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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02G
管理番号 1329690
審判番号 不服2016-14950  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-05 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2013-220136「排熱回収システム、船舶及び排熱回収方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月27日出願公開、特開2015- 81569、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年10月23日の出願であって、平成27年12月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年6月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年10月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の理由の概要

1 原査定の理由

(1)平成27年12月14日付けで通知した拒絶理由の内容

「この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。

理由

1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1について

・請求項 1,3-5
請求項1の「エンジン部と、前記エンジン部から排出される排ガスと熱交換して加熱用熱水及び蒸気を生成する熱交換部と、前記熱交換部に水を供給し、かつ、前記熱交換部で生成された前記加熱用熱水及び前記蒸気が供給される蒸気ドラムと、」なる記載によれば「加熱用熱水」は、「熱交換部」と「蒸気ドラム」との間を循環するものと認められる。
一方、請求項1の「低沸点媒体が蒸発器を流通してタービンを駆動する有機ランキンサイクルシステムと、前記蒸発器で、前記低沸点媒体と前記蒸気ドラムから供給された前記加熱用熱水とを熱交換させたのち、前記加熱用熱水の温度が低下した加熱用水を前記水として前記蒸気ドラムに戻す加熱用熱水循環系統と、を備える排熱回収システム。」なる記載によれば、「前記加熱用熱水」は、「蒸発器」と「蒸気ドラム」との間を循環するものと認められる。
そうすると、「前記加熱用熱水」は、「熱交換部」と「蒸気ドラム」との間を循環するのか、「蒸発器」と「蒸気ドラム」との間を循環するのか、あるいは、「熱交換部」と「蒸気ドラム」と「蒸発器」との間を循環するのか、が不明りようである。
請求項5についても同様である。
よって、請求項1及びこれを引用する請求項3-4に係る発明、並びに請求項5に係る発明は不明確である。


●理由2について

・請求項 1-2,4-6
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献1(特に、図3)
エンジン部(引用文献1では、船舶推進用ディーゼルエンジン3)と、
前記エンジン部から排出される排ガスと熱交換して加熱用熱水及び蒸気を生成する熱交換部(引用文献1では、蒸発器49)と、
前記熱交換部に水を供給し、かつ、前記熱交換部で生成された前記加熱用熱水及び前記蒸気が供給される蒸気ドラム(引用文献1では、蒸気ドラム72)と、
低沸点媒体が蒸発器(引用文献1では、蒸発器30)を流通してタービンを駆動する有機ランキンサイクルシステム、
及び、排熱利用の前記熱交換部(蒸発器49)と、低沸点媒体の前記蒸発器(蒸発器30)との間に、熱媒体を3つ設ける技術。

引用文献2(特に、図5)
排熱利用の熱交換部55と、低沸点媒体の蒸発器12との間に、熱媒体を1つ設ける技術。

引用文献3(特に、図1)
排熱利用の熱交換部45と、低沸点媒体の蒸発器45との間に、熱媒体を設けない技術(排熱利用の熱交換部45を低沸点媒体の蒸発器として用いる技術)。

排熱利用の熱交換部と、低沸点媒体の蒸発器との間に、熱媒体をいくつ設けるかは、引用文献2-3に記載されているように、当業者がシステムの構成を考慮して適宜選定する事項である。
引用文献1のものに、引用文献2-3に記載された前記事項を考慮して、蒸発器で、低沸点媒体と蒸気ドラムから供給された加熱用熱水とを熱交換させたのち、加熱用熱水の温度が低下した加熱用水を水として蒸気ドラムに戻すようにして本願請求項1-2,4-6に係る発明とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

・請求項 3
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献1(特に、図3)
前記蒸気ドラムに接続されるダンプ弁を備える点。

引用文献1-3からなるものにおいて、ダンプ弁の開動作に基づいて、有機ランキンサイクルシステムの蒸発器への蒸気ドラム内の加熱用熱水又は蒸気の供給を開始させるようにすることは、当業者であれば蒸気ドラムからの熱を蒸発器に利用する際に容易になし得たことである。


<引用文献等一覧>

1.特開2011-231636号公報
2.特開2012-149541号公報
3.特開2011-106302号公報」


(2)原査定の内容

「この出願については、平成27年12月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。


●理由2(特許法第29条第2項)について

・請求項 1,4
・引用文献等 1-3
引用文献1の段落[0046]-[0047]には、130?140℃で作動する有機ランキンサイクルによる排熱回収発電装置に加え、例えば250℃以上といった温度レベルが高い船舶推進用ディーゼルエンジンの排ガスについては高効率が期待できる蒸気タービン50にて発電することとし、これにより、広い温度範囲に対して高効率に排熱回収発電が可能とする技術が記載されている。
そして、引用文献1の図3には、
蒸気ドラム(引用文献1では、蒸気ドラム72)から蒸気が供給されて駆動される蒸気タービン(引用文献1では、蒸気タービン50)、
及び、蒸発器(引用文献1では、蒸発器30)で、低沸点媒体と前記蒸気ドラム側から供給された加熱用熱水とを熱交換させたのち、前記加熱用熱水の温度が低下した加熱用水を水として前記蒸気ドラム側に戻す加熱用熱水循環系統が記載されている。
ここで、低沸点媒体と熱交換させる加熱用熱水について、
本願請求項1に係る発明は、蒸気ドラムから供給されたものであるのに対し、
引用文献1に記載された発明は、蒸気ドラム側から供給されたものである点において、両者は異なる。
しかし、拒絶理由通知書にて述べたとおり、排熱利用の熱交換部と、低沸点媒体の蒸発器との間に、熱媒体をいくつ設けるかは、引用文献2-3に記載されているように、当業者がシステムの構成を考慮して適宜選定する事項であるので、引用文献1-3からなるものにおいて、低沸点媒体と熱交換させる加熱用熱水は蒸気ドラムから直接供給される加熱用熱水とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
引用文献1のその他の記載事項、及び引用文献2-3の記載事項については拒絶理由通知書を参照のこと。
よって、引用文献1-3からなるものから本願請求項1,4に係る発明とすることに、特段の困難性を認めることはできない。

・請求項 2-3
・引用文献等 1-3
前記理由と拒絶理由通知書に記載した理由とにより、進歩性を認めることはできない。


出願人は意見書において、引用文献1には、加熱用熱水が蒸気ドラムから有機ランキンサイクルシステムの蒸発器へ供給される点が記載されておらず、また、引用文献2には、蒸気と加熱用熱水とを分離し、蒸気ドラムから蒸気タービンへ蒸気を供給することが記載されいないので、当業者は、引用文献1及び2に基づいて、上述した本願発明の特徴的な構成である「有機ランキンサイクルシステムの蒸発器へ第2加熱用熱水を供給する一方で、蒸気タービンへ第3蒸気を供給する」ことを想到することは困難であるから、本願発明は、引用文献1-3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない点を主張されている。 しかし、上に述べたとおりであるので、出願人の前記主張を採用することはできない。


<引用文献等一覧>

1.特開2011-231636号公報
2.特開2012-149541号公報
3.特開2011-106302号公報」


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1及び4に「前記蒸気ドラムから第2加熱用熱水を前記蒸発器へ供給し、」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、「前記蒸気ドラムから第2加熱用熱水を前記蒸発器へ供給し、」という事項は、当初明細書の段落【0039】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると、「前記蒸気ドラムから第2加熱用熱水を前記蒸発器へ供給し、」は、本件補正前の(すなわち、平成28年2月22日提出の手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の請求項1の「前記蒸発器で、前記低沸点媒体と前記蒸気ドラムから供給された前記第2加熱用熱水とを熱交換させたのち、前記第2加熱水の温度が低下した加熱用水を前記水として前記蒸気ドラムに戻す加熱用熱水循環系統」及び請求項4の「前記蒸発器で、前記低沸点媒体と前記蒸気ドラムから供給した前記第2加熱用熱水が熱交換をするステップ」についてそれぞれ限定を付加するものであるから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、当初明細書の段落【0039】には「高圧蒸気ドラム18内部の液相部分の高温度領域の熱水は、熱水循環ポンプ56によって加圧され、ORCシステム13の蒸発器46には、高圧蒸気ドラム18から液相状態にある加熱用の熱水である加熱用熱水が供給される。蒸発器46では、加熱用熱水と低沸点媒体が熱交換する。」と記載されているから、「前記蒸気ドラムから第2加熱用熱水を前記蒸発器へ供給し、」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものであるとはいえない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までで示すように、補正後の請求項1ないし4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成28年10月5日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。


「【請求項1】
エンジン部と、
前記エンジン部から排出される排ガスと熱交換して第1加熱用熱水及び第1蒸気を生成する熱交換部と、
前記熱交換部に水を供給し、かつ、前記熱交換部で生成された前記第1加熱用熱水及び前記第1蒸気が供給される蒸気ドラムと、
前記蒸気ドラムから第3蒸気が供給されて駆動される蒸気タービンと、
低沸点媒体が蒸発器を流通してタービンを駆動する有機ランキンサイクルシステムと、
前記蒸気ドラムから第2加熱用熱水を前記蒸発器へ供給し、前記蒸発器で、前記低沸点媒体と前記蒸気ドラムから供給された前記第2加熱用熱水とを熱交換させたのち、前記第2加熱用熱水の温度が低下した加熱用水を前記水として前記蒸気ドラムに戻す加熱用熱水循環系統と、
を備える排熱回収システム。
【請求項2】
前記蒸気ドラムに接続されるダンプ弁と、
前記ダンプ弁の開動作に基づいて、前記有機ランキンサイクルシステムの前記蒸発器への前記蒸気ドラム内の前記第1加熱用熱水の供給を開始させる制御部と、
を更に備える請求項1に記載の排熱回収システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排熱回収システムを備える船舶。
【請求項4】
エンジン部から排出される排ガスとの熱交換が行われる熱交換部に蒸気ドラムから水を供給するステップと、
前記熱交換部にて第1加熱用熱水及び蒸気を生成するステップと、
前記熱交換部で生成された前記第1加熱用熱水及び前記蒸気を前記蒸気ドラムに供給するステップと、
前記蒸気ドラムから蒸気タービンへ第3蒸気を供給して前記蒸気タービンを駆動するステップと、
有機ランキンサイクルシステムにて低沸点媒体を蒸発器へ流通させてタービンを駆動するステップと、
前記蒸気ドラムから第2加熱用熱水を前記蒸発器へ供給し、前記蒸発器で、前記低沸点媒体と前記蒸気ドラムから供給した前記第2加熱用熱水が熱交換をするステップと、
前記蒸発器で前記第2加熱用熱水の温度が低下した加熱用水を前記水として前記蒸気ドラムへ戻すステップと、
を備える排熱回収方法。」


第5 刊行物、刊行物に記載された発明等

1.刊行物1

(1)刊行物1の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-231636号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

1a)「【0001】
本発明は、内燃機関の排熱を回収して発電する排熱回収発電装置およびこれを備えた船舶に関するものである。」(段落【0001】)

1b)「【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図2を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態の排熱回収発電装置を船舶の排熱回収システムに適用した場合の構成について、電力系統を含めた状態で示されている。したがって、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図2に示されているように、シリンダジャケット2を冷却して昇温したジャケット冷却水は予熱器1へと流れ、排熱回収用ポンプ24によって排熱回収系統7を循環する熱媒水と熱交換する。予熱器1にて排熱回収した熱媒水は、第1空気冷却器5へと導かれ、過給機40から吐出された圧縮空気から圧縮熱を除去して昇温させられた後、蒸発器30へと導かれる。蒸発器30にて熱媒水によって加熱されて蒸発した有機流体は、パワータービン32を駆動し、これにより発電機38にて発電が行われる。発電機38にて発電された電力は、インバータ装置42にて周波数調整された後、船内系統44へと導かれる。
【0044】
推進用主機であるディーゼルエンジンの排ガスは、排ガスエコノマイザ(排ガス熱交換器)46へと導かれる。排ガスエコノマイザ46では、排ガスの顕熱を回収して過熱器48にて過熱蒸気を生成し、蒸気タービン50を駆動する。蒸気タービン50には、クラッチ52を介して排ガスパワータービン(ガスタービン)54が接続されている。排ガスパワータービン54は、ディーゼルエンジンの排気マニホールド56から導かれる排ガスによって駆動される。
これら蒸気タービン50及びパワータービン54によって得られた回転出力は、減速機58を介して発電機60へと伝達され、この発電機60にて発電が行われる。発電機60にて発電された電力は、船内系統44へと出力される。
【0045】
船内系統44には、複数(図2おいては3台)の発電用ディーゼルエンジン62及び発電機64が並列に接続されている。これら発電用ディーゼルエンジン62は、船内需要電力に応じて起動および停止が行われる。
さらに船内系統44には、軸発電機モータ66が接続されている。軸発電機モータ66は、船内系統44から電力を得て船舶推進用プロペラ68を加勢できるようになっている一方で、船舶推進用プロペラ68からの動力を回収して発電し、船内系統44へと給電できるようになっている。」(段落【0042】ないし【0045】)

1c)「【0048】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図3を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態に加えて、排ガスエコノマイザ46にて得られた蒸気を有機ランキンサイクルの熱源として用いる点が各上記実施形態と異なる。したがって、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
排ガスエコノマイザ46には、過熱器48よりも低温側(排ガス流れ下流側)に位置する蒸発器49が設けられている。蒸発器49にて蒸発した蒸気は、蒸気ドラム72へと導かれる。この蒸気ドラム72の上方に滞留する蒸気は、加熱器(第4排熱回収器)70へと導かれる。加熱器70では、排熱回収系統7を流れる熱媒水が加熱され、蒸発器30へと導かれる。
【0050】
このように、本実施形態では、第1空気冷却器5にて加熱された熱媒水が、加熱器70にて更に加熱されるので、蒸発器30における有機冷媒の加熱温度を高めることができる。これにより、有機ランキンサイクルによる発電を高効率とすることができる。また、排ガスエコノマイザ46にて得られた蒸気を有効利用することができるので、排熱回収発電を更に高効率とすることができる。
【0051】
なお、図3において、符号3は船舶推進用ディーゼルエンジンを示しており、その側方にはシリンダジャケット2が模式的に示されている。また、符号74は蒸気タービン50の下流側に接続された蒸気タービンコンデンサ、符号76は復水ポンプ、符号78はグランドコンデンサ、符号80は大気圧コンデンサ、符号82は給水ポンプを示している。さらに、符号84は蒸気ドラム72内の水を蒸発器49へと送るボイラドラム水循環ポンプを示し、符号86は、蒸気ドラム72内の水位を調整する蒸気ドラムレベル制御弁を示している。」(段落【0048】ないし【0051】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること

1d)上記(1)1b及び1c)並びに図3の記載から、刊行物1には、船舶推進用ディーゼルエンジン3から排出される排ガスと熱交換して熱水及び蒸気を生成する排ガスエコノマイザ46と、排ガスエコノマイザ46に水を供給し、かつ、排ガスエコノマイザ46で生成された蒸気が供給される蒸気ドラム72と、が記載されていることが分かる。

1e)上記(1)1b)及び1c)並びに図3から、刊行物1には、蒸気ドラム72の上方に滞留する蒸気を加熱器70へ導き、加熱器70で加熱された熱媒水を蒸発器30へ導き、蒸発器30で、熱媒水によって有機流体を加熱したのち、温度が低下した熱媒水を水として蒸気ドラム72に戻す熱媒水循環系統が記載されていることが分かる。

(3)引用発明

上記(1)及び(2)並びに図1ないし図6の記載からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「船舶推進用ディーゼルエンジン3と、
船舶推進用ディーゼルエンジン3から排出される排ガスと熱交換して蒸気を生成する排ガスエコノマイザ46と、
排ガスエコノマイザ46に水を供給し、かつ、排ガスエコノマイザ46で生成された蒸気が供給される蒸気ドラム72と、
蒸気ドラム72にて蒸気が生成されて駆動される蒸気タービン50と、
有機流体が蒸発器30にて熱媒水によって加熱されて蒸発してタービン32を駆動する有機ランキンサイクルと、
蒸気ドラム72の上方に滞留する蒸気を加熱器70へ導き、加熱器70で加熱された熱媒水を蒸発器30へ導き、蒸発器30で、熱媒水によって有機流体を加熱したのち、温度が低下した熱媒水を水として蒸気ドラム72に戻す熱媒水循環系統と、
を備える排熱回収発電装置。」

2.刊行物2

(1)刊行物2の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-149541号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

2a)「【0001】
本発明は、排熱回収発電装置および船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクルを利用して、地熱や内燃機関の排ガス等の排熱を回収して発電する技術が提案されている。例えば、ディーゼル発電機からの排熱を熱源とし、有機流体を熱媒体とする有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)によって発電する排熱回収発電装置がある。」(段落【0001】及び【0002】)

2b)「【0063】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図5を用いて説明する。
以下に、本発明の排熱回収発電装置8が船舶の推進用主機(ディーゼルエンジン40;内燃機関)の排熱回収として設置された構成を例として、図面を参照して説明する。図5において、破線で囲まれた領域が本発明の排熱回収発電装置8である。
【0064】
排熱回収発電装置8は、高圧サイクル9と低圧サイクル10の二つの有機流体経路を有する。高圧サイクル9は、循環ポンプ31と、流量調整弁26と、第1蒸発器12と、タービン33と、凝縮器35からなる。低圧サイクル10は、循環ポンプ31と、流量調整弁26,27と、第2蒸発器22と、タービン33と、凝縮器35からなる。タービン33は、減速器36を介して発電機34が接続されている。
【0065】
有機流体経路は閉回路である。高圧サイクル9と低圧サイクル10には、共通する循環ポンプ31が設けられており、有機流体は循環ポンプ31によって循環する。高圧サイクル9の圧力および流量は、流量調整弁26によって調整され、低圧サイクル10の圧力および流量は、流量調整弁26,27によって調整される。
【0066】
高圧サイクル9と低圧サイクル10の有機流体経路を流れる有機流体としては、イソペンタン、ブタン、プロパンなどの低分子炭化水素や、冷媒として用いられるR134a、R245fa等を用いることができる。有機流体は、高圧サイクル9にて、循環ポンプ31と、第1蒸発器12と、タービン33と、凝縮器35を通過して相変化を繰り返しながら循環し、低圧サイクル10にて、循環ポンプ31と、第2蒸発器22と、タービン33と、凝縮器35を通過して相変化をくり返しながら循環する。
【0067】
第1蒸発器12は、流路56を流れる熱媒水が第1空気冷却器46や排ガスエコノマイザ(排ガス熱交換器)55にて回収した熱によって、循環ポンプ31から送られた液相の有機流体を加熱し、有機流体を気相に変化させる。なお、第1空気冷却器46は、熱媒水と熱交換することで、ディーゼルエンジン40のターボチャージャ(過給器)42から吐出された圧縮空気を冷却する。また、排ガスエコノマイザ55は、熱媒水と熱交換することで、ディーゼルエンジン40から排出された排ガスを冷却する。
【0068】
第2蒸発器22は、ジャケット冷却水循環流路52を流れるジャケット冷却水(熱媒体)がディーゼルエンジン40のシリンダジャケットにて回収した熱によって、循環ポンプ31から送られた液相の有機流体を加熱し、有機流体を気相に変化させる。なお、シリンダジャケットは、ディーゼルエンジン40に設けられ、ジャケット冷却水と熱交換することで、ディーゼルエンジン40のシリンダブロック等を冷却する。
【0069】
タービン33は、高圧サイクル9の第1蒸発器12で蒸発した有機流体と、低圧サイクル10の第2蒸発器22で蒸発した有機流体が導入される。そして、タービン33は、第1蒸発器12と第2蒸発器22によって蒸発した有機流体の熱落差(エンタルピー落差)によって回転駆動される。
【0070】
タービン33の回転動力は発電機34に伝達され、発電機34にて電力が得られるようになっている。発電機34で得られた電力は、図示しない電力線を介して船内系統へと供給される。タービン33を通過した有機流体は、凝縮器35にて海水によって冷却されて凝縮液化する。凝縮液化した有機流体は、循環ポンプ31によって第1蒸発器12及び第2蒸発器22へと送られる。」(段落【0063】ないし【0070】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること

2c)上記(1)2b)の記載から、刊行物2には、ディーゼルエンジン40から排出される排ガスと熱交換して熱媒水を生成する排ガスエコノマイザ55が記載されていることが分かる。

2d)上記(1)2b)及び図5から、刊行物2には、排ガスエコノマイザ55から熱媒水を第1蒸発器12へ供給し、第1蒸発器12で、有機流体と排ガスエコノマイザ55から供給された熱媒水とを熱交換させたのち、温度が低下した熱媒水を水として排ガスエコノマイザ55に戻す熱媒水循環系統が記載されていることが分かる。

(3)刊行物2の技術

上記(1)及び(2)並びに図1ないし図10の記載からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2の技術」という。)が記載されていると認める。

「ディーゼルエンジン40と、
ディーゼルエンジン40から排出される排ガスと熱交換して熱媒水を生成する排ガスエコノマイザ55と、
有機流体が第1蒸発器12で蒸発してタービン33を駆動する有機ランキンサイクルと、
排ガスエコノマイザ55から熱媒水を第1蒸発器12へ供給し、第1蒸発器12で、有機流体と排ガスエコノマイザ55から供給された熱媒水とを熱交換させたのち、温度が低下した熱媒水を水として排ガスエコノマイザ55に戻す熱媒水循環系統と、
を備える排熱回収発電装置。」

3.刊行物3

(1)刊行物3の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-106302号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

3a)「【0001】
本発明は、エンジン廃熱回収発電ターボシステムおよびこれを備えた往復動エンジンに関するものである。」(段落【0001】)

3b)「【0026】
往復動エンジンシステム1には、往復動エンジン3と、エンジン廃熱回収発電ターボシステム5とが備えられている。
往復動エンジン3には、ガソリン、アルコール、ガス(天然ガス、石油ガス等)等の燃料と空気とを適当な混合比になるように吸入、圧縮し、たとえば、電気火花で着火して爆発(急撃な燃焼)を起こさせる複数のシリンダ7と、シリンダ7の燃焼室周囲を冷却するジャケット冷却水循環系統9と、シリンダ7に吸入される空気を圧縮して吸入される空気量を増加させるターボチャージャ11とが備えられている。
【0027】
シリンダ7には、空気を吸入する吸気通路13と、シリンダ7で燃焼された燃焼ガスを排気ガスとして排気する排気通路(排気ガス流路)15とが備えられている。
ジャケット冷却水循環系統9には、シリンダ7、特に、燃焼室の回りに二重構造の空間を形成するジャケット(エンジンジャケット)17と、ジャケット冷却水を循環させる冷却水ポンプ19と、ジャケット17、冷却水ポンプ19およびジャケット17を結びジャケット冷却水を循環させるジャケット水循環流路21とが備えられている。」(段落【0026】及び【0027】)

3c)「【0031】
蒸発器部33には、ジャケット水循環流路21の高温側のジャケット冷却水と低沸点媒体との間で熱交換を行うジャケット冷却水熱交換器(第2の熱交換器)43と、排気通路15を通る排気ガスと低沸点媒体との間で熱交換を行う排気ガス熱交換器(第1の熱交換器)45と、が備えられている。
ジャケット冷却水熱交換器43は、排気ガス熱交換器45の上流側に配置されている。ジャケット冷却水熱交換器43の高温側には、たとえば、80?85℃であるジャケット冷却水が供給され、低温側には、たとえば、約40℃の液相で高圧の低沸点媒体が対向流式に供給されている。」(段落【0031】)

3d)「【0033】
排気ガス熱交換器45の高温側には、加熱用の排気ガスが供給され、低温側には、たとえば、約75℃の液相で高圧の低沸点媒体が対向流式に(または直交流式に)供給されている。
低沸点媒体は排気ガス流路を通る排気ガスによって昇温され、気相に変換される。言い換えると、低沸点媒体はシリンダ7から廃棄される排気ガスから熱量を回収することができる。
【0034】
タービン35は、蒸発器部33で、高圧・高温の気相とされた低沸点媒体を断熱膨張させ、低圧の気相とする。タービン35は、その際低沸点媒体の膨張から仕事を得、回転される。
タービン35には、主軸47が備えられている。」(段落【0033】及び【0034】)

(2)刊行物3の技術

上記(1)及び図1ないし6の記載からみて、刊行物3には以下の技術(以下、「刊行物3の技術」という。)が記載されていると認める。

「往復動エンジン3と、
往復動エンジン3から排気される排気ガスが流通する排気ガス熱交換器45と、
低沸点媒体が排気ガス熱交換器45を流通してタービン35を駆動する有機ランキンサイクルシステムと、
を備えるエンジン排熱回収発電ターボシステム。」

第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明における「船舶推進用ディーゼルエンジン3」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「エンジン部」に相当し、以下同様に、「第1蒸気」は「蒸気」に、「排ガスエコノマイザ46」は「熱交換部」に、「蒸気ドラム72」は「蒸気ドラム」に、「蒸気ドラム72にて蒸気が生成されて」は「蒸気ドラムから第3蒸気が供給されて」に、「蒸気タービン50」は「蒸気タービン」に、「有機流体」は「低沸点媒体」に、「蒸発器30にて熱媒水によって加熱され」は「蒸発器を流通して」に、「タービン32」は「タービン」に、「有機ランキンサイクル」は「有機ランキンサイクルシステム」に、「排熱回収発電装置」は「排熱回収システム」にそれぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]

「エンジン部と、
エンジン部から排出される排ガスと熱交換して第1蒸気を生成する熱交換部と、
熱交換部に水を供給し、かつ、熱交換部で生成された第1蒸気が供給される蒸気ドラムと、
蒸気ドラムから第3蒸気が供給されて駆動される蒸気タービンと、
低沸点媒体が蒸発器を流通してタービンを駆動する有機ランキンサイクルシステムと、
を備える排熱回収システム。」

[相違点1]

本願発明1においては、第1加熱用熱水及び第1蒸気が熱交換部で生成されるのに対し、引用発明では、蒸気が排ガスエコノマイザ46で生成されるものの、加熱用熱水が生成されるか不明である点。(以下、「相違点1」という。)

[相違点2]

本願発明1においては、「蒸気ドラムから第2加熱用熱水を蒸発器へ供給し、蒸発器で、低沸点媒体と蒸気ドラムから供給された第2加熱用熱水とを熱交換させたのち、第2加熱用熱水の温度が低下した加熱用水を水として蒸気ドラムに戻す加熱用熱水循環系統」を備えるのに対し、引用発明においては、蒸気ドラム72の上方に滞留する蒸気を加熱器70へ導き、加熱器70で加熱された熱媒水を蒸発器30へ導き、蒸発器30で、熱媒水によって有機流体を加熱したのち、温度が低下した熱媒水を水として蒸気ドラム72に戻す熱媒水循環系統を備える点。(以下、「相違点2」という。)

(2)相違点についての判断

事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。

上記相違点2に係る本願発明1における蒸気ドラムは加熱用熱水を供給するものであるのに対して、引用発明における蒸気ドラム72は蒸気を供給するものである。
そして、加熱用熱水を供給する蒸気ドラムは、刊行物1ないし刊行物3のいずれにも記載も示唆もなく、引用発明において、蒸気ドラム72を加熱用熱水を蒸発器30に供給するものとし、かかる加熱用熱水を熱媒水として蒸発器で、有機流体と熱交換させるものとなすことが、当業者にとって容易であったとすることはできない。

してみれば、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうち、「蒸気ドラムから第2加熱用熱水を蒸発器へ供給」するという事項は、刊行物1ないし3のいずれにも記載がなく、また、引用発明、並びに、刊行物2の技術及び刊行物3の技術において示唆されるものでもない。

したがって、引用発明に刊行物2の技術及び刊行物3の技術を適用することにより、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものとすることはできないのであるから、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、刊行物2の技術及び刊行物3の技術に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

2.本願発明2及び3について

本願の特許請求の範囲における請求項2及び3は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2及び3は、本願発明1と同様の理由で、引用発明、刊行物2の技術及び刊行物3の技術に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

3.本願発明4について

本願の特許請求の範囲における請求項4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を発明特定事項として包含するものであるから、上記(1)に記載した理由と同様の理由により、引用発明、刊行物2の技術及び刊行物3の技術に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1ないし4は「前記蒸気ドラムから第2加熱用熱水を前記蒸発器へ供給し、」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、本願の請求項1ないし4に係る発明は、いずれも引用発明、刊行物2の技術及び刊行物3の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2013-220136(P2013-220136)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 佐々木 芳枝
松下 聡
発明の名称 排熱回収システム、船舶及び排熱回収方法  
代理人 三苫 貴織  
代理人 長田 大輔  
代理人 藤田 考晴  
代理人 石本 貴幸  
代理人 川上 美紀  
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