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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
管理番号 1329805
審判番号 不服2014-25298  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-10 
確定日 2017-06-28 
事件の表示 特願2007-313537「液晶媒体および液晶ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月26日出願公開、特開2008-144167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成19年12月4日(パリ条約に基づく優先権主張:2006年12月5日、欧州特許庁)に出願された特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年 2月 1日付け 拒絶理由通知
平成25年 7月24日 意見書・手続補正書
平成26年 1月24日付け 拒絶理由通知
平成26年 7月22日 意見書・手続補正書
平成26年 8月 5日(提出)刊行物等提出書
平成26年 8月 7日付け 拒絶査定
平成26年12月10日 本件審判請求・手続補正書
平成26年12月17日付け 審査前置移管
平成27年 1月20日付け 前置報告書
平成27年 1月23日付け 審査前置解除
平成28年 5月23日付け 拒絶理由通知
平成28年10月20日 意見書・手続補正書

第2 平成28年5月23日付け拒絶理由の概要
当審は、平成28年5月23日付けで、概略、以下のとおりの拒絶理由を通知した。

「第3 拒絶理由
しかるに、本願は以下の拒絶理由を有するものである。

理由1:本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2:・・(中略)・・
理由3:本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



I.理由1について
以下、いわゆる「サポート要件」に係る適否につき検討する。
・・(中略)・・
よって、本願請求項1及び同項を引用する請求項2ないし26に記載された事項で特定される発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができない(平成17年(行ケ)10042号判決参照)から、本願の各請求項の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

II.理由2及び3について

引用刊行物:
1.特表2003-525474号公報(原査定における「引用文献2」)
2.特表2006-509854号公報(原査定における「引用文献3」)
(以下、上記「1.」及び「2.」の文献をそれぞれ「引用例1」及び「引用例2」という。)
・・(中略)・・
2.本願の各発明に対する対比・検討

(1)引用発明1-1及び1-2に基づく検討
・・(中略)・・
コ.小括
以上のとおりであるから、本願発明1ないし19及び24ないし26は、いずれも引用例1に記載された発明であり、本願発明1ないし26は、いずれも引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)引用発明2-1及び2-2に基づく検討
・・(中略)・・
コ.小括
以上のとおりであるから、本願発明1ないし24及び26は、いずれも引用例2に記載された発明であり、本願発明1ないし26は、いずれも引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」

第3 本願特許請求の範囲に記載された事項及び本願に係る発明
平成28年10月20日付け手続補正書により補正された本願特許請求の範囲には、請求項1ないし21が記載され、そのうち請求項1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
-式Iの1種類以上の化合物と、式IIの1種類以上の化合物と、式IIIの1種類以上の化合物とを含む第1の誘電的に正の成分である成分Aと、
-式IVbの1種類以上の化合物と、式IVdの2種類以上の化合物とを含む第2の誘電的に正の成分(ただし、液晶媒体全体に占める式IVbおよびIVdの化合物の総含有量は5?50重量%である。)である成分Bと、
-式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む誘電的に中性の成分である成分Dと
を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】


(式中、
R^(1)、R^(2)およびR^(3)は、それぞれ互いに独立に、炭素数1?7のアルキルまたは炭素数2?7のアルケニルであり、および
mは、0または1である。)
【化2】


(式中、
R^(4)は、炭素数1?7のアルキルである。)
【化3】


(式中、
R^(61)およびR^(62)は、それぞれ互いに独立に、炭素数1?7のアルキルである。)」
(以下、上記請求項1に記載された事項で特定されたとおりの発明を「本願発明」という。)

第4 当審の判断
当審は、
当審が通知した上記理由1及び3により、依然として本願は拒絶すべきもの、
と判断する。以下詳述する。

I.理由1について
以下、いわゆる「サポート要件」に係る適否につき再度検討する。

1.本願発明の解決しようとする課題
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の解決しようとする課題(以下、「本願発明の課題」という。)に関し、以下の記載がある。(以下の摘記における下線部は当審が付した。)

「【技術分野】
【0001】
本発明は液晶媒体およびこれらの液晶媒体を備える液晶ディスプレイ、特に時間順次マルチプレックス(Time Sequential Multiplexing)によりアドレスされるディスプレイおよび特には超捩れネマチック(STN:Super Twisted Nematic)型のディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は、情報を表示するために広く使用されている。用いられる電気光学モードは、例えば捩れネマチック(TN:Twisted Nematic)モード、超捩れネマチック(STN:Super Twisted Nematic)モード、光学補償ベンド(OCB:Optically Compensated Bend)モードおよび電気制御復屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringence)モードとそれらの種々の変法および他の方法である。これらのモードは全て、基板と液晶層とにそれぞれ実質的に垂直な電場を使用しており、これらのモードに加え、基板と液晶層とにそれぞれ実質的に平行な電場を用いる電気光学的モード、例えばインプレーンスイッチング(In-Plane Switching)モード(例えば、独国特許第4000451号明細書(特許文献1)および欧州特許第0588568号明細書(特許文献2)に開示されている)などもある。とりわけ、この電気光学モードは、最新のデスクトップモニタ用のLCDに使用されており、マルチメディア用途のディスプレイに適用することが進められている。
【0003】
TNおよびSTNディスプレイは広く、例えば携帯電話およびゲーム向けに使用されている。それらの最大の利点の幾つかは、製造コストが低いことに加え、動作電圧に関する要求が比較的低く、電力消費が相対的に少ないことである。本発明の液晶は、好ましくは、この型のディスプレイで使用される。
【0004】
これらのディスプレイには、改善された特性を有する新規な液晶媒体が求められている。特に、誘電異方性(Δε)は適度に低い動作電圧を許容するのに十分高くあるべきである。好ましくは、Δεは30より大きく、極めて好ましくは45より大きくあるべきであるが、好ましくは、80以下、特には70以下である。そうでなければ、電気的アクティブ素子によってアドレスされるディスプレイ(AM LCDまたはAMD)より、この点を厳格に要求しない殆どのSTNディスプレイにとってすら許容されなくなるほど混合物の抵抗率が低くなり易い。このパラメーターに加え、媒体は、ネマチック相の適度に広い範囲、十分な性能を発揮するための電気光学効果に対する正しい範囲の複屈折(Δn)、ある程度低い回転粘度および、上記の通り、少なくとも十分に高い比抵抗を示さなければならない。
【0005】
本発明のディスプレイは、好ましくは、例えばAltおよびPleshkoにより提案される直交波形法(Scheme of Orthogonal Wave Forms)ような時間順次マルチプレックス(Time Sequential Multiplexing)によりアドレスされるが、高速スイッチディスプレイで特に使用される所謂アクティブアドレス(Active Addressing)によってもアドレスされる。しかしながら、本発明の液晶は、他の既知のアドレス手段によるディスプレイにも有益に使用することができる。
【0006】
低分子量液晶材料を高分子材料と共に複合系として使用する種々の異なるディスプレイモード、例えば、国際公開第91/05029号パンフレット(特許文献3)に開示されるポリマー分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)系、ネマチック曲線配向相(NCAP:Nematic Curvilinearily Aligned Phase)系およびポリマーネットワーク(PN:Polymer Network)系、または、軸対称微小領域(ASM:Axially Symmetric Microdomain)系および他のものがある。これらとは対照的に、本発明に特に好ましいモードは、液晶媒体を表面に配向させてそのまま使用することである。これらの表面は、典型的には、液晶材料の均一な配向を達成するために前処理されている。本発明によるディスプレイモードは、好ましくは、液晶層に対して実質的に垂直な電場を使用する。
【0007】
LCDは、投射型ディスプレイ用と共に、直視型ディスプレイ用として使用されている。
【0008】
LCD、特にSTNディスプレイに好適な液晶組成物は、例えば、米国特許第6730372号明細書(特許文献4)で公知である。これらの組成物は、しかしながら、顕著な欠点を有している。それらの組成物のほとんどは、他の欠点の中でも、比抵抗値が余りに低くおよび/または余りにも高い動作電圧を要する。また、それらの多くは、応答時間が不都合にも長い。
・・(中略)・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、実用的な用途に好適な特性、例えば、広いネマチック相範囲、低い粘度、使用するディスプレイモードに応じた適切な光学異方性Δn、および特に高いΔεなどを有する液晶媒体が明らかに求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、適切に高いΔε、適切な相範囲およびΔnを有する液晶媒体であって、従来材料の欠点を示さないか、または少なくとも格別により小さな程度しか示さない液晶媒体が実現されることが見いだされた。」

上記記載からみて、本願発明の解決課題は、「広いネマチック相範囲、低い粘度、使用するディスプレイモードに応じた適切な光学異方性Δn、および特に高いΔεなどの実用的な用途に好適な特性を有する液晶媒体」の提供というものであると認められる。

2.本願発明の課題の解決に関する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の課題の解決に関して次の記載がある。

(a)
「【0011】
本出願のこれらの改善された液晶媒体は、少なくとも以下の成分を含む。
-式Iの1種類以上の化合物と式IIおよびIIIの群より選択される1種類以上の化合物とを含む第1の誘電的に正の成分である成分A。
・・(中略)・・
【0013】
-式IVの1種類以上の化合物を含む第2の誘電的に正の成分である成分B。
・・(中略)・・
【0016】
-任意成分として、更なる(第3の)誘電的に正の成分である成分C。
【0017】
-任意成分として、誘電的に中性の成分である成分D。
【0018】
-任意成分として、誘電的に負の成分である成分E。
【0019】
-任意成分として、好ましくは必須成分として、キラル成分である成分F。」

(b)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましくは、第1の誘電的に正の成分である成分Aは、20以上、好ましくは30以上の誘電異方性を有する誘電的に強く正の化合物、好ましくは式IおよびIII、最も好ましくは式I、IIおよびIIIのそれぞれの1種類以上の化合物を含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
【0021】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、mが0である式IIIの1種類以上の化合物および/またはmが1である式IIIの1種類以上の化合物を含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は、式I、IIおよびIIIのそれぞれの1種類以上の化合物を含む。
【0023】
好ましくは、第2の誘電的に正の成分である成分Bは、3?19の範囲、好ましくは5?16の範囲の誘電異方性を有する誘電的に正の化合物、好ましくは式IVの1種類以上の化合物を含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
【0024】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、X^(4)がOCF_(3)でY^(4)がHである式IVの化合物を1種類以上含む。
【0025】
さらに好ましくは、本発明の液晶混合物は、X^(4)がFでY^(4)がFである式IVの化合物を1種類以上含む。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は、式IVa?IVdの化合物群より選択される式IVの化合物を1種類以上含む。
・・(中略)・・
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は、式IVaの化合物を1種類以上含む。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は、式IVbの化合物を1種類以上および/または式IVcおよびIVdの化合物群から選ばれる化合物を1種類以上含む。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、第2の誘電的に正の成分である成分Bは、式IVa?IVdの群より選択される式IVの化合物の1種類以上を好ましくは含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
【0031】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、更なる(第3の)誘電的に正の成分である成分Cを含む。この成分は3より大きい誘電異方性を有し、好ましくは3?19の範囲であり、最も好ましくは5?15である。成分Cは、誘電的に正の化合物を好ましくは含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これよりなる。好ましくは、この成分は、式Vの誘電的に正の化合物の1種類以上を好ましくは含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
・・(中略)・・
【0035】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、成分AおよびBに加え、少なくとも1種類の更なる成分を含有する。この第3の成分は成分C、DおよびEのいずれか1つでよい。好ましくは、存在する第3成分は成分CまたはDであり、特に好ましくは成分Cである。
【0036】
明らかに、本発明の混合物は、これらの成分の4種類を含有することもでき、好ましくは成分A、B、CおよびD、ならびに場合によってこれら全ての4種類でもよい。
【0037】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、誘電的に中性の成分である成分Dを含む。この成分は、-1.5?+3の範囲の誘電異方性を有する。成分Dは、誘電的に中性の化合物の1種類以上を好ましくは含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これよりなる。好ましくは、この成分は、式VIの誘電的に中性の化合物の1種類以上を好ましくは含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
・・(中略)・・
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は、式Va?Vgの化合物群より選択される式Vの1種類以上の化合物を含む。
・・(中略)・・
【0046】
特に、式Va-1?Va-4、Vb-1?Vb-15、Vc-1?Vc-4、Vd-1?Vd-8、Ve-1?Ve-4、Vf-1?Vf-4およびVg-1?Vg-4の化合物群から選択される1種類以上の化合物を含む液晶混合物が好ましい。
・・(中略)・・
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は式Vf-4の化合物を1種類以上含む。
【0055】
既に述べたものと同一でも異なってもよい本発明の更に好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は、式VIa?VIh、好ましくはVIa?VIdおよびVIg、最も好ましくはVIaおよびVIgの化合物群より選択される式VIの化合物を好ましくは含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これよりなる成分Dを含む。
・・(中略)・・
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の液晶混合物は、式VIgの化合物を1種類以上含む。
【0059】
好ましくは、液晶混合物は、化合物の以下の群より選択される化合物を1種類以上含む。
【0060】
-R^(61)およびR^(62)がアルキルである式VIaの化合物、
-R^(61)がアルキルでR^(62)がアルコキシである式VIaの化合物、
-R^(61)がアルキルでR^(62)がアルケニルである式VIaの化合物、
-R^(61)およびR^(62)がアルキルである式VIbの化合物、
-R^(61)がアルキルでR^(62)がアルコキシである式VIbの化合物、
-R^(61)およびR^(62)がアルキルである式VIcの化合物、
-R^(61)がアルキルでR^(62)がアルコキシである式VIcの化合物、
-R^(61)がアルキルでR^(62)がアルケニルである式VIcの化合物、および
-R^(61)およびR^(62)がアルキルである式VIdの化合物。
【0061】
-特に好ましい液晶混合物は、式VIb?VIdおよびVIgの群より選択される1種類以上の化合物に加え式VIaの化合物を1種類以上含み、特に好ましくは、R^(61)がアルキルでR^(62)がアルケニルである式VIaの化合物を含む混合物である。
【0062】
加えて、本発明の液晶混合物は更なる任意の成分である成分Eを含んでもよく、成分Eは負の誘電異方性を有して有しており、好ましくは式VIIの誘電的に負の化合物を含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
・・(中略)・・
【0066】
キラル成分として使用してもよいキラル化合物である成分Fは、それぞれそのキラル成分中で当業者に公知である。そのような化合物は、例えばメルク社より入手可能なコレステリルノナノエート(CN)C15またはCB15のようなキラルドーパントである。また、例えばR-811およびS-811、R-1011およびS-1011またはR-5011およびS-5011(これらは鏡像異性化合物の対である)のようなキラルドーパントも有益であり、これらもメルク社より入手できる。後者によれば、化合物の適当な鏡像異性体を使用することで、コレステリックらせんの所望の捩れの方向を選択することができる。
【0067】
好ましくは、本発明の液晶媒体は、成分A?F、特には式I?VIIの化合物群より選ばれる化合物を含み、より好ましくは大部分が、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
【0068】
本出願において「含む」は、組成物の文脈において、例えば媒体または成分などの言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を含有していることであり、好ましくは合計濃度で10%以上、最も好ましくは20%以上含有していることを意味する。
【0069】
文脈中、「大部分が・・よりなる」は、言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を55%以上、好ましくは60%以上、最も好ましくは70%以上を含有することを意味する。
【0070】
文脈中、「実質的に・・よりなる」は、言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を含有することを意味する。
【0071】
文脈中、「全てが・・よりなる」は、言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を98%以上、好ましくは99%以上、最も好ましくは100.0%を含有することを意味する。
【0072】
特に、成分Aが、式I?IIIの化合物群より選択される化合物を含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる液晶媒体が好ましい。
【0073】
成分Eは、式VII、好ましくは、式VIIa?VIIcからなる化合物群より選ばれる化合物を1種類以上含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、最も好ましくは全体が、これらよりなる。
【0074】
・・(中略)・・
【0075】
式VIIa?VIIcにおいて、R^(71)は、好ましくはn-アルキルまたは1-E-アルケニル基であり、R^(72)は、好ましくはn-アルキルまたはアルコキシである。
【0076】
また、本発明の媒体の中で、上では明確には述べていないが、その他のメソゲン性化合物を任意にかつ有利に使用することもできる。そのような化合物は当業者に知られている。
【0077】
成分Aは、好ましくは全混合物の40%?90%、より好ましくは50%?80%、より好ましくは55%?70%、最も好ましくは60%?65%の濃度で使用される。
【0078】
成分Bは、好ましくは全混合物の5%?50%、より好ましくは7%?40%、より好ましくは10%?30%、最も好ましくは15%?25%の濃度で使用される。
【0079】
成分Cは、好ましくは全混合物の0%?40%、より好ましくは2%?30%、より好ましくは3%?20%、最も好ましくは5%?15%の濃度で使用される。
【0080】
成分Dは、好ましくは全混合物の0%?40%、好ましくは0%?20%、最も好ましくは5%?15%の濃度で使用される。
【0081】
成分Eは、好ましくは全混合物の0%?30%、好ましくは0%?20%、最も好ましくは5%?15%の濃度で使用される。
【0082】
成分Fは、好ましくは全混合物の0%?10%、好ましくは0%?5%、最も好ましくは0.5%?2%の濃度で使用される。
【0083】
任意に、本発明の媒体は、物理的性質を調節するために、さらに液晶化合物を含むことができる。そのような化合物は当業者に知られている。本発明の媒体中におけるそれらの濃度は、好ましくは0%?30%、より好ましくは0%?20%、最も好ましくは5%?15%である。
【0084】
好ましくは、液晶媒体は、成分A、B、C、D、EおよびF、好ましくは成分A、B、C、DおよびFを全体で50%?100%、より好ましくは70%?100%、最も好ましくは80%?100%、特には90%?100%含有し、換言すれば、それぞれ式I、II、III(成分A)、IV(成分B)、V(成分C)、VI(成分D)およびVII(成分E)の化合物を1種類以上含有し、より好ましくは大部分が、最も好ましくは全体が、これらよりなる。
【0085】
本発明の液晶媒体は、70℃以上の、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上、特には85℃以上の透明点によって好ましくは特徴付けられる。
【0086】
本発明の液晶媒体のΔnは、好ましくは0.11以上、より好ましくは0.12以上、より好ましくは0.120?0.200の範囲、より好ましくは0.120?0.180の範囲、最も好ましくは0.120?0.160以下の範囲、特には0.120?0.150の範囲である。
【0087】
本発明の液晶媒体の1kHzで20℃におけるΔεは、好ましくは25.0以上、より好ましくは35.0以上、より好ましくは45以上、最も好ましくは55.0以上、特には65.0以上である。
【0088】
本発明の媒体のネマチック相は、少なくとも0℃?70℃、より好ましくは少なくとも-20℃?70℃、最も好ましくは少なくとも-30℃?75℃、特には少なくとも-40℃?80℃まで広がっていることが好ましく、ただし、「少なくとも」とは、下限値との関連においては、相転移の温度が少なくとも下限値まで、好ましくは下限値より低い温度まで広がっていることをを意味し、一方、上限値との関連においては、相転移の温度が少なくとも上限値まで、好ましくは上限値より高い温度まで広がっていることを意味する。」

(c)
「【0089】
本出願において、「誘電的に正」という用語は、化合物または成分がΔε>3.0であること、「誘電的に中性」という用語は、-1.5≦Δε≦3.0であること、「誘電的に負」という用語は、Δε<-1.5であることをそれぞれ意味し、Δεは、1kHzの周波数で20℃において決定される。化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物中での、個別の化合物の10%の溶液の結果から決定される。試験混合物の容量は、ホメオトロピックを有するセル、およびホモジニアス配向を有するセルの両方において決定する。両方の型のセルのセルギャップは、およそ10μmである。印加される電圧は、1kHzの周波数で室温において典型的には0.5V?1.0Vの二乗平均平方根値を有する矩形波であるが、しかしながら、常にそれぞれの試験混合物の容量の閾値よりも低く選択される。
【0090】
誘電的に正の化合物については、混合物ZLI-4792が、誘電的に中性および誘電的に負の化合物については、混合物ZLI-3086、両方ともメルク社製、ドイツ国が、それぞれホスト混合物として使用される。化合物の誘電率は、注目している化合物の添加によるそれぞれのホスト化合物の値の変化から決定され、その値を、注目している化合物の濃度100%に外挿する。
【0091】
20℃の測定温度でネマチック相を有する成分は、そのままで測定され、他の全ての点についても化合物の測定と同様に処理される。
【0092】
本出願において「閾値電圧」という用語は、明示的に別のことを述べなければ、光学的閾値を意味し、そして10%相対的コントラスト(V_(10))について与えられ、また、「飽和電圧」という用語は、光学的飽和を意味し、そして90%相対的コントラスト(V_(90))について与えられる。容量的閾値電圧(V_(0)、フレデリクス閾値V_(Fr)とも呼ばれる)は、特に明示的に述べる場合にのみ使用する。
【0093】
本出願で与えられたパラメーターの範囲は、他に明示的に述べなければすべて限界値を含む。
【0094】
本出願を通じて、他に特に述べなければ、全ての濃度は、質量パーセントで与えられ、それぞれの完全の混合物に関連付けられ、全ての温度は、摂氏度で与えられ、全ての温度差も摂氏度で与えられる。すべての物理的な特性は、「Merk Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、Status誌、1997年11月刊、メルク社、ドイツ国により決定されたか、または決定され、および他に特に述べなければ、20℃の温度に対して与えられる。光学異方性(Δn)については、589.3nmの波長で決定される。誘電異方性(Δε)については、1kHzの周波数で決定される。閾値電圧、並びに他の電気光学的特性は、メルク社、ドイツ国で作製された試験セルで決定された。Δεの決定のための試験セルは、22μmのセルギャップを有していた。電極は、1.13cm^(2)の面積および保護リングを有する円形ITO電極であった。配向層は、ホメオトロピック配向(ε_(?))用にはレシチン、およびホモジニアス配向(ε_(⊥))用には日本合成ゴム社製ポリイミドAL-1054であった。容量は、0.3V_(rms)の電圧を有する正弦波を使用した周波数応答分析装置Solatron1260で決定した。電気光学的測定において使用した光は、白色光であった。用いた構成は、大塚社、日本国より商業的に入手可能な装置であった。特性電圧は、垂直観察の下で決定した。閾値(V_(10))-中間灰色(V_(50))-および飽和(V_(90))電圧は、それぞれ10%、50%および90%相対コントラストで決定した。
【0095】
本発明による液晶媒体は、通常の濃度で添加剤およびキラルドーパントをさらに含むことができる。これらのさらなる構成成分の合計濃度は、混合物の合計を基礎として0%?10%の範囲、好ましくは、0.1%?6%である。それぞれ使用される個別の化合物の濃度は、好ましくは0.1%?3%の範囲である。これらおよび類似の添加物の濃度は、本出願の液晶媒体の液晶成分および化合物の濃度の値および範囲には考慮されない。
【0096】
本出願による発明の液晶媒体は、数種の化合物、好ましくは3?30種類、より好ましくは8?20種類、および最も好ましくは10?16種類の化合物からなる。これらの化合物は、慣用的な方法で混合される。原則として、より少ない量で使用される化合物の所定量を、より大きい量として用いられる化合物に溶解する。温度がより高い濃度で用いられる化合物の透明点を越える場合には、溶解の課程の完了を観察するのは、特に容易である。しかしながら、他の慣用の方法、例えば、同族化合物または共融混合物であることができる、いわゆるプレ混合物の使用や、構成成分が使用可能な状態の混合物自身である、いわゆるマルチ・ボトル・システムにより媒体を調製することもできる。
【0097】
適当な添加物の添加により、本発明による液晶媒体は、すべての公知のタイプの液晶ディスプレイ、例えばTN-、TN-AMD、ECB-AMD、VAN-AMD、IPSおよびOCB LCDのような液晶媒体をそのまま使用するもの、特にPDLC、NCAP、PN LCDそして特にASM-PA LCDなどの複合システムにおいて使用可能であるように、変更することができる。
【0098】
液晶の融点T(C,N)、スメクチック相(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)は、摂氏度で与えられる。
【0099】
本出願において、および特に以下に示す例において、液晶化合物の構造は略号で示されており、略称でも呼ばれる。その略号から化学式への変換は、下記表AおよびBに従って直接的に行われる。基C_(n)H_(2n+1)およびC_(m)H_(2m+1)は全部が、n個またはm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖状アルキル基である。表Bの説明は、それ自体で明らかである。表Aには、親構造にかかわる略号のみが示されている。それぞれの場合において、この親構造の略号の後に、ハイフンにより分離されて、置換基R^(1)、R^(2)、L^(1)およびL^(2)を特定するコードが続く。
・・(中略)・・
【0107】
本発明の液晶媒体は、好ましくは、
-表AおよびBの化合物群から選択される7種類以上、好ましくは、8種類以上の化合物で、好ましくは異なる式の化合物、および/または
-表Aの化合物群から選択される1種類以上、より好ましくは2種類以上の化合物、好ましくは3種類以上の化合物で、好ましくは異なる式の化合物、および/または
-表Bの化合物群から選択される3種類以上、より好ましくは4種類以上、さらに好ましくは5種類以上の化合物で、好ましくは異なる式の化合物を含む。
【0108】
以下の表において表Cに、本発明の液晶媒体でキラルドーパントとして典型的に使用されるキラル化合物を示す。
・・(中略)・・
【0111】
・・(中略)・・
以下のテーブルであるテーブルDに、本発明の液晶媒体で安定剤として典型的に使用される化合物を示す。
・・(中略)・・
【表5.5】
・・(後略)」

(d)
「【実施例】
【0118】
下記の例は、いかなる方法でも制限することなく、本発明を説明するものである。
【0119】
しかしながら、組成物の物理的特性は、当業者にどの特性が達成できるか、そして、どの範囲でそれらを変更できるかを説明する。特に、好ましく達成することができる種々の特性の組合せが、このように当業者のために明確にされる。
【0120】
<例1>
次表に与えられる組成と特性を有する液晶混合物を実現する。
【0121】
【表6】


この混合物は、好ましい値のΔnおよび高い値のΔεを有し、STNモードで動作するディスプレイに非常に良く適している。
【0122】
<例2>
次表に与えられる組成と特性を有する液晶混合物を実現する。
【0123】
【表7】


この混合物は、好ましい値のΔnおよび高い値のΔεを有しており、STNモードで動作するディスプレイに非常に良く適している。」

3.検討

(1)本願発明の課題
上記1.で示したとおり、本願発明の課題は、「広いネマチック相範囲、低い粘度、使用するディスプレイモードに応じた適切な光学異方性Δn、および特に高いΔεなどの実用的な用途に好適な特性を有する液晶媒体」の提供にあるものと認められる。

(2)本願発明の課題解決に関する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の実施例(参考例)に係る部分以外(上記摘示(a)ないし(c)参照)の記載では、ある化合物をある量比で使用すると「好適である」と単に記載されているのみで、いかなる傾向の物性を示すのか不明であって、本願発明の液晶組成物により、従来技術に比して「広いネマチック相範囲、低い粘度、使用するディスプレイモードに応じた適切な光学異方性Δn、および特に高いΔεなどの実用的な用途に好適な特性を有する液晶媒体」を得ることができるであろうと当業者が客観的に認識することができるような作用機序(各液晶化合物をいかなる組成比で組み合わせて使用するかなど)について記載しているものではない。
なお、本願発明でいう「式Iの化合物」、「式IIの化合物」、「式IIIの化合物」、「式IVbの化合物」及び「式IVdの化合物」は、いずれも、「誘電的に正の成分」であり、その組成比を上昇させることにより、液晶媒体の誘電率異方性Δεを上昇させるもの(正の誘電率異方性の絶対値を上昇させるもの)であろうことは当業者に自明であるものと認められるものの、各式のそれぞれの化合物が、粘度、光学異方性Δn、ネマチック相温度範囲などの液晶媒体の他の物性をいかなる傾向に変化させるのかまで当業者に自明であるとは認められない。
しかるに、本願明細書の発明の詳細な説明の上記部分では、上記各式の化合物が、それぞれ、粘度、光学異方性Δn、ネマチック相温度範囲などの液晶媒体の他の物性をいかなる傾向に変化させるのか記載されていないのであるから、請求項に記載された事項を具備する全ての場合において、「広いネマチック相範囲、低い粘度、使用するディスプレイモードに応じた適切な光学異方性Δn、および特に高いΔεなどの実用的な用途に好適な特性を有する液晶媒体」を得られるであろうと当業者が認識することができる作用機序が明らかであるとはいえない。
してみると、本願明細書の実施例に係る部分以外の記載では、本願発明が、上記解決課題を解決できると当業者がその技術常識に照らして客観的に認識することができるように記載したものということができない。

さらに、本願明細書の実施例に係る部分(摘示(d)参照)の記載を検討すると、極めて限られた実施例「<例2>」及び参考例「<例1>」(審決注:式IIの化合物を含有していないから、実施例ではない。)に係る合計2例の記載のみであり、しかも、従来技術に係る場合などの他の実験例(比較例など)に係る記載もない。
してみると、本願明細書の実施例(参考例)に係る部分の記載から、本願発明が、全ての場合において、上記解決課題に則した効果を発現し課題につき解決達成できるであろうと当業者が客観的に認識することができるということはできない。

なお、本願出願前(優先日前)において、本願の請求項1に記載された事項を具備する場合、「広いネマチック相範囲、低い粘度、使用するディスプレイモードに応じた適切な光学異方性Δn、および特に高いΔεなどの実用的な用途に好適な特性を有する液晶媒体」を得られるであろうと当業者が認識することができる技術常識が存するものとも認められない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、たとえその技術常識に照らしても、本願の請求項1に記載された事項で特定される全ての場合について、上記本願発明の解決課題を解決することができるものと認識することができるとはいえない。
よって、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえず(平成17年(行ケ)10042号判決参照)、本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではない。

4.まとめ
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではないから、他の請求項につき検討するまでもなく、同法第36条第6項(柱書)の規定を満たしているものではない。
よって、本願は、特許法第49条第4号に該当し、拒絶すべきものである。

II.理由3について

引用刊行物:
1.特表2003-525474号公報
2.特表2006-509854号公報
(以下、上記「1.」及び「2.」の文献をそれぞれ「引用例1」及び「引用例2」という。)

1.各引用例の記載事項及び各引用例に記載された発明

(1)引用例1

ア.記載事項
上記引用例1には、以下の(1a)ないし(1f)の事項が記載されている。

(1a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 -フレームと共にセルを形成する2つの平面平行外板、
-セル中に存在する正の誘電異方性を有するネマティック液晶混合物、
-各々の画素を直角のローウェーブ形態によりアドレスする、外板の内側上に重ねられた整列層を有する電極層、
-約1度?30度の外板の表面における分子の長軸と外板との間のプレチルト角、および
-22.5°?600°の値の、配列層から配列層までのセル中の液晶混合物のねじれ角、
を含み、ここで、前記ネマティック液晶混合物は、本質的に、
a)+1.5より大きい誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分A30?90重量%;
b)-1.5?+1.5の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分B10?55重量%;
c)-1.5より小さい誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分D0?10重量%、および
d)キラルなネマティック液晶混合物の層の厚さ(平面平行外板の距離)とナチュラルピッチとの間の比率が、約0.2?1.3である量の光学的活性成分C
からなる超ねじれネマティック液晶ディスプレイにおいて、
前記液晶混合物が、少なくとも1種の式IA
【化1】


式中、
R^(3)は、2?7個のC原子を有するアルケニル基であり、
R^(4)は、1?12個のC原子を有する随意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH_(2)基は、O原子が、互いに直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置換されていることができ、あるいは、m=1の場合において、R^(4)はまた、Q-Yであることができ、
Qは、CF_(2)、OCF_(2)、CFH、OCFHまたは単結合であり、
Yは、FまたはClであり、
L^(1)およびL^(2)は、各々独立してHまたはFであり、
mは、0または1である、
で表される化合物および式IB
【化2】


式中、
Y^(1)およびY^(2)は、各々独立してHまたはFであり、
Wは、
【化3】


であり、
R^(5)は、2?10個のC原子を有するアルケニルまたはアルキニルであり、
R^(6)は、1?10個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2?10個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルキニルまたはアルキニルオキシであり、
R^(7)は、2?10個のC原子を有するアルキニルまたはアルキニルオキシである、
を有する成分Aの少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、前記ディスプレイ。
【請求項2】 式IAで表される化合物が、以下の式IA-1、IA-2、IA-3:
【化4】


式中、R^(3)、L^(1)、L^(2)、QおよびYは、請求項1における式IAについて示された意味を有し、および
R^(4)は、1?12個のC原子を有する随意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH_(2)基は、O原子が、互いに直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置換されていることができる、
から選択されていることを特徴とする、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】 式IBで表される化合物が、以下の式IB1?IB7:
【化5】


式中、R^(a)は、2?5個のC原子を有するアルケニルであり、R^(b)は、1?7個のC原子を有するアルキルまたは2?7個のC原子を有するアルケニルであり、およびR^(c)は、2?7個のC原子を有するアルキニルである、
から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のディスプレイ。
【請求項4】 成分Aが、さらに、式II
【化6】


式中、
Rは、1?12個のC原子を有する随意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH_(2)基は、O原子が、互いに直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置換されていることができ、
【化7】


であり、
L^(5)およびL^(6)は、各々独立してHまたはFであり、
Z^(1)およびZ^(2)は、互いに独立して、-COO-、-CH_(2)CH_(2)-、-CH=CH-、-C≡C-または単結合であり、および
nは、0、1または2である、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1、2または3に記載のディスプレイ。
【請求項5】 式IIで表される化合物が、以下の式
【化8】


式中、Rは、請求項4における式IIについて定義した通りである、
から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】 成分Aが、さらに、式III
【化9】


式中、R^(8)は、1?7個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシであり、Z^(2)およびnは、各々独立して、請求項4における式IIについて示した意味の1つを有し、
【化10】


であり、および、
L^(1)、L^(2)、L^(5)およびL^(6)は、各々独立して、HまたはFである、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載のディスプレイ。
【請求項7】 式IIIで表される化合物が、以下の式
【化11】


式中、R^(8)は、請求項6における式IIIについて定義した通りである、
から選択されていることを特徴とする、請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項8】 液晶混合物が、さらに、式V
【化12】


式中、Rは、請求項4における式IIについて示した意味の1つを有し、Y^(2)は、FまたはClである、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1?7のいずれかに記載のディスプレイ。
【請求項9】 液晶混合物が、式IAおよびIBで表される化合物を合計で3?8種含み、これらの化合物の量が、全体の混合物の15?45重量%であることを特徴とする、請求項1?8のいずれかに記載のディスプレイ。
【請求項10】 液晶混合物が、+12を超える正の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を、58重量%を超える量で含むことを特徴とする、
請求項1?9のいずれかに記載のディスプレイ。
【請求項11】 1.3Vまたはこれ未満のしきい値電圧を有することを特徴とする、請求項1?10のいずれかに記載のディスプレイ。
【請求項12】 請求項1?11のいずれかに定義した、液晶混合物または組成物。
・・(後略)」

(1b)
「【0001】
本発明は、短い切り換え時間並びに良好な急峻度および角度依存性を有する超ねじれネマティック液晶ディスプレイ(STN-LCD)およびこれにおいて用いる新規なネマティック液晶混合物に関する。
・・(中略)・・
【0004】
標準的なTNディスプレイと比較して、このタイプのSTN-LCDは、顕著に良好な電気光学的特性曲線の急峻度(以下では単に「急峻度」と呼ぶ)およびこれに関連して、良好なコントラスト値、並びにコントラストの顕著に低い角度依存性により区別される。特に興味深いのは、特に比較的低い温度においても極度に短い切り換え時間を有するSTN-LCDである。短い切り換え時間を達成するために、特に液晶混合物の回転粘度は、以前は、通常液晶成分と、随意にまた比較的高い蒸気圧を有する単変性添加剤との最適化された組み合わせを用いて最適化されていた。
【0005】
しかし、達成された切り換え時間は、すべての用途に適切ではなかった。
一層短い切り換え時間はまた、STN-LCDのLC層の厚さを減少させ、一層高い複屈折Δnを有する液晶混合物を用いることにより、達成することができる。
しかし、切り換え時間を短縮するこれらの方法はすべて、尚最終的には、すべての使用には適切ではない混合物をもたらす。
【0006】
STN-LCDへの他の要求は、一層高い時分割特性(一層小さい数の駆動するICをもたらす)、一層低いしきい値電圧および高い急峻度である。
STN-LCDにおいて高い急峻度を達成するために、液晶混合物は、弾性定数K_(33)/K_(11)の比率の比較的高い値およびΔε/ε_(⊥)(式中、Δεは、誘電異方性であり、ε_(⊥)は、分子の長軸に垂直な方向における誘電定数である)の比較的低い値を示さなければならない。
【0007】
コントラストおよび切り換え時間の最適化に加えて、このような液晶混合物は、さらに、重要な要請、例えば:
1.d/p値の下限と上限との間の範囲として定義される、セルギャップdおよびピッチpの広いd/pウィンドウ、
2.高い化学的安定性、
3.高い電気抵抗、
4.温度および周波数に対するしきい値電圧の低い依存性
を満たさなければならない。
【0008】
しかし、最適なパラメーターは、種々の材料パラメーター、例えば誘電および弾性特性の逆の影響のために、前述の特性のすべてについて同時に達成することができない。従って、現在まで達成されたパラメーターの組み合わせは、尚、特に高いマルチプレックスのSTN-LCD(約1/400のマルチプレックス比を有する)、また中程度のおよび低いマルチプレックスのSTN-LCD(それぞれ約1/64および1/16のマルチプレックス比を有する)については、十分ではない。
【0009】
従って、前述の要求を満たす、短い切り換え時間および同時に広い寿命温度範囲、高い急峻度(即ち低い急峻度値)、コントラストの良好な角度依存性および低いしきい値電圧を有する、改善されたSTN-LCDに対する多大な要求が継続している。
【0010】
本発明は、前述の欠点を小さい程度に有するのみであるかまたは全く有せず、同時に極めて有用な全体的特性、特に低温における短い切り換え時間、高い急峻度および駆動電圧の改善された温度依存性を有する、STN-LCDを提供する目的を有する。」

(1c)
「【0015】
本発明のSTN-LCD用の液晶混合物において、式IAで表される化合物を、式IBで表される化合物と共に用いると、特に、
・高い急峻度、
・低い温度依存性を有する低いしきい値電圧、および
・特に低温において短い切り換え時間
がもたらされる。
【0016】
さらに、本発明の液晶混合物は、以下の有利な特性
-低い粘度、
-しきい値電圧および駆動電圧の低い温度依存性、
-低温におけるディスプレイ中の混合物の改善された安定性
を示す。」

(1d)
「【0029】
成分Aの他の化合物は、好ましくは式II
【化25】


式中、
Rは、1?12個のC原子を有する随意にフッ素化されたアルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH_(2)基は、O原子が、互いに直接隣接しないように、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置換されていることができ、
【化26】


であり、
L^(5)およびL^(6)は、各々独立してHまたはFであり、
Z^(1)およびZ^(2)は、互いに独立して、-COO-、-CH_(2)CH_(2)-、-CH=CH-、-C≡C-または単結合であり、および
nは、0、1または2である、
から選択される。
【0030】
式IIで表される特に好ましい化合物は、以下の式
【化27】


式中、Rは、式IIにおいて定義した通りである、
で表されるものである。これらの式におけるRは、特に好ましくは1?8個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシである。
【0031】
特に好ましいのは、式IIa、IIb、IIc、IIdおよびIIeで表される化合物、特に式IIaおよびIIbで表される化合物である。」

(1e)
「【0046】
好ましい液晶混合物は、成分Bからの1種または2種以上の化合物を、好ましくは10?45%の比率で含む。群Bからのこれらの化合物またはこの化合物は、特に低い値の回転粘度γ_(1)を有する。
【0047】
好ましくは、成分Bは、2つの環を有するIV1?IV9
・・(中略)・・
を含む群から選択された1種または2種以上の化合物および/または3つの環を有するIV10?IV24
・・(中略)・・
を含む群から選択された1種または2種以上の化合物および/または3つの環を有する式IV25?IV31
【化44】


を含む群から選択された1種または2種以上の化合物を含み、ここで、R^(1)およびR^(2)は、各々独立して、式IIにおけるRについて示した意味の1つを有し、およびIV10?IV19およびIV23?IV31における1,4-フェニル基はまた、互いに独立して、Fにより一置換または多置換されていることができる。
【0051】
式IV24(式中、R^(2)は、2?5個のC原子を有するアルケニルである)で表される化合物が、好ましい。
式IV25?IV31で表される化合物の中で、特に好ましいのは、R^(1)がアルキルであり、R^(2)がアルキルまたはアルコキシであり、各々1?7個のC原子を有するものである。さらに好ましいのは、LがFである、式IV25およびIV31で表される化合物である。
式IV1?IV30で表される化合物におけるR^(1)およびR^(2)は、特に好ましくは、1?12個のC原子を有する直鎖状アルキルまたはアルコキシである。」

(1f)
「【0087】
例5
STNディスプレイは、以下の特性:
【表6】


からなる液晶媒体を含む。
化合物PZU-V2-Nの融点は、37℃であり、単変性透明点は、8.2℃である。」

(1g)
「【0092】
例10
STNディスプレイは、以下の特性:
【表11】


からなる液晶媒体を含む。」

イ.引用例1に記載された発明
上記引用例1には、「+1.5より大きい誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分A30?90重量%、-1.5?+1.5の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分B」及び他の成分からなる「超ねじれネマティック液晶ディスプレイ」用の「ネマチック液晶混合物」であって、上記「液晶成分A」として「式IB」を有する化合物の1種以上を含む「混合物」並びに当該「混合物」を含有する「超ねじれネマティック液晶ディスプレイ」(摘示(1a)の【請求項1】及び【請求項12】参照)が記載されている。
そして、上記引用例1には、以下の(a)ないし(f)の事項も記載されている。
(a)上記「式IBで表される化合物が」「式IB1」で表される化合物を含む群から選択されること(摘示(1a)【請求項3】参照)
(b)「成分Aが、さらに、式IIで表される1種または2種以上の化合物を含」み、当該「式II」で表される化合物の具体例として「式IIa」ないし「式IIh」の各式で表される化合物の1種以上が使用できること(摘示(1a)【請求項4】及び【請求項5】並びに摘示(1d)参照)
(c)「成分Aが、さらに、式IIIで表される1種または2種以上の化合物を含」み、当該「式III」で表される化合物の具体例として「式IIIb2」、「式IIIc1」及び「式IIIf1」の各式で表される化合物の1種以上が使用できること(摘示(1a)【請求項6】及び【請求項7】参照)
(d)上記「液晶成分B」として、具体的には、「式IV30」を含む「式IV1」ないし「式IV31」の各式で表される化合物の1種または2種以上を混合物の10?45%の(組成)比率で使用すること(摘示(1d)参照)
(e)「液晶混合物が、式IAおよびIBで表される化合物を合計で3?8種含み、これらの化合物の量が、全体の混合物の15?45重量%であること」及び「液晶混合物が、+12を超える正の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を、58重量%を超える量で含むこと」(摘示(1a)【請求項9】及び【請求項10】参照)
(f)「ディスプレイ」が「1.3Vまたはこれ未満のしきい値電圧を有すること」(摘示(1a)【請求項11】参照)
さらに、引用例1には、「例5」及び「例10」なるそれぞれ以下の成分を含有する液晶混合物についても具体的に記載されている(摘示(1f)及び(1g)参照)。
<例5>
「MEnN.F」を3種(本願発明でいう「式III」)、
「PCH-3N.F.F」(本願発明でいう「式II」)、
「PZU-V2-N」(本願発明でいう「式I」)、
「CCG-V-F」(本願発明でいう「式IV」)の17重量%
「CCPC-mn」を3種(本願発明でいう「式VIg」)、
「CBC-33F」(本願発明でいう「式VIf」)、「CCP-V-1」(本願発明でいう「式VIc」)、「CC-3-V1」(本願発明でいう「式VIa」)などの他の誘電的に中性の化合物4種
<例10>
「MEnN.F」を2種(本願発明でいう「式III」)、
「PCH-3N.F.F」(本願発明でいう「式II」)、
「PZU-V2-N」(本願発明でいう「式I」)、
「CCZU-3-F」(本願発明でいう「式IVd」)の9重量%、
「CBC-mnF」を2種(本願発明でいう「式VIf」)、「CCP-V-1」(本願発明でいう「式VIc」)、「CC-3-V1」(本願発明でいう「式VIa」)などの誘電的に中性の化合物7種

してみると、上記引用例1には、上記記載からみて、
「+1.5より大きい誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分A30?90重量%、-1.5?+1.5の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分B及び他の成分からなる超ねじれネマティック液晶ディスプレイ用のネマチック液晶混合物であって、
上記液晶成分Aが、
「式IB1」などの「式IB」で表される化合物の1種以上の混合物、
「式IIa」ないし「式IIh」の各式で表されるものなどの「式II」で表される化合物の1種以上の混合物
並びに
「式IIIb2」、「式IIIc1」及び「式IIIf1」の各式で表されるものなどの「式III」で表される化合物の1種以上の混合物
を含むものであり、
また、上記液晶成分Bが、
「式IV30」を含む「式IV1」ないし「式IV31」の各式で表される化合物の1種以上を含む混合物
である液晶混合物。」
に係る発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(2)引用例2

ア.記載事項
上記引用例2には、以下の(2a)ないし(2)の事項が記載されている。

(2a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
双安定液晶装置中での液晶組成物の使用であって、この液晶組成物が、
・少なくとも30重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の、少なくとも25の誘電異方性Δεを有する1つまたは2以上の化合物を含んでいる成分(α)、そこで少なくとも25重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の化合物は、少なくとも40の誘電異方性Δεを有しており、および
・少なくとも5重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の成分(β)を有し、そこで成分(β)は、式IIIの少なくとも1つの化合物、および/または式IVの少なくとも1つの化合物、および/または式Vの少なくとも1つの化合物、および/または式VIの少なくとも1つの化合物および/または式VIIの少なくとも1つの化合物を含む液晶組成物の使用。
【化1】


【化2】


(式中、
aおよびbは、互いに独立して0または1;
R^(31)、R^(32)、R^(41)、R^(42)、R^(51)、R^(52)、R^(61)、R^(62)、R^(71)およびR^(72)は、互いに独立して、無置換、またはCNもしくはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキル基であり、その際、ヘテロ原子が互いに隣接しないようにして、CH_(2)グループの1つまたは2つ以上が-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられていてもよく;
L^(31)は、HまたはFであり;
Z^(41)は、-COO-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH=CH-あるいは-C≡C-であり;
【化3】


は、互いに独立して、
【化4】


であり;
【化5】


は、
【化6】


であり;
【化7】


は、
【化8】


である。ここで、L^(32)およびL^(33)は、互いに独立してHまたはFである。)
【請求項2】
前記双安定液晶装置が天頂双安定ネマチック液晶装置である請求項1記載の液晶組成物の使用。
【請求項3】
前記成分(α)が、式Iの化合物の少なくとも1種および/または式IIの化合物の少なくとも1種を含む請求項1または2記載の液晶組成物の使用。
【化9】


(式中、
c、d、eおよびfは互いに独立して、それぞれ0、1、2、3または4;
R^(11)は、無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-もしくはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、CH_(2)の1または2以上は、ヘテロ原子が隣接しないようにして、-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられていてもよく;
R^(21)は、無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-もしくはポリ-置換されているC_(2)-C_(15)アルケニルであり、その際、CH_(2)の1または2以上は、ヘテロ原子が隣接しないようにして、-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Z^(11)およびZ^(22)は、互いに独立して単結合または-C≡C-を表す。)
【請求項4】
前記成分(α)が、式VIIIの化合物の少なくとも1種を含有する請求項1?3のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【化10】


(式中、
gおよびhは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり;
R^(81)は無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-C≡C-、CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Z^(81)は単結合または-C≡C-である。)
【請求項5】
前記成分(α)が、式IXの化合物の少なくとも1種を含有する請求項1?4のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【化11】


(式中、
jは、0または1であり;
R^(91)は、無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Z^(91)およびZ^(92)は、互いに独立して単結合または-C≡C-であり;
【化12】


は、
【化13】


であり;
【化14】


は、
【化15】


であり;
ここで、L^(91)、L^(92)、L^(93)およびL^(94)は、互いに独立してHまたはFである。)
【請求項6】
前記液晶組成物が、さらに、少なくとも0.20の光学異方性Δnを有する化合物の1または2以上を含む成分(γ)を少なくとも3重量%(組成物の重量の合計に基づいて)含有する請求項1?5のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【請求項7】
前記成分(γ)が、式Xの化合物の少なくとも1種を含有する請求項6記載の液晶組成物の使用。
【化16】


(式中、
kは0、1、2、3または4であり、;
R^(101)およびR^(102)は、互いに独立して、無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;そして、
【化17】



【化18】


である。)
【請求項8】
前記液晶組成物が、さらに、式XIの少なくとも1つの化合物および/または式XIIの少なくとも1つの化合物および/または式XIIIの少なくとも1つの化合物および/または式XIVの少なくとも1つの化合物を含む請求項1?7のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【化19】


【化20】


(式中、
R^(111)およびR^(142)は、互いに独立して無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(2)-C_(15)アルケニルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
R^(121)、R^(131)、R^(132)およびR^(141)は、互いに独立して無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
R^(122)は、無置換またはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルあり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Y^(111)は、F、Cl、互い独立して、ハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルカニルもしくはC_(2)-C_(15)アルケニル、またはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルコキシであり;
L^(111)およびL^(112)は、互いに独立してHまたはFであり;そして、
【化21】


は、互いに独立して、
【化22】


である。)
【請求項9】
前記液晶組成物が、少なくとも50重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の前記成分(α)を含有する請求項1?8のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【請求項10】
前記液晶組成物が、少なくとも50重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の前記成分(α)を含有し、そこで、化合物の少なくとも30重量%(組成物の重量の合計に基づいて)が少なくとも40の誘電異方性Δεを有する請求項1?9のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【請求項11】
前記液晶組成物が、前記成分(α)の式IIの化合物の少なくとも1種と、8重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の前記成分(β)を含有する請求項1?10のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【請求項12】
前記液晶組成物が、少なくとも5重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の前記成分(γ)を含有する請求項6?11のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【請求項13】
前記液晶組成物が、式XVの化合物の少なくとも1つおよび/または式XVIおよび/または式XVIIの化合物の少なくとも1つおよび/または式XVIIIの少なくとも1つおよび/または式XIXの少なくとも1つおよび/または式XXの少なくとも1つおよび/または式XXIの少なくとも1つおよび/または式XXIIの少なくとも1つを含有する請求項1?12のいずれか1項に記載の液晶組成物の使用。
【化23】


(式中、
R^(151)、R^(161)、R^(171)、R^(172)、R^(181)、R^(182)、R^(201)、R^(211)およびR^(221)は、互いに独立して無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
R^(191)は、互いに独立して無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-C≡C-、CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Y^(151)、Y^(161)、Y^(191)、Y^(201)、Y^(211)およびY^(221)は、互いに独立して、F、Cl、互いに独立してハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルカニルもしくはC_(2)-C_(15)アルケニル、またはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルコキシである。
L^(151)、L^(161)、L^(191)、L^(192)、L^(201)、L^(202)、L^(203)、L^(204)、L^(211)、L^(212)、L^(213)、L^(214)、L^(215)、L^(216)、L^(221)、L^(222)、L^(223)およびL^(224)は、互いに独立してHまたはFであり;
Z^(151)は-COO-、CH_(2)OまたはCF_(2)Oである。)
【請求項14】
式Iの化合物の少なくとも1種;および
式IIIの化合物の少なくとも1種および/または式IVの化合物の少なくとも1種および/または式Vの化合物の少なくとも1種および/または式VIの化合物の少なくとも1種および/または式VIIの化合物の少なくとも1種
を含有する液晶媒体。
【化24】


(式中、
cおよびdは互いに独立して、それぞれ0、1、2、3または4;
R^(11)は、無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-もしくはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、CH_(2)の1または2以上は、ヘテロ原子が隣接しないようにして、-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられていてもよく;
Z^(11)は、単結合または-C≡C-を表す。)
【化25】


(式中、
aおよびbは、互いに独立して0または1;
R^(31)、R^(32)、R^(41)、R^(42)、R^(51)、R^(52)、R^(61)、R^(62)、R^(71)およびR^(72)は、互いに独立して、無置換、またはCNもしくはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキル基であり、その際、ヘテロ原子が互いに隣接しないようにして、CH_(2)グループの1つまたは2つ以上が-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられていてもよく;
L^(31)は、HまたはFであり;
Z^(41)は、-COO-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH=CH-あるいは-C≡C-であり;
【化26】


は、互いに独立して、
【化27】


であり;
【化28】


は、
【化29】


であり;
【化30】


は、
【化31】


である。ここで、L^(32)およびL^(33)は、互いに独立してHまたはFである。)
【請求項15】
式IIの化合物の少なくとも1種;および
式IIIの化合物の少なくとも1種および/または式IVの化合物の少なくとも1種および/または式Vの化合物の少なくとも1種および/または式VIの化合物の少なくとも1種および/または式VIIの化合物の少なくとも1種
を含有する液晶媒体。
【化32】


(式中、
eおよびfは、互いに独立して、それぞれ0、1、2、3または4;
R^(21)は、無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-もしくはポリ-置換されているC_(2)-C_(15)アルケニルであり、その際、CH_(2)の1または2以上は、ヘテロ原子が隣接しないようにして、-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Z^(21)は、単結合または-C≡C-を表す。)
【化33】


(式中、
aおよびbは、互いに独立して0または1;
R^(31)、R^(32)、R^(41)、R^(42)、R^(51)、R^(52)、R^(61)、R^(62)、R^(71)およびR^(72)は、互いに独立して、無置換、またはCNもしくはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキル基であり、その際、ヘテロ原子が互いに隣接しないようにして、CH_(2)グループの1つまたは2つ以上が-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられていてもよく;
L^(31)は、HまたはFであり;
Z^(41)は、-COO-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH=CH-あるいは-C≡C-であり;
【化34】


は、互いに独立して、
【化35】


であり;
【化36】


は、
【化37】


であり;
【化38】


は、
【化39】


である。ここで、L^(32)およびL^(33)は、互いに独立してHまたはFである。)
【請求項16】
式VIIIの化合物の少なくとも1種をさらに含有する請求項14または15記載の液晶媒体。
【化40】

(式中、
gおよびhは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり;
R^(81)は、無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Z^(81)は単結合または-C≡C-である。)
・・(後略)」

(2b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明は、双安定の液晶装置で、特に天頂双安定のネマチック装置で使用するに適しており、特性が改善された液晶組成物を提供するための問題点に取り組むものである。」

(2c)
「【0057】
成分(α)は1つあるいは好ましくはそれより多くの、25以上、特に30以上の高い誘電異方性Δεを有する化合物を含む。組成物全体の重量に基づいて、少なくとも25重量%、好ましくは30重量%以上の成分(α)化合物が、誘電異方性Δε40以上を示す。組成物全体の重量に基づいて、少なくとも30重量%の成分(α)が、本発明の天頂双安定液晶装置の液晶組成物に含有される必要がある。液晶組成物が、好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは少なくとも40重量%、さらにより好ましくは少なくとも45重量%、最も好ましくは50重量%以上の前記成分(α)を含有する。
【0058】
発明者は、成分(α)は、好ましくは式Iの化合物の1または2以上、または式IIの化合物の1または2以上、または式IおよびIIの両方の式のつまたは2以上の化合物を含有すること(存在するかもしれない必要な高い誘電異方性を有する他の化合物に加えて)が好ましいことを見出した。本発明のある好ましい実施形態において、発明の成分(α)は、式Iの少なくとも1つの化合物を含み、かつ式IIの化合物を含まない。異なる好ましい実施形態では、発明の成分(α)は、式IIの少なくとも1つの化合物を含み、かつ式Iの化合物を含まない。
【0059】
もし、成分(α)が式Iの少なくとも1つの化合物を含んでいる場合、この式Iの化合物は、合計の量の少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは15重量%以上で存在してよい。成分(α)が、式IIの1つの化合物を含んでいる場合、式IIの前記化合物は、約5?30重量%の量で、好ましくは8?25重量%で、より好ましくは10?20重量%で存在してよい。
【0060】
しかし、もし成分(α)が、式IIの1より多い化合物を含んでいる場合は、これらの化合物の合計量は、約5から約55重量%、好ましくは約8から約35重量%、最も好ましくは約9から約25重量%の範囲である。
【0061】
【化10】


【0062】
式Iの化合物に関し、cおよびdは、互いに独立して、0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。これは、好ましくは式Iのフェニル環が無置換、またはフッ素でモノ-またはジ-置換されていてよいことを意味する。もし存在するときは、F置換基は、置換フェニル環のどの位置であってもよい。
・・(中略)・・
【0068】
であって、ここで、L^(11)とL^(12)は互いに独立してHまたはFである。さらに、Z^(11)は、単結合であるか(その結果CN基がフェニル環に直接結合される)、またはC-C三重結合であり、それによりフェニル環の-C≡C-CN置換基を成形しているかのどちらかであることができる。Z^(11)は単結合であることが好ましい。
【0069】
式Iの好ましい化合物は次の化合物である。
【0070】
【化14】


【0071】
・・(中略)・・
【0072】
式中R^(11)は上に定義したとおりである。好ましくは、式IおよびIAからIMにおいて、R^(11)は、直鎖アルキル基であり、特に炭素数1、2、3、4、5または6のアルカニル基である。きわめて好ましい化合物は、一般式IA1でn=1、2、3、4、5または6の化合物である。
【0073】
【化16】


【0074】
特に、単独または互いの組み合わせで、成分(α)の中に存在する式Iの化合物の好ましい例は、次の式I1?I3の化合物である。
【0075】
【化17】


【0076】
液晶組成物中に3つの化合物I1、I2およびI3のすべての混合物を有することが好ましい。例えば、化合物I1は、37.5の誘電異方性Δεを示し、化合物I3は、36.0のΔεを有する。
【0077】
式IIの化合物に関して、eとfは互いに独立して0、1、2、3または4、好ましくは0、1または2であってよく;それは、好ましくは式IIのそれぞれのフェニル環が、無置換であるか、フッ素でモノ-またはジ-置換されていてよいことを意味する。存在するとき、F置換基は、置換されたフェニル環の任意の位置にあってよい。
・・(中略)・・
【0084】
式IIの好ましい化合物は、次の化合物である。
【0085】
【化21】


・・(中略)・・
【0087】
式中、R^(21)は上に定義したとおりである。好ましくは、式IIおよびIIAからIIMにおいて、R^(21)は、直鎖アルケニル基であり、特に炭素数2、3、4、5または6であり、最も好ましくは末端C=C二重結合を有するものである。きわめて好ましい化合物は、一般式IIB1でn=2、3、4、5または6の化合物である。
【0088】
【化23】


【0089】
特に、単独または互いの組み合わせで、成分(α)の中に存在する式IIの化合物の好ましい例は、次の式II1?II4の化合物である。
【0090】
【化24】


【0091】
式IIの最も好ましく化合物は、II4化合物であり、59.5の誘電異方性Δεを示す。」

(2d)
「【0092】
成分(β)に関して、この成分は、天頂双安定ネマチック装置の液晶組成物中に存在するときは、少なくとも5重量%以上の量で存在する。明らかに、成分(β)は、天頂双安定ネマチック装置で使用される液晶混合物の高透明点のために、必要である。成分(β)は、式IIIおよび/または式IVおよび/または式Vおよび/または式VIおよび/または式VIIの化合物を含有する。
【0093】
【化25】

【0094】
式中、a、b、R^(31)、R^(32)、R^(41)、R^(42)、R^(51)、R^(52)、R^(61)、R^(62)、R^(71)、R^(72)、L^(31)、Z^(41)、およびA、B、C、D、EおよびFによって示される環は、上に定義されたとおりである。
・・(中略)・・
【0103】
式IVに関して、好ましい化合物は、そのなかでbが1である式IVAおよびIVBのもの、およびその中でbが0である式IVCおよびIVDである。
【0104】
【化29】


【0105】
ここで、R^(41)、R^(42)およびZ^(41)は、上に定義されたとおりである。Z^(41)は、好ましくは-CO-O-または、式IVDについては、-OCH_(2)-である。R^(41)およびR^(42)は、互いに独立して、直鎖アルキル、より好ましくは2、3、4、5または6個の炭素原子を有する直鎖アルカニルまたはアルケニルであり、特に2?6個の炭素原子を備えた直鎖アルカニルである。式IVBの化合物がより好ましい。
【0106】
式IVの特に好ましい例は、式IV1からIV3の化合物、および式IV4およびIV5の化合物、およびIV6からIV8の化合物である。
【0107】
【化30】


・・(中略)・・
【0109】
特に、液晶組成物中にIV1、IV2およびIV3の混合物を有することが好ましい。
・・(中略)・・
【0129】
成分(β)は、本発明の天頂双安定ネマチック装置の液晶組成物中で、5重量%以上の量で使用される。成分(α)が少なくとも式IIの化合物の1つを含有するときは、液晶組成物は、成分(β)を8重量%以上で含有することが好ましい。成分(α)中に、式Iの化合物がないときは、少なくとも10重量%さらにより多い量の成分(β)が好ましい。本発明のある特定の実施形態においては、成分(β)が全量の15重量%以上、または20重量%以上であることが極めて好ましい。
【0130】
発明の実際の実施形態中で、成分(β)は、式IIIまたはIVまたはVまたはVIまたはVIIの1つだけ式の1つまたは2つ以上の化合物を含んでいてよい。また、それは、式IIIからVIIのうちの2または3以上から、1または2以上の化合物を含んでいることも可能である。使用される式の化合物を等量でも異なる量で含んでもよい。成分(β)が、式III、IV、V、VIまたはVIIの1つまたは2つの式から、1または2以上の化合物を含むことが好ましい。もし、式IIIからVIIの2つの化合物を含有するとき、どのような組み合わせでも可能である。即ち、III+IVまたはIII+VまたはIII+VIまたはIII+VIIまたはIV+VまたはIV+VIまたはIV+VIIまたはV+VIまたはV+VIIまたはVI+VIIである。2つのタイプの化合物は等量で使用されても、1つのタイプが他に対して過剰に、例えば2:1、で使用されてよい。等量の両方のタイプの化合物が使用されることが好ましい。III、IV、V、VIおよびVIIの式のうちの2つが成分(β)に含まれている場合、1つのタイプが式IIIの化合物であることもまた好ましい。従って、好ましい組み合わせは、III+IV、III+V、III+VIおよびIII+VIIである。成分(α)が少なくとも1つの式IIの化合物を含むとき、成分(β)が式III、IV、V、VIおよびVIIの2つの式の化合物を含むことが好ましい。」

(2e)
「【0153】
発明の異なる好ましい実施形態において、天頂双安定ネマチック装置に使用される液晶組成物の成分(α)は、少なくとも式IXの化合物を含む。
【0154】
【化50】


【0155】
式中、jは0または1であり;
R^(91)は無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Z^(91)およびZ^(92)は、互いに独立して単結合または-C≡C-であり;
【0156】
【化51】


【0157】
は、
【0158】
【化52】


【0159】
であり;
【0160】
【化53】


【0161】
は、
【0162】
【化54】


【0163】
であり;
ここで、L^(91)、L^(92)、L^(93)およびL^(94)は、互いに独立してHまたはFである。
・・(中略)・・
【0170】
式IXの化合物の特定の例は、
【0171】
【化58】


【0172】
である。
【0173】
もし、これらの化合物が成分(α)の中に存在する場合、それらの合計量は、約5から約45重量%まで変動するかもしれない。発明で使用される液晶組成物の中、同時には、式IXAからIXEの化合物の1つのタイプのみが存在することが好ましい。」

(2f)
「【0214】
また、天頂双安定ネマチック液晶装置において使用される本発明の液晶組成物は、約8から10以上の中位の誘電異方性Δεを有するメソーゲン性物質を、例えば、式XVの化合物の1つまたは2以上および/または式XVIの化合物の1つまたは2つ以上、好ましくは30重量%まで、より好ましくは20重量%までを含んでいてもよい。
【0215】
【化77】


【0216】
式中、
R^(151)およびR^(161)は、互いに独立して無置換またはCNまたはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルキルであり、その際、少なくとも1つまたは2以上のCH_(2)グループは、互いに独立して、隣接するヘテロ原子がないようにして-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、CO-O-、-OC-O-で置き換えられてもよく;
Y^(151)およびY^(161)は、互いに独立して、F、Cl、ハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルカニル、またはハロゲンでモノ-またはポリ-置換されているC_(1)-C_(15)アルコキシであり;
L^(151)およびL^(161)は、互いに独立してHまたはFであり;そして
Z^(151)は-COO-、CH_(2)OまたはCF_(2)Oである。
【0217】
好ましくはこれらの化合物はそれぞれ次のとおりである。
【0218】
【化78】


【0219】
【化79】


【0220】
ここで、nは3つの式の全てで、1、2、3、4、5、6または7である。これらの物質は、発明の天頂双安定ネマチック装置に使用される液晶組成物の、望ましいように動作電圧および動作ウィンドウの両方に影響を与えるかもしれない。」

(2g)
「【実施例】
【0271】
測定用試料は、適切な重量の量のそれぞれの成分(パーセンテージ重量/重量)を量り分けて調製された。その後、試料は、等方性相まで加熱され、完全に混合されて、均一化された。その後、混合物は、所定の濃度のアルミナと共にかき混ぜられ、次にろ過されて(0.2μm)、液晶混合物のみが残された。
【0272】
ネマチックから等方性の遷移温度(あるいは透明点、T_(NI))、誘電異方性(Δε)、複屈折(Δn)、スプレイおよびベンド弾性定数(K1およびK3)、および回転粘度(γ1)をMerckパンフレット「Physical Properties of Liquid Crystals- Description of the measurement methods」、ed. W. Becker (1998)に記載されているように決定した。単一化合物に対する値は、最初の値が知られている標準ホスト混合物の中で、既知の濃度(通常単一化合物10重量%)を使用して決定された値を外挿して得られた。
【0273】
天頂双安定ネマチック装置中の各混合物の電気光学の性能は、簡単な実験のセット・アップおよびVANタイプのテストセルを使用して測定された。これは、オシロスコープに接続された光検知器を搭載した透過型顕微鏡を必要とする。これにより、クロスした偏光板からの透過がモニターされる。テスト・セルは、25℃での測定を可能にするために、顕微鏡の下の熱ステージにマウントされた。正味のDC電圧がセルに印加されないことを保証するために、(期間と電圧が変わる)双極性の電気的なパルスを使用した。したがって、各パルスのすそ引きエッジ(およびその極性)は、最終スイッチされた状態(期間と電圧に依存して)を決定する。正確な初期状態が最初に選択され、その最初の信号が第2番目(適切な位相差をもって)をトリガーすることを保証するのに、2つの信号発生器が必要である。両方の信号は、テスト・セルに接続される前にアンプを通して信号発生器の出力を通すことにより増幅された。B-W遷移について、10および90%の透過変化のために必要な電圧、およびリバースの90および10%の透過変化のために必要な電圧が、様々なパルス幅について測定された。W-B遷移のためには、90および10%の透過変化に必要な電圧のみが、色々なパルス幅について測定された。一旦0および100%の透過レベルが知られると(つまり黒と白)、これらのレベルはオシロスコープにセットされる。そして、遷移(10から90%の透過変化)の光学応答時間を決定するためにそれらを使用することができる。
【0274】
VANタイプのテストセルは、典型的にはセルギャップ3?5μmで、透過モードで、クロスした偏光板で使用された。セル厚さが変わることと、異なる混合物Δnにより、リターデーションは最適化されなかったが、それは単にコントラストを減少させるだけであるので、これは重大ではない。
・・(中略)・・
【0285】
【表12】




イ.引用例2に記載された発明
上記引用例2には、
「液晶組成物が、
・少なくとも30重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の、少なくとも25の誘電異方性Δεを有する1つまたは2以上の化合物を含んでいる成分(α)、そこで少なくとも25重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の化合物は、少なくとも40の誘電異方性Δεを有しており、および
・少なくとも5重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の成分(β)を有し、そこで成分(β)は、式IIIの少なくとも1つの化合物、および/または式IVの少なくとも1つの化合物、・・を含む液晶組成物」及び「双安定液晶装置中での」当該「液晶組成物の使用」が記載されている(摘示(2a)【請求項1】参照)。
そして、上記引用例2には、以下の(a)ないし(i)の事項も記載されている。
(a)上記「成分(α)」が、「式Iの化合物の少なくとも1種および/または式IIの化合物の少なくとも1種を含む」こと(摘示(2a)【請求項3】参照)
(b)上記「成分(α)」が、「式IXの化合物の少なくとも1種を含有する」こと(摘示(2a)【請求項5】参照)
(c)上記「液晶組成物が、式XVの化合物の少なくとも1つおよび/または式XVIおよび/または式XVIIの化合物の少なくとも1つおよび/または式XVIIIの少なくとも1つおよび/または式XIXの少なくとも1つおよび/または式XXの少なくとも1つおよび/または式XXIの少なくとも1つおよび/または式XXIIの少なくとも1つを含有する」こと(摘示(2a)【請求項13】参照)
(d)上記「式Iの化合物」として、好適には「式I1」ないし「式I3」の各式で表される化合物又はそれらの混合物であること(摘示(2c)【0074】?【0076】)
(e)上記「式IIの化合物」として、好適には「式II1」ないし「式II4」の各式で表される化合物であること(摘示(2c)【0089】?【0091】参照)
(f)上記「式IIIの化合物」として、好適には「式IIIA」ないし「式IIIG」の各式で表される化合物であり、特に好適には「式III1」ないし「式III6」の各式で表される化合物であること(摘示(2d)【0095】?【0099】参照)
(g)上記「式IVの化合物」として、好適には「式IV1」ないし「式IV8」の各式で表される化合物であり、特に好適には「式IV1」ないし「式IV3」の各式で表される化合物の混合物であること(摘示(2d)【0103】?【0109】参照)
(h)上記「式IXの化合物」として、好適には「式IXA」ないし「式IXE」の各式で表される化合物であり、特に好適には「式IX1」ないし「式IX4」の各式で表される化合物であること(摘示(2e)参照、特に【0171】?【0173】参照)
(i)上記「式XVの化合物」又は「式XVIの化合物」として、好適には「式XVA」又は「式XVIA」の各式で表される化合物又はそれらの混合物であること(摘示(2f)参照)
さらに、引用例2には、「例17」なるそれぞれ以下の成分を含有する液晶混合物についても具体的に記載されている(摘示(2g)【表12】参照)。
<例17>
「PZU-V2-N」(本願発明でいう「式I」)、
「MEnN.F」を4種(本願発明でいう「式III」)、
「CDU-n-F」の3種(本願発明でいう「式IVb」)の15重量%
「CCZU-n-F」の3種(本願発明でいう「式IVd」)の29重量%
「CCPC-mn」を3種(本願発明でいう「式VIg」)、
「CCGU-3-F」(本願発明でいう「式Vf-4」)の他の誘電的に正の化合物

してみると、上記引用例2には、上記記載からみて、
「・少なくとも30重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の、少なくとも25の誘電異方性Δεを有する1つまたは2以上の化合物を含んでいる成分(α)、そこで少なくとも25重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の化合物は、少なくとも40の誘電異方性Δεを有しており、および
・少なくとも5重量%(組成物の重量の合計に基づいて)の成分(β)を有し、そこで成分(β)は、式IIIの少なくとも1つの化合物および/または式IVの少なくとも1つの化合物を含む液晶組成物であって、
上記成分(α)が、「式I1」ないし「式I3」などの「式I」で表される化合物、「式II4」などの「式II」で表される化合物及び「式IX1」ないし「式IX4」などの「式IX」の化合物の混合物であり、
また、上記成分(β)が、「式III1」ないし「式III6」などの「式III」で表される化合物及び/又は「式IV1」ないし「式IV3」の各式で表される化合物の混合物などの「式IV」で表される化合物1種又は2種以上であると共に、
さらに、「式XVA」又は「式XVIA」の各式で表される化合物などの「式XV」又は「式XVI」の各式で表される化合物の混合物を含有する液晶組成物。」
に係る発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

2.本願発明に対する対比・検討

(1)引用発明1に基づく検討

ア.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1における
(a)「式IBの化合物」、
(b)「式IIIb2の化合物」、
(c)「式IIIc1の化合物」又は「式IIIf1の化合物」、及び
(d)「式IV30の化合物」は、それぞれ、
本願発明1における
(a)「式Iの・・化合物」、
(b)「式IIの・・化合物」、
(c)「式IIIの・・化合物」、及び
(d)「式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物」
に相当することが明らかである。
そして、引用発明1における上記(a)ないし(c)の各成分は、いずれも「+1.5より大きい誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分A」に係るものであるから、本願発明における「第1の誘電的に正の成分である成分A」に相当し、また、引用発明1における「液晶混合物」は、種々の液晶化合物からなる混合媒体であることが明らかであるから、本願発明における「液晶媒体」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明1とは、
「-式Iの1種類以上の化合物と、式IIの1種類以上の化合物と、式IIIの1種類以上の化合物とを含む第1の誘電的に正の成分である成分Aと、
-式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】(式及びその説明は省略)
【化3】(式及びその説明は省略)」
の点で一致し、以下の点でのみ相違するものといえる。

相違点1:本願発明では、「【化2】(式及び説明は省略)」の「-式IVbの1種類以上の化合物と、式IVdの2種類以上の化合物とを含む第2の誘電的に正の成分(ただし、液晶媒体全体に占める式IVbおよびIVdの化合物の総含有量は5?50重量%である。)である成分B」を含むのに対して、引用発明1では、「液晶成分A」として『「式IIa」ないし「式IIh」の各式で表されるものなどの「式II」で表される化合物の1種以上の混合物』を含む点
相違点2:本願発明では、「式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む誘電的に中性の成分である成分D」であるのに対して、引用発明1では、「-1.5?+1.5の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分Bが、「式IV30」を含む「式IV1」ないし「式IV31」の各式で表される化合物の1種以上を含む混合物」である点

イ.検討

(ア)相違点1について
上記相違点1につき検討すると、引用発明1において「+1.5より大きい誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分A」として使用される『「式IIa」ないし「式IIh」の各式で表されるものなどの「式II」で表される化合物の1種以上の混合物』は、(A)「式II」で表される化合物のうち、R基が炭素数1?7のアルキル基、環Aが1,4-シクロヘキシレン基、環Bが2,6-ジオキサ-1,4-シクロヘキシレン基、Z^(1)基及びZ^(2)基がいずれも単結合であり、nが1である化合物が、本願発明でいう「式IVb」の化合物であること、(B)「式II」で表される化合物のうち、「式IIa」で表される化合物が、本願発明でいう「式IVd」の化合物であること、という(A)及び(B)のいずれもが当業者に自明である。
してみると、引用発明1における上記「液晶成分A」として使用される『「式II」で表される化合物の1種以上の混合物』には、上記(A)の化合物の1種以上と上記(B)の化合物の1種以上を含む混合物である場合が広く含まれ、例えば本願発明でいう「式IVb」の化合物の1種以上及び本願発明でいう「式IVd」の化合物の2種以上を含む混合物である場合をも包含されることが、当業者に自明である。
また、上記引用例1には、上記『「式II」で表される化合物の1種以上の混合物』について、液晶混合物全体に対して9重量%又は17重量%の重量比で使用する具体例が開示されている(摘示(1f)及び(1g)参照)ことからみて、引用発明1において、上記『「式II」で表される化合物の1種以上の混合物』につき、例えば液晶混合物全体に対して5?50重量%程度の範囲で使用することは、当業者が単なる所望に応じて適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点1に係る「式IVbの1種類以上の化合物と、式IVdの2種類以上の化合物とを含む第2の誘電的に正の成分(ただし、液晶媒体全体に占める式IVbおよびIVdの化合物の総含有量は5?50重量%である。)である成分B」とすることは、引用発明1において当業者が適宜なし得ることであるというほかはない。

(イ)相違点2について
上記相違点2につき検討すると、引用発明1における「-1.5?+1.5の誘電異方性を有する1種または2種以上の化合物を含む液晶成分B」は、本願発明における「1種類以上の化合物を含む誘電的に中性の成分である成分D」に相当することが当業者に自明である(必要ならば本願明細書【0089】参照)。
また、上記引用例1には、上記「式IV30」で表される化合物である「CCPC-mn」の3種に加えて、「CBC-33F」、「CCP-V-1」、「CC-3-V1」などの他の誘電的に中性の「式IV」で表される化合物4種を使用した液晶混合物に係る具体例が開示されている(摘示(1f)参照)。
してみると、引用発明1における『液晶成分Bが、「式IV30」を含む「式IV1」ないし「式IV31」の各式で表される化合物の1種以上を含む混合物』は、本願発明における「式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む誘電的に中性の成分である成分D」と実質的に相違するものとは認められない。
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。

(ウ)本願発明の効果について
上記I.3.でも説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、本願発明が、上記請求項1に記載された技術事項を全て具備することにより、特段の効果を奏しているものと客観的に認識することができる記載はなく、むしろ、「<例1>」と「<例2>」との対比からみて、上記(B)成分及び相違点1に係る事項を具備せずとも、本願発明の課題に対応する効果が発現するものと認められるから、本願発明が、引用発明1に係るものに比して、特段の効果を奏しているものと認めることはできない。

ウ.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1に基づいて、当業者が通常の創作能力を発揮することにより、容易に発明をすることができたものである。

(2)引用発明2に基づく検討

ア.対比
本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2における
(a)『「式II1」ないし「式II4」の化合物』、
(b)「式IX4の化合物」、
(c)『「式I1」ないし「式I3」の化合物』又は「式IIAの化合物」、及び
(d)『「式IV1」ないし「式IV3」の各式で表される化合物の混合物』
は、それぞれ、本願発明における
(a)「式Iの・・化合物」、
(b)「式IIの・・化合物」、
(c)「式IIIの・・化合物」、及び
(d)「式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物」
に相当することが明らかである。
そして、引用発明2における上記(a)ないし(c)の各成分は、いずれも「少なくとも25の誘電異方性Δεを有する1つまたは2以上の化合物を含んでいる成分(α)」に係るものであるから、本願発明における「第1の誘電的に正の成分である成分A」に相当し、また、引用発明2における「液晶組成物」は、種々の液晶化合物からなる混合媒体であることが明らかであるから、本願発明における「液晶媒体」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明2とは、
「-式Iの1種類以上の化合物と、式IIの1種類以上の化合物と、式IIIの1種類以上の化合物とを含む第1の誘電的に正の成分である成分Aと、
-式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】(式及びその説明は省略)
【化3】(式及びその説明は省略)」
の点で一致し、以下の点でのみ相違するものといえる。

相違点3:本願発明では、「【化2】(式及び説明は省略)」の「-式IVbの1種類以上の化合物と、式IVdの2種類以上の化合物とを含む第2の誘電的に正の成分(ただし、液晶媒体全体に占める式IVbおよびIVdの化合物の総含有量は5?50重量%である。)である成分B」を含むのに対して、引用発明2では、『「式XVA」又は「式XVIA」の各式で表される化合物などの「式XV」又は「式XVI」の各式で表される化合物の混合物を含有する』点
相違点4:本願発明では、「式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む誘電的に中性の成分である成分D」であるのに対して、引用発明2では、「成分(β)を有し、そこで成分(β)は、」『「式III1」ないし「式III6」などの「式III」で表される化合物及び/又は「式IV1」ないし「式IV3」の各式で表される化合物の混合物などの「式IV」で表される化合物1種又は2種以上である式IIIの少なくとも1つの化合物および/または式IVの少なくとも1つの化合物を含む』点

イ.検討

(ア)相違点3について
上記相違点3につき検討すると、引用発明2における『「式XVA」又は「式XVIA」の各式で表される化合物などの「式XV」又は「式XVI」の各式で表される化合物の混合物』は、「約8から10以上の中位の誘電異方性Δεを有するメソーゲン性物質」として使用されるもの(摘示(2f)参照)であって、本願発明における「第2の誘電的に正の成分・・である成分B」に相当するものと認められるとともに、引用発明2における『「式XV」又は「式XVI」の各式で表される化合物の混合物』には、「式XV」で表される化合物の1種以上と「式XVI」で表される化合物の2種以上との混合物である場合をも含むことが当業者に自明である。
また、上記引用例2には、上記「式XV」で表される化合物の3種と「式XVI」で表される化合物の3種とを液晶混合物全体に対して合計44重量%の重量比で、「PZU-V2-N」、「MEnN.F」の4種、「CCGU-3-F」及び「CCPC-mn」の3種の混合物と組み合わせて使用する具体例が開示されている(摘示(2g)【表12】参照)ことからみて、引用発明2において、上記『「式XV」又は「式XVI」の各式で表される化合物の混合物』につき、例えば液晶混合物全体に対して5?50重量%程度の範囲で使用することは、当業者が単なる所望に応じて適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点3に係る「式IVbの1種類以上の化合物と、式IVdの2種類以上の化合物とを含む第2の誘電的に正の成分(ただし、液晶媒体全体に占める式IVbおよびIVdの化合物の総含有量は5?50重量%である。)である成分B」とすることは、引用発明2において当業者が適宜なし得ることであるというほかはない。

(イ)相違点4について
上記相違点4につき検討すると、引用発明2における「成分(β)」は、『「式III1」ないし「式III6」などの「式III」で表される化合物及び/又は「式IV1」ないし「式IV3」の各式で表される化合物の混合物などの「式IV」で表される化合物1種又は2種以上である式IIIの少なくとも1つの化合物および/または式IVの少なくとも1つの化合物を含む』ものであるところ、上記『「式IV1」ないし「式IV3」の各式で表される化合物』が、いずれも本願発明における「式VIgから成る化合物」であることが当業者に自明であるから、引用発明2における上記「成分(β)」は、本願発明における「式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む誘電的に中性の成分である成分D」に相当することが当業者に自明である。
また、上記引用例2には、上記「式IV1」ないし「式IV3」で表される化合物である「CCPC-mn」の3種の混合物を、「PZU-V2-N」、「MEnN.F」の4種、「CCGU-3-F」、「CDU-n-F」の3種及び「CCZU-n-F」の3種の混合物と組み合わせて使用する液晶混合物に係る具体例が開示されている(摘示(2g)【例17】参照)。
してみると、引用発明2における「成分(β)」は、本願発明における「式VIgから成る化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む誘電的に中性の成分である成分D」と実質的に相違するものとは認められない。
したがって、上記相違点4は、実質的な相違点であるとはいえない。

(ウ)本願発明の効果について
上記I.3.でも説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、本願発明が、上記請求項1に記載された技術事項を全て具備することにより、特段の効果を奏しているものと客観的に認識することができる記載はなく、むしろ、「<例1>」と「<例2>」との対比からみて、上記(B)成分及び相違点3に係る事項を具備せずとも、本願発明の課題に対応する効果が発現するものと認められるから、本願発明が、引用発明2に係るものに比して、特段の効果を奏しているものと認めることはできない。

ウ.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が通常の創作能力を発揮することにより、容易に発明をすることができたものである。

(3)理由3に係るまとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1又は引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願は、請求項1に係る発明(本願発明)が、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明につき検討するまでもなく、同法第49条第2号に該当し、拒絶すべきものである。

第5 むすび
結局、本願は、その余につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号又は第4号に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-25 
結審通知日 2017-01-31 
審決日 2017-02-13 
出願番号 特願2007-313537(P2007-313537)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C09K)
P 1 8・ 121- WZ (C09K)
P 1 8・ 537- WZ (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 恵理  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 橋本 栄和
岩田 行剛
発明の名称 液晶媒体および液晶ディスプレイ  
代理人 伊藤 克博  
代理人 小野 暁子  

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