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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 B60C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1329733
審判番号 不服2016-15750  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-21 
確定日 2017-07-11 
事件の表示 特願2012-117886号「タイヤのシミュレーション方法及びシミュレーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月9日出願公開、特開2013-244765号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月23日の出願であって、平成27年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月29日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月14日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、同年10月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1?6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物1?3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物]
1.特開2011-235758号公報(以下、「引用文献1」という。)
2.特開2005-075296号公報(以下、「引用文献2」という。)
3.特開2004-345497号公報(以下、「引用文献3」という。)

意見書において、「タイヤモデルに遠心力を設定しておくことが周知技術であったとしましても、当業者であれば、『停止しているタイヤの固有振動数を計算する』ことを課題とする引用文献1のシミュレーション方法及びシミュレーション装置に、遠心力の設定を試みる動機ないし必然性がありません。」と主張しているが、引用文献1に記載の発明において、走行中ではなくて停止しているタイヤの固有振動数を計算するという、課題は認められず、上記主張は採用できない

従来のハンマリング試験を改良しているからといって、積極的に、停止している静的なタイヤの固有振動数を計算したい意思がある証拠にはならず、むしろ、引用文献1[0002]の「・・・自動車に装着して走行試験を行わなくても、・・・走行性能や特性などのタイヤ性能をシミュレート・・・」、[0028]の「・・・タイヤが実際に使用される状態の固有振動数を求めることができる。」等の記載から、引用文献1に記載の発明では、停止中の固有振動数よりも走行中の固有振動数の方が、より求めたいものであることは、明らかである。
よって、引用文献1に記載の発明に、引用文献2,3に記載の遠心力を設定しておく周知技術を適用することに格別な困難性はない。

第3 審判請求時の手続補正の適否
1 補正の内容
審判請求時の手続補正である平成28年10月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、次の補正事項を含んでいる。
なお、下線は補正箇所を明示するために当審が付したものである。

(1)補正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「 【請求項1】
コンピュータを用いて、タイヤの固有振動数を計算するためのタイヤのシミュレーション方法であって、
前記コンピュータに、前記タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを入力するステップ、
前記コンピュータに、路面を有限個の要素でモデル化した路面モデルを入力するステップ、
前記コンピュータが、予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算するステップ、
前記コンピュータが、前記内圧充填後のタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて接地後の形状を計算する接地ステップ、
前記コンピュータが、予め定められた走行速度に基づいて計算された遠心力を、前記接地後のタイヤモデルの前記各要素に定義して変形計算を行うことにより、変形タイヤモデルを得る遠心力設定ステップ、及び
前記コンピュータが、前記変形タイヤモデルの固有振動数を計算するステップを含み、
前記接地後のタイヤモデルの各要素Eiに定義される前記遠心力Fiは、下記式(1)で計算され、
下記式(1)の前記タイヤの回転半径Rは、前記内圧充填後のタイヤモデルの回転軸から踏面までの最大半径であることを特徴とするタイヤのシミュレーション方法。
Fi=mi×ri×(V/R)^(2) …(1)
ここで、符号は次の通りである。
Fi:タイヤモデルの各要素Eiの遠心力
mi:タイヤモデルの各要素Eiの質量
ri:タイヤモデルの回転軸からタイヤモデルの各要素Eiまでの距離
V:走行速度
R:タイヤの回転半径」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)。

(2)補正事項2
本件補正前の特許請求の範囲の請求項6を補正して、それを請求項2に繰り上げて記載することで、特許請求の範囲の請求項2を、
「 【請求項2】
タイヤの固有振動数を計算する演算処理装置を有するシミュレーション装置であって、
前記演算処理装置は、前記タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルが入力されるタイヤモデル入力部、
路面を有限個の要素でモデル化した路面モデルが入力される路面モデル入力部、
予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算する内圧充填形状計算部、
前記内圧充填後のタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて接地後のタイヤモデルの形状を計算する接地後形状計算部、
予め定められた走行速度に基づいて計算された遠心力を、前記接地後のタイヤモデルの前記各要素に定義して変形計算を行うことにより、変形タイヤモデルを得る遠心力計算部、及び
前記変形タイヤモデルの固有振動数を計算する固有振動計算部を含み、
前記接地後のタイヤモデルの各要素Eiに定義される前記遠心力Fiは、下記式(1)で計算され、
下記式(1)の前記タイヤの回転半径Rは、前記内圧充填後のタイヤモデルの回転軸から踏面までの最大半径であることを特徴とするシミュレーション装置。
Fi=mi×ri×(V/R)^(2) …(1)
ここで、符号は次の通りである。
Fi:タイヤモデルの各要素Eiの遠心力
mi:タイヤモデルの各要素Eiの質量
ri:タイヤモデルの回転軸からタイヤモデルの各要素Eiまでの距離
V:走行速度
R:タイヤの回転半径」
とする補正(以下、「補正事項2」という。)。

(3)補正事項3
本件補正前の特許請求の範囲の請求項2?5を削除する補正(以下、「補正事項3」という。)。

(4)補正事項4
本件補正前の明細書の段落【0007】?【0011】について、明細書の段落【0007】及び【0008】を、
「 【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、コンピュータを用いて、タイヤの固有振動数を計算するためのタイヤのシミュレーション方法であって、前記コンピュータに、前記タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを入力するステップ、前記コンピュータに、路面を有限個の要素でモデル化した路面モデルを入力するステップ、前記コンピュータが、予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算するステップ、前記コンピュータが、前記内圧充填後のタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて接地後の形状を計算する接地ステップ、前記コンピュータが、予め定められた走行速度に基づいて計算された遠心力を、前記接地後のタイヤモデルの前記各要素に定義して変形計算を行うことにより、変形タイヤモデルを得る遠心力設定ステップ、及び前記コンピュータが、前記変形タイヤモデルの固有振動数を計算するステップを含み、前記接地後のタイヤモデルの各要素Eiに定義される前記遠心力Fiは、下記式(1)で計算され、下記式(1)の前記タイヤの回転半径Rは、前記内圧充填後のタイヤモデルの回転軸から踏面までの最大半径であることを特徴とする。
Fi=mi×ri×(V/R)^(2) …(1)
ここで、符号は次の通りである。
Fi:タイヤモデルの各要素Eiの遠心力
mi:タイヤモデルの各要素Eiの質量
ri:タイヤモデルの回転軸からタイヤモデルの各要素Eiまでの距離
V:走行速度
R:タイヤの回転半径
【0008】
また、請求項2記載の発明は、タイヤの固有振動数を計算する演算処理装置を有するシミュレーション装置であって、前記演算処理装置は、前記タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルが入力されるタイヤモデル入力部、路面を有限個の要素でモデル化した路面モデルが入力される路面モデル入力部、予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算する内圧充填形状計算部、前記内圧充填後のタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて接地後のタイヤモデルの形状を計算する接地後形状計算部、予め定められた走行速度に基づいて計算された遠心力を、前記接地後のタイヤモデルの前記各要素に定義して変形計算を行うことにより、変形タイヤモデルを得る遠心力計算部、及び前記変形タイヤモデルの固有振動数を計算する固有振動計算部を含み、前記接地後のタイヤモデルの各要素Eiに定義される前記遠心力Fiは、下記式(1)で計算され、下記式(1)の前記タイヤの回転半径Rは、前記内圧充填後のタイヤモデルの回転軸から踏面までの最大半径であることを特徴とする。
Fi=mi×ri×(V/R)^(2 )…(1)
ここで、符号は次の通りである。
Fi:タイヤモデルの各要素Eiの遠心力
mi:タイヤモデルの各要素Eiの質量
ri:タイヤモデルの回転軸からタイヤモデルの各要素Eiまでの距離
V:走行速度
R:タイヤの回転半径」
とし、明細書の段落【0009】?【0011】の記載を削除する補正(以下、「補正事項4」という。)。

2 補正の適否
2-1 補正事項1について
(1)新規事項の追加の有無及び補正の目的等の適否について
本件補正の補正事項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「接地後のタイヤモデルの各要素に定義」される「遠心力」について、補正前の請求項2、5及び明細書の段落【0051】の記載を根拠として、「前記接地後のタイヤモデルの各要素Eiに定義される前記遠心力Fiは、下記式(1)で計算され、
下記式(1)の前記タイヤの回転半径Rは、前記内圧充填後のタイヤモデルの回転軸から踏面までの最大半径であ」り、
「Fi=mi×ri×(V/R)^(2) …(1)
ここで、符号は次の通りである。
Fi:タイヤモデルの各要素Eiの遠心力
mi:タイヤモデルの各要素Eiの質量
ri:タイヤモデルの回転軸からタイヤモデルの各要素Eiまでの距離
V:走行速度
R:タイヤの回転半径」
という構成を付加して限定するものであるから、発明特定事項を限定するものであり、また、新規事項を追加するものではない。
したがって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものであり、また、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1(上記1(1)の【請求項1】)に係る発明(以下「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(2)独立特許要件について
ア 引用文献に記載された事項及び発明
(ア)引用文献1に記載された事項
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献1には、図1?8とともに、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付加した。以下同様である。
(1a)
「【請求項1】
空気入りタイヤを有限個の要素に分割したタイヤモデルの固有振動数を解析するシミュレーション方法であって、
前記空気入りタイヤが接地する路面を有限個の要素で模擬した路面モデルを設定する路面モデル設定ステップと、
前記タイヤモデルに所定の内圧を設定するとともに、前記タイヤモデルと前記路面モデルの表面との間に所定の荷重が発生するように前記タイヤモデルと前記路面モデルとの距離を定める境界条件を設定する境界条件設定ステップと、
前記タイヤモデルを構成する要素の節点のうち前記路面モデルに接触している節点を検出する接触検出ステップと、
前記接触検出ステップにおいて検出された節点を拘束状態にする拘束ステップと、
前記路面モデルに接触している節点を前記拘束状態にしたタイヤモデルの固有振動数を算出する固有振動数算出ステップと
を有するシミュレーション方法。」
(1b)
「【請求項3】
前記請求項1又は2の何れか一項に記載のシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置。」
(1c)
「【0002】
近年、タイヤの開発において、有限要素法などの数値解析手法や計算機環境の発達により、実際にタイヤを製造し、自動車に装着して走行試験を行わなくても、新たに設計したタイヤを複数要素でモデル化したタイヤモデルと、ホイールを複数要素でモデル化したホイールモデルとの複合体モデルを用いて走行性能や特性などのタイヤ性能をシミュレートすることが可能になった。
・・・
【0008】
本発明の特徴によれば、タイヤモデルが路面モデルの表面に接地する境界条件が設定され、タイヤモデルを構成する要素の節点のうち路面モデルに接触している節点が拘束状態にされる。このため、タイヤモデルが路面に接地した状態における固有振動数を解析することができる。従って、タイヤが使用される状態の固有振動数を求めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤモデルの固有振動数を解析する際、現実のタイヤに近い固有振動数が得られるシミュレーション方法及びシミュレーション装置を提供できる。」
(1d)
「【0012】
(1)シミュレーション方法
図1は、発明の実施形態として示すシミュレーション方法を説明するフローチャートである。実施形態として説明するシミュレーション方法は、有限要素法を用いた固有振動数解析である。
【0013】
以下に、本実施形態のシミュレーション方法について説明する。ステップS1は、設計ステップである。設計ステップでは、シミュレーション方法の評価対象とする新たな空気入りタイヤが設計される。具体的には、空気入りタイヤのタイヤサイズ、形状、構造、材料などが定められる。空気入りタイヤのタイヤサイズ、形状、構造、材料などの設計データが入力される。
【0014】
ステップS2は、ステップS1で設計された空気入りタイヤの形状、構造、材料を有限個の要素に分割したタイヤモデル10を設定する。本実施形態では、有限要素法(FEM)を適用することによってタイヤモデル10を作成する。タイヤモデル10は、実際の空気入りタイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘインプット可能なデータ形式に数値化したものである。
【0015】
上記ステップS2で作成するタイヤモデル10は、複数の要素に分割されている。要素分割とは、空気入りタイヤ、路面、流体等を有限個の小部分(要素という)に分割することである。すなわち、タイヤモデル10は、複数個の要素から構成されている。有限要素法は、例えば、変形、熱、粘弾性などの物理量の計算を、タイヤモデル10を構成する全要素について個別に計算した後、全要素に対する計算結果を積算することによって、タイヤモデル全体の物理量を算出する方法である。」
(1e)
「【0016】
図2は、シミュレーション方法において設定されるタイヤモデル10を説明する模式図である。図2に示すタイヤモデル10には、空気入りタイヤのトレッド部11に形成された溝と陸部との基本構造を有限個の要素に分割したトレッドパターンモデルが設定されている。また、タイヤモデル10には、ビードワイヤ,ビード部,サイド部、内部のゴム部材、ベルト,カーカスプライ,インナーライナーに対応する要素が設定されている(図2には不図示)。
【0017】
トレッド部、サイド部及び内部のゴム部材は、シェル要素、膜要素、リバー要素などでモデル化される。また、ビードワイヤは、ソリッド要素を用いてモデル化される。ゴム部材は、Mooney-Rivln材料、Ogdcn材料などの超弾性体を用いてモデル化される。ゴム部材は、粘性を考慮した粘弾性体でモデル化することもできる。粘性は、線形粘弾性やProny級数を用いてモデル化される。
【0018】
ステップS2では、タイヤモデル10にホイールモデル20が組み付けられた複合体モデル30を設定してもよい。この場合には、空気入りタイヤが装着されるホイールを有限個の要素に分割したホイールモデル20が作成され(ホイールモデル設定ステップ)、ホイールモデル20とタイヤモデル10との複合体である複合体モデルが設定される(複合体モデル設定ステップ)。図3は、本実施形態に係るシミュレーション方法において設定
されるホイールモデル20を説明する模式図である。ホイールモデル20には、リム部21とディスク部22が設定されている。また、ボルト、ナット等を用いてホイールを車両に取り付けるためのボルト孔23が設定されている。
【0019】
ステップS3では、空気入りタイヤが接地する路面を有限個の要素で模擬した路面モデル30が設定される。ステップS3は、路面モデル設定ステップに相当する。
【0020】
ステップS4は、内圧設定ステップである。内圧設定ステップでは、ステップS2で作成された複合体モデルに、所定の空気圧が設定される。
【0021】
ステップS5では、タイヤモデル10と路面モデル30とが接触しながらタイヤモデル10と路面モデル30の表面との間に所定の荷重が発生するように、タイヤモデル10と路面モデル30との距離を定める境界条件が設定され、非線形解析が実行される。図4は、タイヤモデル10と路面モデル30とを説明する図である。ステップS4,S5は、境界条件設定ステップを構成する。」
(1f)
「【0022】
ステップS6において、タイヤモデル10を構成する要素の節点のうち路面モデル30に接触している節点を検出する。図5は、路面モデルと接触するタイヤモデルの節点を説明する図である。図5において、タイヤモデル10を構成するk番目の要素を要素kと表す。要素kの節点をNk1、Nk2,Nk3,Nk4と表す。タイヤモデル10を構成するn個の要素のうち路面モデル30と接触している領域を領域Tとする。このとき、タイヤモデル10を構成する要素の節点のうち路面モデル30に接触している節点とは、領域Tに含まれる要素を構成する節点である。なお、路面モデル30に接触している節点は、路面モデル30に接触していない節点とは異なり、路面モデル30を貫通することができない。従って、路面モデル30の表面に留まっている節点が、すなわち路面モデル30に接触している節点として検出される。」
(1g)
「【0023】
ステップS7では、ステップS6で検出された節点を拘束状態にする。ここで、「拘束状態」とは、物理自由度を拘束する拘束条件を設定することである。すなわち、節点における変位をゼロに設定することである。」
(1h)
「【0024】
ステップS8において、路面モデル30に接触している節点が拘束状態にされたタイヤモデル10の固有振動数解析を実行する。実施形態では、拘束モード法による固有振動数解析を実行する。」
(1i)
「【0025】
(2)シミュレーション装置
図6には、実施形態のシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置として、コンピュータ300の概略が示されている。図6に示すように、コンピュータ300は、半導体メモリー、ハードディスクなどの記憶部(不図示)、処理部(不図示)などを備えた本体部310と、入力部320と、表示部330とを備える。処理部は、図1を用いて説明したシミュレーション方法を実行する。」
(1j)
「【0028】
従来、タイヤモデルの接地による変形とタイヤモデルの固有振動数とを一度に解析することは、演算の種類が異なっており困難であったため、タイヤモデルのトレッド部に非接地状態で外力を与えるハンマリング試験を計算機上で実行していたが、路面モデル30に接地している節点を拘束するようにタイヤモデル10と路面モデル30とを修正したモデルを用いると、タイヤモデルの接地による変形と固有振動数とを解析できることがわかった。タイヤモデル10が路面モデル30の表面に接地する境界条件が設定され、タイヤモデル10が路面モデル30に接触することによる変形を計算し、その計算結果に基づいて、路面モデル30に接触している節点を拘束するようにタイヤモデル10及び路面モデル30を修正する。修正されたタイヤモデル10及び路面モデル30を用いて固有振動数を解析する。これにより、同時に解析することが困難であった路面との接触によるタイヤの接地面の変形の計算と、固有振動数の計算という2種類の計算を別々に行うことによって、タイヤモデル10が路面に接地した状態における固有振動数を解析できる。その結果、タイヤが実際に使用される状態の固有振動数を求めることができる。」

(イ)引用文献1に記載された発明
上記(1a)?(1j)及び図1?8から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「コンピュータが実行する、空気入りタイヤを有限個の要素に分割したタイヤモデルの固有振動数を解析するシミュレーション方法であって、
空気入りタイヤのタイヤサイズ、形状、構造、材料などの設計データが入力され、空気入りタイヤが設計されるステップS1と、
前記設計された空気入りタイヤの形状、構造、材料を有限個の要素に分割したタイヤモデルを設定するステップS2と、
前記空気入りタイヤが接地する路面を有限個の要素で模擬した路面モデルを設定する路面モデル設定ステップS3と、
前記タイヤモデルに所定の内圧を設定するステップS4と、
前記タイヤモデルと前記路面モデルの表面との間に所定の荷重が発生するように前記タイヤモデルと路面モデルとの距離を定める境界条件が設定され、非線形解析が実行されるステップS5と、
前記タイヤモデルを構成する要素の節点のうち前記路面モデルに接触している節点を検出する接触検出ステップS6と、
前記接触検出ステップにおいて検出された節点を拘束状態にする拘束ステップS7と、
前記路面モデルに接触している節点を前記拘束状態にしたタイヤモデルの固有振動数を算出する固有振動数算出ステップS8と
を有し、
タイヤモデルが路面モデルの表面に接地する境界条件が設定され、タイヤモデルが路面モデルに接触することによる変形を計算し、その計算結果に基づいて、路面モデルに接触している節点を拘束するようにタイヤモデル及び路面モデルを修正し、修正されたタイヤモデル及び路面モデルを用いて固有振動数を解析する、
シミュレーション方法。」

(ウ)引用文献2に記載された事項
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図1?11とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0001】
本発明は、タイヤの性能予測方法及びタイヤの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤ性能は、コンピュータを用いたシミュレーションにより予測することが可能である(例えば下記特許文献1参照)。この方法は、タイヤを数値解析が可能な有限個の要素で分割したタイヤモデルを設定するステップと、該タイヤモデルに所定の境界条件を与えてシミュレーションの計算を行うステップとを含んでいる。シミュレーションの結果より、例えば接地面形状、接地圧、コーナリングフォース、摩耗エネルギーといった種々の情報が、タイヤを実際に試作することなしに大凡の値として知ることができる。そして、得られたタイヤ性能が許容範囲と認められる場合、前記タイヤモデルに基づいてタイヤの具体的な設計ないし試作が行われる。」
(2b)
「【0014】
請求項1記載の発明によれば、接地面形状は、タイヤモデルに遠心力荷重を負荷して得られる。このような接地面形状は、新品のタイヤモデルが経時変化したときの接地面形状に近似している。従って、このような接地面形状を予測することによって、経時変化後のタイヤの性能を評価できる。」
(2c)
「【0017】
図2には、本発明のタイヤの性能予測方法を含むタイヤ設計方法の手順の一例を示し、この例ではタイヤの性能として主に耐摩耗性能(接地面形状)を取り上げる。先ず本実施形態では、タイヤを数値解析法、本例では有限要素法により取り扱い可能な要素でモデル化したタイヤモデルを設定する(ステップS1)。図3には、タイヤモデル2の一例を視覚化して示す。」
(2d)
「【0024】
次に、予め定めた条件に基づいて前記タイヤモデル2に遠心力荷重を作用させその接地面形状を計算する(ステップS2)。ステップS2の処理の具体的内容は、図4に示されている。先ず、接地面形状を得るための各種の条件がタイヤモデル2に設定される(ステップS21)。設定される条件としては、タイヤモデル2が装着されるリムに関する条件、充填される空気圧に関する条件、負荷される垂直荷重及び遠心力荷重に関する条件等が挙げられる。
【0025】
リムに関する条件として、図5に略示するように、タイヤモデル2のリム接触領域2b、2bを変位不能に拘束するとともに、該リム接触領域2b、2bを装着されるリムサイズに応じた幅Wに変形させる条件が設定される。また、タイヤモデル2の仮想の回転軸(以下、単に「回転軸」という。)CLは、前記リム拘束域2bとの相対距離rが常に一定となるよう連結固定される。これにより、タイヤモデル2がリムに組み込まれたときの形状が変形計算により得られる。
【0026】
また空気圧に関する条件として、図5に示すように、タイヤモデル2の内腔面の全域に、例えば規格で定められた最大の空気圧に相当する等分布荷重wが設定される。これにより、タイヤモデル2に空気圧が充填されたときの形状が、変形計算により得られる。
【0027】
また垂直荷重に関する条件として、図6に示すように、前記タイヤモデル2の回転軸CLを垂直下方に押し下げる垂直荷重の値が設定される。この垂直荷重の値としては、例えば当該タイヤモデルの基礎となったタイヤの規格最大荷重などを用いるのが好ましい。これにより、タイヤモデル2に垂直荷重が負荷されたときの形状が、変形計算により得られる。」
(2e)
「【0028】
さらに遠心力荷重に関する条件として、本実施形態ではタイヤモデル2が150?200km/hの速度V(周速度)で回転するときに生じる遠心力に相当する荷重が設定される。つまり、実際にタイヤモデル2を回転させるのではなく、回転した場合に負荷されるであろう遠心力と同じ大きさ、方向、向きの荷重を各要素毎に計算し、これを負荷するように設定する。例えば図7に側面から見て模式的に示すように、タイヤモデル2を構成する任意の要素eiにおいて、その質量をmi、前記回転軸CLから要素eiの質点eiaまでのタイヤ半径方向の距離をri、前記速度Vとタイヤの動荷重半径Rとで計算される角速度をωとすると、該要素eiに作用する遠心力荷重Fciの値は、下記式(1)により計算でき、これをタイヤ半径方向の外向きで該要素の質点eiaに負荷することができる。
Fci=mi・ri・ω^(2 ) …(1)」

(エ)引用文献3に記載された事項
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図1?6とともに、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0010】
そこで、本発明の目的は、静的なシミュレーション方法において、簡易な付加条件の採用により、比較的短時間でより精度の高い評価結果が得られるタイヤ性能のシミュレーション方法、これを利用したタイヤ設計方法、及びその設計値に基づいてタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。」
(3b)
「【0012】
本発明のシミュレーション方法によると、タイヤの仮想回転に相当する遠心力を付与するため、車速に対応した遠心力が負荷できるので、静的なシミュレーション方法でありながら、より実際の走行状態に近い状態をシミュレーションできる。しかも、ホイル軸の回転角0.5?5°又は回転トルク58000?1010000N・mmを与えるため、制動時又は発進時のように回転軸周りのトルクが負荷されたモデル状態が再現でき、耐久性、制動性能などのタイヤ性能の評価の精度が向上する。その結果、静的なシミュレーション方法において、簡易な付加条件の採用により、比較的短時間でより精度の高い評価結果が得られるタイヤ性能のシミュレーション方法を提供することができる。」
(3c)
「【0043】
遠心力F1については、評価するタイヤ性能の一般的な評価条件における車速やタイヤ回転速度をタイヤの仮想回転とし、これに相当する遠心力F1を負荷する。遠心力F1は、タイヤ有限要素モデル2の全体に各要素の質量、ホイル軸Oから要素重心までの距離、回転速度などから計算される。市販のソフトウエアを利用する場合でも、タイヤの仮想回転の速度や回転軸の位置などを入力・設定することで、各要素に対して遠心力F1を負荷することが可能である。」

イ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
(ア)
引用発明の「コンピュータが実行する、空気入りタイヤを有限個の要素に分割したタイヤモデルの固有振動数を解析するシミュレーション方法」は、補正発明1の「コンピュータを用いて、タイヤの固有振動数を計算するためのタイヤのシミュレーション方法」に相当する。
(イ)
引用発明の「空気入りタイヤのタイヤサイズ、形状、構造、材料などの設計データが入力され、空気入りタイヤが設計されるステップS1」及び「前記設計された空気入りタイヤの形状、構造、材料を有限個の要素に分割したタイヤモデル10を設定するステップS2」は、補正発明1の「前記コンピュータに、タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを入力するステップ」に相当する。
(ウ)
引用発明の「前記空気入りタイヤが接地する路面を有限個の要素で模擬した路面モデルを設定する路面モデル設定ステップS3」は、補正発明1の「前記コンピュータに、路面を有限個の要素でモデル化した路面モデルを入力するステップ」に相当する。
(エ)
補正発明1の「前記コンピュータが、予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算するステップ」は、形状を計算するために、予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填を設定するといえるから、引用発明の「前記タイヤモデルに所定の内圧を設定するステップS4」と、補正発明1の「前記コンピュータが、予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算するステップ」とは、「タイヤモデルの内圧充填を設定するステップ」という限りで共通しているといえる。
(オ)
引用発明のステップ4に続く「前記タイヤモデルと前記路面モデルの表面との間に所定の荷重が発生するように前記タイヤモデルと路面モデルとの距離を定める境界条件が設定され、非線形解析が実行されるステップS5」という手順では、「タイヤモデルが路面モデルの表面に接地する境界条件が設定され、タイヤモデルが路面モデルに接触することによる変形を計算」していることが、技術的に明らかであるから、引用発明のかかる手順は、補正発明1の「前記コンピュータが、前記内圧充填後のタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて接地後の形状を計算する接地ステップ」に相当するといえる。
(カ)
明細書の段落【0046】及び【0047】の記載から、補正発明1の「前記コンピュータが、前記変形タイヤモデルの固有振動数を計算するステップ」は、節点の拘束を含んでいるといえる。
したがって、引用発明の「前記タイヤモデルを構成する要素の節点のうち前記路面モデルに接触している節点を検出する接触検出ステップS6と、前記接触検出ステップにおいて検出された節点を拘束状態にする拘束ステップS7と、前記路面モデルに接触している節点を前記拘束状態にしたタイヤモデルの固有振動数を算出する固有振動数算出ステップS8」と、補正発明1の「前記コンピュータが、予め定められた走行速度に基づいて計算された遠心力を、前記接地後のタイヤモデルの前記各要素に定義して変形計算を行うことにより、変形タイヤモデルを得る遠心力設定ステップ、及び 前記コンピュータが、前記変形タイヤモデルの固有振動数を計算するステップ」とは、「前記コンピュータが、タイヤモデルの固有振動数を計算するステップを含む」という限りで共通しているといえる。

以上より、補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「コンピュータを用いて、タイヤの固有振動数を計算するためのタイヤのシミュレーション方法であって、
前記コンピュータに、前記タイヤを有限個の要素でモデル化したタイヤモデルを入力するステップ、
前記コンピュータに、路面を有限個の要素でモデル化した路面モデルを入力するステップ、
タイヤモデルの内圧充填を設定するステップと、
前記コンピュータが、前記内圧充填後のタイヤモデルを前記路面モデルに接地させて接地後の形状を計算する接地ステップ、及び
前記コンピュータが、タイヤモデルの固有振動数を計算するステップを含む、
タイヤのシミュレーション方法。」
<相違点1>
「タイヤモデルの内圧充填を設定するステップ」に関して、補正発明1は、「前記コンピュータが、予め定められた内圧条件に基づいて、前記タイヤモデルの内圧充填後の形状を計算するステップ」であるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
補正発明1では、固有振動数を計算するタイヤモデルが、「変形タイヤモデル」であり、
「前記コンピュータが、予め定められた走行速度に基づいて計算された遠心力を、前記接地後のタイヤモデルの前記各要素に定義して変形計算を行うことにより、変形タイヤモデルを得る遠心力設定ステップ」を含み、
「記接地後のタイヤモデルの各要素Eiに定義される前記遠心力Fiは、下記式(1)で計算され、
下記式(1)の前記タイヤの回転半径Rは、前記内圧充填後のタイヤモデルの回転軸から踏面までの最大半径であ」り、
「i=mi×ri×(V/R)^(2) …(1)
ここで、符号は次の通りである。
Fi:タイヤモデルの各要素Eiの遠心力
mi:タイヤモデルの各要素Eiの質量
ri:タイヤモデルの回転軸からタイヤモデルの各要素Eiまでの距離
V:走行速度
R:タイヤの回転半径」であるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

ウ 判断
事案に鑑み、以下、相違点2について検討する。
(ア)
タイヤのシミュレーションに関して、以下のことがいえる。
引用文献2には、接地面形状を予測することによって、経時変化後のタイヤの性能を評価できる、コンピュータを用いたシミュレーションにおいて、接地面形状は、有限要素法により取り扱い可能な要素でモデル化したタイヤモデルを設定し、予め定めた条件に基づいて前記タイヤモデルに遠心力荷重を作用させその接地面形状を計算するものであり(上記ア(ウ)(2a)?(2d))、速度Vとタイヤの動荷重半径Rとで計算される角速度をωとすると、タイヤモデルを構成する任意の要素eiに作用する遠心力荷重Fciの値は、Fci=mi・ri・ω^(2 ) により計算でき、これをタイヤ半径方向の外向きで該要素の質点eiaに負荷することができること(上記ア(ウ)(2e))が記載されており、遠心力荷重の計算に動荷重半径を採用する旨が示されている。
引用文献3には、簡易な付加条件の採用により、比較的短時間でより精度の高い評価結果が得られるタイヤ性能のシミュレーション方法を提供することを目的とし、静的なシミュレーション方法において、タイヤの仮想回転に相当する遠心力を付与するため、車速に対応した遠心力が負荷できるので、より実際の走行状態に近い状態をシミュレーションできること(上記ア(エ)(3a)及び(3b))、及び、遠心力F1は、タイヤ有限要素モデル2の全体に各要素の質量、ホイル軸Oから要素重心までの距離、回転速度などから計算されること(上記ア(エ)(3c))が記載されている。
しかしながら、上記相違点2に係る補正発明1の発明特定事項が備える、遠心力の計算式(1)における「タイヤの回転半径R」を「内圧充填後のタイヤモデルの回転軸から踏面までの最大半径」とする事項は、引用文献2及び引用文献3のいずれにも記載されていない。
また、他に、上記事項が、周知技術ないし公知技術であるという証拠も無い。
(イ)
したがって、引用発明に引用文献2及び3に記載された技術事項を適用したとしても、上記相違点2に係る補正発明1の発明特定事項に至ることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)
そして、補正発明1は、「タイヤの回転半径R」を、「実験等で予め求めておく必要がないため、計算時間を短縮することができる。」(明細書の段落【0051】)等の顕著な作用効果を奏するものである。

エ 小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、補正発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明)並びに引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとはいえない。
また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由もない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

2-2 補正事項2について
本件補正の補正事項2は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項と実質的に同じ発明特定事項を有し、かつ、カテゴリーが異なる、補正前の請求項6に記載された「シミュレーション装置」について、本件補正の補正事項1と同様の補正をして、請求項2に繰り上げるものであるから、上記2-1(1)で述べたとおり、 特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正後の請求項2(上記1(2)の【請求項2】)に係る発明(以下、「補正発明2」という。)は、上記のとおり、補正発明1と実質的に同じ発明特定事項を備える「シミュレーション装置」の発明であるから、補正発明2と引用発明とを対比すると、少なくとも、上記2-1(2)イの相違点2で相違し、上記2-1(2)ウで述べたとおり、当該相違点2に係る補正発明2の構成に至ることは、当業者が容易になし得たとはいえないから、補正発明2は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとはいえない。
よって、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

2-3 補正事項3について
本件補正の補正事項3は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2?5を削除するものであり、特許法第17条の2第5項第1号に掲げられた請求項の削除を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものではない。

2-4 補正事項4について
本件補正の補正事項4は、本件補正前の明細書の段落【0007】?【0011】の記載事項について、補正事項1及び2に伴い補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2との整合を図るためのものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第4 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、平成28年10月21日付けの手続補正(本件補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、上記第3 1(1)の【請求項1】及び(2)の【請求項2】に記載したとおりのものである。

第5 原査定についての判断
原査定は、本件補正前の請求項1?6に係る発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである(上記第2参照)。
本願発明1及び2は、上記第3 2 2-1(2)イの相違点2に係る発明特定事項を有するものであり、上記第3 2 2-1(2)ウで述べたとおり、引用文献1に記載された発明(引用発明)並びに引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-27 
出願番号 特願2012-117886(P2012-117886)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (B60C)
P 1 8・ 121- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森本 康正  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
出口 昌哉
発明の名称 タイヤのシミュレーション方法及びシミュレーション装置  
代理人 住友 慎太郎  
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