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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01T
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01T
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G01T
管理番号 1329933
審判番号 不服2016-7279  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-18 
確定日 2017-07-31 
事件の表示 特願2012-515459「放射線検出器用低干渉センサヘッド及び低干渉センサヘッドを有する放射線検出器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月23日国際公開、WO2010/146044、平成24年11月29日国内公表、特表2012-530252、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
平成22年 6月15日 国際特許出願(パリ条約による優先権主張20 09年6月15日、ドイツ)
平成26年 6月27日 拒絶理由通知(同年7月2日発送)
平成26年 9月22日 意見書・手続補正書
平成27年 2月13日 拒絶理由通知(最後)(同年2月18日発送)
平成27年 8月18日 意見書・手続補正書
平成28年 1月 6日 平成27年8月18日付け手続補正の却下の決 定、拒絶査定(平成29年1月18日送達)
平成28年 5月18日 本件審判請求・手続補正書
平成28年11月 2日 上申書
平成29年 2月28日 拒絶理由通知(最後)(同年3月6日発送、以 下「当審拒絶理由通知」という。)
平成29年 5月29日 意見書・手続補正書

2 本願発明
本願の請求項1-15に係る発明(以下、その順に「本願発明1」等という。)は、平成29年5月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、請求項1は以下のとおりの発明である。

「EDXのための放射線検出器(74)用の低干渉センサヘッド(30)であって、コンポーネントとして、少なくとも、
‐前面(12)を有するプリント回路基板(10)と、
‐前記プリント回路基板(10)の前記前面(12)上に配置され、放射線(72)に感応するセンサチップ(32)と、
‐コンタクトピン(42)を有する、前記センサチップ(32)を動作させるための複数の信号及び制御接続部と、を含み、前記コンタクトピン(42)は、ボンディングワイヤ(46)を介して前記プリント回路基板(10)に接続され、
‐前記コンタクトピン(42)を保持するベースプレート(50)と、
‐前記前面(12)から遠ざかる方向に向いた前記プリント回路基板(10)の面に配置された冷却及び/又は熱除去手段(36)と、を更に含み、
前記ベースプレート(50)、及び前記コンタクトピン(42)の少なくとも1つは、少なくとも1種類の材料から成り、該材料の比透磁率(μ_(r))は、1.5未満であり、1.5未満の比透磁率を有する材料は、材料番号が1.4429,1.4406,1.4404,1.4301,1.3964,1.3960又は1.3952の焼きなましオーステナイト系ステンレス鋼から成る、低干渉センサヘッド(30)。」

なお、本願発明2-15の概要は以下のとおりである。
本願発明2-13は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明14は、本願発明1-13の何れかの低干渉センサヘッドを備えた放射線検出器の発明である。
本願発明15は、本願発明1-13の何れかの低干渉センサヘッド、または、本願発明14の放射線検出器を備えた顕微鏡の発明である。

3 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2000-501562号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
1.粒子のビームを供給する粒子源と前記ビームに共中心状態で配置されそのビームを偏向させる偏向系と前記ビームの入射を受ける基板を支持する支持体とを有する粒子ビームシステム用の検出器組立体であって、
前記偏向系の内側に前記ビームに共中心状態で配置され、前記基板から入射するx線、電子およびその他の粒子の少なくとも一つを検出できる環状検出器と、
前記環状検出器を保持するハウジングと、
前記環状検出器を前記ハウジングから隔てるとともに各々が前記環状検出器の対応の能動領域と電気的接触状態にある複数個の互いに隔てられた導電性エラストマー部材とを含む検出器組立体。」(注:下線は当審が付加した。以下同様である。)

(イ)「発明の技術分野
この発明は荷電粒子ビームシステムに関し、より詳しくいうと、その種のシステムにおける反射粒子および二次粒子の検出のための検出器に関する。」

(ウ)「従来技術の説明
…検出信号を最大にするには検出器が基板からみて大きい立体角に相対する状態にすることが重要である。すなわち、検出器も電磁レンズも偏向コイルも基板に近接していなければならない。
したがって、電磁対物レンズ/偏向系と基板との間の領域に電磁レンズ素子、偏向素子および検出素子を備えなければならない。これら素子の占める空間を最小に抑えるように電磁レンズ作用、偏向作用および検出作用を重畳させることがとくに重要である。
粒子ビームシステムにおいて環状の固体検出器は周知である。基板の結合構造についてより多くの情報を得るために互いに異なるアジマス角度からの信号を別々に記録する必要がある場合があり、そのために一つの検出器基板にいくつかの個別の検出器(能動領域)を備える環状検出器も用いられる。その種の検出器は高不純物濃度でドープしたシリコンの薄い基板に形成したプレーナダイオード構成を通常備える。各検出器セグメント(能動領域)は薄いドープした層とその層を覆うさらに薄い導電性被膜とを備える。裏側表面にバイアス電圧を印加してシリコン中に空乏層を形成する。高エネルギー粒子は空乏層領域まで貫通して多数の電子正孔対、すなわち抽出時に入力電流信号の増幅出力となる正孔対を形成する。」

(エ)「概要
この発明は電磁レンズおよび偏向磁界の中にそのレンズと基板との間の距離を最小にするように検出器を取り付けることを対象とする。それら検出器をレンズ収差および偏向収差を抑えた状態で収容しシステム性能を改善する。
この発明によると、分割した固体検出器組立体を複合電磁レンズ/偏向器組立体の磁極片の中に配置する。電磁レンズおよび偏向磁界の中に検出器を配置すると特別の問題が生ずることを発明者らは見出し、その問題に対処する。電磁レンズ用定常磁界の歪みを回避するために、検出器構成材料および取り付け部材材料を真空の透磁率に近い透磁率を有する非磁性材料で構成する。偏向磁界が広帯域でビームを位置づけるために迅速に変化する形式のものである場合は、さらに追加の解決すべき課題がある。磁界を変化させると導電性材料に渦電流を誘起し、偏向磁界と逆向きの磁界を抵抗による減衰まで生ずる。これら渦電流「セットラー」の大きさは偏向磁界内の材料の体積および電気抵抗率ならびにビームへの近接の度合いによって定まる。この発明の検出器は偏向磁界内に配置するので、導電性材料の体積は最小になり、電気抵抗率は検出器素子への適当な電気的接続と合致してできるだけ高い。
検出器の能動領域への電気的および機械的接触は軟質磁性材料から成り能動領域表面を損なわない導電性エラストマー材料のセグメントで達成する。実際の検出器はこれらセグメントおよび比較的高い抵抗率材料製の薄い反対側裏あてリングの間に挿む。前置増幅器など外部回路への電気的接続は、特別の高抵抗率ネジと渦電流の影響下の材料全部の体積を最小にし抵抗率を最大にするフレキシブル印刷配線板とによって形成する。この取付け手法によってシステム内の渦電流セットラーを最小にする。」

(オ)「 図2Aは検出器組立体内の渦電流損を最小に抑えるこの検出器組立体のいくつかの側面を断面で示す。渦電流は偏向帯域幅を減少させるので好ましくない。検出器1の下側表面にある能動領域への接触は導電性エラストマー部材10を経て形成する。各エラストマー部材10は、例えば単一の円形または長方形0リングから切り出し、同様に分割した導電性信号コンタクトリング11上の浅い溝に挿入した円弧状のセグメントである。エラストマー部材10の軟らかい表面が検出器1の能動領域への充分な電気的コンタクトをそれら能動領域への損傷を伴うことなく形成する。エラストマー部材10の抵抗率はミリアンペア程度の信号電流を目立つほどの電圧効果を伴うことなく伝導するのに十分な程度に低く、しかも渦電流の発生を抑えるのに十分な程度に高い。シリコン検出器1は、後述のとおり四つの象限(能動領域)を備える以外は慣用の構成を備える。
薄いシリコン検出器1をエラストマー部材10とその検出器1の裏面に接するバッキングリング12との間に挿む。リング12はチタン、熱分解黒鉛、エラストマーなどで構成し、検出器1の裏側表面のアルミ化表面とバイアス電気コンタクトを形成するとともに、能動領域コンタクト10からの集中した力で脆弱なシリコン検出器1がひび割れするのを防ぐ機械的支持を形成する。絶縁性基体13は検出器組立体のための取付け部材(ハウジング)を形成する。いくつかのごく小さいねじ14と付随ワッシャ15(図2Aの断面図にねじ14の頭部を示す)とを抵抗率の比較的大きい金属(チタンなど)で構成する。ねじ14およびワッシャ15(または同等の締付け部材)はこの検出器組立体を一体に保つための機械的な力をもたらすとともに、外部への電気的接続(図1に8で表示)のためのフレキシブル印刷配線板組立体16への電気的接続を形成する。
図2Bおよび2Cは図2Aの構成の上面図および底面図をそれぞれ示し、図2Aは図2Bおよび図2Cの線A-Aにおける断面図である。図2Cに示した表面全部が導体または導体被膜で構成してある。
…」

(カ)図1、図2は、以下のとおりである。


イ 引用発明
(ア)上記ア(ア)によれば、以下の事項が記載されている。
「粒子のビームを供給する粒子源と前記ビームに共中心状態で配置されそのビームを偏向させる偏向系と前記ビームの入射を受ける基板を支持する支持体とを有する粒子ビームシステム用の検出器組立体であって、
前記偏向系の内側に前記ビームに共中心状態で配置され、前記基板から入射するx線、電子およびその他の粒子の少なくとも一つを検出できる環状検出器と、
前記環状検出器を保持するハウジングと、
前記環状検出器を前記ハウジングから隔てるとともに各々が前記環状検出器の対応の能動領域と電気的接触状態にある複数個の互いに隔てられた導電性エラストマー部材とを含む検出器組立体。」

(イ)上記ア(ウ)によれば、環状検出器は、一つの検出器基板にいくつかの個別の検出器(能動領域)を備えることが記載されているから、上記(ア)の「能動領域」は、「個別の検出器」である。また、前記個別の検出器は、高不純物濃度でドープしたシリコンの薄い基板に形成したプレーナダイオード構成を備えることが記載されている。

(ウ)上記ア(エ)によれば、検出器構成材料および取り付け部材材料を真空の透磁率に近い透磁率を有する非磁性材料で構成し、電磁レンズ用定常磁界の歪みを回避することが記載されている。

(エ)上記ア(オ)によれば、薄いシリコン検出器1をエラストマー部材10とその検出器1の裏面に接するバッキングリング12との間に挿むことが記載されている。また、いくつかのごく小さいねじ14と付随ワッシャ15とを抵抗率の比較的大きい金属(チタンなど)で構成し、ねじ14およびワッシャ15(または同等の締付け部材)はこの検出器組立体を一体に保つための機械的な力をもたらすとともに、外部への電気的接続のためのフレキシブル印刷配線板組立体16への電気的接続を形成することが記載されている。ここで、上記(イ)によれば、「薄いシリコン検出器」は、高不純物濃度でドープしたシリコンの薄い基板に形成したプレーナダイオード構成を備える「個別の検出器」である。また、環状検出器を保持する「ハウジング」、検出器組立体を一体に保つ「ねじ」、「ワッシャ」は、上記(ウ)の取り付け部材材料である。

(オ)以上によれば、引用文献1には、
「粒子のビームを供給する粒子源と前記ビームに共中心状態で配置されそのビームを偏向させる偏向系と前記ビームの入射を受ける基板を支持する支持体とを有する粒子ビームシステム用の検出器組立体であって、
前記偏向系の内側に前記ビームに共中心状態で配置され、前記基板から入射するx線、電子およびその他の粒子の少なくとも一つを検出できる環状検出器と、
前記環状検出器を保持するハウジングと、
前記環状検出器を前記ハウジングから隔てるとともに各々が前記環状検出器の対応の個別の検出器と電気的接触状態にある複数個の互いに隔てられた導電性エラストマー部材とを含み、
前記環状検出器は、一つの検出器基板にいくつかの個別の検出器を備え、 前記個別の検出器は、高不純物濃度でドープしたシリコンの薄い基板に形成したプレーナダイオード構成を備え、
バッキンリング、ねじ、ワッシャーをさらに備え、前記個別の検出器は、エラストマー部材とその個別の検出器の裏面に接するバッキングリングとの間に挿まれ、ねじおよびワッシャにより検出器組立体が一体に保たれ、フレキシブル印刷配線板組立体への電気的接続を形成して外部への電気的接続がなされ、
検出器構成材料および取り付け部材材料である、ハウジング、ねじ、ワッシャーを真空の透磁率に近い透磁率を有する非磁性材料で構成し、電磁レンズ用定常磁界の歪みを回避する、
検出器組立体。」(以下「引用発明」という。)

(2)引用文献2について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平8-83588号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は表面分析技術に係り、特に、微細コンタクトホ-ル等の深孔底面の残膜分析に適したX線分析装置を提供する。」

(イ)「【0007】本発明の目的は、電子線中心軸に接近して設置したX線検出器でコンタクトホ-ル底面の残膜を高精度に定性、定量分析を行うX線分析装置において、X線検出器による照射電子線の軌道への悪影響を解消し、また照射電子線エネルギ-を高めてもX線検出器の損傷を抑制できるX線分析装置を提供することにある。」

(ウ)「【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的は、電子線中心軸に接近して設けられたX線検出手段(X線検出器およびこの検出面に入射する電子を遮断する手段)を非磁性材料で構成することにより達成される。
【0009】X線検出手段は、少なくとも電子線中心軸に面した外壁を非磁性材料で構成する。非磁性材料としては、非透磁率が1に近い材料、例えばアルミニウム、銅、クロム、又はステンレス鋼を用いる。アルミニウムや銅は非磁性材料として優れるが、熱伝導率が高いという特徴も有する。X線検出器として半導体検出器を用いる場合、この特徴を利用して、アルミニウム又は銅で形成されたX線検出器のハウジングを、コールドフィンガー又はペルチェ素子に接合するすることにより、高感度検出ができるようにX線検出器を冷却しても良い。ステンレス鋼は、種類により冷間加工時に磁性を持つものもある。従って、ステンレス鋼の種類によっては、冷間加工を避ける必要がある。AISI形式番号で、305、309、310及び314と分類される種類のステンレス鋼は、冷間加工を行っても非磁性が保たれるので、これらを用いるたほうが、所望の形状のX線検出手段を形成するのに有利である。
【0010】X線検出器に入射する電子を遮断する手段としては、X線検出器の検出面(例えば、半導体検出器)全面を覆い、この検出面に対して装脱着可能なシャッタ又はフィルタ(電子遮断フィルタ)を用いる。これらは非磁性材料で形成し、遮断する電子のエネルギーに応じて厚みを設定する。遮断する電子のエネルギーは、例えば照射電子線のエネルギーに基づいて求めてもよい。電子除去フィルタの材料としては、例えばベリリウムがあるが、X線を透過し且つ非磁性であれば、この限りでない。」(注:【0009】における「非透磁率」は、「比透磁率」の誤記と認める。)

(エ)「【0016】<実施例1>本発明の一実施例を図1に示した。図1では、加速された電子線1が試料2の表面に垂直に照射されている。ここで、電子線1のビーム径は残膜の堆積領域の大きさ(たとえば微細孔の直径)に比べて十分小さく、電子線1の加速エネルギーは5keV以下に制御されている。電子線1の集束、加速は対物レンズ3およびコンデンサレンズ4により行われている。電子線1の照射により、残膜からX線5が発生する。このX線5は、対物レンズ3とコンデンサレンズ4の中間位置で電子線1の近軸に設けられた検出器6で検出される。検出器6は、X線固体検出器(SSD)やハーピコン(撮像管)等に代表される、エネルギー分析機能を有する検出器である。検出器6の設置位置は、検出器の受光面の全部もしくは一部にX線5が入射するように、できるだけ電子線1に近づけることが重要である。このため、検出器6は非磁性材料である銅で構成されたハウジング9に収められ、対物レンズ3とコンデンサレンズ4の間から、電子線中心軸の極近傍に設置される。又ハウジング9の先端部の側面を通過する電子線1は、軌道に悪影響を及ぼされることなく、集光される。検出器6でX線5のエネルギー強度を測定することにより、残膜の定性、定量分析ができる。

【0020】X線検出器6に高エネルギ-あるいは多量の反射電子、2次電子が入射すると、X線検出器の性能が劣化してバックグラウンドノイズが増加したり、最悪の場合にはX線検出素子が破壊される恐れがある。特に、電子線の光軸調整を行う場合には、様々な箇所で反射した電子がX線検出器に多量に入射するため、低エネルギ-電子の場合でも検出器の性能劣化を引き起こし易い。そこで図1に示すように、X線検出器6の前面に、真空チャンバ外から開閉操作を行うための開閉機構10を備えたシャッタ11を設置する。電子線の光軸調整時などのX線検出器6に高エネルギ-または多量の電子が入射してこの検出器の性能劣化を招く恐れのある場合に、開閉機構10でシャッタ11を閉じることにより検出器への電子の入射を遮断し、したがって検出器の性能劣化を防ぐことができる。また、X線検出素子の性能劣化を招くことの無い5keV以下の低エネルギ-電子線でX線分析を行う場合には、開閉機構10でシャッタ11を開ける。なお、シャッタ11も電子線1の直近に設置するためハウジング9と同様に非磁性材料である銅で構成され、また、いかなる高エネルギ-電子線でも透過することの無いように充分な厚み(0.5mm以上)を持たせている。」

(オ)図1は、以下のとおりである。


イ 上記引用文献2には、X線検出器による照射電子線の起動への悪影響を解消したX線検出器が開示されており、X線検出手段(X線検出器及びシャッタ)を非磁性材料で構成すること、非磁性材料としては、ステンレス鋼等を用いること、X線検出器のハウジングをペルチエ素子等に接合して冷却し高感度検出すること、X線検出器として半導体検出器を用いること、が技術手段として開示されている。

(3)引用文献3について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2000-238046号公報)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0009】本発明はかかる従来の問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、耐久性にすぐれた異方導電性シート製造用金型、その製造方法及び異方導電性シート製造装置を提供することである。」

(イ)「【0021】非磁性体部72の材料としては、例えば、融点が120?350℃のハンダがある。具体的には、スズ鉛合金、銀スズ鉛合金、インジウムスズ鉛合金、スズビスマス合金、銀スズ合金、インジウム鉛合金、インジウム銀鉛合金、スズ銀銅インジウム合金、スズ銀銅合金、スズ銀ビスマス銅合金等がある。」

イ 上記引用文献3には、非磁性の材料としてハンダが開示されている。

(4)引用文献4について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平8-212963号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0005】本発明の目的は上述した従来技術の欠点をなくし、インレンズ形対物レンズや漏洩磁場形対物レンズを保有する走査電子顕微鏡と組み合わせても、走査電子顕微鏡のレンズ性能(分解能)を損なうことなく高感度なX線分析ができるエネルギー分散形X線分析装置を提供することにある。」

(イ)「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明ではX線検出器先端部に対物レンズの磁界に影響を与えないアルミニウム等の非磁性材で構成した筒状コリメータを装着したEDX検出装置を用い、コリメータの一部または全部を対物レンズ磁界中に配置して、対物レンズ磁界で散乱電子の軌道を曲げて散乱電子がX線検出器に入り込むのを防止した。」

(ウ)「【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施例の概略断面図である。陰極1と第一陽極2に印加される電圧V1により陰極1から放射された一次電子線4は、第二陽極3に印加される電圧Vacc に加速されて後段のレンズ系に進行する。この一次電子線4は、レンズ制御電源15で制御された集束レンズ5と対物レンズ6により試料7に微小スポットとして集束され、二段の偏向コイル8で試料上を2次元的に走査される。偏向コイル8の走査信号は、観察倍率に応じて偏向制御装置16により制御される。対物レンズ6の対物レンズ磁界9は試料側に発生し、試料7は対物レンズ磁界中に配置される。
【0015】EDX検出装置11は、検出器素子12とその前方に配置されたコリメータ13を備える。コリメータ13は例えば非磁性体であるアルミニウムで構成された筒状体であり、内面に高さ約0.1mm のネジが切ってある。EDX検出装置11は、そのコリメータ13が対物レンズ6の対物レンズ磁界9中に位置するように配置される。
【0016】試料7から発生したX線14は、コリメータ13のX線通過孔を通過し、EDX検出装置11内の検出器素子12で検出される。一方、試料7から発生した散乱電子10は、図2に示すように対物レンズ6の対物レンズ磁界9でその軌道が曲がり、コリメータ13のX線通過孔を通過できずにその内壁に衝突する。内壁に衝突した散乱電子は、内壁の衝突面で2次的な電子を発生するが内壁に凹凸構造があるために、検出器素子12へ進行することができない。また、内壁表面は、散乱電子10の衝突による2次的な電子が発生しにくい材質になっているため、前記凹凸構造との相乗効果で、散乱電子10が検出器素子12へ進入する確率は非常に小さくなる。」

(エ)図1は、以下のとおりである。


イ 上記刊行物4には、X線検出器先端部に非磁性材料で構成した筒状コリメータを装着したEDX検出装置を用いることにより、散乱電子がX線検出器に入り込むのを防止する技術手段が開示されている。

(5)引用文献5について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平3-48189号公報)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「〔産業上の利用分野〕
この発明は、荷電粒子分布測定装置、例えば、イオンミキシング装置やイオン注入装置等に用いられる荷電粒子分布測定装置であって、特に、大電流・大面積のビームの二次元分布を、ビームの偏向を用いずに、高分解能に測定する荷電粒子分布測定装置に関するものである。」(1頁左下欄19行?同頁右下欄5行)

(イ)「コレクタ電極板(17)の製造プロセスは次のとおりである。

丸5 ワイヤボンディング、ハンダ付などで導線(8a)と測定線(8b)を接合する。あるいは測定端子ボルト(5)と二次電子抑制電極用端子(18)をピン構造にし、コネクタで一括接続する。
以上の工程で製造されたコレクタ電極板(17)を使用すれば、上記したように、測定分解能を一層あげることができる。」(4頁右上欄12行?同頁左下欄20行、注:「丸5」は丸数字の5である。)

イ 上記引用文献5には、銅線と測定線を接合する技術手段として、ワイヤボンディングが記載されている。

(6)引用文献6について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2009-105037号公報)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明はPIN型検出器及びPIN型検出器を備えた荷電粒子ビーム装置に関し、更に詳しくはSEM等の荷電粒子ビーム装置に設置される検出器の改良に関する。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】

【0010】

6)従来の信号取り出し電極は、約0.5mm径のエリアにAl(アルミニウム)やAu(金)を蒸着し、その上に直径100μm程度のAu線をエポテック(導電性接着材)やAg(銀)ペースト等で接着する。この接着は、外力に弱いため、樹脂等で保護する場合もある。このため、十分な強度で接触していないので、接触抵抗が大きい。また、信号取り出し電極面はP層(Si基板にBをドーピングした表面で受光面である)そのものであるため、表面抵抗(Siの抵抗率=3.97×10^(3)Ω・m、Bの抵抗率=1×10^(6)Ω・m)が大きく、信号の損失を生じる。
【0011】
つまり、感度低下をきたし歩留まりが悪かった。なお、電極部の面積が小さく、AlやAuの蒸着膜が薄いため、ワイヤボンディングができない。また、ワイヤボンディングで使用する直径10μm程度のAu線は、エポテック(導電性接着剤)やAgペースト等で接着した場合、接触抵抗が大きく、また断線がおきやすく使用できない等の問題があった。」

イ 上記引用文献6には、信号取り出し電極に、Au線を導電性接着剤や銀ペースト等で接着する技術が開示されている。

(7)引用文献7について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開2007-48686号公報)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームまたは光信号を取得する検出装置に関する。特に、本発明は、2つ以上の検出装置を一つの鏡筒内に配置し、電子または光の信号量やS/Nによって検出器を選択して用いることにより、試料表面の画像検出や測定を行うができる検査装置に関する。」

(イ)「【0029】
MCP14、蛍光板15、FOP16及びTDIセンサ17は1つのパッケージに形成され、TDIセンサ17の出力ピンはワイヤーボンディングその他の接続手段で、フィードスルー部FTのピン18に接続される。TDIセンサ17が高速で動作して画素数が大きい場合には、ピン18が多量に必要となり、例えば100?1000本になることがある。カメラ19は画像取込みのための制御信号にしたがって画像信号の入出力を行う。なお、図示していないが、カメラ19の他に、カメラ19用の電源及びコントローラ、並びにカメラ19からの画像信号を取込んで処理する画像処理システムが設けられている。該画像処理システムにより得られた画像データを加工することで画像評価値を算出することができ、例えば欠陥検査に用いる場合には、欠陥部位、欠陥種、欠陥サイズ等の抽出処理とそれらの画面表示とを行うことができる。」

イ 上記引用文献7には、電子ビームまたは光信号を取得する検出装置において、センサの出力ピンとフィードスルー部FTのピンを接続する手段として、ワイヤーボンディングが記載されている。

4 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
(ア)引用発明の「粒子ビームシステム」は本願発明1の「放射線検出器」に相当し、以下同様に、「検出器組立体」は「低干渉センサヘッド」に、「環状検出器」は「センサチップ」に、それぞれ相当する。

(イ)してみると、本願発明1と引用発明は、
「放射線検出器用の低干渉センサヘッドであって、コンポーネントとして、少なくとも、放射線に感応するセンサチップを含む、低干渉センサヘッド。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:放射線検出器が、本願発明1では「EDXのための」放射線検出器であるのに対し、引用発明ではEDXのためのものなのか否か明らかではない点。
相違点2:低干渉センサヘッドが含むコンポーネントが、本願発明1では、「‐前面(12)を有するプリント回路基板(10)と、
‐前記プリント回路基板(10)の前記前面(12)上に配置され、放射線(72)に感応するセンサチップ(32)と、
‐コンタクトピン(42)を有する、前記センサチップ(32)を動作させるための複数の信号及び制御接続部と、を含み、前記コンタクトピン(42)は、ボンディングワイヤ(46)を介して前記プリント回路基板(10)に接続され、
‐前記コンタクトピン(42)を保持するベースプレート(50)と、
‐前記前面(12)から遠ざかる方向に向いた前記プリント回路基板(10)の面に配置された冷却及び/又は熱除去手段(36)と、を更に含み、
前記ベースプレート(50)、及び前記コンタクトピン(42)の少なくとも1つは、少なくとも1種類の材料から成り、該材料の比透磁率(μ_(r))は、1.5未満であり、1.5未満の比透磁率を有する材料は、材料番号が1.4429,1.4406,1.4404,1.4301,1.3964,1.3960又は1.3952の焼きなましオーステナイト系ステンレス鋼から成る」
のに対し、引用発明では、
「前記偏向系の内側に前記ビームに共中心状態で配置され、前記基板から入射するx線、電子およびその他の粒子の少なくとも一つを検出できる環状検出器と、
前記環状検出器を保持するハウジングと、
前記環状検出器を前記ハウジングから隔てるとともに各々が前記環状検出器の対応の個別の検出器と電気的接触状態にある複数個の互いに隔てられた導電性エラストマー部材とを含み、
前記環状検出器は、一つの検出器基板にいくつかの個別の検出器を備え、 前記個別の検出器は、高不純物濃度でドープしたシリコンの薄い基板に形成したプレーナダイオード構成を備え、
バッキンリング、ねじ、ワッシャーをさらに備え、前記個別の検出器は、エラストマー部材とその個別の検出器の裏面に接するバッキングリングとの間に挿まれ、ねじおよびワッシャにより、検出器組立体が一体に保たれ、フレキシブル印刷配線板組立体への電気的接続を形成して外部への電気的接続がなされ、
検出器構成材料および取り付け部材材料である、ハウジング、ねじ、ワッシャーを真空の透磁率に近い透磁率を有する非磁性材料で構成」
される点。

イ 相違点についての判断
はじめに、上記相違点2について検討する。
上記「3(1)ア(エ)」の記載によれば、引用文献1は、電磁レンズおよび偏向磁界の中にそのレンズと基板との間の距離を最小にするように検出器を取り付ける技術を開示するものであるところ、引用発明は、上記相違点2に係る引用発明の特定事項のうち、
(ア)「前記偏向系の内側に前記ビームに共中心状態で配置され、前記基板から入射するx線、電子およびその他の粒子の少なくとも一つを検出できる環状検出器」
(イ)「前記環状検出器を保持するハウジング」
(ウ)「前記環状検出器を前記ハウジングから隔てるとともに各々が前記環状検出器の対応の能動領域と電気的接触状態にある複数個の互いに隔てられた導電性エラストマー部材」
の構成を備えることにより、電磁レンズおよび偏向磁界の中にそのレンズと基板との間の距離を最小にするように検出器を取り付けるものである。そうすると、引用発明において、上記(ア)?(ウ)の特定事項は、レンズと基板との間の距離を最小にするように検出器を取り付けるために採用した構成であるから、上記(ア)?(ウ)の特定事項を他の構成に変更することには、阻害要因がある。
また、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項のうち、
「‐前面(12)を有するプリント回路基板(10)と、
‐前記プリント回路基板(10)の前記前面(12)上に配置され…るセンサチップ(32)と、
‐コンタクトピン(42)を有する、前記センサチップ(32)を動作させるための複数の信号及び制御接続部と、を含み、前記コンタクトピン(42)は、ボンディングワイヤ(46)を介して前記プリント回路基板(10)に接続され、
‐前記コンタクトピン(42)を保持するベースプレート(50)」
を更に含む「コンポーネント」は、上記引用文献2?7の何れにも記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
以上のとおり、当業者といえども、引用発明及び引用文献2から7に記載された技術事項から、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到することはできない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2から7に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2-13について
本願発明2-13は、上記2に記載したとおり、本願発明1を減縮した発明である。そうすると、本願発明2-13は、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2から7に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願発明14は、本願発明1-13の何れかの低干渉センサヘッドを備えた放射線検出器の発明であり、本願発明15は、本願発明1-13の何れかの低干渉センサヘッド、または、本願発明14の放射線検出器を備えた顕微鏡の発明である。そうすると、本願発明14、15は、何れも、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2から7に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-19(注:平成26年9月22日付け手続補正により補正された請求項1-19である。)について、上記引用文献1-7に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、本願発明1-15は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-15は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-7に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

6 当審拒絶理由通知について
(1)特許法第36条第4項第1号、第6項第2号に関し、以下の拒絶理由を通知している。
ア 請求項2、発明の詳細な説明の段落【0024】に記載された「比誘電率(μ_(r))の記載が不明瞭である。
イ 請求項14に記載された「放射線検出器(74)、特にEDX検出器」は「放射線検出器(74)」と「EDX検出器」の何れを意味するのか、また、請求項15に記載された「顕微鏡、特に電子顕微鏡又はイオン顕微鏡」は「顕微鏡」と「電子顕微鏡又はイオン顕微鏡」の何れを意味するのか不明瞭である。
ウ 請求項15に記載された「請求項1?14の何れか一項に記載の低干渉センサヘッド」は、請求項14が「検出器」の発明であるから、不明瞭である。
エ 請求項15に記載された「…放射線検出器(74)の使用。」は、物の発明なのか、あるいは方法の発明なのか不明瞭である。
上記拒絶理由ア?エは、平成29年5月29日付け手続補正により、何れも解消した。

7 むすび。
以上のとおり、本願発明1-15は、当業者が引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-19 
出願番号 特願2012-515459(P2012-515459)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G01T)
P 1 8・ 537- WY (G01T)
P 1 8・ 121- WY (G01T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田邉 英治  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 小松 徹三
松川 直樹
発明の名称 放射線検出器用低干渉センサヘッド及び低干渉センサヘッドを有する放射線検出器  
代理人 弟子丸 健  
代理人 西島 孝喜  
代理人 松下 満  
代理人 吉野 亮平  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 倉澤 伊知郎  
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