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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M |
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管理番号 | 1329952 |
審判番号 | 不服2016-14510 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-28 |
確定日 | 2017-07-25 |
事件の表示 | 特願2013- 2468「スイッチング電源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日出願公開、特開2014-135846、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年1月10日の出願であって、平成28年4月15日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月18日付けで手続補正がされ、同年9月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年9月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-8に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開平07-322524号公報 2.特開2011-211846号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2007-097303号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2010-206912号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2007-236065号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1に、力率改善回路が「力率改善制御回路を有」するものであり、予備充電制御回路が充電制御信号を、力率改善回路のうちの「前記力率改善制御回路に入力する」ものであって、「前記力率改善制御回路は、前記充電制御信号に基づき、前記予備充電が必要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を予備充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させ、前記予備充電が不要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を通常充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる」ものであるという事項を追加する補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「力率改善回路」について、さらに所定機能の「力率改善制御回路」を有しているとの限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記補正は、当初明細書の段落【0033】、【0036】記載の「PFC制御回路31」に基づくから、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはないといえる。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成28年9月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 力率改善制御回路を有し、交流電力を入力して、前記交流電力における電流と電圧の位相が一致するように前記力率改善制御回路によりスイッチングを制御して力率を改善し、所定の第1の直流電圧を出力する力率改善回路と、 入力側に前記力率改善回路が接続され、出力側に蓄電池が接続される直列共振コンバータと、 前記蓄電池の端子間電圧値に基づいて予備充電が必要か否かを判定し、該判定結果に応じた充電制御信号を前記力率改善制御回路に入力する予備充電制御回路と、 を備え、 前記力率改善制御回路は、 前記充電制御信号に基づき、前記予備充電が必要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を予備充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させ、前記予備充電が不要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を通常充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる、 制御を行うことを特徴とするスイッチング電源装置。 【請求項2】 ・・・(中略)・・・請求項1記載のスイッチング電源装置。 【請求項3】 ・・・(中略)・・・請求項2記載のスイッチング電源装置。 【請求項4】 ・・・(中略)・・・請求項2又は3記載のスイッチング電源装置。 【請求項5】 ・・・(中略)・・・請求項2?4のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。 【請求項6】 ・・・(中略)・・・請求項2?4のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。 【請求項7】 請求項2?6のいずれか1項記載のスイッチング電源装置は、更に、・・・(中略)・・・スイッチング電源装置。」 本願発明2-7は、概略、本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審付与。以下同様。)。 (1) 段落【0001】 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は電源回路に関するものであり、特に電気自動車に搭載する大容量のバッテリーを充電する電源回路に関する。」 (2) 段落【0006】-【0008】 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上述の電源回路では、その構成からも明らかなように、バッテリー5に印加される電圧のレベルは、平滑コンデンサ3の電圧をDC-DCコンバータ4のトランス4eの巻線比に応じて変圧して得た固定的な値であり、バッテリー5に対する充電電流I_(O)’の制御は、単に、スイッチング回路4fの出力するパルス波の周波数を可変して出力電流I_(O)’を可変することのみによって行われている。したがって、電源回路によってバッテリー5の充電を短時間で安全に行う為、先ず初期の段階で、スイッチング回路4fの発生するパルス波を制御し、大きなレベルの出力電流I_(O)’をバッテリー5に供給し、以下、そのバッテリー5の充電の進行状況に応じて、そのスイッチング周波数を徐々に低くし、出力電流I_(O) を低下させる制御を行う必要がある。 【0007】この為、バッテリー5の充電の最終段階においては、スイッチング回路4cの発生するパルス波のスイッチング周波数をかなり低くしなければならず、DC-DCコンバータ4で用いるべきトランス4eも大きな容量のものが必要となる。なぜなら、トランスの容積は、一般に、変圧すべき交流の周波数が低いほど大型のコアを必要とするからである。これでは、前提としてきた電源回路本体の小形軽量化は望めない。 【0008】本発明は、上述の実情に鑑み為されたものであり、DC-DCコンバータで使用するトランスの容量を小さく抑え、電源回路を小型化することを目的とする。」 (3) 段落【0015】-【0024】 「【0015】 【実施例】以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、一実施例に係る電源回路の回路ブロック図である。同図において、本実施例の電源回路は整流回路7、アクティブ・フィルタ8、DC-DCコンバータ9で構成されている。整流回路7はダイオード・ブリッジ等から成る全波整流回路で構成され、例えば200V系の商用電源10から交流電圧が供給される。整流回路7はこの交流電源を全波整流し、整流電圧をアクティブ・フィルタ8へ出力する。 【0016】アクティブ・フィルタ8は、トランジスタ11、チョーク・コイル12、ダイオード13、平滑コンデンサ14で構成されている。また、トランジスタ11のベース(B)には制御回路15が接続され、制御回路15から出力される制御信号(パルス波)に従ってトランジスタ11はオン/オフ駆動する。尚、トランジスタ11のオン動作時、チョーク・コイル12に蓄えられたエネルギーは、トランジスタ11のオフ動作時にダイオード13を介して平滑コンデンサ14に放出される。また、制御回路15から出力されるパルス波により、アクティブ・フィルタ8の出力電圧は変化し、この変化する出力電圧をE_(I)とする。尚、この出力電圧E_(I)は、DC-DCコンバータ9へ出力される。 【0017】DC-DCコンバータ9は、構成および動作が同一であるトランジスタ17a、17b、ダイオード18a、18b、及び共振コイル19、共振コンデンサ20、トランス21、中間整流回路22、中間平滑コンデンサ23、及びスイッチング回路24で構成されている。また、このDC-DCコンバータ9には、バッテリー25へ供給する電流(以下、出力電流I_(O)という)を検出するための電流センサ26が接続されている。 【0018】また、上述のスイッチング回路24から出力されるスイッチング周波数f_(SW)は、高い周波数(例えば、50kHz)に固定されたパルス波であり、これに応じ、トランス21に関しても、従来よりも大幅に容量の小さいトランスが接続されている。 【0019】以上の構成の電源回路において、以下にその動作を説明する。先ず、整流回路7は商用電源7から出力される、例えば200Vの電圧を全波整流し、アクティブ・フィルタ8へ出力する。アクティブ・フィルタ8は、整流電圧をトランジスタ11でスイッチングし、出力電圧E_(I)の電圧値を可変する。トランジスタ11のスイッチング周波数は、制御回路15から出力されるパルス波の周波数であり、このスイッチング周波数を可変し、アクティブ・フィルタ8からDC-DCコンバータ9へ出力電圧E_(I)を出力する。DC-DCコンバータ9は、この出力電圧E_(I)を固定的に設定されたスイッチング周波数f_(SW)でスイッチングし、入力電圧E_(I)に対応した出力電圧E_(O)(出力電流I_(O))をバッテリー25へ出力する。 ・・・(中略)・・・ 【0022】すなわち、本実施例の電源回路によれば、式(1)に示されるように、バッテリー25を充電していく過程において、その時々において必要とされる適正な出力電圧E_(O)(充電電圧)が、入力電圧E_(I)に応じて最大出力電圧E_(O(max))までの範囲で可変でき、さらに、式(2)に示す様に、出力電流I_(O)に関しても、その入力電圧E_(I)に応じて可変できる。したがって、バッテリー25の充電を行う際、先ず初期の段階で、制御回路15から出力するパルス波のスイッチング周波数を大きくして出力電圧E_(O)を適正値に設定することにより、その出力電流I_(O)をバッテリー25に供給する。出力電流I_(O)を低下させたい時は電流センサ26によって検出された電流に応じて、制御回路15の発生するパルス波のスイッチング周波数を直ちに制御し、入力電圧E_(I)を適正値に設定しなおし、以下、この一連の制御を繰り返すことにより、その出力電圧I_(O)(当審注:「出力電圧E_(O)」の誤記と認める。)を目標値に徐々に近づけていく。 【0023】以上までの制御により、本電源回路によるバッテリー25の充電が、短時間のうちに自動的に完了する。すなわち、本実施例の電源回路では、DC-DCコンバータ9内のスイッチング回路24が出力するパルス波のスイッチング周波数f_(SW)が、共振コイル19と共振コンデンサ20とから成るLC直列共振回路の共振周波数と一致する高い値(例えば、50kHz)に固定的に設定されており、これに応じ、トランス21に関しても、従来よりも大幅に容量の小さいものを使用することが可能となる。 【0024】一方、これと同時にアクティブ・フィルタ8は、本実施例の電源回路の力率の改善を行う。すなわち、制御回路15は、アクティブ・フィルタ8に流れる電流の位相も検出し、この位相に対応したタイミングでパルス波をトランジスタ11に出力し、アクティブ・フィルタ8の出力電圧E_(I)の位相とバッテリー25への出力電流I_(O)の位相を一致させ、力率の改善を図る。」 したがって、関連図面と技術常識に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「電源回路は整流回路7、アクティブ・フィルタ8、DC-DCコンバータ9で構成され、 整流回路7はダイオード・ブリッジ等から成る全波整流回路で構成され、200V系の商用電源10から交流電圧が供給され、整流回路7はこの交流電源を全波整流し、整流電圧をアクティブ・フィルタ8へ出力し、 アクティブ・フィルタ8は、トランジスタ11、チョーク・コイル12、ダイオード13、平滑コンデンサ14で構成され、トランジスタ11のベース(B)には制御回路15が接続され、制御回路15から出力される制御信号(パルス波)に従ってトランジスタ11はオン/オフ駆動し、制御回路15から出力されるパルス波により、アクティブ・フィルタ8の出力電圧E_(I)は変化し、DC-DCコンバータ9へ出力され、 DC-DCコンバータ9は、構成および動作が同一であるトランジスタ17a、17b、ダイオード18a、18b、及び共振コイル19、共振コンデンサ20、トランス21、中間整流回路22、中間平滑コンデンサ23、及びスイッチング回路24で構成され、 DC-DCコンバータ9には、バッテリー25へ供給する出力電流I_(O)を検出するための電流センサ26が接続され、 スイッチング回路24から出力されるスイッチング周波数f_(SW)は、高い周波数(50kHz)に固定されたパルス波であり、DC-DCコンバータ9は、出力電圧E_(I)を固定的に設定されたスイッチング周波数f_(SW)でスイッチングし、入力電圧E_(I)に対応した出力電圧E_(O)(出力電流I_(O))をバッテリー25へ出力し、 バッテリー25を充電していく過程において、その時々において必要とされる適正な出力電圧E_(O)(充電電圧)が、入力電圧E_(I)に応じて最大出力電圧E_(O(max))までの範囲で可変でき、したがって、バッテリー25の充電を行う際、先ず初期の段階で、制御回路15から出力するパルス波のスイッチング周波数を大きくして出力電圧E_(O)を適正値に設定することにより、その出力電流I_(O)をバッテリー25に供給し、出力電流I_(O)を低下させたい時は電流センサ26によって検出された電流に応じて、制御回路15の発生するパルス波のスイッチング周波数を直ちに制御し、入力電圧E_(I)を適正値に設定しなおし、以下、この一連の制御を繰り返すことにより、その出力電圧E_(O)を目標値に徐々に近づけていき、 DC-DCコンバータ9内のスイッチング回路24が出力するパルス波のスイッチング周波数f_(SW)が、共振コイル19と共振コンデンサ20とから成るLC直列共振回路の共振周波数と一致する高い値(例えば、50kHz)に固定的に設定され、これに応じ、トランス21に関しても、従来よりも大幅に容量の小さいものを使用することが可能となり、 アクティブ・フィルタ8は、電源回路の力率の改善を行い、すなわち、制御回路15は、アクティブ・フィルタ8に流れる電流の位相も検出し、この位相に対応したタイミングでパルス波をトランジスタ11に出力し、アクティブ・フィルタ8の出力電圧E_(I)の位相とバッテリー25への出力電流I_(O)の位相を一致させる、 電源回路。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、段落【0042】-【0044】に、以下の記載がある。 「【0042】 本実施形態の充電装置100における充電制御部4の充電制御ロジックの第1の例では、まず、充電開始と共に最初のステップS1で、二次電池11の電池電圧(VB)を検出し、電池電圧VBが予備充電を必要とする電圧(VS)よりも低いか否かを判断する。 【0043】 そして、ステップS1で二次電池11の電池電圧(VB)が所定の電圧(VS)より低いと判断された(Yes)場合には、ステップS2で、充電電流I=IPとして予備充電を行う。 【0044】 この予備充電は、二次電池11の放電が進んで電池電圧(VB)が低下している状態でいきなり大電流での充電を行うと電池寿命を大幅に劣化させてしまうため、例えば285mAという低電流の予備充電電流IPでの予備充電を行って、電池電圧を所定の電圧値VS(一例として6.0V)以上とするものである。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落【0014】の記載から、「昇圧型DC-DCコンバータ」は、周知技術であると認められる。 4.引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落【0030】、【0044】の記載から、蓄電池の種別を判別して、種別に応じた充電を行うことは、周知技術であると認められる。 5.引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、段落【0063】-【0064】に、以下の記載がある。 「【0063】 ステップS5で、電池電圧Vbが第1電圧V1未満のときは、ステップS22に進み、ステップS22で、制御回路部18は、2次電池6が接続されていないか又は2次電池6 が異常であると判断し、充電開始待機時間T1経過後も、引き続き充電電流制御回路部12に対してパワートランジスタQ1をオフさせて遮断状態にさせ充電電流ichの供給を停止させ、2次電池6への充電を禁止して、ステップS5に戻る。正常な2次電池6が接続されていれば、電池接続端子P5には第1電圧V1以上の電圧が入力されていることから、コンパレータ15から出力されている第1電圧検出信号S1はハイレベルになっている。ステップS5で、電池電圧Vbが第1電圧V1以上であり電圧V2-未満であるときは、ステップS6に進み、ステップS6で、制御回路部18は、充電電流制御回路部12に対して、予備充電モードの動作を行わせる。 【0064】 予備充電モードは、過放電状態のリチウムイオン電池にいきなり大電流で充電を行うと、発熱・発火の恐れがあるため、電池電圧Vbが所定の電圧に上昇するまでは数十mAと少ない電流で充電を行う充電モードである。図3では、予備充電時の充電電流値はi1で示している。 次に、ステップS5で、電池電圧Vbが第2電圧V2以上である場合は、コンパレータ16の出力信号S2がローレベルからハイレベルに変化し、後述するステップS10の定電流充電モードに移行する。なお、第1電圧V1は予備充電が行える最低電圧に設定されており、第2電圧V2は大電流による急速充電が行える最低電圧に設定されている。」 第6 対比・判断 1.対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (1) 引用発明の「アクティブ・フィルタ8」は、「電源回路の力率の改善を行」うから、本願発明1の「力率改善回路」に相当するといえる。 引用発明の「制御回路15」は、アクティブ・フィルタ8を制御しているから、本願発明1の「力率改善制御回路」に相当する。 引用発明の「アクティブ・フィルタ8」が出力する「電圧E_(I)」は、本願発明1の「所定の第1の直流電圧」に相当する。 引用発明の「アクティブ・フィルタ8」は、「整流回路7はこの交流電源を全波整流し、整流電圧をアクティブ・フィルタ8へ出力し」ており、「アクティブ・フィルタ8は、トランジスタ11、チョーク・コイル12、ダイオード13、平滑コンデンサ14で構成され、トランジスタ11のベース(B)には制御回路15が接続され、制御回路15から出力される制御信号(パルス波)に従ってトランジスタ11はオン/オフ駆動し、制御回路15から出力されるパルス波により、アクティブ・フィルタ8の出力電圧E_(I)は変化し、DC-DCコンバータ9へ出力され」、「アクティブ・フィルタ8は、電源回路の力率の改善を行い、すなわち、制御回路15は、アクティブ・フィルタ8に流れる電流の位相も検出し、この位相に対応したタイミングでパルス波をトランジスタ11に出力し、アクティブ・フィルタ8の出力電圧E_(I)の位相とバッテリー25への出力電流I_(O)の位相を一致させる」ものであるから、引用発明の「制御回路15」を有する「アクティブ・フィルタ8」は、本願発明1の「力率改善制御回路を有し、交流電力を入力して、前記交流電力における電流と電圧の位相が一致するように前記力率改善制御回路によりスイッチングを制御して力率を改善し、所定の第1の直流電圧を出力する力率改善回路」に相当するといえる。 (2) 引用発明の「共振コイル19と共振コンデンサ20とから成るLC直列共振回路」を含む「DC-DCコンバータ9」は、本願発明1の「直列共振コンバータ」に相当する。 引用発明の「バッテリー25」は、本願発明1の「蓄電池」に相当する。 よって、引用発明の「DC-DCコンバータ9」は、前段の「アクティブ・フィルタ8」の「出力電圧E_(I)は変化し、DC-DCコンバータ9へ出力され」、「その出力電流I_(O)をバッテリー25に供給し」ているから、本願発明1の「入力側に前記力率改善回路が接続され、出力側に蓄電池が接続される直列共振コンバータ」に相当する。 (3) 引用発明において「バッテリー25を充電していく過程において、その時々において必要とされる適正な出力電圧E_(O)(充電電圧)が、入力電圧E_(I)に応じて最大出力電圧E_(O(max))までの範囲で可変でき、したがって、バッテリー25の充電を行う際、先ず初期の段階で、制御回路15から出力するパルス波のスイッチング周波数を大きくして出力電圧E_(O)を適正値に設定することにより、その出力電流I_(O)をバッテリー25に供給し、出力電流I_(O)を低下させたい時は電流センサ26によって検出された電流に応じて、制御回路15の発生するパルス波のスイッチング周波数を直ちに制御し、入力電圧E_(I)を適正値に設定しなおし、以下、この一連の制御を繰り返すことにより、その出力電圧E_(O)を目標値に徐々に近づけてい」くことは、本願発明1の「前記力率改善制御回路は、前記充電制御信号に基づき、前記予備充電が必要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を予備充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させ、前記予備充電が不要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を通常充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる、制御を行う」ことと、「前記力率改善制御回路は、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を所定の電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる、制御を行う」点で共通するといえる。 (4) 引用発明の「電源回路」は、「DC-DCコンバータ9」において、「固定的に設定されたスイッチング周波数f_(SW)でスイッチングし、入力電圧E_(I)に対応した出力電圧E_(O)(出力電流I_(O))をバッテリー25へ出力し」ているから、本願発明1の「スイッチング電源装置」に相当する。 したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 「力率改善制御回路を有し、交流電力を入力して、前記交流電力における電流と電圧の位相が一致するように前記力率改善制御回路によりスイッチングを制御して力率を改善し、所定の第1の直流電圧を出力する力率改善回路と、 入力側に前記力率改善回路が接続され、出力側に蓄電池が接続される直列共振コンバータと、 を備え、 前記力率改善制御回路は、 前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を所定の電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる、 制御を行うことを特徴とするスイッチング電源装置。」 [相違点1] 本願発明1は、「前記蓄電池の端子間電圧値に基づいて予備充電が必要か否かを判定し、該判定結果に応じた充電制御信号を前記力率改善制御回路に入力する予備充電制御回路」を備えているのに対して、引用発明は、「予備充電制御回路」を備えていない点。 [相違点2] 「力率改善制御回路」について、本願発明1では、「前記力率改善制御回路は、前記充電制御信号に基づき、前記予備充電が必要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を予備充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させ、前記予備充電が不要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を通常充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる、制御を行う」のに対して、引用発明では、「バッテリー25の充電を行う際、先ず初期の段階で、制御回路15から出力するパルス波のスイッチング周波数を大きくして出力電圧E_(O)を適正値に設定することにより、その出力電流I_(O)をバッテリー25に供給し、出力電流I_(O)を低下させたい時は電流センサ26によって検出された電流に応じて、制御回路15の発生するパルス波のスイッチング周波数を直ちに制御し、入力電圧E_(I)を適正値に設定しなおし、以下、この一連の制御を繰り返すことにより、その出力電圧E_(O)を目標値に徐々に近づけてい」くものであって、予備充電制御回路からの「前記充電制御信号」に基づいて、電圧E_(I)(「第1の直流電圧」)を「予備充電制御電圧」、「通常充電制御電圧」いずれか一方に設定するものではない点。 2.相違点についての判断 事案に鑑みて、「予備充電」に関連する上記[相違点2]について先に検討する。 引用発明は、「バッテリー5の充電を短時間で安全に行う為、先ず初期の段階で、大きなレベルの出力電流I_(O)’をバッテリー5に供給」することを課題とするもの(段落【0006】参照)であって、充電の初期に少ない電流で充電を行うという「予備充電」の必要性や、そのための構成についての記載や示唆はなく、相違点2に係る本願発明1の構成である「前記力率改善制御回路は、前記充電制御信号に基づき、前記予備充電が必要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を予備充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させ、前記予備充電が不要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を通常充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる、制御を行う」構成を、引用発明に採用する動機付けはない。 一般に、蓄電池の寿命や安全性を向上するために、充電の初期段階で、蓄電池の端子間電圧値によって予備充電の必要性を判定して、少ない電流で充電(「予備充電」)を開始する点は、周知技術であったといえる(上記「第5」の「2.引用文献2について」、「5.引用文献5について」の記載を参照。)。しかしながら、上記相違点2に係る本願発明1の「前記力率改善制御回路は、前記充電制御信号に基づき、前記予備充電が必要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を予備充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させ、前記予備充電が不要な場合には、前記スイッチングを制御し、前記第1の直流電圧を通常充電制御電圧に設定して前記力率改善回路から出力させる、制御を行う」構成は、引用文献3、4にも記載されておらず、また、周知技術とも認められない。 そもそも、引用発明は、後段の「DC-DCコンバータ9」では、「スイッチング周波数f_(SW)が、共振コイル19と共振コンデンサ20とから成るLC直列共振回路の共振周波数と一致する高い値(例えば、50kHz)に固定的に設定され、これに応じ、トランス21に関しても、従来よりも大幅に容量の小さいものを使用することが可能とな」るもの、すなわち、後段の「DC-DCコンバータ9」のスイッチング周波数を直列共振回路の共振周波数に一致する固定値とすることで、トランスを小型化するものである。 一方、前段の「アクティブ・フィルタ8」では、「入力電圧E_(I)を適正値に設定しなおし、以下、この一連の制御を繰り返す」ものであって、前段の「アクティブ・フィルタ8」のスイッチング周波数は任意に設定可能としたものである。 そして、このような、スイッチング周波数が任意に設定可能な前段の「アクティブ・フィルタ8」と、スイッチング周波数が固定された後段の「DC-DCコンバータ9」とを組み合わせることで、引用発明は全体として、「バッテリー5の充電を短時間で安全に行う為、先ず初期の段階で、大きなレベルの出力電流I_(O)’をバッテリー5に供給し、以下、そのバッテリー5の充電の進行状況に応じて、出力電流I_(O) を低下させる制御を行う」ものである。 このような引用発明の「アクティブ・フィルタ8」(「力率改善回路」)の構成において、仮に、電圧E_(I) (「第1の直流電圧」)を、任意に設定可能にすることに替えて、本願発明1のように、「予備充電制御電圧」または「通常充電制御電圧」のいずれか一方に設定する構成を採用する場合、引用発明の後段の「DC-DCコンバータ9」のスイッチング周波数は、「LC直列共振回路の共振周波数と一致する高い値(例えば、50kHz)に固定的に設定され」ている以上、「バッテリー5の充電を短時間で安全に行う為、先ず初期の段階で、大きなレベルの出力電流I_(O)’をバッテリー5に供給し、以下、そのバッテリー5の充電の進行状況に応じて、出力電流I_(O) を低下させる制御を行う」という、引用発明の本来の目的が達成できなくなることは明らかであるから、引用発明の「アクティブ・フィルタ8」において、電圧E_(I) (「第1の直流電圧」)を、「予備充電制御電圧」または「通常充電制御電圧」のいずれか一方に設定する[相違点2]に係る構成を採用することには、阻害要因があるといえる。 したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-7について 本願発明2-7も、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明1の上記[相違点2]に係る「力率改善制御回路」の具体的構成と同一の構成を備えるものである。 よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-7も、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-7は、当業者が引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-07-10 |
出願番号 | 特願2013-2468(P2013-2468) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高野 誠治 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 山田 正文 |
発明の名称 | スイッチング電源装置 |
代理人 | 柿本 恭成 |