつづける。なお、本実施形態は第1の抵抗変化層5が第1のメモリセルホール4内に充填されているが、例えば第1のメモリセルホール4の底部や側壁にのみ形成されている形態でもかまわない。」

エ 引用文献3の記載事項
平成27年1月16日付けの拒絶理由通知に引用された刊行物である特開2011-54646号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0014】
本実施形態の半導体メモリ素子を図1に示す。本実施形態の半導体メモリ素子10は、イオン伝導現象を利用した抵抗変化型のメモリ素子であって、イオン伝導性を有する層11と、前記イオン伝導性を有する層に可動イオンとして供給可能な第1の金属と前記第1の金属と異なる導電性材料から成る第1の電極12と、前記第1の金属を含まない導電性材料から成る第2の電極13を備えている。イオン伝導性を有する層11は硫化銅、硫化銀、硫化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化シリコン、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化コバルト、GeSe、AgGeSから選択される1つの層であることが好ましい。第1の金属はCuまたはAgであることが好ましい。第1の電極12の構成要素である第1の金属と異なる導電性材料および第2の電極13の導電性材料はAu、Pt、アルミニウム、チタン、タングステン、以上の金属の窒化物およびシリサイドから選択される1つまたは複数を組み合わせた材料であることが好ましい。
【0015】
半導体メモリ素子10をオン状態に書き換えるためには、第1の電極12に+の電圧を、第2の電極13に-の電圧を印加して行う。第1の電極12に+の電圧を、第2の電極13に-の電圧を印加すると、第1の電極12に含まれる第1の金属がイオン化してイオン伝導性を有する層11を伝導し、第2の電極13の表面で還元され金属フィラメント14として析出する。金属フィラメント14は第1の電極12の方向に向かって成長し、金属フィラメント14の先端と第1の電極12との距離d[m]が0[m]となる手前まで成長する。本実施形態ではこの状態をオン状態とする。すなわち、金属フィラメントの先端14と第1の電極12とはオン状態では接触していない。」
(イ)「【0018】
第1の電極12の構成要素が第1の金属のみとすると、半導体メモリ素子10をオン状態にすると第1の電極12が全て金属フィラメント14へと変化してしまうことから第1の電極12が存在した部分に空間ができてしまう。その場合、イオン伝導性を有する層11が外部回路への信号経路を失い、書き換え動作を継続することが不可能となる。そのような状況を避けるため、第1の電極12の構成要素は第1の金属および第1の金属と異なる導電性材料とすることが好ましく、第1の金属の体積含有率xは、イオン伝導性を有する層11が外部回路への信号経路を失わないよう0.5以下であることが好ましい。
【0019】
半導体メモリ素子10をオフ状態に書き換えるためには、第1の電極12に-の電圧を、第2の電極13に+の電圧を印加して行う。第1の電極12に-の電圧を、第2の電極13に+の電圧を印加すると、オン状態の逆の反応が起こり、金属フィラメント14の高さが減り、高抵抗状態となる。
【0020】
本実施形態の半導体メモリ素子10について、イオン伝導性を有する層11がTa_(2)O_(5)、イオン伝導性を有する層に可動イオンとして供給可能な第1の金属がCu、第1の電極12の構成要素である導電性材料がAu、第2の電極13の導電性材料はPtと仮定する。第1の電極12はAuとCuの合金であってもよい。非特許文献1に開示されているように、Pt電極の直径が100nmであるとき、Cuフィラメントの直径は20×10^(-9)[m]となる。同様に第2の電極13の直径は100nm、Cuフィラメントの断面積Sは10^(-16)π[m^(2)]とする。Ta_(2)O_(5)とAuとの障壁高さφは約2.4[eV]であることから、(1)式より、例えばRを1.5×10^(4)[Ω]>10^(4)[Ω]とするためにはdを4×10^(-10)[m]とすればよいことが求まる。そのときの第1の電極12の電極の直径を10^(-7)[m]、高さを10^(-8)[m]とすると、第1の電極12の体積Vは2.5π×10^(-23)[m^(3)]となる。Ta_(2)O_(5)の高さtを40×10^(-9)[m]、とするとき、(2)式より、第1の電極12の体積Vに対するCuの体積含有率xは0.1584とすればよいことが求まる。」

オ 引用文献4の記載事項
平成27年1月16日付けの拒絶理由通知に引用された刊行物である特開2008-186926号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置では、層間の電気的な接続を行うために、層間絶縁膜のホール内に導電性プラグが形成される。例えば、半導体基板に形成されるMOSトランジスタでは、ソース/ドレイン領域等の不純物拡散領域上や、ゲート電極上に導電性プラグが形成される。このうち、不純物拡散領域の表層には、導電性プラグとの間のコンタクト抵抗を低減するために、金属シリサイド層を形成するのが普通である。
【0003】
その導電性プラグはタングステンを主にして構成されるが、タングステンが周囲の層間絶縁膜に拡散すると層間のリーク電流が増大するという問題が起きる。また、導電性プラグのタングステンが金属シリサイド層に触れると、金属シリサイド層とタングステンとが反応し、コンタクト抵抗が不安定になるという問題がある。
【0004】
このようなタングステンの拡散や、タングステンと金属シリサイド層との反応は、導電性プラグの外周にバリアメタル膜を形成することで防止し得る。
【0005】
但し、このようにバリアメタル膜を形成したことで、金属シリサイド層等の下地と導電性プラグとの間のコンタクト抵抗が増大したのでは、半導体基板に形成される回路が設計通りに機能しなくなり、半導体装置の歩留まりが低下してしまう。
【0006】
よって、バリアメタル膜には、金属シリサイド層等の下地とのコンタクト抵抗が低下しないような特性が求められる。」
(イ)「【0042】
次いで、フォトリソグラフィにより第1層間絶縁膜21をパターニングして、コンタクトパッド15aと各領域14a?14cのそれぞれの上に第1ホール21aを形成する。
【0043】
続いて、図3(b)に示すように、第1ホール21aの内面と、該第1ホール21aに露出する金属シリサイドパターン17aの上面に、第1バリアメタル膜22aとしてスパッタ法によりチタン膜を30nmの厚さに形成する。
【0044】
この第1バリアメタル膜22aは、チタンのような純粋な高融点金属で構成されることにより、拡散防止膜としての役割の他に、金属シリサイドパターン17aとの密着性を向上させる密着膜としての役割をも担う。」
(ウ)「【0134】
図19に示されるように、第2バリアメタル膜22bに対するアニールを行わない場合(一点鎖線)では、第1バリアメタル膜22aはその表層のみが実質的に窒化される。その結果、第1バリアメタル膜22aにおける窒素濃度は、第1バリアメタル膜22aの上面から下面に向かって連続的に減少し、その下面では、金属シリサイドパターン17aの上面と同様に窒素濃度が実質的にゼロとなる。
【0135】
これに対し、第2バリアメタル膜22bに対してアニールを行う本実施形態(実線)では、そのアニールによって第1バリアメタル膜22aの膜中に窒素が浸透する。その浸透の効果は、第1バリアメタル膜22aの上面から深くなるにつれて低下するため、第1バリアメタル膜22aにおける窒素濃度は、その上面から下面に向かって単調に減少する。しかし、第1バリアメタル膜22aの下面にも上記のアニールの効果が及んでいるため、該下面における窒素濃度は金属シリサイドパターン17aのそれよりも高くなる。
【0136】
このように、第2バリアメタル膜22bに対してアニールを行って得られた半導体装置は、第1バリアメタル膜22aにおける窒素濃度が該第1バリアメタル22aの上面から下面に向かって単調に減少し、且つ、該下面における窒素濃度が、金属シリサイドパターン17aの上面における窒素濃度よりも高いことで特徴付けられる。
【0137】
また、本願発明者の調査によれば、第1導電性プラグ24のコンタクト抵抗の不安定化は、通常のロジック品よりも、FeRAM等のように強誘電体キャパシタQを備えた半導体装置の製造工程において発生し易いことも明らかとなった。」

カ 引用文献5の記載事項
平成27年1月16日付けの拒絶理由通知に引用された文献である国際公開第2011/096194号(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「[0126] (実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1において説明した抵抗変化素子を備える不揮発性記憶装置である。以下、この不揮発性記憶装置の構成及び動作について説明する。
[0127] [不揮発性記憶装置の構成]
図19は、本発明の実施の形態2の不揮発性記憶装置の構成の一例を示すブロック図である。図19に示すように、不揮発性記憶装置200は、抵抗変化素子を具備するメモリアレイ201と、アドレスバッファ202と、制御部203と、行デコーダ204と、ワード線ドライバ205と、列デコーダ206と、ビット線/プレート線ドライバ207とを備えている。ここで、制御部203と、ワード線ドライバ205と、ビット線/プレート線ドライバ207とを、駆動部208と総称する。
[0128] メモリアレイ201は、図19に示すように、縦方向に延びる2本のワード線W201、W202と、当該ワード線W201、W202と交差して横方向に延びる2本のビット線B201、B202と、当該ビット線B201、B202に一対一で対応して設けられる横方向に延びる2本のプレート線P201、P202と、ワード線W201、W202及びビット線B201、B202との各交差点に対応してマトリクス状に設けられた4個のトランジスタT211、T212、T221、T222と、当該4個のトランジスタT211、T212、T221、T222に一対一で対応してマトリクス状に設けられたメモリセルMC211、MC212、MC221、MC222と、を具備している。」

(2)本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下の点で一致するとともに、以下の点で相違する。
ア 一致点
「メモリセルを具備し、
前記メモリセルは、
抵抗値の変化で情報を記憶する抵抗変化層と、
前記抵抗変化層の両端にそれぞれ接続され、貴金属を含まない第1電極及び第2電極と
を備え、
前記第1電極は、
第1外側電極と、
前記第1外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接し、窒化チタンである第1界面電極と
を含み、
前記第2電極は、
第2外側電極と、
前記第2外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接し、窒化チタンである第2界面電極と
を含む、
不揮発性半導体記憶装置。」

イ 相違点
<<相違点1>>
本願発明1は「メモリセル」に「それぞれ電気的に接続され」る「第1配線」と「第2配線」を具備するのに対して、引用発明は「下側電極130」が「ビット線」でもあり、「上側電極230」が「ワード線」でもある点。
<<相違点2>>
本願発明1の「抵抗値の変化で情報を記憶する抵抗変化層」は「フィラメント型抵抗変化素子」であるのに対して、引用発明の「記憶部300」である「金属酸化物の層」は「前記下側電極130に与える電位と前記上側電極230に与える電位の組み合わせによって変化する特性によって情報を記憶する」ものであるが「フィラメント型抵抗変化素子」であるかどうかは不明である点。
<<相違点3>>
本願発明1においては、「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり」、「前記第2界面電極の膜厚は、前記第2外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であ」るのに対して、引用発明においては、「前記第1の下側電極110及び前記第2の下側電極120と、前記記憶部300との間」及び「前記第1の上側電極210及び前記第2の上側電極220と、前記記憶部300との間」にそれぞれ設けられる「バリアメタル層」の厚さは不明である点。
<<相違点4>>
本願発明1においては、「前記第1界面電極の抵抗率は、前記第1外側電極の抵抗率よりも高」く、「前記第2界面電極の抵抗率は、前記第2外側電極の抵抗率よりも高」いのに対して、引用発明において、「タングステン、タングステンシリサイド、タングステンナイトライド等を用いて形成される第1の下側電極110及び第2の下側電極120」及び「タングステン、タングステンシリサイド、タングステンナイトライド等を用いて形成される第1の上側電極210及び第2の上側電極220」と比べて、それぞれの「チタン、窒化チタンを用いて形成されるバリアメタル層」の抵抗率が高いかどうかは不明である点。
<<相違点5>>
本願発明1においては、「前記第1電極の抵抗値は、前記抵抗変化層の低抵抗状態の抵抗値よりも低く」、「前記第2電極の抵抗値は、前記抵抗変化層の低抵抗状態の抵抗値よりも低い」のに対して、引用発明の「下側電極130」及び「上側電極230」の抵抗値が「金属酸化物の層」の低抵抗状態の抵抗値よりも低いかどうかは不明である点。

(3) 本願発明1についての判断
ア 相違点3について検討する。
本願明細書には、段落【0026】に「第1界面電極42は、少なくとも下部電極51と抵抗変化層41との界面の酸化を防止する機能が求められているから、抵抗変化層41の表面を確実に覆うべく、2原子層程度以上であることが好ましい。一方で、上記材料は抵抗率が高い傾向にあるので、下部電極51の抵抗を低く抑えるべく、20原子層程度以下とすることが好ましい。あるいは、膜厚1nm以上、10nm程度であることが好ましい。」と、段落【0039】?【0040】に「図4Bに示すように、図3の(b)試料の抵抗変化動作では、0.5V近傍で高抵抗化が、1.5V近傍で低抵抗化がそれぞれ発生していることがわかる。高抵抗化と低抵抗化との電圧マージンは、1.0V程度である。そのため、電圧バラツキが存在することを考慮しても、抵抗変化動作を高い信頼性で行うことが可能である。以上のように、(a)試料と(b)試料とでは、その抵抗変化特性が大きく異なることが分かる。両試料の相違点は、既述のように、下部電極及び上部電極のTiN_(X)(窒化チタン)の膜厚、すなわち、下部電極及び上部電極の抵抗値である。膜厚が相対的に薄く抵抗値が低い(b)試料の方が、良好な抵抗変化特性を有することが分かる。」と記載されている。
これらの記載によれば、本願発明1は、相違点3に係る「窒化チタン又は窒化タンタル」である「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり」、「窒化チタン又は窒化タンタル」である「前記第2界面電極の膜厚は、前記第2外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり」という構成を備えることで、「下部電極51と抵抗変化層41との界面の酸化を防止する」とともに、「第1界面電極」ないし「第2界面電極」を含む「第1電極」ないし「第2電極」の「抵抗を低く抑える」ことができ、その結果、本願発明1に係る「不揮発性半導体記憶装置」が「高抵抗化と低抵抗化との電圧マージン」が大きくなり「良好な抵抗変化特性を有する」という、本願明細書に記載された格別の効果を奏するものである。

イ 一方、引用文献1には、引用発明の「前記第1の下側電極110及び前記第2の下側電極120と、前記記憶部300との間に設けられる、チタン、窒化チタンを用いて形成されるバリアメタル層」の厚さについては、何ら記載されていない。
これに対して、引用文献2には、「抵抗変化層を用いたクロスポイント型の不揮発性半導体記憶装置」に関して、段落[0040]に「以上の構成において、第1の配線2、第2の配線の抵抗率の低い導電層10、上層配線13は、例えば銅あるいはアルミニウムなどからなる抵抗率の低い導電層(厚み:100nm?500nm)もしくはこれらの下層に窒化チタン、チタン、窒化タンタル、タンタルなどのバリアメタル(厚み:5nm?100nm)を積層した構成からなることが好ましい。前者は配線をより低抵抗化することで、回路動作の遅延の防止、高速動作を実現するためであり、後者は層間絶縁層からの不純物の拡散の防止、層間絶縁層との密着性の向上に効果がある。」と記載されている。
すなわち、引用文献2には、本願発明1の「第1界面電極」ないし「第2界面電極」と、重複する材料である「窒化チタン」で形成され、重複する「厚み」を有する「バリアメタル」を設けることが記載されている。

ウ しかしながら、引用発明の「バリアメタル層」は、その位置からみて、「前記記憶部300」である「NiO_(X)、TiO_(X)、CoO_(X)、TaO_(X)などの、印加される電界及び通電される電流の少なくともいずれかによって抵抗が変化する金属酸化物の層」と、「前記第1の下側電極110及び前記第2の下側電極120」または「前記第1の上側電極210及び前記第2の上側電極220」との間の「バリアメタル」として機能するものである。
一方、引用文献2の「バリアメタル」は、「第1の配線2、第2の配線の抵抗率の低い導電層10、上層配線13」の下層に「層間絶縁層からの不純物の拡散の防止、層間絶縁層との密着性の向上」のために設けられるものであり、「抵抗変化層5」と「下部電極7」の間に設けられるものでない。
したがって、抵抗変化層を備えた不揮発性記憶装置という点で同じ技術分野に属するからといって、引用発明の「バリアメタル層」とは設けられる位置も求められる機能も異なる引用文献2の「バリアメタル」に関する技術を、引用発明に適用することを当業者が想起し得たとは認められない。

エ また、引用文献2に記載された「バリアメタル」は、「層間絶縁層からの不純物の拡散の防止」等のために「導電層10、上層配線13」の下層に設けられるものであり、本願発明1の「第1界面電極」ないし「第2界面電極」とは、設けられる位置も求められる機能も異なる。そして、前記「バリアメタル」の「厚み」の上限は「100nm」であり、本願発明1の「第1界面電極」ないし「第2界面電極」の「膜厚」の上限である「10nm」の10倍である。
したがって、仮に引用発明に引用文献2に記載された「バリアメタル」に関する技術を適用することを想起し得たとしても、前記アで指摘した相違点3に係る本願発明1の効果を得ることができるとは認められず、また、当該効果を引用発明及び引用文献2の記載から当業者が予期し得るとも認められない。

オ そして、相違点3に係る「窒化チタン又は窒化タンタル」である「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり」、「窒化チタン又は窒化タンタル」である「前記第2界面電極の膜厚は、前記第2外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり」という構成は、引用文献3ないし引用文献5には記載も示唆もされていない。

カ そうすると、引用発明を相違点3に係る構成とすることを、引用文献2ないし引用文献5から、当業者が容易に想到し得たものと認められない。
そして、前記アで指摘した、「第1界面電極」ないし「第2界面電極」を含む「第1電極」ないし「第2電極」の「抵抗を低く抑える」ことができ、その結果、本願発明1に係る「不揮発性半導体記憶装置」が「高抵抗化と低抵抗化との電圧マージン」が大きくなり「良好な抵抗変化特性を有する」という効果は、引用発明及び引用文献2ないし引用文献5から当業者が予期し得たとは認められない。

キ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし引用文献5から、当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。

(4)本願発明2ないし本願発明7について
本願発明2ないし本願発明7は、いずれも、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、引用文献に記載された発明及び引用文献2ないし引用文献5から当業者が容易に発明をすることができたとも認められない。

(5)小括
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1 平成28年10月6日付けの当審拒絶理由について
(1)平成28年10月6日付けの当審拒絶理由の概要
当審より平成28年10月6日付けで通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1?7、及び、請求項9?10について
……
以上から、「第1界面電極」と「第1外側電極」という2層構造を有する「第1電極」を含む「メモリセル」において、「前記第1電極の厚みは、前記抵抗変化層に形成されるフィラメント直径の0%より大きく、80%以下」とする請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項1を引用する請求項2?7、及び、請求項1を引用する請求項9?10に係る発明も、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)請求項8?10について
……
したがって、「前記第1界面電極及び前記第1外側電極中の窒素濃度は、前記第1界面電極から前記第1外側電極へ向かって連続的に減少している」という態様において、前記メモリセルが良好な抵抗変化特性を示す理由である「前記第1電極の厚みは、前記抵抗変化層に形成されるフィラメント直径」の「80%以下であ」ることは、本願明細書には記載されていない。
よって、請求項8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項8を引用する請求項9?10に係る発明も、同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(3)請求項1、及び、請求項1を引用する請求項5?6ないし請求項9?10について
……
以上の記載から、「第1界面電極」が、「貴金属」を含まず「抵抗率は、前記第1外側電極の抵抗率よりも高」いという条件を満たせば、それが如何なる材料であっても、「高信頼な抵抗変化素子を実現する」という課題を解決することが、本願明細書に記載されているとは、認められない。
以上から、請求項1、及び、請求項1を引用する請求項5?6ないし請求項9?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(4)請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?5、請求項7?10には、「第1電極及び第2電極」を備えることは記載されているものの、前記「第2電極」の構成については何ら記載されていない。
したがって、請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?5、請求項7?10に係る発明における前記「第2電極」は、「貴金属を含まない」単一の層で均一な「抵抗率」を持つ材料からなるものを包含している。
しかしながら、「第2電極」を、「貴金属を含まない」単一の層で均一な「抵抗率」を持つ材料で形成することが、本願明細書に記載されているとは認められない。
よって、請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?5、請求項7?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(5)請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?4、6?10について
請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?4、6?10には、「前記第1電極の厚みは、前記抵抗変化層に形成されるフィラメント直径の0%より大きく、80%以下であり」、「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く」との記載はあるものの、「前記第1界面電極の膜厚」の具体的な範囲、特に「前記第1界面電極の膜厚」の下限については、何ら記載されていない。
したがって、請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?4、6?10に係る発明の「第1界面電極」は、たとえば、単原子膜からなる「電極」を包含している。
これに対して、本願明細書には、たとえば、段落【0012】?【0016】及び【0026】に、「メモリセル」が「良好な抵抗変化特性を持つ」という課題を解決するため、「第1界面電極42は、少なくとも下部電極51と抵抗変化層41との界面の酸化を防止する機能が求められているから、抵抗変化層41の表面を確実に覆うべく、2原子層程度以上であることが好ましい。一方で、上記材料は抵抗率が高い傾向にあるので、下部電極51の抵抗を低く抑えるべく、20原子層程度以下とすることが好ましい。あるいは、膜厚1nm以上、10nm程度であることが好ましい。」と記載されている。
すなわち、本願明細書には、「メモリセル」が「良好な抵抗変化特性を持つ」という課題を解決するためには「少なくとも下部電極51と抵抗変化層41との界面の酸化を防止する機能が求められている」とともに「下部電極51の抵抗を低く抑えるべく」、「第1界面電極の膜厚」を、「2原子層程度以上」かつ「20原子層程度以下とする」か、あるいは、「1nm以上、10nm程度であることが好ましい。」ことが記載されている。
よって、請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?4、6?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1?10について
請求項1には、「前記第1電極の厚みは、前記抵抗変化層に形成されるフィラメント直径の0%より大きく、80%以下であり」と記載されている。
一方、本願明細書の段落【0007】には、フィラメントは抵抗変化層の「絶縁破壊」で形成されると記載されている。
ここで、抵抗変化層内での前記「絶縁破壊」は当該抵抗変化層内の各部の状態に応じてランダムに発生すると認められるから、フィラメントは、必ずしも1個だけとは限らず、むしろ、複数個が、抵抗変化層内で不定形の形状で形成されると認められる。
このように、不定形の形状で複数個形成される「フィラメント」の「直径」をどのように特定し評価するのか、本願明細書には何ら記載されておらず、また、当業者に自明であるとも認められない。
以上から、請求項1に係る発明は明確でない。
請求項1を引用する請求項2?10に係る発明も、同じ理由から明確でない。

(2)請求項8には、請求項7を引用して「前記第1界面電極及び前記第1外側電極中の窒素濃度は、前記第1界面電極から前記第1外側電極へ向かって連続的に減少している」と記載されている。
上記の記載は、「前記第1界面電極」と「前記第1外側電極」とで「窒素濃度」が「連続的に減少している」こと、すなわち、「前記第1界面電極」と「前記第1外側電極」とで実質的には1つの「電極」を形成していることを、意味するものと認められる。
そうすると、請求項8の「前記第1界面電極及び前記第1外側電極中の窒素濃度は、前記第1界面電極から前記第1外側電極へ向かって連続的に減少している」という記載は、請求項7の「前記第1外側電極は、金属の膜であり」、「前記第1界面電極は、前記金属の窒化物である」という記載、ないしは、請求項7が引用する請求項1の「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く」、「前記第1界面電極の抵抗率は、前記第1外側電極の抵抗率よりも高く」という記載と矛盾している。
よって、請求項8、及び、請求項8を引用する請求項9?10に係る発明は明確でない。

3.この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



本願明細書の段落【0007】及び【0009】を参照すると、「フィラメント」は抵抗変化素子の「初期化」ないし「低抵抗化」における「絶縁破壊」によって形成されることが記載されている。したがって、「フィラメント直径」の大きさは、「抵抗変化層」の材料特性や内部の状態、「フィラメント」を形成するための「初期化」ないし「低抵抗化」時における抵抗変化素子のバイアス条件等で変化すると解される。
しかしながら、「初期化」ないし「低抵抗化」時に形成される「フィラメント」の大きさや、「フィラメント直径」を決定する具体的な条件については、本願明細書には何ら記載されておらず、また、これらの事項が当業者に自明であるとも認められない。
また、理由2(1)で指摘したように、本願明細書には、形成された「フィラメント」の「フィラメント直径」の大きさを具体的にどのように特定し評価するのか、何ら記載されておらず、これが当業者に自明な事項であるとも認められない。
以上のように、本願明細書において、「フィラメント直径」の大きさを特定する方法が不明である以上、「前記第1電極の厚み」を「前記抵抗変化層に形成されるフィラメント直径の0%より大きく、80%以下」に設定する方法も不明であると認められる。
したがって、「前記第1電極の厚みは、前記抵抗変化層に形成されるフィラメント直径の0%より大きく、80%以下」である「不揮発性半導体記憶装置」をどのように製造するのか、本願明細書の記載からでは不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

(2)平成28年10月6日付け当審拒絶理由に対する判断
ア 理由1(1)、理由1(2)、理由2(1)及び理由3について
平成28年12月12日付けの手続補正によって特許請求の範囲から「フィラメント(の形状)」に係る限定事項を削除する補正がなされた結果、本願発明1ないし本願発明7は「フィラメント直径」についての発明特定事項を有していない。
したがって、理由1(1)、理由1(2)、理由2(1)及び理由3で指摘した理由によっては、もはや、本願発明1ないし本願発明7が本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとすることも、本願発明1ないし本願発明7が明確でないとすることも、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1ないし本願発明7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとすることも、できない。
よって、平成28年10月6日付け当審拒絶理由の理由1(1)、理由1(2)、理由2(1)及び理由3は解消した。

イ 理由1(3)について
平成29年4月25日付けの手続補正によって、本願発明1の「第1界面電極」及び「第2界面電極」は、「貴金属を含まない」ものであって「窒化チタン又は窒化タンタルである」ものとなり、これにより、本願発明1ないし本願発明7は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
したがって、平成28年10月6日付け当審拒絶理由の理由1(3)は解消した。

ウ 理由1(4)について
平成28年12月12日付けの手続補正によって請求項1の「第2電極」が「第1電極」と同様に構成されていることを明確にする補正がなされた結果、本願発明1ないし本願発明7の「第2電極」は「第1電極」と同様に構成されているものとなった。
したがって、理由1(4)で指摘した理由によっては、もはや、本願発明1ないし本願発明7が本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとすることはできない。
よって、平成28年10月6日付け当審拒絶理由の理由1(4)は解消した。

エ 理由1(5)について
平成28年12月12日付けの手続補正によって、「第1界面電極」及び「第2界面電極」の「膜厚」の下限が特定され、これにより、本願発明1の「第1界面電極」及び「第2界面電極」の「膜厚」は「1nm以上」であるものに特定された。
したがって、理由1(5)で指摘した理由によっては、もはや、本願発明1ないし本願発明7が本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとすることはできない。
よって、平成28年10月6日付け当審拒絶理由の理由1(5)は解消した。

オ 理由2(2)について
平成28年10月12付けの手続補正によって、補正後の請求項7に記載の「窒素濃度が連続的に減少する」構成要素が「第1界面電極(および第2界面電極)」であることを明確にする補正がなされ、平成29年4月25日付けの手続補正によって、本願発明5において、「窒素濃度」が「前記第1界面電極から前記第1外側電極へ向かって連続的に減少して」いるのは「前記第1界面電極中の窒素濃度」であり、「窒素濃度」が「前記第2界面電極から前記第2外側電極へ向かって連続的に減少して」いるのは「前記第2界面電極中の窒素濃度」であると補正された。
そして、これにより、本願発明5ないし本願発明7は明確になった。
したがって、平成28年10月6日付け当審拒絶理由の理由2(2)は解消した。

2 平成29年2月24日付けの最後の当審拒絶理由について
(1)平成29年2月24日付けの最後の当審拒絶理由の概要
当審より平成29年2月24日付けで通知した最後の拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「1 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1には、「Ru(ルテニウム)又はTiNx(窒化チタン)のいずれか一つを少なくとも含み、かつ、貴金属を含まない第1電極及び第2電極」と記載されている。
しかしながら、
ア 本願明細書には、……抵抗変化素子の電極材料としてRu(ルテニウム)を用いることは背景技術として本願明細書に記載されているのであって、当業者が出願時の技術常識に照らし前記「発明が解決しようとする課題」を解決できると認識できる範囲のものとして、「第1電極及び第2電極」が「Ru(ルテニウム)」を「少なくとも含」むことが、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されているとは、認められない。

イ 請求項1の記載によれば、前記「第1電極及び第2電極」は、それぞれ、「第1外側電極」と「第1界面電極」、及び、「第2外側電極」と「第2界面電極」を有している。
したがって、請求項1の上記の記載では、「Ru(ルテニウム)又はTiNx(窒化チタン)のいずれか一つを少なくとも含み、かつ、貴金属を含まない」のは、前記「第1電極」の場合は「第1外側電極」と「第1界面電極」のうちのどれであるのか、前記「第2電極」の場合は「第2外側電極」と「第2界面電極」のうちのどれであるのか、不明である。

ウ また、上記アで指摘したように、「Ru(ルテニウム)」は貴金属の一つであることは、当業者の技術常識である。
そうすると、請求項1の上記の記載によれば、「第1電極及び第2電極」は、貴金属である「Ru(ルテニウム)」を「少なくとも含み」、かつ、「貴金属を含まない」こととなるので、前記「第1電極及び第2電極」が、どのような電極材料で形成されるのか不明である。

エ 以上から、請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、明確でもない。

(2)請求項1には、「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり」、及び、「前記第2界面電極の膜厚は、前記第2外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり」と記載されている。
しかしながら、
ア 請求項1には、「第1外側電極の膜厚」及び「第2外側電極の膜厚」は具体的に特定されていないため、「第1界面電極の膜厚」及び「第2界面電極の膜厚」は、その下限が「1nm以上」と特定されているだけで、上限は実質的には何ら特定されておらず、したがって、各「界面電極」の構成が不明りょうになっている。

イ 本願明細書には、段落【0026】に「第1界面電極42は、少なくとも下部電極51と抵抗変化層41との界面の酸化を防止する機能が求められているから、抵抗変化層41の表面を確実に覆うべく、2原子層程度以上であることが好ましい。一方で、上記材料は抵抗率が高い傾向にあるので、下部電極51の抵抗を低く抑えるべく、20原子層程度以下とすることが好ましい。あるいは、膜厚1nm以上、10nm程度であることが好ましい。」と記載されている。
すなわち、本願明細書には、上記(1)アで指摘した「発明が解決しようとする課題」を解決するために、「界面電極」の膜厚が1nm以上、10nm以下であること、あるいは、「界面電極」の膜厚を2原子層程度以上、20原子層程度以下とすることが記載されている。

ウ これに対して、請求項1に記載された「第1界面電極」及び「第2界面電極」は、上記アで指摘したように、「膜厚」が10nmを超えるもの、あるいは、20原子層を超えるものを包含している。
しかしながら、そのような「膜厚」の「第1界面電極」及び「第2界面電極」を有する「不揮発性半導体記憶装置」までもが、上記(1)アで指摘した「発明が解決しようとする課題」を解決できる発明として、本願明細書に記載されているとは認められない。

エ 以上から、請求項1、及び、請求項1を引用する請求項2?4、6?9に係る発明は、明確でなく、発明の詳細な説明に記載したものでもない。」

(2)平成29年2月24日付けの最後の当審拒絶理由に対する判断
ア 理由1(1)について
平成29年4月25日付けの手続補正によって、本願の請求項1に、「第1電極及び第2電極」は「貴金属を含まない」こと、「前記第1電極」は「第1外側電極」と「前記第1外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接し、窒化チタン又は窒化タンタルである第1界面電極」とを含むこと、「前記第2電極」は「第2外側電極」と「前記第2外側電極と前記抵抗変化層との間に設けられ、前記抵抗変化層に接し、窒化チタン又は窒化タンタルである第2界面電極」とを含むことという発明特定事項を追加する補正がなされた。
この補正により、本願発明1において、「第1電極」を構成する「第1外側電極」と「第1界面電極」、「第2電極」を構成する「第2外側電極」と「第2界面電極」は、いずれも「貴金属を含まない」ものであり、これらの電極のうち、特に前記「第1界面電極」及び前記「第2界面電極」は「窒化チタン又は窒化タンタルである」ことが特定された。
したがって、理由1(1)で指摘した理由によっては、もはや、本願発明1ないし本願発明7が、明確でないとも、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないともすることはできない。
よって、平成29年2月24日付け当審拒絶理由の理由1(1)は解消した。

イ 理由1(2)について
平成29年4月25日付けの手続補正によって、本願発明1において、「前記第1界面電極の膜厚は、前記第1外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり」、「前記第2界面電極の膜厚は、前記第2外側電極の膜厚よりも薄く、かつ、1nm以上であり、かつ、10nm以下であり」と補正された。
したがって、平成29年2月24日付け当審拒絶理由の理由1(2)は解消した。

3 小括
したがって、平成28年12月12日付けの手続補正及び平成29年4月25日付けの手続補正によって、平成28年10月6日付けの当審拒絶理由の理由1ないし3、平成29年2月24日付けの最後の当審拒絶理由の理由1はすべて解消した。
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-27 
出願番号 特願2011-197398(P2011-197398)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 536- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 俊哉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 須藤 竜也
鈴木 匡明
発明の名称 不揮発性半導体記憶装置及びその製造方法  
代理人 工藤 実  

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