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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1329735
審判番号 不服2016-14942  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-05 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 特願2015- 92439「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-173277、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年12月21日の出願(国内優先権主張 平成21年12月25日,以下,左の日を「本願優先日」という。)である特願2014-121552号の一部を平成27年4月29日に新たな出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 5月13日 審査請求
平成28年 2月16日 拒絶理由通知
平成28年 3月16日 意見書・手続補正
平成28年 7月20日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成28年10月 5日 審判請求・手続補正
平成28年12月 6日 上申書

第2 審判請求時の補正の適否
1 補正の内容
平成28年10月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲を補正するものであって,補正前の請求項1ないし4を削除した上で,下記補正事項1及び2のとおり補正するものである。(下線部は補正個所を示し,当審で付加した。)
(1)補正事項1
特許請求の範囲の請求項1を次のように補正する。
・補正前
「【請求項5】
酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有することを特徴とする半導体装置。」
・補正後
「【請求項1】
酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有することを特徴とする半導体装置。」
(2)補正事項2
特許請求の範囲の請求項2を次のように補正する。
・補正前
「【請求項6】
酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有し,
前記ゲート電極は,前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に落ち込んだ領域を有することを特徴とする半導体装置。」
・補正後
「【請求項2】
酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有し,
前記ゲート電極は,前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に落ち込んだ領域を有することを特徴とする半導体装置。」
2 補正の適否
補正事項1及び2は,当初明細書の段落【0179】より,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから,補正事項1及び2は,特許法17条の2第3項の規定に適合する。
また,補正事項1及び2は,特許請求の範囲の減縮を目的とするから,特許法17条の2第4項の規定に適合し,同条5項2号に掲げるものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1及び2に記載された発明(以下,それぞれ「本願補正発明1」及び「本願補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項)につき,更に検討する。
(1)本願補正発明1
本願補正発明1は,本件補正後の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。(再掲)
「酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有することを特徴とする半導体装置。」
(2)引用文献1の記載
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された,特開2008-085312号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体装置及びその作製方法に関する。
・・・
【0007】
酸化亜鉛(ZnO)は室温で成膜できることに加えてそのTFT特性、例えば移動度はアモルファスシリコン(a-Si)を活性層とするTFT(以下「a-Si TFT」ともいう)よりも数十倍高い。
【0008】
しかしながら酸化亜鉛は酸、アルカリに弱く、フッ酸や剥離液等に容易に溶解する性質がある。そのため酸化亜鉛のエッチングは非常に困難であった。
【0009】
また、酸化亜鉛は電荷を蓄積し易い性質があるため、ドライエッチング装置等を用いてエッチングを行うと、プラズマによる電気的なダメージが生じ、TFT特性が劣化する問題がある。
【0010】
そこで本発明は、薬液やプラズマダメージによって、TFTを形成する酸化物半導体が劣化しない半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。」
(イ)「【0031】
[実施の形態1]
本実施の形態を,図1(A)?図1(B),図2(A)?図2(D),図3(A)?図3(C),図4(A)?図4(E),図13(A)?図13(B),図14を用いて説明する。
・・・
【0064】
またLAAPを用いず,スパッタ等を用いてソース電極及びドレイン電極等となるアルミニウム(Al)とチタン(Ti)の積層膜(Al-Ti膜)を100?200nm成膜してもよい。」
(ウ)「【0109】
[実施の形態3]
本実施の形態では,トップゲートZnO-TFTを使った液晶表示装置の例を,図5,図6(A)?図6(C)を用いて説明する。なお実施の形態1と同じものは同じ符号で表している。
【0110】
図5に示す液晶表示装置は,薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor(TFT))201,ゲート線(ゲート配線)202,データ線(データ配線)203,液晶素子204,容量素子205を有している。
【0111】
まず基板211及び下地膜212上に,実施の形態1で述べた作製工程に基づいて,薄膜トランジスタ201を形成する。
【0112】
薄膜トランジスタ201は,実施の形態1の薄膜トランジスタ309に対応している。薄膜トランジスタ201の,島状半導体膜213,ソース電極またはドレイン電極の一方である電極206,ソース電極またはドレイン電極の他方である電極214,ゲート絶縁膜215,ゲート電極207は,それぞれ実施の形態1の島状酸化亜鉛膜303,電極304a,電極304b,ゲート絶縁膜306,ゲート配線307に対応している。
【0113】
なお島状半導体膜213として,酸化亜鉛膜だけでなく,酸化亜鉛を含む混晶半導体,硫化亜鉛(ZnS)などの亜鉛化合物半導体膜や酸化物半導体膜を用いることができる。」
(エ)図6(A)には,島状半導体膜213と,島状半導体膜213に接するソース電極206と,島状半導体膜213に接するドレイン電極214と,ゲート絶縁膜215を介して,島状半導体膜213と重なる領域を有するゲート電極207であって,ゲート電極207は,ソース電極206とドレイン電極214の間に落ち込んだ領域を有する半導体装置,が記載されていると認められる。
イ 引用発明1
前記アより,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「酸化物半導体膜と,酸化物半導体膜に接するソース電極と,酸化物半導体膜に接するドレイン電極と,ゲート絶縁膜を介して,酸化物半導体膜と重なる領域を有するゲート電極であって,ゲート電極は,ソース電極とドレイン電極の間に落ち込んだ領域を有し,ソース電極及びドレイン電極はAl-Ti膜である半導体装置。」
(3)引用文献2の記載
ア 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された,実願平02-009867号(実開平03-101556号)のマイクロフィルム(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「[産業上の利用分野]
本考案は,液晶表示デバイスなどに用いられる薄膜トランジスタに関するものである。」(1頁13-15行)
(イ)「[発明が解決しようとする課題]
ところが,このような薄膜トランジスタは,ソース・ドレイン電極3a,3bを覆うゲート絶縁膜4にクラックやピンホールなどの欠陥が生じると,ソース・ドレイン電極3a,3bとゲート電極5との間でショートする。これにより薄膜トランジスタの製造上での歩留りの低下の原因となる欠点があった。
本考案は,上記事情に鑑みてなされたもので,ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止し,その製造上での歩留りを改善することができる薄膜トランジスタを提供することを目的とする。」(2頁8-20行)
(ウ)「第1図は,同実施例のコプラナー型薄膜トランジスタの断面を示すものである。・・・この半導体層12の上には,タンタル(Ta)などよりなるソース・ドレイン電極13a,13bが形成されており,このソース・ドレイン電極13a,13bの表面は陽極酸化されたタンタルオキサイド(TaO)の絶縁層131a,131bを備えたものである。」(3頁17行-4頁7行)
(エ)第1図には,ソース・ドレイン電極13a,13bの側面を含んだ表面に絶縁層131a,131bを備えること,が記載されている。
イ 引用発明2
前記アより,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止し,その製造上での歩留りを改善するために,ソース・ドレイン電極の側面を含んだ表面は陽極酸化されたタンタルオキサイドの絶縁層を備えた薄膜トランジスタ。」
(4)周知技術
ア 引用文献3
原査定で引用された,特開2008-085313号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0119】
次にソース電極層又はドレイン電極層116,117,118,119を形成する。ソース電極層又はドレイン電極層116,117,118,119は,Ag(銀),Au(金),Cu(銅),W(タングステン),Al(アルミニウム),Mo(モリブデン),Ta(タンタル),Ti(チタン)から選ばれた元素,又は前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料等を用いることができる。また,透光性を有するインジウム錫酸化物(ITO),酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO),有機インジウム,有機スズ,酸化亜鉛,窒化チタンなどを用いても良い。」
イ 引用文献4
原査定で引用された,特開2006-332614号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0040】
次に,導電層15を形成する(図2(E))。導電層15に使用する材料は,特に限定されるものではないが,金,白金,アルミニウム,タングステン,チタン,銅,モリブデン,タンタル,ニオブ,クロム,ニッケル,コバルト,マグネシウムなどの金属及びそれらを含む合金,ポリアニリン,ポリピロール,ポリチオフェン,ポリアセチレン,ポリジアセチレンなどの導電性高分子化合物等が挙げられる。一般的にはソース及びドレイン電極16a,bに用いる導電層15としては,金属を用いることが多い。」
ウ 周知技術
前記ア及びイより,次の技術的事項は周知技術と認められる。
「ソース電極及びドレイン電極に銅を用いること。」
(5)引用文献5の記載
ア 引用文献5
本願優先日前に国内において頒布された刊行物である,特開2008-028112号公報(以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体装置の製造方法に関し,特に基板上の外部端子にアンダーバンプメタル膜を介してバンプ電極を形成する半導体装置の製造方法に関する。」
(イ)「【0025】
具体的には,例えば,半導体装置1を酸素濃度20%の大気雰囲気中で180℃にて24時間加熱することにより第2のUBM膜7Bを構成する銅(Cu)を酸化させる。第2のUBM膜7Bの酸化は,大気と銅(Cu)との界面での銅(Cu)酸化反応と第2のUBM膜7B中の酸素の熱拡散により進行するため,バンプ電極8に覆われない領域の銅(Cu)が選択的に酸化されて酸化銅(CuO)12に変化する。一方,バンプ電極8に覆われた領域は酸化されることなく銅(Cu)で形成された第2のUBM膜7Bがそのまま残る。
【0026】
次に、図8に示すように、この酸化銅(CuO)12を選択的に溶解するエッチング液に半導体装置1を浸漬して酸化銅(CuO)12をエッチングする(第1のエッチング工程)。この第1のエッチング工程により第1のUBM膜7Aが露出する。一方で、このエッチング液の銅(Cu)を溶解する速度は非常に遅いため、バンプ電極8直下にある第2のUBM膜7Bがエッチングされることはない。このエッチング液には、例えば、クエン酸とポリマー系界面活性剤を含有する溶液を用いることができる。」
イ 引用発明5
前記アより,引用文献5には次の発明(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「半導体装置を加熱酸化させることにより,バンプ電極に覆われない領域の銅が選択的に酸化されて酸化銅に変化し,その後酸化銅を選択的にエッチングすること。」
(6)本願補正発明1と引用発明1との対比
引用発明1の「酸化物半導体膜」,「酸化物半導体膜に接するソース電極」,「酸化物半導体膜に接するドレイン電極」,「ゲート絶縁膜を介して,酸化物半導体膜と重なる領域を有するゲート電極」及び「半導体装置」は,それぞれ本願補正発明1の「酸化物半導体層」,「前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極」,「前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極」,「ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極」及び「半導体装置」に相当する。
すると,本願補正発明1と引用発明1とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。
ア 一致点
「酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,を有することを特徴とする半導体装置。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願補正発明1は「前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有する」のに対し,引用発明1はそうではない点。
(イ)相違点2
本願補正発明1では「前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有する」のに対し,引用発明1では「ソース電極及びドレイン電極はAl-Ti膜である」点。
(7)相違点についての検討
相違点1について検討する。
引用発明2は「ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止し,その製造上での歩留りを改善するために,ソース・ドレイン電極の側面を含んだ表面は陽極酸化されたタンタルオキサイド(TaO)の絶縁層を備えた薄膜トランジスタ。」であり,引用発明1においても,ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止すべきことは当然の課題であるから,引用発明2を採用することの動機付けはあるといえる。しかし,引用発明1は,酸化物半導体である「酸化亜鉛は酸、アルカリに弱く、フッ酸や剥離液等に容易に溶解する性質がある」から「薬液やプラズマダメージによって、TFTを形成する酸化物半導体が劣化しない半導体装置の製造方法を提供する」こと(前記(2)ア(ア))を目的としており,電解液に浸漬する陽極酸化を用いる引用発明2を採用すると,引用発明1の前記目的に反することになるから,阻害要因があるといえる。
仮に,引用発明1において引用発明2を採用したとしても,それにより前記課題は解決されるから,それ以上に「側面に接する,選択的に酸化された酸化領域」とするべき動機付けがない。そして,ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止する絶縁層を設けるに際し,さらに「側面に接する,選択的に酸化された酸化領域」を設けることに関して,いずれの引用文献にも記載も示唆もない。
なお,引用発明2における「タンタルオキサイドの絶縁層」は,陽極酸化により形成されること,及び「層」であることから,表面にあること自体は当然のことであり,表面にあることをもって「選択的」とはいえない。
引用発明5には具体的にバンプ電極に覆われない領域の銅を選択的に犠牲酸化することが開示されているが,上述のように引用発明2を採用した上で,さらに引用発明5を採用する動機付けがないし,引用発明5はアンダーバンプメタルを犠牲酸化するもの(前記(5)ア(イ))で引用発明1と共通する課題がない。引用発明5を採用すると引用発明1の目的や課題に関係のない「バンプ電極」を形成するという余計な工程が発生し製造コストが上がることになるから,当業者にとって忌避すべきことである。
よって,引用発明1において,相違点1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到するものではない。
(8)本願補正発明1についてのまとめ
したがって,本願補正発明1は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(9)本願補正発明2
本願補正発明2は,本件補正後の請求項2に記載された,次のとおりのものと認める。(再掲)
「酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有し,
前記ゲート電極は,前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に落ち込んだ領域を有することを特徴とする半導体装置。」
(10)対比・判断
各引用発明及び周知技術については,前記(2)ないし(5)のとおりである。
本願補正発明2と引用発明1とを対比すると,下記相違点1及び2の点で相違するが,その余の点で一致する。
ア 相違点1
本願補正発明2は「前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有する」のに対し,引用発明1はそうではない点。
イ 相違点2
本願補正発明2では「前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有する」のに対し,引用発明1では「ソース電極及びドレイン電極はAl-Ti膜である」点。
ウ 相違点についての検討
相違点1について検討する。
引用発明2は「ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止し,その製造上での歩留りを改善するために,ソース・ドレイン電極の側面を含んだ表面は陽極酸化されたタンタルオキサイド(TaO)の絶縁層を備えた薄膜トランジスタ。」であり,引用発明1においても,ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止すべきことは当然の課題であるから,引用発明2を採用することの動機付けはあるといえる。しかし,引用発明1は,酸化物半導体である「酸化亜鉛は酸、アルカリに弱く、フッ酸や剥離液等に容易に溶解する性質がある」から「薬液やプラズマダメージによって、TFTを形成する酸化物半導体が劣化しない半導体装置の製造方法を提供する」こと(前記(2)ア(ア))を目的としており,電解液に浸漬する陽極酸化を用いる引用発明2を採用すると,引用発明1の前記目的に反することになるから,阻害要因があるといえる。
仮に,引用発明1において引用発明2を採用したとしても,それにより前記課題は解決されるから,それ以上に「側面に接する,選択的に酸化された酸化領域」とするべき動機付けがない。そして,ソース・ドレイン電極とゲート電極との間でのショートを防止する絶縁層を設けるに際し,さらに「側面に接する,選択的に酸化された酸化領域」を設けることに関して,いずれの引用文献にも記載も示唆もない。
なお,引用発明2における「タンタルオキサイドの絶縁層」は,陽極酸化により形成されること,及び「層」であることから,表面にあること自体は当然のことであり,表面にあることをもって「選択的」とはいえない。
引用発明5には具体的にバンプ電極に覆われない領域の銅を選択的に犠牲酸化することが開示されているが,上述のように引用発明2を採用した上で,さらに引用発明5を採用する動機付けがないし,引用発明5はアンダーバンプメタルを犠牲酸化するもの(前記(5)ア(イ))で引用発明1と共通する課題がない。引用発明5を採用すると引用発明1の目的や課題に関係のない「バンプ電極」を形成するという余計な工程が発生し製造コストが上がることになるから,当業者にとって忌避すべきことである。
よって,引用発明1において,相違点1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到するものではない。
(11)本願補正発明2についてのまとめ
したがって,本願補正発明2は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 むすび
よって,補正事項1及び2は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合し,本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-6
・引用文献等 1-4
<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2008-085312号公報
引用文献2.実願平02-009867号(実開平03-101556号)のマイクロフィルム
引用文献3.特開2008-085313号公報
引用文献4.特開2006-332614号公報

第4 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は,平成28年10月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ソース電極と,
前記酸化物半導体層と電気的に接続された,ドレイン電極と,
ゲート絶縁膜を介して,前記酸化物半導体層と重なる領域を有する,ゲート電極と,
前記ソース電極の側面に接する,選択的に酸化された第1の酸化領域と,
前記ドレイン電極の側面に接する,選択的に酸化された第2の酸化領域と,を有し,
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は,それぞれ,銅を有し,
前記ゲート電極は,前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に落ち込んだ領域を有することを特徴とする半導体装置。」

第5 原査定について
本願発明1及び2は,それぞれ本願補正発明1及び2であるから,前記第2の2のとおり,本願発明1及び2は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。すると,本願発明1及び2は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 結言
以上のとおりであるから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2015-92439(P2015-92439)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 俊哉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
小田 浩
発明の名称 半導体装置  
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