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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1329930
審判番号 不服2016-15737  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-21 
確定日 2017-07-26 
事件の表示 特願2014- 88652「情報処理装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日出願公開、特開2014-179111、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年3月28日に出願した特願2008-85691号の一部を平成26年4月23日に新たな特許出願としたものであって ,平成27年7月28日付けで拒絶理由が通知され,平成27年10月6日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年1月29日付けで拒絶理由が通知され,平成28年4月14日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年8月5日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成28年10月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-11
・引用文献等 1,2

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2007/107368号
2.特開2005-85174号公報

第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は,平成28年4月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
タッチ操作面でのタッチ指示に応じて情報処理を制御する情報処理装置であって,
前記タッチ操作面上における任意の指示位置を,非接触操作の検出で指示操作したか,またその指示位置を変化なく指示操作したか,を判別する判別手段と,
前記判別手段が前記指示位置を非接触操作で且つ指示位置を変化なく指示操作したことが判別された際は,その指示位置を予測指示位置として特定し,その指示位置に対応した所定処理の実行が可能であれば,当該所定処理を実行するよう制御する予測制御手段と,
前記非接触操作の検出後にあって前記タッチ操作面の任意位置の指示を接触操作で検出した際は,その指示位置を前記予測指示位置とする前記所定処理による処理内容が存在する場合には,当該処理内容を直ちに出力させ,一方,前記処理内容が存在しない場合には,前記指示位置の選択に基づく所定処理をその時点で実行させて処理内容を出力させるよう制御する出力制御手段と,
を具備したことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記予測制御手段は,前記指示位置に対応した前記タッチ操作面の位置に選択可能な選択肢が存在し,その選択肢に対する選択で,当該選択肢に対応する所定処理の実行が可能であれば,当該所定処理を予め行うよう制御する,
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測制御手段は,前記タッチ操作面における前記予測指示位置の近傍位置に,選択可能な複数の選択肢が存在する場合には,その複数の選択肢に対する個々の選択で,その個々の選択肢に対応する複数の所定処理を予め行うよう制御する,
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記予測制御手段は,前記タッチ操作面における前記予測指示位置の近傍位置に,選択可能な複数の選択肢が存在する場合には,その複数の選択肢の内で前記予測指示位置に最も近い位置に存在する選択肢を優先して選択して,その選択肢に対応する所定処理を予め行うよう制御する,
ことを特徴とする請求項1?3の何れかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
タッチ操作面でのタッチ指示に応じて情報処理を制御する情報処理装置であって,
前記タッチ操作面の所望する位置の近傍位置が非接触操作で指示されたことを検出した際は,前記検出位置を予測指示位置として特定し,その特定された予測指示位置の指示選択に基づくデータを取得し,その取得したデータを前記予測指示位置に対応付けて記憶手段に記憶するよう制御する記憶制御手段と,
前記非接触操作の検出後にあって前記タッチ操作面の任意の位置が接触操作で指示されたことを検出した際は,その検出された指示位置を前記予測指示位置として前記記憶手段に対応付けて記憶されたデータが存在する場合には,当該データを前記記憶手段から読み出して出力させるよう制御し,一方,前記記憶手段に対応付けて記憶されたデータが存在しない場合には,前記指示位置の選択に基づくデータをその時点で取得して出力させるよう制御する出力制御手段と,
を具備したことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
前記記憶制御手段は,前記予測指示位置に対応した前記タッチ操作面の位置に選択可能な選択肢が存在する場合に,その選択肢の指示選択に基づくデータを予め取得する,
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記記憶制御手段は,前記選択肢が存在し,その選択肢に対する指示選択で当該選択肢に対応するデータを取得可能であれば,そのデータを予め取得する,
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記記憶制御手段は,前記タッチ操作面における前記予測指示位置の近傍位置に,選択可能な複数の選択肢が存在する場合には,その複数の選択肢に対する個々の指示選択で,その個々の選択肢に対応する複数のデータを予め取得する,
ことを特徴とする請求項5?7の何れかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記記憶制御手段は,前記タッチ操作面における前記予測指示位置の近傍位置に,選択可能な複数の選択肢が存在する場合には,その複数の選択肢の内で前記予測指示位置に最も近い位置に存在する選択肢を優先して指示選択して,その選択肢に対応するデータを予め取得する,
ことを特徴とする請求項5?8の何れかに記載の情報処理装置。
【請求項10】
タッチ操作面でのタッチ指示に応じて情報処理を制御する情報処理装置のコンピュータを制御するためのプログラムであって,
前記コンピュータを,
前記タッチ操作面上における任意の指示位置を,非接触操作の検出で指示操作したか,またその指示位置を変化なく指示操作したか,を判別する判別手段,
前記判別手段が前記指示位置を非接触操作で且つ指示位置を変化なく指示操作したことが判別された際は,その指示位置を予測指示位置として特定し,その指示位置に対応した所定処理の実行が可能であれば,当該所定処理を実行するよう制御する予測制御手段,
前記非接触操作の検出後にあって前記タッチ操作面の任意位置の指示を接触操作で検出した際は,その指示位置を前記予測指示位置とする前記所定処理による処理内容が存在する場合には,当該処理内容を直ちに出力させ,一方,前記処理内容が存在しない場合には,前記指示位置の選択に基づく所定処理をその時点で実行させて処理内容を出力させるよう制御する出力制御手段,
として機能させるようにしたプログラム。
【請求項11】
タッチ操作面でのタッチ指示に応じて情報処理を制御する情報処理装置のコンピュータを制御するためのプログラムであって,
前記コンピュータを,
前記タッチ操作面の所望する位置の近傍位置が非接触操作で指示されたことを検出した際は,前記検出位置を予測指示位置として特定し,その特定された予測指示位置の指示選択に基づくデータを取得し,その取得したデータを前記予測指示位置に対応付けて記憶手段に記憶するよう制御する記憶制御手段,
前記非接触操作の検出後にあって前記タッチ操作面の任意の位置が接触操作で指示されたことを検出した際は,その検出された指示位置を前記予測指示位置として前記記憶手段に対応付けて記憶されたデータが存在する場合には,当該データを前記記憶手段から読み出して出力させるよう制御し,一方,前記記憶手段に対応付けて記憶されたデータが存在しない場合には,前記指示位置の選択に基づくデータをその時点で取得して出力させるよう制御する出力制御手段,
として機能させるようにしたプログラム。」

第4 引用発明,引用文献等
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は重要箇所に対して当審が付した。また,ドイツ語表記については,a,o,uのウムラウトをそれぞれa#,o#,u#で,エスツェットをs#で,それぞれ代替表記した。)

ア 「Die Bedienung von automotiven Anwendungen in einem Kraftfahrzeugcockpit erfolgt ha#ufig u#ber so genannte interaktive Bedienvorrichtungen. Eine interaktive Bedienvorrichtung umfasst eine Anzeigevorrichtung, auf der ein oder mehrere Bedienelemente graphisch dargestellt werden. Die einzelnen automotiven Anwendungen sind den Bedienelementen zugeordnet. Eine Aktion, die im Folgenden als Bedienaktion bezeichnet wird, wird aktiviert oder ausgelo#st, indem ein Nutzer einen Ko#rperteil, beispielsweise einen Finger einer Hand, auf die graphische Darstellung des Bedienelements zubewegt. Von der Ausgestaltung einer Sensoreinheit der Bedienvorrichtung ist es abha#ngig, ob der Ko#rperteil eine vor der Anzeigevorrichtung angeordnete oder in diese integrierte Sensoreinheit (z. B. eine beru#hrungsempfindliche Folie) beru#hren muss oder ob es ausreichend ist, sich nur auf einen gewissen Abstand an das jeweilige Bedienelement anzuna#hern, um die dem Bedienelement zugeordnete Bedienaktion zu aktivieren.」(1頁5-15行)
(当審仮訳:
自動車コックピットにおける自動車アプリケーションの操作は,いわゆる対話型操作装置を介して行われることが多い。対話型操作装置には表示装置が含まれ,この表示装置に1つまたは複数の操作部がグラフィック表示される。各自動車アプリケーションにはそれぞれ操作部が割り当てられている。以下において操作動作と呼ぶ動作を起動またはトリガするために,ユーザは身体部位,例えば手の指を操作部のグラフィック表示上に移動させる。身体部位を,表示装置の前に配置された,または表示装置の中に組み込まれたセンサユニット(例えば接触感応性のフィルム)に接触させる必要があるのか,あるいは,各操作部に一定の距離まで近づけるだけで操作部に割り当てられた操作動作を起動するのに十分であるのかは,操作装置のセンサユニットの構成に応じて決まる。)

イ「Der Erfindung liegt daher die technische Aufgabe zugrunde, eine Bedienvorrichtung und ein Verfahren zum Betreiben einer interaktiven Bedienvorrichtung zu schaffen, mit denen sowohl eine an das menschliche Auge angepasste optimale Informationsvermittlung und zugleich eine komfortable Aktivierung von Bedienelementen mo#glich ist.」(3頁16-19行)
(当審仮訳:
従って,本発明の技術的な課題は,人間の目に適合した最適な情報媒体手段と,同時にまた操作部の快適な起動とを実現できる,対話型操作装置および対話型操作装置を動作させるための方法を提供することである。)

ウ 「In Fig. 2 ist die Umschaltung von einem visuellen auf ein haptisches Layout schematisch dargestellt. Im oberen Bereich der Fig. 2 sind zwei mo#gliche Ausgestaltungen einer Informationsdarstellung 31 , 32 in einem so genannten visuellen Layout gezeigt. Bei der linken Darstellung 31 sind keine Bedienelemente dargestellt. In der rechten Darstellung 32 sind kleine Bedienelemente 33 vorgesehen. Der gro#s#te Bereich 34 der Anzeigevorrichtung 35 ist zur Darstellung der Informationen vorgesehen. Na#hert sich ein Ko#rperteil 36, hier eine Hand, der Anzeigevorrichtung 35, wie es in der Mitte der Fig. 2 angedeutet ist, werden die dargestellten Informationen so vera#ndert, dass die Bedienelemente 33' vergro#s#ert dargestellt sind, eine zusa#tzliche textliche Information (A, B, C, D) umfassen und zumindest gegenu#ber der Darstellung 31 oben links in ihrem Transparenzniveau vera#ndert sind. Das haptische Layout ist so optimiert, dass die Bedienelemente 33' optimal von einem Finger beru#hrt werden ko#nnen, um eine mit dem Bedienelement 33' verknu#pfte Bedienaktion aktivieren und auslo#sen zu ko#nnen.」(13頁16-27行)
(当審仮訳:
図2には,視覚レイアウトから触覚レイアウトへの切り替えが模式的に示されている。図2の上部領域には,いわゆる視覚レイアウトにおける情報表示の2つの可能な構成31,32が示されている。左側の表示31の場合,操作部は表示されていない。右側の表示32では,小さな操作部33が備えられている。表示装置35の最大領域34は,情報を表示するために備えられている。図2の中央部に示されているように,身体部位36,ここでは手が表示装置35に接近した場合,表示される情報は変更されるが,その際,操作部33’が拡大表示され,テキスト情報(A,B,C,D)が追加されており,さらに,少なくとも上部左側の表示31に対して透過レベルが変更されている。触覚レイアウトは,最適化されて,操作部33’を指で最適な状態で触れることが可能となり,これにより,操作部33’と結び付いた操作動作を起動し,トリガすることができる。)

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 対話型操作装置であって,
対話型操作装置には表示装置が含まれ,この表示装置に1つまたは複数の操作部がグラフィック表示され,
表示装置35の最大領域34は,情報を表示するために備えられており,視覚レイアウトにおける情報表示の2つの可能な構成31,32のうち右側の表示32では,小さな操作部33が備えられており,身体部位36,ここでは手が表示装置35に接近した場合,表示される情報は変更されるが,その際,操作部33’が拡大表示され,テキスト情報(A,B,C,D)が追加されており,触覚レイアウトは,最適化されて,操作部33’を指で最適な状態で触れることが可能となり,これにより,操作部33’と結び付いた操作動作を起動し,トリガすることができる,
対話型操作装置。」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の【要約】欄等の記載からみて,
「利用者の閲覧操作,特にマウスカーソルの移動操作を元に先読み対象とするコンテンツを動的に決定して先読みし,クリックした際に先読みしたコンテンツを表示すること」
という技術的事項が開示されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

a 引用発明の「対話型操作装置」は,後述する相違点を除き,本願発明1の「タッチ操作面でのタッチ指示に応じて情報処理を制御する情報処理装置」に相当する。
b 引用発明の「身体部位36,ここでは手が表示装置35に接近した場合,表示される情報は変更される」ことから,引用発明が本願発明1の「前記タッチ操作面上における任意の指示位置を,非接触操作の検出で判別する判別手段」に相当する構成を備えることは明らかである。
c 引用発明の(手が表示装置35に接近し,操作部33’が拡大表示された後に)「操作部33’と結び付いた操作動作を起動し,トリガすること」は,本願発明1の「指示位置の選択に基づく所定処理をその時点で実行させ」ることに相当する。
そして,引用発明の「対話型操作装置」により「自動車コックピットにおける自動車アプリケーションの操作」を行うことが想定されているが(摘記事項イ),このような「自動車アプリケーションの操作」により何らかの処理結果が表示出力されることは技術常識であって,引用発明が「処理内容を出力させるよう制御する出力制御手段」を備えていることは明らかである。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「タッチ操作面でのタッチ指示に応じて情報処理を制御する情報処理装置であって,
前記タッチ操作面上における任意の指示位置を,非接触操作の検出で判別する判別手段と,
前記判別手段が前記指示位置を予測指示位置として特定する予測制御手段と,
前記非接触操作の検出後にあって前記タッチ操作面の任意位置の指示を接触操作で検出した際は,前記指示位置の選択に基づく所定処理をその時点で実行させて処理内容を出力させるよう制御する出力制御手段と,
を具備したことを特徴とする情報処理装置。」

(相違点1)
「判別手段」が,
本願発明1では「前記タッチ操作面上における任意の指示位置を,非接触操作の検出で指示操作したか,またその指示位置を変化なく指示操作したか」を判別するのに対し,
引用発明では「身体部位36,ここでは手が表示装置35に接近した場合」を判別する点。
(相違点2)
「予測制御手段」が,
本願発明1では「前記判別手段が前記指示位置を非接触操作で且つ指示位置を変化なく指示操作したことが判別された際は,その指示位置を予測指示位置として特定し,その指示位置に対応した所定処理の実行が可能であれば,当該所定処理を実行するよう」制御するのに対し,
引用発明では「表示される情報は変更されるが,その際,操作部33’が拡大表示され,テキスト情報(A,B,C,D)が追加されており,触覚レイアウトは,最適化されて,操作部33’を指で最適な状態で触れることが可能とな」るよう制御する点。
(相違点3)
「出力制御手段」が「前記非接触操作の検出後にあって前記タッチ操作面の任意位置の指示を接触操作で検出した際」に行う制御が,
本願発明1では,「その指示位置を前記予測指示位置とする前記所定処理による処理内容が存在する場合には,当該処理内容を直ちに出力させ,一方,前記処理内容が存在しない場合には,前記指示位置の選択に基づく所定処理をその時点で実行させて処理内容を出力させる」ことであるのに対し,
引用発明では,「操作部33’と結び付いた操作動作を起動し,トリガする」ことである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,まず(相違点3)について検討する。
本願発明1では,「出力制御手段」がその処理内容を出力するところの「前記所定処理」は,「予測制御手段」が実行する「所定処理」である。
一方,引用発明において,「操作部33’と結び付いた操作動作を起動し,トリガする」ことにより出力されることとなる「所定処理」は,「自動車アプリケーション」の実行に伴う処理であって,「手が表示装置35に接近した場合」の処理であるところの「操作部33’が拡大表示され,テキスト情報(A,B,C,D)が追加されており,触覚レイアウトは,最適化されて,操作部33’を指で最適な状態で触れることが可能とな」る処理のような単なる操作部の表示態様の変更とは異なることは明らかである。
そして,引用発明が解決しようとする課題が,「人間の目に適合した最適な情報媒体手段と,同時にまた操作部の快適な起動とを実現できる,対話型操作装置および対話型操作装置を動作させるための方法を提供すること」(摘記事項イ)であって,その解決手段が「手が表示装置35に接近した場合」に「操作部33’が拡大表示され,テキスト情報(A,B,C,D)が追加されており,触覚レイアウトは,最適化されて,操作部33’を指で最適な状態で触れることが可能とな」るよう制御することであることに鑑みれば,たとえ,「利用者の閲覧操作,特にマウスカーソルの移動操作を元に先読み対象とするコンテンツを動的に決定して先読みし,クリックした際に先読みしたコンテンツを表示すること」という技術的事項が引用文献2に開示されているとしても,引用発明の「手が表示装置35に接近した場合」の処理であるところの「操作部33’が拡大表示され,テキスト情報(A,B,C,D)が追加されており,触覚レイアウトは,最適化されて,操作部33’を指で最適な状態で触れることが可能とな」る処理を,「操作部33’と結び付いた操作動作を起動し,トリガする」ことにより出力されることとなる「自動車アプリケーション」の実行に伴う処理(所定処理)に変更する動機付けはない。

したがって,本願発明1は,(相違点1),(相違点2)を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について
本願発明2-4も,本願発明1の「出力制御手段」と同一の構成を備えるものである。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明5について
引用発明は,本願発明5の「前記タッチ操作面の所望する位置の近傍位置が非接触操作で指示されたことを検出した際は,前記検出位置を予測指示位置として特定し,その特定された予測指示位置の指示選択に基づくデータを取得し,その取得したデータを前記予測指示位置に対応付けて記憶手段に記憶するよう制御する記憶制御手段」なる構成を有さず,また,この構成を引用発明に付加することは引用文献2に記載された技術的事項を参酌しても容易であるということはできない。

4.本願発明6-9について
本願発明6-9も,本願発明5の「記憶制御手段」と同一の構成を備えるものである。
したがって,本願発明5と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明10について
本願発明10は本願発明1に対応するプログラムの発明であり,本願発明1の「出力制御手段」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6.本願発明11について
本願発明11は本願発明5に対応するプログラムの発明であり,本願発明5の「記憶制御手段」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明5と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-19 
出願番号 特願2014-88652(P2014-88652)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 山澤 宏
新川 圭二
発明の名称 情報処理装置及びプログラム  

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