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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1329736
審判番号 不服2016-4689  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-31 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 特願2014-530073「RFIDカードの管理方法及び端末」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日国際公開、WO2013/037153、平成26年10月 9日国内公表、特表2014-527243、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成23年10月20日(パリ条約による優先権主張 平成23年9月16日中国)の国際出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 3月18日付け:拒絶理由の通知
平成27年 6月24日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年11月27日付け:拒絶査定
平成28年 3月31日 :審判請求書の提出
平成28年 4月12日 :上申書
平成29年 1月27日付け:当審による拒絶理由の通知
平成29年 4月25日 :意見書の提出


第2 原査定の概要

原査定(平成27年11月27日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

1.本願請求項1?8に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2005-020173号公報


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-3、5-8に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

2.本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、本願請求項3-8に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2010/043918号(当審において新たに引用した文献)
2.遠藤 貴則,「RFIDの原理と仕組み」,N+I NETWORK,ソフトバンクパブリッシング株式会社,2004.10.28受入,第4巻第12号,43-49ページ (当審において新たに引用した文献)
3.特開2004-334316号公報(当審において新たに引用した文献)
4.特開2009-171187号公報(当審において新たに引用した文献)


第4 本願発明

本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成27年6月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-8は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
無線周波数識別(RFID:Radio Frequency Identification)カードの管理方法であって、
端末の近接通信(NFC:Near Field Communication)読み書きモードをアクティブにするステップと、
端末が管理待ちのRFIDカードのRFID情報を読み取ってRFID情報データベースを更新するステップと、
端末がRFID情報データベースからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出すステップと、
端末のNFCシミュレイションモードをアクティブにするステップと、
端末が対応するRFID情報をRFIDサービスデバイスへ送信するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
端末が管理待ちのRFIDカードのRFID情報を読み取る前に、さらに、
端末がRFIDカードへRFID情報の読取リクエストを送信するステップと、
RFIDカードがリクエストに応答し、端末へRFID情報を送信するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
端末がRFID情報データベースからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出した後、このRFID情報を一時的にセキュリティチップモジュールに格納する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
全てのステップを実行した後、さらに、
セキュリティチップモジュールに一時的に格納されたRFID情報を取り消すステップを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
無線周波数識別(RFID:Radio Frequency Identification)カードを管理する端末であって、コントローラ、NFC制御モジュール(NFC:Near Field Communication)、及びデータ格納モジュールを含み、
前記コントローラは、データ格納モジュール及びNFC制御モジュールにそれぞれ接続され、NFC読み書きモードまたはNFCシミュレイションモードとなるようにNFC制御モジュールをアクティブにし、さらに、NFC制御モジュールにより読み取られた管理待ちのRFIDカードのRFID情報をデータ格納モジュールへ送信することに用いられ、
前記NFC制御モジュールは、管理待ちのRFIDカードのRFID情報を読み取って前記コントローラへ送信することに用いられ、
前記データ格納モジュールは、管理待ちのRFIDカードのRFID情報を格納し、RFID情報データベースを形成することに用いられ、
NFC制御モジュールがRFIDサービスデバイスとの接続を確立するとき、前記コントローラは、データ格納モジュールからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出し、NFC制御モジュールを介してこのRFID情報を前記セキュリティチップモジュールへ送信することに用いられる
ことを特徴とする端末。
【請求項6】
前記端末はさらに、NFC制御モジュールに接続される、コントローラがデータ格納モジュールから取り出したRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を一時的に格納することに用いられるセキュリティチップモジュールを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の端末。
【請求項7】
前記端末はさらに、前記コントローラに接続される、人間とコンピュータのインタラクションを実現することに用いられるインタラクティブモジュールを含む
ことを特徴とする請求項5または6に記載の端末。
【請求項8】
前記NFC制御モジュールは、RFIDカード及びRFIDサービスデバイスとの間で情報のインタラクションを行うことに用いられるアンテナモジュールを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の端末。」


第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

平成29年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「While wireless communication devices (WCDs) were perhaps viewed by many as a luxury when first introduced into the marketplace, they are today viewed by our society as very important, useful, and convenient tools. A large segment of society now carries their wireless communication devices with them wherever they go. These devices include, for example, mobile telephones. Personal Digital Assistants (PDAs), laptop/notebook computers, and the like. 」(
[0002])

(当審訳:無線通信装置(WCDs)が最初に市場に登場した時は、多くの人に高価なものされてきたが、今日ではこれらは、我々の社会において、非常に重要で、有用であり、かつ便利なツールとされている。社会の大部分の人は、今では、その無線通信装置をどこでも携帯している。これらの装置は、例えば、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDAs)、ラップトップ/ノートブックコンピュータ、等である。)

(イ)「FIG. 4 discloses a flowchart for an exemplary process of duplicating functionality of a machine readable tag using a virtual tag in accordance with at least one embodiment of the invention. WCD 100 may be utilized to interrogate a machine-readable tag and establish communication with the tag (step 400). The machine readable tag may be, for example, a passive or active NFC/RF1D tag. The machine readable tag may then allow WCD 100 to download the data structure of the tag and the contents stored on the tag onto the WCD 100 (step 402). The downloaded data structure and contents may be stored in memory 330 of WCD 100 or alternatively or in addition, may be stored on an external storage device such as a flash card or a write-enabled machine readable tag. The downloaded content may also include an image associated with the tag. Alternatively, the downloaded content may include a link where the image may be downloaded and stored on WCD 100. WCD 100 may then create a virtual tag using the downloaded data structure and contents (step 404). In other words, WCD 100 may create a virtual duplicate of the read machine readable tag using the downloaded data structure and contents. In step 406, the virtual tag may be associated with the downloaded image to assist a user in identifying the functionality associated with the virtual tag. In step 408, an application may be initiated to use or imitate, using the virtual tag, interaction logic between WCD 100 and the physical machine readable tag. In accordance with an exemplary embodiment, WCD 100 interacts with the virtual tag as if it was interacting with the physical tag. Furthermore, WCD 100 may include a dedicated application for creating, reading and/or managing virtual tags.」([0040])

(当審訳:図4は、本発明の少なくとも1つの実施形態による仮想タグを用いて機械可読タグの機能を複製する例示的なプロセスのフローチャートが示されている。WCD100は機械可読タグに問い合わせを行ってそのタグとの通信を確立するために用いられる(ステップ400)。機械可読タグは、例えば、受動または能動NFC/RFIDタグであってもよい。機械可読タグは、WCD100に対し、そのタグのデータ構造とタグに記憶されたコンテンツをダウンロードすることを許容することができる(ステップ402)。ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツは、WCD100のメモリ330に記憶されてもよく、代替的に又は追加的に、フラッシュカード、書き込み可能な機械可読タグなどの外部記憶装置に格納することができる。ダウンロードされたコンテンツは、タグに関連付けられた画像を含むことができる。あるいは、ダウンロードされたコンテンツは、WCD100にどこで画像がダウンロードされ格納されたかのリンクを含み得る。WCD100は、ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツを用いて、仮想タグを作成することができる(ステップ404)。すなわち、WCD100は、ダウンロードされたデータ構造およびコンテンツを用いて、読み出すための機械可読タグの仮想的な複製を作成することができる。ステップ406では、仮想タグと関連する機能をユーザーが識別できるように、仮想タグはダウンロードされた画像と関連付けることができる。ステップ408では、アプリケーションは、仮想タグを使用して、WCD100と物理機械可読タグとの間の相互作用ロジックを、使用または模倣するために開始されてもよい。この例示的な実施形態によれば、WCD100は、物理タグと相互作用するかのように、仮想タグと相互作用する。また、WCD100は、仮想タグを、作成、読み取る及び/又は管理するための専用のアプリケーションを含むことができる。)

(ウ)「FlG. 5 discloses, in accordance with an exemplary embodiment, an exemplary graphical user interface (GUI) of a dedicated application for creating, reading and/or managing virtual tags. The GUI may display visual representations of the virtual tags as images associated with the virtual tags or as icons. In accordance with an exemplary embodiment, selecting a virtual tag through the GUI may enable options such as, for example, "Show on map", which may show the geographic location of a corresponding physical tag, i.e. the physical location where the virtual tag was created that may be useful information to a user, '"Create physical copy", which may enable copying of the virtual tag into a write enabled physical tag, and "Use virtual tag", which may launch the tag functionality (e.g., imitate the interaction logic between the WCD and the physical tag). 」([0043])

(当審訳:「図5は、例示的な実施形態として、仮想タグを、作成、読み取る及び/又は管理するための専用のアプリケーションのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の一例が開示されている。GUIは、仮想タグに関連付けられた画像またはアイコンとして仮想タグの視覚表示を表示することができる。例示的な実施形態では、GUIを通して仮想タグを選択することで、例えば、対応する物理タグの地理的位置を示す「地図表示」、すなわち、ユーザーに対して有効な情報として仮想タグが作成された物理的位置や、書き込み可能物理タグに仮想タグの複製を可能とする「物理複製作成」や、タグの機能を起動する「仮想タグ使用」(例えば、WCDと物理機械可読タグとの間の相互作用ロジックを模倣する)のようなオプションを可能にする。)

したがって、上記(ア)ないし(ウ)の記載から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「無線通信装置(WCDs)は、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDAs)であり、
WCD100は機械可読タグに問い合わせを行ってそのタグとの通信を確立するために用いられ、
機械可読タグは、受動または能動NFC/RFIDタグであってもよく、
機械可読タグは、WCD100に対し、そのタグのデータ構造とタグに記憶されたコンテンツをダウンロードすることを許容することができ、
ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツは、WCD100のメモリ330に記憶されてもよく、
WCD100は、ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツを用いて、仮想タグを作成することができ、
GUIは、仮想タグに関連付けられた画像またはアイコンとして仮想タグの視覚表示を表示することができ、
GUIを通して仮想タグを選択することで、タグの機能を起動する「仮想タグ使用」(例えば、WCDと物理機械可読タグとの間の相互作用ロジックを模倣する)を可能にする
仮想タグを用いて機械可読タグの機能を複製するプロセス、及び、読み出すための機械可読タグの仮想的な複製を作成する無線通信装置」

2.引用文献2について

平成29年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(エ)「RFIDの構成要素
RFID(Radio Frequency Identification)システムは、図1に示すような要素で構成されている。
●情報入りICカード(タグ)
●質問波を受け応答波を返す送受信アンテナ
●カード内の情報を処理してコンピュータに信号を送るためのコントローラ(リーダ/ライタ)
●制御・管理・表示を行うコンピュータ」(第1頁)

3.引用文献3について

平成29年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(オ)「【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的には、マルチアプリケーション型のICカードに関し、特に、優先順の高いアプリケーションを実行可能に設定できる技術に関する。」(【0001】)

(カ)「請求項1に係る発明は、複数のアプリケーションを記憶する第1のメモリ手段と、前記各アプリケーションを識別する識別情報群を含むテーブル情報であって、優先的に設定可能なアプリケーションに対応する識別情報を有する優先テーブル情報を記憶する第2のメモリ手段と、外部からの指示に応じて、優先的に前記優先テーブル情報から該当する識別情報を検索し、検索された当該識別情報に対応するアプリケーションを前記第1のメモリ手段から読出して実行可能に設定する制御手段とを備えたICカードである。
このような構成であれば、全ての識別情報ではなく、優先テーブル情報から優先的に検索することにより、指定される可能性の高いアプリケーションを選択して設定する処理時間を短縮化することができる。」(【0008】?【0009】)

(キ)「まず、ICカード10は、例えばクレジットカード用の端末装置(リーダ/ライタ)20と接触又は非接触状態で接続すると、端末装置20から例えばAPDUのインターフェース規格によるコマンドが送信される。CPU100は、当該コマンドに含まれるAID(アプレットの識別情報)を取得すると、該当するアプレットを選択して実行可能に設定する処理を実行する。具体的には、CPU100は、フラッシュEEPROM130から該当するアプレットを選択して、RAM110に設定する。これにより、CPU100は、例えばクレジットカード機能を実現するためのアプレット(即ち、アプリケーション)を実行することになる。」(【0032】)

(ク)「本実施形態は、フラッシュEEPROM130には、図12に示すように、各アプレットを選択するためのテーブル情報として、単一のアプレットテーブル230が格納される。また、フラッシュEEPROM130には、図11に示すように、各アプレットの使用頻度を示す使用頻度テーブル情報220が格納される。
本実施形態では、ICカード10のCPU100は、使用頻度テーブル情報220からアプレットごとの使用頻度を算出し、アプレットテーブル230上で使用頻度の高い順にアプレットのAIDを並び替える。これにより、常に、CPU100は、アプレットテーブル230の先頭から使用頻度の高い順にAIDを検索することができる。
以下、主として図13及び図14のフローチャートを参照して、本実施形態のアプレット設定処理の手順を説明する。
まず、ICカード10は、例えばクレジットカード用の端末装置(リーダ/ライタ)20と接触又は非接触状態で接続すると、例えばAPDUのインターフェース規格によるコマンドが送信される。CPU100は、当該コマンドに含まれるAID(アプレットの識別情報)を取得すると、該当するアプレットを選択して実行可能に設定する処理を実行する。
本実施形態のアプレット設定手順としては、CPU100は、図12に示すようなアプレットテーブル230の先頭(Index=0)から検索を開始する(ステップS51)。アプレットを示すAIDがセットされていなければ(ヒットしない場合)、CPU100は、NULL(機能不可)を端末装置20に返す(ステップS52のNO,S57)。
CPU100は、アプレットテーブル230にセットされているAIDを先頭から順次チェックし、該当するアプレットに対応するAID(例えばApplet5とする)を検索する(ステップS52,S53)。CPU100は、該当するAIDを検索すると(ヒットすると)、後述するように、当該アプレットテーブル230の更新処理を実行する(ステップS53のYES,S55)。CPU100は、該当するAIDがヒットするまで、アプレットテーブル230を検索する(ステップS53のNO,S54)。
さらに、CPU100は、該当するAID(Applet5)を端末装置20に返し、所定のアプレット設定処理に移行する(ステップS56)。即ち、フラッシュEEPROM130から該当するAID(Applet5)のアプレットを選択して、実行可能なようにRAM110に設定する。」(【0060】?【0066】)

4.引用文献4について

平成29年1月27日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ケ)「本発明は、通信装置に係わり、例えば、モバイル端末機器のRFIDタグに関する。」(【0001】)

(コ)「モバイル機器は、アクティブRFIDタグ(以下、アクティブタグという)10およびパッシブRFIDタグ(以下、パッシブタグという)20を備えている。アクティブタグ10は、例えば、EPC(TM)globalのclass4またはclass5の規格に適合したものでよい。パッシブタグ20は、例えば、EPC(TM)globalのclass0、class1またはclass2の規格に適合したものでよい。アクティブタグ10は、内部電源としての電池15と、第1のアンテナ11と、第1の送受信部(第1のR/S)12と、第1の演算部としてのMPU(Micro Processing Unit)13と、第1の記憶部としてのメインメモリ14と、DC-DCコンバータ16と、キャパシタ17とを含む。第1の送受信部12は、電池15からの電力供給を受けて、第1のアンテナ11を介してRF信号を送信し、あるいは、RF信号を受信する。MPU13は、第1の送受信部12で送受信される信号を処理する。メインメモリ14は、MPU13で実行されるプログラムおよび第1の送受信部12で送受信するデータを格納する。メインメモリ14は、例えば、キャッシュメモリのような作業領域としてDRAM(Dynamic Random Access Memory) 、SRAM(Static RAM)、FBC(Floating Body Cell)などの揮発性メモリを用い、大容量のデータを保存する保存領域としてフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Driver)などの不揮発性メモリあるいは記憶装置を用いる。」(【0009】)

(サ)「ミニメモリ24は、キャッシュカード機能やクレジットカード機能等の個人認証情報、電子マネーの残高等の資産情報、電話番号リストやメールアドレスリスト等の個人情報(以下、これらをまとめて個人データという)を格納する。ミニメモリ24は、このような個人にとって重要な個人データを格納する。よって、ミニメモリ24は、例えば、FeRAM(Ferroelectric RAM)、MRAM(Magnetic RAM)、PRAM(Phase change RAM)、RRAM(Resistive RAM)等の低消費電力で高速動作可能な不揮発性メモリからなる。ミニメモリ24は、個人データを記憶するだけであるので、モバイル機器を動作させるアプリケーション用のプログラム等を格納するメインメモリ14よりも容量が小さくてよい。
第2のアンテナ21は、外部のリーダ/ライタ(Reader/Writer)が発信する信号から電力を得る。第2のアンテナ21で発生した電力は、整流器25を介して第2の送受信部22、ミニCPU23およびミニメモリ24に供給される。第2の送受信部22は、第2のアンテナ21から電力供給を受けるとともに、第2のアンテナ21を介して信号を送受信する。ミニCPU23は、第2の送受信部22で送受信される信号を処理する。第2の送受信部22、ミニCPU23およびミニメモリ24は、消費電力が小さく、外部信号から得られた誘導起電力によって動作することができる。キャパシタ27は、整流器25からの誘導起電力を安定させるために設けられている。」(【0013】?【0014】)

(シ)「また、モバイル機器がモバイルSuica(登録商標)機能を搭載している場合、モバイル機器と駅改札口等に設けられているリーダ/ライタとの信号のやり取りは、アクティブタグ10を通して実行される。例えば、リーダ/ライタからの信号は、第1のアンテナ11を介して第1の送受信部12で受信される。この受信信号はMPU13で処理され、メインメモリ14に格納される。一方、リーダ/ライタへ送信すべき情報(例えば、定期券の情報、チャージされている金額(ストアードフェア)の情報等)は、個人データとしてミニメモリ24に格納されている。従って、リーダ/ライタへ送信すべき情報は、ミニメモリ24から第1の送受信部12および第1のアンテナ11を介してリーダ/ライタへ送信される。
例えば、モバイル機器がおサイフケータイ(登録商標)である場合、その機器にチャージされている金額は、個人データとしてミニメモリ24に格納されている。従って、リーダ/ライタへ送信すべき情報は、ミニメモリ24から第1の送受信部12および第1のアンテナ11を介してリーダ/ライタへ送信される。
同様に、モバイル機器がiD(登録商標)のようなクレジットカード機能、キャッシング機能またはキャッシュカード機能を有する場合、リーダ/ライタへ送信すべき個人認証データはミニメモリ24に格納されているので、モバイル機器は、個人認証データを、ミニメモリ24から第1の送受信部12および第1のアンテナ11を介してリーダ/ライタへ送信する。」(【0020】?【0022】)


第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「無線通信装置」は、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタントであるから、本願発明1でいうところの『端末』に対応する。また、引用発明の「メモリ」はデータ構造及びコンテンツを記憶するものであるから、本願発明1でいうところの『データベース』に対応する。

イ.引用発明の「無線通信装置」が読み取る機械可読タグは、受動または能動NFC/RFIDタグであるから、これらのタグと通信を確立し、そのタグのデータ構造とタグに記憶されたコンテンツをダウンロードするためには、NFC読み書きモードをアクティブにすることは自明である。また、機械可読タグは、NFC/RFIDタグでもあることから、引用発明の機械可読タグからダウンロードされた「データ構造及びコンテンツ」は、本願発明1でいうところの『RFID情報』に対応する。

ウ.引用発明では、ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツは、「無線通信装置」のメモリに記憶されることから、ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツにより、メモリの内容は更新されるといえる。

したがって、上記(ア)から(ウ)で対比した様に、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「端末のNFC読み書きモードをアクティブにし、
端末がRFID情報を読み取ってデータベースを更新する、
ことを特徴とする方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、RFIDカードの管理方法であり、RFIDカードからRFID情報を読み取っているに対し、引用発明では、カードの管理方法ではなく、機械可読タグから情報を読み取っている点

(相違点2)本願発明1は、「端末がRFID情報データベースからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出すステップと、端末のNFCシミュレイションモードをアクティブにするステップと、端末が対応するRFID情報をRFIDサービスデバイスへ送信するステップとを含む」のに対し、引用発明では、無線通信装置において、「仮想タグ使用」としてタグの機能を起動しているが、無線通信装置において作成された「仮想タグ」が前記無線通信装置以外の他の無線通信装置へ送信するのか不明である点

(2)相違点についての判断

上記相違点2について判断する。

引用発明では、「仮想タグ使用」について、タグの機能を起動すると示され、例として、無線通信装置と物理機械可読タグとの間の相互作用ロジックを模倣することを示しているものの、無線通信装置において作成された「仮想タグ」が、前記無線通信装置以外の他の無線通信装置との間で相互通信を行うことが開示されているとはいえず、前記「仮想タグ」が、他の無線通信装置へ送信する機能を有しているとは解釈できない。そして、引用発明において、無線通信装置において作成された「仮想タグ」に他の無線通信装置へ送信する機能を付加する動機があるともいえない。

そうすると、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

また、本願発明1と引用発明とは、少なくとも上記相違点2において相違していることから、本願発明1は、引用発明に記載された発明でもない。

そして、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献2、3にも記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について

本願発明2も、本願発明1の「端末がRFID情報データベースからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出すステップと、端末のNFCシミュレイションモードをアクティブにするステップと、端末が対応するRFID情報をRFIDサービスデバイスへ送信するステップとを含む」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明3、4について

本願発明3、4も、本願発明1の「端末がRFID情報データベースからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出すステップと、端末のNFCシミュレイションモードをアクティブにするステップと、端末が対応するRFID情報をRFIDサービスデバイスへ送信するステップとを含む」と同一の構成を備えるものである。

ここで、引用発明は、無線通信装置において作成された「仮想タグ」に他の無線通信装置へ送信する機能を有するものではないことから、引用発明に、引用文献4に記載された技術的事項を適用する動機があるとはいえない。

そして、上記同一の構成は、引用文献2、3にも記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

よって、本願発明3、4も、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明5について

(1)対比

本願発明5と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

エ.引用発明の「無線通信装置」は、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタントであるから、本願発明5でいうところの『端末』に対応する。また、引用発明の「メモリ」はデータ構造及びコンテンツを記憶するものであるから、本願発明5でいうところの『データ格納モジュール』に対応する。

オ.引用発明の「無線通信装置」が読み取る機械可読タグは、受動または能動NFC/RFIDタグであるから、これらのタグと通信を確立し、そのタグのデータ構造とタグに記憶されたコンテンツをダウンロードするためには、NFC読み書きモードをアクティブにし、データ構造及びコンテンツを読み取ることは自明である。また、機械可読タグは、NFC/RFIDタグでもあることから、引用発明の機械可読タグからダウンロードされた「データ構造及びコンテンツ」は、本願発明5でいうところの『RFID情報』に対応する。

カ.引用発明では、ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツは、「無線通信装置」のメモリに記憶されることから、引用発明におけるメモリは、ダウンロードされたデータ構造及びコンテンツのデータベースを形成しているといえる。

したがって、上記(エ)から(カ)で対比した様に、本願発明5と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「端末であって、データ格納モジュールを含み、
NFC読み書きモードをアクティブにし、
RFID情報を読み取って、
前記データ格納モジュールは、RFID情報を格納し、RFID情報データベースを形成する
ことを特徴とする端末。」

(相違点)
(相違点3)本願発明5は、RFIDカードを管理する端末であって、コントローラ、NFC制御モジュールを含んでいるのに対し、引用発明では、カードを管理する端末ではなく、コントローラ、NFC制御モジュールについては記載されていない点

(相違点4)本願発明5では、RFID情報が管理待ちのRFIDカードの情報であるのに対し、引用発明では、管理待ちのRFIDカードの情報ではない点

(相違点5)本願発明5では、コントローラは、データ格納モジュール及びNFC制御モジュールにそれぞれ接続され、NFC読み書きモードまたはNFCシミュレイションモードとなるようにNFC制御モジュールをアクティブにし、さらに、NFC制御モジュールにより読み取られた管理待ちのRFIDカードのRFID情報をデータ格納モジュールへ送信することに用いられるのに対し、引用発明では、NFC読み書きモードをアクティブにしているものの、コントローラとNFC制御モジュールについては記載されていない点

(相違点6)本願発明5では、NFC制御モジュールは、管理待ちのRFIDカードのRFID情報を読み取って前記コントローラへ送信することに用いられるのに対し、引用発明では、RFID情報を読み取っているものの、NFC制御モジュールとコントローラについては記載されていない点

(相違点7)本願発明5では、NFC制御モジュールがRFIDサービスデバイスとの接続を確立するとき、前記コントローラは、データ格納モジュールからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出し、NFC制御モジュールを介してこのRFID情報を前記セキュリティチップモジュールへ送信することに用いられるのに対し、引用発明では、NFC制御モジュールとコントローラについては記載がなく、RFIDサービスデバイスとの接続を確立すること、及び、セキュリティチップモジュールへ送信することも記載されていない点

(2)相違点についての判断

上記相違点7について判断する。

前述の「1.本願発明1について」「(2)相違点についての判断」において、上記相違点2について判断したように、引用発明における無線通信装置において作成された「仮想タグ」が、前記無線通信装置以外の他の無線通信装置との間で相互通信を行うことが開示されているとはいえないことから、上記相違点7に係る本願発明5の構成である「NFC制御モジュールがRFIDサービスデバイスとの接続を確立するとき、前記コントローラは、データ格納モジュールからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出し、NFC制御モジュールを介してこのRFID情報を前記セキュリティチップモジュールへ送信する」ことは、引用発明において記載されていない構成である。

ここで、引用文献4には、携帯型電話機などのモバイル機器において、アクティブRFIDタグとパッシブRFIDタグを備え、ミニメモリにキャッシュカード機能やクレジットカード機能などの個人認証情報、電話番号リストやメールアドレスリストなどの個人情報を格納し、第2アンテナは、外部のリーダ/ライタが発信する信号から電力を得て、ミニメモリに対しても電力を供給し、前記第2アンテナを介してミニメモリの情報を送受信するという上記相違点7に類似する様な技術的事項が開示されているものの、前述した通り、引用発明は、無線通信装置において作成された「仮想タグ」に他の無線通信装置へ送信する機能を有するものではないことから、引用発明に、引用文献4に記載された技術的事項を適用する動機があるとはいえない。

また、本願発明5と引用発明とは、少なくとも上記相違点7において相違していることから、本願発明5は、引用発明に記載された発明でもない。

そして、上記相違点7に係る本願発明5の構成は、引用文献2、3にも記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明5は、当業者であっても引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5.本願発明6-8について
本願発明6-8も、本願発明5の「NFC制御モジュールがRFIDサービスデバイスとの接続を確立するとき、前記コントローラは、データ格納モジュールからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出し、NFC制御モジュールを介してこのRFID情報を前記セキュリティチップモジュールへ送信する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明5と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定についての判断

本願発明1-4は、「端末が管理待ちのRFIDカードのRFID情報を読み取ってRFID情報データベースを更新するステップと、端末がRFID情報データベースからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出すステップと、端末のNFCシミュレイションモードをアクティブにするステップと、端末が対応するRFID情報をRFIDサービスデバイスへ送信するステップとを含む」という技術事項を有する発明であるが、原査定おける引用文献Aには、「端末が管理待ちのRFIDカードのRFID情報を読み取ってRFID情報データベースを更新するステップ」が記載されておらず、「RFID情報データベース」を構成要素として含む「端末がRFID情報データベースからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出すステップ」と、「端末が対応するRFID情報をRFIDサービスデバイスへ送信するステップ」も引用文献Aに記載されているとはいえない。そして、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-4は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。

また、本願発明5-8は、「コントローラ」は、「NFC制御モジュールにより読み取られた管理待ちのRFIDカードのRFID情報をデータ格納モジュールへ送信することに用いられ」ること、及び、「NFC制御モジュールがRFIDサービスデバイスとの接続を確立するとき、前記コントローラは、データ格納モジュールからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出し、NFC制御モジュールを介してこのRFID情報を前記セキュリティチップモジュールへ送信することに用いられること」という技術事項を有する発明であるが、原査定おける引用文献Aには、「NFC制御モジュールにより読み取られた管理待ちのRFIDカードのRFID情報をデータ格納モジュールへ送信すること」が記載されておらず、「データ格納モジュール」を構成要素として含む「NFC制御モジュールがRFIDサービスデバイスとの接続を確立するとき、前記コントローラは、データ格納モジュールからRFIDサービスデバイスに対応するRFID情報を取り出し、NFC制御モジュールを介してこのRFID情報を前記セキュリティチップモジュールへ送信することに用いられること」も引用文献Aに記載されているとはいえない。そして、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明5-8は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明できたものではない。

したがって、原査定を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2014-530073(P2014-530073)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保 正典  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 宇多川 勉
石川 正二
発明の名称 RFIDカードの管理方法及び端末  
代理人 中村 哲平  
代理人 金子 彩子  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 大森 純一  
代理人 折居 章  
代理人 吉田 望  

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