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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1329902
審判番号 不服2016-19488  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-27 
確定日 2017-07-27 
事件の表示 特願2015- 94776「電気コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月27日出願公開、特開2015-135834、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月6日に出願した特願2013-163326号の一部を平成27年5月7日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年1月13日に手続補正がされ、平成28年5月12日付けで最後の拒絶理由通知がされ、平成28年7月8日に手続補正がされ、平成28年10月11日付けで平成28年7月8日の手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ(発送日:平成28年10月17日)、これに対し、平成28年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年10月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1-3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1 米国特許出願公開第2012/0295453号明細書
2 実願昭50-064266号(実開昭51-144761号)のマイクロフィルム
3 実願昭55-017615号(実開昭56-119284号)のマイクロフィルム


第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正を整理すると、以下の1-4のとおりである。

1 請求項1に「上記回路部材は、複数の伝送路の配置範囲に対応する他方の面での領域を覆うグランドプレートを有し、該グランドプレートは、上記二つの接続部が配列されている範囲に対応する上記他方の面の領域範囲に、相手接続部材のグランド接触端子と接触可能なグランド接続領域が設けられ、上記一方の面に位置する二つの接続部は、該二つの接続部同士間の幅方向中央位置における中央線が上記他方の面に位置する上記グランド接続領域内に位置しているとともに、一つのペア伝送路に導通する上記二つの接続部同士の間隔が、該一つのペア伝送路に導通する接続部と該一つのペア伝送路に隣接する他のペア伝送路に導通する接続部との間隔よりも小さくなっている」との事項を追加する。

2 補正前の請求項1の「同一面上に」を「一方の面にて同一面上に」とし、「縁部に沿って複数配列されており」を「縁部に沿って該回路部材の幅方向に複数配列されており」とし、「幅方向中央位置を通る中央線同士」を「幅方向中央位置における中央線同士」とする。

3 補正前の請求項4の「回路部材は一方の面にペア伝送路をなす複数の伝送路が形成されていると共に他方の面に上記複数の伝送路の配置範囲を覆うグランドプレートがめっき形成され、該グランドプレートは、伝送路の接続部が配列されている範囲に対応する他面の領域範囲に、相手接続部材のグランド接触端子と接触可能なグランド接続部が設けられ、該グランド接続部は上記一方の面における」を「回路部材は、グランドプレートがめっき層であり、グランド接続領域は、回路部材の一方の面における」とする。

4 明細書の段落【0008】、【0009】、【0013】の記載を、請求項1及び請求項4に沿うように補正する。

上記1の補正は出願当初の特許請求の範囲の請求項4、明細書の段落【0040】及び【0041】並びに図面の【図4】ないし【図6】及び【図8】から読み取れる事項であり、上記2の補正は出願当初の図面の【図4】及び明細書の段落【0028】、【0040】及び【0041】並びに図面の【図4】に記載された事項であり、上記3の補正は上記1の補正に伴う文言の削除及び表現の変更であり、上記4の補正は上記1ないし3の補正に表記を整合させる補正であり、いずれの補正も、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、上記1及び2の補正は、上記3及び4の補正とあわせて、補正前の請求項1ないし4に記載された発明と補正後の請求項1ないし4に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反しているものとはいえない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものであり、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。

第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成28年12月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電気絶縁材製の板状の回路部材の一方の面にて同一面上に複数設けられ各伝送路に対応して導通している導電材の接続部が相手接続部材の接触端子と接触可能なように回路部材の縁部に沿って該回路部材の幅方向に複数配列されており、伝送路の幅寸法よりも接続部存在位置距離範囲の方が大きく設定されている電気コネクタにおいて、
伝送路は隣接する二つの伝送路でペア伝送路を形成し、該二つの伝送路のそれぞれに導通する二つの接続部は、該二つの接続部のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔が上記二つの伝送路のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔よりも大きく、
上記接続部は、幅方向で少なくとも該接続部の両外側縁をなす位置に導電材の導電条部を有して形成され、両外側縁位置の導電条部同士間に導電材不在の絶縁域が上記導電条部と同じ表面レベルもしくは没した表面レベルで配されており、
上記回路部材は、複数の伝送路の配置範囲に対応する他方の面での領域を覆うグランドプレートを有し、該グランドプレートは、上記二つの接続部が配列されている範囲に対応する上記他方の面の領域範囲に、相手接続部材のグランド接触端子と接触可能なグランド接続領域が設けられ、
上記一方の面に位置する二つの接続部は、該二つの接続部同士間の幅方向中央位置における中央線が上記他方の面に位置する上記グランド接続領域内に位置しているとともに、一つのペア伝送路に導通する上記二つの接続部同士の間隔が、該一つのペア伝送路に導通する接続部と該一つのペア伝送路に隣接する他のペア伝送路に導通する接続部との間隔よりも小さくなっていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
回路部材に形成された接続部の導電条部は、両外側縁位置同士間の中間位置にも設けられていることとする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
回路部材に形成された接続部は、導電条部と、導電条部同士を連結する連結条部とにより枠状に形成されていることとする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
回路部材は、グランドプレートがめっき層であり、グランド接続領域は、回路部材の一方の面における導電条部同士間の絶縁域に対応する部分が導電材不在の絶縁域となっていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の電気コネクタ。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面(特にFIG.5、6、6A、10及び11B参照。)とともに次の事項が記載されている。

(1)[0002]「The invention relates to reliable, separable and dense electrical card-to-card connection technology that is used to make a plurality of electrical connections across the area of large circuit boards. More specifically, the invention relates to a tall, flexible mezzanine connector for parallel-mounted or normal positioned cards.」
(当審仮訳)
「発明は、大きい回路基板の特定の区域を横切って複数の電気的接続を作るために使われる、信頼性が高く、分離でき、そして密度が高い、電気的なカードからカードへの接続技術に関連する。より具体的に、発明は、平行に取り付けられたか、あるいは標準的に置かれたカードのために、かさ高の柔軟な中間コネクターに関連する。」

(2)[0069]「Receptacles 7 and 8 are adapted to receive wafer circuit card pads 21 A, 21 B, 21 C, 21 D etc. as illustrated by slots 22 A, 22 B, 22 C, 22 D extending along the horizontal width of receptacle 7 (slots of receptacle 8 not shown) contacting the wafer circuit cards. The exposed surface of receptacle 8 has a plurality of rows and columns of receptacle contact fingers 23 (depicted in FIG. 8 ) that are placed in contact with matching wafer circuit pads on the wafer circuit card when the two are joined in place. Receptacle 8 has the identical slot arrangements (not shown) on its non-exposed bottom as depicted in receptacle 7 . Receptacles 7 and 8 are attached to the parallel circuit boards depicted by any convenient means, such as soldering, etc. As noted above, circuit card holders 11 and 12 secure wafer assembly 9 comprising the plurality of wafer circuit cards in place. Alignment pins 46 and 47 serve to position and secure the improved tall mezzanine connector unit of the present invention in its proper location on a circuit card.」
(当審仮訳)
「ウエハー回路カードと接触するレセプタクル7(レセプタクル8のスロットは表示されていない)の水平方向の幅に沿って伸長しているスロット22A、22B、22C、22Dによって図解されているように、レセプタクル7及び8がウエハー回路カードパッド21A、21B、21C、21D等を受け入れるために改変されている。レセプタクル8の露出した表面は、2つが所定の位置で接続されるときに、ウエハー回路カード上のウエハー回路パッドと整合して接続するように位置する、レセプタクル コンタクト フィンガー23(FIG.8で描写された)の複数の行及び列を持っている。レセプタクル7で描写されるように、レセプタクル8がその露出していない底に(見せられていない)同様のスロットの配列を持っている。レセプタクル7及び8が、はんだ付け等の、なにがしかの都合の良い手段によって、描写された平行な回路基板の間に取り付けられる。上記のとおり、回路カードホルダー11及び12は、複数のウエハー回路カードから構成されるウエハーアセンブリ9を所定の位置にしっかり固定する。整列ピン46及び47は、本発明の改善された、かさ高の中間コネクターユニットを、回路カード上の適切な場所に設置し、しっかり固定するのに役立つ。」

(3)[0070]「FIG. 6 depicts an exploded version of the wafer assembly 15 of the embodiment of the present invention depicted in FIG. 5 . Wafer assembly 15 comprises wafer circuit cards 20 A, 20 B, 20 C and 20 D and circuit card holders 11 and 12 . Wafer circuit cards 20 A, 20 B, 20 C and 20 D have a plurality of elements which are duplicated along the front and rear of each said wafer circuit card.」
(当審仮訳)
「FIG.6は、FIG.5に描写している本発明の実施形態のウエハーアセンブリ15の分解図を描写している。ウエハーアセンブリ15は、ウエハー回路カード20A、20B、20C及び20Dと回路カードホルダー11及び12から構成される。ウエハー回路カード20A、20B、20C及び20Dは、前記ウエハー回路カードの、前方及び後方に沿って繰り返される、複数の要素を有している。」

(4)[0071]「FIG. 6A is a magnified view of the structure within area E in FIG. 6 . FIG. 6A shows parallel circuit lines 30 and 31 flaring out to form wafer circuit contact pads 32 and 33 respectively. FIG. 6A also depicts via 34 connected to ground pad 35 . The set of elements embodied in elements 30 to 35 are repeated along the width of the tops and the bottoms of the wafer circuit cards comprising wafer assembly 9 .」
(当審仮訳)
「FIG.6Aは、FIG.6のエリアEの中の構造の拡大図である。FIG.6Aは、平行回路線30及び31が、それぞれウエハー回路接触パッド32及び33を形成するために広がっている状態を表示している。FIG.6Aは、ビア34に接続された接地パッド35も描写している。要素30ないし35によって具体化された要素のセットは、ウエハーアセンブリ9を構成するウエハー回路カードの上端と下端の幅に沿って繰り返される。」


(5)[0085]「FIG. 11B shows a circuit card 20 A within receptacle 8 fitted into the vertical opening 28 A depicted in FIG. 10 . Sides 42 and 44 of receptacle 8 enclose plastic support frame overmold 24 . Alignment pin 46 and metal contacts 23 A and 23 B extend above the exposed surface of receptacle 8 . Wafer circuit card contact fingers 21 A at the terminal end of circuit card 20 A are in snug contact with mid-element sections 27 A and 27 B in vertical opening 28 A depicted in FIG. 10 and receptacle contact fingers 29 A and 29 B. As a result of this continuous connection, current flows from a first circuit board through the tall mezzanine connector to a second circuit board, said circuit boards being positioned orthogonal to the tall mezzanine connector.」
(当審仮訳)
「FIG.11Bは、FIG.10に描写されたレセプタクル8の垂直開口28A内にはめ込まれた回路カード20Aを表示している。レセプタクル8の側面42及び44は、プラスチック サポート フレーム オーバーモールド24を囲む。整列ピン46と金属接点23A及び23Bは、レセプタクル8の露出した表面の上に延びている。回路カード20Aの末端にあるウエハー回路カード接触指21Aは、レセプタクル接触指29A及び29Bと、FIG.10に描写された垂直開口28内の中間要素区画27A及び27B内にピッタリと接触する。この継続した接続の結果として、電流がかさ高の中間コネクターを通して、最初の回路基板から、2番目の回路基板、かさ高の中間コネクターと相互独立の状態で置かれている前述の回路基板まで流れる。」

(6)上記記載事項(4)に照らせば、図面「FIG.6A」からは、ウエハー回路カード20Aの一方の面にて同一面上に幅方向に複数配列されているウエハー回路接触パッド32、33の幅寸法が、平行回路線30、31の幅寸法より大きく設定されていることと、ウエハー回路接触パッド32、33のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔が、平行回路線30、31のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔よりも大きいことが見て取れる。

上記記載事項(1)-(5)、認定事項(6)及び図示内容から、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ウエハー回路カード20Aの一方の面にて同一面上に複数設けられ各回路線30、31に対応して導通しているウエハー回路接触パッド32、33がレセプタクル7、8の金属接点23A、23Bと接触可能なようにウエハー回路カード20Aの末端に沿って該ウエハー回路カード20Aの幅方向に複数配列されており、回路線30、31の幅寸法よりもウエハー回路接触パッド32、33の幅寸法の方が大きく設定されているウエハーアセンブリ9において、
回路線30、31は隣接する二つの平行回路線30、31を形成し、該二つの平行回路線30、31のそれぞれに導通する二つのウエハー回路接触パッド32及び33は、該二つのウエハー回路接触パッド32及び33のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔が上記二つの平行回路線30、31のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔よりも大きいウエハーアセンブリ9。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面(特に第3図参照)とともに、以下の事項が記載されている

(1)「本考案の目的はプリント基板の接栓部及びコネクタの接点部に用いられる貴金属の使用量を少しでも減らし、従来品と同等の電気特性を有するプリント基板とコネクタの低価格化を提供するにある。」(第2ページ第10-14行)

(2)「第3図は本考案によるプリント基板の接栓部の構造を示す図で、図に示すごとく接栓部の幅を狭めてなおかつ電気的接続に必要とされる幅の接栓部だけ残して真中の部分も取り除き複数本の細い線形状の形にしたものである。」(第3ページ第2-7行)

(3)第4図からは、接栓部の真中の部分の貴金属を取り除いた部分が、細い線形状の形の接栓部から没した表面レベルに配されている構造が見て取れる。

上記記載事項(1)及び(2)並びに図示内容(3)を、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、上記引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「接栓部は、電気的接続に必要とされる幅の接栓部をなす位置に貴金属の細い線形状の形の接栓部を有して形成され、真中の部分に貴金属を取り除いた部分が上記細い線形状の形の接栓部から没した表面レベルで配されている。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の第6図からは、プリント板13上に形成されたコンタクト14を枠状とした構成が見て取れる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「ウエハー回路カード20A」は本願発明1の「電気絶縁材製の板状の回路部材」に相当し、以下同様に、「回路線30、31」は「伝送路」に、「ウエハー回路接触パッド32、33」は「導電材の接続部」に、「レセプタクル7、8」は「相手接続部材」に、「金属接点23A、23B」は「接触端子」に、「末端」は「縁部」に、「ウエハー回路接触パッド32、33の幅寸法」は「接続部存在位置距離範囲」に、「ウエハーアセンブリ9」は「電気コネクタ」に、「平行回路線」は「ペア伝送路」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点並びに相違点1及び相違点2があるといえる。

(一致点)
「電気絶縁材製の板状の回路部材の一方の面にて同一面上に複数設けられ各伝送路に対応して導通している導電材の接続部が相手接続部材の接触端子と接触可能なように回路部材の縁部に沿って該回路部材の幅方向に複数配列されており、伝送路の幅寸法よりも接続部存在位置距離範囲の方が大きく設定されている電気コネクタにおいて、
伝送路は隣接する二つの伝送路でペア伝送路を形成し、該二つの伝送路のそれぞれに導通する二つの接続部は、該二つの接続部のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔が上記二つの伝送路のそれぞれの幅方向中央位置における中央線同士の間隔よりも大きくなっている電気コネクタ。」

(相違点1)本願発明1は「上記接続部は、幅方向で少なくとも該接続部の両外側縁をなす位置に導電材の導電条部を有して形成され、両外側縁位置の導電条部同士間に導電材不在の絶縁域が上記導電条部と同じ表面レベルもしくは没した表面レベルで配されており、」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1は「上記回路部材は、複数の伝送路の配置範囲に対応する他方の面での領域を覆うグランドプレートを有し、該グランドプレートは、上記二つの接続部が配列されている範囲に対応する上記他方の面の領域範囲に、相手接続部材のグランド接触端子と接触可能なグランド接続領域が設けられ、
上記一方の面に位置する二つの接続部は、該二つの接続部同士間の幅方向中央位置における中央線が上記他方の面に位置する上記グランド接続領域内に位置しているとともに、一つのペア伝送路に導通する上記二つの接続部同士の間隔が、該一つのペア伝送路に導通する接続部と該一つのペア伝送路に隣接する他のペア伝送路に導通する接続部との間隔よりも小さくなっている」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点1についての判断
上記相違点1について検討する。
本願発明1と引用文献2に記載された技術的事項とを対比すると、引用文献2に記載された技術的事項の「接栓部」は本願発明1の「接続部」に相当し、以下同様に、「電気的接続に必要とされる幅の接栓部をなす位置」は「幅方向で少なくとも該接続部の両外側縁をなす位置」に、「貴金属」は「導電材」に、「細い線形状の形の接栓部」は「導電条部」に、「真中の部分」は「両外側縁位置の導電条部同士間」に、「貴金属を取り除いた部分」は「導電材不在の絶縁域」に、それぞれ相当する。
したがって、本願発明1と引用文献2に記載された技術的事項とは、「接続部は、幅方向で少なくとも該接続部の両外側縁をなす位置に導電材の導電条部を有して形成され、両外側縁位置の導電条部同士間に導電材不在の絶縁域が上記導電条部と同じ表面レベルもしくは没した表面レベルで配されて」いる点で一致する。
そして、「貴金属の使用量を少しでも減らし、」「低価格化」する(上記2(1)参照。)という課題は、一般的な課題であって、引用発明に内在する課題であると認められるから、この課題を解決するために、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用し、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点2についての判断
上記相違点2について検討する。
相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献2,3のいずれにも記載されていない構成であり、また、当業者が容易に設計し得る構成ともいえない。
したがって、相違点2に係る本願発明1の構成は、当業者が容易になし得たものとは認められない。

(4)まとめ
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-4について
本願発明2-4も、本願発明1を直接又は間接的に引用する発明であって相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び引用文献3に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について(特許法第29条第2項について)
審判請求時の補正により、本願発明1-4は「上記回路部材は、複数の伝送路の配置範囲に対応する他方の面での領域を覆うグランドプレートを有し、該グランドプレートは、上記二つの接続部が配列されている範囲に対応する上記他方の面の領域範囲に、相手接続部材のグランド接触端子と接触可能なグランド接続領域が設けられ、
上記一方の面に位置する二つの接続部は、該二つの接続部同士間の幅方向中央位置における中央線が上記他方の面に位置する上記グランド接続領域内に位置しているとともに、一つのペア伝送路に導通する上記二つの接続部同士の間隔が、該一つのペア伝送路に導通する接続部と該一つのペア伝送路に隣接する他のペア伝送路に導通する接続部との間隔よりも小さくなっている」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-14 
出願番号 特願2015-94776(P2015-94776)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 貴志片岡 弘之  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 滝谷 亮一
内田 博之
発明の名称 電気コネクタ  
代理人 藤岡 徹  

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